特許第6357592号(P6357592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6357592相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合メモリセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357592
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合メモリセル
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/44 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   G11C11/44ZAA
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-545321(P2017-545321)
(86)(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公表番号】特表2018-514893(P2018-514893A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】US2016021028
(87)【国際公開番号】WO2016144813
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年8月25日
(31)【優先権主張番号】14/645,103
(32)【優先日】2015年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503178185
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NORTHROP GRUMMAN SYSTEMS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハー、アナ ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハー、クエンティン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ミクリック、アンドリュー ホステトラー
【審査官】 後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−525426(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/180946(WO,A1)
【文献】 特表2013−529380(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0184445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 11/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリセルであって、
前記メモリセルに供給される書き込み電流に応答して二値論理1状態に対応する第1の二値論理状態および二値論理0状態に対応する第2の二値論理状態のうちの1つを記憶し、記憶されたデジタル状態に基づいて超伝導相を生成するように構成されたPHMJJ(相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合)と、
前記メモリセルに供給された読み出し電流に応答して読み出し動作を実行するように構成された超伝導読み出し選択デバイスと、
前記読み出し動作中に前記PHMJJの前記超伝導相に基づいて出力を提供するように構成された少なくとも1つのジョセフソン接合とを備え、前記出力は記憶されたデジタル状態に対応する、メモリセル。
【請求項2】
前記超伝導相は、第1の超伝導相であり、前記超伝導読み出し選択デバイスは、前記読み出し電流に応答して第2の超伝導相を提供して少なくとも1つのジョセフソン接合をトリガするように構成されたMBJJ(磁気バリアジョセフソン接合)として構成される、請求項1に記載のメモリセル。
【請求項3】
前記MBJJおよび前記PHMJJは、前記メモリセル内で互いに並列に配置されており、前記少なくとも1つのジョセフソン接合は、前記MBJJおよび前記PHMJJに対して直列に配置され、SQUID(超伝導量子干渉素子:Superconducting Quantum Interference Device)を形成する一対のジョセフソン接合を含む、請求項2に記載のメモリセル。
【請求項4】
前記読み出し電流は、読み出し動作中に前記メモリセルに供給される第1の読み出し電流及び第2の読み出し電流を含み、前記第1の読み出し電流は、前記少なくとも1つのジョセフソン接合をバイアスするために前記MBJJおよび前記PHMJJを相互接続するノードに供給され、前記第2の読み出し電流は、前記MBJJをゼロ状態からπ状態に切り替えて前記第2の超伝導相を提供するために前記MBJJに誘導的に結合される、請求項2に記載のメモリセル。
【請求項5】
前記PHMJJは、前記第1および第2の二値論理状態のうちの一方を記憶していることに応答して前記超伝導相を生成するように構成され、前記PHMJJは、前記超伝導相、前記読み出し電流、および前記超伝導読み出し選択デバイスに基づいて前記読み出し動作中に前記少なくとも1つのジョセフソン接合をトリガして、前記メモリセルの出力に第1の振幅を有する電圧を提供するように構成され、電圧の前記第1の振幅は、前記第1および第2の二値論理状態のうちの一方を示す、請求項1に記載のメモリセル。
【請求項6】
前記PHMJJは、前記第1および第2の二値論理状態のうちの他方を記憶していることに応答してゼロの超伝導相を生成するように構成され、前記PHMJJは、前記ゼロの超伝導相に基づいて前記読み出し動作中に前記少なくとも1つのジョセフソン接合をトリガせずに、第2の振幅を有する電圧が出力に提供されるように構成され、電圧の前記第2の振幅は、前記第1および第2の二値論理状態のうちの他方を示す、請求項5に記載のメモリセル。
【請求項7】
JMRAM(ジョセフソン磁気ランダムアクセスメモリ)システムであって、請求項1に記載のメモリセルを含むメモリセルのアレイを備え、前記メモリセルのアレイは、行及び列に配置され、前記書き込み電流は、前記メモリセルのアレイの行に関連するワード書き込み線上に供給されるワード書き込み電流であって、前記メモリセルのアレイのビット書き込み線上に第2の書き込み電流がビット書き込み電流として供給され、前記読み出し電流は、前記メモリセルのアレイの前記行に関連するワード読み出し線上に供給されるワード読み出し電流であり、第2の読み出し電流がビット読み出し線上にビット読み出し電流として供給される、JMRAMシステム。
【請求項8】
前記ワード書き込み線および前記ワード読み出し線は、前記アレイの所与の行内の前記メモリセルの各々に共通であり、前記ビット書き込み線および前記ビット読み出し線は、前記アレイの所与の列内の前記メモリセルの各々に共通であり、前記メモリセルのアレイは、前記アレイの各行および各列に対して直列に配置されるようにする、請求項7に記載のJMRAMシステム。
【請求項9】
所与のメモリセルに関連する前記ワード書き込み線および前記ビット書き込み線の各々は、前記PHMJJに磁気的に結合されており、前記ワード書き込み電流は、データ書き込み動作中に所与の1つの行におけるメモリセルの各々を通過する前記ワード書き込み線上に供給され、前記ビット書き込み線は、個々の1つの列に関連する複数のビット書き込み線を含み、個々の複数のビット書き込み電流の各々は、所与の1つの行におけるメモリセルの各々における二値論理1状態および二値論理0状態のうちの1つの記憶に関連付けられている、請求項7に記載のJMRAMシステム。
【請求項10】
前記ワード読み出し線は、個々の1つの行に関連する複数のワード読み出し線を含み、前記複数のワード読み出し線の各々は、所与の1つの列における個々のメモリセルの各々に関連する前記超伝導読み出し選択デバイスに誘導的に結合され、前記ビット読み出し線は、個々の1つの列に関連し、かつ前記読み出し動作中に前記ワード読み出し電流に応答して選択された所与の1つの行における個々のメモリセルの各々に関連する少なくとも1つのジョセフソン接合をバイアスして前記複数のビット読み出し線上の所与の1つの行における前記PHMJJの各々の記憶されたデジタル状態の表示を提供するために設けられる複数のビット読み出し線を含む、請求項7に記載のJMRAMシステム。
【請求項11】
JMRAM(ジョセフソン磁気ランダムアクセスメモリ)システムにおいてメモリセルを読み出すための方法であって、
前記メモリセルに第1の読み出し電流を供給して超伝導読み出し選択デバイスを介した読み出し動作のためのメモリセルを選択するステップであって、前記メモリセルは、超伝導相に基づいて二値論理1状態および二値論理0状態のうちの1つを記憶するように構成されたPHMJJ(相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合)を含む、前記選択するステップと、
第2の読み出し電流を供給して少なくとも1つのジョセフソン接合をバイアスするステップと、
前記第1および第2の読み出し電流により前記読み出し動作中に生成された電圧の振幅を測定するステップであって、電圧の振幅は、前記超伝導相の大きさに基づいて記憶されたデジタル状態に対応する、前記測定するステップとを含む方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのジョセフソン接合は、前記超伝導読み出し選択デバイスおよび前記PHMJJに対して直列に配置され、SQUID(超伝導量子干渉素子:Superconducting Quantum Interference Device)を形成する一対のジョセフソン接合を含み、前記電圧の振幅を測定するステップは、前記超伝導相の大きさに基づいて前記一対のジョセフソン接合がトリガしたかどうかに基づいて生成された電圧の振幅を測定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記超伝導読み出し選択デバイスは、MBJJ(磁気バリアジョセフソン接合)であり、前記第1の読み出し電流を供給することは、前記読み出し動作中に前記第1の読み出し電流を前記MBJJに供給して前記MBJJをゼロ状態からπ状態に切り替えることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の読み出し電流を供給することは、前記第1の読み出し電流を前記MBJJおよび前記PHMJJを相互接続するノードに供給することを含み、前記第2の読み出し電流を供給することは、前記第2の読み出し電流を前記MBJJに誘導的に結合することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の読み出し電流を供給することは、前記メモリセルおよびメモリセルのアレイにおける列の追加のメモリセルの各々に前記第2の読み出し電流をビット読み出し電流として供給することを含み、前記第1の読み出し電流を供給することは、前記メモリセルおよびメモリセルのアレイにおける行の追加のメモリセルの各々に前記第1の読み出し電流をワード読み出し電流として供給することを含み、前記振幅を測定するステップは、前記ワード読み出し電流および個々の複数のビット読み出し電流に基づいて前記メモリセルおよび行の追加のメモリセルの各々に関連する複数の電圧の振幅を測定することを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に量子古典的デジタル超伝導回路、特に相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合メモリセルに関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導デジタル技術は、前例のない高速、低電力消費、および低い動作温度による恩恵をもたらすコンピューティングリソースおよび/または通信リソースを提供している。何十年もの間、超伝導デジタル技術は、論理回路に比べて十分な容量とスピードを備えたランダムアクセスメモリ(RAM)が欠如していた。これは、電気通信および信号インテリジェンスにおける超伝導技術の現在の応用に関する工業化にとって大きな障害となっており、特にハイエンド量子コンピューティングに関して困難である。現在、超伝導メモリに関して考慮されているすべての発想は、超伝導誘導ループ内の磁束量子の量子化に基づいている。このようなメモリは、適切な歩留りを有するファウンドリプロセスを前提とする高速レジスタファイルに容易に適合することができるが、基本的に誘導ループのサイズによって制限されるので、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)の集積密度を達成することができない。メモリコアがCMOS技術で具現化され、かつビット線検出がジョセフソンデバイスを用いて実行される1つのハイブリッドメモリソリューションが提案されている。しかしながら、このような構成は、標準的なCMOSよりも名目上高い性能しか得られず、極低温環境に関する比較的大きな電力損失という欠点がある。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態は、メモリセルについて説明している。メモリセルは、メモリセルに供給される書き込み電流に応答して二値論理1状態に対応する第1の二値論理状態および二値論理0状態に対応する第2の二値論理状態のうちの1つを記憶し、記憶されたデジタル状態に基づいて超伝導相を生成するように構成されたPHMJJ(相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合)を含む。メモリセルは、メモリセルに供給された読み出し電流に応答して読み出し動作を実行するように構成された超伝導読み出し選択デバイスをも含む。メモリセルは、読み出し動作中にPHMJJの超伝導相に基づいて出力を提供するように構成された少なくとも1つのジョセフソン接合をさらに含み、出力は記憶されたデジタル状態に対応する。
【0004】
別の例示的な実施形態は、JMRAMシステムにおいてメモリセルを読み出すための方法を含む。方法は、メモリセルに第1の読み出し電流を供給して超伝導読み出し選択デバイスを介した読み出し動作のためのメモリセルを選択するステップを含む。メモリセルは、超伝導相に基づいて二値論理1状態および二値論理0状態のうちの1つを記憶するように構成されたPHMJJ(相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合)を含む。方法は、第2の読み出し電流を供給して少なくとも1つのジョセフソン接合をバイアスするステップをも含む。方法は、第1および第2の読み出し電流により読み出し動作中に生成された電圧の振幅を測定するステップをさらに含む。電圧の振幅は、超伝導相の大きさに基づいて記憶されたデジタル状態に対応することができる。
【0005】
別の例示的な実施形態は、JMRAM(ジョセフソン磁気ランダムアクセスメモリ:Josephson magnetic random access memory)システムを含む。システムは、データ書き込み動作中に複数のメモリセルの所与の行を選択する個々のワード書き込み電流を伝導するように構成された複数のワード書き込み線を含む。複数のメモリセルの各々が、MBJJ(磁気バリアジョセフソン接合)、PHMJJ(相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合)、および少なくとも1つのジョセフソン接合を含む。システムは、二値論理0状態および二値論理1状態のうちの1つに対応するデジタル状態を複数のメモリセルの所与の行の各メモリセルに関連するPHMJJに書き込むために個々のビット書き込み電流を伝導するように構成された複数のビット書き込み線も含む。PHMJJは、複数のワード書き込み線の個々の1つおよび複数のビット書き込み線の個々の1つに磁気的に結合することができる。システムは、読み出し動作中に所与の行におけるメモリセルの各々のMBJに供給されて所与の行のメモリセルを選択する個々のワード読み出し電流を伝導するように構成された複数のワード読み出し線も含む。システムは、所定の列におけるメモリセルの各々の少なくとも1つのジョセフソン接合をバイアスするために個々のビット読み出し電流を伝導するように構成された複数のビット読み出し線をさらに含む。個々のメモリセルにおけるMBJJは、ワード読み出し電流に応答してゼロ状態からπ状態に切り替えて、読み出し動作中にπ状態およびPHMJJによって提供される超伝導相に応答してバイアスされた少なくとも1つのジョセフソン接合を介して記憶されたデジタル状態の表示を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一例のメモリセルを示す図である。
図2】一例の第1のメモリ状態にあるメモリセルを示す図である。
図3】一例のメモリセルの読み出しの図解を示す図である。
図4】一例の第2のメモリ状態にあるメモリセルを示す図である。
図5】別の例のメモリセルの読み出しの図解を示す図である。
図6】一例のジョセフソン磁気ランダムアクセスメモリ(JMRAM)システムを示す図である。
図7】他の例のJMRAMシステムを示す図である。
図8】一例のJMRAMシステムにおいてメモリセルを読み出す方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、一般的に、量子古典的デジタル超伝導回路に関し、具体的には、相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合メモリセルに関する。JMRAMシステムは、関連するバリア内に強磁性材料を含むように構成することができる相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合(PHMJJ:phase hysteretic magnetic Josephson junction)をそれぞれ含む複数のメモリセルのアレイを実施することができる。複数のメモリセルは、それぞれ少なくとも1つのジョセフソン接合(例えば、PHMJJと直列の一対のジョセフソン接合)を含むこともできる。PHMJJは、PHMJJに関連するワード書き込み電流およびビット書き込み電流に応答して、二値論理1状態または二値論理0状態のうちの1つに対応するデジタル状態を記憶するように構成することができる。一例として、ワード書き込み電流及びビット書き込み電流はそれぞれ専用のワード書き込み線及びビット書き込み線に供給することができ、ビット書き込み線に供給されたビット書き込み電流に基づいてPHMJJの論理状態を設定することができる。
【0008】
さらに、アレイの複数のメモリセルの各々のPHMJJは、ワード読み出し電流およびビット読み出し電流に応答して、記憶されたデジタル状態の表示を提供することができる。一例として、PHMJJは、内部に記憶されたデジタル状態に基づく大きさを有する超伝導相を生成するように構成された切り替え可能なπ接合として構成することができる。一例として、超伝導相は、第1の記憶されたデジタル状態に対応する第1の大きさを有するとともに、第2の記憶されたデジタル状態に対応する第2の大きさ(例えば、ゼロの大きさ)を有することができる。従って、超伝導相は、アレイの行の各メモリセルの少なくとも1つのジョセフソン接合に関連する臨界電流を低下させることができる。従って、記憶されたデジタル状態に対応する振幅を有する電圧を生成するために、ジョセフソン接合をトリガするか、またはトリガしないように、ワード読み出し電流およびビット読み出し電流を供給することができる。一例として、ビット読み出し電流は、ジョセフソン接合に対してバイアスを提供することができ、ワード読み出し電流は、超伝導読み出し選択デバイスに供給されるようにすることができる。例えば、超伝導読み出し選択デバイスは、ワード読み出し電流に応答してゼロ状態からπ状態に切り替えることができる磁気バリアジョセフソン接合(MBJJ:magnetic barrier Josephson junction)として構成することができ、従って、記憶されたデジタル状態のうちの1つにおけるジョセフソン接合をトリガすることを可能にし、記憶されたデジタル状態のうちの他の1つにおけるジョセフソン接合をトリガしないようにすることができる。従って、ビット読み出し線は、PHMJJのデジタル状態が二値論理1状態に対応するか、または二値論理0状態に対応するかに基づいて変化する振幅を有する電圧を有することができる。本明細書で説明するように、ジョセフソン接合に関する「トリガ」という用語は、ジョセフソン接合が臨界電流を超えるジョセフソン接合を介した電流フローに応答して離散電圧パルスを生成する現象を説明する。
【0009】
図1は、本発明の態様による一例のメモリセル10を示す。一例として、メモリセル10は、本明細書でより詳細に説明するように、行および列としてアレイ状に配列された複数のメモリセルの1つに対応することができる。
【0010】
メモリセル10は、メモリセル10を各々が通過する第1の書き込み線WLWおよび第1の読み出し線WLRを含む。第1の書き込み線WLWは、データ書き込み動作中に第1の書き込み電流IWWを伝導し、第1の読み出し線WLRは、データ読み出し動作中に第1の読み出し電流IWRを伝導する。一例として、第1の書き込み電流IWWは、アレイ内のメモリセルの行に関連するワード書き込み電流に対応することができ、第1の読み出し電流IWRは、アレイ内のメモリセルの行に関連するワード読み出し電流に対応することができる。例えば、第1の書き込み線WLWおよび第1の読み出し線WLRは、メモリセル10の両側の所定の行の隣接するメモリセルに同様に結合され得る。従って、第1の書き込み電流IWWおよび第1の読み出し電流IWRは、個々のデータ書き込み動作中およびデータ読み出し動作中に、メモリセル10を含む行内の全てのメモリセルシステムに流れる。同様に、メモリセル10は、メモリセル10を各々が通過する第2の書き込み線BLWおよび第2の読み出し線BLRを含む。第2の書き込み線BLWは、データ書き込み動作中に第2の書き込み電流IBWを伝導し、第2の読み出し線BLRは、データ読み出し動作中に第2の読み出し電流IBRを伝導する。一例として、第2の書き込み電流IBWは、アレイ内のメモリセルの列に関連するビット書き込み電流に対応することができ、第2の読み出し電流IBRは、メモリセルの列に関連するビット読み出し電流に対応することができる。同様に、第2の書き込み線BLWおよび第2の読み出し線BLRは、メモリセル10の上下の所与の列の隣接するメモリセルに同様に結合され得る。従って、第2の書き込み電流IBWおよび第2の読み出し電流IBRは、個々のデータ書き込み動作中およびデータ読み出し動作中に、メモリセル10を含む列内の全てのメモリセルシステムに流れる。一例として、第2の読み出し線BLR上に供給される第2の読み出し電流IBRは、DCバイアス電流として供給することができる。
【0011】
メモリセル10はまた、二値論理1状態または二値論理0状態のうちの1つに対応するデジタル状態を記憶するように構成された相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合(PHMJJ)12を含む。一例として、PHMJJ 12は、スイッチ可能なπ接合として構成される関連するバリア内に強磁性材料を含むことができる。メモリセル10はまた、PHMJJ 12と直列に配置された第1のジョセフソン接合14および第2のジョセフソン接合16を含む。一例として、ジョセフソン接合14および16は、超伝導体−絶縁体−超伝導体ジョセフソン接合として構成することができる。PHMJJ 12は、ニオブ(Nb)などの超伝導材料の外部層と、強磁性材料の1つまたは複数の内部薄膜層とを含むことができる。一例として、強磁性材料の薄膜層は、実質的に固定された磁場を有する1つまたは複数の「硬質」強磁性層と、直交電流によって局所的に生成される磁場の結果として変化させることができる1つまたは複数の「軟質」強磁性層と含むことができる。さらに、PHMJJ 12は、超伝導層および/または強磁性層が交互に配置された、酸化物層などの1つまたは複数の追加の層を含むことができる。
【0012】
図1に示すように、第1の書き込み線WLWおよび第2の書き込み線BLWは、符号16で示すように、PHMJJ 12に磁気的に結合されていることが示されている。一例として、PHMJJ 12は、2つ以上の異なる強磁性層を含むことができ、一方の強磁性層の磁場は実質的に固定されている。他の1つまたは複数の強磁性層の磁場配向は、第1の書き込み電流IWWおよび第2の書き込み電流IBWによって局所的に生成される磁場の結果として変化させることができる。
【0013】
従って、PHMJJ 12の構成に基づいて、第1の書き込み電流IWWおよび第2の書き込み電流IBWは、データ書き込み動作中の個々の電流の流れの方向に基づいてPHMJJ 12の磁気状態を利用して、PHMJJ 12のデジタル状態を二値論理1状態または二値論理0状態に設定するための磁界を生成することができる。一例として、第1の書き込み電流IWWおよび第2の書き込み電流IBWによって生成された合成磁界が硬質強磁性層の内部磁界と同じ向きを有する場合、第1の書き込み電流IWWおよび第2の書き込み電流IBWの個々の磁界は、共に正にまたは負に加算して、相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合のデジタル状態を、それぞれ二値論理1状態または二値論理0状態に対応するように設定することができる。しかしながら、第1の書き込み電流IWWおよび第2の書き込み電流IBWによって生成された合成磁界が硬質強磁性層の内部磁界と逆の向きを有する場合、PHMJJ 12のデジタル状態は変化しない状態に維持される。別の例として、第1の書き込み電流IWWおよび第2の書き込み電流IBWは、一連の書き込み電流パルスとして印加することができ、第1の書き込み電流パルスIWWが第2の書き込み電流パルスIBWと時間的に重なる場合、PHMJJ 12のデジタル状態は、二値論理1状態または二値論理0状態に対応することができる。しかしながら、このようなパルスが1つだけ存在する場合、または第1および第2の書き込み電流パルスIWWおよびIBWが時間的に十分に重ならない場合、PHMJJ 12のデジタル状態は変化しない状態に維持される。
【0014】
同様に、第1の書き込み電流IWWおよび第2の書き込み電流IBWのうちの1つのみの個々の磁場は、PHMJJ 12のデジタル状態を変化させるのに不十分であり得るため、アドレス指定されていない複数の行のメモリセルは、第2の書き込み電流IBWの流れに関わらず複数の行の個々のデジタル状態を維持する。さらに、第1の書き込み線WLWおよび第2の書き込み線BLWの超伝導性および超伝導接地面の存在に基づいて、書き込み線WLW、BLWと、関連するメモリシステム内の他のメモリセルに関連する書き込み線との間の交差結合を実質的に緩和することができる。従って、任意の行における第1の書き込み電流IWWの任意の電流の流れ方向に対して、各列における個々の第2の書き込み電流IBWの電流の流れ方向を制御して、データ書き込み動作中に任意の行における各PHMJJ 12のデジタル状態を設定し、第1の書き込み電流IWWが供給されない他のいずれかの行のいずれかのメモリセルにおけるデジタル状態に影響を与えないようにすることができる。
【0015】
メモリセル10は、図1の例で示される磁気バリアジョセフソン接合(MBJJ)としての超伝導読み出し選択デバイス18をも含む。一例として、MBJJ 18は、PHMJJ 12と実質的に同様に構成することができるが、ヒステリシス特性を有するか、または有することなしに製造され得る。MBJJ 18は、PHMJJ 12と並列に配置されるものとして示され、第2の読み出し線BLRと導電的に結合され、かつ第1の読み出し線WLRと誘導的に結合される。第2の読み出し線BLRは、PHMJJ 12とMBJJ 18とを相互接続するノード20に結合されて、第2の読み出し電流IBRがノード20においてメモリセル10に入るようにし、かつジョセフソン接合14と16との間のメモリセル10の出力に対応するノード22に結合されて、第2の読み出し電流IBRがノード22からメモリセル10を出るようにする。
【0016】
PHMJJ 12のデジタル状態は、第1の読み出し電流IWRおよび第2の読み出し電流IBRに応答して読み出し動作中にメモリセル10から読み出すことができる。具体的には、第1の読み出し電流IWRを第1の読み出し線WLR上に供給して、関連するメモリアレイ内のメモリセルの行を選択することができる。第1の読み出し電流IWRは、第1の読み出し線WLRとMBJJ 18との誘導結合に基づいて、MBJJ 18に誘導的に供給される直流電流パルスとして供給される。従って、第1の読み出し電流IWRは、MBJJ 18を読み出し動作中にゼロ状態からπ状態に切り替えることができる。第2の読み出し電流IBRは、ジョセフソン接合14、16にバイアスを供給するためにノード20に供給される。従って、第1の読み出し電流IWRに起因するMBJJ 18のπ状態から生じる超伝導相(例えば、磁束量子の半分)がPHMJJ 12の超伝導相(例えば、磁束量子の半分)に加えられ、これにより、ジョセフソン接合14,16の臨界閾値に対する超伝導相の影響に基づき、かつ第2の読み出し電流IBRによって供給されるバイアスに基づいてジョセフソン接合14,16をトリガすることができる。PHMJJ 12の記憶された二値デジタル状態は、PHMJJ 12によって提供され得る超伝導相の大きさに基づいて、第2の読み出し線BLR上の電圧の振幅によって決定することができる。本明細書では、「超伝導相」は、π状態にあるMBJJ 18に応答してMBJJ 18およびジョセフソン接合14、16を介する第1のループ内、およびπ状態にあるPHMJJ 12に応答してPHMJJ 12および第1および第2のジョセフソン接合14、16を介する第2のループ内を循環する自然発生の超電流に対応し、この超電流は、インダクタンス項よって分割された内部超伝導磁束量子に基づく大きさを有する。
【0017】
一例として、メモリセル10は、MBJJ 18のπ状態が、本明細書で説明する書き込み動作中に記憶されたデジタル状態に対応するものとして設定され得るPHMJJ 12のπ状態と同じ極性を有するように設計することができる。従って、MBJJ 18及びPHMJJ 12の超伝導相は、第1の記憶された論理状態(例えば、記憶された論理1状態)の読み出し動作中に実質的に一貫して相加的であり得る。例えば、PHMJJ 12が論理1の二値状態を記憶している場合、PHMJJ 12は、π状態にあるMBJJ 18の超伝導相と同じ極性を有する第1の超伝導相の大きさ(例えば、正の超伝導相)を有する。従って、第2の読み出し電流IBRによるバイアスに加えて、PHMJJ 12およびMBJJ 18の個々のπ状態の合成された超伝導相は、ジョセフソン接合14および16をトリガするのに十分である。従って、ジョセフソン接合14、16は、発振的にトリガして、第2の読み出し線BLR上の電圧を増加させて論理1状態を示すようにすることができる。しかしながら、別の例として、PHMJJ 12が論理0の二値状態を記憶している場合、PHMJJ 12は、ゼロ超伝導相であり得る第2の超伝導相の大きさを有する。従って、MBJJ 18のπ状態の超伝導相および第2の読み出し電流IBRによって供給されるバイアスは、PHMJJ 12のπ状態の超伝導相が存在しないことによってジョセフソン接合14、16をトリガするには不十分である。従って、第2の読み出し線BLR上の電圧は、実質的に減少した振幅(例えば、ゼロボルト)に維持されて、論理0状態を示す。
【0018】
図2は、第1のメモリ状態にある一例のメモリセル10の図解50を示す。メモリセル10は、図2において第2の書き込み線BLWおよび第1の書き込み線WLWを簡潔化のために省略して示されている。一例として、PHMJJ 12は、図2の例では、論理0の二値状態を記憶することができる。例えば、前に説明したように、PHMJJ 12に論理0の二値状態を磁気的に記憶するために、事前に設けられた書き込み動作中にメモリセル10に第1および第2の書き込み電流IWWおよびIBWが供給される。その結果、図2の例において、PHMJJ 12は、大きさゼロの超伝導相(すなわち、超伝導相なし)を供給する。メモリセル10は、読み出し動作の前のような記憶状態として図解50に示されている。従って、第1の読み出し線WLRおよび第2の読み出し線BLRには、読み出し電流は流れない。第1の読み出し電流IWRは図解50には示されていないので、MBJJ 18はゼロ状態で示されており、超伝導相を提供しない。
【0019】
図3は、一例のメモリセル10の読み出しの図解100を示す。図3の例において、メモリセル10は、読み出し動作中のものが示される。従って、(例えば、直流電流パルスとして)第1の読み出し電流IWRは、第1の読み出し線WLR上に流れ、かつMBJJ 18に誘導的に供給される。その結果、MBJJ 18は、ゼロ状態からπ状態に切り替わり、MBJJ 18から流れる電流Iπ1として示される超伝導相を提供する。
【0020】
また、図3の例において、第2の読み出し電流IBRは、MBJJ 18とPHMJJ 12との間のノード20においてメモリセル10に供給される。従って、電流Iπ1が第2の読み出し電流IBRに加算される。図3の例において、電流Iπ1と第2の読み出し電流IBRが合成されて、PHMJJ 12とMBJJ 18を介して流れる第1の電流ループIと、ジョセフソン接合14と16とMBJJ 18を介して流れる第2の電流ループIとが提供される。PHMJJ 12はいかなる超伝導相も提供しないので、電流Iπ1および第2の読み出し電流IBRの両方の一部(即ち、図3の例における電流ループI)が、PHMJJ 12を流れる。従って、PHMJJ 12を流れる電流Iπ1および第2の読み出し電流IBRの両方の一部は、ジョセフソン接合14および16を介する流れには利用されず、電流ループIの一部のみが、ジョセフソン接合14および16を流れるセンス電流として残る。電流ループIは、ジョセフソン接合14および16の臨界電流よりも小さい大きさを有し、従って、ジョセフソン接合14および16をトリガするには不十分である。従って、第2の読み出し線BLR上で測定される電圧は、PHMJJ 12に記憶されている論理0の二値状態を示す実質的に小さい振幅(例えば、ゼロボルト)を維持する。
【0021】
電流Iπ1の電流方向は、図3の例に示すように限定されないことを理解されたい。一例として、MBJJ 18がπ状態に切り替わることに応答して、電流Iπ1に関連する超伝導相を反対方向に提供することができる。しかしながら、第2の読み出し電流IBRは、ジョセフソン接合14,16を介して、ノード20からノード22へ並列にほぼ均等に流れる。従って、電流I、Iの電流方向は、電流Iπ1に関連する超伝導の方向に基づいて切り替えることができる。
【0022】
図4は、第2のメモリ状態にある一例のメモリセル10の図解150を示す。図2の例においてすでに説明したのと同様に、メモリセル10は、図4の例において第2の書き込み線BLW及び第1の書き込み線WLWを簡潔化のために省略して示されている。一例として、PHMJJ 12は、図4の例において、論理1の二値状態を記憶することができる。例えば、前に説明したように、論理1の二値状態をPHMJJ 12に磁気的に記憶するための事前に設けられた書き込み動作中にメモリセル10には第1および第2の書き込み電流IWWおよびIBWが供給される。その結果、図4の例において、PHMJJ 12は、PHMJJ 12に流れる電流Iπ2として示される第2の大きさ(例えば、非ゼロの大きさ)の超伝導相を提供する。従って、電流Iπ2は、PHMJJ 12およびMBJJ 18を介する第1のループに反時計回り方向の電流ループIとして流れ、PHMJJ 12およびジョセフソン接合14、16を介する第2のループに時計回り方向の電流ループIとして流れる。メモリセル10は、読み出し動作の前のような記憶状態として図解150で示されている。このため、第1の読み出し線WLRおよび第2の読み出し線BLRに読み出し電流が流れるものとして示されていない。この理由は、第1の読み出し電流IWRは図解150において供給されてため、MBJJ 18はゼロ状態であり、超伝導相を提供しないことが示されているからである。
【0023】
図5は、別の例のメモリセル10の読み出しの図解200を示す。図5の例において、メモリセル10は、読み出し動作中のものが示される。従って、第1の読み出し電流IWRは、第1の読み出し線WLR上(例えば、直流電流パルスとして)に流れ、MBJJ 18に誘導的に供給される。その結果、MBJJ 18は、ゼロ状態からπ状態に切り替わり、MBJJ 18から流れる電流Iπ1として示される超伝導相を提供する。すでに説明したように、MBJJ 18の超伝導相が、PHMJJ 12の超伝導相と同じ極性を有するようにメモリセル10を設計することができる。従って、電流Iπ1は、図5の例においてPHMJJ 12を流れる電流Iπ2と同じ方向にMBJJ 18を流れるものとして示されている。この結果、PHMJJ 12とMBJJ 18との超伝導相が合成され、電流Iπ1とIπ2とが合成される。図5の例において、電流ループIは電流Iπ2に対応し、電流ループIは電流Iπ1に対応し、電流ループIはMBJJ 18およびジョセフソン接合14、16を介して流れ、電流ループIはPHMJJ 12とジョセフソン接合14、16を介して流れる。
【0024】
さらに、図5の例において、第2の読み出し電流IBRは、MBJJ 18とPHMJJ 12との間のノード20においてメモリセル10に供給される。PMMJJ 12の超伝導相は第2の大きさを有し、かつMBJJ 18の超伝導相と合成されるので、電流ループIおよびIの合成された振幅が第2の読み出し電流IBRに加算される。換言すれば、電流ループIおよびIの合成された振幅は、第2の読み出し電流IBRに対するジョセフソン接合14の臨界電流を減少させるように作用する。結果として生じる合成された電流振幅は、ジョセフソン接合14の臨界電流よりも大きい振幅を有し、従って、ジョセフソン接合14をトリガするのに十分である。これに応答して、ジョセフソン接合14はトリガして第2の読み出し線BLR上に電圧パルスを生成する。従って、ジョセフソン接合14をトリガすることにより、ジョセフソン接合16がトリガされ、これにより、ジョセフソン接合14、16の間で連続的なトリガリングが発振的に続けられ、第2の読み出し線BLR上の電圧パルスが実質的に維持される。従って、第2の読み出し線BLR上の電圧パルスによって提供される実質的に増加した電圧は、PHMJJ 12に記憶される論理1の二値状態を示す。
【0025】
前に説明したのと同様に、電流Iπ1、Iπ2および第2の読み出し電流IBRの電流方向は、図4および図5の例に示すように限定されないことを理解されたい。一例として、電流Iπ2に関連する超伝導相は、代わりに、図4の例とは反対方向に提供されてもよい。しかしながら、すでに説明したように、メモリセル10は、MBJJ 18の超伝導相がPHMJJ 12の超伝導相と同じ極性を有するように設計することができる。従って、MBJJ 18がπ状態に切り替わることに応答して、電流Iπ1に関連する超伝導相も同様に反対方向に供給して電流Iπ2と合成することができる。また、すでに説明したように、第2の読み出し電流IBRは、ジョセフソン接合14,16を介してノード20からノード22に向かって並列にほぼ均等に流れる。従って、電流I、Iの電流方向は、電流Iπ1およびIπ2に関連する超伝導相の方向に基づいて切り替えられる。従って、結果として得られる合成電流振幅は、ジョセフソン接合16の臨界電流よりも大きい振幅を有することができ、ジョセフソン接合16をトリガしてジョセフソン接合14、16を発振的に連続してトリガリングすることを提供してPHMJJ 12に格納された論理1の二値状態を示すようにするのに十分である。
【0026】
メモリセル10は、図1図5の例に限定されるものではないことを理解されたい。一例として、メモリセル10は図式で示されており、第1の線WLR及びWLW及び第2の線BLR及びBLWの配置は、相互に、かつPHMJJ 12に対して変更することができる。例えば、第1の書き込み線WLWおよび第2の書き込み線BLWの構成は、PHMJJ 12にデジタル状態を記憶するのに第1の書き込み電流IWWおよび第2の書き込み電流IBWの電流の流れる方向が反対となるようにすることができる。さらに、メモリセル10は、PHMJJ 12と直列の一対のジョセフソン接合14、16を実施することに限定されず、代わりに追加のジョセフソン接合または単一のジョセフソン接合を実施するか、または他の様々な配置として構成することができる。また、超伝導読み出し選択デバイスは、MBJJ 18として構成されることに限定されず、その代わりに、記憶されたデジタル状態に基づいてジョセフソン接合14、16をトリガするか、またはトリガしない読み出し動作中に、PHMJJ 12の超伝導相と合成するか、又はPHMJJ 12の超伝導相から差し引かれるようにする別の装置として構成することができる。別の例として、第1の読み出し線WLRがMBJJ 18に誘導的結合されているように示されているが、MBJJ 18をゼロ状態からπ状態に切り替える他の方法(例えば、容量性結合)を実施することができることが理解されるべきである。さらに、MBJJ 18はヒステリシス特性を有するように構成することができ、読み出し動作中に正のパルスとして第1の読み出し電流IWRを供給し、続いてMBJJ 18をリセットするために負のパルスを供給することができる。従って、メモリセル10を様々な方法で構成することができる。
【0027】
図6は、本発明の態様による一例のジョセフソン磁気ランダムアクセスメモリ(JMRAM:Josephson magnetic random access memory)システム250を示す。JMRAMシステム250は、様々なコンピューティングアプリケーションにおけるメモリ構造として実施することができる。
【0028】
JMRAMシステム250は、図6の例においてメモリセル252のアレイとして構成されているものとして示されている。詳細には、複数のメモリセル252は、WORD 1からWORD Y(ここで、Yは1より大きい整数)として示されるデータワードにそれぞれ対応する複数の行254に配置されている。複数の行254の各々は、複数の行254にわたって複数のX列256を形成する一組のメモリセル252を含み、ワード1内のメモリセル252は図6の例においてCからC(ここで、Xは1より大きい整数)として示されている。従って、JMRAMシステム250のアレイ内の複数のメモリセル252の各々は、行254および列256によって個々にアドレス指定可能である。
【0029】
図6の例において、複数の行254の各々は、WLW及びWLRからWLW及びWLRとしてそれぞれ示される関連するワード書き込み線258及びワード読み出し線260を有するものとして示される。ワード書き込み線258およびワード読み出し線260は、JMRAMシステム250の複数の行254の各々における複数のメモリセル252の各々に誘導的および/または磁気的に結合される。一例として、ワード読み出し線260は、任意の1つ行254の複数のメモリセル252の各々におけるMBJJに接続される。さらに、複数のメモリセル252の各々は、BLW及びBLRからBLW及びBLRとしてそれぞれ示される、関連するビット書き込み線262およびビット読み出し線264を有するものとして示されている。ビット書き込み線262およびビット読み出し線264は、JMRAMシステム250の複数の行254の各々における各対応する番号付けされたメモリセル252に接続され、各列256内のメモリセル252は、ビット書き込み線262およびビット読み出し線264に対して直列に配置される。図6の例は、ワード書き込み線258およびワード読み出し線260ならびにビット書き込み線262およびビット読み出し線264が、個々の行および列において他の隣接するメモリセルと直列に配置されていることを記載しているが、ワード書き込み線258およびワード読み出し線260ならびにビット書き込み線262およびビット読み出し線264は、代わりに各メモリセル252に対して専用にすることができる。
【0030】
メモリセル252の各々は、単一ビットのデータを記憶するように構成されている。具体的には、メモリセル252の各々は、二値論理1または二値論理0に対応するデジタル状態を記憶するように構成され得る少なくとも1つのPHMJJを含むことができる。デジタル状態は、個々のワード書き込み線258に供給されるワード書き込み電流と、個々のビット書き込み線262に供給されるビット書き込み電流とに応答して設定することができる。同様に、複数のメモリセル252の各々に記憶された個々のデジタル状態は、(例えば、関連するMBJJをゼロ状態からπ状態に切り替えることにより)複数の行254の所与の1つを選択するために個々のワード読み出し線260上に供給されるワード読み出し電流と、個々のビット読み出し線264上に供給されるビット読み出し電流とに基づいて複数のメモリセル252から読み出し可能である。具体的には、複数の列256の各々のビット読み出し線264は、センスレジスタ266に接続され、センスレジスタ266は、個々のビット読み出し線264を測定して、関連する行254の複数のメモリセル252の各々のデジタル状態がデータ読み出し動作中のワード読み出し電流及びビット読み出し電流に応答して二値論理1状態又は二値論理0状態に対応するかどうかを判定するように構成されている。一例として、センスレジスタ266は、本明細書でより詳細に説明するように、ビット読み出し線264に関連する電圧または電流を測定することができる。
【0031】
図7は、本発明の態様による別の例のJMRAMシステム300を示す。JMRAMシステム300は、図6の例におけるJMRAMシステム300と同様に構成することができる。従って、図7の例の以下の説明において、図6の例を参照する。具体的には、図7の例は、JMRAMシステム300からデータが読み出されるデータ読み出し動作を示す。
【0032】
JMRAMシステム300は、図7の例においてメモリセル302のアレイとして配置されているものとして示されている。具体的には、複数のメモリセル302は、WORD 1からWORD Y(ここで、Yは1より大きい整数)にそれぞれ対応する複数の行304に配置されている。複数の行304の各々は、複数の行304にわたって複数のX列306(ここで、Xは1より大きい整数)を形成する一組のメモリセル302を含む。図7の例において、示されるメモリセル302の各々は、C1_1からCX_Yまで列及び行によって指定される。
【0033】
図7の例において、メモリセルC1_1およびCX_1に対応するメモリセル302がより詳細に示されている。具体的には、図6の例におけるメモリセル50と同様に、メモリセルC1_1およびCX_1は、それぞれMBJJ 307を含む。メモリセルC1_1およびCX_1は、それぞれMBJJ 307と並列のPHMJJ 308と、一対のジョセフソン接合310、312とを含む。メモリセルC1_1およびCX_1は、図1および6の例に示すものと同様に、ワード書き込み線およびビット書き込み線を含むこともできることが理解されるが、図7の例では簡潔化のために省略されている。
【0034】
JMRAMシステム300は、メモリセルCX_1およびC1_1のMBJJ 307にそれぞれ誘導的に結合され、第1の行304に対応するWLRとして示されたワード読み出し線314も含む。JMRAMシステム300は、第Xの列および第1の列306にそれぞれ対応するBLRおよびBLRとして示されたビット読み出し線316も含む。ビット読み出し線316は、MBJJ 307およびPHMJJ 308に接続されているものとして示されている。図7の例は、ワード読み出し線WLRおよびビット読み出し線BLRおよびBLRのみを示しているが、JMRAMシステム300は、複数の行304の各々に対する追加のワード読み出し線314および複数の列306の各々に対する追加のビット読み出し線316も含む。
【0035】
ワード読み出し線WLR1は、読み出しのために第1の行304を選択する、メモリセルCX_1およびC1_1を含む第1の行304を通過するDCワード読み出し電流パルスIWRを伝導する。その結果、ワード読み出し電流IWRは、各メモリセルCX_1、C1_1内のMBJJ 307をゼロ状態からπ状態に切り替えて、個々のMBJJ 307から超伝導相を提供するようにする。また、読み出し線BLRおよびBLRは、メモリセルCX_1およびC1_1を含む第Xの列および第1の列306を通過するビット読み出し電流IBR_XおよびIBR_1をそれぞれ伝導する。ジョセフソン接合310、312を介してビット読み出し電流IBR_XおよびIBR_1と合成されたMBJJ 307およびPHMJJ 308の集合的な超伝導相は、センス電流IS_XおよびIS_1としてそれぞれメモリセルCX_1およびC1_1に集合的に示されている。
【0036】
図7の例において、メモリセルCX_1に関連するPHMJJ 308は、二値論理1状態(「1」)を記憶しているものとして示され、メモリセルC1_1に関連するPHMJJ 308は、二値論理0状態(「0」)を記憶しているものとして示されている。メモリセルCX_1およびC1_1ならびに第1の行304の残りのメモリセル302のデジタル状態は、以前に実行されたデータ書き込み動作において設定されている。図2から図5の例においてすでに説明したのと同様に、PHMJJ 308が二値論理1状態または二値論理0状態を記憶しているかどうかに応じて、PHMJJ 308は、ジョセフソン接合310、312の臨界電流に影響を与える超伝導相を提供することができる。従って、二値論理1状態を記憶していることにより、メモリセルCX_1に関連するMBJJ 307及びPHMJJ 308は、図4および図5の例において示されたものと同様に、ジョセフソン接合310、312を介してビット読み出し電流IBR_Xに加えられる超伝導相を提供することができ、センス電流IS_Xがジョセフソン接合310、312をトリガするのに十分なものとなる。しかしながら、二値論理0状態を記憶していることによって、メモリセルC1_1に関連するPHMJJ 308は、ゼロ超伝導相を提供し、その結果、MBJJ 307の超伝導相およびPHMJJ 308の超伝導相が存在しない場合のジョセフソン接合310、312を通過するビット読み出し電流IBR_1は、図2および図3の例において示されたものと同様に、ジョセフソン接合310、312をトリガするには不十分なセンス電流IS_1を提供する。
【0037】
メモリセルCX_1、C1_1のジョセフソン接合310、312の臨界電流に対するPHMJJ 308の個々の超伝導相に応答するセンス電流IS_XおよびIS_1の個々の大きさに基づいて、メモリセルCX_1のジョセフソン接合310、312はトリガし、メモリセルC1_1のジョセフソン接合310、312はトリガしない。読み出し動作の間、図6の例におけるセンスレジスタ266のようなセンスレジスタ(図示せず)は、ビット読み出し線BLRに関連する電圧Vと、ビット読み出し線BLRに関連する電圧Vとをモニタすることができる。例えば、センスレジスタは、電圧VおよびVを閾値と比較して、差動電圧検出を行うことができる。
【0038】
ジョセフソン接合310、312は、トリガリングの際に、電圧Vが電圧Vより大きい振幅を有するように、電圧パルスを供給することができる。従って、図7の例において、閾値の大きさと比較して電圧Vの振幅がより大きく、電圧Vの振幅がより小さいことは、メモリセルCX_1が二値論理1状態を記憶していることを示し、メモリセルC1_1が二値論理0状態を記憶していることを示すことができる。別の例として、ビット読み出し線BLRの超伝導性に基づいて、ビット読み出し電流IBR_XおよびIBR_1の大きさを測定して、個々のメモリセルCX_1、C1_1のデジタル状態を決定するように関連するセンスレジスタを構成することができる。図7の例は第Xの列および第1の列306に焦点を当てているが、ビット読み出し電流は、それらの間のすべての列306に対して供給され、同様の方法で個々のビット読み出し線316上の関連する電圧をモニタリングすることができることが理解される。従って、第1の行304に関連するデータワード全体を、データ読み出し動作中に同時に読み出すことができる。このようにして、図7の例で説明したように、行304のいずれかのメモリセル302をデータ読み出し動作中に読み出すことができる。
【0039】
上述の構造的および機能的特徴を考慮して、本発明の様々な態様による方法は、図8を参照することにより、より良く理解されるであろう。説明を簡単にするために、図8の方法は、連続して実行されるように示され説明されているが、いくつかの態様が本発明に従って本明細書に示され、かつ説明された他の態様を用いて異なる順序で、および/または同時に生じ得るため、本発明が図示された順序に制限されないことは理解および認識される。さらに、本発明の態様による方法を実施するために示された特徴の全てが必要とされるわけではない。
【0040】
図8は、JMRAMシステム(例えば、JMRAMシステム250)内のメモリセル(例えば、メモリセル10)を読み出すための一例の方法350を示す。352において、第1の読み出し電流(例えば、第1の読み出し電流IWR)がメモリセルに供給されて、超伝導読み出し選択デバイス(例えば、MBJJ 18)を介した読み出し動作のためのメモリセルが選択される。メモリセルは、超伝導相(例えば、電流Iπ2)に基づいて二値論理1状態および二値論理0状態のうちの1つに対応するデジタル状態を記憶するように構成された相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合(PHMJJ)(例えば、PHMJJ 12)を含むことができる。354において、第2の読み出し電流(例えば、第2の読み出し電流IBR)が供給されて少なくとも1つのジョセフソン接合(例えば、ジョセフソン接合14、16)がバイアスされる。356において、第1および第2の読み出し電流による読み出し動作中に生成される電圧(例えば、電圧V〜V)の振幅が測定される。電圧の振幅は、超伝導相の大きさに基づいて記憶されたデジタル状態に対応する。
【0041】
上記したことは、本発明の事例である。当然のことながら、本発明を説明する目的で構成要素または方法のあらゆる考えられる組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれるそのような変更、修正、および変形をすべて包含することが意図されている。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
JMRAM(ジョセフソン磁気ランダムアクセスメモリ)システムであって、
データ書き込み動作中に複数のメモリセルの所与の行を選択する個々のワード書き込み電流を伝導するように構成された複数のワード書き込み線であって、前記複数のメモリセルの各々が、MBJJ(磁気バリアジョセフソン接合)、PHMJJ(相ヒステリシス磁気ジョセフソン接合)、および少なくとも1つのジョセフソン接合を含む、前記複数のワード書き込み線と、
二値論理0状態および二値論理1状態のうちの1つに対応するデジタル状態を複数のメモリセルの所与の行の各メモリセルに関連する前記PHMJJに書き込むために個々のビット書き込み電流を伝導するように構成された複数のビット書き込み線であって、前記PHMJJは、前記複数のワード書き込み線の個々の1つおよび前記複数のビット書き込み線の個々の1つに磁気的に結合されている、前記複数のビット書き込み線と、
読み出し動作中に所与の行におけるメモリセルの各々のMBJに供給されて所与の行のメモリセルを選択する個々のワード読み出し電流を伝導するように構成された複数のワード読み出し線と、
所与の列におけるメモリセルの各々の少なくとも1つのジョセフソン接合をバイアスするために個々のビット読み出し電流を伝導するように構成された複数のビット読み出し線であって、個々のメモリセルにおける前記MBJJは、前記ワード読み出し電流に応答してゼロ状態からπ状態に切り替えて、前記読み出し動作中に前記π状態および前記PHMJJによって提供される超伝導相に応答してバイアスされた少なくとも1つのジョセフソン接合を介して記憶されたデジタル状態の表示を提供する、前記複数のビット読み出し線と
を備えるJMRAMシステム。
[付記2]
前記個々のメモリセルは、前記読み出し動作中に前記π状態および前記PHMJJによって提供される超伝導相の大きさに応答して前記少なくとも1つのジョセフソン接合を介して記憶されたデジタル状態の表示を提供するように構成され、前記超伝導相は、二値論理0状態に対応する第1の大きさと、二値論理1状態に対応する第2の大きさのうちの1つを有する、付記1に記載のJMRAMシステム。
[付記3]
前記個々のメモリセルは、前記超伝導相に基づく二値論理0状態に対応する第1の振幅と、二値論理1状態に対応する第2の振幅とを有する電圧に基づいて、前記読み出し動作中に記憶されたデジタル状態の表示を提供するように構成されている、付記1に記載のJMRAMシステム。
[付記4]
前記個々のビット読み出し電流は、前記個々のメモリセルの前記MBJJおよび前記PHMJJを相互接続するノードに供給され、前記個々のワード読み出し電流は、前記個々のメモリセルの前記MBJJに誘導的に結合される、付記1に記載のJMRAMシステム。
[付記5]
前記MBJJおよび前記PHMJJは、前記個々の前記メモリセルにおいて互いに並列に配置され、前記少なくとも1つのジョセフソン接合は、前記MBJJおよび前記PHMJJに対して直列に配置され、超伝導量子干渉素子(SQUID:Superconducting Quantum Interference Device)を形成する1対のジョセフソン接合を含む、付記4に記載のJMRAMシステム。
図1
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