特許第6357663号(P6357663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357663
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20180709BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20180709BHJP
   G09G 3/30 20060101ALI20180709BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180709BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180709BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   G09F9/30 338
   G09F9/30 365
   G09G3/20 641D
   G09G3/20 624B
   G09G3/30 J
   G09G3/30 Z
   G09G3/20 611J
   G09G3/20 621J
   G09G3/20 670A
   G09G3/20 680F
   G09G3/20 642A
   H05B33/14 A
   H01L29/78 618C
   H01L29/78 612Z
   H01L29/78 617K
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 619A
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-110573(P2014-110573)
(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-72448(P2015-72448A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2017年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-185216(P2013-185216)
(32)【優先日】2013年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】小野 晋也
(72)【発明者】
【氏名】柘植 仁志
(72)【発明者】
【氏名】戎野 浩平
【審査官】 小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−161895(JP,A)
【文献】 特開2011−085918(JP,A)
【文献】 特開2008−310352(JP,A)
【文献】 特開2009−033020(JP,A)
【文献】 特開2010−231176(JP,A)
【文献】 特開2012−237805(JP,A)
【文献】 特開2012−164976(JP,A)
【文献】 特開2010−153828(JP,A)
【文献】 特開2008−122634(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069041(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/125109(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00−46
H01L 21/336
27/32
29/76
29/772
29/78−29/786
51/50
H05B 33/00−33/28
G09G 1/00−5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される電流に応じて発光する発光素子と、輝度信号の大きさに応じた前記電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタと、ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタとを含む表示画素が複数配列されて構成される表示装置であって、
前記スイッチングトランジスタは、
ゲート電極と、
当該ゲート電極に対向して設けられた半導体層と、
当該半導体層上に、互いに間隔をあけて設けられたソース電極及びドレイン電極とを備え、
前記スイッチングトランジスタのゲート電極は、平面視において、前記半導体層のチャネル領域の全域、前記チャネル領域以外の前記半導体層の少なくとも一部、前記ソース電極の全域、及び、前記ドレイン電極の全域に重なり、
前記チャネル領域の幅は、前記チャネル領域以外の前記半導体層の幅よりも狭い
表示装置。
【請求項2】
前記スイッチングトランジスタのゲート電極は、平面視において、前記半導体層の全域に重なる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記半導体層は、酸化物半導体からなる
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記スイッチングトランジスタは、さらに、前記半導体層上に設けられ、当該スイッチングトランジスタのソース電極及びドレイン電極に対応する複数のスルーホールが開口されたエッチングストッパ層を備える
請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示画素は、
第1電極が前記駆動トランジスタのゲート電極と導通し、第2電極が前記駆動トランジスタのソース電極及び前記発光素子のアノードと導通し、前記輝度信号の大きさに応じた電圧を保持するための蓄積容量と、
ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、前記輝度信号を供給するための信号線と前記蓄積容量の前記第1電極との導通及び非導通を切り換える第1スイッチと、
ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、第1電源線と前記蓄積容量の前記第1電極との導通及び非導通を切り換える第2スイッチと、
前記蓄積容量の第2電極と第2電源線との導通及び非導通を切り換える第3スイッチと、
第3電源線と前記駆動トランジスタのドレイン電極との導通及び非導通を切り換える第4スイッチとを含み、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの各々は、前記スイッチングトランジスタである
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示画素は、
ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続された第1スイッチと、
第1電極が前記第1スイッチを介して前記駆動トランジスタのゲート電極と導通し、第2電極が前記駆動トランジスタのソース電極及び前記発光素子のアノードと導通し、前記輝度信号の大きさに応じた電圧を保持するための蓄積容量と、
ソース電極またはドレイン電極が前記第1スイッチを介して前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、前記輝度信号を供給するための信号線と前記蓄積容量の前記第1電極との導通及び非導通を切り換える第2スイッチと、
ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、電源線と前記駆動トランジスタのゲート電極との導通及び非導通を切り換える第3スイッチとを含み、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの各々は、前記スイッチングトランジスタである
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記表示画素は、
第1電極が前記駆動トランジスタのゲート電極と導通し、前記輝度信号の大きさに応じた電圧を保持するための蓄積容量と、
前記輝度信号を供給するための信号線と前記蓄積容量の第2電極との導通及び非導通を切り換える第1スイッチと、
ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、電源線と前記蓄積容量の前記第1電極との導通及び非導通を切り換える第2スイッチと、
前記蓄積容量の第2電極と前記駆動トランジスタのソース電極との導通及び非導通を切り換える第3スイッチとを含み、
前記第2スイッチは、前記スイッチングトランジスタである
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示装置は、さらに制御部を備え、
前記制御部は、
前記蓄積容量に前記輝度信号の大きさに応じた電圧を保持させ、
保持させた後に、前記蓄積容量の前記第1電極を前記駆動トランジスタのゲート電極と導通させ、かつ、前記蓄積容量の第2電極を前記駆動トランジスタのソース電極と導通させることにより、前記駆動トランジスタに流れる電流によって当該駆動トランジスタのソース電極の電位を変化させることで当該駆動トランジスタのゲート電極の電位を変化させる動作であるブートストラップ動作を実行し、
前記ブートストラップ動作を経て、前記発光素子を発光させる
請求項5〜7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記駆動トランジスタの半導体層は、チャネル幅方向の長さがチャネル長方向に亘って略一定である
請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流駆動型の発光素子を用いた画像表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を用いた画像表示装置が知られている。この自発光する有機EL素子を用いた有機EL表示装置は、液晶表示装置に必要なバックライトが不要で装置の薄型化に最適である。また、視野角にも制限がないため、次世代の表示装置として実用化が期待されている。
【0003】
特許文献1には、アクティブマトリクス型の有機EL表示装置における表示画素の回路構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−310352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような表示画素では、高精度な画像表示を実現できないという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、高精度な画像表示を実現できる表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る表示装置の一態様は、供給される電流に応じて発光する発光素子と、輝度信号の大きさに応じた前記電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタと、ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタとを含む表示画素が複数配列されて構成される表示装置であって、前記スイッチングトランジスタは、ゲート電極と、当該ゲート電極に対向して設けられた半導体層と、当該半導体層上に、互いに間隔をあけて設けられたソース電極及びドレイン電極とを備え、前記スイッチングトランジスタのゲート電極は、平面視において、前記半導体層のチャネル領域の全域、前記チャネル領域以外の前記半導体層の少なくとも一部、前記ソース電極の全域、及び、前記ドレイン電極の全域に重なり、前記チャネル領域の幅は、前記チャネル領域以外の前記半導体層の幅よりも狭い。
【発明の効果】
【0008】
本開示における表示装置は、高精度な画像表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1におけるスイッチングトランジスタの構成の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A’断面における断面図、(c)は(a)のB−B’断面における断面図である。
図2図2は、図1に示すスイッチングトランジスタの各部のサイズを示す表である。
図3A図3Aは、実施の形態1における表示画素の構成の一例を示す回路図である。
図3B図3Bは、実施の形態1における表示画素の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図4図4は、駆動トランジスタのゲート電圧及びソース電圧を説明するための図であり、(a)はデータ書き込み完了時の各電圧を示し、(b)は発光時の各電圧を示す。
図5図5は、カソード電圧の変動に対する画素電流の変動率を示すグラフである。
図6A図6Aは、比較例における表示画面の一例を示す図である。
図6B図6Bは、実施の形態1における表示画面の一例を示す図である。
図7A図7Aは、実施の形態2における表示画素の構成の一例を示す回路図である。
図7B図7Bは、実施の形態2における表示画素の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図8A図8Aは、実施の形態3における表示画素の構成の一例を示す回路図である。
図8B図8Bは、実施の形態3における表示画素の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図9図9は、本開示の表示装置を内蔵した薄型フラットTVの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係る表示装置の一態様は、供給される電流に応じて発光する発光素子と、輝度信号の大きさに応じた前記電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタと、ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタとを含む表示画素が複数配列されて構成される表示装置であって、前記スイッチングトランジスタは、ゲート電極と、当該ゲート電極に対向して設けられた半導体層と、当該半導体層上に、互いに間隔をあけて設けられたソース電極及びドレイン電極とを備え、前記スイッチングトランジスタのゲート電極は、平面視において、前記半導体層のチャネル領域の全域、及び、前記チャネル領域以外の前記半導体層の少なくとも一部に重なり、前記チャネル領域の幅は、前記チャネル領域以外の前記半導体層の幅よりも狭い。
【0011】
このように、駆動トランジスタのゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタにおいて、チャネル領域の幅は、チャネル領域以外の半導体層の幅よりも狭い。よって、スイッチングトランジスタの寄生容量を小さくすることができる。したがって、駆動トランジスタのゲート電極に付随する寄生容量を低減できる。その結果、高精度な画像表示を実現できる。
【0012】
また、前記スイッチングトランジスタのゲート電極は、平面視において、前記半導体層の全域に重なってもよい。
【0013】
また、前記半導体層は、酸化物半導体からなってもよい。
【0014】
これにより、スイッチングトランジスタのオフ時の電流を抑制しつつ、電子移動度が大きいことから、高い駆動能力を実現できる。
【0015】
また、前記スイッチングトランジスタは、さらに、前記半導体層上に設けられ、当該スイッチングトランジスタのソース電極及びドレイン電極に対応する複数のスルーホールが開口されたエッチングストッパ層を備えてもよい。
【0016】
これにより、スイッチングトランジスタのソース電極及びドレイン電極をエッチングによって形成する際に、エッチングダメージから半導体層を保護することができる。
【0017】
また、前記表示画素は、第1電極が前記駆動トランジスタのゲート電極と導通し、第2電極が前記駆動トランジスタのソース電極及び前記発光素子のアノードと導通し、前記輝度信号の大きさに応じた電圧を保持するための蓄積容量と、ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、前記輝度信号を供給するための信号線と前記蓄積容量の前記第1電極との導通及び非導通を切り換える第1スイッチと、ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、第1電源線と前記蓄積容量の前記第1電極との導通及び非導通を切り換える第2スイッチと、前記蓄積容量の第2電極と第2電源線との導通及び非導通を切り換える第3スイッチと、第3電源線と前記駆動トランジスタのドレイン電極との導通及び非導通を切り換える第4スイッチとを含み、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの各々は、前記スイッチングトランジスタであってもよい。
【0018】
このように、表示画素において第1スイッチ及び第2スイッチは上述のスイッチングトランジスタである。よって、表示画面の不均一の抑制、閾値補償能力の低下の抑制、及び、高フレームレート表示への対応といった高精度な画像表示を実現できる。
【0019】
また、前記表示画素は、ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続された第1スイッチと、第1電極が前記第1スイッチを介して前記駆動トランジスタのゲート電極と導通し、第2電極が前記駆動トランジスタのソース電極及び前記発光素子のアノードと導通し、前記輝度信号の大きさに応じた電圧を保持するための蓄積容量と、ソース電極またはドレイン電極が前記第1スイッチを介して前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、前記輝度信号を供給するための信号線と前記蓄積容量の前記第1電極との導通及び非導通を切り換える第2スイッチと、ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、電源線と前記駆動トランジスタのゲート電極との導通及び非導通を切り換える第3スイッチとを含み、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの各々は、前記スイッチングトランジスタであってもよい。
【0020】
また、前記表示画素は、第1電極が前記駆動トランジスタのゲート電極と導通し、前記輝度信号の大きさに応じた電圧を保持するための蓄積容量と、前記輝度信号を供給するための信号線と前記蓄積容量の前記第2電極との導通及び非導通を切り換える第1スイッチと、ソース電極またはドレイン電極が前記駆動トランジスタのゲート電極に接続され、電源線と前記蓄積容量の前記第1電極との導通及び非導通を切り換える第2スイッチと、前記蓄積容量の第2電極と前記駆動トランジスタのソース電極との導通及び非導通を切り換える第3スイッチとを含み、前記第2スイッチは、前記スイッチングトランジスタであってもよい。
【0021】
このように、表示画素において第1スイッチは上述のスイッチングトランジスタである。よって、表示画面の不均一の抑制、及び、高フレームレート表示への対応といった高精度な画像表示を実現できる。
【0022】
また、前記表示装置は、さらに制御部を備え、前記制御部は、前記蓄積容量に前記輝度信号の大きさに応じた電圧を保持させ、保持させた後に、前記蓄積容量の前記第1電極を前記駆動トランジスタのゲート電極と導通させ、かつ、前記蓄積容量の前記第2電極を前記駆動トランジスタのソース電極と導通させることにより、前記駆動トランジスタに流れる電流によって当該駆動トランジスタのソース電極の電位を変化させることで当該駆動トランジスタのゲート電極の電位を変化させる動作であるブートストラップ動作を実行し、前記ブートストラップ動作を経て、前記発光素子を発光させてもよい。
【0023】
また、前記駆動トランジスタの半導体層は、チャネル幅方向の長さがチャネル長方向に亘って略一定であってもよい。
【0024】
これにより、駆動トランジスタのオン特性の低下を抑制できる。
【0025】
以下、本開示に係る表示装置の一態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0026】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。例えば、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、以下の各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る表示装置は、供給される電流に応じて発光する発光素子と、輝度信号の大きさに応じた電流を発光素子に供給する駆動トランジスタと、ソース電極またはドレイン電極が駆動トランジスタのゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタとを含む表示画素が複数配列されて構成される表示装置である。
【0028】
[スイッチングトランジスタの構成]
まず、本実施の形態におけるスイッチングトランジスタの構成について説明する。図1は、実施の形態1におけるスイッチングトランジスタの構成の一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A’断面における断面図、(c)は(a)のB−B’断面における断面図である。なお、(b)では、後述するゲート電極及び半導体層は透視図で示されている。
【0029】
図1の(b)に示すように、本実施の形態におけるスイッチングトランジスタ100は、基板(図示せず)上に形成されたゲート電極101と、ゲート電極101に対向して設けられたゲート絶縁膜102と、ゲート絶縁膜102上に設けられた半導体層103と、半導体層103上に、互いに間隔をあけて設けられたソース電極105s及びドレイン電極105dとを備える。さらに、スイッチングトランジスタ100は、半導体層103上に設けられ、ソース電極105s及びドレイン電極105dに対応する複数のスルーホールが開口されたエッチングストッパ層104を備える。
【0030】
ここで、ゲート電極101は、平面視において、半導体層103のチャネル領域の全域、及び、チャネル領域以外の半導体層の領域であるコンタクト領域の少なくとも一部に重なる。なお、以下、チャネル領域以外の半導体層103の領域をコンタクト領域と記載する場合がある。
【0031】
また、チャネル領域の幅cは、コンタクト領域の幅gよりも狭くなっている。これにより、本実施の形態におけるスイッチングトランジスタ100は、チャネル領域の幅cがコンタクト領域の幅gと等しいスイッチングトランジスタと比較して、寄生容量を小さくすることができる。この詳細については後述する。
【0032】
なお、半導体層103における「幅」とは、スイッチングトランジスタ100を平面視した場合のソース電極105sとドレイン電極105dとの並び方向に直交する方向における半導体層103の長さを指す。すなわち、半導体層103における電子の移動方向と直交する方向における半導体層103の長さを指す。
【0033】
図2は、図1に示すスイッチングトランジスタの各部のサイズを示す表である。この表には、チャネル領域の幅cとコンタクト領域の幅gとが同じであるスイッチングトランジスタを比較例として、この比較例におけるスイッチングトランジスタの各部のサイズと、本実施の形態(図中では本発明と記載)におけるスイッチングトランジスタの各部のサイズと、このようなサイズ構成による半導体層とゲート電極との重なり面積とが示されている。各部のサイズとしては、(i)ソース電極105s及びドレイン電極dと半導体層103とのチャネル長方向のアライメントマージンaと、(ii)ソース電極105s及びドレイン電極dと半導体層103とのチャネル幅方向のアライメントマージンbと、(iii)チャネル領域の幅cと、(iv)半導体層103に接するソース電極105sとドレイン電極105dとの距離dと、(v)ソース電極105s及びドレイン電極105dと半導体層103とのコンタクト箇所のチャネル幅方向の長さeと、(vi)当該コンタクト箇所のチャネル長方向の長さfとが示されている。
【0034】
図2に示すように、比較例におけるスイッチングトランジスタの形状と、本実施の形態におけるスイッチングトランジスタの形状とはほぼ同じであるが、チャネル領域の幅cのみ異なる。つまり、比較例ではチャネル領域の幅cがコンタクト領域の幅gと同じであるのに対し、本実施の形態ではチャネル領域の幅cがコンタクト領域の幅gよりも狭くなっている。言い換えると、平面視において、比較例の半導体層は矩形形状であるのに対し、本実施の半導体層103は当該矩形形状の中央部に凹部を設けた形状である。
【0035】
よって、半導体層とゲート電極との重なり面積は、比較例では240μmであるのに対し、本実施の形態では216μmとなり、当該面積は、本実施の形態が比較例よりも小さくなっている。
【0036】
なお、図2の表に示した各数値は一例であり、本実施の形態におけるスイッチングトランジスタ100の各部のサイズはこれに限らない。例えば、図2では、上記(iii)チャネル領域の幅cと上記(v)コンタクト箇所のチャネル幅方向の長さeとは同一であるとしたが、これらは異なっていてもよく、さらに、これらの大小関係についても不問である。
【0037】
以下、本実施の形態におけるスイッチングトランジスタ100の各構成要素について、詳細に説明する。
【0038】
<ゲート電極>
ゲート電極101は、基板上に形成された電極であり、例えば、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、アルミニウム、銅(Cu)、タングステン、チタン、マンガン、クロムなどの金属、アルミニウムモリブデン、アルミニウム、銅モリブデン、銅マンガン、モリブデンタングステンなどの合金、酸化インジウム錫(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)などの透明導電材料を用いることができる。また、これらを積層した多層構造とすることもできる。
【0039】
<ゲート絶縁膜>
ゲート絶縁膜102は、ゲート電極101を覆うように設けられ、例えば、シリコン酸化膜や、シリコン窒化膜の単層構造若しくはこれらを積層した多層構造を用いることができる。あるいは、これらとシリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル膜、酸化ハフニウム膜などを積層した多層構造を用いてもよい。
【0040】
<半導体層>
半導体層103は、ゲート電極101に対向して設けられている。具体的には、上述のように、コンタクト領域の全域、及び、チャネル領域の全域がゲート電極101に重なるように設けられている。すなわち、半導体層103の全域がゲート電極101に重なるように設けられている。つまり、半導体層103は積層方向から見てゲート電極101に包含される領域に配置されている。
【0041】
この半導体層103は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)のうち、少なくとも1種を含む酸化物半導体材料を用いることができる。例えば、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(InGaZnO)を用いることができる。このように、半導体層103として酸化物半導体材料を用いることにより、スイッチングトランジスタ100のオフ時の電流を抑制することができる。また、電子移動度が大きいことから、高い駆動能力を実現できる。
【0042】
ここで、上述したように、チャネル領域の幅は、コンタクト領域の幅よりも狭くなっている。図1の(a)に示すように、半導体層103は、平面視において、チャネル領域がコンタクト領域よりも窪んだ形状となっている。
【0043】
このように、チャネル領域の幅をコンタクト領域の幅よりも狭くすることにより、上述のようにスイッチングトランジスタ100の寄生容量を小さくすることができる。その理由としては次のとおりである。
【0044】
すなわち、スイッチングトランジスタ100の寄生容量は、ゲート電極101と半導体層103との重なり面積と、ゲート電極101と半導体層103との間に介在するゲート絶縁膜102とによって影響される。この寄生容量を軽減する方法としては、(i)ゲート絶縁膜102の厚膜化、または、(ii)ゲート電極101と半導体層103との重なり面積の小型化が考えられる。
【0045】
しかしながら、(i)ゲート絶縁膜102の厚膜化を行った場合、スイッチングトランジスタ100にゲート電極が接続された駆動トランジスタのオン特性が低下する。よって、画素電流が低下し、その結果、輝度の低下に繋がる。
【0046】
そこで、(ii)ゲート電極101と半導体層103との重なり面積の小型化を行うことにより、スイッチングトランジスタ100の寄生容量を軽減する方法が好ましい。よって、本実施の形態におけるスイッチングトランジスタ100は、チャネル領域の幅をコンタクト領域の幅よりも狭くすることにより、このスイッチングトランジスタ100の寄生容量の軽減を実現している。これにより、スイッチングトランジスタ100にゲート電極が接続された駆動トランジスタのオン特性を低下させることなく、スイッチングトランジスタ100の寄生容量を軽減することができる。
【0047】
<エッチングストッパ層>
エッチングストッパ層104は、半導体層103を覆うように設けられ、半導体層103をエッチングダメージから保護する絶縁性を有する層である。エッチングストッパ層104としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム膜などの無機材料からなる膜や、シリコン、酸素及びカーボンを含む有機材料を主として含有する膜などの単層構造又はこれらを積層した多層構造を用いることができる。
【0048】
このエッチングストッパ層104には、例えば、フォトリソグラフィー法及びエッチング法によって、ソース電極105s及びドレイン電極105dに対応する複数のスルーホールが開口されている。
【0049】
<ソース電極、ドレイン電極>
ソース電極105s及びドレイン電極105dは、半導体層103上に、互いに間隔をあけて設けられ、例えば、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、アルミニウム、銅(Cu)、タングステン、チタン、マンガン、クロムなどの金属、アルミニウムモリブデン、アルミニウム、銅モリブデン、銅マンガン、モリブデンタングステンなどの合金、酸化インジウム錫(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)などの透明導電材料を用いることができる。また、これらを積層した多層構造とすることもできる。
【0050】
これらソース電極105sの一部及びドレイン電極105dの一部は、エッチングストッパ層104に形成されたスルーホールに埋められている。つまり、ソース電極105s及びドレイン電極105dは、エッチングストッパ層104に開口されたスルーホールを介して半導体層103と接する。
【0051】
[表示画素]
本実施の形態における表示画素は、上述したようなスイッチングトランジスタ100と、ゲート電極がスイッチングトランジスタ100に接続された駆動トランジスタとを含むことにより、高精度な画像表示を実現できる。以下、本実施の形態における表示画素について具体的に説明する。
【0052】
<構成>
図3Aは、本実施の形態における表示画素の構成を示す回路図である。なお、同回路図において点線で描かれている容量は、駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続される各構成要素の寄生容量であり、その他の構成要素の寄生容量は省略している。
【0053】
同図に示すように、本実施の形態における表示画素200は、EL素子201と、駆動トランジスタTd2と、ソース電極またはドレイン電極が駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタT21、T22とを含む。また、さらに、蓄積容量Csと、スイッチングトランジスタT23、T24とを含む。
【0054】
EL素子201は、発光素子の一例であり、供給される電流に応じて発光する。このEL素子201は、アノードが駆動トランジスタTd2およびスイッチングトランジスタT24を介して電圧VDDが印加されている正電源線211に接続され、カソードが、電圧VSSが印加されている負電源線212に接続されている。
【0055】
駆動トランジスタTd2は、輝度信号に応じた電流をEL素子201に供給する。
【0056】
蓄積容量Csは、第1電極が駆動トランジスタTd2のゲート電極と導通し、第2電極が駆動トランジスタTd2のソース電極及びEL素子201のアノードと導通し、輝度信号に応じた電圧を保持する。
【0057】
スイッチングトランジスタT21は、第1スイッチの一例であり、ソース電極またはドレイン電極が駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続され、輝度信号を供給するための信号線と蓄積容量Csの第1電極との導通及び非導通を切り換える、例えばTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)である。
【0058】
スイッチングトランジスタT22は、第2スイッチの一例であり、ソース電極またはドレイン電極が駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続され、電圧VREFが印加されている参照電源線213(第1電源線)と駆動トランジスタTd2のゲート電極との導通及び非導通を切り換える、例えばTFTである。
【0059】
スイッチングトランジスタT23は、第3スイッチの一例であり、EL素子201のアノードと電圧VRSTが印加されているリセット線214(第2電源線)との導通及び非導通を切り換える、例えばTFTである。
【0060】
スイッチングトランジスタT24は、第4スイッチの一例であり、電圧VDDが印加されている正電源線211(第3電源線)と駆動トランジスタTd2のドレイン電極との導通及び非導通を切り換える、例えばTFTである。
【0061】
ここで、スイッチングトランジスタT21、T22の各々は、上述したスイッチングトランジスタ100のように構成されている。つまり、スイッチングトランジスタT21、T22の各々において、半導体層のチャネル領域の幅は、当該チャネル領域以外の半導体層の幅よりも狭くなっている。
【0062】
また、駆動トランジスタTd2は、スイッチングトランジスタT21、T22と比較して、ほぼ同様の構成を有するが、半導体層に幅の狭い部分を設けないことが望ましい場合がある。
【0063】
この理由として、駆動トランジスタTd2には、高い電流供給能力が求められることが挙げられる。つまり、駆動トランジスタTd2には、良好なオン特性が求められる。ただし、オン特性は、駆動トランジスタTd2のチャネル幅に依存し、チャネル幅が狭いほど低下する。そこで、駆動トランジスタTd2では、平面視において、半導体層に幅の狭い部分を設けないことにより、チャネル幅を大きく確保する。すなわち、駆動トランジスタTd2の半導体層は、チャネル幅方向の長さがチャネル長方向に亘って略一定である。つまり、当該半導体層は、平面視において略矩形形状である。
【0064】
これにより、駆動トランジスタTd2のオン特性の低下を抑制できるので、高い電流供給能力を実現できる。
【0065】
ただし、表示画素サイズが縮小していくにつれて表示解像度が高くなっていくが、表示装置の表示輝度を一定にした場合、各画素に必要な電流は解像度が高くなるにつれて、低下していく。その際には、駆動トランジスタTd2の寄生容量を小さくすることを目的として、半導体層に幅の狭い部分を設けても良い。
【0066】
<動作>
次に、このように構成された本実施の形態における表示画素200の動作について説明する。図3Bは、本実施の形態における表示画素200の動作の一例を示すタイミングチャートであり、図4は、駆動トランジスタTd2のゲート電圧及びソース電圧を説明するための図である。図3Bには、スイッチングトランジスタT21のゲートに印加される信号であるSCANと、スイッチングトランジスタT24のゲートに印加される信号であるENABLEと、スイッチングトランジスタT22のゲートに印加される信号であるRESET1と、スイッチングトランジスタT23のゲートに印加される信号であるRESET2との電圧波形が示されている。
【0067】
まず、時刻t21において、SCANとENABLEとRESET1との電圧レベルがLOWに維持された状態で、RESET2の電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられる。すなわち、時刻t21において、スイッチングトランジスタT21〜T24が非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT23が導通状態(オン状態)になる。
【0068】
これにより、EL素子201のアノードの電圧がVRSTにリセットされる。
【0069】
次に、時刻t22において、SCANとENABLEの電圧レベルがLOWに維持され、RESET2の電圧レベルがHIGHに維持された状態で、RESET1の電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられる。すなわち、時刻t22において、スイッチングトランジスタT21、T24は非導通状態(オフ状態)、かつ、スイッチングトランジスタT23が導通状態(オン状態)のままで、スイッチングトランジスタT22が導通状態(オン状態)になる。
【0070】
これにより、駆動トランジスタTd2のゲート電極の電位が参照電源線213の電圧VREFに設定される。ここで、スイッチングトランジスタT23が導通状態であるから、駆動トランジスタTd2のゲート電極の電位はリセット線214の電圧VRSTに設定されている。すなわち、駆動トランジスタTd2のゲート電極および蓄積容量Csの第1電極には参照電源線213の電圧VREFが印加され、駆動トランジスタTd2のソース電極および蓄積容量Csの第2電極およびEL素子201のアノードにはリセット線214の電圧VRSTが印加される。ここで、VRST電圧はVRST−VSS<Vth(EL)となるように設定しておく。ここでVth(EL)はEL素子201の発光開始電圧であり、たとえばVSS=0V、Vth(EL)=2VとしてVRST=−5Vである。
【0071】
次に、時刻t23において、SCANとENABLEとの電圧レベルがLOWに維持され、RESET1の電圧レベルがHIGHに維持された状態で、RESET2の電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられる。すなわち、時刻t23において、スイッチングトランジスタT21及びスイッチングトランジスタT24が非導通状態(オフ状態)、かつ、スイッチングトランジスタT22が導通状態(オン状態)のままで、スイッチングトランジスタT23が非導通状態(オフ状態)になる。
【0072】
これにより、スイッチングトランジスタT24、駆動トランジスタTd2、および、スイッチングトランジスタT23を介して、正電源線211とリセット線214との間に貫通電流が流れてしまうのを抑制することができ、Vth検出動作に移行することが可能となる。
【0073】
次に、時刻t24において、SCANおよびRESET2の電圧レベルがLOW、RESET1の電圧レベルがHIGHに維持された状態で、ENABLEの電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられる。すなわち、時刻t24において、スイッチングトランジスタT21、T23は非導通状態(オフ状態)、かつ、スイッチングトランジスタT22は導通状態(オン状態)に維持されつつ、スイッチングトランジスタT24が導通状態(オン状態)になり、Vth検出動作が開始される。
【0074】
このとき、EL素子201は逆バイアス電圧状態であるため静電容量としてのみ機能し発光しない。一方、駆動トランジスタTd2には、正電源線211の電圧VDDによりドレイン電流が供給され、それとともに駆動トランジスタTd2のソース電位が変化する。言い換えると、駆動トランジスタTd2は、正電源線211の電圧VDDにより供給されるドレイン電流が0となる電位までソース電位が変化する。
【0075】
このように、駆動トランジスタTd2のゲート電圧に参照電源線213の電圧VREFを入力した状態で、スイッチングトランジスタT24を導通状態(オン状態)にすると、駆動トランジスタTd2のVth検出期間を開始することができる。
【0076】
そして、Vth検出期間の終了時(時刻t25)には、ENABLEの電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられる。駆動トランジスタTd2のゲートソース間電圧は駆動トランジスタTd2の閾値に相当する電位差となっており、この電圧は蓄積容量CsとEL素子201に保持(記憶)される。
【0077】
その後、RESET1の電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられることにより、スイッチングトランジスタT22がオフする。
【0078】
次に、時刻t26において、ENABLE、RESET1及びRESET2の電圧レベルがLOWに維持された状態で、SCANの電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられる。すなわち、時刻t26において、スイッチングトランジスタT22〜T24は非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT21が導通状態(オン状態)になる。
【0079】
これにより、蓄積容量Csには、時刻t24〜時刻t25で記憶された駆動トランジスタTd2の閾値電圧Vthに加えて、輝度信号電圧と参照電源線213の電圧VREFとの電圧差が、(EL素子201の容量)/(EL素子201の容量+蓄積容量Csの容量)倍されて、記憶(保持)される。
【0080】
具体的には、蓄積容量Csの容量をC、EL素子201の容量をCEL、輝度信号DATAの電圧をVDATAとした場合、図4の(a)に示すように、駆動トランジスタTd2のゲート電圧Vは次の式(1)で表される。
【0081】
=VDATA ・・・式(1)
【0082】
また、駆動トランジスタTd2のソース電圧Vは次の式(2)で表される。つまり、輝度信号DATA書き込み完了時のソース電圧Vは次の式(2)で表される。なお、以下、式中において、VREF、VthをそれぞれVREF、Vthと記載する場合がある。
【0083】
【数1】
【0084】
次に、時刻t27において、ENABLEとRESET1とRESET2との電圧レベルがLOWに維持された状態で、SCANの電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられる。すなわち、時刻t27において、スイッチングトランジスタT22〜T24は非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT21が非導通状態(オフ状態)になる。
【0085】
これにより、続く時刻t28においてスイッチングトランジスタT24が導通状態(オン状態)になる前にスイッチングトランジスタT21を確実に非導通状態(オフ状態)にすることができる。
【0086】
最後に、時刻t28において、SCAN、RESET1及びRESET2の電圧レベルがLOWに維持された状態で、ENABLEの電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられる。すなわち、時刻t28において、スイッチングトランジスタT21〜T23は非導通状態(オフ状態)に維持されつつ、スイッチングトランジスタT24が導通状態(オン状態)になる。
【0087】
このように、スイッチングトランジスタT24が導通状態(オン状態)になることで、蓄積容量Csに蓄えられた電圧に応じた電流を駆動トランジスタTd2がEL素子201に供給する。その結果、EL素子201が発光する。
【0088】
このときの駆動トランジスタTd2のソース電圧V’をVON(EL)とすると、駆動トランジスタTd2のゲート電圧V’は次の式(3)で表される。つまり、発光時のゲート電圧V’は次の式(3)で表される。
【0089】
【数2】
【0090】
ただし、Cは駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタ(スイッチングトランジスタT21、T22)の合成寄生容量である。
【0091】
このように、輝度信号DATAの書き込み完了時から発光時にかけて、駆動トランジスタTd2のソース電圧が上記式(2)で示される電圧からVON(EL)へ変動するのに伴い、駆動トランジスタTd2のゲート電圧も変動する。このような、輝度信号DATAの書き込み後に、駆動トランジスタTd2に流れる電流によって当該駆動トランジスタTd2のソース電圧を変化させることで当該駆動トランジスタTd2のゲート電圧を変化させる動作を「ブートストラップ動作」と称する。
【0092】
ここで、駆動トランジスタTd2のゲート電極に付随する寄生容量がない理想状態、すなわち、合成寄生容量Cpがない理想状態では、ゲート電圧の変動量はソース電圧の変動量であるV’―Vsとなる。ただし、実際には合成寄生容量Cpが存在するため、ゲート電圧の変動量は、ソース電圧の変動量に対する合成寄生容量Cpと蓄積容量Csとの容量分割によって決定される。その結果、発光時のゲート電圧V’は、上記式(3)に示すように合成寄生容量Cpと蓄積容量Csとの容量分割の影響を受けた値となる。
【0093】
よって、発光時の駆動トランジスタTd2のゲート−ソース間電圧VGSは、次の式(4)で表される。
【0094】
【数3】
【0095】
上記式(4)の後ろの2つの項(第3項及び第4項)から明らかなように、発光時の駆動トランジスタTd2のゲート−ソース間電圧VGSは、合成寄生容量Cが大きいほど、VON(ELへの依存性が強くなるとともに、Vthの係数が1から減少してしまう。すなわち、合成寄生容量Cが大きいほど、発光時の駆動トランジスタTd2のゲート−ソース間電圧VGSが理想的な値からずれてしまう。つまり、画素電流量が理想的な電流量からずれてしまうので、表示画素の輝度が理想的な輝度からずれてしまう。その結果、高精度な画像表示を実現することが困難になる。
【0096】
このように、輝度信号DATAの書き込み完了後に、駆動トランジスタTd2のブートストラップ動作を経てEL素子201を発光させる場合、合成寄生容量Cが大きいほど、表示画素の輝度が理想的な輝度からずれてしまう。
【0097】
ここで、本実施の形態における表示画素200では、駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続された各スイッチングトランジスタ(スイッチングトランジスタT21、T22)は図1に示すスイッチングトランジスタ100の構成を有する。よって、寄生容量が小さい。したがって、本実施の形態における表示画素200は、駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続された各スイッチングトランジスタが上述の比較例で説明したスイッチングトランジスタである表示画素と比較して、VON(EL)への依存性を抑制することができ、閾値補償能力の低下を抑制することができる。つまり、高精度な画像表示を実現できる。これについて、以下、具体的に説明する。
【0098】
まず、発光時の駆動トランジスタTd3のソース電圧(VON(EL))に対するゲート−ソース間電圧VGSの依存性の抑制について説明する。
【0099】
発光時における駆動トランジスタTd3のソース電圧VON(EL)は、発光時におけるEL素子201のアノード−カソード間電圧をVOLEDとすると、次の式(5)で表される。
【0100】
ON(EL)=VSS+VOLED ・・・式(5)
【0101】
すなわち、発光時における駆動トランジスタTd3のソース電圧VON(EL)は、負電源線212の電圧によって影響される。したがって、上記式(4)の後ろから2つ目の項(第3項)から明らかなように、駆動トランジスタTd2のゲート−ソース間電圧VGSは、負電源線212の電圧によって影響される。その結果、表示画素200の画素電流は負電源線212の電圧によって影響される。
【0102】
図5は、カソード電圧VSSの変動に対する画素電流の変動率を示すグラフである。同図には、カソード電圧VSSの変動ΔVSSに対する画素電流の変動率Ipix/Ipix(0)が示されている。
【0103】
同図に示すように、本実施の形態(図中では本発明と記載)における表示画素200は、上記比較例で説明したスイッチングトランジスタを有する表示画素(以下、比較例における表示画素と記載)と比較して、画素電流の変動率が抑制されている。つまり、本実施の形態における表示画素200は、比較例における表示画素と比較して、画素電流がカソード電圧VSSの変動を受けにくくなっている。
【0104】
すなわち、本実施の形態における表示画素200では、駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続された各スイッチングトランジスタ(スイッチングトランジスタT21、T22)の寄生容量を小さくすることにより、駆動トランジスタTd3のソース電圧VON(EL)に対するゲート−ソース間電圧VGSの依存性を抑制することができる。よって、本実施の形態における表示画素200の画素電流は、比較例における表示画素と比較して、カソード電圧VSSの変動の影響を受けにくくなっている。
【0105】
ここで、負電源線212の電圧は、表示画面の中央部ほど電圧降下量が大きくなる。よって、表示画面の中央部の表示画素200の画素電流ほど、負電源線212の電圧降下の影響を受ける。
【0106】
図6Aは、比較例における表示画面の一例を示す図であり、図6Bは、本実施の形態における表示画面の一例を示す図である。なお、図6Aに示す表示画面250A、図6Bに示す表示画面250Bのいずれも、全表示画素に同一の輝度信号を与えた結果、表示された画面である。
【0107】
図6Aに示すように、比較例における表示画面250Aは、負電源線212の電圧降下の影響を受けて、表示画面の中央部ほど暗く表示されている。つまり、表示画面の不均一が生じている。
【0108】
これに対して、上述したように、本実施の形態における表示画素200の画素電流は、比較例における表示画素と比較してカソード電圧VSSの変動の影響を受けにくい。よって、負電源線212の電圧降下の影響を受けにくい。したがって、図6Bに示すように、本実施の形態における表示画面250Bは、図6Aに示す表示画面250Aと比較して表示画面の不均一を抑制することができる。つまり、本実施の形態における表示画素200は、駆動トランジスタTd3のソース電圧VON(EL)に対するゲート−ソース間電圧VGSの依存性を抑制できることにより、表示画面の不均一を抑制できる。
【0109】
次に、閾値補償能力の低下の抑制について説明する。
【0110】
上記式(4)の最後の項(第4項)から明らかなように、駆動トランジスタTd2のゲート−ソース間電圧VGSは、合成寄生容量Cpが小さいほど、Vthの係数を1に近づけることができる。つまり、閾値電圧の補償を精度良く行うことができる。
【0111】
ここで、本実施の形態における表示画素200では、駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続された各スイッチングトランジスタ(スイッチングトランジスタT21、T22)は図1に示すスイッチングトランジスタ100の構成を有する。よって、寄生容量が小さい。
【0112】
したがって、本実施の形態における表示画素200は、比較例における表示画素と比較して、式(4)におけるVthの係数を1に近づけることができる。つまり、閾値電圧の補償を精度良く行うことができる。すなわち、閾値補償能力の低下を抑制することができる。
【0113】
また、本実施の形態における表示画素200は、次のような効果を奏する。すなわち、スイッチングトランジスタT21、T22の各々の寄生容量を低減することができるので、スイッチングトランジスタT21、T22の導通及び非導通を制御する制御線の配線負荷を低減できる。よって、高フレームレート表示に対応できるようになる。
【0114】
[効果等]
以上のように、本実施の形態において、駆動トランジスタのゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタ100において、チャネル領域の幅は、チャネル領域以外の半導体層103の幅よりも狭い。よって、スイッチングトランジスタ100の寄生容量を小さくすることができる。したがって、駆動トランジスタTd2のゲート電極に付随する寄生容量を低減できる。その結果、高精度な画像表示を実現できる。
【0115】
具体的には、本実施の形態における表示画素200において、スイッチングトランジスタT21、T22は上述のスイッチングトランジスタ100である。よって、表示画面の不均一の抑制、閾値補償能力の低下の抑制、及び、高フレームレート表示への対応といった高精度な画像表示を実現できる。
【0116】
また、半導体層103は、酸化物半導体からなっていてもよい。これにより、スイッチングトランジスタ100のオフ時の電流を抑制しつつ、電子移動度を大きくすることができ、高い駆動能力を実現できる。
【0117】
また、スイッチングトランジスタ100は、ソース電極105s及びドレイン電極105dが設けられていない半導体層上に設けられたエッチングストッパ層104を備える。
【0118】
これにより、スイッチングトランジスタ100のソース電極105s及びドレイン電極105dをエッチングによって形成する際に、エッチングダメージから半導体層103を保護することができる。
【0119】
なお、ゲート電極101は、平面視において、コンタクト領域(チャネル領域以外の半導体層103)の全域に重ならず、少なくとも一部に重なっていればよい。また、スイッチングトランジスタ100はエッチングストッパ層104を備えなくてもよい。
【0120】
また、駆動トランジスタTd2の半導体層は、チャネル幅方向の長さがチャネル長方向に亘って略一定であってもよい。
【0121】
これにより、駆動トランジスタTd2のオン特性の低下を抑制できる。
【0122】
また、駆動トランジスタTd2の寄生容量を小さくすることを目的として、半導体層に幅の狭い部分を設けても良い。これにより、合成寄生容量Cを小さくすることができ、表示画素の輝度を理想的な輝度に近づけることができる。
【0123】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る表示装置について説明する。本実施の形態に係る表示装置は、実施の形態1に係る表示装置と比較して、表示画素の構成及び動作が異なる。以下、本実施の形態について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0124】
[表示画素]
本実施の形態における表示画素は、上述したようなスイッチングトランジスタ100と、ゲート電極がスイッチングトランジスタ100に接続された駆動トランジスタとを含む。以下、本実施の形態における表示画素について具体的に説明する。
【0125】
<構成>
図7Aは、本実施の形態における表示画素の構成の一例を示す回路図である。なお、同回路図において点線で描かれている容量は駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続される各構成要素の寄生容量であり、その他の構成要素の寄生容量は省略している。
【0126】
同図に示すように、本実施の形態における表示画素300は、EL素子301と、駆動トランジスタTd3と、ソース電極またはドレイン電極が駆動トランジスタTd3のゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタT31、T32、T35とを含む。また、さらに、蓄積容量Csを含む。
【0127】
EL素子301は、発光素子の一例であり、供給される電流に応じて発光する。このEL素子301は、アノードが駆動トランジスタTd3を介してGND電位の正電源線311に接続され、カソードが、電圧VSSが印加されている負電源線312に接続されている。
【0128】
駆動トランジスタTd3は、輝度信号に応じた電流をEL素子301に供給する。
【0129】
蓄積容量Csは、第1電極がスイッチングトランジスタT35を介して駆動トランジスタTd3のゲート電極と導通し、第2電極が駆動トランジスタTd3のソース電極及び発光素子のアノードと導通し、輝度信号に応じた電圧を保持する。
【0130】
スイッチングトランジスタT35は、第1スイッチの一例であり、ソース電極またはドレイン電極が駆動トランジスタTd3のゲート電極に接続された、例えばTFTである。
【0131】
スイッチングトランジスタT31は、第2スイッチの一例であり、ソース電極またはドレイン電極がスイッチングトランジスタT35を介して駆動トランジスタTd3のゲート電極に接続され、輝度信号を供給するための信号線と蓄積容量Csの第1電極との導通及び非導通を切り換える、例えばTFTである。
【0132】
スイッチングトランジスタT32は、第3スイッチの一例であり、ソース電極またはドレイン電極が駆動トランジスタTd3のゲート電極に接続され、例えばGND電位の正電源線311と駆動トランジスタTd3のゲート電極との導通及び非導通を切り換える、例えばTFTである。
【0133】
ここで、スイッチングトランジスタT31、T35の各々は、上述したスイッチングトランジスタ100である。
【0134】
<動作>
次に、このように構成された本実施の形態における表示画素300の動作について説明する。図7Bは、本実施の形態における表示画素300の動作の一例を示すタイミングチャートである。同図には、負電源線312の電圧VSSと、スイッチングトランジスタT35のゲートに印加される信号であるMERGEと、スイッチングトランジスタT32のゲートに印加される信号であるVREFと、スイッチングトランジスタT31のゲートに印加される信号であるSCANと、輝度信号DATAの電圧との電圧波形が示されている。
【0135】
まず、時刻t31において、MERGEの電圧レベルがHIGH、VREFとSCANの電圧レベルがLOWに維持された状態で、VSSの電圧レベルが負の電位から正の電位に切り替えられる。すなわち、時刻t31において、スイッチングトランジスタT35は導通状態(オン状態)、スイッチングトランジスタT31、T32は非導通状態(オフ状態)のままで、EL素子301のカソード電圧が正の電位となる。
【0136】
これにより、駆動トランジスタTd3に発光時と逆方向の電流が流れEL素子301に電荷が蓄積され、EL素子301は逆バイアス状態となる。
【0137】
その後、図7Bに示す前処理期間において、MERGEの電圧レベルをHIGHとしたまま、VREFの電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられることより、スイッチングトランジスタT35を導通状態(オン状態)としつつ、スイッチングトランジスタT32を導通状態(オン状態)とする。かかるタイミングでスイッチングトランジスタT32が動作することにより、EL素子301の容量に保持された逆バイアス電圧が正電源線311へ放出されることを効果的に抑制する。
【0138】
次に、時刻t32において、MERGEの電圧レベルがHIGH、SCANの電圧レベルがLOW、VREFの電圧レベルがHIGHに維持された状態で、VSSの電圧レベルが正の電位から0電位に切り替えられる。すなわち、時刻t32において、スイッチングトランジスタT32およびT35は導通状態(オン状態)、スイッチングトランジスタT31は非導通状態(オフ状態)のままで、EL素子301のカソード電圧が0電位となる。
【0139】
これにより、EL素子301のアノード側に蓄積された負の電荷に基づいて、駆動トランジスタTd3のゲート−ソース間電圧は閾値電圧よりも大きくなり、駆動トランジスタTd3は導通状態(オン状態)となる。また、駆動トランジスタTd3のドレイン電極はGND電位の正電源線311に電気的に接続される一方、駆動トランジスタTd3のソース電極は負電荷が蓄積されたEL素子301に接続されている。したがって、駆動トランジスタTd3においてはゲート電極とソース電極の間に電位差が発生し、ドレイン電極からソース電極に向かって電流が流れる。かかる電流が流れることによって、EL素子301に蓄積された負電荷の絶対値は徐々に減少し、駆動トランジスタTd3のゲート−ソース間電圧も徐々に低くなる。
【0140】
そして、駆動トランジスタTd3のゲート−ソース間電圧が閾値電圧(=Vth)まで減少した時点で、駆動トランジスタTd3は非導通状態(オフ状態)となり、EL素子301に蓄積された負電荷の絶対値の減少も停止する。このとき、駆動トランジスタTd3のゲート−ソース間電圧は駆動トランジスタTd3の閾値に相当する電位差となっており、この電圧は蓄積容量Csに保持(記憶)される。
【0141】
次に、図7Bに示すVth検出期間において、MERGEの電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられた後で、時刻t33において、MERGEの電圧レベルがLOW、VREFの電圧レベルがHIGH、VSSの電圧レベルが0電位に維持された状態で、SCANの電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられる。すなわち、時刻t33において、スイッチングトランジスタT32は導通状態(オン状態)、スイッチングトランジスタT35は非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT31が導通状態(オン状態)になる。
【0142】
このとき、同時に、輝度信号DATAの電圧がEL素子301の輝度に対応する電位VD1に変化し、スイッチングトランジスタT31を介して蓄積容量Csに電位VD1が書き込まれ、書き込まれた電位は蓄積容量Csに記憶(保持)される。
【0143】
次に、時刻t34において、MERGEの電圧レベルがLOW、VREFの電圧レベルがHIGH、VSSの電圧レベルが0電位に維持された状態で、SCANの電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられる。すなわち、時刻t34において、スイッチングトランジスタT32は導通状態(オン状態)、スイッチングトランジスタT35は非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT31が非導通状態(オフ状態)に切り替えられる。
【0144】
これにより、蓄積容量Csに安定的に電圧が保持される。
【0145】
その後、VREFの電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられる。つまり、スイッチングトランジスタT32が導通状態(オン状態)から非導通状態(オフ状態)になる。
【0146】
次に、時刻t35において、VREFおよびSCANの電圧レベルがLOWに維持された状態で、MERGEの電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられ、VSSの電圧レベルが0電位から負の電位へと切り替えられる。すなわち、時刻t35において、スイッチングトランジスタT31、T32は非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT35が導通状態(オン状態)になる。
【0147】
これにより、蓄積容量Csに蓄えられた電圧に応じた電流を駆動トランジスタTd3がEL素子301に供給する。その結果、EL素子301が発光する。
【0148】
このときの駆動トランジスタTd3のソース電圧、つまり、EL素子301のアノード電圧は、上述の式(5)に示すように、負電源線312の電圧によって影響される。その結果、表示画素300の画素電流は、実施の形態1における表示画素200の画素電流と同様に、負電源線312の電圧によって影響される。
【0149】
ここで、本実施の形態において、駆動トランジスタTd3のゲート電極に接続された各スイッチングトランジスタ(スイッチングトランジスタT31、T32、T35)は、上述したスイッチングトランジスタ100のように構成されている。よって、当該スイッチングトランジスタ(スイッチングトランジスタT31、T32、T35)の寄生容量を小さくすることができるので、発光時の駆動トランジスタTd3のソース電圧(VON(EL))に対する駆動トランジスタTd3のゲート−ソース間電圧の依存性を抑制することができる。したがって、本実施の形態における表示画素300の画素電流は、実施の形態1における表示画素200と同様に、負電源線312の電圧降下の影響を受けにくくなる。その結果、本実施の形態に係る表示装置は、実施の形態1に係る表示装置と同様に、表示画面の不均一を抑制することができる。
【0150】
また、実施の形態1で述べたように、駆動トランジスタTd3のゲート−ソース間電圧は、合成寄生容量Cpが小さいほど、閾値補償能力の低下を抑制することができる。ここで、本実施の形態における表示画素300では、駆動トランジスタTd3のゲート電極に接続された各スイッチングトランジスタ(スイッチングトランジスタT31、T32、T35)は図1に示すスイッチングトランジスタ100の構成を有する。よって、寄生容量が小さい。したがって、本実施の形態における表示画素300は、実施の形態1における表示画素200と同様に、閾値電圧の補償を精度良く行うことができる。つまり、閾値補償能力の低下を抑制することができる。
【0151】
また、本実施の形態における表示画素300は、スイッチングトランジスタT31、T32、T35の各々の寄生容量を低減することができるので、スイッチングトランジスタT31、T32、T35の導通及び非導通を制御する制御線の配線負荷を低減できる。よって、実施の形態1における表示画素200と同様に、高フレームレート表示に対応できるようになる。
【0152】
[効果等]
以上のように、本実施の形態における表示画素300において、スイッチングトランジスタT31、T32、T35の各々は上述のスイッチングトランジスタ100である。したがって、本実施の形態における表示画素300においても、実施の形態1と同様の効果を奏する。すなわち、表示画面の不均一の抑制、閾値補償能力の低下の抑制、及び、高フレームレート表示への対応といった高精度な画像表示を実現できる。
【0153】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る表示装置について説明する。本実施の形態に係る表示装置は、実施の形態1に係る表示装置と比較して、表示画素の構成及び動作が異なる。以下、本実施の形態について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0154】
[表示画素]
本実施の形態における表示画素は、上述したようなスイッチングトランジスタ100と、ゲート電極がスイッチングトランジスタ100に接続された駆動トランジスタとを含む。以下、本実施の形態における表示画素について具体的に説明する。
【0155】
<構成>
図8Aは、本実施の形態における表示画素の構成の一例を示す回路図である。なお、同回路図において点線で描かれている容量は、駆動トランジスタTd2のゲート電極に接続される各構成要素の寄生容量であり、その他の構成要素の寄生容量は省略している。
【0156】
同図に示すように、本実施の形態における表示画素400は、EL素子401と、駆動トランジスタTd4と、ソース電極またはドレイン電極が駆動トランジスタTd4のゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタT42とを含む。また、さらに、スイッチングトランジスタT41、T45と、蓄積容量Csとを含む。
【0157】
EL素子401は、発光素子の一例であり、供給される電流に応じて発光する。このEL素子401は、アノードが駆動トランジスタTd4を介して電圧VDDが印加されている正電源線411に接続され、カソードが、電圧VSSが印加されている負電源線412に接続されている。
【0158】
駆動トランジスタTd4は、輝度信号に応じた電流をEL素子401に供給する。
【0159】
蓄積容量Csは、第1電極が駆動トランジスタTd4のゲート電極と導通し、輝度信号の大きさに応じた電圧を保持する。蓄積容量Csの第2電極は、スイッチングトランジスタT45を介して駆動トランジスタTd4のソース電極に接続されている。
【0160】
スイッチングトランジスタT41は、第1スイッチの一例であり、輝度信号を供給するための信号線と蓄積容量Csの第2電極との導通及び非導通を切り換える、例えばTFTである。
【0161】
スイッチングトランジスタT42は、第2スイッチの一例であり、ソース電極またはドレイン電極が駆動トランジスタTd4のゲート電極に接続され、電圧VREFが印加されている参照電源線413(電源線)と蓄積容量Csの第1電極との導通及び非導通を切り換える、例えばTFTである。ここで電圧VREFはVREF−VSS<Vth(Td4)+Vth(EL)となるように設定されることが望ましく、Vth(Td4)は駆動トランジスタTd4の閾値電圧であり、Vth(EL)はEL素子401の発光開始電圧である。
【0162】
スイッチングトランジスタT45は、第3スイッチの一例であり、蓄積容量Csの第2電極と駆動トランジスタTd4のソース電極との導通及び非導通を切り換える、例えばTFTである。
【0163】
ここで、スイッチングトランジスタT42は、上述したスイッチングトランジスタ100である。
【0164】
<動作>
次に、このように構成された本実施の形態における表示画素400の動作について説明する。図8Bは、本実施の形態における表示画素400の動作の一例を示すタイミングチャートである。同図には、スイッチングトランジスタT41のゲートに印加される信号であるSCANと、スイッチングトランジスタT42のゲートに印加される信号であるRESETと、スイッチングトランジスタT45のゲートに印加される信号であるMERGEとの電圧波形が示されている。
【0165】
まず、時刻t41において、SCANの電圧レベルがLOWに維持され、かつ、MERGEの電圧レベルがHIGHに維持された状態で、RESETの電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられる。すなわち、時刻t41において、スイッチングトランジスタT41が非導通状態(オフ状態)、かつ、スイッチングトランジスタT45が導通状態(オン状態)のままで、スイッチングトランジスタT42が導通状態(オン状態)になる。
【0166】
これにより、蓄積容量Csの第1電極及び駆動トランジスタTd4のゲート電極の電圧はVREFとなり、駆動トランジスタTd4はオフ状態となって、駆動トランジスタTd4からEL素子401への電流の供給が停止する。
【0167】
その後、MERGEの電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられることにより、スイッチングトランジスタT45が非導通状態(オフ状態)となる。
【0168】
次に、時刻t42において、RESETの電圧レベルがHIGHに維持され、かつ、MERGEの電圧レベルがLOWに維持された状態で、SCANの電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられる。すなわち、時刻t42において、スイッチングトランジスタT42が導通状態(オン状態)、かつ、スイッチングトランジスタT45が非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT41が導通状態(オン状態)になる。
【0169】
これにより、蓄積容量Csの第2電極の電圧が輝度信号DATAの電圧に設定される。ここで、蓄積容量Csの第1電極の電圧はVREFに設定されているので、蓄積容量CsにはVREFと輝度信号の電圧との差分電圧が記憶(保持)される。
【0170】
次に、時刻t43において、RESETの電圧レベルがHIGHに維持され、かつ、MERGEの電圧レベルがLOWに維持された状態で、SCANの電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられる。すなわち、時刻t43において、スイッチングトランジスタT42が導通状態(オン状態)、かつ、スイッチングトランジスタT45が非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT41が非導通状態(オフ状態)になる。
【0171】
これにより、輝度信号DATAの電圧の書き込みが完了する。このように、スイッチングトランジスタT45を非導通状態(オフ状態)とすることにより、駆動トランジスタTd4を介してスイッチングトランジスタT41にドレイン電流が流れ込むことを抑制する。よって、蓄積容量Csの第2電極の電位の変動を抑制できる。つまり、蓄積容量CsはVREFと輝度信号の電圧との差分電圧を正確に保持できる。
【0172】
次に、時刻t44において、SCANおよびMERGEの電圧レベルがLOWに維持された状態で、RESETの電圧レベルがHIGHからLOWに切り替えられる。すなわち、時刻t44において、スイッチングトランジスタT41、T45が非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT42が非導通状態(オフ状態)になる。
【0173】
次に、時刻t45において、SCANおよびRESETの電圧レベルがLOWに維持された状態で、MERGEの電圧レベルがLOWからHIGHに切り替えられる。すなわち、時刻t45において、スイッチングトランジスタT41、T42が非導通状態(オフ状態)のままで、スイッチングトランジスタT45が導通状態(オン状態)になる。
【0174】
これにより、蓄積容量Csに蓄えられた電圧に応じた電流を駆動トランジスタTd4がEL素子401に供給する。その結果、EL素子401が発光する。
【0175】
このときの駆動トランジスタTd4のソース電圧、つまり、EL素子401のアノード電圧は、上述の式(5)に示すように、負電源線412の電圧によって影響される。その結果、表示画素400の画素電流は、実施の形態1における表示画素200の画素電流と同様に、負電源線412の電圧によって影響される。
【0176】
ここで、本実施の形態において、駆動トランジスタTd4のゲート電極に接続されたスイッチングトランジスタT42は、上述したスイッチングトランジスタ100のように構成されている。よって、当該スイッチングトランジスタT42の寄生容量を小さくすることができるので、発光時の駆動トランジスタTd4のソース電圧(VON(EL))に対する駆動トランジスタTd4のゲート−ソース間電圧の依存性を抑制することができる。したがって、本実施の形態における表示画素400の画素電流は、実施の形態1における表示画素200と同様に、負電源線412の電圧降下の影響を受けにくくなる。その結果、本実施の形態に係る表示装置は、実施の形態1に係る表示装置と同様に、表示画面の不均一を抑制することができる。
【0177】
また、本実施の形態における表示画素400は、スイッチングトランジスタT42の寄生容量を低減することができるので、スイッチングトランジスタT42の導通及び非導通を制御する制御線の配線負荷を低減できる。よって、実施の形態1における表示画素200と同様に、高フレームレート表示に対応できるようになる。
【0178】
[効果等]
以上のように、本実施の形態における表示画素400において、スイッチングトランジスタT42は上述のスイッチングトランジスタ100である。したがって、本実施の形態における表示画素400においても、実施の形態1とほぼ同様の効果を奏する。すなわち、表示画面の不均一の抑制、及び、高フレームレート表示への対応ができる。つまり、高精度な画像表示を実現できる。
【0179】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0180】
そこで、以下、他の実施の形態をまとめて説明する。
【0181】
例えば、本開示に係る表示装置における表示画素の回路構成は、上記した回路構成に限らず、他の構成を有する回路構成であってもよい。また、表示画素の動作は、上記したタイミングチャートに示した動作に限らず、他の動作であってもよい。また、表示画素における各トランジスタは、Pチャネル型のトランジスタであってもよいし、Nチャネル型のトランジスタであってもよい。
【0182】
また、上記説明では発光素子の一例としてEL素子を用いて説明したが、発光素子はEL素子に限らず、電流に応じて発光強度が変化するデバイスであればどのような電流−光変換デバイスでもよい。
【0183】
また、例えば、上記回路構成と同様の機能を実現できる範囲で、ある素子に対して、直列又は並列に、トランジスタ、抵抗素子、又は容量素子等の素子を接続したものも本開示に含まれる。言い換えると、上記実施の形態における「接続される」とは、2つの端子(ノード)が直接接続される場合に限定されるものではなく、同様の機能が実現できる範囲において、当該2つの端子(ノード)が、素子を介して接続される場合も含む。
【0184】
また、上記で用いた数字は、本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。
【0185】
例えば、チャネル領域の幅cは、上述した4μmに限らず、コンタクト領域の幅gよりも狭ければよい。このとき、チャネル領域の幅の下限値としては、スイッチングトランジスタ100を適用するトランジスタに要求される特性を満たす値であればよい。例えば、スイッチングトランジスタ100が輝度信号DATAを供給するための信号線に接続されている輝度信号の書き込み用のトランジスタに適用される場合、チャネル領域の幅cは、書き込み期間内に輝度信号の書き込みを完了させられるような特性(例えば、電子移動度等)を満たす値であればよい。
【0186】
また、実施の形態1で説明した、輝度信号DATAの書き込み完了後に、駆動トランジスタTd2のブートストラップ動作を経てEL素子201を発光させる一連の動作は、他の実施の形態に適用してもよい。
【0187】
また、このような一連の動作は、表示画素の各スイッチングトランジスタの導通及び非導通を制御する制御部によって実現されてもよい。
【0188】
例えば、各実施の形態に係る表示装置は、図9に示されるようなテレビなどのFPD表示装置として実現できる。ここで、同図に示す表示装置500は、制御部510を備えてもよく、当該制御部510は、蓄積容量Csに輝度信号DATAの大きさに応じた電圧を保持させ、保持させた後に、蓄積容量Csの第1電極を駆動トランジスタのゲート電極と導通させ、かつ、蓄積容量Csの第2電極を駆動トランジスタのソース電極と導通させることにより、駆動トランジスタに流れる電流によって当該駆動トランジスタのソース電極の電位を変化させることで当該駆動トランジスタのゲート電極の電位を変化させる動作であるブートストラップ動作を実行し、ブートストラップ動作を経て、EL素子(発光素子)を発光させてもよい。
【0189】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0190】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0191】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明は、表示装置に利用でき、特に、テレビなどのFPD表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0193】
100、T21、T22、T23、T24、T31、T32、T35、T41、T42、T45 スイッチングトランジスタ
101 ゲート電極
102 ゲート絶縁膜
103 半導体層
104 エッチングストッパ層
105d ドレイン電極
105s ソース電極
200、300、400 表示画素
201、301、401 EL素子
211,311、411 正電源線
212、312、412 負電源線
213、413 参照電源線
214 リセット線
250A、250B 表示画面
500 表示装置
510 制御部
Cs 蓄積容量
Td2、Td3、Td4 駆動トランジスタ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9