(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の分析種時間間隔が第1の上限と第1の下限とを有し、前記第1の上限が前記第1の保持時間+前記第1の保持時間の第1の所定の割合であり、前記第1の下限が前記第1の保持時間−前記第1の保持時間の前記第1の所定の割合である、請求項2に記載の方法。
前記第2の分析種時間間隔が第2の上限と第2の下限とを有し、前記第2の上限が前記第2の保持時間+前記第2の保持時間の第2の所定の割合であり、前記第2の下限が前記第2の保持時間−前記第2の保持時間の前記第2の所定の割合である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記第1のピーク、前記第2のピーク、前記第3のピーク、および前記第4のピークの面積またはピーク高さに基づいて、前記試料の第1の分析種濃度と第2の分析種濃度とを自動的に出力する工程、
をさらに含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記第5の保持時間と前記第1の保持時間との絶対値差分が第1の所定の閾値より大きいとき、または前記第6の保持時間と前記第2の保持時間との絶対値差分が第2の所定の閾値より大きいとき、前記クロマトグラフィー分離器を交換する必要があるというメッセージをコンピュータ画面上に出力する工程、
をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【発明の概要】
【0005】
クロマトグラフィーシステムの校正方法は、標準液を用いた自動校正方法、試料溶液の自動分析方法、および自動再校正方法を含むことができる。自動校正方法は、クロマトグラフィー分離器(chromatographic separator)に標準物質を注入する工程を含む。標準物質は、第1のキャリブラント濃度を有する第1の分析種と、第2のキャリブラント濃度を有する第2の分析種とを含む。クロマトグラフィー分離器内で標準物質を分離することができる。それぞれ、第1の保持時間、第2の保持時間を有する、第1のピークと第2のピークとを検出器で測定することができる。次に、本方法は、第1のピークが第1の分析種に対応するのかまたは第2の分析種に対応するのか、および第2のピークが第1の分析種に対応するのかまたは第2の分析種に対応するのかを、第1のピークおよび第2のピークの面積またはピーク高さのいずれかと、第1のキャリブラント濃度および第2のキャリブラント濃度とに基づく比とに基づいて自動的に判別する。
【0006】
上記方法に関して、第1の保持時間と第2の保持時間とに基づいて、第1の分析種時間間隔と第2の分析種時間間隔とを計算する工程をさらに含むことができる。クロマトグラフィー分離器に試料を注入することができ、試料は第1の分析種と第2の分析種とを含む。クロマトグラフィー分離器内で試料を分離することができる。それぞれ、第3の保持時間、第4の分析種保持時間を有する、第3のピークと第4のピークとを検出器で測定することができる。次に、本方法は、第3の保持時間が第1の分析種時間間隔に入る場合は第3のピークが第1の分析種に対応すること、または第3の保持時間が第2の分析種時間間隔に入る場合は第3のピークが第2の分析種に対応することを自動的に出力する。さらに、本方法は、第4の保持時間が第1の分析種時間間隔に入る場合は第4のピークが第1の分析種に対応すること、または第4の保持時間が第2の分析種時間間隔に入る場合は第4のピークが第2の分析種に対応することを自動的に出力する。
【0007】
上記方法に関して、第1の分析種時間間隔は第1の上限と第1の下限とを有し、第1の上限は第1の保持時間+第1の保持時間の第1の所定の割合であり、第1の下限は第1の保持時間−第1の保持時間の第1の所定の割合である。第1の所定の割合は約0.05〜約0.2の範囲であってもよい。
【0008】
上記方法に関して、第2の分析種時間間隔は第2の上限と第2の下限とを有し、第2の上限は第2の保持時間+第2の保持時間の第2の所定の割合であり、第2の下限は第2の保持時間−第2の保持時間の第2の所定の割合である。第2の所定の割合は約0.05〜約0.2の範囲であってもよい。
【0009】
上記方法に関して、それは、第1のピーク、第2のピーク、第3のピーク、および第4のピークの面積またはピーク高さに基づいて、試料の第1の分析種濃度と第2の分析種濃度とを自動的に出力する工程をさらに含むことができる。
【0010】
上記方法に関して、それは、標準物質を注入する工程を繰り返す工程と、クロマトグラフィー分離器内で標準物質を分離する工程を繰り返す工程とをさらに含むことができる。それぞれ、第5の保持時間、第6の保持時間を有する、第5のピークと第6のピークとを検出器で測定することができる。次に、第5の保持時間と第6の保持時間とに基づいて第1の分析種時間間隔と第2の分析種時間間隔とを再計算することができる。
【0011】
上記方法に関して、それは、第5の保持時間と第1の保持時間との絶対値差分が第1の所定の閾値より大きいとき、または第6の保持時間と第2の保持時間との絶対値差分が第2の所定の閾値より大きいとき、クロマトグラフィー分離器を交換する必要があるというメッセージをコンピュータ画面上に出力する工程をさらに含むことができる。
【0012】
上記方法に関して、RFIDタグを有する容器に標準物質を収容することができる。RFIDタグを読み取ってまたはポーリングして、第1の分析種および第2の分析種の同一性、ならびに標準物質の第1のキャリブラント濃度と第2のキャリブラント濃度とを算出することができる。
【0013】
クロマトグラフィーカラムの種類を判別する方法を記載する。それは、クロマトグラフィー分離器に標準物質を注入する工程を含むことができる。標準物質は、第1のキャリブラント濃度を有する第1の分析種と、第2のキャリブラント濃度を有する第2の分析種と、第3のキャリブラント濃度を有する第3の分析種とを含むことができる。クロマトグラフィー分離器内で標準物質を分離することができる。少なくとも2つのピークを検出器で測定することができ、各ピークは保持時間、ピーク高さ、およびピーク面積を有する。次に、本方法は、第1のピークが第1の分析種、第2の分析種、第3の分析種、またはこれらの組み合わせに対応するのか、第2のピークが第1の分析種、第2の分析種、第3の分析種、またはこれらの組み合わせに対応するのか、第3のピークが存在するかどうか、および存在する場合、第3のピークが第1の分析種、第2の分析種、または第3の分析種に対応するのかを、測定したピークの面積または高さのいずれかと、第1のキャリブラント濃度、第2のキャリブラント濃度、および第3のキャリブラント濃度に基づく1つ以上の比とに基づいて自動的に判別する。本方法はまた、クロマトグラフィーカラムの種類を第1の分析種、第2の分析種、および第3の分析種の溶出順に基づいて自動的に判別する。
【0014】
本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の現在好ましい実施形態を示し、前述の概要および後述の詳細な説明と共に、本発明の特徴を説明する役割を果たす(ここで、同様の番号は同様の要素を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明は図面を参照して読むものとし、様々な図面中の同様の要素には同一の番号を付けている。図面は、必ずしも縮尺通りに記載されておらず、選択された実施形態を示し、本発明の範囲を限定しようとするものではない。詳細な説明は、本発明の原理を例として説明しているに過ぎず、限定しようとするものではない。この説明により、当業者が本発明を製造し、使用できるようになることが明らかであり、それは本発明を実施する最良の形態であると現在考えられているものを含む、本発明の幾つかの実施形態、適応形態、変形形態、代替形態、および使用について記載している。本明細書で使用する場合、任意の数値または範囲に関する「約」または「およそ」という用語は、構成要素の一部または集合が本明細書に記載のその所期の目的にかなうように機能を果たすことを可能にする好適な寸法公差を示す。
【0017】
クロマトグラフィーを用いた分析種の分析は、分析種に関する細目を解析ソフトウェアに入力することを必要とする。クロマトグラフィーカラムによって小さな差があるため、溶離液状態の変化のため、またはカラムが劣化するまたは汚染されて起こる経時的変化のため、この情報の変更を頻繁に行わなければならない。標準液は、濃度値の比が正確に調整された2種以上のキャリブラントを含むことができ、その結果として、正確に制御された検出器応答比が得られる。これにより、カラムの変化、または使用中のカラムの汚染にもかかわらず各分析種をソフトウェアで自動的に同定することが可能となる。本明細書に記載の標準液は、化学的バーコードと称することもできる。
【0018】
クロマトグラフィー分析中に、分析種の細目をクロマトグラフィー解析ソフトウェアに入力する必要がある。入力できるパラメータには分析種同一性および分析種濃度が含まれる。これらのパラメータを好適な積分パラメータと共に入力した後、解析ソフトウェアで分析種を分析報告の一部として自動的に同定する。しかし、ソフトウェアシステムが分析種を誤同定するのはよくあることである。これには幾つかの一般的な原因がある。例えば、1つのカラムに関するパラメータを入力した後、新しいカラムに取り替えると、前者のカラムに関して入力されたパラメータは、新しいカラムに使用するのに適していないことがある。クロマトグラフィー解析ソフトウェアの使用中に、分析種パラメータの頻繁な調節が必要となることが多い。このような変更を行わないと分析報告で分析種を誤って同定することになるため、このようなエラーが生じないように分析者の側に警戒が絶えず要求される。さらに、移動相の変更または分離温度の変化などにより分離の分析条件が変化すると、保持特性は、分析種保持パラメータの変更が必要となるほど頻繁にシフトする。さらに、強吸着汚染不純物の注入によりカラムが劣化するまたは汚染されるため、クロマトグラフィー解析ソフトウェアによる分析種の正確な同定を確実に行うには分析種保持パラメータの変更が必要となるほど、保持が低下する可能性がある。
【0019】
正確に制御された検出器応答比に規定の1組の分析種濃度を使用する化学的バーコードにより、カラムの変化、標準物質の分析中のカラムの汚染方法にかかわらず、ピーク面積情報を使用することによりソフトウェアで各分析種を自動的に同定することが可能となり、ピーク面積情報は、クロマトグラム中の各分析種を保持時間または保持順にかかわらずクロマトグラフィー解析ソフトウェアで自動的に同定することができるようにコードされる。例えば、標準物質中に4種の成分があり、ピーク面積が:ピーク1は1000、ピーク2は2000、ピーク3は3000、およびピーク4は4000となるように標準物質が構成されている場合、ソフトウェアで1:2:3:4の面積比パターンを検索して、4種の分析種を同定する。ここでは分析種面積は任意であり、任意の面積比を使用することができるが、但し、ソフトウェアがその比を、検出限界付近で操作することによって起こるエラーが回避されるほど十分高い精度で評価できるものとする。ピーク1がフッ化物イオンであり(または面積1000のピーク=フッ化物イオン)、ピーク2が塩化物イオンであり、ピーク3が臭化物イオンであり、ピーク4が硝酸イオンであるという情報もソフトウェアでメモリに記憶した場合、ソフトウェアで各ピークを自動的に標識し、各ピークの相対面積に基づいてその位置を特定することができる。
【0020】
以下では、クロマトグラフィーシステムの校正方法をより詳細に説明する。クロマトグラフィーシステムの校正方法は、標準液を用いた自動校正方法(
図1)、試料溶液の自動分析方法(
図2)、およびドリフトおよびクロマトグラフィーパラメータの変化の原因を説明する自動再校正方法(
図3)を含む。
【0021】
図1は、標準液を用いてクロマトグラフィーシステムを自動的に校正する方法100を示すフローチャートである。方法100は、標準液を注入する工程(工程102)と、標準物質をクロマトグラフィーにより分離する工程(工程104)と、標準物質のクロマトグラフィーピークを測定する工程(工程106)と、標準物質のピークの分析種同一性を自動的に判定する工程(工程108)と、保持時間に基づいて分析種時間間隔を計算する工程(工程110)と、任意選択的な工程としてクロマトグラフィーカラムの種類を自動的に判定する工程(工程112)とを含んでもよい。
【0022】
工程102では、標準液をクロマトグラフィー分離器に注入することができる。1種以上の所定の分析種を正確に調整された濃度で含有する標準液を、クロマトグラフィーシステムの品質管理および校正に使用することができる。標準液は、第1のキャリブラント濃度を有する第1の分析種と、第2のキャリブラント濃度を有する第2の分析種とを含むことができる。一実施形態では、分析種は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、および硝酸イオンなどのアニオンであってもよい。第1のキャリブラント濃度と第2のキャリブラント濃度は所定の濃度であるため、キャリブラント濃度に基づく比を計算することができる。
【0023】
一実施形態では、4種のアニオン成分を有する標準液は、1ppmのフッ化物イオン、3ppmの塩化物イオン、10ppmの臭化物イオン、および10ppmの硝酸イオンを含むことができる。さらに、7種の成分を含むアニオン標準液の一例は、1ppmのフッ化物イオン、3ppmの塩化物イオン、5ppmの亜硝酸イオン、10ppmの臭化物イオン、10ppmの硝酸イオン、15ppmの硫酸塩、および15ppmのリン酸塩を含むことができる。カチオン標準液の一例は、0.5ppmのリチウム、2ppmのナトリウム、2.5ppmのアンモニウム、5ppmのカリウム、2.5ppmのマグネシウムおよび5ppmのカルシウムを含むことができる。
【0024】
次いで、標準液をクロマトグラフィー分離器内で分離することができる(工程104)。試料の分離は、複数の分析種を個別の量の分析種に分離してクロマトグラフィーカラムから溶出させる、試料の物理的変換であることに留意されたい。一実施形態では、検出器は、分離された分析種のコンダクタンスを測定する電気伝導度検出器であってもよい。通常、コンダクタンスは、シーメンス(S)の単位で測定される。分析種およびマトリックス成分がカラムから溶出した後、それらを検出器で信号ピークとして測定することができる(工程106)。一実施形態では、
図4のクロマトグラムAに示すように、それぞれ第1の保持時間t1と第2の保持時間t2を有する第1のピークP1と第2のピークP2があってもよい。簡潔にするためピークP1およびP2は線として示されており、ピークは、ガウス形(Gaussian)などのクロマトグラムで通常観測される他の形状であってもよいことに留意されたい。
【0025】
次に、方法100は、標準液クロマトグラム中の標準物質のピークの分析種同一性を自動的に判定する(工程108)。換言すれば、本方法は、どのピークがどの分析種に対応するのかを判定する。例えば、本方法は、第1のピークが第1の分析種に対応するのかまたは第2の分析種に対応するのかを自動的に判別する。同様に、本方法は、第2のピークが第1の分析種に対応するのかまたは第2の分析種に対応するのかを自動的に判別する。この自動判別は、第1のピークと第2のピークの面積またはピーク高さに基づいて行うことができる。注入前の標準液の組成に関する事前の知見を用いて、第2のキャリブラント濃度[A2]と第1のキャリブラント濃度[A1]とに基づく比を計算することができる。例えば、単位濃度当たりの第1の分析種に対する検出器の感度と第2の分析種に対する感度が同じであると仮定すると、第2のキャリブラント濃度が第1のキャリブラント濃度より2倍高い場合、比の値(A2:A1)は2となり得る。比の値に第1のピーク面積を乗じて、その積の値が第2のピーク面積に対応するかどうかを調べることができ、そのようになる場合、第1のピークは第1の分析種に対応し、第2のピークは第2の分析種に対応することになる。同様に、比の値に第2のピーク面積を乗じて、その積の値が第1のピーク面積に対応するかどうかを調べることができ、そのようになる場合、第2のピークは第1の分析種に対応し、第1のピークは第2の分析種に対応することになる。本明細書に記載のように、保持時間を用いることなく分析種同一性が計算されることに留意されたい。これにより、2種以上のクロマトグラフィーカラムについて分析種同一性を自動的に計算することが可能になる。
【0026】
特定の状況下では、検出器信号の応答感度が、標準液中の第1の分析種A1と、第2の分析種A2とで異なる可能性がある。式k×[A1]/[A2](式中、k=感度値である)を用いて、第1のキャリブラント濃度[A1]と第2のキャリブラント濃度[A2]とに基づく比を算出することができる。例えば、検出器は、単位濃度当たりの第1の分析種A1に対する感度の方が第2の分析種A2に対する感度より10倍高く、従って、k=10である。ピーク面積比2:1(A1:A2)の標準液を構成するために、第2のキャリブラント濃度[A2]は第1のキャリブラント濃度[A1]より5倍高い必要がある。上記式を用いて、比2を計算することができる(例えば、10×1/5=2)。従って、工程108を行い、検出器で第1の分析種A1に対する感度と第2の分析種A2に対する感度が異なるとき、キャリブラント濃度と感度値とに基づく比を計算して分析種同一性を判定することができる。
【0027】
標準液のピークの化学的同一性を判別したところで、保持時間に基づいて分析種時間間隔を計算することができる(工程110)。分析種時間間隔を使用して、試料溶液のクロマトグラフィーピークの化学的同一性を判別することができる。さらに、分析種時間間隔を使用して積分パラメータを設定し、ピーク下の面積を算出することができる。それぞれ第1の保持時間t1と第2の保持時間t2に基づいて、第1の分析種時間間隔t
AN1と第2の分析種時間間隔t
AN2を計算することができる(
図4のクロマトグラムA)。より詳細には、第1の分析種時間間隔t
AN1は、
図4に示すように、第1の上限t
UL1と第1の下限t
LL1とを有することができる。第1の上限t
UL1は第1の保持時間t1+第1の保持時間t1の第1の所定の割合であってもよく、第1の下限t
LL1は第1の保持時間t1−第1の保持時間t1の第1の所定の割合であってもよい。一実施形態では、第1の所定の割合は約0.05〜約0.2の範囲であってもよい。例えば、第1の保持時間の第1の所定の割合は0.1×t1であってもよい。
【0028】
第1の分析種時間間隔t
AN1と同様に、第2の分析種時間間隔t
AN2は、
図4に示すように、第2の上限t
UL2と第2の下限t
LL2とを有することができる。第2の上限t
UL2は第2の保持時間t2+第2の保持時間t2の第2の所定の割合であってもよく、第2の下限t
LL2は第2の保持時間t2−第2の保持時間t2の第2の所定の割合であってもよい。第2の所定の割合は約0.05〜約0.2の範囲であってもよい。例えば、第2の保持時間の第2の所定の割合は0.1×t2であってもよい。
【0029】
工程110の後、方法100は、クロマトグラフィーカラムの種類を自動的に判定する任意選択的な工程112に移行しても、または
図2に示す試料溶液を分析する自動的方法200に移行してもよい。任意選択的な工程112については後述することに留意されたい。
図2に示すように、方法200は、試料を注入する工程(工程202)と、試料をクロマトグラフィーにより分離する工程(工程204)と、試料のクロマトグラフィーピークを測定する工程(工程206)と、試料のピークの分析種同一性を自動的に判定する工程(工程208)と、試料のピークに対応する分析種濃度を自動的に算出する工程(工程210)とを含んでもよい。
【0030】
試料をクロマトグラフィー分離器に注入することができ、試料は、例えば、第1の分析種と第2の分析種などの1種以上の分析種を含む(工程202)。試料をクロマトグラフィー分離器内で分離することができる(工程204)。検出器は分離された分析種を、関連する保持時間を有するクロマトグラフィーピークの形態で、検出器を用いて測定することができる(工程206)。一実施形態では、
図4のクロマトグラムBに示すように、それぞれ第3の保持時間t3と第4の分析種保持時間t4を有する第3のピークP3と第4のピークP4を検出器で測定することができる。次いで、関連する保持時間が特定の分析種時間間隔内に入るとき、測定したピークの分析種同一性をシステムで自動的に判定することができる(工程208)。分析種同一性を判定した後、それをソフトウェアユーザーインターフェースを介して使用者に出力することができる。
【0031】
分析種同一性自動判定工程208では、本方法は、第3の保持時間t3が第1の分析種時間間隔t
AN1に入る場合は第3のピークP3が第1の分析種に対応するかどうか、または第3の保持時間t3が第2の分析種時間間隔t
AN2に入る場合、第3のピークP3が第2の分析種に対応することを判定する。保持時間がt
LLより大きく、t
ULより小さい場合、保持時間は分析種時間間隔に入ることに留意されたい。本方法は、第4の保持時間t4が第1の分析種時間間隔t
AN1に入る場合は第4のピークP4が第1の分析種に対応するかどうか、または第4の保持時間t4が第2の分析種時間間隔t
AN2に入る場合は第4のピークP4が第2の分析種に対応することも判定する。
【0032】
試料のピークの分析種同一性を判定する方法を説明してきたが、以下では、試料ピークの分析種濃度を自動的に算出する方法である工程210について説明する。第1のピーク、第2のピーク、第3のピーク、および第4のピークの面積またはピーク高さに基づいて、試料の第1の分析種濃度と第2の分析種濃度を計算する。多くの場合、分析種濃度の計算にピーク面積を使用し、ここで、ピーク面積は分析種時間間隔中の信号の積分である。しかし、他の場合には、ピーク高さを使用して回帰分析により分析種濃度を計算できるとき、ピーク面積ではなくピーク高さを使用する方が好都合なことがある。一実施形態では、第1のピーク面積と第2のピーク面積を使用して、回帰分析により第1の分析種と第2の分析種の校正係数を求めることができる。校正後、第3のピーク面積と第4のピーク面積を使用し、求められた校正係数を用いて試料の第1の分析種濃度と第2の分析種濃度を計算することができる。
【0033】
工程210後、方法200は、再度、方法200の実施に移行し、もう一度試料注入を行ってもよく、またはそれは再校正方法300に移行してもよい。試料注入を所定の回数行ったとき、所定の時間が経過した後、またはカラム、溶離液組成、もしくは温度などのクロマトグラフィーパラメータが変化した後、本方法200は再校正方法300に移行してもよい。一実施形態では、標準物質の校正100を実施してから経過した所定の時間は10分〜約8時間の範囲であってもよい。
【0034】
図3に示すように、方法300は標準物質を再注入する工程(工程302)と、標準物質のクロマトグラフィーによる分離を繰り返す工程(工程304)と、標準物質のクロマトグラフィーピークの測定を繰り返す工程(工程306)と、保持時間に基づいて分析種時間間隔を再計算する工程(工程308)と、標準物質の保持時間と再注入された標準物質の保持時間との絶対値差分を求める工程(工程310)とを含んでもよい。絶対値差分が所定の閾値以下である場合、方法300は再計算した分析種時間間隔を用いて方法200に戻る。しかし、絶対値差分が所定の閾値より大きい場合、方法300はクロマトグラフィーカラムの交換が必要であるというメッセージを出力する(工程312)。工程310は、保持時間の変化が小さく、クロマトグラフィーカラムの性能仕様と一致した通常の操作上のばらつきの一部であるかどうかを判定し、その場合、再校正は適切であることに留意されたい。しかし、保持時間の変化がかなり大きくなり、正常な操作上のばらつきの範囲を越え、クロマトグラフィーカラムを新しいものと交換する必要があることを示すことがある。所定の閾値は絶対値差分(例えば、保持時間の絶対的時間シフト)に基づいても、または絶対値%差(absolute % difference)に基づいてもよいことに留意されたい。絶対値%差では、それは、主要分析種の保持時間などの、特定の保持時間の約5%〜約50%の範囲であってもよい。
【0035】
工程306に関して、検出器は分離された分析種を、関連する保持時間を有するクロマトグラフィーピークの形態で、検出器を用いて測定することができる。一実施形態では、
図4のクロマトグラムCに示すように、それぞれ第5の保持時間t5と第6の分析種保持時間t6を有する第5のピークP5と第6のピークP6を検出器で測定することができる。
【0036】
工程308に関して、それぞれ第5の保持時間t5と第6の保持時間t6に基づいて、第1の分析種時間間隔t
AN1と第2の分析種時間間隔t
AN2を再計算することができる。
図4のクロマトグラムCに示すように、第1の分析種時間間隔t
AN1と第2の分析種時間間隔t
AN2はドリフトまたは他のクロマトグラフィーパラメータ変化のためシフトする可能性がある。
【0037】
工程310に関して、第5の保持時間t5と第1の保持時間t1との絶対値差分が第1の所定の閾値より大きいとき、または第6の保持時間t6と第2の保持時間t2との絶対値差分が第2の所定の閾値より大きいとき、クロマトグラフィー分離器を交換する必要があるというメッセージをコンピュータ画面上に出力することができる。あるいは、P1の絶対値%差は、t5からt1を減じ、それをt1で除し、100を乗じて、その絶対値を取ること(即ち、
【数1】
)により計算することができる。P2の絶対値%差は、t6からt2を減じ、それをt2で除し、100を乗じて、その絶対値を取ること(即ち、
【数2】
)により計算することができる。
【0038】
分析種保持時間の変化に加えて、他の基準を、カラムを交換すべきときを特定するための判断基準として使用することができる。例えば、
図4の第1のピークと第2のピークなどの1対のピークが、指定された最小分離能または指定された最小保持時間を有する必要があり得、これらのパラメータのどちらかが工場で設定された最小値未満、または使用者が設定した最小値未満になったとき、ソフトウェアで使用者に自動的に通知することができる。
【0039】
前述のように、使用者は、方法100に使用される標準液に関連する校正パラメータを入力することができる。しかし、RFIDタグを使用して、これらのパラメータをシームレスに且つ自動的に転送することができる。一実施形態では、標準液はRFIDタグを有する容器に収容される。RFIDタグは関連する校正パラメータを有するメモリ部分を有することができ、情報をクロマトグラフィーシステムに転送することができる。このような情報は、第1の分析種と第2の分析種の同一性、ならびに第1のキャリブラント濃度および第2のキャリブラント濃度を含むことができる。あるいは、情報は、システムで標準物質の関連パラメータを特定することを可能にする部品番号または数値コードであってもよい。クロマトグラフィーシステムは、データをシステムに転送することができるようにRFIDタグを無線で問い合わせるまたはポーリングすることができるRFID読み取り装置をオートサンプラー内に備えてもよい。あるいは、標準物質容器を指定された標準物質ホルダに入れた後、標準物質容器からの情報が機器で自動的に読み取られるように、標準物質容器は機器に関連する指定された記憶位置を有することができる。さらに、希釈情報も校正ソフトウェアに自動的にロードされるように、標準物質の希釈倍率も標識情報にコードすることができる。
【0040】
図1の工程112を参照すると、方法100はまた、クロマトグラフィーカラムの種類を判別する工程も含むことができる。例えば、その種類としては、IonPac AS4A−SCカラム、IonPac AS12Aカラム、またはIonPac AS14カラム(Thermo Scientific Dionex,Sunnyvale,California,USAから市販)を挙げることができる。以下では、3種の分析種を含有する標準液を用いてクロマトグラフィーカラムの種類の自動判定を行う方法100について説明する。標準液は、第1のキャリブラント濃度を有する第1の分析種と、第2のキャリブラント濃度を有する第2の分析種と、第3のキャリブラント濃度を有する第3の分析種とを含有する。クロマトグラフィー分離器内で標準物質を分離した(工程104)後、少なくとも2つのピークを検出器で測定することができ、各ピークは保持時間、ピーク高さ、およびピーク面積を有する(工程106)。2種のこれらの分析種が共溶出する場合、ピークが2つしかない場合があることに留意されたい。次に、測定した各ピークの分析種同一性を自動的に判定することができる(工程108)。本方法は、標準液の特定の分析種への第1のピーク、第2のピーク、および第3のピーク(存在する場合)の対応を、測定したピークの面積または高さのいずれかと、第1のキャリブラント濃度、第2のキャリブラント濃度、および第3のキャリブラント濃度に基づく1つ以上の比とに基づいて判定する。試料中の分析種の溶出順を判定した後、クロマトグラフィーカラムの種類を自動的に判別することができる(工程112)。溶出順は、クロマトグラフィーカラムから出力されたピークの時系列順を示す。様々な種類のカラムに関する分析種の溶出順をクロマトグラフィーシステムのメモリ部分に記憶できることに留意されたい。
【0041】
クロマトグラフィーカラム同定の一例として、標準液は4種の分析種を有することができる。この標準液は第1の分析種としてフッ化物イオン、第2の分析種として塩化物イオン、第3の分析種として臭化物イオン、および第4の分析種として硝酸イオンを有する。第1の分析種、第2の分析種、第3の分析種、および第4の分析種は、それぞれ第1の分析種濃度、第2の分析種濃度、第3の分析種濃度、および第4の分析種濃度を有する。第2の分析種濃度は第1の分析種濃度より2倍高くてもよく、第3の分析種濃度は第1の分析種濃度より3倍高くてもよく、第4の分析種濃度は第1の分析種濃度より4倍高くてもよい。
【0042】
分析種ピークの溶出順はクロマトグラフィーカラムの種類により変わり得ることに留意されたい。例えば、第1の種類のカラムを用いると、溶出順は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、および硝酸イオンであり、フッ化物イオンに対して正規化したピーク面積比は1:2:3:4となり得る。しかし、第2の種類のクロマトグラフィーカラムを用いると、溶出順は、フッ化物イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、および臭化物イオンに変化し、フッ化物イオンに対して正規化したピーク面積比は1:2:4:3となり得る。標準液を同定するための自動同定プロセスは保持時間値ではなく、ピーク面積比に基づくため、本明細書に記載の校正方法は、異なる溶出時間順を有する2種以上のクロマトグラフィーカラムで行うことができる。
【0043】
分析種ピークは、クロマトグラフィーカラムの種類により共溶出し得ることにも留意されたい。例えば、第3の種類のカラムを用いると、4種の分析種のうちの2種が共溶出し得る。臭化物イオンと硝酸イオンは一緒に共溶出し、その結果、溶出順はフッ化物イオン、塩化物イオン、および臭化物イオン/硝酸イオンとなり、フッ化物イオンに対して正規化したピーク面積比は1:2:7となり得る。
【0044】
上記標準液の自動分析で、標準液クロマトグラムに関して多くの順列(permutations)を分析することができる。2種の分析種が共溶出する場合、自動分析は、1:2:7、1:5:4、3:3:4、5:2:3等を含む順列に関して照会することができる。従って、同じ標準液を使用し、2種以上のクロマトグラフィーカラムについて自動的に分析することができる。
【0045】
さらに、カラム選択性パラメータおよび溶出順が分かると、標準物質情報と表にした異なる選択性を有する1組のカラムに関する保持情報との組み合わせも可能となり、この参照情報と比較するだけでカラムの種類の判別を行うことが可能となる。
【0046】
方法100を参照すると、ソフトウェアでピークを正確に割り当てるためには、ソフトウェアが標準物質の同一性を認識している必要がある。標準物質は部品番号もしくは数値コードで数値的に識別することができるか、または標準物質はバーコードもしくはRFIDタグで識別することができる。このような情報が標準物質を収容するオートサンプラーバイアル上に配置されている場合、機器を校正する前に数値コード、RFIDタグまたはバーコードを機器に呈示することができるか、または機器でRFIDタグもしくはバーコードを自動的に読み取ることができる。あるいは、標準物質容器を指定された標準物質ホルダに入れた後、標準物質容器からの情報が機器で自動的に読み取られるように、標準物質容器は機器に関連する指定された記憶位置を有することができる。さらに、希釈情報も校正ソフトウェアに自動的にロードされるように、標準物質の希釈倍率を標準物質情報にコードすることもできる。
【0047】
以下では、本明細書に記載の本発明に使用するのに好適な一般的なクロマトグラフィーシステムについて説明する。
図5は、オートサンプラー522、ポンプ502、電解質溶離液生成装置503、触媒式除去装置508、脱気アセンブリ510、注入弁512、クロマトグラフィー分離装置514、検出器516、マイクロプロセッサ518、およびRFID読み取り装置524を備える、クロマトグラフィーシステム500の一実施形態を説明する。リサイクルライン520を使用して、液体を検出器516の出口から脱気アセンブリ510の入口に送液してもよい。
【0048】
液体供給源から液体をポンプで送液し、電解質溶離液生成装置503に流体接続されるように、ポンプ502を構成することもできる。電解質溶離液生成装置503は、例えば、KOHまたはメタンスルホン酸などの溶離液を生成するように構成される。触媒式除去装置508は、触媒反応によりガスを除去するように構成される。触媒式除去装置508は、例えば、水素と酸素を結合させて水にし、過酸化水素およびオゾンを分解することができる白金または他の材料などの触媒を含んでもよい。触媒式除去装置に関する詳細は、米国特許第7,329,346号明細書および米国特許第8,043,507号明細書に記載されており、これらは参照により本明細書に援用される。脱気アセンブリ510を使用して、触媒式除去装置508で除去されない残留ガスを除去してもよい。一実施形態では、残留ガスは二酸化炭素、水素、および酸素であってもよい。検出器516の下流にあるリサイクルライン520でリサイクルされた液体を使用して、脱気アセンブリ510からガスを排出することができる。注入弁512を使用して、一定量の液体試料を溶離液流に注入することができる。クロマトグラフィー分離装置514を使用して、液体試料中に存在する様々なマトリックス成分を目的の分析種から分離することができる。クロマトグラフィー分離装置514の出口を検出器516に流体接続し、液体試料の分離された化学成分が存在するかどうかを判断することができる。
【0049】
検出器516は、紫外可視分光計、蛍光分光計、電気化学検出器、電気伝導度検出器、電荷検出器、またはこれらの組み合わせの形態であってもよい。荷電バリア(charged barrier)および2つの電極に基づく電荷検出器に関する詳細は、米国特許出願公開第20090218238号明細書に記載されており、参照によりその内容全体が本明細書に援用される。リサイクルライン520が必要でない状況では、検出器516は質量分析計または荷電化粒子検出器の形態であってもよい。荷電化粒子検出器は流出液流(effluent flow)を噴霧して荷電粒子を生成し、これを分析種濃度に比例した電流として測定することができる。荷電化粒子検出器に関する詳細は、米国特許第6,544,484号明細書および米国特許第6,568,245号明細書に記載されており、これらは参照によりその内容全体が本明細書に援用される。
【0050】
電気回路はマイクロプロセッサ518とメモリ部分とを備えてもよい。マイクロプロセッサ518を使用して、クロマトグラフィーシステム500の操作を制御することができる。マイクロプロセッサ518はクロマトグラフィーシステム500に内蔵されていても、またはクロマトグラフィーシステム500と通信するパーソナルコンピュータの一部であってもよい。マイクロプロセッサ518は、オートサンプラー522、RFID読み取り装置524、ポンプ502、電解質溶離液生成装置503、注入弁512、および検出器516などのクロマトグラフィーシステムの1つ以上の構成要素と通信し、それらを制御するように構成されてもよい。クロマトグラフィーシステム500は、標準液と試料溶液を分析し、化学成分および関連する濃度値を特定するのに使用される特定の装置であることに留意されたい。
【0051】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載してきたが、当業者にはこのような実施形態は例として提供されているに過ぎないことが明らかであろう。多くの変形形態、変更形態、および代替形態が当業者に想到されるが、これらは本発明から逸脱するものではない。本発明を特定の変形形態および説明図に関して説明してきたが、本発明は記載される変形形態および図に限定されるものではないことが当業者には分かるであろう。さらに、前述の方法および工程が特定の順番で行われる特定の事象を示す場合、特定の工程の順序を変更してもよく、このような変更は本発明の変形形態によるものであることが当業者には分かるであろう。さらに、これらの工程の幾つかは、前述のように逐次的に行うことができるだけでなく、可能な場合、並列処理で同時に行うこともできる。従って、本発明の変形形態が特許請求の範囲に記載されている本発明の開示および均等物の趣旨に入る限り、本特許はそれらの変形形態も包含するものとする。