特許第6357550号(P6357550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6357550
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】レベリングバルブ
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/10 20060101AFI20180702BHJP
   F15B 15/14 20060101ALN20180702BHJP
【FI】
   B61F5/10 D
   !F15B15/14 335B
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-12793(P2017-12793)
(22)【出願日】2017年1月27日
【審査請求日】2018年5月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祐介
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−214256(JP,A)
【文献】 実開昭50−152084(JP,U)
【文献】 特開2018−25273(JP,A)
【文献】 特開2017−190054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/10
F15B 15/14
F16K 3/24
B60G 17/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体と台車との間に設けられる空気ばねの高さを調整するレベリングバルブであって、
前記空気ばねと連通する空気ばね通路が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに形成された収容孔内に摺動自在に収容され、前記台車に対する前記車体の相対変位量に応じて前記収容孔内を移動するピストンと、
前記ハウジング及び前記ピストンに設けられ、前記収容孔の中心軸方向に沿って前記ピストンを案内しつつ、前記ピストンが前記中心軸を中心に回転することを規制する回転規制部と、を備えることを特徴とするレベリングバルブ。
【請求項2】
前記回転規制部は、
前記ハウジング及び前記ピストンの何れか一方に設けられる規制部材と、
前記ハウジング及び前記ピストンの何れか他方に設けられ、前記中心軸方向において前記規制部材と摺接する摺接部と、を有し、
前記中心軸を中心とする前記ピストンの回転は、前記規制部材と前記摺接部とが当接することにより規制されることを特徴とする請求項1に記載のレベリングバルブ。
【請求項3】
前記摺接部は、前記ピストンの外周面または前記収容孔の内周面に前記中心軸に沿って凹状に形成され、前記規制部材を挟んで対向する二つの平面を有し、
前記中心軸を中心とする前記ピストンの回転は、前記二つの平面の何れか一方と前記規制部材とが当接することにより規制されることを特徴とする請求項2に記載のレベリングバルブ。
【請求項4】
前記収容孔の一端側に挿入される第1支持部と、前記収容孔の他端側に挿入される第2支持部と、をさらに備え、
前記規制部材は、前記中心軸方向に沿って前記収容孔内に配置され、前記規制部材の両端は、前記第1支持部と前記第2支持部とにより支持されることを特徴とする請求項2または3に記載のレベリングバルブ。
【請求項5】
前記中心軸を中心とする前記規制部材の周方向及び径方向の移動は、前記第1支持部及び前記第2支持部の少なくとも一方により規制されることを特徴とする請求項4に記載のレベリングバルブ。
【請求項6】
前記規制部材は、前記収容孔の内周面の周方向に沿って形成された断面円弧状の部材であることを特徴とする請求項4または5に記載のレベリングバルブ。
【請求項7】
前記規制部材は、パイプ材を軸方向に切断することにより形成されることを特徴とする請求項6に記載のレベリングバルブ。
【請求項8】
前記摺接部は、前記ピストンの外周面に前記中心軸に沿って平面状に形成される平面を有し、
前記規制部材は、前記ハウジングに設けられており、前記中心軸に沿って平面状に形成され前記平面に対向する平面部を有し、
前記中心軸を中心とする前記ピストンの回転は、前記平面と前記平面部とが当接することにより規制されることを特徴とする請求項2に記載のレベリングバルブ。
【請求項9】
前記規制部材は、前記ハウジング及び前記ピストンの何れか一方と一体的に形成されることを特徴とする請求項2、3または8の何れか1つに記載のレベリングバルブ。
【請求項10】
前記ピストンに固定され、前記中心軸に沿って延びるロッド部材と、
前記ピストンと前記ロッド部材とを結合させる結合部材と、をさらに備え、
前記中心軸から前記規制部材までの最短距離は、前記中心軸を中心とする前記結合部材の最大半径よりも大きいことを特徴とする請求項2から9の何れか1つに記載のレベリングバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベリングバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両等の車体と台車との間に設けられる空気ばねに対して圧縮空気を給排することで、車体の高さを一定に保つレベリングバルブが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のレベリングバルブでは、車体の荷重変化により空気ばねによる車体の支持高さが変化すると、変化量に応じてロータが回動し、ロータの回動運動は、ピンを介してピストンの軸方向への往復運動へと変換される。空気ばねに接続された空気ばね通路には、ピストンの移動方向、すなわち、車体の高さの変化方向に応じて、空気圧供給源に接続された供給通路及び大気に開放される排気通路のいずれかが選択的に接続される。
【0004】
また、このレベリングバルブのピストンの外周には、ロータの回動軸に対して直交する平面部が形成されている。この平面部がロータの端面に接することによって、ピストンは中心軸回りに回転することなく軸方向に移動することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−52889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のレベリングバルブにおいて、ロータの回動軸とピストンの移動中心軸とは直交関係にあるため、ロータを円滑に回動させるには、ピストンの平面部とロータの端面との間に所定の大きさの隙間を設ける必要がある。そして、この隙間の大きさが、組み付け誤差やロータの摺動部の摩耗等によって大きくなると、ピストンとロータとは面接触することなく、局所的に接触し、ピストン及びロータは部分的に摩耗し易い状態となる。
【0007】
ピストン及びロータの摩耗等に起因してピストンとロータとの間隔がさらに拡がり、ピストンがロータに接触できない状態となると、ピストンは中心軸回りに回転する。このようにピストンが回転すると、ロータの変位がピストンに対して正常に伝達されずレベリングバルブの作動が不安定になるため、結果として、車体の高さを一定に保つことが困難になるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、レベリングバルブを安定して作動させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、空気ばねと連通する空気ばね通路が形成されたハウジングと、ハウジングに形成された収容孔内に摺動自在に収容されるピストンと、ハウジング及びピストンに設けられ、収容孔の中心軸方向にピストンが移動することを許容しつつ、ピストンが中心軸を中心に回転することを規制する回転規制部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
第1の発明では、ハウジング及びピストンに設けられる回転規制部によって、ピストンが収容孔の中心軸を中心に回転することが規制される。このように、ピストンが回転することが防止されるため、ロータの変位はピストンに対して常に正常に伝達される。この結果、レベリングバルブを安定して作動させることができる。
【0011】
第2の発明は、回転規制部が、ハウジング及びピストンの何れか一方に設けられる規制部材と、ハウジング及びピストンの何れか他方に設けられ、中心軸方向において規制部材と摺接する摺接部と、を有し、中心軸を中心とするピストンの回転が、規制部材と摺接部との当接により規制されることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、ハウジング及びピストンの何れか一方に設けられる規制部材と、ハウジング及びピストンの何れか他方に設けられる摺接部と、によってピストンが収容孔の中心軸を中心に回転することが規制される。このように、ピストンが回転することが防止されるため、ロータの変位はピストンに対して常に正常に伝達される。この結果、レベリングバルブを安定して作動させることができる。
【0013】
第3の発明は、摺接部が、ピストンの外周面または収容孔の内周面に中心軸に沿って凹状に形成され、規制部材を挟んで対向する二つの平面を有し、中心軸を中心とするピストンの回転が、二つの平面の何れか一方と規制部材との当接により規制されることを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、ピストンに対して中心軸を中心に回転させる力が作用したとしても、二つの平面の何れか一方と規制部材とが当接することによって、ピストンが中心軸を中心に回転することは阻止される。この結果、ロータの変位はピストンに対して常に正常に伝達されることになるため、レベリングバルブを安定して作動させることができる。
【0015】
第4の発明は、収容孔の一端側に挿入される第1支持部と、収容孔の他端側に挿入される第2支持部と、をさらに備え、規制部材が、中心軸方向に沿って収容孔内に配置され、規制部材の両端が、第1支持部と第2支持部とにより支持されることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、規制部材は、収容孔内において、第1支持部と第2支持部とにより保持される。このように、ピストンの回転を規制する規制部材を、簡素な構成によって収容孔内の規定の位置に固定することができる。
【0017】
第5の発明は、中心軸を中心とする規制部材の周方向及び径方向の移動が、第1支持部及び第2支持部の少なくとも一方により規制されることを特徴とする。
【0018】
第5の発明では、規制部材の周方向及び径方向の移動は、第1支持部及び第2支持部の少なくとも一方により規制される。このように、ピストンの回転を規制する規制部材が規定の位置から周方向や径方向に動いてしまうことが防止されるため、ピストンが中心軸を中心に回転することをより確実に防止することができる。
【0019】
第6の発明は、規制部材が、収容孔の内周面の周方向に沿って形成された断面円弧状の部材であることを特徴とする。
【0020】
第6の発明では、規制部材は、断面円弧状の部材によって形成される。このように、規制部材は、曲げモーメントに対する剛性が比較的高い断面形状を有しているため、ピストンに対して中心軸を中心に回転させる力が作用したとしても変形しにくい。この結果、ピストンが中心軸を中心に回転することをより確実に防止することができる。
【0021】
第7の発明は、規制部材が、パイプ材を軸方向に切断することにより形成されることを特徴とする。
【0022】
第7の発明では、規制部材は、中心軸に沿って延びる断面円弧状の部材によって形成されるため、パイプ材を軸方向に切断することによって容易に形成することができる。
【0023】
第8の発明は、摺接部が、ピストンの外周面に中心軸に沿って平面状に形成される平面を有し、規制部材が、ハウジングに設けられており、中心軸に沿って平面状に形成され平面に対向する平面部を有し、中心軸を中心とするピストンの回転が、平面と平面部との当接により規制されることを特徴とする。
【0024】
第8の発明では、ピストンに対して中心軸を中心に回転させる力が作用したとしても、ピストンに設けられた平面とハウジングに設けられた平面部とが当接することによって、ピストンが中心軸を中心に回転することは阻止される。このように簡素な構成によって、ピストンが中心軸を中心に回転することを確実に防止することができる。
【0025】
第9の発明は、規制部材が、ハウジング及びピストンの何れか一方と一体的に形成されることを特徴とする。
【0026】
第9の発明では、規制部材は、ハウジング及びピストンの何れか一方と一体的に形成される。このため、規制部材を固定するための加工を施す必要がないとともに、部品点数が減少するため、レベリングバルブの製造コストを低減させることができる。
【0027】
第10の発明は、ピストンに固定され、中心軸に沿って延びるロッド部材と、ピストンとロッド部材とを結合させる結合部材と、をさらに備え、中心軸から規制部材までの最短距離は、中心軸を中心とする結合部材の最大半径よりも大きいことを特徴とする。
【0028】
第10の発明では、中心軸から規制部材までの最短距離は、中心軸を中心とする結合部材の最大半径よりも大きく設定される。このように中心軸から規制部材までの最短距離を設定することによって、ピストンとロッド部材とを結合させる結合部材と規制部材とが干渉することを防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、レベリングバルブを安定して作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るレベリングバルブの取付図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係るレベリングバルブの軸方向の断面図である。
図3図3は、図2のIII−III線に沿うレベリングバルブの断面図である。
図4図4は、図2のIV−IV線に沿うレベリングバルブの断面図である。
図5図5は、図2のV−V線に沿うレベリングバルブの断面図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係るレベリングバルブの変形例の図3に相当する部位の断面図である。
図7図7は、本発明の第1実施形態に係るレベリングバルブの変形例の図4に相当する部位の断面図である。
図8図8は、本発明の第1実施形態に係るレベリングバルブの変形例の図5に相当する部位の断面図である。
図9図9は、図8のIX−IX線に沿うレベリングバルブの断面図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態に係るレベリングバルブの図3に相当する部位の断面図である。
図11図11は、本発明の第3実施形態に係るレベリングバルブの図3に相当する部位の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0032】
<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るレベリングバルブ100の概要について説明する。
【0033】
レベリングバルブ100は、鉄道車両の車体と台車との間に設けられる空気ばねの伸縮を調整して、台車に対する車体の高さを一定に維持するものである。
【0034】
レベリングバルブ100は、図1に示すように、車体1側に取り付けられ、レバー4と連結棒5とを介して台車2に連結される。車体1の荷重変化により空気ばね3が伸縮して車体1の高さが変化すると、この変化が連結棒5及びレバー4を介してレベリングバルブ100に伝達される。
【0035】
車体荷重が増加して空気ばね3が収縮した場合、すなわち、台車2に対する車体1の高さが規定の高さよりも低くなった場合には、レバー4が図1に示される中立位置から上方(図1の矢印A方向)に押し上げられる。このようにレバー4が上方に変位すると、空気ばね3に連通する空気ばね通路6と圧縮空気を供給する空気圧源としてのコンプレッサ7に連通する供給通路9とがレベリングバルブ100内において連通される。これにより、コンプレッサ7から空気ばね3へ圧縮空気が供給され、空気ばね3は伸長する。空気ばね3が伸長したことで台車2に対する車体1の高さが規定の高さになると、レバー4が中立位置に戻り、空気ばね3への圧縮空気の供給が停止される。
【0036】
一方、車体荷重が減少して空気ばね3が伸長した場合、すなわち、台車2に対する車体1の高さが規定の高さよりも高くなった場合には、レバー4が中立位置から下方(図1の矢印B方向)に引き下げられる。このようにレバー4が下方に変位すると、空気ばね通路6と排気通路8とがレベリングバルブ100内において連通される。排気通路8は一端が大気に開放されているため、空気ばね3内の圧縮空気は大気へと排出され、空気ばね3は収縮する。空気ばね3が収縮したことで台車2に対する車体1の高さが規定の高さになると、レバー4が中立位置に戻り、空気ばね3からの圧縮空気の排出が停止される。
【0037】
このように、レベリングバルブ100は、台車2に対する車体1の相対変位に伴って回動するレバー4の回動方向に応じて空気ばね通路6を供給通路9又は排気通路8に選択的に連通させている。これにより、車体1と台車2との間に生じた相対変位が減少し、台車2に対する車体1の高さは規定の高さに維持される。
【0038】
次に、図2図5を参照して、レベリングバルブ100の構成について説明する。図2は、レベリングバルブ100の軸方向の断面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿うレベリングバルブ100の断面を示す図であり、図4は、図2のIV−IV線に沿うレベリングバルブ100の断面の一部分を示す図であり、図5は、図2のV−V線に沿うレベリングバルブ100の断面の一部分を示す図である。
【0039】
レベリングバルブ100は、空気ばね通路6,供給通路9及び排気通路8が内部に形成されるハウジング10と、ハウジング10内に摺動自在に収容されるピストン20と、台車2に対する車体1の相対変位量をピストン20に伝達するロータ30と、ピストン20の移動方向に応じて空気ばね通路6を供給通路9又は排気通路8に選択的に連通させる給排弁40と、を備える。
【0040】
ハウジング10は、ピストン20が収容される収容孔11aが中心軸としての第1中心軸O1に沿って貫通して形成されるメインケース11と、メインケース11の一方の側面に取り付けられる第1キャップ部材12と、メインケース11の他方の側面に取り付けられる第2キャップ部材13と、を有する。メインケース11が車体1に図示しないボルトを介して取り付けられることでハウジング10は車体1に対して固定される。
【0041】
第1キャップ部材12は、図示しないボルトを介してメインケース11に取り付けられるフランジ部12aと、フランジ部12aから第1中心軸O1に沿って延び収容孔11aに挿入される円柱状の第1支持部としての挿入部12bと、を有する。第2キャップ部材13は、第1中心軸O1方向に貫通して形成される貫通孔13bを有し、貫通孔13bが収容孔11aと同心となるように図示しないボルトを介してメインケース11に取り付けられる。
【0042】
メインケース11及び第1キャップ部材12には、空気ばね通路6を構成する通路11c,11d,12cがそれぞれ形成される。これらの通路11c,11d,12cによって、空気ばね3は給排弁40と連通する。また、メインケース11及び第2キャップ部材13には、供給通路9を構成する通路11e,13aがそれぞれ形成される。これらの通路11e,13aによって、コンプレッサ7は給排弁40と連通する。なお、空気ばね通路6は、第1キャップ部材12を通ることなく、メインケース11のみに形成されていてもよい。同様に、供給通路9は、メインケース11を通ることなく、第2キャップ部材13のみに設けられていてもよい。
【0043】
また、メインケース11には、図3に示されるように、収容孔11aに対して径方向外側に開口する開口部11bが形成される。ハウジング10は、この開口部11bを覆ってメインケース11に取り付けられるカバー部材14をさらに有する。カバー部材14がメインケース11に取り付けられることにより、ロータ30が収容される収容空間15が画定される。
【0044】
カバー部材14には、収容空間15と外部とを連通する連通孔14aが形成される。連通孔14aは、給排弁40と外部とを連通させる排気通路8として機能する。連通孔14aには、外部からの異物の侵入を防止するためにフィルタ16が設けられる。
【0045】
給排弁40は、一端側がメインケース11の収容孔11aに挿入され他端側が第2キャップ部材13の貫通孔13bに挿入される筒状の弁ケース41と、第1中心軸O1に沿って延び、一端側がピストン20に固定され他端側が弁ケース41内に挿入されるバルブロッド42と、弁ケース41内に配置される弁体43,44と、により構成される。給排弁40の具体的な構成について、以下に説明する。
【0046】
弁ケース41は、収容孔11a内に挿入される第2支持部としての第1円筒部41aと、第2キャップ部材13内に挿入される第2円筒部41cと、第1円筒部41aと第2円筒部41cとの間に設けられ、第1円筒部41a及び第2円筒部41cよりも外径が大きく外周面に雄ねじが形成されたフランジ部41bと、を有する。
【0047】
弁ケース41は、収容孔11aの開口部に形成された雌ねじ部11fにフランジ部41bが螺合されることで、メインケース11に組み付けられる。メインケース11から突出した第2円筒部41cを覆うようにして第2キャップ部材13がメインケース11に固定されることで、フランジ部41bがメインケース11から抜け出ることが第2キャップ部材13によって規制される。この結果、弁ケース41がメインケース11から外れることが防止される。なお、メインケース11に対する弁ケース41の組み付けは、螺合に限定されず、フランジ部41bをメインケース11に嵌合することにより組み付けてもよいし、第2キャップ部材13によってフランジ部41bをメインケース11に対して押し付けることにより組み付けてもよい。
【0048】
また、弁ケース41の内部には、第1円筒部41a側に開口しバルブロッド42が挿入される第1挿入孔41dと、第1挿入孔41dに連続して形成され、第1挿入孔41dよりも内径が大きい第2挿入孔41eと、第1挿入孔41dと第2挿入孔41eとの接続部に形成される段差部41fと、が設けられる。
【0049】
第2挿入孔41eは、第2円筒部41c側で開口しており、第2挿入孔41eの開口端には、円柱状のプラグ48が挿入固定される。このように、第2挿入孔41eの開口端は、プラグ48によって閉塞される。
【0050】
段差部41fの内周寄りの部分には、第1中心軸O1を中心とする環状の第1弁座部41gがプラグ48側に向かって突出して形成される。また、段差部41fに対向するプラグ48の端面には、第1中心軸O1を中心とする環状の第2弁座部48aが段差部41f側に向かって突出して形成される。プラグ48には、一端が第2弁座部48aの内周側において開口し、他端がプラグ48の外周面において開口する通路48bが設けられる。
【0051】
第2挿入孔41e内には、第1弁座部41gに離着座する円盤状の弁体43と、第2弁座部48aに離着座する円盤状のチェック弁体44と、弁体43を第1弁座部41gに向けて付勢するとともにチェック弁体44を第2弁座部48aに向けて付勢するスプリング45と、が設けられる。つまり、スプリング45の付勢力によって、第1弁座部41gに弁体43が着座し、第2弁座部48aにチェック弁体44が着座すると、第2挿入孔41e内の空間は閉塞された状態となる。
【0052】
弁体43は、外周面において第2挿入孔41eに摺動支持されるとともに、外周面に設けられた図示しない切欠部を通じて弁体43で仕切られる空間同士を連通している。チェック弁体44も弁体43と同様に外周面に設けられた図示しない切欠部を通じてチェック弁体44で仕切られる空間同士を連通している。
【0053】
弁ケース41には、第2キャップ部材13に形成される通路13aとプラグ48に形成される通路48bとを連通する通路41hが形成される。コンプレッサ7から吐出された圧縮空気は、これらの通路11e,13a,41h,48bを通じて、チェック弁体44の上流に導かれる。
【0054】
チェック弁体44は、チェック弁体44の上流側の圧力、すなわち、コンプレッサ7側の圧力が、チェック弁体44の下流側の圧力よりも高いときには、スプリング45の付勢力に抗して第2弁座部48aから離間し、供給通路9と第2挿入孔41e内の空間とを連通させる。反対に、コンプレッサ7側の圧力がチェック弁体44の下流側の圧力よりも低いときには、チェック弁体44は、第2弁座部48aに着座し、供給通路9と第2挿入孔41e内の空間との連通を遮断する。このようにチェック弁体44は、弁体43に向かう流れのみを許容する逆止弁として機能する。
【0055】
バルブロッド42は、棒状部材であり、弁ケース41により摺動自在に支持される摺動部42aと、摺動部42aよりも外径が小さく形成され、ピストン20に挿入される挿入部42bと、を有する。ピストン20から突出した挿入部42bの端部に結合部材としての鍔付きナット46が組み付けられることにより、バルブロッド42は、ピストン20に対して固定される。具体的には、鍔付きナット46は、挿入部42bの外径よりも外径D1が大きい鍔部46aを有しており、挿入部42bの端部に鍔付きナット46が螺合されることで、鍔部46aと摺動部42aとによりピストン20が挟持された状態となる。なお、結合部材としては鍔付きナット46に限定されず、挿入部42bの外径よりも外径が大きいワッシャとナットとが組み合わせられたものであってもよいし、挿入部42bに係止されることで挿入部42bの外周面から少なくとも一部が径方向に突出する止め輪や割りピンが用いられてもよい。
【0056】
摺動部42aには、弁ケース41内に挿入される側の端面42cにおいて開口する非貫通孔42dと、非貫通孔42d内の空間と収容孔11a内の空間とを連通する複数の貫通孔42eと、が形成される。つまり、非貫通孔42d内の空間は、貫通孔42e,収容孔11a,収容空間15及び連通孔14aを通じて、外部と連通する。
【0057】
バルブロッド42の端面42cは、弁体43に対して離接可能であり、端面42cが弁体43に接しているとき、非貫通孔42dの開口端は弁体43によって閉塞される。
【0058】
また、バルブロッド42には、弁ケース41に挿入される先端の外周に大径部42fが形成されるとともに、大径部42fに連続して大径部42fより小径の小径部42gが形成される。これに対して、弁ケース41の第1挿入孔41dには、大径部42fに対向する位置に縮径部41iが設けられ、小径部42gに対向する位置に拡径部41jが設けられる。
【0059】
大径部42fと縮径部41iとの間に形成された環状隙間を流れる空気流には、第1中心軸O1方向における環状隙間の流路長、すなわち、第1中心軸O1方向において大径部42fと縮径部41iとが重なり合う長さに応じた流路抵抗が付与される。ここで、大径部42fと縮径部41iとが重なり合う長さは、弁ケース41に対するバルブロッド42の変位量に応じて変化する。つまり、弁ケース41に対するバルブロッド42の変位が比較的小さく環状隙間の流路長が長い場合は空気が流れにくくなり、弁ケース41に対するバルブロッド42の変位が比較的大きく環状隙間の流路長が短い場合は空気が流れやすくなる。
【0060】
また、弁ケース41には、拡径部41jにおいて第1挿入孔41dに開口するとともに弁ケース41の外周面において開口し、第1挿入孔41d内の空間を、空気ばね通路6を構成する通路11cと連通させる貫通孔41kが複数形成される。つまり、第1挿入孔41dとバルブロッド42の外周面により囲まれる空間は、貫通孔41k及び通路11c,12c,11dを通じて、常時、空気ばね3と連通する。
【0061】
上記構成の給排弁40によれば、バルブロッド42の端面42cが弁体43に接するとともに、弁体43が第1弁座部41gに着座しているときには、空気ばね通路6と供給通路9との連通、及び空気ばね通路6と排気通路8との連通が遮断された状態となる。
【0062】
一方、バルブロッド42が弁ケース41に進入する方向(図2の矢印C方向)に移動し、バルブロッド42の端面42cが弁体43に接した状態で弁体43が第1弁座部41gから離座すると、空気ばね通路6と供給通路9とが連通し、空気ばね通路6と排気通路8との連通が遮断された状態となる。
【0063】
反対に、バルブロッド42が弁ケース41から退出する方向(図2の矢印D方向)に移動し、バルブロッド42の端面42cが弁体43から離れ、弁体43が第1弁座部41gに着座しているときには、空気ばね通路6と供給通路9との連通が遮断され、空気ばね通路6と排気通路8とが連通された状態となる。
【0064】
このように、給排弁40は、弁ケース41に対するバルブロッド42の移動に応じて、空気ばね通路6に対して供給通路9又は排気通路8を選択的に連通させるとともに、空気ばね通路6に対する供給通路9及び排気通路8の連通を遮断することが可能である。
【0065】
続いて、バルブロッド42を移動させるピストン20と、台車2に対する車体1の相対変位量をピストン20に伝達するロータ30について説明する。
【0066】
ピストン20は、バルブロッド42の挿入部42bが挿通する貫通孔20aが中央に形成された円筒状部材であり、収容孔11aによって第1中心軸O1方向に摺動自在に支持される。ピストン20の外周面の一部には、図3に示すように、断面形状が半月状のガイド溝21がピストン20の摺動方向(第1中心軸O1方向)に対して直交する方向に所定の幅を持って形成される。また、ピストン20にはその両側を連通する図示しない流路が形成される。これにより、ピストン20が第1中心軸O1方向に移動する際に、収容孔11a内の空気はこの流路を通じて移動することが可能である。
【0067】
ロータ30は、円筒状の本体部31と、本体部31の一方の端部から突出して形成され、本体部31の外径よりも小さな二面幅を有する四角柱状のボス部32と、本体部31の他方の端部に設けられたフランジ部33と、フランジ部33の外周面から径方向外側に向かって突出して形成されたアーム部34と、を有する。
【0068】
ロータ30は、図3に示すように、カバー部材14に設けられた軸受17,18を介して、支持孔14bにより本体部31が支持される。このように、ロータ30は、第1中心軸O1と直交する方向に延びる第2中心軸O2を中心として回動自在にハウジング10により支持される。
【0069】
また、ロータ30の回動中心である第2中心軸O2からオフセットしたロータ30のアーム部34には、ピン35が設けられる。ピン35は、一端側がアーム部34に圧入され、他端側がアーム部34から突出した状態で取り付けられる。アーム部34から突出したピン35の他端側は、ロータ30がハウジング10に組み付けられた状態で、図3に示すように、ピストン20のガイド溝21内に挿入される。
【0070】
ボス部32は、図1に示すように、レバー4に形成された嵌合穴4aに嵌合される。したがって、レバー4の回動に伴ってボス部32が回動すると、アーム部34に圧入されたピン35は、第2中心軸O2を中心として、図2に示す矢印Eまたは矢印Fの方向に移動する。ピン35はピストン20のガイド溝21に接しているため、ロータ30の回動は、ピン35を介してピストン20に伝達され、ピストン20はピン35の移動に伴って収容孔11a内を第1中心軸O1方向(図2の矢印C,Dの方向)に移動する。
【0071】
また、レベリングバルブ100は、第1中心軸O1方向に沿ってピストン20を案内しつつ、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することを規制する回転規制部50をさらに備える。以下に回転規制部50について説明する。
【0072】
回転規制部50は、メインケース11の収容孔11a内に配置される規制部材としての規制板51と、ピストン20の外周面に形成され、規制板51が摺接する摺接部としての摺接溝52と、を有する。
【0073】
規制板51は、第1中心軸O1に沿って延びる板状部材であり、第1キャップ部材12の挿入部12bに当接する第1端面51aと、弁ケース41の第1円筒部41aに当接する第2端面51bと、を有する。規制板51の断面は、図3に示すように、収容孔11aの内周面に沿って周方向に延びる円弧状であり、規制板51は、周方向において摺接溝52に当接する二つの規制面51cと、収容孔11aの内周面に当接する円弧状の外面51dと、外面51dと同心である円弧状の内面51eと、を有する。このように、規制板51は、断面が円弧状の部材であるため、パイプ材を軸方向に切断することにより容易に形成することができる。なお、規制板51は、平板を湾曲させることによって形成されてもよい。
【0074】
上記形状の規制板51は、収容孔11aに挿入される挿入部12b及び第1円筒部41aによって挟持されることによりメインケース11に対して固定される。規制板51を規定された位置に固定するために、挿入部12bの外周面には、図2及び図4に示すように、第1端面51aが当接する底面12dと、周方向において規制板51を挟んで対向し、規制面51cがそれぞれ当接する二つの周方向規定面12fと、内面51eが当接する円弧状の径方向規定面12eと、からなる第1位置決め溝55が形成される。なお、二つの周方向規定面12fは、第1中心軸O1を中心とする径方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0075】
一方、第1円筒部41aの外周面には、図2及び図5に示すように、第2端面51bが当接する底面41mと、内面51eが当接する径方向規定面41nと、からなる第2位置決め溝56が形成される。
【0076】
第1位置決め溝55及び第2位置決め溝56に両端がそれぞれ挿入された規制板51は、第1位置決め溝55の二つの周方向規定面12fによって周方向に移動することが規制され、径方向規定面12eと収容孔11aの内周面とによって径方向に移動することが規制されるとともに、第2位置決め溝56の径方向規定面41nと収容孔11aの内周面とによって径方向に移動することが規制される。このように、挿入部12bに形成された第1位置決め溝55と第1円筒部41aに形成された第2位置決め溝56とよって、規制板51の周方向及び径方向の移動が規制されることで規制板51はメインケース11に対して位置決めされる。
【0077】
なお、第1円筒部41aは、螺合によりメインケース11に固定されることから、周方向における固定位置を一定とすることは難しいため、第2位置決め溝56は、円環状に形成されている。これに代えて、周方向における固定位置が予め設定された位置となるように収容孔11aに対して第1円筒部41aを挿入固定することが可能な場合は、第2位置決め溝56の形状を第1位置決め溝55と同じ形状としてもよい。
【0078】
また、規制板51の第1中心軸O1方向における長さに対して対角線の長さが長くなるように、挿入部12b及び第1円筒部41aと接触する部分の周方向の長さを長めに設定するほど、規制板51は収容孔11a内において傾斜することなく安定して挟持固定される。このため、規制板51の周方向長さを長めにすることで規制板51を収容孔11a内に安定して固定させることができれば、第1円筒部41aに形成された第2位置決め溝56を廃止し、第1位置決め溝55のみによって規制板51の周方向及び径方向の移動を規制する構成としてもよい。
【0079】
また、規制板51の径方向における厚さは、第1中心軸O1からメインケース11に固定された規制板51までの最短距離L1が、結合部材である鍔付きナット46の半径(外径D1の1/2)よりも大きくなるように設定される。このように規制板51の径方向における厚さを設定することによって、ピストン20とバルブロッド42とを締結する結合部材と規制板51とが干渉することを防止することができる。
【0080】
摺接溝52は、ピストン20の外周面に第1中心軸O1に沿って凹状に形成され、規制板51を挟んで周方向において対向する二つの平面としての二つの摺接面52aを有する。二つの摺接面52aは、第1中心軸O1を中心とする径方向に沿ってそれぞれ形成されており、二つの摺接面52aには、規制板51の二つの規制面51cがそれぞれ第1中心軸O1に沿って摺接する。
【0081】
上述のように、規制板51は、メインケース11に対して固定されているため、ピストン20に対して第1中心軸O1を中心に回転させる力が作用したとしても規制面51cに摺接面52aが当接することによって、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは阻止される。一方で、摺接面52aは規制面51cにより摺接支持されるため、ピストン20は、第1中心軸O1方向に沿って円滑に移動することが許容される。なお、このように接触し合うピストン20と規制板51との硬度を同程度に設定すると、かじりが発生しやすくなるため、何れか一方の硬度を他方の硬度よりも高めておくことが好ましい。例えば、ピストン20と規制板51とが同じアルミ合金により形成される場合、何れか一方に硬質アルマイト加工処理を施すことが好ましい。
【0082】
以上のように構成されたレベリングバルブ100の作動について説明する。
【0083】
車体荷重が増加して空気ばね3が収縮した場合、すなわち、台車2に対する車体1の高さが規定の高さよりも低くなった場合には、レバー4が中立位置から上方(図1の矢印A方向)に押し上げられる。レバー4が上方に変位するのに伴ってレバー4に連結されたロータ30は、第2中心軸O2を中心として、図2における矢印E方向に回動し、ロータ30のアーム部34に設けられたピン35も矢印E方向に移動する。ピン35の移動は、ガイド溝21を介してピストン20に伝達されるため、ピストン20は、ピン35の移動に伴って、図2における中立位置Nから矢印C方向へと移動する。
【0084】
ピストン20が矢印C方向に移動することで、ピストン20に連結されたバルブロッド42は、スプリング45の付勢力に抗して弁体43を第1弁座部41gから離間させる。この結果、供給通路9と空気ばね通路6とが連通する。具体的には、通路11e,13a,41h,48bを通り、チェック弁体44と第2弁座部48aとの間を通過して第2挿入孔41e内の空間に流入したコンプレッサ7から吐出された圧縮空気は、弁体43と第1弁座部41gとの間及び大径部42fと縮径部41iとの間を通過し、貫通孔41k及び通路11c,12c,11dを通って空気ばね3に供給される。
【0085】
このとき、バルブロッド42の端面42cは、弁体43に押圧されているため、非貫通孔42dの開口端は弁体43によって閉塞される。つまり、ピストン20が中立位置Nから矢印C方向に移動すると、第1弁座部41gと弁体43とで構成される供給弁が開放状態になって供給通路9と空気ばね通路6とが連通し、弁体43とバルブロッド42の端面42cとで構成される排出弁が閉鎖状態になって排気通路8と空気ばね通路6とが遮断された状態になる。
【0086】
このように、供給通路9と空気ばね通路6とが連通すると、コンプレッサ7からの圧縮空気が供給通路9及び空気ばね通路6を通じて空気ばね3に供給され、空気ばね3は伸長する。空気ばね3が伸長することで、台車2に対する車体1の高さが高くなり、それに伴ってレバー4も中立位置に近づく。レバー4が中立位置に近づくにつれて、ピストン20も図2における中立位置Nに向かって矢印D方向に移動し、やがて、車体1の高さが規定の高さになると、ピストン20は中立位置Nに至る。このとき、弁体43は第1弁座部41gに着座するため供給弁は、閉鎖状態となる。この結果、供給通路9と空気ばね通路6との連通が遮断され、空気ばね3への圧縮空気の供給が停止される。
【0087】
これに対して、車体荷重が減少して空気ばね3が伸長した場合、すなわち、台車2に対する車体1の高さが規定の高さよりも高くなった場合には、レバー4が中立位置から下方(図1の矢印B方向)に引き下げられる。レバー4が下方に変位するのに伴ってレバー4に連結されたロータ30は、第2中心軸O2を中心として、図2における矢印F方向に回動し、ロータ30のアーム部34に設けられたピン35も矢印F方向に移動する。ピン35の移動は、ガイド溝21を介してピストン20に伝達されるため、ピストン20は、ピン35の移動に伴って、図2における中立位置Nから矢印D方向へと移動する。
【0088】
ピストン20が矢印D方向に移動することで、ピストン20に連結されたバルブロッド42の端面42cは、弁体43から離間する。この結果、空気ばね通路6と排気通路8とが連通する。具体的には、空気ばね3内の圧縮空気は、通路11d,12c,11c及び貫通孔41kを通り、大径部42fと縮径部41iとの間及び弁体43と端面42cとの間を通過し、非貫通孔42d内に流れ込み、さらに、貫通孔42e,収容孔11a,収容空間15及び連通孔14aを通じて、大気へ放出される。
【0089】
このとき、弁体43はスプリング45の付勢力によって第1弁座部41gに押圧されているので、第2挿入孔41e内の空間と、大径部42fと縮径部41iとの間の環状隙間と、は遮断された状態になる。つまり、ピストン20が中立位置Nから矢印D方向に移動すると、弁体43とバルブロッド42の端面42cとで構成される排出弁が開放状態になって空気ばね通路6と排気通路8とが連通し、第1弁座部41gと弁体43とで構成される供給弁が閉鎖状態になって供給通路9と空気ばね通路6との連通が遮断された状態になる。
【0090】
このように、空気ばね通路6と排気通路8とが連通すると、空気ばね3内の圧縮空気が空気ばね通路6及び排気通路8を通じて大気に放出され、空気ばね3は収縮する。空気ばね3が収縮することで、台車2に対する車体1の高さが低くなり、それに伴ってレバー4も中立位置に近づく。レバー4が中立位置に近づくにつれて、ピストン20も図2における中立位置Nに向かって矢印C方向に移動し、やがて、車体1の高さが規定の高さになると、ピストン20は中立位置Nに至る。このとき、バルブロッド42の端面42cは弁体43に当接するため排出弁は、閉鎖状態となる。この結果、空気ばね通路6と排気通路8との連通が遮断され、空気ばね3からの圧縮空気の排出が停止される。
【0091】
このようにして、レベリングバルブ100は、台車2に対する車体1の相対変位に伴って回動するレバー4の回動方向に応じて、空気ばね3をコンプレッサ7又は大気に選択的に連通させて、台車2に対する車体1の高さが規定の高さとなるように調整する。
【0092】
また、上述のようにレベリングバルブ100が作動する際、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは、規制板51によって常時阻止される。このため、ロータ30とピストン20との間隔がロータ30の摩耗等によって拡がったとしてもロータ30の変位はピン35を介してピストン20に伝達される。この結果、レベリングバルブ100は、台車2に対する車体1の相対変位に応じて安定して作動することになる。
【0093】
また、ピストン20の回転を規制する規制板51は、収容孔11aの内周面の周方向において所定の長さを有する円弧状に形成されており、曲げモーメントに対する剛性が比較的高い断面形状を有しているため、ピストン20に対して第1中心軸O1を中心に回転させる力が多少大きくなったとしても変形しにくい。このため、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは、規制板51によって安定して規制される。
【0094】
以上の第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0095】
レベリングバルブ100では、ハウジング10に設けられる規制板51とピストン20に設けられる摺接溝52とによって、ピストン20が収容孔11aの第1中心軸O1を中心に回転することが規制される。このように、ピストン20が回転することが防止されるため、ロータ30の変位はピストン20に対して常に正常に伝達される。この結果、レベリングバルブ100を安定して作動させることができる。
【0096】
また、レベリングバルブ100では、規制板51は、ハウジング10とは別部材で形成される。このため、既存のレベリングバルブ100に対して、摺接溝52を形成するとともに規制板51を組み付けることで容易にピストン20の回転を防止することができる。
【0097】
なお、上記第1実施形態では、規制板51は、ハウジング10とは別部材で形成される。これに代えて、規制板51をハウジング10と一体的に形成し、収容孔11aの内周面から突出する断面円弧状の突出部を規制部材として設けた構成としてもよい。この場合、規制板51を保持する第1位置決め溝55及び第2位置決め溝56を挿入部12b及び第1円筒部41aにそれぞれ加工する必要がないとともに、部品点数が減少するため、レベリングバルブ100の製造コストを低減させることができる。
【0098】
続いて、図6図9を参照して、本発明の第1実施形態に係るレベリングバルブ100の変形例について説明する。図6は、図3に相当する部位における変形例の断面図であり、図7は、図4に相当する部位における変形例の断面図であり、図8は、図5に相当する部位における変形例の断面図である。また、図9は、図8のIX−IX線に沿う断面を拡大して示した図である。
【0099】
上記第1実施形態では、規制部材として、断面円弧状の規制板51が採用されている。これに代えて、規制部材として断面形状が円形の棒状部材である規制棒53が採用されてもよい。
【0100】
この場合、規制棒53は、挿入部12bに形成される位置決め溝57と、第1円筒部41aに形成される位置決め穴58と、によって支持される。具体的には、位置決め溝57は、図7に示すように、規制棒53の一端側の第1端面53aが当接する底面12dと、規制棒53を挟んで平行に形成され、規制棒53の外周面53cがそれぞれ当接する二つの周方向規定面12fと、規制棒53の外周面53cが当接する径方向規定面12eと、を有する。また、位置決め穴58は、図8及び図9に示すように、第1円筒部41aの端面に開口する支持穴41pを有し、規制棒53の他端側の第2端面53bは支持穴41pの底面に当接する。
【0101】
支持穴41pは、第1中心軸O1を中心に周方向に複数形成された非貫通孔であり、規制棒53の端部の外形よりもわずかに大きな内径を有する。また、支持穴41pの開口端側には、開口側に向かって徐々に径が拡がるテーパ部41rが設けられる。隣り合う支持穴41pに設けられるテーパ部41rは、開口端において互いに重なり合うように形成される。
【0102】
ここで、規制棒53の他端側を支持する第1円筒部41aは、螺合によりメインケース11に固定されることから、周方向における固定位置を常に一定とすることは難しい。このため、上述のように第1中心軸O1を中心にして周方向に複数の支持穴41pを形成しておくことにより、第1円筒部41aがメインケース11に固定された状態において、規定の位置に最も近い位置にある支持穴41pに規制棒53は挿入される。
【0103】
また、支持穴41pに規制棒53が挿入される際、テーパ部41rは、規制棒53の他端部を支持穴41pに向けて案内する案内部として機能する。このため、規制棒53を第1円筒部41aに向けて規定の位置に配置されるように移動させると、規制棒53は、規定の位置に最も近い支持穴41pに導かれることになる。
【0104】
位置決め溝57及び位置決め穴58に両端がそれぞれ挿入された規制棒53は、位置決め溝57の二つの周方向規定面12fによって周方向に移動することが規制され、径方向規定面12eと収容孔11aの内周面とによって径方向に移動することが規制されるとともに、位置決め穴58によって周方向及び径方向に移動することが規制される。このように、挿入部12bに形成された位置決め溝57と第1円筒部41aに形成された位置決め穴58とよって規制棒53の周方向及び径方向の移動が規制されることで規制棒53はメインケース11に対して位置決めされる。
【0105】
また、規制棒53の直径は、第1中心軸O1からメインケース11に対して位置決めされた規制棒53の外周面53cまでの最短距離L2が、結合部材である鍔付きナット46の半径(外径D1の1/2)よりも大きくなるように設定される。このように規制棒53の直径を設定することによって、ピストン20とバルブロッド42とを締結する結合部材と規制棒53とが干渉することを防止することができる。
【0106】
摺接溝54は、ピストン20の外周面に第1中心軸O1に沿って凹状に形成され、規制棒53を挟んで対向する二つの平面としての二つの摺接面54aを有する。二つの摺接面54aは、互いに平行に形成されており、二つの摺接面54aには、規制棒53の外周面53cがそれぞれ第1中心軸O1に沿って摺接する。
【0107】
上述のように、規制棒53は、メインケース11に対して固定されているため、ピストン20に対して第1中心軸O1を中心に回転させる力が作用したとしても規制棒53の外周面53cに摺接面54aが当接することによって、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは阻止される。一方で、摺接面54aは規制棒53の外周面53cにより摺接支持されるため、ピストン20は、第1中心軸O1方向に沿って円滑に移動することが許容される。なお、摺接し合うピストン20と規制棒53とは、何れか一方の硬度が他方の硬度より高くなるように設定される。
【0108】
このように、規制部材として規制棒53を用いた場合であっても、ハウジング10に設けられる規制棒53とピストン20に設けられる摺接溝54とによって、ピストン20が収容孔11aの第1中心軸O1を中心に回転することを規制することができる。
【0109】
<第2実施形態>
次に、図10を参照して、本発明の第2実施形態に係るレベリングバルブ200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0110】
レベリングバルブ200の基本的な構成は、第1実施形態に係るレベリングバルブ100と同様である。レベリングバルブ200では、回転規制部150が、ピストン20に設けられる規制部材151と、ハウジング10に設けられ、規制部材151が摺接する摺接部としての摺接溝152と、を有する点でレベリングバルブ100と相違する。
【0111】
規制部材151は、直方体状に形成された部材であり、第1中心軸O1方向に沿ってピストン20の外周面に組み付けられる。具体的には、規制部材151は、その一部がピストン20の外周面から突出するように、第1中心軸O1方向に沿ってピストン20の外周面に形成された溝22に圧入固定される。規制部材151がピストン20の外周面から突出した部分には、第1中心軸O1方向に沿って互いに平行に形成される二つの規制面151aが設けられる。規制部材151のうち二つの規制面151aが形成される部分は、摺接溝152内に収容される。
【0112】
規制部材151が圧入される溝22の径方向の深さは、第1中心軸O1から溝22に固定された規制部材151までの最短距離L3が、結合部材である鍔付きナット46の半径(外径D1の1/2)よりも大きくなるように設定される。このように溝22の径方向の深さを設定することによって、ピストン20とバルブロッド42とを締結する結合部材と規制部材151とが干渉することを防止することができる。
【0113】
摺接溝152は、収容孔11aの内周面に第1中心軸O1方向に沿って凹状に形成され、規制部材151を挟んで対向する二つの平面としての二つの摺接面152aを有する。二つの摺接面152aは、互いに平行に形成されており、二つの摺接面152aには、規制部材151の規制面151aがそれぞれ第1中心軸O1に沿って摺接する。
【0114】
上述のように、規制部材151は、ピストン20に固定されているため、ピストン20に対して第1中心軸O1を中心に回転させる力が作用したとしても規制部材151の規制面151aが摺接面152aに当接することによって、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは阻止される。一方で、規制面151aは摺接面152aにより摺接支持されるため、ピストン20は、摺接溝152が形成される第1中心軸O1方向に沿って円滑に移動することが許容される。なお、摺接し合う規制部材151とメインケース11とは、何れか一方の硬度が他方の硬度より高くなるように設定される。
【0115】
このように、規制部材151がピストン20に設けられた場合であっても、ハウジング10に設けられる摺接溝152とピストン20に設けられる規制部材151とによって、ピストン20が収容孔11aの第1中心軸O1を中心に回転することを規制することができる。
【0116】
レベリングバルブ200の作動については、上記第1実施形態におけるレベリングバルブ100の作動と同じであるため、その説明を省略する。
【0117】
レベリングバルブ200が作動する際、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは、上述のように規制部材151によって常時阻止される。このため、ロータ30とピストン20との間隔がロータ30の摩耗等によって拡がったとしてもロータ30の変位はピン35を介してピストン20に伝達される。この結果、レベリングバルブ200は、台車2に対する車体1の相対変位に応じて安定して作動することになる。
【0118】
以上の第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0119】
レベリングバルブ200では、ハウジング10に設けられる摺接溝152とピストン20に設けられる規制部材151とによって、ピストン20が収容孔11aの第1中心軸O1を中心に回転することが規制される。このように、ピストン20が回転することが防止されるため、ロータ30の変位はピストン20に対して常に正常に伝達される。この結果、レベリングバルブ200を安定して作動させることができる。
【0120】
また、レベリングバルブ200では、規制部材151は、ハウジング10及びピストン20とは別部材で形成される。このため、既存のレベリングバルブ200に対して、摺接溝152を形成するとともに規制部材151が固定される溝22を形成することで容易にピストン20の回転を防止することができる。
【0121】
なお、上記第2実施形態では、規制部材151はピストン20に形成された溝22に圧入固定され、摺接溝152はハウジング10の収容孔11aの内周面に形成される。これに代えて、規制部材151を収容孔11aの内周面に形成された溝に圧入固定し、摺接溝152をピストン20の外周面に設けた構成としてもよい。
【0122】
また、上記第2実施形態では、規制部材151は、ピストン20とは別部材で形成される。これに代えて、規制部材151をピストン20と一体的に形成し、ピストン20の外周面から突出する断面矩形状の突出部を規制部材として設けた構成としてもよい。この場合、規制部材151が固定される溝22を加工する必要がないとともに、部品点数が減少するため、レベリングバルブ200の製造コストを低減させることができる。
【0123】
<第3実施形態>
次に、図11を参照して、本発明の第3実施形態に係るレベリングバルブ300について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付し説明を省略する。
【0124】
レベリングバルブ300の基本的な構成は、第1実施形態に係るレベリングバルブ100と同様である。レベリングバルブ300では、回転規制部250が、ハウジング10の収容孔11aの内周面に固定される規制部材としての規制平板251と、ピストン20の外周面に設けられ、規制平板251が摺接する平面状の摺接部252と、を有する点でレベリングバルブ100と相違する。
【0125】
規制平板251は、所定の厚さを有する平板状部材であり、第1中心軸O1方向に沿って収容孔11aの内周面に固定される。具体的には、規制平板251は、第1中心軸O1方向に沿って収容孔11aの内周面に形成された収容溝11g内に全体が収容されるように圧入固定される。規制平板251の第1中心軸O1方向における長さは、ピストン20が第1中心軸O1方向において移動する範囲を超えるように設定される。ピストン20に設けられた摺接部252に対向する規制平板251の表面には、摺接部252に接触する平面部としての規制面251aが設けられる。
【0126】
規制平板251の厚さ及び規制平板251が収容される収容溝11gの径方向の深さは、第1中心軸O1から収容溝11gに収容された規制平板251までの最短距離L4が、結合部材である鍔付きナット46の半径(外径D1の1/2)よりも大きくなるように設定される。このように規制平板251の厚さ及び収容溝11gの深さを設定することによって、ピストン20とバルブロッド42とを締結する結合部材と規制平板251とが干渉することを防止することができる。
【0127】
摺接部252は、ピストン20の外周面に第1中心軸O1方向に沿って平面状に形成され、径方向において規制平板251の規制面251aに対向する平面としての摺接面252aを有する。摺接面252aには、規制平板251の規制面251aが第1中心軸O1方向に沿って摺接する。
【0128】
上述のように、規制平板251は、ハウジング10に固定されているため、ピストン20に対して第1中心軸O1を中心に回転させる力が作用したとしても摺接面252aが規制平板251の規制面251aに当接することによって、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは阻止される。一方で、摺接面252aは規制面251aにより摺接支持されるため、ピストン20は、規制平板251が設けられる第1中心軸O1方向に沿って円滑に移動することが許容される。なお、摺接し合う規制平板251とピストン20とは、何れか一方の硬度が他方の硬度より高くなるように設定される。
【0129】
このように、規制部材が収容孔11aに固定された平板状の部材である場合であっても、ハウジング10に設けられる規制平板251とピストン20に設けられる摺接部252とによって、ピストン20が収容孔11aの第1中心軸O1を中心に回転することを規制することができる。
【0130】
レベリングバルブ300の作動については、上記第1実施形態におけるレベリングバルブ100の作動と同じであるため、その説明を省略する。
【0131】
レベリングバルブ300が作動する際、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは、上述のように規制平板251によって常時阻止される。このため、ロータ30とピストン20との間隔がロータ30の摩耗等によって拡がったとしてもロータ30の変位はピン35を介してピストン20に伝達される。この結果、レベリングバルブ300は、台車2に対する車体1の相対変位に応じて安定して作動することになる。
【0132】
以上の第3実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0133】
レベリングバルブ300では、ハウジング10に設けられる規制平板251とピストン20に設けられる摺接部252とによって、ピストン20が収容孔11aの第1中心軸O1を中心に回転することが規制される。このように、ピストン20が回転することが防止されるため、ロータ30の変位はピストン20に対して常に正常に伝達される。この結果、レベリングバルブ300を安定して作動させることができる。
【0134】
また、レベリングバルブ300では、規制平板251は、ハウジング10とは別部材で形成される。このため、既存のレベリングバルブ300に対して、規制平板251が収容される収容溝11gを形成するとともにピストン20の外周面に摺接面252aを形成することで容易にピストン20の回転を防止することができる。
【0135】
なお、上記第3実施形態では、規制平板251は、ハウジング10とは別部材で形成される。これに代えて、規制平板251をハウジング10と一体的に形成し、収容孔11aの内周面に形成される平面部を規制部材として設けた構成としてもよい。この場合、規制平板251を収容する収容溝11gを加工する必要がないとともに、部品点数が減少するため、レベリングバルブ300の製造コストを低減させることができる。
【0136】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0137】
レベリングバルブ100,200,300は、空気ばね3と連通する空気ばね通路6が形成されたハウジング10と、ハウジング10に形成された収容孔11a内に摺動自在に収容され、台車2に対する車体1の相対変位量に応じて収容孔11a内を移動するピストン20と、ハウジング10及びピストン20に設けられ、収容孔11aの第1中心軸O1方向に沿ってピストン20を案内しつつ、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することを規制する回転規制部50,150,250と、を備える。
【0138】
この構成によれば、ハウジング10及びピストン20に設けられる回転規制部50,150,250により、収容孔11aの第1中心軸O1方向に沿ってピストン20が移動することが許容されるとともに、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することが規制される。このように、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することが防止されるため、ロータ30の変位はピストン20に対して常に正常に伝達される。この結果、レベリングバルブ100,200,300を安定して作動させることができる。
【0139】
また、回転規制部50,150,250は、ハウジング10及びピストン20の何れか一方に設けられる規制部材51,53,151,251と、ハウジング10及びピストン20の何れか他方に設けられ、第1中心軸O1方向において規制部材51,53,151,251と摺接する摺接部52,54,152,252と、を有し、第1中心軸O1を中心とするピストン20の回転は、規制部材51,53,151,251と摺接部52,54,152,252とが当接することにより規制される。
【0140】
この構成によれば、ハウジング10及びピストン20の何れか一方に設けられる規制部材51,53,151,251と、ハウジング10及びピストン20の何れか他方に設けられる摺接部52,54,152,252と、により、収容孔11aの第1中心軸O1方向に沿ってピストン20が移動することが許容されるとともに、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することが規制される。このように、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することが防止されるため、ロータ30の変位はピストン20に対して常に正常に伝達される。この結果、レベリングバルブ100,200,300を安定して作動させることができる。
【0141】
また、摺接部52,54,152は、ピストン20の外周面または収容孔11aの内周面に第1中心軸O1に沿って凹状に形成され、規制部材51,53,151を挟んで対向する二つの平面52a,54a,152aを有し、第1中心軸O1を中心とするピストン20の回転は、二つの平面52a,54a,152aの何れか一方と規制部材51,53,151とが当接することにより規制される。
【0142】
この構成によれば、ピストン20に対して第1中心軸O1を中心に回転させる力が作用したとしても、二つの平面52a,54a,152aの何れか一方と規制部材51,53,151とが当接することによって、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは阻止される。この結果、ロータ30の変位はピストン20に対して常に正常に伝達されることになるため、レベリングバルブ100,200を安定して作動させることができる。
【0143】
また、レベリングバルブ100は、収容孔11aの一端側に挿入される第1キャップ部材12の挿入部12bと、収容孔11aの他端側に挿入される弁ケース41の第1円筒部41aと、をさらに備え、規制部材51,53は、第1中心軸O1に沿って収容孔11a内に配置され、規制部材51,53の両端は、挿入部12bと第1円筒部41aとにより支持される。
【0144】
この構成によれば、規制部材51,53は、収容孔11a内において、挿入部12bと第1円筒部41aとにより保持される。このように、ピストン20の回転を規制する規制部材51,53を、簡素な構成によって収容孔11a内の規定の位置に固定することができる。また、規制部材51,53は、ハウジング10及びピストン20とは別部材で形成されるため、既存のレベリングバルブ100に対して、規制部材51,53を組み付ける加工を施すことにより容易にピストン20の回転を防止することができる。
【0145】
また、第1中心軸O1を中心とする規制部材51,53の周方向及び径方向の移動は、挿入部12b及び第1円筒部41aの少なくとも一方により規制される。
【0146】
この構成によれば、規制部材51,53の周方向及び径方向の移動は、挿入部12b及び第1円筒部41aの少なくとも一方により規制される。このように、ピストン20の回転を規制する規制部材51,53が規定の位置から周方向や径方向に動いてしまうことが確実に防止されるため、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することをより確実に防止することができる。
【0147】
また、規制部材51は、収容孔11aの内周面の周方向に沿って円弧状に形成された部材である。
【0148】
この構成によれば、規制部材51は、第1中心軸O1に沿って延びる断面円弧状の部材によって形成される。このように、規制部材51は、曲げモーメントに対する剛性が比較的高い断面形状を有しているため、ピストン20に対して第1中心軸O1を中心に回転させる力が多少大きくなったとしても変形しにくい。この結果、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することをより確実に防止することができる。
【0149】
また、規制部材51は、パイプ材を軸方向に切断することにより形成される。
【0150】
この構成によれば、規制部材51は、第1中心軸O1に沿って延びる断面円弧状の部材によって形成されるため、パイプ材を軸方向に切断することによって容易且つ安価に形成することができる。
【0151】
また、摺接部252は、ピストン20の外周面に第1中心軸O1に沿って平面状に形成される摺接面252aを有し、規制部材251は、ハウジング10に設けられており、第1中心軸O1に沿って平面状に形成され、摺接面252aに対向する規制面251aを有し、第1中心軸O1を中心とするピストン20の回転は、摺接面252aと規制面251aとが当接することにより規制される。
【0152】
この構成によれば、ピストン20に対して第1中心軸O1を中心に回転させる力が作用したとしても、ピストン20に設けられた摺接面252aとハウジング10に設けられた規制面251aとが当接することによって、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することは阻止される。このようにピストン20及びハウジング10に対向する平面をそれぞれ設けるという簡素な構成によって、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することを確実に防止することができる。
【0153】
また、規制部材51,151,251は、ハウジング10及びピストン20の何れか一方と一体的に形成される。
【0154】
この構成によれば、規制部材51,151,251は、ハウジング10及びピストン20の何れか一方と一体的に形成される。このため、規制部材51,151,251を固定するために溝等の加工を施す必要がないとともに、部品点数が減少するため、レベリングバルブ100,200,300の製造コストを低減させることができる。
【0155】
また、レベリングバルブ100,200,300は、ピストン20に固定され、第1中心軸O1に沿って延びるバルブロッド42と、ピストン20とバルブロッド42とを結合させる鍔付きナット46と、をさらに備え、第1中心軸O1から規制部材51,53,151,251までの最短距離L1,L2,L3,L4は、第1中心軸O1を中心とする鍔付きナット46の最大半径よりも大きい。
【0156】
この構成によれば、第1中心軸O1から規制部材51,53,151,251までの最短距離L1,L2,L3,L4は、第1中心軸O1を中心とする鍔付きナット46の最大半径よりも大きく設定される。このように第1中心軸O1から規制部材51,53,151,251までの最短距離L1,L2,L3,L4を設定することによって、ピストン20とバルブロッド42とを結合する鍔付きナット46等の結合部材と規制部材51,53,151,251とが干渉することを防止することができる。
【0157】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0158】
例えば、上記各実施形態において、バルブロッド42は、一端のみが摺動支持されているが、両端が摺動支持されてもよい。この場合、バルブロッド42の両端は、弁ケース41と第1キャップ部材12とによりそれぞれ摺動支持される。
【符号の説明】
【0159】
100,200,300・・・レベリングバルブ、1・・・車体、2・・・台車、3・・・空気ばね、4・・・レバー、6・・・空気ばね通路、7・・・コンプレッサ、8・・・排気通路、9・・・供給通路、10・・・ハウジング、11a・・・収容孔、12b・・・挿入部(第1支持部)、20・・・ピストン、30・・・ロータ、35・・・ピン、40・・・給排弁、41a・・・第1円筒部(第2支持部)、42・・・バルブロッド(ロッド部材)、46・・・鍔付きナット(結合部材)、50,150,250・・・回転規制部、51・・・規制板(規制部材)、51c・・・規制面、52,54,152・・・摺接溝(摺接部)、52a,54a,152a・・・摺接面(平面)、53・・・規制棒(規制部材)、55・・・第1位置決め溝、56・・・第2位置決め溝、151・・・規制部材、151a・・・規制面、251・・・規制平板(規制部材)、251a・・・規制面(平面部)、252・・・摺接部、252a・・・摺接面(平面)、O1・・・第1中心軸(中心軸)
【要約】
【課題】レベリングバルブを安定して作動させる。
【解決手段】レベリングバルブ100は、ハウジング10に形成された収容孔11a内に収容され、台車2に対する車体1の相対変位量に応じて収容孔11a内を移動するピストン20と、ハウジング10及びピストン20に設けられ、収容孔11aの第1中心軸O1方向に沿ってピストン20を案内しつつ、ピストン20が第1中心軸O1を中心に回転することを規制する回転規制部50と、を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11