(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一共振器(工具ホーン)支持手段のチップ材を、前記第一共振器(工具ホーン)の軸心に対して直角方向にスライド自在かつ固定自在に支持して、前記第一共振器(工具ホーン)の外周面を押す押圧力を調整可能に構成したことを特徴とする請求項3に記載の超音波接合装置。
前記第一共振器(工具ホーン)支持手段のチップ材を、前記第一共振器(工具ホーン)の軸心に対して直角方向にスライド自在かつ固定自在に支持して、前記第一共振器(工具ホーン)の外周面を押す押圧力を調整可能に構成したことを特徴とする請求項8に記載の超音波接合装置。
前記第一共振器(工具ホーン)支持手段のチップ材を、前記第一共振器(工具ホーン)の軸心に対して直角方向にスライド自在かつ固定自在に支持して、前記第一共振器(工具ホーン)の外周面を押す押圧力を調整可能に構成したことを特徴とする請求項13に記載の超音波接合装置。
前記第二共振器(ブースタ)支持手段は、前記第二共振器(ブースタ)のノーダルポイントにて半径方向に張り出したフランジの複数か所において、前記フランジ取付板との間に合成樹脂(プラスチック)または制振部材の座金(スペーサ)を入れて固定したことを特徴とする請求項13から請求項15のいずれかに記載の超音波接合装置。
前記第二共振器(ブースタ)支持手段は、前記第二共振器(ブースタ)のノーダルポイントにて半径方向に張り出したフランジの複数か所において、前記フランジ取付板に、合成樹脂(プラスチック)または制振材の締結部材で固定したことを特徴とする請求項13から請求項15のいずれかに記載の超音波接合装置。
【背景技術】
【0002】
超音波振動を利用した装置は、一般的に振動子を有する共振器を備え、共振器の固有振動数に合わせた振動を振動子から発振し、その振動を共振器によって増幅して、対象物に効率よく超音波振動を印加するようにしている。
超音波振動を利用した装置の一つである超音波接合装置は、薄い金属板等の複数のワーク(接合対象物)を互いに重ね合わせた被接合部分に超音波振動を与えて接合する装置であり、超音波振動をワークに伝えるが、装置本体に伝えない工夫がされている。
【0003】
図18に、従来の超音波接合装置の断面図を示したように、共振器ユニットAの超音波振動子GとブースタFとの継目と、ブースタFと工具ホーンCとの継目を、それぞれダイヤフラムE,Eで接続している。ダイヤフラムE,Eは、振動の伝達方向(
図18、紙面の水平方向)に撓んで、超音波振動子Gで発生した超音波振動をブースタF経由で工具ホーンCに伝達する。一方、ダイヤフラムE,Eは、振動の伝達方向と直交する方向に剛性を有していて、装置本体のホルダー部Dへの超音波振動の伝達を阻止する。この状態で、工具ホーンCを下降させて、アンビルB上に重ねて置かれたワークWを押圧して、ワークWに超音波振動を伝えて接合する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、
図18のように工具ホーンCを片持ち支持している超音波接合装置では、ワークWを押すと、反力による回転モーメントで工具ホーンCの先端が撓むことがある。そこで、必要により工具ホーンCのノーダルポイントを加圧治具で加圧している。ただ、ノーダルポイントでは半径方向に小さい膨張・収縮が生じるため、剛性の高い加圧治具で単純に加圧しただけではエネルギー損失を生じる。そこで、エネルギー損失を低減した状態で、高い加圧力を効果的に与える方法として、例えば
図19と
図20に示したように、加圧子Hを工具ホーンCの共振周波数と同等程度の周波数で共振させ、撓み振動をなしうる振動共振体となし、その最大振幅点において工具ホーンCのノーダルポイントを加圧する案が提案されている。詳しい説明は省略するが、
図19に、加圧子Hで工具ホーンCのノーダルポイントを加圧している超音波接合装置の側面図を示し、
図20に正面図を示した。
図20の波線は加圧子Hの振幅の大きさを示している(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、超音波接合装置において、ワークの接合面積が大きくなると接合面積に比例した加圧力が必要になる。大きい加圧力を得るためには、
図18、19、20とは別に、
図21と
図22に示したように、共振器のノーダルポイントの断面上の外周に凹形状の溝を形成して、共振器の外周面より内側に埋没した外周面を有する被保持部分Iを形成し、装置本体のホルダー部D’に固定した保持手段Jと蓋Kを被保持部分Iの外周面に面接触させた状態で、固定ネジLを締めてクランプする支持方法が提案されている。
【0006】
この方法によれば、ノーダルポイントは共振器に発生する定在波の節にあたるところで、できるだけノーダルポイント自身となる中心部分に近い部分を保持手段により保持すると、振動も小さく、保持することによる振動ロスや異常振動が減少するという。
しかし、ノーダルポイントの断面で考えると中央部分は停止しているが、円周上へ広がるほど膨張収縮するため、外側では振動が発生している。そこで、上記の共振器の被保持部分I(八角形の外周面)の全周又は大部分に面接触してクランプする支持手段の材質を対数減衰率が0.01より大きく1より小さいものとしたり、音速が5900m/sより大きい材質にしたり(例えば、特許文献3、4参照)、保持手段の押圧部にスプリング構造のような緩衝構造部を設けたりして、振動ロスや異常振動を減少させることが更に提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の超音波接合装置は、(1)超音波振動を接合対象物(ワーク)に伝えるが装置本体に伝えないように、超音波振動を効率よく対象物へ印加することを第一の課題としている。(2)工具ホーンの先端が、接合対象物(ワーク)を押圧する反力により撓まないようにすることを第二の課題としている。(3)共振器を強固に支持し、共振器の先端に取り付けた工具ホーンを比較的大きな加圧力で接合対象物(ワーク)に押圧できる超音波接合装置を実現することを第三の課題としている。
【0009】
また本発明は、(4)共振器に発生する定在波の節にあたるノーダルポイントを支持する構造において、従来のように共振器の外周面より内側に埋没した外周面を設け、最大振幅点に比べ応力の高いノーダルポイントの断面を減らすことなく、つまり共振器の外周面に溝を掘らずに、振動ロスや異常振動を減少させる共振器の支持手段を実現することを第四の課題としている。
【0010】
また本発明は、(5)共振器の外周面を保持する保持部材にスプリング構造のような特殊な緩衝構造部を設けずに、共振器を安定的に支持することを第五の課題としている。
また本発明は、(6)高価な制振金属を複雑な形状に加工して共振器の被保持部分の外周の全周をクランプすることなく、簡単な形状部品で支持手段を構成でき、コストダウンの実現や、硬度の高い材質など自由に支持手段の材質を選択できるようにすることを第六の課題としている。
【0011】
また本発明は、(7)樹脂チップ又は金属チップというチップ材の加圧方向と直交する方向にOリングなどの緩衝部材を被せることにより、直接チップ材と部品、金属部品どうしの接触を防ぎ、装置側に伝わる超音波振動を減衰させることを第七の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明に係る超音波接合装置では、先端にチップ材を有する共振器支持手段を有し、
前記チップ材の外周に緩衝部材を被せ、共振器支持手段のチップ材で、共振器のノーダルポイントの外周面の軸心に対して接合対象物の反対側を押圧支持している。
また本発明に係る超音波接合装置では、先端にチップ材を有する共振器支持手段を二以上有し、
前記チップ材の外周に緩衝部材を被せ、前記共振器支持手段の一部のチップ材で、共振器のノーダルポイントの外周面の軸心に対して接合対象物の反対側を押圧支持し、前記共振器支持手段の他のチップ材で、前記共振器のノーダルポイントの外周面の軸心に対して接合対象物側を押圧支持している。
【0013】
また本発明に係る超音波接合装置では、接合対象物を押圧して接合する第一共振器(工具ホーン)と、当該第一共振器(工具ホーン)と接続された第二共振器(ブースタ)を有する超音波接合装置において、先端にチップ材を有する第一共振器(工具ホーン)支持手段と、第二共振器(ブースタ)支持手段と、を有し、
前記チップ材の外周に緩衝部材を被せ、第一共振器(工具ホーン)の接合位置に最も近いノーダルポイントの外周面で、軸心に対して接合対象物の反対側を第一共振器(工具ホーン)支持手段のチップ材で押圧支持し、第二共振器(ブースタ)支持手段により、前記ノーダルポイントの隣に位置するノーダルポイントで第二共振器(ブースタ)を支持している。
また本発明に係る超音波接合装置では、先端にチップ材を有する共振器支持手段を有し、前記チップ材に制振材を重ね、前記共振器支持手段のチップ材で、共振器のノーダルポイントの外周面の軸心に対して接合対象物の反対側を押圧支持している。
また本発明に係る超音波接合装置では、先端にチップ材を有する共振器支持手段を二以上有し、前記チップ材に制振材を重ね、前記共振器支持手段の一部のチップ材で、共振器のノーダルポイントの外周面の軸心に対して接合対象物の反対側を押圧支持し、前記共振器支持手段の他のチップ材で、前記共振器のノーダルポイントの外周面の軸心に対して接合対象物側を押圧支持している。
また本発明に係る超音波接合装置では、接合対象物を押圧して接合する第一共振器(工具ホーン)と、当該第一共振器(工具ホーン)と接続された第二共振器(ブースタ)を有する超音波接合装置において、先端にチップ材を有する第一共振器(工具ホーン)支持手段と、第二共振器(ブースタ)支持手段と、を有し、前記チップ材に制振材を重ね、前記第一共振器(工具ホーン)の接合位置に最も近いノーダルポイントの外周面で、軸心に対して前記接合対象物の反対側を前記第一共振器(工具ホーン)支持手段のチップ材で押圧支持し、前記第二共振器(ブースタ)支持手段により、前記ノーダルポイントの隣に位置するノーダルポイントで第二共振器(ブースタ)を支持している。
【0014】
また本発明に係る超音波接合装置では、第一共振器(工具ホーン)支持手段のチップ材を、第一共振器(工具ホーン)の軸心に対して直角方向にスライド自在かつ固定自在に支持して、第一共振器(工具ホーン)の外周面を押す押圧力を調整可能に構成している。
本発明に係る超音波接合装置では、先端にチップ材を有する第一共振器(工具ホーン)支持手段を二以上有し、第一共振器(工具ホーン)支持手段の一部のチップ材で、第一共振器(工具ホーン)の接合位置に最も近いノーダルポイントの外周面の軸心に対して接合対象物の反対側を押圧支持し、第一共振器(工具ホーン)支持手段の他のチップ材で、前記第一共振器(工具ホーン)の前記ノーダルポイントの外周面の軸心に対して接合対象物側の外周面を押圧支持している。
【0015】
また本発明に係る超音波接合装置では、チップ材の外周に緩衝部材を被せている
。
【0016】
また本発明に係る超音波接合装置では、制振材を、対数減衰率が0.01より大きく1より小さいものとしている。
【0017】
また本発明に係る超音波接合装置では、
接合対象物を押圧して接合する第一共振器(工具ホーン)と、当該第一共振器(工具ホーン)と接続された第二共振器(ブースタ)を有する超音波接合装置において、先端にチップ材を有する第一共振器(工具ホーン)支持手段と、第二共振器(ブースタ)支持手段と、を有し、第二共振器(ブースタ)支持手段は、第二共振器(ブースタ)のノーダルポイントにおいて半径方向に張り出したフランジの複数か所でフランジ取付板に固定するようにし、
前記第一共振器(工具ホーン)の接合位置に最も近いノーダルポイントの外周面で、軸心に対して前記接合対象物の反対側を前記第一共振器(工具ホーン)支持手段のチップ材で押圧支持し、前記第二共振器(ブースタ)支持手段により、前記ノーダルポイントの隣に位置するノーダルポイントで第二共振器(ブースタ)を支持している。
また本発明に係る超音波接合装置では、前記フランジ取付板の材質を合成樹脂(プラスチック)または制振材としている。
【0018】
また本発明に係る超音波接合装置では、第二共振器(ブースタ)支持手段は、前記第二共振器(ブースタ)のノーダルポイントにて半径方向に張り出したフランジの複数か所において、フランジ取付板との間に合成樹脂(プラスチック)または制振部材の座金(スペーサ)を入れて固定している。
【0019】
また本発明に係る超音波接合装置では、第二共振器(ブースタ)支持手段は、第二共振器(ブースタ)のノーダルポイントにて半径方向に張り出したフランジの複数か所において、フランジ取付板に、合成樹脂(プラスチック)または制振材の締結部材で固定している。
【0020】
また本発明に係る超音波接合装置では、第二共振器(ブースタ)支持手段は、前記フランジ取付板を第二共振器(ブースタ)の振動方向にスライド自在に支持している
。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る超音波接合装置によれば、(1)超音波振動を接合対象物(ワーク)に伝えるが装置本体に伝えないことができ、超音波振動を効率よく対象物へ印加することができる。(2)工具ホーンの先端が、接合対象物(ワーク)を押圧する反力により撓まない。(3)被接合部分が広い面積であっても接合に必要な加圧力で押圧することができる。
【0023】
また、(4)従来のように共振器の外周面に溝を掘らずに、振動ロスや異常振動を減少させることができる。(5)従来のように共振器の外周面を保持する保持部材に特殊な緩衝構造部を設けずに、共振器を安定的に支持することができる。(6)簡単な形状の部品で支持手段を構成することができ、コストダウンの実現や、硬度の高い材質など自由に支持手段の材質を選択できる。(7)直接金属部品どうしの接触を防ぎ、装置側に伝わる超音波振動を減衰させる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る超音波接合装置の共振器とその支持手段の構成と振幅について位置を対比して示した、一部を断面で示した側面図。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る超音波接合装置の共振器とその支持手段の構成を、一部を断面で示した正面図。
【
図3】(a)本発明の第一の実施形態に係る超音波接合装置の第一共振器(工具ホーン)の外周面を樹脂チップ又は金属チップというチップ材で押圧している状態を示した部分断面図、(b)本発明の第一の実施形態に係る超音波接合装置の第一共振器(工具ホーン)の外周面を、制振材とチップ材で押圧している状態を示した部分断面図、(c)本発明の第一の実施形態に係る超音波接合装置の外形の違う他の第一共振器(工具ホーン)の外周面をチップ材で押圧している状態を示した部分断面図。
【
図4】本発明の第一の実施形態の変形例として他の第二共振器(ブースタ)支持手段で第二共振器(ブースタ)を支持した状態を示す、一部を断面で示した側面図。
【
図5】本発明の第一の実施形態の変形例として他の第二共振器(ブースタ)支持手段で第二共振器(ブースタ)を支持した状態を示す、一部を断面で示した拡大側面図。
【
図6】本発明の第一の実施形態の変形例として他の第一共振器(工具ホーン)支持手段で第一共振器(工具ホーン)を押圧した状態を示す、一部を断面で示した正面図。
【
図7】本発明の第一の実施形態の変形例の他の第一共振器(工具ホーン)支持手段を分解して示した図。
【
図8】本発明の第一の実施形態の変形例として更に他の第一共振器(工具ホーン)支持手段で第一共振器(工具ホーン)を押圧した状態を示す、一部を断面で示した正面図。
【
図9】本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の共振器とその支持手段の構成と振幅について位置を対比して示した側面図。
【
図10】本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の第一共振器(工具ホーン)の支持手段による支持状態を、一部を断面で示した正面図。
【
図11】本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の変形例の第一共振器(工具ホーン)支持手段による支持状態を、一部を断面で示した正面図。
【
図12】本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の変形例の第一共振器(工具ホーン)支持手段を分解して示した図。
【
図13】本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の他の変形例の第一共振器(工具ホーン)支持手段による支持状態を、一部を断面で示した正面図。
【
図14】本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の第二共振器(ブースタ)支持手段による支持状態を、一部を断面で示した側面図。
【
図15】本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の第二共振器(ブースタ)支持手段を分解して示した側面図。
【
図16】本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の他の共振器とその支持手段の側面図。
【
図17】本発明の第三の実施形態に係る超音波接合装置の共振器とその支持手段の構成と振幅について位置を対比して示した側面図。
【
図18】従来の超音波接合装置の共振器とその支持手段の構成と振幅について位置を対比して示した断面図。
【
図19】従来の他の超音波接合装置の共振器とその支持手段の側面図
【
図20】従来の他の超音波接合装置の共振器とその支持手段の正面図。
【
図21】従来の更に他の超音波接合装置の共振器の側面図と振幅について位置を対応して示した図。
【
図22】(a)従来の更に他の超音波接合装置の共振器と支持手段の側面図(b)従来の更に他の超音波接合装置の共振器と支持手段の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の第一の実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。まず、第一の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る超音波接合装置の共振器とその支持手段近傍の構成を示した側面図であり、
図2は、本発明の第一の実施形態に係る超音波接合装置の共振器とその支持手段近傍の構成を、一部を断面で示した正面図である。
【0026】
本発明の第一の実施形態に係る超音波接合装置では、超音波振動子1aにブースタ1bを一体に結合し、ブースタ1bに工具ホーン2をネジ2aで結合している。超音波振動子1aとブースタ1bはそれぞれ円柱状をなしており、工具ホーン2はブースタ1bと結合している根元側は円柱状をなし、中央部分から先端側に向かうにつれて上下方向に長い矩形断面をなしている。そして、先端の下面2bで接合対象物を押圧する。
【0027】
超音波振動子1aは軸方向に振動し、当該超音波振動子1aの振動を増幅して接合対象物に効率よく印加するブースタ1bと工具ホーン2は共振器であり、本明細書では場合により、両者を総括して説明するときは共振器と称して説明し、個々に説明するときは、接合対象物から見て近い方から工具ホーン2を第一共振器、ブースタ1bを第二共振器と称して説明する。
【0028】
本発明の第一の実施形態に係る超音波接合装置の共振器の支持手段3は超音波振動子1aとブースタ1bの横に位置している。そして、当該支持手段3は、
図1の紙面手前側に張出した形状のスリット付きアーム3a、3bを有していて、スリット付きアーム3a、3bで第二共振器(ブースタ)1bのノーダルポイントで外径を拡大したフランジ1cの外周を挟み、スリット付きアーム3a、3bの両先端をボルト3cで締め付けて、第二共振器(ブースタ)1bを支持している。スリット付きアーム3a、3bの材質は、後述する第一共振器(工具ホーン)支持手段のチップ材と同じ材料である合成樹脂(プラスチック)あるいは制振金属を用いている。
【0029】
また支持手段3には複数のボルト4aで固定され、共振器の軸方向と平行に延びるアーム4が張出している。アーム4の工具ホーン2側の先端付近にはアーム4の長手方向に長く上面から下面に向けて貫通した長孔4bを形成し、さらにアーム4の下面側には長孔4bの下端からさらに長手方向に長い長孔4cを形成している。この長孔4b、4cにネジ部を有する押圧棒5を入れている。押圧棒5の工具ホーン2側の先端5aの凹部に押圧棒5と同軸の円柱状をしたチップ材8を嵌めている。チップ材8は、工具ホーン2の接合位置である先端に最も近いノーダルポイントの外周面で、工具ホーン2の軸心に対して先端下面2bとは反対側の位置を押圧している。
【0030】
本発明を実施するための形態としては、チップ材8として樹脂チップを用いた場合を説明する。樹脂チップの材質としては、ガラスエポキシ、ガラス繊維強化ポリアミド(RENY)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)など、引張強度85MPa以上、連続使用温度150℃以上の樹脂を用いるとよい。発明者は、引張強度85MPa以上、連続使用温度150℃以上の樹脂であれば、問題なく継続使用できることを確認した。樹脂チップの材質にその他の制限は無く、耐摩耗性の高い材質や、硬度の硬い材質など、自由に共振子を固定、支持する材質を選択できる。またチップ材8としては、上記と同等の材料であれば他の材料に置き換えて用いても良く、チップ材8は制振金属などの金属チップを用いてもよい。チップ材8としては樹脂チップのみを用いても良いし、制振金属の金属チップのみを用いても良い。一般的な金属チップのときは、合成樹脂あるいは制振金属という制振材と重ねるなど同時に用いると良い。
【0031】
なお、チップ材8の外周には緩衝部材としてOリング9を被せてある。Oリング9を介して押圧棒先端5aの凹部に嵌められていることで、チップ材8が自らの半径方向に膨張・収縮する振動動作をしてもその動きを吸収して押圧棒5に伝わらないようにしている。
図1のようにチップ材8が工具ホーン2の外周面を押圧した状態で、長孔4b上側の六角ナット6と長孔4cの長手方向に沿って摺動可能に設けられているスライドナット7により押圧棒5がアーム4に対して固定される。なお、チップ材8が工具ホーン2の外周面を押圧する押圧力は、六角ナット6とスライドナット7により微調整される。また、押圧棒5を長孔4bの長手方向に沿って移動させることで、チップ材8により工具ホーン2の外周面を押圧する位置を調整可能である。
【0032】
このように構成された超音波接合装置による超音波接合作業は、上記した工具ホーン2の外周面を、チップ材8を介して押圧棒5で押圧した状態で、共振器の支持手段3全体を下降させ、工具ホーン先端の下面2bで、アンビル10上に重ねて置かれたワーク(接合対象物)11a、11bの接合位置を押圧し、超音波振動を伝えてワーク11a、11bを超音波接合する。
【0033】
図3(a)に、工具ホーン2の外周面を押圧棒5の先端のチップ材8で押圧している状態を拡大図にして示した。押圧棒5の先端5aの凹部には円柱状の、チップ材8を嵌めている。チップ材8は、工具ホーン2のノーダルポイント、つまり軸方向に変位しない点(節)を押圧している。なお、チップ材8の外周には溝を設けて、その溝にOリング9を被せている。
【0034】
工具ホーン2のノーダルポイントでは、超音波振動子1aからの超音波振動エネルギーが伝わっても軸方向(振動方向)に変位しないが、半径方向に小さく膨張・収縮する。
図3(a)では、工具ホーン2の外周面が半径方向に膨張・収縮するイメージを小さい矢印で示した。チップ材8は、工具ホーン2の外周面が半径方向に膨張すれば通常状態より圧縮され、工具ホーン2の外周面が半径方向に収縮すれば、圧縮された状態から元の通常状態に戻る。チップ材8は、工具ホーン2の円周面の半径方向の動きを吸収する。そのため、工具ホーン2のノーダルポイントに超音波振動エネルギーが伝わっても、超音波振動が押圧棒5を経由して押圧棒5を支持しているアーム4および支持手段3に伝わらないようにしている。
【0035】
また、工具ホーン2の外周面の膨張・収縮動作は、チップ材8が押圧している外周面ではある程度抑制されて減衰するが、チップ材8が押圧していない外周面では抑制されず、工具ホーン2の外周面の膨張・収縮動作は全体として許容される。
ここで、本発明の第一の実施形態の変形例について説明する。
図3(b)に示した本発明の第一の実施形態の第一変形例では、押圧棒5の先端5aの凹部の底に制振材20を入れ、その上にチップ材8を嵌めている。特にチップ材8が制振金属でない一般的な金属チップであるときにこの構成は有効である。制振材20の材質は、対数減衰率が0.01より大きく1より小さいものを用いる。また、先に説明した、ガラスエポキシ、ガラス繊維強化ポリアミド(RENY)、PEEK、PPSなど、引張強度85MPa以上、連続使用温度150℃以上の他の樹脂を制振材として用いてもよい。なお、チップ材8の形状と制振材20の形状は、円柱状あるいは円板状といった簡単な形状として簡単に加工できる。
【0036】
図3(b)のように押圧棒5とチップ材8の間に制振材20を重ねた構成では、工具ホーン2の外周面の半径方向の動きを制振材20で吸収する。そのため、超音波振動エネルギーがチップ材8に伝わっても超音波振動が押圧棒5を経由してアーム4と支持手段3に伝わらないようにできる。
【0037】
なお上記では、チップ材8で押圧する部分を円柱状の外周面とした場合を説明したが、チップ材8で押圧する部分を平面にしても良い。
図3(c)に、チップ材8で工具ホーン2’の外周に形成した平面を押圧したときの状態を示した。
本発明は上記のように、第一共振器(工具ホーン)の接合位置に最も近いノーダルポイントの外周面で、軸心に対して接合対象物の反対側を第一共振器(工具ホーン)支持手段のチップ材で押圧支持し、第二共振器(ブースタ)支持手段により、前記ノーダルポイントの隣に位置するノーダルポイントで第二共振器(ブースタ)を支持している。
【0038】
図4に、本発明の第一の実施形態の第二の変形例として他の第二共振器(ブースタ)支持手段で第二共振器(ブースタ)を支持した状態の側面図の一部を断面にして示し、
図5で側面図を拡大して示した。
図1、2では、第二共振器(ブースタ)のノーダルポイントで外径を拡大したフランジ1cの外周のほぼ全周を合成樹脂あるいは制振材でできたスリット付きアーム3a、3bで挟んでいたが、
図4、5では、第二共振器(ブースタ)1bのノーダルポイントで外径を拡大したフランジ1cの端面の数か所において、スリット付アーム3d、3e内周に取り付けられたフランジ取付板97に対して座金(スペーサ)92を当てて皿ボルト33と六角ナット31で固定している。フランジ取付板97と座金92、皿ボルト33の材質は、既に説明したチップ材と同じ材質を用いている。
【0039】
このことは、第二共振器(ブースタ)のフランジ1cを、振動を吸収するフランジ取付板97に複数か所で固定したことになる。そのため、第二共振器(ブースタ)のフランジ1cを皿ボルト33と六角ナット31で固定した部分では、半径方向への膨張収縮がある程度抑制されて減衰するが、皿ボルト33と六角ナット31で固定していない部分は、半径方向への膨張収縮が抑制されず、半径方向へ膨張収縮動作が許容される。
【0040】
また、皿ボルト33と六角ナット31で固定した第二共振器(ブースタ)のフランジ1cの部分の膨張収縮は、皿ボルト33と六角ナット31からフランジ取付板97に伝わるが、フランジ取付板97の材質を既に説明したチップ材あるいは制振材と同じにしたときは、第二共振器(ブースタ)のフランジ1cの部分の膨張収縮の動きを吸収して、支持手段3のスリット付きアーム3d、3eに伝わりにくくなる。そのため、支持手段3のスリット付きアーム3d、3eの材質として、すでに説明したチップ材や制振材と同じ材質を用いてもよいし、一般的な金属を用いてもよい。なお、六角ナット31については、フランジ取付板97に雌ネジを切って六角ナット31を省略しても良い。
【0041】
図6に、本発明の第一の実施形態にかかる超音波接合装置の第一共振器(工具ホーン)支持手段の第三変形例の正面図を、
図7には第三変形例の分解図を、それぞれ示した。
図6では、工具ホーン2’の外周である円筒面を削って形成した平面をチップ材28で押圧している状態を示している。
【0042】
先に説明した
図1、
図2の構成では、六角ナット6とスライドナット7により押圧棒5の先端5aの凹部に入れたチップ材8の押圧状態を微調整するが、微調整する作業に手間がかかる可能性がある。第三変形例は、簡単に微調整作業ができるように使い勝手を改良している。
【0043】
図6に示した第三変形例では、
図1、
図2、
図4におけるアーム4を押圧ブロック(上)14及び押圧ブロック(下)18の上下一対のブロックで構成している。押圧ブロック(下)18内に底付き孔であるスライド孔18aを設け、スライド孔18aに上下にスライドする押圧スライド19を入れている。
【0044】
押圧スライド19は、上下にそれぞれ凹部を設けて、下方の凹部に外周にOリング27を被せたチップ材28を嵌め、上方の凹部に制振材22を嵌めている。
なお、押圧スライド19の外周には2つのOリング21を巻き付け、押圧スライド19と押圧ブロック(下)18の間に振動が伝わらないようにしている。また、上下の凹部の間には、空気抜き孔19aをあけて、それぞれの凹部とチップ材28、あるいは制振材22との間に空気がたまらないようにしている。
【0045】
そして、予め押圧ブロック(上)14に設けた雌ネジ14bに押圧ボルト15を下からネジこみ、押圧ボルト15が突きぬけた部分に座金17と六角ナット16を取り付け、押圧ボルト15の先端に、回転棒15bを取り付けている。
押圧ブロック(上)14でスライド孔18aに蓋をし、回転棒15bを手回しして押圧ブロック(上)14とネジで係合する押圧ボルト15で押圧スライド19を所定位置まで押し下げ、六角ナット16で位置決め固定するようにしている。
【0046】
この構造であれば、押圧ブロック(上)14とネジで係合する押圧ボルト15の先端15aが押圧スライド19を所定位置まで押し下げ、六角ナット16で位置決め固定することができる。また、チップ材28の他に制振材22を設けているため、超音波振動エネルギーがチップ材28に伝わっても超音波振動が押圧ブロック(上)14に伝わらない。チップ材28の材質、制振材22の材質については、既に説明した通りである。
【0047】
工具ホーン2、2’のノーダルポイントでは、超音波振動エネルギーが伝わっても軸方向に変位しないが、半径方向に小さく膨張・収縮する。本実施形態及び変形例では、工具ホーン2、2’の外周面に接している押圧手段にチップ材8、28を用い、あるいはチップ材8、28と制振材20、22を重ねて用いている。このことにより、工具ホーン2、2’のノーダルポイントに超音波振動エネルギーが伝わっても安定的に支持することができる。そして、接合対象物(ワーク)11a、11bを超音波接合するのに必要な加圧力を工具ホーン先端下面2bに与えることができる。
【0048】
また本実施形態は、従来のように工具ホーンのノーダルポイントの外周面に溝を加工して被保持部を形成していない。また、被保持部の外周面の全周又は大部分を制振材で把持していない。本実施形態及び各変形例ではチップ材8、28に接していない工具ホーン2、2'の外周面では、半径方向の膨張収縮を可能にして、超音波振動を効率よく対象物へ印加することができる。
【0049】
なお、上記では、チップ材8、28で押圧する共振器支持手段で、工具ホーン2、2’の接合位置に最も近いノーダルポイントの外周面で、工具ホーン2、2’の軸心に対して接合対象物の反対側だけを支持した例を示したが、これに加えて、例えば
図8に想像線で示したように、接合対象物の反対側以外の他の外周面をチップ材28’、28''で支持してもよい。
図8の例では、工具ホーン2’の水平方向のブレ(横ブレ)を防止できる。
【0050】
(本発明の第二の実施形態)
本発明の第一の実施形態では、工具ホーン2の接合対象物と反対側の外周面をチップ材8で支え、工具ホーン2が撓まないようにする構成を説明した。
本発明の第二の実施形態では、工具ホーン2の接合対象物と反対側の外周面をチップ材で支え、更に接合対象物側の外周面を、同じくチップ材で押圧して支持している。本発明の第二の実施形態でも第一の実施形態と同じく、チップ材として樹脂チップを用いた場合を説明するが、チップ材として制振金属などの金属を用いてもよいことは第一の実施形態と同じである。
【0051】
本発明の第二の実施形態は、本発明の第一の実施形態と同様に、チップ材で押圧していない工具ホーンの外周面を膨張収縮可能にしたので、従来のように共振器のノーダルポイントの外周面の全周をクランプする場合に比べて、ノーダルポイントの軸心に近い部分を保持しなくても、保持による振動ロスや異常振動が減少する利点に加えて、被接合対象物を大きな力で押圧することができるという利点がある。
【0052】
図9に、本発明の第二の実施形態の超音波接合装置の共振器とその支持手段近傍の構成を、一部を断面とした側面図で示し、それぞれの位置における振幅を曲線グラフで示した。なお、第一の実施形態の工具ホーン2は小型の工具ホーンで、第二の実施の形態の工具ホーン32は大型の工具ホーンであり、一部形状が異なっているが各部の機能は同じであり、先端部の下面32aで接合対象物(ワーク)を押圧して接合を行う。
【0053】
本発明の第二の実施形態の共振器支持手段の支持板34の下方には位置決め板36を固定していて、位置決め板36の面上に上側支持板38と下側支持板39を位置決め固定している。上側支持板38にはチップ材28を、下側支持板39にはチップ材29をそれぞれ設け、工具ホーン32のノーダルポイントにおいて、工具ホーン32の外周面の上をチップ材28で、外周面の下をチップ材29で、それぞれ支持している。なお第一の実施の形態で説明したのと同じく、チップ材28、29は円柱状をしており、外周にはOリング27を被せている。また、第一の実施形態の第三変形例と同様に、工具ホーン32の外周面の上を支持するチップ材28は、押圧スライド19の下方の凹部に嵌めてあり、押圧ボルト15で押圧スライド19ごと押し下げ、六角ナット16で位置決め固定する。一方、工具ホーン32の外周面の下を支持するチップ材29は下側支持板39の凹部に嵌めている。
【0054】
本発明の第二の実施の形態の共振器支持手段では、第二共振器(ブースタ)12のフランジ12aをドーナッツ型のスライド板37に皿ボルト33で一体に固定し、スライド板37の外周面を、支持板34に一体に設けた円筒型スライド35の内周面上で第二共振器(ブースタ)12の軸方向にスライド自在に支持している。なお、スライド板37の材質は軸方向にスライドしやすく振動を吸収する点では、いわゆるエンジニアプラスチックが好ましいが、実用上は、金属でもよい。
【0055】
従来の超音波接合装置であれば、第二共振器(ブースタ)12のフランジ12aを装置本体部分である支持板34に固定するのだが、本実施形態では、第二共振器(ブースタ)12のフランジ12aを支持板34にスライド自在に支持している。その代わり、工具ホーン32の接合位置に最も近いノーダルポイントで、支持板34に固定した上側支持板38と下側支持板39に設けたチップ材28、29で第一共振器(工具ホーン)32を固定している。
【0056】
上記のように、第一共振器(工具ホーン)32の固定位置を、接合対象物を押圧する接合位置に近づけたことにより、第一共振器(工具ホーン)32の片持ち長さは短くなり、第一共振器(工具ホーン)32の先端の撓みは小さくなる。
また、第二共振器(ブースタ)12をスライド自在に支持したことにより、第二共振器(ブースタ)を製作する上で、フランジ12aの位置寸法がばらついても、円筒型スライド35の内周面に対する位置が変動するだけであるため、超音波接合装置の支持板34、円筒型スライド35は、同じ部品をそのまま使えるという利点がある。
【0057】
図10は、工具ホーン32のノーダルポイントの支持手段の一部を断面とした正面図であり、工具ホーン32の外周面の上をチップ材28で、外周面の下をチップ材29で、それぞれ支持している様子を示している。支持板34には上側支持板38をボルト34aで固定している。
図10で、38b、39aは位置決め孔であり、位置決め板36に突設した位置決めピンに嵌合して、上側支持板38と下側支持板39を位置決め板36に位置決めしている。
【0058】
上側支持板38の中央のスライド孔38aに押圧スライド19を入れ、押圧ボルト15で所定位置までチップ材28を押し下げる構造は、第一の実施形態と同じである。第二の実施形態として特徴があるのは、上側支持板38の下に下側支持板39を設けて、工具ホーン32の軸心を中心としてチップ材28の反対側にチップ材29を配置して、工具ホーン32の外周面をチップ材28とチップ材29で挟持した点である。
【0059】
図10では、チップ材28の先端に段差のある凸部28aを形成し、工具ホーン32の外周面には凸部28aと嵌合する穴32bを予め形成している。凸部28aが穴32bに嵌合することにより、工具ホーン32の回り止めの役目を果たしている。なお
図9と
図10では、工具ホーン32の外周を穴32bのある円筒面として示しているが、例えば外周面を複数方向から平面カットして、略八角形など多角形類似の断面を持つ工具ホーンとしてもよい。
【0060】
また
図16に本発明の第二の実施形態の変形例を示したように、予め工具ホーン82のノーダルポイントの外周面にフランジ状に盛り上がった部分82bを形成しておき、当該フランジ状部分の外周面を複数方向から平面カットして、その平面82cをチップ材88、89で押圧するようにしてもよい。
【0061】
図10では、工具ホーン32の外周面に当接するチップ材29の表面はV字状にカットしたものを示している。チップ材29の上面は平面であってもよいが、安定的に挟持するには、
図10のようにV字状にカットした表面にしてチップ材29の2ケ所が当接するようにして、チップ材28とチップ材29とで3点支持している。
図10では、制振材22を押圧スライド19の上の凹部に入れているが、チップ材28、29には直接制振材を重ねて配置していない。必要により、超音波振動の大きさによっては制振材をチップ材28、29に重ねて配置してもよい。チップ材と制振材の大きさや厚さについては超音波振動の大きさに基づいた好ましい値に設定すればよい。
【0062】
ここで、第二の実施形態の変形例について説明する。
図11では、外周面を八方向から平面カットした工具ホーン42を支持している状態を示し、
図12に、
図11に示した支持手段の分解図を示した。
当該変形例では、
図11に示すように、工具ホーン42の外周面の上を支持するチップ材28に加えて、下側支持板49に一対のチップ材40と41を、間隔を開けて配置し、工具ホーン42をより安定的に支持している。
図11のように、下方のチップ材40と41の間隔を開けて配置すれば、工具ホーン42の軸心から下側支持板49の下面までの距離h
2を、
図10の場合の距離h
1より小さくすることが出来る。このことは、超音波接合装置の共振器支持手段の下方の寸法が小さくなり、共振器支持手段の下方部分がワークに当たらないという実用上の利点がある。
【0063】
また、更なる変形例を
図13に示しており、
図13のように、下側支持板を正面から視て右下側支持板69、左下側支持板70のように2つの部品に分割してもよい。このようにすれば、工具ホーン42の直下に空間ができてワークに当たらないという実用上の利点が得られる。
【0064】
さらに
図13では、チップ材28、40、41のそれぞれに制振材23、50、51を重ねて、チップ材28、40、41のそれぞれから本体側の支持板34に伝わろうとする振動を制振材23、50、51で吸収するよう構成した例を示した。
本発明の第二の実施の形態の共振器支持手段では、第二共振器(ブースタ)12のフランジ12aをドーナッツ型のスライド板37に皿ボルト33で一体に固定し、合成樹脂又は金属円板の外周面を支持板34に一体に設けた円筒型スライド35の内周面上で第二共振器(ブースタ)12の軸方向にスライド自在に支持している。
【0065】
図14には、本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の第二共振器(ブースタ)のフランジ近傍の構成を示した。
図15には、本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置の第二共振器(ブースタ)のフランジ近傍の構成を分解して示した。
本発明の第二の実施の形態の第二共振器(ブースタ)支持手段では、第二共振器(ブースタ)12のフランジ12aとドーナッツ型のスライド板37の間の複数か所に合成樹脂(プラスチック)または制振材の座金(スペーサ、又はワッシャ)92を入れて、合成樹脂(プラスチック)または制振材の皿ボルト33と六角ナット31を締め付けて一体に固定し、スライド板37の外周面37aを支持板34に一体に設けた円筒型スライド35の内周面35a上で第二共振器(ブースタ)12の軸方向にスライド自在に支持している。
【0066】
図14と
図15では、第二共振器(ブースタ)12のフランジ12aの上下2か所を固定する例を示したが、第二共振器(ブースタ)のフランジの上の3か所、4か所あるいはそれ以上の複数か所を固定するようにしてもよい。皿ボルト33を用いたのは、位置決めのためであり、座金(スペーサ、又はワッシャ)92を用いたのは緩み止めと制振のためである。なお、六角ナット31については、スライド板37に雌ネジを切って六角ナット31を省略した構造としても良い。
【0067】
本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置では、第一共振器(工具ホーン)を、ワークの接合位置に最も近いノーダルポイントで、第一共振器(工具ホーン)の軸心に対して接合対象物の反対側と接合対象物側の両方を押圧して固定している。そのため、支持している工具ホーンの片持ち長さが短く、ワークを押圧したときの撓みが少ない。
【0068】
また、本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置では、第二共振器(ブースタ)支持手段により、前記ノーダルポイントの隣に位置するノーダルポイントで第二共振器(ブースタ)をスライド自在に支持している。
このことにより、第二共振器(ブースタ)支持手段における超音波振動エネルギー損失を抑制している。つまり、スライド板37と第二共振器(ブースタ)の間に合成樹脂(プラスチック)又は制振金属のワッシャ92を挟むことにより、合成樹脂(プラスチック)又は制振金属のワッシャ92が超音波振動を吸収する。さらに、スライド板37と共振器12を直接固定するのに比べ、樹脂又は制振金属のワッシャ92を間に挟むことにより接触面積が減り、超音波振動の伝達を抑制する。皿ボルト33の材質を制振金属又は合成樹脂(プラスチック)にすることにより、さらに超音波振動の伝達が抑制できる。
【0069】
また、第二共振器(ブースタ)を製作する上でノーダルポイントの位置寸法がある程度変動しても、支持位置をスライド可能にしたことにより、同一の部品で支持することができるという実用的な効果がある。
その他、本発明の第二の実施形態に係る超音波接合装置では、第一の実施形態で説明した本発明の諸課題を解決している。
【0070】
(本発明の第三の実施形態)
上記本発明の第一、第二の実施形態では、本発明を片持ち支持の工具ホーンに適用した場合について説明した。
本発明の第三の実施形態では、本発明を両持ち支持の工具ホーンに適用した場合について説明する。
図17に、本発明の第三の実施形態に係る超音波接合装置の共振器とその支持手段の構成と振幅について、位置を対比して示した。
図17で、Aは超音波振動子、Cは工具ホーンである。工具ホーンCの中央下方には接合対象物の接合位置を押圧する接合用凸部Caがあり、工具ホーンの接合用凸部Caの両側のノーダルポイントのそれぞれの外周をチップ材28、29で押圧して支持している。チップ材28、29によるそれぞれの共振器支持手段の構造は、既に第二の実施形態で説明した
図10から
図13の構造と同じである。
【0071】
すなわち、本発明の第三の実施形態の支持手段の支持板94の下方には位置決め板36を固定していて、位置決め板36の面上に上側支持板38と下側支持板39を位置決め固定している。上側支持板38にはチップ材28を、下側支持板39にはチップ材29をそれぞれ設け、工具ホーンCのノーダルポイントにおいて、工具ホーンCの外周面の上をチップ材28で、外周面の下をチップ材29で、それぞれ支持している。なお第一の実施の形態で説明したのと同じく、チップ材28、29は円柱状をしており、外周にはOリング27を被せている。また、チップ材28は、押圧スライド19の下方の凹部に嵌めてあり、押圧ボルト15で押圧スライド19ごと押し下げ、六角ナット16で位置決め固定する。チップ材29は下側支持板39の凹部に嵌めている。
【0072】
本発明の第三の実施形態にかかる超音波接合装置による超音波接合作業は、上記した工具ホーンC全体を下降させ、工具ホーン中央の下面(接合用凸部)Caで、図示していないワーク(接合対象物)の接合位置を押圧し、超音波振動を伝えてワークを超音波接合する。
【0073】
工具ホーンCのノーダルポイントでは、超音波振動エネルギーが伝わっても軸方向に変位しないが、半径方向に小さく膨張・収縮する。本実施形態では、工具ホーンCの外周面に接している押圧手段にチップ材28を用い、制振材22を重ねて用いている。このことにより、工具ホーンCの接合位置の両側のノーダルポイントのぞれぞれで、超音波振動エネルギーが伝わっても本体側に伝わらないように両もち支持している。両もち支持のため、接合用凸部Caは、撓みにくい。そして、被接合物を超音波接合するのに必要な加圧力を工具ホーン先端に与えることができる。
【0074】
本発明の第三の実施形態に係る超音波接合装置では、共振器の外周面に溝を掘らず、応力の高い部分の断面を減らさずに、振動ロスや異常振動を減少させることができる。また、被保持部の外周面の全周又は大部分を制振材で把持していない。本実施形態によれば、チップ材28、29に接していない工具ホーンCの外周面では、半径方向の膨張収縮を可能にして、超音波振動を効率よく接合対象物へ印加することができる。本発明の第三の実施形態によるその他の効果は、第一、第二の実施形態と同じである。