(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された椅子では、支持アームが肘掛け支柱から前方に湾曲して迫り出していることに加えて、支持アームが根元においてねじのみで肘掛け支柱に対して固定されている。このため、肘掛け本体の前側端部に上方から下方あるいは下方から上方に向けて大きな荷重が作用するとモーメントによって支持アームへの根元への負荷が大きくなる。したがって、操作部材の操作のときに支持アームの根元への負荷が大きくなるため合成樹脂で形成される支持アームの劣化が早まることになり、長期間の操作の繰り返しによって支持アームのがたつき等の原因となる。
【0006】
また、特許文献2に開示された椅子では、肘掛け本体に固定された押え板と肘掛け本体とで操作部材の枢軸を狭持している。しかしながら、押え板の重量は軽く、操作部材の枢軸の上方への移動は、押え板を肘掛け本体に固定するねじの締結力のみで規制することになる。このため、操作部材を操作したときのねじに対する負荷が大きくなるため長期間の操作の繰り返しによってねじの締結力が弱まり、がたつきや捜査部材の脱落等の原因となる。
【0007】
また、特許文献2に開示された椅子では、肘掛け本体に枢軸を支持する軸受部を設ける必要があることから、軸受部の形状や材質が肘掛け本体の形状や材質の影響を受けざるを得ない。このため、特許文献2に開示された椅子では、軸受部の形状や材質の選択肢が狭くなり、設計の自由度が低下するという問題も生じる。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、肘掛け本体に操作部材が設けられた椅子において、操作部材の枢軸を軸支する軸受部及び軸受部周りの設計の自由度が高く、かつ、長期間の使用によるがたつき等の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、上下方向に延びる肘掛け支柱と、当該肘掛け支柱に下方から支持される肘掛け本体とを備える椅子であって、枢軸を有すると共に当該枢軸を中心として回動操作される操作部材と、上記肘掛け支柱と上記肘掛け本体とによって上下方向から狭持されると共に上記操作部材の枢軸を軸支する軸支部材とを備えるという構成を採用する。
【0011】
本発明においては、操作部材の枢軸を軸支する軸受部を有する軸支部材が、肘掛け支柱と肘掛け本体とによって上下方向から狭持される。肘掛け支柱と肘掛け本体とは、椅子の着座者を支える必要があることから上下方向に作用する荷重に対する強度が高くなるように設計されるものである。つまり、本発明は、上下方向に作用する荷重に対する強度の高い部材に、操作部材の枢軸を軸支する軸支部材が上下方向から挟まれた構造を有する。このような本発明によれば、着座者が操作部材を操作するときに枢軸に作用する上下方向の荷重が、直上あるいは直下に配置された強度の高い肘掛け支柱及び肘掛け本体の少なくともいずれか一方によって受け止められる。つまり、本発明によれば、操作部材を操作するときの荷重が、強度の弱い部位に作用することなく、強度の高い部材で受け止められる。したがって、本発明によれば、長期間の使用によるがたつき等の発生を抑制することが可能となる。
【0012】
また、本発明においては、操作部材の枢軸を軸支する軸受部が、肘掛け支柱や肘掛け本体とは別体の軸支部材に設けられている。このため、軸支部材の形状や材質を、肘掛け支柱や肘掛け本体と切り離して選択することができる。例えば、肘掛け支柱や肘掛け本体は、高い強度を確保する必要があることから、アルミニウム合金やステンレス鋼等の強度が高い材料が選択される。このような場合であっても、本発明によれば、操作部材の枢軸と同質の合成樹脂によって軸支部材を形成することが可能となる。したがって、本発明によれば、操作部材の枢軸を軸支する軸受部及び軸受部周りの設計の自由度が高くなる。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記肘掛け支柱の上面に上方に向けて突出すると共に上端が上記肘掛け本体に固定される肘掛け支持部を備え、上記軸支部材が、上記肘掛け支持部の側方を囲って上記肘掛け支持部に外嵌されているという構成を採用する。
【0014】
本発明においては、軸支部材が 肘掛け支柱の上面に設けられた肘掛け支持部の側方を囲うように肘掛け支持部の外側に嵌め込まれる。このような軸支部材は、水平方向への移動を肘掛け支持部によって規制される。また、軸支部材は、上下方向から肘掛け支柱と肘掛け本体とによって狭持されているため、上下方向への移動も規制される。したがって、本発明によれば、軸支部材を強固に固定し、軸支部材の位置がずれることを防止することができる。
【0015】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記肘掛け支持部及び上記軸支部材が、前方に向けて開口されると共に上記操作部材が挿通される開口部を備え、上記肘掛け支持部が、上記操作部材の枢軸が配置される位置よりも後方に上記肘掛け本体に連結される連結部をさらに備えるという構成を採用する。
【0016】
本発明においては、肘掛け支持部とこの肘掛け支持部に外嵌された軸支部材とに対して、前方に向けて開口部が設けられ、この開口部に操作部材が挿通されている。よって、本発明においては、操作部材が肘掛け支持部の前方寄りに配置されている。また、本発明においては、肘掛け支持部の肘掛け本体との連結部が操作部材の枢軸よりも後方に配置されている。つまり、本発明においては、肘掛け支持部の前方寄りに操作部材が配置され、肘掛け支持部の後方寄りに連結部が配置され、操作部材と連結部とが離間して配置されている。このため、連結部を肘掛け本体に連結する作業を行うときに、操作部材が当該作業の障害になることを防止することができる。
【0017】
第4の発明は、上記第2または第3の発明において、上記肘掛け支持部と上記肘掛け支柱とが金属あるいはステンレス鋼によって一体的に形成され、上記軸支部材が合成樹脂によって形成されているという構成を採用する。
【0018】
本発明によれば、肘掛け支持部と肘掛け支柱とが金属あるいはステンレス鋼によって形成されているため、肘掛け支持部と肘掛け支柱に高い強度を付与することができる。また、肘掛け支持部と肘掛け支柱とが一体的に形成されていることから、椅子の組み立て時に、肘掛け支持部と肘掛け支柱と同一工程で設置することができ、組み立て作業が容易となる。また、本発明によれば、軸支部材が合成樹脂によって形成されていることから、操作部材の操作によって、操作部材の枢軸と軸受部とが摺動したときであっても、金属音や金属粉の発生を防止することができる。また、本発明においては、金属あるいはステンレス鋼で形成された肘掛け支柱に対して、枢軸や軸受部を形成する必要がないため、肘掛け支柱の形状を簡素化することができる。したがって、肘掛け支柱を成形するための金型の構造も簡素化することができる。金属及びステンレス鋼の加工は合成樹脂の加工と比較して高コストとなるが、本発明によれば、金型を簡素化することによって肘掛け支柱の成形が容易となり、加工のコストを小さく抑えることが可能となる。
【0019】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記操作部材を初期姿勢に向けて付勢すると共に、上記軸支部材に同一材料で一体的に設けられた付勢手段を備えるという構成を採用する。
【0020】
本発明によれば、軸支部材に付勢手段が一体的に設けられているため、椅子の組み立て時に、軸支部材と付勢手段とを同一工程で設置することができ、組み立て作業が容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、肘掛け本体に操作部材が設けられた椅子において、操作部材の枢軸を軸支する軸受部及び軸受部周りの設計の自由度を高くし、かつ、長期間の使用によるがたつき等の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る椅子の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。なお、以下の説明における前後上下左右の方向は、着座者から見た方向を示している。
【0024】
図1は、本実施形態の椅子1を前側から見た正面図である。この図に示すように、本実施形態の椅子1は、脚部2と、脚部2に支持されたベースフレーム3と、ベースフレーム3上に設置された座受4と、座受4に支持された座5と、ベースフレーム3に対して傾動可能に支持された背フレーム6と、背フレーム6に支持された背凭れ7と、背フレーム6を左右方向の枢軸(不図示)まわりに傾動させる傾動機構(不図示)とベースフレーム3の昇降を行う昇降機構(不図示)を有する操作機構8と、ベースフレーム3の両側に各々配置されると共にベースフレーム3に支持された肘掛け装置9とを備えている。
【0025】
本実施形態の椅子1は、肘掛け装置9に特徴を有するものであるため、以下、肘掛け装置9について詳細に説明する。
【0026】
本実施形態の椅子1は、肘掛け装置9として、着座者から見て右側に肘掛け装置9aを備え、着座者から見て左側に肘掛け装置9bを備えている。
図2〜
図9を参照して肘掛け装置9aについて説明する。
図2は着座者の前側から見た肘掛け装置9aの正面図であり、
図3は着座者の左側から見た肘掛け装置9aの側面図であり、
図4は肘掛け装置9aの分解斜視図である。また、
図5は
図2のA−A断面図であり、
図6は
図3のB−B断面図であり、
図7は
図3のC−C断面図であり、
図8は
図2のD−D断面図であり、
図9は
図3のE−E断面図である。
【0027】
例えば、
図4に示すように、肘掛け装置9aは、肘掛け支柱10と、肘掛け支持部20と、軸支部材30と、肘掛け本体40と、ねじ50と、操作部材60と、ワイヤ装置70と、キャップ80とを備えている。
【0028】
肘掛け支柱10は、主として上下方向に延びる柱部材であり、
図3及び
図4に示すように上端部11が前方に向けて迫り出すように湾曲され、
図3及び
図4に示すように下端部12がベースフレーム3に向けて湾曲されている。この肘掛け支柱10は、下端部12が不図示のねじによってベースフレーム3の側面に締結されることによって支持されている。
【0029】
また、肘掛け支柱10は、アルミニウム合金等の強度が高く見た目が美しい金属によって形成されている。ただし、強度が高く見た目が美しい材料であれば、例えば、ステンレス鋼によって肘掛け支柱10を形成しても良い。
【0030】
また、肘掛け支柱10の内部には、ワイヤ装置70が配置されるワイヤ配置溝13が設けられている。このワイヤ配置溝13は、
図4に示すように、肘掛け支柱10の上端部11から下端部12に亘って設けられており、ワイヤ装置70の確認が可能であるように上端部11側では前方に向けて開口され、下端部12側では側方に向けて開口されている。なお、ワイヤ配置溝13の前方に向けて開口された領域と側方に開口された領域とは、不図示の連結孔によって繋がっている。
【0031】
肘掛け支持部20は、肘掛け支柱10の上面14に設置されており、上面14から上方に向けて突出したブロック部材である。この肘掛け支持部20は、前方の操作部材収容部21と、後方の連結部22とによって構成されている。
【0032】
操作部材収容部21は、内部が中空されており、その内部に操作部材60の一部を収容する部位である。この操作部材収容部21は、前方に向けて開口する第1開口部21aを有している。この第1開口部21aを介して操作部材60が操作部材収容部21の内部から前方に向けて外部に飛び出される。また、操作部材収容部21は、上方に向けて開口する第2開口部21bを有している。この第2開口部21bを介して操作部材60が操作部材収容部21の内部から上方に向けて外部に飛び出される。
【0033】
連結部22は、軸支部材30が備える後述の軸受部32よりも後方に配置された中実の部位である。この連結部22は、
図6に示すように、上端22aが肘掛け本体40と当接し、ねじ50によって肘掛け本体40に直接連結される。
【0034】
このような肘掛け支持部20は、肘掛け支柱10と同一材料(本実施形態ではアルミニウム合金)によって肘掛け支柱10と一体的に形成され、主として連結部22を介して肘掛け本体40に固定されている。なお、本実施形態の椅子1においては、
図4に示すように、補助的にねじ50によって操作部材収容部21と肘掛け本体40とを締結している。
【0035】
軸支部材30は、肘掛け支柱10と肘掛け本体40との間に配置される合成樹脂からなる部材である。この軸支部材30は、肘掛け支持部20を側方から囲うカバー部31と、カバー部31に支持される軸受部32と、軸受部32に取り付けられた板ばね33(付勢手段)と、軸受部32の下部に取り付けられる係止部材34とを備えている。
【0036】
カバー部31は、上下に貫通する内部空間が肘掛け支持部20を収容する収容空間とされた略環状に形状設定されている。このカバー部31は、内周面形状が肘掛け支持部20の外周面形状よりも僅かに大きな同一形状とされており、内周面を肘掛け支持部20の外周面に対向させて肘掛け支持部20に外嵌されている。このように肘掛け支持部20に外嵌されることによってカバー部31は、肘掛け支持部を側方から囲っている。
【0037】
また、カバー部31の上端31aは肘掛け本体40と当接し、カバー部31の下端31bは肘掛け支柱10と当接している。つまり、カバー部31は、直上の肘掛け本体40と直下の肘掛け支柱10とによって上下方向から挟まれている。このようにカバー部31が肘掛け本体40と肘掛け支柱10とによって上下方向から挟まれることによって、軸支部材30は、肘掛け本体40と肘掛け支柱10とによって上下方向から狭持されている。
【0038】
また、カバー部31は、前方に向けて開口された開口部31cを有している。この開口部31cは、肘掛け支持部20の操作部材収容部21に設けられた第1開口部21aと略同一の大きさに設定されており、カバー部31が肘掛け支持部20に外嵌されたときに、前方から見て第1開口部21aに重ねて配置される。このため、第1開口部21aから前方に向けて飛び出された操作部材60は、カバー部31の開口部31cを介してカバー部31よりも前方に飛び出した状態となる。
【0039】
軸受部32は、カバー部31の上端31aにカバー部31よりも上方に突出した状態で支持されており、前後方向においてカバー部31の略中央に配置されている。この軸受部32は、カバー部31の左側から右側に架設されるベース部32aと、ベース部32aに固定されたベース部32aよりも前方側に配置される2つの支持部32bとから構成されている。支持部32bは、下方に凹むようにして湾曲された上面を有しており、一方がカバー部31の左側寄りに配置され、もう一方がカバー部31の右側寄りに配置されている。なお、後に詳細に説明するが、操作部材60の後述の枢軸63が、これらの支持部32b上に載置される。
【0040】
なお、上方から見た場合に、カバー部31の内部空間は、軸受部32によって、前後に分割されている。このうち前側空間31dが肘掛け支持部20の操作部材収容部21を収容し、後側空間31eが肘掛け支持部20の連結部22を収容する。
図5に示すように、操作部材収容部21は前側空間31dを貫通して肘掛け本体40と当接され、連結部22は後側空間31eを貫通して肘掛け本体40と当接されている。
【0041】
板ばね33は、
図4及び
図5に示すように、軸受部32よりも前側に配置されており、上端部33aが軸受部32のベース部32aに接続されることにより支持されている。この板ばね33の下端部33bは、前側に向けて湾曲されており、その下面が
図5に示すように、操作部材60に当接されている。また、板ばね33は、軸支部材30と同一材料である合成樹脂によって、軸支部材30に一体的に設けられている。この板ばね33は、
図5に示すように、下端部33bが操作部材60に当接されており、操作部材60を初期姿勢(
図5で示す姿勢)に向けて付勢する。
【0042】
係止部材34は、
図5に示すように、軸受部32のベース部32aから垂下するようにしてベース部32aの下部に接続されており、下端部に後側に向いて配置される爪部34aを有している。この係止部材34は、
図7に示すように、軸支部材30の左側と右側とに各々設置されている。これらの係止部材34は、
図5に示すように、爪部34aにキャップ80が係止され、これによってキャップ80を支持する。
【0043】
肘掛け本体40は、前後方向に延びるパッド受け41と、パッド受け41に下方から支持されたパッド42とによって構成されている。
【0044】
パッド受け41は、肘掛け支柱10と同様に、強度を得るためにアルミニウム合金やステンレス鋼によって形成されたプレート状の部材である。このパッド受け41の下面には、
図5に示すように、軸支部材30の上端部が嵌合される第1嵌合溝41aと、軸受部32が嵌合される第2嵌合溝41bとを有している。なお、第1嵌合溝41aの底面には、軸支部材30のカバー部31の後側空間31eを貫通した肘掛け支持部20の連結部22の上端22aが当接される。また、第1嵌合溝41aの底面には、軸支部材30のカバー部31の前側空間31dを貫通した肘掛け支持部20の操作部材収容部21の上端21cが当接される。また、パッド受け41には、連結部22の上端22aが当接される領域と、操作部材収容部21の上端21cが当接される領域とにねじ50が挿通される貫通孔41cが設けられている。また、パッド受け41の上面には、パッド42を係止するための爪部41dを備えている。
【0045】
さらに、パッド受け41の第1嵌合溝41aの底面には、軸支部材30のカバー部31の上端31aが当接されている。つまり、軸支部材30は、上端31aがパッド受け41の第1嵌合溝41aの底面に当接された状態で、肘掛け支柱10と肘掛け本体40とによって上下方向から狭持されている。
【0046】
パッド42は、着座者の肘を直接載置する部位であり、クッション性を有する部材によって形成されている。このパッド42は、下面の一部がパッド受け41の爪部41dと係止されることによって固定されている。
【0047】
ねじ50は、パッド受け41の上部から貫通孔41cに挿通されて肘掛け支持部20に螺合され、これによってパッド受け41と肘掛け支持部20とを締結する。なお、ねじ50としては、肘掛け支持部20の連結部22に螺合されるねじ51と、肘掛け支持部20の操作部材収容部21に螺合されるねじ52とが設置されている。
【0048】
操作部材60は、軸支部材30と同一材料である合成樹脂によって形成されており、操作レバー61と、フレーム62と、枢軸63とを備えている。
【0049】
操作レバー61は、フレーム62の前側に接続され、着座者によって直接操作されるプレート状の部材である。この操作レバー61は、肘掛け支持部20及び軸支部材30から前側に迫り出して配置されている。
【0050】
フレーム62は、操作レバー61を支持し、肘掛け支持部20の操作部材収容部21の内部に収容される部位である。このフレーム62は、
図4に示すように、左右両側に立ち上がり部62aを備えている。これらの立ち上がり部62aは、操作部材収容部21の第2開口部21bを介して上端が肘掛け支持部20の上方に突出する高さを有する。また、フレーム62は、
図5に示すように、左右方向における中央に、板ばね33の下端部33bと当接される当接部62bを有している。この当接部62bは、板ばね33によって直接押圧される部位である。さらに、フレーム62の底部には、
図5に示すように、ワイヤ装置70の後述するワイヤ71の先端部71aが係止される係止穴62cが形成されている。
【0051】
枢軸63は、各立ち上がり部62aの先端に設けられている。
図9に示すように、右側の立ち上がり部62aに設けられる枢軸63aは、立ち上がり部62aの先端から右側に向けて突出して設けられている。また、左側の立ち上がり部62aに設けられる枢軸63bは、立ち上がり部の先端から左側に向けて突出して設けられている。このため、立ち上がり部62a同士に挟まれた空間を内側と称すると、枢軸63aと枢軸63bとは、どちらも立ち上がり部62aから外側方向に向けて突出されている。
【0052】
これらの枢軸63は、軸支部材30の軸受部32によって軸支される。より詳細には、軸受部32の支持部32bに枢軸63が載置され、これによって枢軸63が支持部32b上において回転可能に支持される。なお、
図8及び
図9に示すように、枢軸63の上方にはパッド受け41が配置されており、枢軸63は、パッド受け41と支持部32bとによって上下及び前後から囲まれている。このため、枢軸63は、回転動作以外は、動くことができないように規制されている。
【0053】
このような軸支部材30は、枢軸63が軸受部32によって軸支されることによって、枢軸63を中心として回動可能とされている。具体的には、軸支部材30は、着座者が背フレーム6を傾動させるときに、着座者によって操作レバー61が持ち上げられるように回動操作され、これによって操作レバー61が持ち上げられた操作姿勢とされる。
【0054】
ワイヤ装置70は、操作部材60と不図示の傾動機構とを繋ぐワイヤ71と、このワイヤ71を保護すると共に案内するワイヤチューブ72とを備えている。
【0055】
ワイヤ71は、先端部71a及び後端部71bが球形状とされた線材である。このワイヤ71は、先端部71aが操作部材60のフレーム62に設けられた係止穴62cに係止され、後端部71bが不図示の傾動機構に係止されている。
【0056】
ワイヤチューブ72は、ワイヤ71を囲う柔軟性の高いチューブであり、肘掛け支柱10のワイヤ配置溝13に収容されている。なお、ワイヤチューブ72は、ワイヤ71と固定されていない。このため、ワイヤ71は、ワイヤチューブ72の内部を長さ方向に移動可能とされている。
【0057】
このようなワイヤ装置70により、操作部材60が操作姿勢とされたときにワイヤ71が引っ張られ、傾動機構が引っ張られる。ワイヤ装置70は、ワイヤ71が引っ張られたときに傾動機構のロックを解除する。これによって背凭れ7が背フレーム6と共に傾動可能とされる。また、操作部材60が初期姿勢とされたときにはワイヤ71は元の位置に戻り、傾動機構がロックされる。これによって、背凭れ7が背フレーム6と共に操作機構8に対して所定の傾動位置にて固定される。
【0058】
キャップ80は、ワイヤ装置70が収容される肘掛け支柱10のワイヤ配置溝13をカバーするものであり、可撓性を有する合成樹脂によって形成されている。このキャップ80として、ワイヤ配置溝13の前方に向けて開口された領域を塞ぐキャップ81と、ワイヤ配置溝13の側方に開口された領域を塞ぐキャップ82とが設けられている。なお、キャップ81の上端部には、軸支部材30の係止部材34の爪部34aに係止される爪部81aが設けられている。
【0059】
このように構成された本実施形態の椅子1が備える肘掛け装置9aでは、着座者によって操作部材60の操作レバー61が持ち上げられると、操作部材60が枢軸63を中心として回動し、操作レバー61が持ち上げられた操作姿勢となる。操作部材60が操作姿勢となるように回動すると、この回動に伴ってワイヤ装置70のワイヤ71が引っ張られ、傾動機構のロックが解除される。この結果、着座者によって背凭れ7の傾動角度が調節可能となる。
【0060】
その後、着座者が操作レバー61を離すと、板ばね33によって操作部材60のフレーム62に設けられた当接部62bが押し戻され、操作部材60が枢軸63を中心として回動して初期姿勢に戻る。操作部材60が操作姿勢から初期姿勢に戻る回動に伴って、ワイヤ装置70のワイヤ71が元の位置に戻り、傾動機構が再びロックされる。この結果、背凭れ7が操作機構8に対して所定の傾動位置にて固定される。
【0061】
なお、肘掛け装置9aと反対側に設けられた肘掛け装置9bは、前方から見て、肘掛け装置9aと左右対称の形状である点、及び、ワイヤ71の後端部71bが不図示の昇降機構に接続されている点を除いて、肘掛け装置9aと同一の構成である。このため、肘掛け装置9bの構成についての詳細な説明は省略する。
【0062】
このような肘掛け装置9bでは、着座者によって操作部材60の操作レバー61が持ち上げられると、操作部材60が枢軸63を中心として回動し、操作レバー61が持ち上げられた操作姿勢となる。操作部材60が操作姿勢となるように回動すると、この回動に伴ってワイヤ装置70のワイヤ71が引っ張られ、昇降機構のロックが解除される。この結果、着座者によって座5の高さ位置が調節可能となる。
【0063】
その後、着座者が操作レバー61を離すと、板ばね33によって操作部材60のフレーム62に設けられた当接部62bが押し戻され、操作部材60が枢軸63を中心として回動して初期姿勢に戻る。操作部材60が操作姿勢から初期姿勢に戻る回動に伴って、ワイヤ装置70のワイヤ71が元の位置に戻り、昇降機構が再びロックされる。この結果、座5の高さ位置が固定される。
【0064】
以上説明したような本実施形態の椅子1においては、操作部材60の枢軸63を軸支する軸受部32を有する軸支部材30が、肘掛け支柱10と肘掛け本体40とによって上下方向から狭持されている。肘掛け支柱10と肘掛け本体40とは、椅子1の着座者を支える必要があることから、上下方向に作用する荷重に対する強度が高くなるように設計されている。つまり、本実施形態の椅子1は、上下方向に作用する荷重に対する強度の高い部材に、操作部材60の枢軸63を軸支する軸支部材30が上下方向から挟まれた構造を有する。このような本実施形態の椅子1によれば、着座者が操作部材60を操作するときに枢軸63に作用する上下方向の荷重が、直上あるいは直下に配置された強度の高い肘掛け支柱10及び肘掛け本体40の少なくともいずれか一方によって受け止められる。つまり、本実施形態の椅子1では、操作部材60を操作するときの荷重が、強度の弱い部位に作用することなく、強度の高い部材で受け止められる。したがって、本実施形態の椅子1によれば、長期間の使用によるがたつき等の発生を抑制することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態の椅子1においては、操作部材60の枢軸63を軸支する軸受部32が、肘掛け支柱10や肘掛け本体40とは別体の軸支部材30に設けられている。このため、軸支部材30(すなわち軸受部32)の形状や材質を、肘掛け支柱10や肘掛け本体40と切り離して選択することができる。例えば、肘掛け支柱10や肘掛け本体40は、高い強度を確保する必要があることから、アルミニウム合金やステンレス鋼等の強度が高い材料が選択される。このような場合であっても、本実施形態の椅子1によれば、操作部材60の枢軸63と同質の合成樹脂によって軸支部材30(すなわち軸受部32)を形成することが可能となる。したがって、本実施形態の椅子1によれば、操作部材60の枢軸63を軸支する軸受部32及び軸受部32周りの設計の自由度が高くなる。
【0066】
また、本実施形態の椅子1は、肘掛け支柱10の上面14に上方に向けて突出すると共に上端(上端21c及び上端22a)が肘掛け本体40に固定される肘掛け支持部20を備え、軸支部材30が、肘掛け支持部20の側方を囲って肘掛け支持部20に外嵌されている。つまり、本実施形態の椅子1においては、軸支部材30が 肘掛け支柱10の上面14に設けられた肘掛け支持部20の側方を囲うように肘掛け支持部20の外側に嵌め込まれている。このような軸支部材30は、水平方向への移動を肘掛け支持部20によって規制される。また、軸支部材30は、上下方向から肘掛け支柱10と肘掛け本体40とによって狭持されているため、上下方向への移動も規制される。したがって、本実施形態の椅子1によれば、軸支部材30を強固に固定し、軸支部材30の位置がずれることを防止することができる。
【0067】
また、本実施形態の椅子1は、肘掛け支持部20及び軸支部材30が、前方に向けて開口されると共に操作部材60が挿通される開口部(第1開口部21a及び開口部31c)を備え、肘掛け支持部20が、操作部材60の枢軸63が配置される位置よりも後方に肘掛け本体40に連結される連結部22を備えている。このような本実施形態の椅子1においては、操作部材60が肘掛け支持部20の前方寄りに配置されている。また、本実施形態の椅子1においては、肘掛け支持部20の肘掛け本体40との連結部22が操作部材60の枢軸63よりも後方に配置されている。つまり、本実施形態の椅子1においては、肘掛け支持部20の前方寄りに操作部材60が配置され、肘掛け支持部20の後方寄りに連結部22が配置され、操作部材60と連結部22とが離間して配置されている。このため、連結部22を肘掛け本体40に連結する作業を行うときに、操作部材60が作業の障害になることを防止することができる。
【0068】
また、本実施形態の椅子1は、肘掛け支持部20と肘掛け支柱10とがアルミニウム合金(金属)あるいはステンレス鋼によって一体的に形成され、軸支部材30が合成樹脂によって形成されている。このような本実施形態の椅子1によれば、肘掛け支持部20と肘掛け支柱10とがアルミニウム合金(金属)あるいはステンレス鋼によって形成されているため、肘掛け支持部20と肘掛け支柱10に高い強度を付与することができる。また、肘掛け支持部20と肘掛け支柱10とが一体的に形成されていることから、椅子1の組み立て時に、肘掛け支持部20と肘掛け支柱10と同一工程で設置することができ、組み立て作業が容易となる。また、本実施形態の椅子1によれば、軸支部材30が合成樹脂によって形成されていることから、操作部材60の操作によって、操作部材60の枢軸63と軸受部32とが摺動したときであっても、金属音や金属粉の発生を防止することができる。また、本実施形態の椅子1においては、アルミニウム合金(金属)あるいはステンレス鋼で形成された肘掛け支柱10に対して、枢軸や軸受部を形成する必要がないため、肘掛け支柱10の形状を簡素化することができる。したがって、肘掛け支柱10を成形するための金型の構造も簡素化することができる。金属及びステンレス鋼の加工は合成樹脂の加工と比較して高コストとなるが、本実施形態の椅子1によれば、金型を簡素化することによって肘掛け支柱10の成形が容易となり、加工のコストを小さく抑えることが可能となる。
【0069】
また、本実施形態の椅子1は、操作部材60を初期姿勢に向けて付勢すると共に、軸支部材30に同一材料で一体的に設けられた板ばね33(付勢手段)を備えている。このような本実施形態の椅子1によれば、軸支部材30に板ばね33が一体的に設けられているため、椅子1の組み立て時に、軸支部材30と板ばね33とを同一工程で設置することができ、組み立て作業が容易となる。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態においては、肘掛け装置9a及び肘掛け装置9bにおいて肘掛け本体40が肘掛け支柱10に対して固定された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、肘掛け本体40が肘掛け支柱10に対して昇降する構成や、肘掛け本体40が肘掛け支柱10に対して水平面において回動する構成を採用することもできる。
【0072】
また、上記実施形態においては、肘掛け支持部20に軸支部材30が外嵌されて固定された構成について説明した。しかしながら、本発明においては、肘掛け支持部20は必須構成ではなく、肘掛け支柱10と肘掛け本体40とで軸支部材30を狭持し、この状態で離間して配置される肘掛け支柱10と肘掛け本体40をボルト等で締結するようにしても良い。
【0073】
また、上記実施形態においては、肘掛け装置9aの操作部材60を操作することによって背凭れ7が傾動可能とされ、肘掛け装置9bの操作部材60を操作することによって座5が昇降可能とされる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、肘掛け装置9aの操作部材60を操作することによって座5が昇降可能とされ、肘掛け装置9bの操作部材60を操作することによって背凭れ7が傾動可能とされる構成を採用することも可能である。また、肘掛け装置9a及び肘掛け装置9bのいずれかののみに操作部材60が設置されている構成を採用することも可能である。
【0074】
また、上記実施形態においては、板ばね33を本発明の付勢手段とする構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、付勢手段としてコイルバネ、皿ばねあるいはゴム等を用いることも可能である。この場合、付勢手段は、軸支部材30と必ずしも一体である必要はない。