(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の薬液用温度調整装置として、出願人は、下記の特許文献1に薬液用熱交換装置(以下、単に「熱交換装置」ともいう)を開示している。この場合、出願人が開示している熱交換装置では、熱交換管ユニット、伝熱ブロックおよびサーモモジュール(熱電変換素子:ペルチェ素子)を備え、熱交換管ユニット内を通過させられる薬液が伝熱ブロックを介してサーモモジュールによって温度調整される(冷却または加熱される)構成が採用されている。
【0003】
熱交換管ユニットは、フッ素系樹脂素材で形成された円筒状の熱交換管によってジグザグ状(葛折り状)に形成されている。また、伝熱ブロックは、伝熱性を有する平板状のブロック半体を一対備え、両ブロック半体によって熱交換管ユニットを挟持可能に構成されると共に、熱交換管ユニットおよびサーモモジュールの間で相互に伝熱可能に構成されている。
【0004】
この場合、伝熱ブロックは、両ブロック半体における一方の面(サーモモジュールが取り付けられる面)が偏平に形成されると共に、他方の面(両ブロック半体の当接面:衝合面)に、熱交換管ユニット(熱交換管)における直線状の部位を嵌合可能な直線嵌合溝が複数形成されている。また、各直線嵌合溝は、その深さが熱交換管の直径に対して1/2の断面半円形に形成されている。これにより、出願人が開示している熱交換装置では、両ブロック半体の間に挟み込まれた(各直線嵌合溝に嵌入された)円筒状の熱交換管の周面が各直線嵌合溝の内面に対して面的に接した状態となり、熱交換管とブロック半体との間の伝熱性が良好となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、出願人が上記の特許文献1に開示している熱交換装置には、以下のような改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している熱交換装置では、熱交換管ユニットの熱交換管における直線状の部位を断面半円形の直線嵌合溝に嵌入させるようにして伝熱ブロックにおける両ブロック半体の間に熱交換管ユニットを挟み込むと共に、両ブロック半体の外面にサーモモジュールを取り付けることにより、熱交換管ユニット内を通過させられる薬液と、サーモモジュールとが、熱交換管ユニット(熱交換管)および伝熱ブロック(ブロック半体)を介して相互に熱交換させられる構成が採用されている。
【0007】
この場合、出願人が開示している熱交換装置では、単位時間あたりに十分な量の薬液を温度調整する(十分な量の薬液を通過させる)ために、その内径がある程度大きな熱交換管が採用されて熱交換管ユニットが構成されている。このため、出願人が開示している熱交換装置では、熱交換管の厚みがやや厚くなっている。また、出願人が開示している熱交換装置では、熱交換管ユニットの製造時における熱交換管の折曲げ加工に際して湾曲部に皺が生じるのを回避するために、厚みが薄い熱交換管を採用するのが困難となっている。さらに、この種の熱交換装置(温度調整装置)では、温度調整対象の薬液に直接接する熱交換管(薬液配管)が腐食して液漏れが生じる事態を招くことのないように、フッ素系樹脂素材などで形成された熱交換管(薬液配管)を採用する必要がある。
【0008】
この場合、熱交換管を構成しているフッ素系樹脂素材などは、伝熱ブロック(ブロック半体)の構成材料などと比較して伝熱性が低いことが知られている。したがって、出願人が開示している熱交換装置では、伝熱性が低い材料で形成され、かつ厚みが厚い熱交換管によって熱交換管ユニットが構成されていることに起因して、熱交換管ユニット(熱交換管)内の薬液と伝熱ブロック(ブロック半体)との間の伝熱性を向上させるのが困難となっている。このため、この点を改善するのが好ましい。
【0009】
一方、出願人は、上記の熱交換装置を改良し、その厚みが十分に薄い細径の熱交換管(薬液配管)を並列的に複数配設した多管式の熱交換管ユニットを採用して熱交換装置を構成した。これにより、単位時間あたりに十分な量の薬液を温度調整可能とし、かつ熱交換管の折曲げ加工時に皺が生じる事態を招くことなく、熱交換管ユニット(熱交換管)内の薬液と伝熱ブロック(ブロック半体)との間の伝熱性を向上させることが可能となった。しかしながら、厚みが薄い熱交換管を採用した熱交換管ユニットでは、熱交換管内を通過させる薬液の一部が熱交換管を透過して熱交換管の外に漏出し易くなる。
【0010】
このため、出願人が改良した熱交換装置では、熱交換管を透過して熱交換管の外に漏出した薬液が、熱交換管と伝熱ブロック(ブロック半体)との間に滞留した状態となり、この薬液(気化状態の薬液)によって伝熱ブロック(ブロック半体)が腐食するおそれがある。また、熱交換管の近傍において伝熱ブロック(ブロック半体)が腐食した場合には、熱交換管の周面と伝熱ブロック(ブロック半体)における直線嵌合溝の内面とを面的に接触させた状態を維持するのが困難となり、結果として、熱交換管と伝熱ブロック(ブロック半体)との伝熱性が悪化するおそれがある。
【0011】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、薬液による伝熱部の腐食を招くことなく、薬液配管内の薬液と伝熱部に取り付けられた熱電変換素子との間の伝熱性を十分に向上させ得る薬液用温度調整装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の薬液用温度調整装置は、温度調整対象の薬液の通過が可能な複数の薬液配管と、前記各薬液配管内の前記薬液を温度調整するための熱電変換素子と、一対の板体を有すると共に前記各薬液配管を挟んで当該両板体を厚み方向で重ね合わせるようにして当接させることで当該各薬液配管を挟持可能に構成され、かつ当該両板体の少なくとも一方に前記熱電変換素子が取り付けられて当該熱電変換素子および当該各薬液配管の間で相互に伝熱する伝熱部と、前記薬液配管、前記熱電変換素子および前記伝熱部を収容可能な筐体とを備え、一方の前記板体における他方の前記板体との当接面、および当該他方の板体における当該一方の板体との当接面には、互いに平行で、かつ内面が前記薬液配管の周面に対して面的に接するように複数の配管嵌入用溝部がそれぞれ形成され、前記両板
体は、隣り合う前記配管嵌入用溝部の間の凸状部における突端が前記当接面よりも当該当接面の裏面側に位置するように
それぞれ形成され、前記伝熱部は、前記各配管嵌入用溝部に嵌入した前記各薬液配管が前記両板体によって挟持されるように当該両板体の前記当接面同士を当接させた状態において当該両板体における前記凸状部のそれぞれの
突端面、および隣接する当該各薬液配管の前記周面の一部で構成される通気路が当該凸状部の延在方向に沿っ
て形成され
るように構成され、前記筐体は、収容した前記伝熱部における前記通気路の一方の開口面に対向する一面に当該筐体の外部から気体を導入する導入口が形成されると共に、前記通気路の他方の開口面に対向する一面に当該筐体の内部の気体を排出する排気口が形成されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の薬液用温度調整装置では、一対の板体を有して複数の薬液配管を挟んで両板体を当接させることで各薬液配管を挟持可能に構成されると共に両板体の少なくとも一方に熱電変換素子が取り付けられて熱電変換素子および各薬液配管の間で相互に伝熱する伝熱部を備え、一方の板体における他方の板体との当接面、および他方の板体における一方の板体との当接面には、互いに平行で、かつ内面が薬液配管の周面に対して面的に接するように複数の配管嵌入用溝部がそれぞれ形成され、両板
体は、隣り合う配管嵌入用溝部の間の凸状部における突端が当接面よりも当接面の裏面側に位置するように形成され、伝熱部は、各配管嵌入用溝部に嵌入した各薬液配管が両板体によって挟持されるように両板体の当接面同士を当接させた状態において両板体における凸状部のそれぞれの突端の間に凸状部の延在方向に沿って各薬液配管の側方に形成される通気路
(各薬液配管の周面の一部、および各凸状部の突端面で構成される空間)を備えている。
【0015】
したがって、請求項1記載の薬液用温度調整装置によれば、複数の薬液配管を配設した多管式構造としたことで、単位時間あたりに温度調整可能な薬液の量が減少したり、薬液配管に皺が生じたりする事態を招くことなく、厚みが薄い薬液配管を採用することができるため、各薬液配管内の薬液と伝熱部に取り付けられた熱電変換素子との間の伝熱性を十分に向上させることができる。また、この薬液用温度調整装置によれば、各薬液配管の側方に凸状部の延在方向、すなわち、配管嵌入用溝部に嵌入された薬液配管の延在方向に沿って通気路を形成したことで、薬液配管から漏出した気化状態の薬液を通気路内に流入させて伝熱部の外部に排気することができる結果、薬液配管から漏出した薬液によって両板体が腐食する事態を好適に回避することができる。これにより、この薬液用温度調整装置によれば、各薬液配管の周面と伝熱部(両板体)における各配管嵌入用溝部の内面との面的な接触状態を長期間に亘って好適に維持することができるため、各薬液配管および伝熱部(両板体)を介しての薬液と熱電変換素子との間の伝熱性を長期間に亘って好適な状態に維持することができる結果、温度調整対象の薬液を指定された温度となるように正確に温度調整可能な状態を長期間に亘って維持することができる。
【0016】
また、請求項
1記載の薬液用温度調整装置によれば、筐体における通気路の一方の開口面に対向する一面に筐体の外部から気体を導入する導入口を形成すると共に、筐体における通気路の他方の開口面に対向する一面に筐体の内部の気体を排出する排気口を形成したことにより、導入口から排気口に向かって筐体内を移動させられる気体の流れによって通気路内に流入した気化状態の薬液を伝熱部の外部(通気路の外部)にスムーズに排気することができる結果、各薬液配管から漏出した薬液によって各伝熱板が腐食する事態を一層好適に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明に係る薬液用温度調整装置の実施の形態について説明する。
【0019】
図
1に示す温度調整装置1は、「薬液用温度調整装置」の一例であって、半導体製造装置や薬剤調合装置などの各種装置(薬剤を使用する装置:以下「供給対象」ともいう)内に設置され、図示しない薬液圧送装置によって圧送される薬液(硝酸、酢酸、硫酸およびリン酸や純水など)を冷却または加熱することで指定された温度となるように温度調整して供給対象に供給することができるように構成されている。この温度調整装置1は、熱交換器2と、熱交換器2を収容可能なケーシング3とを備えている。
【0020】
熱交換器2は、出願人が特許文献に開示した熱交換装置や、これを改良した熱交換装置に対応する構成要素であって、複数の薬液配管11、伝熱部12、複数のペルチェ素子13および冷却部14を備えて構成されている。薬液配管11は、一例として、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)によって外径3.2mm:内径2.4mm(厚み0.4mm)程度の円筒状に形成されている。この場合、本例の温度調整装置1における熱交換器2は、多管式の「熱交換器」であって、後述するように、複数の薬液配管11が平行に配置されると共に、一例として、各薬液配管11の両端部がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で形成されたコネクタ11i,11oにそれぞれ接続されている。
【0021】
また、本例の熱交換器2では、
図1に示すように、一例として、各薬液配管11が中間部位で折り返されており、コネクタ11iから各薬液配管11内に流入した薬液が、上記の折り返し部位に向かって(同図における右方から左方に向かって)移動させられた後に、コネクタ11oに向かって(同図における左方から右方に向かって)移動させられる構成が採用されている。これにより、本例の熱交換器2では、各薬液配管11が伝熱部12に接している距離、すなわち、各薬液配管11内を移動させられる薬液を、伝熱部12を介して温度調する処理時間を充分に長くしつつ、温度調整装置1を短尺化することが可能となっている。
【0022】
伝熱部12は、各薬液配管11における上記のコネクタ11iと折り返し部位との間に接する一対の伝熱板21a,21b(
図1における上側の伝熱板21a,21b)、および各薬液配管11における上記の折り返し部位とコネクタ11oとの間に接する一対の伝熱板21a,21b(
図1における下側の伝熱板21a,21b)の2組の伝熱板21a,21bを備えている。
【0023】
この場合、本例の温度調整装置1(熱交換器2)では、一例として、各薬液配管11における折り返し部位とコネクタ11oとの間に接する伝熱板21a,21b(「一対の板体」の一例)によって「伝熱部」が構成され、この伝熱板21a,21bは、図
2,3に示すように、各薬液配管11を挟んで両伝熱板21a,21bを厚み方向で重ね合わせるようにして当接させることで各薬液配管11を挟持すると共に、両伝熱板21a,21bの一方(本例では、伝熱板21a)に取り付けられたペルチェ素子13と各薬液配管11との間で相互に伝熱することができるように構成されている。
【0024】
また、各薬液配管11におけるコネクタ11iと折り返し部位との間に接する伝熱板21a,21bは、各薬液配管11を挟んで両伝熱板21a,21bを厚み方向で重ね合わせるようにして当接させることで各薬液配管11を挟持すると共に、ペルチェ素子13が取り付けられている上記の両伝熱板21a,21bに接するように重ね合わされることにより、ペルチェ素子13が取り付けられている両伝熱板21a,21bと各薬液配管11との間で相互に伝熱することができるように構成されている。
【0025】
この場合、本例の温度調整装置1では、各伝熱板21a,21b(以下、これらを区別しないときには、「伝熱板21」ともいう)が互いに等しい大きさで、かつ互いに同じ形状に形成されている。具体的には、各両伝熱板21は、一例として、アルミニウム等の高伝熱性材料で平板状に形成されている。また、図
4,5に示すように、伝熱板21の面Fa(伝熱板21aにおける伝熱板21bとの当接面、および伝熱板21bにおける伝熱板21aとの当接面)には、互いに平行で、かつその内面が薬液配管11の周面に対して面的に接するように複数の配管嵌入用溝部22がそれぞれ形成されている。なお、薬液配管11が円筒状に形成されている本例の温度調整装置1(熱交換器2)では、各配管嵌入用溝部22が断面半円形状(ハーフパイプ状)に形成されている。
【0026】
さらに、
図2に示すように、各伝熱板21は、隣り合う配管嵌入用溝部22,22の間の凸状部23における突端面Fc(「凸状部の突端」の一例)が、面Faよりも面Fb(面Faの裏面)の側に位置するように形成されてい
る。これにより、本例の温度調整装置1(熱交換器2)における伝熱部12では、各配管嵌入用溝部22に嵌入した各薬液配管11が両伝熱板21a,21bによって挟持されるように両伝熱板21a,21bの面Fa同士を当接させた状態において両伝熱板21a,21bにおける凸状部23のそれぞれの突端面Fcの間に凸状部23の延在方向に沿って薬液配管11の側方に通気路24(各薬液配管11の周面、および各凸状部23の突端面Fcで構成される空間:「通気路」の一例)が形成されている。
【0027】
また、図
2〜4に示すように、各伝熱板21の面Faには、伝熱板21の側方から配管嵌入用溝部22に向かって断面半円形状(ハーフパイプ状)の横孔用溝部25が複数形成されている。これにより、本例の伝熱部12では、図
2,3に示すように、一対の伝熱板21a,21bの面Fa同士を当接させた状態において、伝熱板21aの横孔用溝部25と伝熱板21bの横孔用溝部25とで構成される複数の横孔26が形成される。
【0028】
ペルチェ素子13は、「熱電変換素子」の一例であって、図示しない電源部からの電力の供給によって、薬液配管11内の薬液を温度調整(冷却または加熱)する。この場合、本例の温度調整装置1(熱交換器2)では、一例として、
図1における下側の伝熱板21a,21bのうちの伝熱板21aにおける面Fbに各ペルチェ素子13が取り付けられているが、必要とされる温度調整能力に応じて、
図1における上側の伝熱板21a,21bのうちの伝熱板21aにおける面Fbにもペルチェ素子13を取り付けることができる。この場合、上側の伝熱板21a,21bにおける伝熱板21aにペルチェ素子13を取り付けたときには、この上側の伝熱板21a,21bも「伝熱部」に相当する。
【0029】
また、必要とされる温度調整能力に応じて、下側の伝熱板21a,21bのうちの伝熱板21bにおける面Fbにも各ペルチェ素子13を取り付けたり、上側の伝熱板21a,21bのうちの伝熱板21bにおける面Fbにも各ペルチェ素子13を取り付けたりすることもできる。なお、温度調整装置1は、ペルチェ素子13に対して電力を供給する上記の電源部や、指定された温度に応じて電源部を制御して各ペルチェ素子13に電力を供給させる制御部などを備えているが、これらの構成(「ペルチェ素子」による対象物の冷却・加熱)については公知のため、詳細な説明を省略する。
【0030】
冷却部14は、ペルチェ素子13を冷却するための水冷ユニットであって、図
1に示すように、各ペルチェ素子13に接するように伝熱板21aに対向配置されたヒートシンク31と、ヒートシンク31に接続された2本の冷却水配管32とを備えて構成されている。この場合、ヒートシンク31は、一例として、ステンレススチールによって平板状に形成されると共に、冷却水を通過させる冷却水流路31aが形成されている。また、両冷却水配管32は、一例として、ステンレススチールによって円筒状に形成されてヒートシンク31における冷却水流路31aの両端部にそれぞれ接続されている。さらに、両冷却水配管32のヒートシンク31とは逆側の端部には、冷却水供給源に接続するための配管(図示せず)を接続可能なコネクタ32i、および排水設備に接続するための配管(図示せず)を接続可能なコネクタ32oがそれぞれ接続されている。
【0031】
一方、ケーシング3は、「筐体」の一例であって、図
1に示すように、底板41、正面板42、背面板43、側板44a,44bおよび天板45を備えて熱交換器2を収容可能な箱状に形成されている。この場合、本例の温度調整装置1(ケーシング3)では、図
6に示すように、上記のコネクタ11i,11o,32i,32oや、各ペルチェ素子13に電力を供給するためのケーブル(図示せず)をケーシング3の外に引き出すためのケーブル引出し部13aが正面板42に配設されている。
【0032】
また、本例の温度調整装置1(ケーシング3)では、図
6に示すように、ケーシング3の外部から気体(一例として、フィルタを通過させて塵埃や水分を除去した大気や、工業用窒素等)を導入する導入口Hiが正面板42(「通気路の一方の開口面に対向する一面」の一例)に形成されている。さらに、本例の温度調整装置1(ケーシング3)では、
図1,
7に示すように、ケーシング3の内部の気体をケーシング3の外部に排気する排気口Hoが背面板43(「通気路の他方の開口面に対向する一面」の一例)に形成されている。
【0033】
この温度調整装置1では、コネクタ11iに接続されている図示しない配管を介して薬液が圧送されることにより、この薬液が熱交換器2内において指定された温度に温度調整される。具体的には、コネクタ11iから熱交換器2内に流入した薬液は、各薬液配管11内を通過させられてコネクタ11oに案内されて、コネクタ11oに接続されている図示しない配管を介して供給対象に供給される。この際に、コネクタ11iに流入する薬液の温度が指定温度よりも高温のときには、ペルチェ素子13によって伝熱部12が冷却される(温度低下させられる)ことにより、伝熱部12における各配管嵌入用溝部22の内面に面的に接している各薬液配管11を介して薬液配管11内の薬液が冷却される(温度低下させられる)。また、コネクタ11iに流入する薬液の温度が指定温度よりも低温のときには、ペルチェ素子13によって伝熱部12が加熱される(温度上昇させられる)ことにより、伝熱部12に接している各薬液配管11を介して薬液配管11内の薬液が加熱される(温度上昇させられる)。
【0034】
この際に、ペルチェ素子13によって伝熱部12を冷却しているときには、ペルチェ素子13が伝熱部12から吸熱した熱、およびペルチェ素子13の発熱によってペルチェ素子13における伝熱部12とは逆側の面が温度上昇する。また、この種の温度調整装置に採用されている「ペルチェ素子」は、ペルチェ効果によって移動する熱量よりも「ペルチェ素子」の作動熱の熱量の方が多いため、ペルチェ素子13によって伝熱部12を加熱しているときにも、ペルチェ素子13の発熱によってペルチェ素子13における伝熱部12とは逆側の面が温度上昇する。
【0035】
したがって、本例の温度調整装置1(熱交換器2)では、コネクタ32iから冷却水を導入して冷却水配管32を介してヒートシンク31(冷却水流路31a)に案内させることにより、ヒートシンク31を介して各ペルチェ素子13を冷却する構成が採用されている。なお、ペルチェ素子13を冷却することで温度上昇した冷却水は、冷却水流路31aから冷却水配管32を介してコネクタ32oに案内されて図示しない排水処理設備に排水される。このような処理を、温度調整対象の薬液の温度に応じて継続的に実行することにより、熱交換器2において指定された温度に温度調整された薬液が供給対象に対して継続的に供給される。
【0036】
この場合、本例の温度調整装置1(熱交換器2)では、出願人が特許文献に開示した熱交換装置を改良した多管式の熱交換装置(冷却装置)と同様にして、薬液を通過させる各薬液配管11の厚みが非常に薄くなっている。これにより、本例の温度調整装置1(熱交換器2)では、伝熱部12を構成する各伝熱板21と、各薬液配管11内の薬液との間の伝熱性が向上しているため、各薬液配管11内の薬液を指定された温度まで短時間で正確に温度変化させる(温度調整する)ことが可能となっている。
【0037】
しかしながら、各薬液配管11の厚みが非常に薄い温度調整装置1(熱交換器2)では、出願人が特許文献に開示している熱交換装置における熱交換管のような厚みが厚い「薬液配管」と比較して、各薬液配管11内を通過させられている薬液の一部が各薬液配管11を透過して外部に漏出し易くなっている。この場合、各薬液配管11の外部に漏出した気化状態の薬液が伝熱部12内(薬液配管11と伝熱板21との間)に滞留した状態が長時間に亘って続いたときには、伝熱板21が薬液によって腐食して薬液配管11と伝熱板21(配管嵌入用溝部22の内面)との接触面積が減少する結果、伝熱部12を介して薬液配管11内の薬液を好適に温度調整するのが困難な状態となるおそれがある。
【0038】
したがって、本例の温度調整装置1(熱交換器2)では、前述したように、一対の伝熱板21a,21bの間に挟み込まれた(各配管嵌入用溝部22内に嵌入された)各薬液配管11の側方に通気路24を形成することで、各薬液配管11から漏出した気化状態の薬液が、この通気路24を移動して伝熱部12の外に排出される構成が採用されている。また、本例の温度調整装置1では、ケーシング3における正面板42に導入口Hiを形成し、かつ背面板43に排気口Hoを形成すると共に、熱交換器2による薬液の温度調整を行っている間、導入口Hiからケーシング3内に気体(一例として、塵埃や水分を除去した大気)を継続的に導入することにより、各通気路24から排出された気化状態の薬液をケーシング3内の気体と共に排気口Hoからケーシング3の外部に排気する構成が採用されている。
【0039】
この場合、本例の温度調整装置1(ケーシング3)では、前述したように、伝熱部12に形成された各通気路24における一端部側の開口面に対向する正面板42に導入口Hiが形成され、かつ各通気路24における他端部側の開口面に対向する背面板43に排気口Hoが形成されている。このため、上記したように、導入口Hiからケーシング3内に気体が導入され、ケーシング3の内圧が上昇することでケーシング3内の気体が排気口Hoから排気されることにより、ケーシング3内(熱交換器2の周囲)には、図
1に矢印Aで示すような向きの気体の流れ(各通気路24の延在方向に沿った気体の流れ)が生じる。
【0040】
したがって、本例の温度調整装置1では、薬液配管11から漏出した気化状態の薬液が各通気路24内に滞留する事態を招くことなく、漏出した薬液が各通気路24内を矢印Aの向きで移動して伝熱部12の外部に排出される。なお、漏出した薬液の一部は、伝熱部12に形成されている各横孔26を介して伝熱部12の外部に排出される。また、伝熱部12の外部に排出された薬液は、ケーシング3内を矢印Aの向きで移動している気体と共にケーシング3内を移動して、ケーシング3内の気体と共にケーシング3の外部に排気される。これにより、漏出した薬液による伝熱部12(伝熱板21)の腐食が好適に回避される。なお、ケーシング3の外部に排気された気化状態の薬液は、この温度調整装置1が設置されている装置(供給対象)に予め配設されている排気設備(図示せず)によって温度調整装置1(ケーシング3)の周囲から排気処理装置に回収され、他の装置から排出された排気等と共に必要とされる後処理が行われた後に大気中に開放される。これにより、ケーシング3の外部に排気された気化状態の薬液によるケーシング3等の腐食も回避される。
【0041】
このように、この温度調整装置1では、一対の伝熱板21a,21bを有して複数の薬液配管11を挟んで両伝熱板21を当接させることで各薬液配管11を挟持可能に構成されると共に両伝熱板21の少なくとも一方(本例では、伝熱板21a)にペルチェ素子13が取り付けられてペルチェ素子13および各薬液配管11の間で相互に伝熱する「伝熱部」を備え、両伝熱板21の面Faには、互いに平行で、かつ内面が薬液配管11の周面に対して面的に接するように複数の配管嵌入用溝部22がそれぞれ形成され、両伝熱板21は、隣り合う配管嵌入用溝部22の間の凸状部23における突端面Fcが面Faよりも面Fb(面Faの裏面)側に位置するように形成され、「伝熱部」は、各配管嵌入用溝部22に嵌入した各薬液配管11が両伝熱板21によって挟持されるように両伝熱板21の面Fa同士を当接させた状態において両伝熱板21における凸状部23のそれぞれの突端面Fcの間に凸状部23の延在方向に沿って各薬液配管11の側方に形成される通気路24を備えている。
【0042】
したがって、この温度調整装置1によれば、複数の薬液配管11を配設した多管式構造としたことで、単位時間あたりに温度調整可能な薬液の量が減少したり、薬液配管11に皺が生じたりする事態を招くことなく、厚みが薄い薬液配管11を採用することができるため、各薬液配管11内の薬液と「伝熱部」に取り付けられたペルチェ素子13との間の伝熱性を十分に向上させることができる。また、この温度調整装置1によれば、各薬液配管11の側方に凸状部23の延在方向、すなわち、配管嵌入用溝部22に嵌入された薬液配管11の延在方向に沿って通気路24を形成したことで、薬液配管11から漏出した気化状態の薬液をこの通気路24内に流入させて「伝熱部」の外部に排気することができる結果、薬液配管11から漏出した薬液によって両伝熱板21が腐食する事態を好適に回避することができる。これにより、この温度調整装置1によれば、各薬液配管11の周面と「伝熱部(両伝熱板21)」における各配管嵌入用溝部22の内面との面的な接触状態を長期間に亘って好適に維持することができるため、各薬液配管11および「伝熱部(両伝熱板21)」を介しての薬液とペルチェ素子13との間の伝熱性を長期間に亘って好適な状態に維持することができる結果、温度調整対象の薬液を指定された温度となるように正確に温度調整可能な状態を長期間に亘って維持することができる。
【0043】
また、この温度調整装置1によれば、ケーシング3における通気路24の一方の開口面に対向する一面(正面板42)にケーシング3の外部から気体を導入する導入口Hiを形成すると共に、ケーシング3における通気路24の他方の開口面に対向する一面(背面板43)にケーシング3の内部の気体を排出する排気口Hoを形成したことにより、導入口Hiから排気口Hoに向かってケーシング3内を移動させられる気体の流れによって通気路24内に流入した気化状態の薬液を「伝熱部」の外部(通気路24の外部)にスムーズに排気することができる結果、各薬液配管11から漏出した薬液によって各伝熱板21が腐食する事態を一層好適に回避することができる。
【0044】
なお
、「伝熱部」を構成する一対の伝熱板21a,21bの双方において、隣り合う配管嵌入用溝部22の間の凸状部23における突端面Fcを、面Faよりも面Fb(面Faの裏面)の側に位置するように各凸状部23を形成した例について説明したが、「伝熱部」を構成する一対の「板体」のうちのいずれか一方については、上記の各伝熱板21と同様に構成し、他方については、隣り合う「配管嵌入用溝部」の間の「凸状部」における「突端」が「当接面」と面一となるように形成してもよい。このような構成においても、一方の「板体」の「凸状部」における「突端」と、他方の「板体」の「凸状部」における「突端」との間に「通気路」が形成されるため、上記の温度調整装置1と同様の効果を奏することができる。