(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接合ツールは、ショルダーと、当該ショルダーの先端部に配設された攪拌ピンとを有し、前記攪拌工程は、前記溶接ビード部に前記接合ツールの攪拌ピンを差し込んで、前記ショルダー及び前記攪拌ピンによって、前記溶接ビード部を攪拌する請求項1に記載のアルミニウム構造部材の製造方法。
前記攪拌ピンが、前記第1及び第2アルミニウム部材の板厚方向のいずれか一方の側から前記溶接ビード部に差し込まれる請求項3に記載のアルミニウム構造部材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4及び5に記載の方法であれば、アルミニウム材料が摩擦攪拌による加熱量を少なくすることができるため接合速度を向上させることができる。しかしながら、アルミニウム材料は熱伝導性が高く、熱が容易に拡散してしまうため、必要な熱量を安定して接合部に付与することができない。この結果、材料の軟化状態にバラツキが出て溶接部に乱れが生じ、所定の接合強度が得られないという課題がある。
【0010】
また、通常の摩擦攪拌接合よりも接合速度が向上しても、溶融接合(溶接)と比べるとスピードが依然として低いという問題がある。
【0011】
さらに、特許文献1〜5のいずれの方法においても、攪拌ピンの深さの設定やピンの磨耗度合いによっては、未接合部(いわゆるキッシングボンド)が生じる可能性があり、ツール(ピン)の管理などが煩雑であるという問題があった。特に、突き合わせの一方の部材の厚みが薄い場合は十分な攪拌ができないため、接合不良部ができやすくなる。
【0012】
また、特許文献6のレーザ溶接による接合方法では接合スピードが速く、上述したキッシングボンドのような接合不良部は生じにくいが、溶融ビード部分が鋳物となるため、自動車のBピラー等の構造部材をプレス成形する際に、伸びが足りずに破断する可能性がある。又、溶融ビード部の表面に引けや凹凸部がある場合は外観不良となり、疲労破断の起点となる可能性もある。
【0013】
さらに、特許文献7では、溶接部をローラで押圧することで、溶接部の凹凸はある程度平滑化されるが、溶接部の鋳物構造部分が残るため、プレス成形時に破断発生の可能性がある。
【0014】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、接合速度が速く、接合部の品質や接合強度に優れたアルミニウム構造部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1アルミニウム部材と第2アルミニウム部材とが接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法は、前記第1及び第2アルミニウム部材を互いに突き合わせて突き合わせ部を形成する工程と、前記突き合わせ部を溶接し、前記突き合わせ部の表面から裏面に連なる溶接ビード部を形成する工程と、回転する接合ツールによって前記溶接ビード部を攪拌する工程と、を含
み、前記攪拌工程は、前記溶接ビード部おけるアルミニウム合金の固相線温度から100℃までの高い温度の状態で行われる。
【0016】
また、上記製造方法において、好ましくは、前記攪拌工程は、板厚方向に前記溶接ビード部を残して摩擦攪拌部を形成する。
【0017】
さらに、上記製造方法において、好ましくは、前記接合ツールは、ショルダーと、当該ショルダーの先端部に配設された攪拌ピンとを有し、前記攪拌工程は、前記溶接ビード部に前記接合ツールの攪拌ピンを差し込んで、前記ショルダー及び前記攪拌ピンによって、前記溶接ビード部を攪拌する。
【0018】
また、上記製造方法において、好ましくは、前記攪拌ピンが、前記第1及び第2アルミニウム部材の板厚方向のいずれか一方の側から前記溶接ビード部に差し込まれる。
【0019】
さらに、上記製造方法において、好ましくは、前記攪拌ピンが、前記第1及び第2アルミニウム部材の板厚方向の両側から前記溶接ビード部に差し込まれる。
【0020】
また、本発明の板厚が異なる第1アルミニウム部材と第2アルミニウム部材とが接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法は、前記第1及び第2アルミニウム部材を互いに突き合わせて突き合わせ部を形成する工程と、前記突き合わせ部を溶接し、前記突き合わせ部の表面から裏面に連なる溶接ビード部を形成する工程と、回転する接合ツールによって前記溶接ビード部を攪拌する工程と、を含
み、前記攪拌工程は、前記溶接ビード部おけるアルミニウム合金の固相線温度から100℃までの高い温度の状態で行われる。
【0021】
また、本発明の第1アルミニウム部材と該第1アルミニウム部材よりも厚い第2アルミニウム部材とが突合せ接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法は、前記第1及び前記第2アルミニウム部材を互いに突き合わせて、段差のある突き合わせ部を形成する工程と、前記段差のある側を表面としたときに、前記表面側に溶接熱源を配置して、前記突き合わせ部を溶接し、前記突き合わせ部の表面から裏面に連なる溶接ビード部を形成する工程と、回転する接合ツールによって前記溶接ビード部を攪拌する工程と、を含み、
前記攪拌工程は、前記溶接ビード部おけるアルミニウム合金の固相線温度から100℃までの高い温度の状態で行われ、前記攪拌工程において、前記接合ツールの軸芯を、前記第1及び第2アルミニウム部材の前記表面に垂直な方向に対して前記第1アルミニウム部材側に傾斜させるものである。
【0022】
また、本発明の第1アルミニウム部材と該第1アルミニウム部材よりも厚い第2アルミニウム部材とが突合せ接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法は、少なくとも前記第1アルミニウム部材を裏当て部材の上に配置した状態で、前記第1及び第2アルミニウム部材を突き合わせて、前記第1アルミニウム部材の表面と、前記第2アルミニウム部材の表面とが平坦な突き合わせ部を形成する工程と、前記第1及び第2アルミニウム部材の表面側に溶接熱源を配置して、前記突き合わせ部を溶接し、前記突き合わせ部の表面から裏面に連なる溶接ビード部を形成する工程と、回転する接合ツールによって前記溶接ビード部を前記表面側から攪拌する工程と、を含
み、前記攪拌工程は、前記溶接ビード部おけるアルミニウム合金の固相線温度から100℃までの高い温度の状態で行われる。
【0023】
また、上記製造方法において、好ましくは、前記溶接ビード部が攪拌された前記第1及び第2アルミニウム部材から前記裏当て部材を取り外す工程と、回転する前記接合ツールによって前記溶接ビード部を前記裏面側から攪拌する工程と、をさらに含み、前記裏面側からの攪拌工程において、前記接合ツールの軸芯を、前記第1及び第2アルミニウム部材の前記裏面に垂直な方向に対して前記第1アルミニウム部材側に傾斜させる。
【0024】
また、上記製造方法において、好ましくは、レーザ溶接により形成される。
【0025】
さらに、上記製造方法において、好ましくは、前記溶接ビード部を形成する工程において、溶加材を供給しながらレーザビームを照射する。
【0026】
また、上記製造方法において、好ましくは、前記接合ツールのショルダーが凸形状である。
【発明の効果】
【0027】
本発明のアルミニウム構造部材の製造方法によれば、第1及び第2アルミニウム部材を互いに突き合わせて突き合わせ部を形成する工程と、突き合わせ部を溶接し、突き合わせ部の表面から裏面に連なる溶接ビード部を形成する工程と、回転する接合ツールによって溶接ビード部を攪拌する工程と、を含
み、前記攪拌工程は、前記溶接ビード部おけるアルミニウム合金の固相線温度から100℃までの高い温度の状態で行われる。これにより、接合速度が速く、接合部の品質や接合強度に優れたアルミニウム構造部材の製造方法を提供することができる。
【0028】
また、本発明のアルミニウム構造部材の製造方法によれば、第1及び第2アルミニウム部材の板厚が異なる場合においても、第1及び第2アルミニウム部材を互いに突き合わせて突き合わせ部を形成する工程と、突き合わせ部を溶接し、突き合わせ部の表面から裏面に連なる溶接ビード部を形成する工程と、回転する接合ツールによって溶接ビード部を攪拌する工程と、を含
み、前記攪拌工程は、前記溶接ビード部おけるアルミニウム合金の固相線温度から100℃までの高い温度の状態で行われる。これにより、接合速度が速く、接合部の品質や接合強度に優れたアルミニウム構造部材の製造方法を提供することができる。
【0029】
また、本発明の第1アルミニウム部材と該第1アルミニウム部材よりも厚い第2アルミニウム部材とが突合せ接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法によれば、第1及び第2アルミニウム部材を互いに突き合わせて、段差のある突き合わせ部を形成する工程と、段差のある側を表面としたときに、表面側に溶接熱源を配置して、突き合わせ部を溶接し、突き合わせ部の表面から裏面に連なる溶接ビード部を形成する工程と、回転する接合ツールによって溶接ビード部を攪拌する工程と、を含む。そして、
前記攪拌工程は、前記溶接ビード部おけるアルミニウム合金の固相線温度から100℃までの高い温度の状態で行われ、攪拌工程において、接合ツールの軸芯を、第1及び第2アルミニウム部材の表面に垂直な方向に対して第1アルミニウム部材側に傾斜させる。これにより、接合速度が速く、接合部の品質・外観や接合強度に優れたアルミニウム構造部材の製造方法を提供することができる。
【0030】
さらに、本発明の第1アルミニウム部材と該第1アルミニウム部材よりも厚い第2アルミニウム部材とが突合せ接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法によれば、少なくとも第1アルミニウム部材を裏当て部材の上に配置した状態で、第1及び第2アルミニウム部材を突き合わせて、第1アルミニウム部材の表面と、第2アルミニウム部材の表面とが平坦な突き合わせ部を形成する工程と、第1及び第2アルミニウム部材の表面側に溶接熱源を配置して、突き合わせ部を溶接し、突き合わせ部の表面から裏面に連なる溶接ビード部を形成する工程と、回転する接合ツールによって溶接ビード部を表面側から攪拌する工程と、を含
み、前記攪拌工程は、前記溶接ビード部おけるアルミニウム合金の固相線温度から100℃までの高い温度の状態で行われる。これにより、接合速度が速く、接合部の品質・外観や接合強度に優れたアルミニウム構造部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の各実施形態に係るアルミニウム構造部材の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を実施するために使用される製造装置の要部斜視図である。製造装置10は、互いに接合される第1及び第2アルミニウム部材1、2が載置される定盤11と、レーザ装置20と、摩擦攪拌装置30と、を備える。
【0034】
<レーザ装置20>
レーザ装置20は、レーザヘッド21からレーザビームXを第1及び第2アルミニウム部材1、2の突き合わせ部3に向けて照射し、突き合わせ部3の板厚方向全体に亘って溶接ビード部4を形成する。
【0035】
レーザ装置20のレーザ源は特に限定されないが、YAGレーザ、CO
2レーザ、ファイバーレーザ、ディスクレーザ、半導体レーザ等とすることができる。また、レーザビームXの照射方向は、突き合わせ部3の面に沿った方向であればよく、鉛直方向でもよいし、或いは、
図1に示すように、鉛直方向に対して傾斜した方向であってもよい。
【0036】
また、レーザ溶接に際して、必要に応じて、溶加材供給ノズル22から溶加材23を供給しながら溶接することが好ましい。溶加材23を用いることにより、流動する材料の量を増やすことができ、攪拌後の滑らかな接合形状を容易に得やすくなる。
【0037】
溶加材23としては、JIS4043、4047、5554、5356、5183などのアルミニウム溶加材(JIS Z3232:2000)を適宜用いることができる。第1アルミニウム部材1と第2アルミニウム部材2が5000系、6000系合金の場合には、JIS5554を用いるようにすると高い継手強度を維持しつつ、溶接部へのスマット付着を抑制することができるため好ましい。
【0038】
<摩擦攪拌装置30>
摩擦攪拌装置30は、
図2Cに示すように、攪拌ピン(又はプローブと称する)31及びショルダー32を有し、回転する接合ツール33を備える。また、接合ツール33は、レーザヘッド21及び接合ツール33の移動方向Yにおいて、レーザヘッド21に対して下流側に位置し、溶接ビード部4の上方に配置される。摩擦攪拌装置30は、レーザ溶接後に凝固した溶接ビード部4に攪拌ピン31を回転させながら差し込んで溶接ビード部4をトレースするようにして攪拌を行う。これにより、溶接ビード部4の一部が鋳物組織から改質された組織に変化する。従って、レーザ溶接のみで接合するよりも接合後の曲げや引張り強度が高くなる。
【0039】
なお、攪拌ピン31の高さは、以下に説明するように、互いに接合するアルミニウム部材の厚さに応じて、適宜設定することができる。
【0040】
攪拌ピン31の差込深さは、通常の摩擦攪拌接合(FSW)と異なり、摩擦攪拌で接合を行う必要がないため浅くすることができる。これにより、攪拌ピン31にかかる負荷が小さくなるため、通常の摩擦攪拌接合よりも早い速度(突合せ線上の移動速度)で攪拌を行うことができる。また、摩擦攪拌接合では、攪拌ピン31の差込深さに比例してバリが多くなるが、本実施形態の方法によれば、差込深さが浅いのでバリの発生を抑えることができる。なお、攪拌ピン31はピンの表面(軸表面)が平滑なものでもよいが、ピンにねじを設けているものでもよい。ねじがある場合は攪拌性がより向上する。
【0041】
また、ショルダー32の外径は、表面側に形成される溶接ビード部4全体を攪拌できるように、溶接ビード部4の幅よりも大きく設計される。
【0042】
なお、本実施形態の製造装置10では、レーザヘッド21と接合ツール33とをユニット化してもよい。この場合、図示しない駆動装置によって、レーザヘッド21と接合ツール33とが、定盤11に対して一体に相対移動する。したがって、摩擦攪拌は、レーザ溶接と一工程で行うことができる。
【0043】
また、本実施形態のように、レーザヘッド21と接合ツール33とを近い位置に配置し、摩擦攪拌は、溶接ビード部4におけるアルミニウム合金の固相線温度(520〜580℃)から100℃までの高い温度の状態で行われることで、摩擦攪拌の速度を大幅に向上させることができる。
【0044】
ただし、レーザ溶接と摩擦攪拌とは、同時に行われる必要はなく、別々に行われてもよい。その場合、レーザ溶接により流動化した溶接ビード部に対して摩擦攪拌を行っても良いし、固化した溶接ビード部に対して摩擦攪拌を行ってもよい。また、摩擦攪拌装置30は、レーザ装置20と別途構成されてもよい。即ち、レーザ装置20によって突き合わせ部3のレーザ溶接(第1工程)が完了した後、接合されたアルミニウム構造部材を別途設けられた摩擦攪拌装置30に配置して、摩擦攪拌(第2工程)が行われてもよい。
【0045】
<第1、第2アルミニウム部材1、2>
互いに接合される第1、第2アルミニウム部材1、2は、板材に限らず、押出形材や鍛造材であってもよい。
【0046】
また、第1、第2アルミニウム部材1、2は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含み、合金の材質としては、AA又はJIS6000系合金、5000系合金、7000系合金、3000系合金、2000系合金等各種合金材を使用することができる。また、第1、第2アルミニウム部材1、2は、本実施形態による接合を行った後に必要に応じて、焼鈍、溶体化処理及び人工時効処理などを行ってもよい。
なお、図示の例では、第1、第2アルミニウム部材1、2は、略等しい板厚を有している。
【0047】
<アルミニウム構造部材の製造方法>
次に、アルミニウム構造部材の製造方法の各工程について、
図2A〜
図2Dを用いて説明する。
【0048】
まず、
図2Aに示すように、定盤11に第1及び第2アルミニウム部材1、2を載置し、第1アルミニウム部材1と第2アルミニウム部材2とを突き合わせて突き合わせ部3を形成する。そして、
図2Bに示すように、その突き合わせ部3をレーザ溶接により接合して溶接ビード部4を形成する。この際、突き合わせ部3に未接合部が生じないように溶接ビード部4は、突き合わせ部3を表面から裏面に連なる、即ち、突き合わせ部3の板厚方向全体に亘って形成される。
【0049】
これにより、
図5に示すような、摩擦攪拌接合で生じることがある、いわゆるキッシングボンド部6(突き合わせ部の未接合部又は接合が著しく弱い部分)を発生することが防止できる。
【0050】
次に、
図2Cに示すように、その溶接ビード部4に回転する接合ツール33(攪拌ピン31)を差し込み、溶接ビード部4およびその周囲を摩擦攪拌する。溶接ビード部4は一旦溶融して凝固したものであるため鋳物組織となるが、摩擦攪拌により鋳物組織が改質され、
図2D及び
図3に示すように、改質部(摩擦攪拌部)5が形成される。この場合、改質部5は、板厚方向に溶接ビード部4を残して形成される。鋳物組織は脆性があるため、この部分に引張荷重や曲げ荷重がかかると破断しやすいが、摩擦攪拌による金属組織の改質部5を設けることにより、組織が微細化されて鋳物組織よりも接合強度を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、攪拌ピン31を板厚方向に深く差し込む必要がない。これにより、攪拌ピン31に係る荷重を下げることができ、接合速度を速くすることができる。
特に、自動車のフレーム部材等の被接合部材は厚いため、通常の摩擦攪拌接合の場合、非常に時間がかかるが、本実施形態の製造方法であれば、高い接合速度で被接合部材を接合することができる。
【0052】
なお、摩擦攪拌接合の直前に、レーザや誘導加熱などにより予備加熱を行い、その直後に摩擦攪拌接合を行う技術では、一定の接合速度の向上は得られるものの熱のアルミニウムの熱放散性により温度コントロールが難しく接合部のバラツキが出る。又、攪拌ピン31の磨耗状態などの管理や差込深さの設定等が煩雑である。
【0053】
一方、本実施形態のように、一旦溶融溶接(貫通溶接)を行い、凝固した溶接ビード部4を形成して、その後に摩擦攪拌により溶接ビード部4を改質することにより、キッシングボンドの発生がなくなる。更には、攪拌ピン31の管理や差込深さの設定が簡単になる。
【0054】
以上説明したように、第1アルミニウム部材1と第2アルミニウム部材2とが接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法によれば、第1及び第2アルミニウム部材1、2を互いに突き合わせて突き合わせ部3を形成する工程と、突き合わせ部3に向けてレーザビームXを照射し、突き合わせ部3の表面から裏面に連なる溶接ビード部4を形成する工程と、溶接ビード部4に回転する攪拌ピン31を差し込んで溶接ビード部4を攪拌する工程と、を含む。これにより、接合速度が速く、接合部の品質や接合強度に優れたアルミニウム構造部材の製造方法を提供することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、摩擦攪拌において、攪拌ピン31が、第1及び第2アルミニウム部材1、2の板厚方向において、レーザビームXの照射側から溶接ビード部4に差し込まれているが、本発明は、これに限定されない。
【0056】
即ち、第1変形例の製造方法として、摩擦攪拌において、攪拌ピン31は、第1及び第2アルミニウム部材1、2の板厚方向において、レーザビームXの照射側(表面側)と反対
側(裏面側)から溶接ビード部4に差し込まれてもよい。したがって、
図4Aに示すように、改質部5が、レーザビームXが照射された側と反対側(裏面側)に形成される。
【0057】
また、第2変形例の製造方法として、摩擦攪拌において、攪拌ピン31は、第1及び第2アルミニウム部材1、2の板厚方向の両側(表面側、裏面側)から溶接ビード部4に差し込まれてもよい。したがって、
図4Bに示すように、改質部5が第1及び第2アルミニウム部材1、2の板厚方向の両側(表面側、裏面側)に形成される。このように、第1及び第2アルミニウム部材1、2の板厚方向の両側から攪拌ピン31を差し込んで摩擦攪拌することにより、接合部の強度をより高くすることができる。
【0058】
また、第3変形例の製造方法では、
図6Aに示すように、ツール33は、攪拌ピン31を有さず、ショルダー32のみから構成することができる。この場合は、ショルダー32のみで溶接ビード部4を攪拌するようになるので、当該攪拌を早い速度で行うことができるようになる。
【0059】
なお、この場合に形成される改質部5は、
図6Bに示すように、第1アルミニウム部材1及び第2アルミニウム部材2の表層部分にのみ形成されるようになる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るアルミニウム構造部材の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。第2実施形態は、互いに接合される第1、第2アルミニウム部材1、2の板厚が互いに異なる場合に適用される製造方法である。具体的に、
図8Aに示すように、第2アルミニウム部材2は、第1アルミニウム部材1よりも厚くなっている。第1、第2アルミニウム部材1、2は、板厚以外に関する点は、第1実施形態と同様である。
また、第2実施形態を実施するために使用される製造装置10は、第1実施形態と同様に、定盤11と、レーザ装置20と、摩擦攪拌装置30と、を備える構成であり、第1実施形態と同一又は同等部分については、説明を省略或いは簡略化する。
【0061】
以下、第2実施形態のアルミニウム構造部材の製造方法の各工程について、
図7、
図8A〜
図8Dを用いて説明する。
【0062】
まず、
図8Aに示すように、定盤11に第1及び第2アルミニウム部材1、2を載置し、第1アルミニウム部材1と第2アルミニウム部材2とを突き合わせて段差のある突き合わせ部3を形成する。そして、
図8Bに示すように、その突き合わせ部3を、段差のある側である表面側からレーザ溶接により接合して溶接ビード部4を形成する。この際、突き合わせ部3に未接合部が生じないように溶接ビード部4は、突き合わせ部3を表面から裏面に連なる、即ち、突き合わせ部3の板厚方向全体に亘って形成される。
【0063】
これにより、
図10に示すような、摩擦攪拌接合で生じることがある、いわゆるキッシングボンド部6(突き合わせ部の未接合部又は接合が著しく弱い部分)を発生することが防止できる。
【0064】
次に、
図8Cに示すように、その溶接ビード部4に回転する接合ツール33(攪拌ピン31)を、接合ツール33の軸芯Lが第1アルミニウム部材1および第2アルミニウム部材2の表面に対して垂直な方向(即ち、鉛直方向に延びるレーザ溶接前の突き合わせ部3の対向面に沿った方向)から第1アルミニウム部材1側に角度θで傾斜させて差し込み、溶接ビード部4およびその周囲を摩擦攪拌する。なお、接合ツール33の軸芯Lの傾斜角度θは、第1及び第2アルミニウム部材1、2の板厚差などに応じて設定されるが、例えば、該垂直な方向に対して30°以下の範囲内で傾けて設定される。
【0065】
溶接ビード部4は一旦溶融して凝固したものであるため鋳物組織となるが、摩擦攪拌により鋳物組織が改質される。更に改質の際、第1アルミニウム部材1と第2アルミニウム部材2を段差なく滑らかにつなぐ形状に形成され、
図8Dに示すように、改質部(摩擦攪拌部)5が形成される。この場合、改質部5は、板厚方向に溶接ビード部4を残して形成される。鋳物組織は脆性があるため、この部分に引張荷重や曲げ荷重がかかると破断しやすいが、摩擦攪拌による金属組織の改質部5を設けることにより、組織が微細化されて鋳物組織よりも接合強度を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、攪拌ピン31を板厚方向に深く差し込む必要がない。これにより、攪拌ピン31に係る荷重を下げることができ、接合速度を速くすることができる。
【0067】
特に、自動車のフレーム部材等の被接合部材は厚いため、通常の摩擦攪拌接合の場合、非常に時間がかかるが、本実施形態の製造方法であれば、高い接合速度で被接合部材を接合することができる。
【0068】
一方、本実施形態のように、一旦溶融溶接(貫通溶接)を行い、凝固した溶接ビード部4を形成して、その後に摩擦攪拌により溶接ビード部4を改質することにより、キッシン
グボンドの発生がなくなる。更には、攪拌ピン31の管理や差込深さの設定が簡単になる。
【0069】
又、溶接ビード部4に凹凸や引けがあっても、攪拌による接合部の流動で凹凸や引けが解消される。
【0070】
以上説明したように、第1アルミニウム部材1と第2アルミニウム部材2とが接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法によれば、第1及び第2アルミニウム部材1、2を互いに突き合わせて、段差のある突き合わせ部3を形成する工程と、段差のある側を表面としたときに、表面側から突き合わせ部3に向けてレーザビームを照射して突き合わせ部3を溶接し、突き合わせ部3の表面から裏面に連なる溶接ビード部4を形成する工程と、回転する接合ツール33によって溶接ビード部4を攪拌する工程と、を含む。そして、攪拌工程において、接合ツール33の軸芯Lを、第1及び第2アルミニウム部材1,2の表面に垂直な方向に対して第1アルミニウム部材側に傾斜させる。これにより、接合速度が速く、接合部の品質・外観や接合強度に優れたアルミニウム構造部材の製造方法を提供することができる。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0071】
なお、本実施形態においても、レーザ溶接に際して、必要に応じて、溶加材供給ノズル22から溶加材23を供給しながら溶接することが好ましい(
図7参照)。
【0072】
また、摩擦攪拌は、本実施形態のように、レーザビームXが照射される側(表面側)だけで行うものに限らず、表面側と、該表面側と反対側(裏面側)の両面から行うものでもよい。即ち、
図9に示す変形例のように、改質部5が表面側と裏面側の両面に形成されてもよい。
【0073】
又、接合ツール33は、
図11A〜
図11Cに例示するものを適宜使用することができる。好ましくは、ショルダー32が凸曲面形状を有する
図11A、
図11Bのものが、溶融部を凹み状に滑らかにすることができるためプレス成形性が向上する。一方、
図11Cに示す接合ツール33は、ショルダー32が軸芯に向かうに従って深くなる凹状のテーパ面を有するので、摩擦攪拌時に軸芯側に溶接ビード部4の肉を集める効果がある。
【0074】
さらに、
図11Bに示すように、接合ツール33は、攪拌ピン31を有さず、ショルダー32のみからなる構成であってもよい。この場合、ショルダー32のみで溶接ビード部4を攪拌するようになるので、当該攪拌を早い速度で行うことができるようになる。
なお、
図11A、
図11Bに示すショルダー32は、凸曲面形状に限らず、凸形状であればよく、凸状のテーパ面であってもよい。
【0075】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るアルミニウム構造部材の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。第3実施形態も、第2実施形態と同様に、互いに接合される第1、第2アルミニウム部材1、2の板厚が互いに異なる場合に適用される製造方法である。具体的に、
図13Aに示すように、第2アルミニウム部材2は、第1アルミニウム部材1よりも厚くなっている。第1、第2アルミニウム部材1、2は、板厚以外に関する点は、第1実施形態と同様である。
また、第3実施形態を実施するために使用される製造装置10は、第1実施形態と同様に、定盤11と、レーザ装置20と、摩擦攪拌装置30と、を備えると共に、定盤11上に配置され、段付部を有する裏当て部材40を、さらに備える。なお、製造装置10の第1、第2実施形態と同一又は同等部分については、説明を省略或いは簡略化する。
【0077】
まず、
図13Aに示すように、定盤11に段付部を有する裏当て部材40を配置し、その上に第1及び第2アルミニウム部材1、2とを突き合わせて、第1アルミニウム部材1の表面と、第2アルミニウム部材2の表面とが平坦な突き合わせ部3を形成する。これにより、第1及び第2アルミニウム部材1、2の裏面側に段差部が形成される。
【0078】
ここで、「平坦な突き合わせ部」とは、第1及び第2アルミニウム部材1、2の表面が、第1アルミニウム部材の板厚の30%mm以内の寸法で上下にずれている場合を含む。
なお、平坦な定盤11上に、第2アルミニウム部材2を配置すると共に、突き合わせ部3に隣接して第1及び第2アルミニウム部材1、2の板厚差に相当する裏当て部材を定盤11上に配置し、該裏当て部材上に第1アルミニウム部材1を配置しても、平坦な突き合わせ部を得ることが出来る。また、裏当て部材は、突き合わせ部3において分割されて、各裏当て部材が第1及び第2アルミニウム部材1、2をそれぞれ載せるようにしてもよい。
【0079】
そして、
図13Bに示すように、その突き合わせ部3を平坦な表面側からレーザ溶接により接合して溶接ビード部4を形成する。この際、突き合わせ部3に未接合部が生じないように溶接ビード部4は、突き合わせ部3を表面から裏面に連なる、即ち、突き合わせ部3の板厚方向全体に亘って形成される。
【0080】
これにより、
図16に示すような、摩擦攪拌接合で生じることがある、いわゆるキッシングボンド部6(突き合わせ部の未接合部又は接合が著しく弱い部分)を発生することが防止できる。尚、裏当て部材40の材質は、C1020等の銅やセラミック等、アルミニウム接合材と接合しにくい材料が好適に用いられる。
【0081】
次に、
図13Cに示すように、その溶接ビード部4に回転する接合ツール33(攪拌ピン31)を突き合わせ部3の軸線に沿って(第1及び第2アルミニウム部材1、2の表面に垂直)に差し込み、溶接ビード部4およびその周囲を摩擦攪拌する。
【0082】
溶接ビード部4は一旦溶融して凝固したものであるため鋳物組織となるが、摩擦攪拌により鋳物組織が改質され、
図14に示すように、改質部(摩擦攪拌部)5が形成される。この場合、改質部5は、板厚方向に溶接ビード部4を残して形成される。鋳物組織は脆性があるため、この部分に引張荷重や曲げ荷重がかかると破断しやすいが、摩擦攪拌による金属組織の改質部5を設けることにより、組織が微細化されて鋳物組織よりも接合強度を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態では、攪拌ピン31を板厚方向に深く差し込む必要がない。これにより、攪拌ピン31に係る荷重を下げることができ、接合速度を速くすることができる。
【0084】
特に、自動車のフレーム部材等の被接合部材は厚いため、通常の摩擦攪拌接合の場合、非常に時間がかかるが、本実施形態の製造方法であれば、高い接合速度で被接合部材を接合することができる。
【0085】
一方、本実施形態のように、一旦溶融溶接(貫通溶接)を行い、凝固した溶接ビード部4を形成して、その後に摩擦攪拌により溶接ビード部4を改質することにより、キッシングボンドの発生がなくなる。更には、攪拌ピン31の管理や差込深さの設定が簡単になる。
【0086】
又、溶接ビード部4に凹凸や引けがあっても、攪拌による接合部の流動で凹凸や引けが解消される。
【0087】
以上説明したように、第1アルミニウム部材1と第2アルミニウム部材2とが接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法によれば、第1及び第2アルミニウム部材1、2を裏当て部材40の上に配置した状態で、第1及び第2アルミニウム部材1,2を突き合わせて、第1アルミニウム部材1の表面と、第2アルミニウム部材2の表面とが平坦な突き合わせ部3を形成する工程と、突き合わせ部3に向けて第1及び第2アルミニウム部材1,2の表面側からレーザビームを照射して突き合わせ部3を溶接し、突き合わせ部3の表面から裏面に連なる溶接ビード部4を形成する工程と、回転する接合ツール33によって溶接ビード部4を表面側から攪拌する工程と、を含む。これにより、接合速度が速く、接合部の品質・外観や接合強度に優れたアルミニウム構造部材の製造方法を提供することができる。
その他の構成及び作用については、第1または第2実施形態のものと同様である。
【0088】
なお、本実施形態においても、レーザ溶接に際して、必要に応じて、溶加材供給ノズル22から溶加材23を供給しながら溶接することが好ましい(
図12参照)。
【0089】
また、摩擦攪拌は、本実施形態のように、レーザビームXが照射される側(表面側)だけで行うものに限らず、表面側と、該表面側と反対側(裏面側)の両面から行うものでもよい。即ち、
図15Cに示す変形例のように、改質部5が表面側と裏面側の両面に形成されてもよい。
この場合、上記実施形態と同様、
図13Cに示すように、第1及び第2アルミニウム部材1、2の表面側から溶接ビード部4を摩擦攪拌した後、該第1及び第2アルミニウム部材2を裏当て部材40から取り外し、接合した第1及び第2アルミニウム部材1,2を上下反転させ、
図15Aに示すように、定盤11上に載置する。そして、
図15Bに示すように、裏面の段差部を摩擦攪拌接合により流動させながら溶接ビード部4も攪拌して改質する。
【0090】
その際、接合ツール33の軸芯Lを、第1アルミニウム部材1および第2アルミニウム部材2の裏面(
図15Bにおける上面)に対して垂直な方向から第1アルミニウム部材1側に角度θで傾斜させて第1アルミニウム部材1と第2アルミニウム部材2の段差部に押し付ける。なお、接合ツール33の傾斜角度θは、第1及び第2アルミニウム部材1、2の板厚差などに応じて設定されるが、例えば、該垂直な方向に対して30°以下の範囲内で傾けて設定される。
【0091】
回転する接合ツール33による攪拌と同時に、接合ツール33のショルダー32により第1アルミニウム部材1と第2アルミニウム部材2を段差なく滑らかにつなぐ形状が形成され、
図15Cに示すように、改質部(摩擦攪拌部)5が形成される。この加工により接合部表面に強度低下の原因となる凹凸がなくなり、接合強度がより高くなる。
【0092】
なお、反対面(裏面に相当)の段差部をテーパ状等の滑らかな形状に加工するものであれば、上記摩擦攪拌に限定されない。例えば、特許文献6で開示されているテーパのついた段付ロールによって滑らかな形状に加工されてもよい。
【0093】
又、第3実施形態においても、接合ツール33は、第2実施形態で説明した
図11A〜
図11Cに例示するものを適宜使用することができ、各接合ツール33は、第2実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
【0094】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形、改良などが可能である。
【0095】
例えば、上記実施形態では、レーザ溶接によって溶接ビード部4を形成しているが、本発明は、MIG溶接によって溶接ビード部4を形成してもよい。したがって、溶接ビード部4を形成する場合の溶接熱源は、レーザ溶接のレーザヘッド21でもよいし、MIG溶接の溶接トーチでもよい。
ただし、各実施形態において、MIG溶接によって溶接ビード部4を形成する場合、溶接トーチの配置は、レーザ溶接のレーザヘッド21が配置される側と同じとなる。
即ち、第2実施形態では、溶接熱源である溶接トーチは、段差のある表面側に配置される。また、第3実施形態では、溶接熱源である溶接トーチは、平坦な突き合わせ部を形成する第1及び第2アルミニウム部材の表面側に配置される。
【0096】
また、板厚が異なる第1アルミニウム部材と第2アルミニウム部材とが接合されて成るアルミニウム構造部材の製造方法については、第2及び第3実施形態のものに限定されない。即ち、板厚が異なる第1及第2アルミニウム部材を用いる場合の製造方法において、第1及び第2アルミニウム部材を互いに突き合わせて突き合わせ部を形成する工程と、突き合わせ部を溶接し、突き合わせ部の表面から裏面に連なる溶接ビード部を形成する工程と、回転する接合ツールによって溶接ビード部を攪拌する工程と、を含むものであればよい。
【実施例】
【0097】
(試験1)
まず、試験1では、本発明の第1実施形態に係る製造方法による効果を確認するため、以下の試験を行った。
表1に示すように、試験に用いた材料は、板厚3.0mmのAA6022-T4相当材(実施例1〜3、5、6、比較例1,3,4)と板厚3.0mmのJIS A7075-T6(実施例4、比較例2)である。試験片の大きさは150mm×300mmで、300mmの方の端部同士を突き合わせて接合した。接合長は280mmである。
【0098】
次に、溶接にレーザ装置20を用いた場合について説明する。レーザは、発振器がIPGフォトニクス製YLS-6000とし、ヘッドや加工機は特注製で、集光レンズは焦点距離が450mm、集光径がφ0.3mmとなる設定で溶接を実施した。
一方、MIG溶接の場合の溶接機は、溶接電源をダイヘン社製WB−P350とした。
摩擦攪拌装置30は、加工機が特注製で、接合ツール33は、
図11Cに示すような攪拌ピン31を有する通常型で、SKD61相当材で作成したものを用いた。接合ツール33は、攪拌深さが1mmの場合、ショルダー径11mm、プローブ径(ピン径)φ4mm、高さ0.9mmのものと、攪拌深さが2mmの場合、ショルダー径13mm、プローブ径(ピン径)φ5mm、高さ1.8mmのものを用いた。
【0099】
また、実施例5では、接合ツール33は、攪拌深さが0.5mmの場合、ショルダー径11mm(ピンなし)のものを用いた。
さらに、実施例6では、接合ツール33は、ショルダー径12〜13mm程度、プローブ径(ピン径)φ4mm、高さ1.5mmのものを用いた。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例1〜4のレーザ溶接の施工条件としては、レーザ出力5500W、溶接速度200cm/分で行い、溶加材はJIS A5356WY φ1.2mmで供給速度は200cm/分である。摩擦攪拌は、回転速度2000rpmでレーザ照射位置から50mm離れた場所においてレーザ溶接と同時に同じ速度で加工した。なお、実施例5の施工条件は、溶接速度を240cm/分とした以外は、実施例1〜5と同一とした。
【0102】
実施例6のMIG溶接の施工条件としては、直流パルス方式とし、電流120A、電圧18V、溶接速度150cm/分とし、溶接トーチの前進角を10°とした。また、シールドガスとして、アルゴンガスを25L/minで使用し、溶加材としては、直径1.2mmのJIS A5356−WYを用いた。また、実施例6では、MIG溶接と同じ速度で、摩擦攪拌を行った。
【0103】
また、実施例1、4及び6では、上記実施形態のように、摩擦攪拌はレーザビームXが照射される側のみから行い、
図2Dのような接合部を得た。実施例2では、第1変形例のように、摩擦攪拌はレーザビームXが照射される側(表面側)と反対側(裏面側)のみから行い、
図4Aのような接合部を得た。実施例3では、第2変形例のように、摩擦攪拌は板厚方向の両側(表面側、裏面側)から行い、
図4Bのような接合部を得た。実施例5では、第3変形例のように、接合ツール33のショルダー32のみで接合を行い、
図6Bのような接合部を得た。
【0104】
また、比較例3のレーザのみの場合は、レーザ出力5500W、溶接速度400cm/分、溶加材はJIS A5356WY φ1.2mmで供給速度は400cm/分で接合した。
【0105】
また、比較例1及び2の摩擦攪拌接合のみの場合は、ショルダー径14mm、プローブはM5、高さ2.7mmのSKD61相当材で作成したツールを用いて、回転数2200rpm、接合速度50cm/分で接合した。
【0106】
さらに、比較例4のレーザアシスト摩擦攪拌接合の場合は、レーザを先行させ摩擦攪拌接合を同時に行う方法で、接合速度は150cm/分、間隔は10mmとし、レーザはレーザ出力2000W、摩擦攪拌接合はショルダー径14mm、プローブはM5、高さ2.
7mmのSKD61相当材で作成したツールを用いて回転数2200rpmとした。
【0107】
比較例5のMIG溶接のみの場合は、直流パルス方式とし、電流120A、電圧18V、溶接速度150cm/分、溶接トーチの前進角を10°とし、シールドガスとして、アルゴンガスを25L/minで使用し、溶加材としては、直径1.2mmのJIS A5356−WYを用いた。
【0108】
接合された継手は、接合線に対して垂直方向に切断し、幅25mmの短冊片を3本、幅40mmの短冊片を3本の計6本を採取した。幅25mmの短冊片は引っ張り試験を行い、幅40mmの短冊片は裏曲げ試験を実施した。
【0109】
引っ張り試験は当該試験片の長さ方向に引張を行う引張試験(n=3)を行った。伸びはチャック間の伸びを計測し、その3回の測定結果の平均値を評価結果とした。
裏曲げ試験は、(JIS Z 3122:2013)の要領で型曲げ試験を行った。雄型の肩部の半径Rは2t=6mmで実施した。いずれも裏曲げ試験を行った。
【0110】
評価は、引っ張り試験では、同じ材料組合せでの摩擦攪拌接合の継手の伸びとの比較で、◎は優れる、○は同等、△はやや劣る、×はかなり劣る、とした。裏曲げ試験では、接合部外観を評価し、○は良好、△は小さな亀裂が散見される、×は幅全長に渡り亀裂が見られる、とした。総合評価は、Sが優良、Aが良で、Bはやや劣る、Cは劣る、とした。
【0111】
表1に示すように、本発明の範囲である実施例1〜6では良好な結果が得られたことがわかる。一方、比較例1、2、4である摩擦攪拌接合では、いずれも裏曲げ試験によりキッシングボンド部6で亀裂が生じた。また、比較例3のレーザ溶接及び比較例5のMIG溶接では、引張試験において、実施例1〜6や比較例1、2、4と比べて、低い評価となった。
【0112】
(試験2)
次に、試験2では、本発明の第2実施形態の製造方法による効果を確認するため、以下の試験を行った。表2に示すように、試験片は、板厚3.0mmと板厚1.5mmのAA6022−T4相当材(実施例7〜10、比較例6〜8)である。試験片のサイズは150mm×300mmで、300mmの方の端部同士を突き合わせて接合した。接合長は280mmである。
【0113】
なお、溶接に用いたレーザ装置20、MIG溶接機、及び、摩擦攪拌装置30は、試験1で使用したものと同一である。
【0114】
実施例7、9の接合ツール33は、
図11Aに示すような、ショルダー径が11mmの凸形状のショルダー32を有し、プローブ径(ピン径)がφ4mmの攪拌ピン31を有するものを用いた。一方、実施例8では、接合ツール33は、
図11Bに示すような、ショルダー径が11mmの凸形状のショルダー32を有し、攪拌ピン31がないものを用いた。
【0115】
【表2】
【0116】
実施例7〜9のレーザ溶接の施工条件としては、レーザ出力5500W、溶接速度200cm/分で行い、溶加材はJIS A5554WY、φ1.2mmで供給速度は200cm/分で適用した。摩擦攪拌は、回転数2000rpmでレーザ照射位置から50mm離れた場所においてレーザ溶接と同時に同じ速度で加工した。なお、実施例8の施工条件は、溶接速度を240cm/分とした以外は、実施例7、9と同一とした。
【0117】
実施例10のMIG溶接の施工条件としては、直流パルス方式とし、電流120A、電圧18V、溶接速度150cm/分とし、溶接トーチの前進角を10°とした。また、シールドガスとして、アルゴンガスを25L/minで使用し、溶加材としては、直径1.2mmのJIS A5356−WYを用いた。また、実施例10では、MIG溶接と同じ速度で、摩擦攪拌を行った。
【0118】
また、実施例7、8及び10では、上記実施形態のように、摩擦攪拌はレーザビームXが照射される側のみから行い、
図8Dのような接合部を得た。実施例9では、
図9に示す変形例のように、摩擦攪拌は、レーザビームXが照射される側(表面側)と、該表面側と反対側(裏面側)の両方から行なわれた。
【0119】
また、比較例6の摩擦攪拌接合のみの場合は、ショルダー径14mm、プローブ(攪拌ピン)はM5、高さ2.7mmのSKD61相当材で作成した接合ツールを用いて、回転数2200rpm、接合速度80cm/分で接合した。
【0120】
また、比較例7のレーザのみの場合は、レーザ出力5500W、溶接速度400cm/分、溶加材はJIS A5554WY、φ1.2mmで供給速度は400cm/分で接合した。
【0121】
比較例8のMIG溶接のみの場合は、直流パルス方式とし、電流120A、電圧18V、溶接速度150cm/分、溶接トーチの前進角を10°とし、シールドガスとして、アルゴンガスを25L/minで使用し、溶加材としては、直径1.2mmのJIS A5356−WYを用いた。
【0122】
なお、引張強度、外観評価及び総合評価の評価方法は、試験1と同様である。
【0123】
表2に示すように、本発明の範囲である実施例7〜10では良好な結果が得られたことがわかる。一方、比較例6は接合を摩擦攪拌接合のみで行ったため、接合部の外観性に劣り、又、キッシングボンド部が生じたため引張強度が劣った。
【0124】
また、比較例7のレーザ溶接では、引張試験が若干劣り、接合部に若干の凹凸が見られたため実施例7〜10に比べて低い評価となった。比較例8のMIG溶接では、引張試験、裏曲げ試験の両方において、実施例7〜10と比べて、低い評価となった。
【0125】
(試験3)
次に、試験3では、本発明の第3実施形態の製造方法による効果を確認するため、以下の試験を行った。表3に示すように、試験片は、板厚3.0mmと板厚1.5mmのAA6022−T4相当材(実施例11〜14、比較例9〜11)である。試験片のサイズは150mm×300mmで、300mmの方の端部同士を突き合わせて接合した。接合長は280mmである。
【0126】
なお、溶接に用いたレーザ装置20、MIG溶接機、及び、摩擦攪拌装置30は、試験1で使用したものと同一である。
【0127】
実施例11、13及び14の接合ツール33は、
図11Aに示すような、ショルダー径が11mmの凸形状のショルダー32を有し、プローブ径(ピン径)がφ4mmの攪拌ピン31を有するものを用いた。一方、実施例12では、接合ツール33は、
図11Bに示すような、ショルダー径が11mmの凸形状のショルダー32を有し、攪拌ピン31がないものを用いた。
【0128】
【表3】
【0129】
実施例11、13の施工条件としては、レーザ溶接が、レーザ出力5500W、溶接速度200cm/分で行い、溶加材はJIS A5554WY、φ1.2mmで供給速度は200cm/分で適用した。摩擦攪拌は、回転数2000rpmでレーザ照射位置から50mm離れた場所においてレーザ溶接と同時に同じ速度で加工した。なお、実施例12の施工条件は、溶接速度を240cm/分とした以外は、実施例11、13と同一とした。
【0130】
実施例14のMIG溶接の施工条件としては、直流パルス方式とし、電流120A、電圧18V、溶接速度150cm/分とし、溶接トーチの前進角を10°とした。また、シールドガスとして、アルゴンガスを25L/minで使用し、溶加材としては、直径1.2mmのJIS A5356−WYを用いた。また、実施例14では、MIG溶接と同じ速度で、摩擦攪拌を行った。
【0131】
また、実施例11、12、14では、上記実施形態のように、摩擦攪拌はレーザビームXが照射される側のみから行い、
図14のような接合部を得た。実施例13では、
図15Cに示す変形例のように、摩擦攪拌はレーザビームXが照射される側(表面側)と、該表面側と反対側(裏面側)の両方から行なわれた。
【0132】
また、比較例9の摩擦攪拌接合のみの場合は、ショルダー径14mm、プローブ(攪拌ピン)はM5、高さ2.7mmのSKD61相当材で作成した接合ツールを用いて、回転数2200rpm、接合速度50cm/分で接合した。
【0133】
また、比較例10のレーザのみの場合は、レーザ出力5500W、溶接速度400cm/分、溶加材はJIS A5554WY、φ1.2mmで供給速度は400cm/分で接合した。
【0134】
比較例11のMIG溶接のみの場合は、直流パルス方式とし、電流120A、電圧18V、溶接速度150cm/分、溶接トーチの前進角を10°とし、シールドガスとして、アルゴンガスを25L/minで使用し、溶加材としては、直径1.2mmのJIS A5356−WYを用いた。
【0135】
なお、引張強度、外観評価及び総合評価の評価方法は、試験1と同様である。
【0136】
表3に示すように、本発明の範囲である実施例11〜14では良好な結果が得られたことがわかる。一方、比較例9は接合を摩擦攪拌接合のみで行ったため、接合部の外観性に劣り、又、キッシングボンド部が生じたため引張強度が劣った。
【0137】
また、比較例10のレーザ溶接では、引張試験が若干劣り、接合部に若干の凹凸が見られたため実施例11〜14に比べて低い評価となった。比較例11のMIG溶接では、引張試験、裏曲げ試験の両方において、実施例11〜14と比べて、低い評価となった。