特許第6357616号(P6357616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357616
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】シート状免疫学的検査具
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   G01N33/543 521
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-204096(P2014-204096)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-75488(P2016-75488A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年9月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595008711
【氏名又は名称】アドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
(72)【発明者】
【氏名】合志 友里
(72)【発明者】
【氏名】高山 勝好
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−506201(JP,A)
【文献】 特表平11−506213(JP,A)
【文献】 特開平11−281645(JP,A)
【文献】 特開2013−040911(JP,A)
【文献】 特開平11−316224(JP,A)
【文献】 特開平11−094819(JP,A)
【文献】 特表平06−508215(JP,A)
【文献】 特表平10−501341(JP,A)
【文献】 特許第3585933(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出される目的物質を含む検体を、毛細管現象によって輸液可能な複数の帯状展開媒体と、
表疎水性シートと裏疎水性シートとの間に、少なくとも1枚の中間疎水性シートを挟み込んだ疎水性積層シート材とを備え、
前記複数の帯状展開媒体には、それぞれの長さ方向の一端から他端に向かって、前記検体を滴下する検体滴下ゾーンと、前記目的物質を標識する標識試薬を含有した標識試薬ゾーンと、前記検体に含まれる目的物質を捕捉する捕捉物質を含有した検出ゾーンとが順番に配置されたシート状免疫学的検査具であって、
前記中間疎水性シートには、その表裏面を貫通して、前記複数の帯状展開媒体を収納する複数の媒体収納孔が並列状態で形成され、
前記表疎水性シートには、前記複数の帯状展開媒体の検体滴下ゾーンに前記検体を滴下するための複数の滴下用窓と、前記複数の帯状展開媒体の検出ゾーンを露出する複数の判定用窓とがそれぞれ離間して形成され、
前記中間疎水性シートと前記裏疎水性シートとは、それぞれの対向領域の全域において接合され、
前記複数の帯状展開媒体は、それぞれの長さ方向の一端から他端の向きを揃えて、対応する前記媒体収納孔に収納した状態で、前記裏疎水性シートの中間疎水性シート接合側の面に接合され、
前記表疎水性シートと前記中間疎水性シートとは、前記複数の媒体収納孔を囲むように、それぞれの対向領域の外周部が接合されたシート状免疫学的検査具。
【請求項2】
前記表疎水性シートと前記裏疎水性シートと前記中間疎水性シートとのうち少なくとも前記複数の帯状展開媒体と接する面はフッ素樹脂皮膜によりコーティングされた請求項1に記載のシート状免疫学的検査具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート状免疫学的検査具、詳しくは抗原抗体反応を利用した臨床検体の免疫学的な検査に用いられるシート状免疫学的検査具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体から採取された血液、血清、尿などの検体(展開溶媒)中に含まれる目的物質(抗原または抗体)を簡易に検出する免疫学的検査具として、抗原抗体反応を利用したイムノクロマト法によるものが知られている。この免疫学的検査具は、毛細管現象によって輸液可能な帯状展開媒体(クロマトグラフィー媒体)を有し、その一端から他端に向かって、検体滴下ゾーンと、標識試薬を含有した標識試薬ゾーンと、検体に含まれる目的物質を検出する検出ゾーンとを有している。
検査時、検体滴下ゾーンに検体を滴下することにより、検体が帯状展開媒体の他端に向かって展開し、標識試薬ゾーンにおいて検体中の目的物質と標識物質とが結合して複合体が形成され、検出ゾーンにおいて検体中の複合体が捕捉物質により捕捉される。その後、この検出ゾーンで標識物質の発色の有無を観察することにより、検体が目的物質を含む陽性であるか、そうでない陰性であるかを判定する。
【0003】
従来、このようなイムノクロマト法を利用した廉価で薄肉なシート状免疫学的検査具として、例えば、特許文献1に記載されたクロマトグラフィ・アッセイ装置が知られている。これは、第1の対置成分(表疎水性シート)と第2の対置成分(裏疎水性シート)とをヒンジを介して折り畳み自在に連結した二つ折り式のシート材(疎水性積層シート材)を有し、第1の対置成分の裏面の中央部から一端部にかけて、クロマトグラフィ媒体(帯状展開媒体)を固定したものである。第1の対置成分の中央部には、検出ゾーンでの目的物質の検出結果を視認する窓が形成されている。また、第2の対置成分の表面(使用状態での上面)の一端部には、両対置成分を折り畳んで二つ折りのシート材(シート状ケース)とした際、クロマトグラフィ媒体の一端部に当接し、かつ検体が滴下される多孔性素材を有した検体調製ゾーンが設けられている。
【0004】
特許文献1による検査時には、まず検体調製ゾーンに検体を滴下し、その後、両対置成分をヒンジを中心に二つ折りして固定する。これにより、検体調製ゾーンの多孔性素材がクロマトグラフィ媒体の一端部に押し付けられる。その結果、検体調製ゾーンに滴下された検体がクロマトグラフィ媒体に移動する。この状態で、第2の対置成分を下に向けてシート材をテーブルに載置し、その後は、上述したクロマトグラフィ媒体での検体の展開、これに伴う標識試薬ゾーンでの標識物質と目的物質との結合、検出ゾーンでの標識物質−目的物質の複合体の捕捉が順次行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3585933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のクロマトグラフィ・アッセイ装置では、検体調製ゾーンに検体を滴下することで、二つ折りされたシート材の内部空間において、多孔性素材が膨潤するとともに、クロマトグラフィ媒体も、検体の展開に伴い検体を吸収しながら、徐々に膨潤して行く。この膨潤時の力(内圧)により、二つ折りのシート材は徐々に押し広げられ、一部のクロマトグラフィ媒体において、クロマトグラフィ媒体と、この媒体の外面に検体を介して接触していたシート材の内面部分との間に空気層が形成される。この空気層は、帯状展開媒体内での検体の移動を乱す外乱要因の1つとなる。そのため、各クロマトグラフィ媒体内で展開中の媒体の移動速度に差が生じ、各検出ゾーンにおいて、検体の検出結果を略同時に得ることは困難となっていた。この問題は、複数のクロマトグラフィ媒体を第1の対置成分に配設した場合に顕著となる。
【0007】
また、特許文献1のクロマトグラフィ・アッセイ装置では、このようにシート材を二つ折りにした際、第1の対置成分と第2の対置成分とにより、多孔性素材およびクロマトグラフィ媒体が、仕切りのない状態で、厚さ方向から押圧されていた。そのため、多孔性素材やクロマトグラフィ媒体から、それぞれに含まれた検体がシート材の内部空間に漏出していた。これにより、例えば複数のクロマトグラフィ媒体を第1の対置成分に配設し、これらを利用して異なる検体を検査する場合、各クロマトグラフィ媒体などから漏出した検体が、二つ折りのシート材の内部空間で混ざり合い、各クロマトグラフィ媒体の検出ゾーンにおいて目的物質の正確な検査ができなかった。
【0008】
また、界面活性剤が含まれた検体の場合には、特許文献1に記載のクロマトグラフィ・アッセイ装置では、内部空間に検体が広がり、目的物質の正確な検査ができなかった。
【0009】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、シート材として、表疎水性シートと裏疎水性シートとの間に、少なくとも1枚の中間疎水性シートを一体的に挟み込んだ疎水性積層シート材を採用し、複数の帯状展開媒体を、中間疎水性シートに形成した複数の媒体収納孔に個別に収納するとともに、中間疎水性シートと裏疎水性シートとを対向領域の全域において接合し、表疎水性シートと中間疎水性シートとは、複数の媒体収納孔を囲むように対向領域の外周部を接合すれば、上述した問題は全て解消することを知見し、この発明を完成させた。
【0010】
すなわち、この発明は、廉価で嵩張らず、かつ複数の帯状展開媒体を利用して、異なる検体でも混ざり合うことなく、たとえ界面活性剤が含まれたとしても、各検体中の目的物質を同時かつ正確に検査することができるシート状免疫学的検査具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、検出される目的物質を含む検体を、毛細管現象によって輸液可能な複数の帯状展開媒体と、表疎水性シートと裏疎水性シートとの間に、少なくとも1枚の中間疎水性シートを挟み込んだ疎水性積層シート材とを備え、前記複数の帯状展開媒体には、それぞれの長さ方向の一端から他端に向かって、前記検体を滴下する検体滴下ゾーンと、前記目的物質を標識する標識試薬を含有した標識試薬ゾーンと、前記検体に含まれる目的物質を捕捉する捕捉物質を含有した検出ゾーンとが順番に配置されたシート状免疫学的検査具であって、前記中間疎水性シートには、その表裏面を貫通して、前記複数の帯状展開媒体を収納する複数の媒体収納孔が並列状態で形成され、前記表疎水性シートには、前記複数の帯状展開媒体の検体滴下ゾーンに前記検体を滴下するための複数の滴下用窓と、前記複数の帯状展開媒体の検出ゾーンを露出する複数の判定用窓とがそれぞれ離間して形成され、前記中間疎水性シートと前記裏疎水性シートとは、それぞれの対向領域の全域において接合され、前記複数の帯状展開媒体は、それぞれの長さ方向の一端から他端の向きを揃えて、対応する前記媒体収納孔に収納した状態で、前記裏疎水性シートの中間疎水性シート接合側の面に接合され、前記表疎水性シートと前記中間疎水性シートとは、前記複数の媒体収納孔を囲むように、それぞれの対向領域の外周部が接合されたシート状免疫学的検査具である。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、検体を、各滴下用窓から各帯状展開媒体の一端部の検体滴下ゾーンに滴下し、これらの検体中の目的物質の検査を行う。各帯状展開媒体は毛細管現象によって輸液可能な構造を有している。そのため、検体滴下ゾーンに滴下された検体は帯状展開媒体の他端側に向かって輸液される。その途中、標識試薬ゾーンにおいて、検体中の目的物質と標識物質とが結合して複合体を形成し、検出ゾーンにおいて、検体中の複合体が捕捉物質により捕捉されるか否かを、判定用窓を通した標識物質の発色の有無により観察する。すなわち、この発色を視認できた場合、検体中に目的物質が存在する陽性と判定され、そうでない場合には陰性と判定される。
【0013】
また、表疎水性シートと中間疎水性シートとは、複数の媒体収納孔を囲むように、それぞれの対向領域の外周部の全体が接合されている。そのため、滴下された検体を各帯状展開媒体が吸収して膨潤しても、その膨潤時の力(帯状展開媒体が膨らむことで、両疎水性シートに作用する内圧)を原因として、表疎水性シートと中間疎水性シートとのあいだに隙間は現出しにくい。これにより、各帯状展開媒体をそれぞれの他端に向かって展開(移動)する各検体(目的物質)の移動速度は安定し、その結果、各検出ゾーンにおいて、全ての検体の検出結果を略同時に視認することができる。
仮に、表疎水性シートと中間疎水性シートとのあいだに隙間が現出すれば、一部の帯状展開媒体において、帯状展開媒体と、この展開媒体の外面に検体を介して接触する、媒体収納孔の形成壁を含む疎水性積層シート材の内壁面との間に、空気層が形成されてしまう。この空気層は、帯状展開媒体内での検体の移動を乱す外乱要因の1つとなるため、各帯状展開媒体に滴下された媒体の移動速度に差が生じる。その結果、各検出ゾーンで、全ての検体の検出結果を略同時に取得することは困難となる。
【0014】
また、シート状免疫学的検査具は、それぞれの媒体収納孔の裏疎水性シート接合側の開口(下側の開口)が、裏疎水性シートの中間疎水性シート接合側の面(表面、上面)に液密的に接合して封止されている。これは、中間疎水性シートと裏疎水性シートとが、それぞれの対向領域の全域で接合されているためである。
検査時、シート状免疫学的検査具は、裏疎水性シートを下方に向けて水平配置される。したがって、検体滴下ゾーンに検体を滴下し、その後、検体が帯状展開媒体の内部を展開しても、検体が各媒体収納孔の裏疎水性シート接合側の開口から疎水性積層シート材の内部空間に漏出しない。その結果、各帯状展開媒体に含まれた検体がこの内部空間で混ざり合わず、廉価で薄肉な検査具でありながら、複数の検体に含まれる目的物質を同時かつ正確に検査することができる。
【0015】
ここでいうシート状免疫学的検査具とは、抗原抗体反応を利用したイムノクロマト法によって、臨床検体を免疫学的に簡易検査するための器具(キット)である。免疫学的検査は、抗原検出系のものでも、抗体検出系のものでもよい。
検体としては、例えば、全血、血漿、血清などの血液や尿、唾液、関節液、骨髄液などの体液、さらには喀痰、咽頭や鼻腔の拭い液、肺洗浄液などを採用することができる。
検体中の目的物質(捕捉物質)としては、例えば抗原、抗体、ホルモン、ホルモンレセプター、レクチン、レクチン結合性糖質、薬物もしくはその代謝物、薬物レセプター、核酸およびこれらの断片などを採用することができる。具体的には、細菌、原生生物や真菌などの細胞、ウイルス、タンパク質、多糖類などが挙げられる。さらに具体的には、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、マイコプラズマニューモニエ、ロタウイルス、カルシウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルスなどの各種ウイルスの他、大腸菌、スタフィロコッカスアウレウス、ストレプトコッカスニューモニエ、ストレプトコッカスピヨゲネス、マイコプラズマニューモニエ、マラリア原虫などの細胞、消化器系疾患、中枢神経系疾患、出血熱等の様々な疾患の病原体、病原体の代謝産物が挙げられる。
【0016】
表疎水性シート、中間疎水性シートおよび裏疎水性シートとしては、疎水性を有する各種のセルロース基材、例えば紙などを採用することができる。その他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの各種のプラスチックでもよい。これらの疎水性シートは、同一素材の大判シートに折り目を入れて分割された1枚ものでも、異なる素材から構成された別体ものでもよい。
表疎水性シート、中間疎水性シートおよび裏疎水性シートの形状は任意である。例えば、矩形状を採用することができる。3つの部分シートは、両端の疎水性シートに比べ、中間の疎水性シートの方が短くした方が、疎水性積層シート材がコンパクトとなり、取り扱いが容易になる。表疎水性シート、中間疎水性シートおよび裏疎水性シートの厚さはそれぞれ任意であるものの、0.5〜3mmが取り扱い易い。
【0017】
これらの疎水性シートの接合方法としては、例えば、両面テープによる貼着、接着剤による接着、ホットメルトによる融着などを採用することができる。
また、ここでいう「表疎水性シートと中間疎水性シートとの対向領域」とは、表疎水性シートと中間疎水性シートとを重ね合わせた際、表疎水性シートの中間疎水性シート側の面と、中間疎水性シートの表疎水性シート側の面とが接触している部分(範囲)をいう。
ここでいう「中間疎水性シートと裏疎水性シートとの対向領域」とは、中間疎水性シートと裏疎水性シートとを重ね合わせた際、中間疎水性シートの裏疎水性シート側の面と、裏疎水性シートの中間疎水性シート側の面とが接触している部分(範囲)をいう。
【0018】
さらに、中間疎水性シートと裏疎水性シートとが接合される「中間疎水性シートと裏疎水性シートとの対向領域の全域」とは、両疎水性シートの中央部および外周部を含んだ対向領域の80%以上、好ましくは90%以上をいう。
このように、中間疎水性シートと裏疎水性シートとが、それぞれの対向領域の全域で接合されることで、それぞれの媒体収納孔の裏疎水性シート接合側の開口(下側の開口)が、裏疎水性シートの中間疎水性シート接合側の面(表面、上面)により封止される。ここで、「媒体収納孔の裏疎水性シート接合側の開口が封止される」とは、中間疎水性シートに穿孔して得られた媒体収納孔の2つの開口のうち、裏疎水性シートによって塞がれる側の開口を、裏疎水性シートとのあいだに隙間が現出しない液密な状態で接合(固着)することをいう。
また、ここでいう表疎水性シートと中間疎水性シートとが接合される「表疎水性シートと中間疎水性シートとの対向領域の外周部」とは、各媒体収納孔の全てを囲む領域でも、各媒体収納孔に共通する一部分を除いた残りを囲む領域でもよい。
【0019】
表疎水性シートには、各帯状展開媒体の検体滴下ゾーンとの対峙位置に複数の滴下用窓が形成されるとともに、各帯状展開媒体の検出ゾーンとの対峙位置に複数の判定用窓がそれぞれ形成されている。
各滴下用窓は、ピペットによる検体の滴下に支障がない形状およびサイズでなければならない。
また、各判定用窓は、検体検査の判定に支障がない形状およびサイズでなければならない。
中間疎水性シートの使用枚数は、1枚でも2枚以上でもよい。ただし、2枚以上の積層体の場合には、この積層体の表裏面を貫通して各媒体収納孔を形成する必要がある。これに伴い、各媒体収納孔に挿入される帯状展開媒体も、厚肉なものを採用することができる。
中間疎水性シートには、各帯状展開媒体を収納する複数の媒体収納孔が並列状態で形成されている。
ここでいう「複数の媒体収納孔が並列状態」とは、平面視して各媒体収納孔が長さ方向を平行にして並んでいる状態をいう。
各媒体収納孔の形状およびサイズは、対応する帯状展開媒体の形状およびサイズに応じて適宜変更される。媒体収納孔の深さは、帯状展開媒体の厚さと同一かそれより深い。
「中間疎水性シートの表裏面」とは、中間疎水性シートの表疎水性シートとの接合側の面(表面、上面)と、これとは反対側の裏疎水性シートとの接合側の面(裏面、下面)をいう。
【0020】
帯状展開媒体の素材としては、例えば、ニトロセルロース、プラスチック、濾紙など採用することができる。このうち、液体に対して湿潤性があり、添着された液体を実質的に吸収しないニトロセルロースが好ましい。この帯状展開媒体を担体として、検出ゾーンに抗体や抗原を固相化する。
帯状展開媒体の構成としては、例えば、検体滴下ゾーンに配置されるサンプルパッドと、標識試薬ゾーンに配置され、標識試薬が固定されたコンジュゲートパッドと、検出ゾーンに配置され、捕捉物質が固定されたニトロセルロース膜と、検出ゾーンより帯状展開媒体の他端側に配置される吸水紙とからなるものを採用することができる。この場合、検体滴下ゾーンでサンプルパッドに滴下された検体は、帯状展開媒体の他端に向かって展開され、標識試薬ゾーンのコンジュゲートパッドを通過中に目的物質が標識試薬と結合し、目的物質−標識試薬の複合体が形成される。その後、この複合体を含む検体は検出ゾーンに到達し、ここでニトロセルロース膜に固定された捕捉物質に複合体が捕捉されて、目的物質−標識試薬−捕捉物質の免疫複合体が形成される。また、捕捉後の使用済みの検体は濾紙などの吸水紙に吸水される。これにより、検体の帯状展開媒体内の逆流が防止される。
【0021】
帯状展開媒体の使用数は任意である。例えば、8連または12連のマルチチャンネルピペット(8連または12連マイクロチューブ用)に対応可能なように、裏疎水性シートの中間疎水性シート接合側の面(検査時の内面、上面)に、8個または12個の帯状展開媒体を、数mmまたは数cmピッチで各長さ方向を揃えた並列状態で配置してもよい。
検体滴下ゾーンは、帯状展開媒体の一端部に配置されて、例えばピペットにより検体が滴下される領域である。
標識試薬ゾーンは、帯状展開媒体の検体滴下ゾーンより他端側に配置され、標識試薬が固相化される領域である。
標識試薬としては、例えば、有色のラテックスや金属コロイド(金コロイド、銀コロイド、青銅コロイド、鉄コロイドなど)などの標識物質と、抗原または抗体とが結合した複合体を採用することができる。その他、蛍光物質や化学発光物質を標識物質としたものや、各種の酵素標識試薬を採用することができる。
【0022】
検出ゾーンは、帯状展開媒体の標識試薬ゾーンより他端側に配置されて、標識試薬ゾーンで得られた標識試薬と結合した目的物質を捕捉する捕捉物質が固相化される領域である。
捕捉物質は、検体中の目的物質に応じて適宜変更される。目的物質が抗体の場合には、その抗原が捕捉物質となる。また、その反対の場合もある。
検出ゾーンにおいて捕捉された免疫複合体の構造(捕捉物質−目的物質−標識試薬)としては、(1)固相抗体−検体中抗原−標識抗体、(2)固相抗原−検体中抗体−標識抗体、(3)固相抗原−検体中抗体−標識抗原が挙げられる。このようにサンドイッチ構造が形成された部分は、標識試薬中の金コロイドや着色ラテックスなどの標識物質により着色され、目視またはカメラ撮像機器を利用して目的物質の検出の有無などが判定される。
また、検出ゾーンには、検体中に目的物質が存在しない陰性の検査結果を確認するため、標識試薬を捕捉する別の捕捉物質を固相化してもよい。
【0023】
請求項2に記載の発明は、前記表疎水性シートと前記裏疎水性シートと前記中間疎水性シートとのうち少なくとも前記複数の帯状展開媒体と接する面はフッ素樹脂皮膜によりコーティングされた請求項1に記載のシート状免疫学的検査具である。
フッ素樹脂皮膜により表疎水性シートと裏疎水性シートと中間疎水性シートとのうち少なくとも複数の帯状展開媒体と接する面がコーティングされることにより、表面は界面活性剤が含まれた検体に対し撥水面となる。これにより滴下するサンプル中に一定濃度以上の界面活性剤が含まれる場合であっても、他のレーンにサンプル液が流れ込むことがなく、目的物質を同時かつ従来に比べてより正確に検査することができる。
【0024】
フッ素樹脂皮膜によるコーティング方法は、任意であり、液状のフッ素樹脂にシートを浸す方法、スプレーにて液状フッ素樹脂を疎水性積層シート材に噴霧する方法、フッ素樹脂を含んだスポンジにて疎水性積層シート材にフッ素樹脂を塗布する方法など、従来のコーティング方法を採用することができる。また、表疎水性シート、中間疎水性シートおよび裏疎水性シートにあらかじめフッ素樹脂をコーティングし、その後、これらの疎水性シートを接合する方法や、これらの疎水性シートの接合して疎水性積層シート材を作製した後に複数の媒体収納孔の複数の帯状展開媒体と接する面にのみフッ素樹脂をコーティングする方法が採用可能である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の発明によれば、検体検査時、複数の検体を各滴下用窓から各帯状展開媒体の一端部の検体滴下ゾーンに滴下する。これにより、検体滴下ゾーンの検体は帯状展開媒体の他端側に向かって輸液される。その途中、標識試薬ゾーンにおいて検体中の目的物質と標識物質とが結合して複合体を形成し、検出ゾーンにおいて、検体中の複合体が捕捉物質により捕捉されるか否かを、判定用窓を通した標識物質の発色の有無で観察する。
【0026】
表疎水性シートと中間疎水性シートとは、複数の媒体収納孔を囲むように、それぞれの対向領域の外周部の全体が接合されている。そのため、滴下された検体を各帯状展開媒体が吸収して膨潤しても、その膨潤時の力(内圧)によって、表疎水性シートと中間疎水性シートとの間に隙間は現出しにくい。これにより、各帯状展開媒体をそれぞれの他端に向かって展開する各検体(目的物質)の移動速度は安定し、その結果、各検出ゾーンにおいて、全ての検体の検出結果を略同時に視認することができる。
仮に、表疎水性シートと中間疎水性シートとのあいだに隙間が現出すれば、一部の帯状展開媒体において、帯状展開媒体と、この展開媒体の外面に検体を介して接触する疎水性積層シート材(媒体収納孔の形成壁を含む)の内壁面との間に、検体の移動を乱す空気層が形成され、各帯状展開媒体を展開している各媒体の移動速度に差が生じ、各検出ゾーンでは、全ての検体の検出結果を略同時に取得することは困難となる。
【0027】
また、それぞれの媒体収納孔の裏疎水性シート接合側の開口(下側の開口)は、裏疎水性シートの中間疎水性シート接合側の面に液密的に接合することで、封止されている。これは、中間疎水性シートと裏疎水性シートとが、それぞれの対向領域の全域で接合されているためである。
検体検査時、シート状免疫学的検査具は、裏疎水性シートを下方に向けて水平配置される。したがって、検体滴下ゾーンに検体を滴下し、その後、検体が帯状展開媒体の内部を展開しても、検体が各媒体収納孔の裏疎水性シート接合側の開口から疎水性積層シート材の内部空間に漏出しない。その結果、各帯状展開媒体に含まれた検体がこの内部空間で混ざり合わず、廉価で薄肉な検査具でありながら、複数の検体に含まれる目的物質を同時かつ正確に検査することができる。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば表疎水性シートと裏疎水性シートと中間疎水性シートとのうち少なくとも複数の帯状展開媒体と接する面がフッ素樹脂皮膜によりコーティングされることにより、表面は界面活性剤が含まれた検体に対し撥水面となる。これにより滴下するサンプル中に一定濃度以上の界面活性剤が含まれる場合であっても、他のレーンにサンプル液が流れ込むことがなく、目的物質を同時かつ従来に比べてより正確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】この発明の実施例1に係るシート状免疫学的検査具の使用後の状態を示す平面図である。
図2】この発明の実施例1のシート状免疫学的検査具の中間疎水性シートを裏疎水性シートに貼着し、帯状展開媒体を貼着した状態を示す展開底面図である。
図3】この発明の実施例1のシート状免疫学的検査具の帯状展開媒体への検体の滴下状態を示す拡大斜視図である。
図4】この発明の実施例1のシート状免疫学的検査具の疎水性積層シート材の展開平面図である。
図5】この発明の実施例1のシート状免疫学的検査具の疎水性積層シート材の展開底面図である。
図6】この発明の実施例1のシート状免疫学的検査具の中間疎水性シートを裏疎水性シートに貼着した状態を示す要拡大断面図である。
図7】(a)は、この発明の実施例1のシート状免疫学的検査具の検査前の状態を示す要部拡大側面図である。(b)は、この発明の実施例1のシート状免疫学的検査具の検体滴下ゾーンにおける検体滴下状態を示す要部拡大側面図である。(c)は、この発明の実施例1のシート状免疫学的検査具の検出ゾーンにおける目的物質の捕捉状態を示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、hMPV(ヒトメタニューモウイルス)の抗体検査用のシート状免疫学的検査具を例にとる。
【実施例】
【0031】
図1図3において、10はこの発明の実施例1に係るシート状免疫学的検査具で、このシート状免疫学的検査具10は、検出される目的物質(抗hMPV抗体、図7)aを含む検体(抗体産生の培養上清)16を、それぞれ毛細管現象によって輸液可能な12本の帯状展開媒体15と、表疎水性シート11と裏疎水性シート13との間に、1枚の中間疎水性シート12を挟み込んで一体化した疎水性積層シート材14とを備えたものである。以下、これらの構成体を詳細に説明する。
【0032】
図2図3および図7に示すように、帯状展開媒体15は、複数の部材から構成される全体が長さ69mm、幅5mmのアフィニティークロマトグラフィー媒体である。帯状展開媒体15には、その長さ方向の一端から他端に向かって、検出される目的物質aを含む検体16を滴下する検体滴下ゾーンAと、目的物質aと結合し、複合体を形成する標識試薬(コンジュゲート抗体:金コロイド標識抗体)bを含有した標識試薬ゾーンBと、検体16に含まれる目的物質aを捕捉する捕捉物質(hMPV抗原)cを含有した検出ゾーンCとが配置されている。
【0033】
この帯状展開媒体15の構成は、検体滴下ゾーンAに配置される不織布からなる長さ20mm、幅5mm、厚さ260μmのサンプルパッド17と、標識試薬ゾーンBに配置され、標識試薬bが固相化された長さ5mm、幅5mm、厚さ600μmのコンジュゲートパッド18と、検出ゾーンCに配置され、捕捉物質cが固相化された長さ25mm、幅5mm、厚さ250μmのニトロセルロース膜19と、検出ゾーンCより帯状展開媒体15の他端側に配置された長さ27mm、幅5mm、厚さ450μmの濾紙製の吸水紙20とからなる。このうち、コンジュゲートパッド18は、標識試薬bの金コロイド標識抗体を含浸させ、さらに乾燥により固相化される。コンジュゲートパッド18を被うように、サンプルパッド17の他端部がニトロセルロース膜19の一端部上に積層されている。さらに、ニトロセルロース膜19の他端部上には、検体16の標識試薬ゾーン側への逆流を防止する吸水紙20の一端部が積層されている。
【0034】
次に、図1図2図4図6を参照して、疎水性積層シート材14について説明する。
図2および図4に示すように、疎水性積層シート材14を構成する疎水性素材としては、厚さ1mmの白色の合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション製アルファユポ)を用いる。そしてこの合成紙にフッ素樹脂溶液(株式会社フロロテクノロジー製、フロロサーフ)を均一な膜厚となるように塗布する。そしてこの合成紙を長さ270mm、幅140mmの縦長な矩形状にカットし、かつ2本の平行な折り目14aによって長さ方向に3分割することで、表疎水性シート11と裏疎水性シート13と中間疎水性シート12とが、合成紙の一端から他端に向かって順に形成される。各部分シート11〜13は、表疎水性シート11および裏疎水性シート13が長さ90mm、幅140mm、厚さ1mm、中間疎水性シート12が長さ87mm、幅140mm、厚さ1mmの横長な矩形状の紙片である。
表疎水性シート11および裏疎水性シート13は長さ90mm、幅140mm、厚さ1mm、中間疎水性シート12は長さ87mm、幅140mm、厚さ1mmの横長な矩形状の紙片である。
【0035】
このうち、表疎水性シート11の中間疎水性シート接合側とは反対側の面(以下、表面)には、表疎水性シート11の長さ方向に長い12個の媒体表示枠線21が、表疎水性シート11の幅方向に1.5mmピッチで印刷されている(図4)。各媒体表示枠線21は、長さが50mm、幅7.5mmのもので、裏疎水性シート13上での各帯状展開媒体15の配置位置を示す。各媒体表示枠線21の枠内には、対応する帯状展開媒体15の検体滴下ゾーンAを露出する滴下用窓22と、対応する帯状展開媒体15の検出ゾーンCを露出する判定用窓23とが、媒体表示枠線21の長さ方向に離間してそれぞれ形成されている。また、各媒体表示枠線21の長さ方向の中間部付近には、対応する判定用窓23の形成位置を示し、かつ「1」の白抜き数字が入った赤三角マーク24と、対応する滴下用窓22の形成位置を示し、かつ「2」の白抜き数字が入った黒三角マーク25とがそれぞれ印刷されている。さらに、表疎水性シート11の表面のうち、各媒体表示枠線21より一端側の部分(折り目14aとは反対側の辺部)には、対応する帯状展開媒体15の配置順(1〜12番)を示す短尺な通し番号枠線26が、12個印刷されている。
【0036】
また、この表疎水性シート11には、その中間疎水性シート接合側の面(以下、裏面)の外周部全域に、各給水紙20を被う幅広な吸水紙側枠部分28aを有し、かつ各媒体表示枠線21に該当する領域Xを除くように、大判で矩形枠状の第1の両面テープ28が貼着されている(図2)。
さらに、裏疎水性シート13には、その中間疎水性シート接合側の面(以下、表面)の略全域に、大判で矩形状の第2の両面テープ29が貼着されている(図2および図5)。
さらにまた、中間疎水性シート12には、各帯状展開媒体15を個別に収納する12個の媒体収納孔30が、中間疎水性シート12の幅方向に向かって3.5mmピッチで、かつ中間疎水性シート12の表裏面を貫通して形成されている(図2図4および図5)。各媒体収納孔30は、長さが69mm、幅が5mm、深さが1mmのサイズを有する、中間疎水性シート12の長さ方向に長い短冊状の孔である。
【0037】
シート状免疫学的検査具10を作製する際には、まず第2の両面テープ29を使用して裏疎水性シート13の表面に中間疎水性シート12を貼着する(図2)。このとき、各媒体収納孔30の裏疎水性シート接合側の開口30aが封止されるとともに、媒体収納孔30から第2の両面テープ29の粘着面の一部がそれぞれ露出する(図6)。その後、吸水紙側の端部を表疎水性シート方向に向けた状態で、各帯状展開媒体15を各媒体収納孔30にそれぞれ収納する。これによって、第2の両面テープ29の粘着力により、各帯状展開媒体15が裏疎水性シート13の表面に9mmピッチの並列状態で貼着される。
【0038】
次に、矩形枠状の第1の両面テープ28を使用し、表疎水性シート11の裏面の外周部のみを中間疎水性シート12の表面の外周部に貼着する(図1および図2)。このとき、各給水紙20には、幅広な吸水紙側枠部分28aが貼着される一方、略各媒体表示枠線21に該当する領域(中央部一帯)Xは、未貼着状態となる。こうして、疎水性積層シート材14からシート状の検査ケース31が組み立てられる。この組み立て時、表疎水性シート11の各滴下用窓22を通して、対応する検体滴下ゾーンAのサンプルパッド17が露出し、また各判定用窓23を通して、対応する検出ゾーンCのニトロセルロース膜19がそれぞれ露出する(図1)。
【0039】
次に、図1図7を参照して、この発明の実施例1に係るシート状免疫学的検査具10を使用した検体検査方法を説明する。
検体検査時には、まずシート状免疫学的検査具10を検査テーブルの上に水平に載置する(図1および図7(a))。次に、hMPV抗原をニトロセルロース膜の判定用窓23の中央部分に固相化する。その後、12連のマルチチャンネルピペットPを使用し、12人の患者から得られた12個の検体(又は抗体産生の培養上清)16を、表疎水性シート11の対応する1〜12番の滴下用窓22を通して、各帯状展開媒体15の検体滴下ゾーンAのサンプルパッド17にそれぞれ滴下する(図3および図7(b))。
【0040】
その後、各サンプルパッド17に滴下された検体16は、毛細管現象によって帯状展開媒体15の他端に向かって展開され、標識試薬ゾーンBのコンジュゲートパッド18を通過中に、各検体16中の目的物質(抗hMPV抗体)aが標識試薬(コンジュゲート抗体)bと結合し、抗hMPV抗体−金コロイド標識抗体の複合体dが形成される(図7(c))。その後、検体16はニトロセルロース膜19に移動し、それが検出ゾーンCに到達したとき、ニトロセルロース膜19に固相化された捕捉物質(hMPV抗原)cに、抗hMPV抗体−金コロイド標識抗体の複合体dが捕捉される(図7(c))。これにより、検出ゾーンCには、抗hMPV抗体−金コロイド標識抗体−hMPV抗原の複合体eが現出する。その後、使用済みの検体16は吸水紙20に吸水され、検体16の帯状展開媒体15内での逆流が防止される。
検体検査の結果、対応する判定用窓23から赤色の丸い陽性マークの発色が視認できた場合には、該当する検体16中に目的物質aが存在する陽性と判定される(図1の部分拡大図中の黒丸を参照)。一方、判定用窓23から陽性マークを視認できなかった場合には、検体16中に目的物質aが存在しない陰性と判定される(図1の部分拡大図中の破線白丸を参照)。
【0041】
このように、表疎水性シート11と中間疎水性シート12とは、幅広な吸水紙側枠部分28aにより各給水紙20を被い、かつ各媒体表示枠線21に該当する領域Xを除くように、それぞれの対向領域の外周部の全域が矩形枠状の第1の両面テープ28によって貼着されている。そのため、各滴下用窓22から滴下された検体16を各帯状展開媒体15(特に、各標識試薬ゾーンBの部分および各吸水紙20)が吸収して膨潤しても、その膨潤時の力(内圧)によって、表疎水性シート11と中間疎水性シート12とのあいだに隙間は現出しにくい。これにより、各帯状展開媒体15をそれぞれの他端に向かって展開する各検体(目的物質)16の移動速度は安定し、その結果、各検出ゾーンCにおいて、全ての検体16の検出結果を略同時に視認することができる。
仮に、表疎水性シート11と中間疎水性シート12とのあいだに隙間が現出すれば、一部の帯状展開媒体15において、帯状展開媒体15と、この帯状展開媒体15の外面に検体16を介して接触する、媒体収納孔30の形成壁を含む疎水性積層シート材14の内壁面との間に、検体16の移動を乱す空気層が形成される。これにより、各帯状展開媒体15を展開している各媒体16の移動速度に差が生じ、各検出ゾーンCでは、全ての検体16の検出結果を略同時に取得することは困難となる。
【0042】
また、各媒体収納孔30の裏疎水性シート接合側の開口30aは、裏疎水性シート13の中間疎水性シート接合側の面に液密的な接合状態で封止され、かつ検体検査時、シート状免疫学的検査具10は裏疎水性シート13を下方に向けた水平状態で検査が行われる。これにより、検体滴下ゾーンAに検体16を滴下し、その後、検体16が帯状展開媒体15の内部を展開しても、各媒体収納孔30の裏疎水性シート接合側の開口30aから検体16がシート状の検査ケース31の内部空間に漏出することはない。その結果、各帯状展開媒体15に含まれた検体16がシート状の検査ケース31の内部空間で混ざり合わず、廉価で薄肉な検査具でありながら、複数の検体16に含まれる目的物質aを同時かつ正確に検査することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明のシート状免疫学的検査具は、抗原抗体反応を利用した臨床検体の免疫学的な検査を行うための技術として有用である。
【符号の説明】
【0044】
10 シート状免疫学的検査具、
11 表疎水性シート、
12 中間疎水性シート、
13 裏疎水性シート、
14 疎水性積層シート材、
15 帯状展開媒体、
16 検体、
22 滴下用窓、
23 判定用窓、
28 第1の両面テープ、
29 第2の両面テープ、
30 媒体収納孔、
30a 裏疎水性シート接合側の開口、
A 検体滴下ゾーン、
B 標識試薬ゾーン、
C 検出ゾーン、
a 目的物質、
b 標識試薬、
c 捕捉物質。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7