(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス風量制御部は、複数の前記第1温度計測部のそれぞれの計測結果の平均値と、複数の前記第2温度計測部のそれぞれの計測結果の平均値とを比較して、前記第1ガス吹込部から吹き込まれる前記ガスの風量と前記第2ガス吹込部から吹き込まれる前記ガスの風量の比率を制御する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のコークス乾式消火設備のガス吹込装置。
【背景技術】
【0002】
高炉に投入するコークスは、コークス炉で石炭を乾留(蒸し焼き)して生成している。乾留後のコークスは、高温(1000℃前後)状態を保っており、そのままでは、ベルトコンベヤによる搬送及び大気中での貯留ができず、高炉に装入することができないため、コークス消火設備を使用して装入可能な温度に下げている。
【0003】
以前は湿式消火方式(水を赤熱したコークスに噴射し消火して温度を下げる)が主流であったが、この方式の場合は、消火に伴う白煙(蒸気)の発生によりコークスの粉が周囲に飛散し公害発生源となるとともに、赤熱コークスの大きな顕熱が無駄に捨てられていた。
現在は乾式消火方式(不活性ガスを流し、この冷却ガス流で消火し温度を下げる)が主流になっており、コークス炉から押し出された赤熱コークスをバケットに積載し、コークス消火設備の冷却塔の上部から装入している。
【0004】
コークス乾式消火設備において、冷却塔に装入したコークスを均一な速度で降下させることは、コークスを均一に冷却して、コークス乾式消火設備の安定操業を図る上で極めて重要なことである。
下記特許文献1には、冷却塔の下部の炉壁部に炉壁部の温度を計測する温度計を複数配置し、冷却塔の下部のファンネル(漏斗)部に冷却塔内への挿し込み量が調整可能なニードルバーを複数配置し、温度計の計測結果に基づいてニードルバーの挿し込み量を調整することで、コークスの降下を妨げて、コークスの速度分布を均一化する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、冷却塔内においては、冷却塔の半径上の中間部の方が炉心部及び炉壁部よりもコークスの降下速度が大きくなる傾向にある。コークスの降下速度の大きい部分は、風が均一に流れているとしても、単位コークスに対する風量が過小となって冷え難く、温度が高くなる。上記従来技術は、冷却塔内の風の温度となってしまう壁際と切り出したコークスの温度を計測し、冷却塔内の壁際のコークスの速度を調整するものである。このため、上記従来技術では、冷却塔の半径上におけるコークスの温度分布を正しく把握することができず、また、元々降下速度の大きい冷却塔の半径上の中間部及び降下速度の小さい炉心部におけるコークスの降下速度を調整することができないため、コークス乾式消火設備の操業の安定性について課題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、冷却塔の半径上におけるコークスの温度分布を均一化し、コークス乾式消火設備においてより安定した操業を可能とするコークス乾式消火設備のガス吹込装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、上部においてコークスが装入される冷却塔の下部からガスを吹き込むコークス乾式消火設備のガス吹込装置であって、前記冷却塔の下部の中央部から前記ガスを吹き込む第1ガス吹込部と、前記冷却塔の下部の周辺部から前記ガスを吹き込む第2ガス吹込部と、前記中央部における温度を計測する第1温度計測部と、前記周辺部における温度を計測する第2温度計測部と、前記第1温度計測部及び前記第2温度計測部の計測結果に基づいて、前記第1ガス吹込部から吹き込まれる前記ガスの風量と前記第2ガス吹込部から吹き込まれる前記ガスの風量の比率を制御するガス風量制御部と、を有する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、冷却塔の下部において、その中央部に第1ガス吹込部を設け、その周辺部に第2ガス吹込部を設けることにより、冷却塔の半径上において吹き込むガスの風量を調整可能とする。また、本発明では、冷却塔の下部において、その中央部に第1温度計測部を設け、その周辺部に第2温度計測部を設けることにより、冷却塔の半径上においてコークスの温度分布を把握可能とする。そして、本発明では、ガス風量制御部を設け、第1温度計測部と第2温度計測部によって冷却塔の半径上におけるコークスの温度分布を把握しつつ、第1ガス吹込部と第2ガス吹込部から吹き込まれるガスの風量の比率を制御することにより、冷却塔の半径上におけるコークスの温度を均一化する。このため、本発明によれば、コークス乾式消火設備においてより安定した操業を可能とすることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記第1ガス吹込部は、前記冷却塔の下部の中央部に設けられた傘型のブラストヘッドに設けられており、前記第1温度計測部は、前記ブラストヘッドの傘部に設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、冷却塔の下部の中央部に設けられたブラストヘッドの傘部に第1温度計測部を設けることで、中央部におけるコークスの温度を計測可能とする。ブラストヘッドの傘部は、コークスが載る部分であり、その傘部に第1温度計測部を設けることで、中央部におけるコークスの温度を正確に計測することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記第2ガス吹込部は、前記冷却塔の下部の周辺部に設けられた上部ファンネルと下部ファンネルとの間に設けられており、前記第2温度計測部は、前記上部ファンネルに設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、冷却塔の下部の周辺部に設けられた上部ファンネルに第2温度計測部を設けることで、周辺部におけるコークスの温度を計測可能とする。上部ファンネルは、下部ファンネルより冷却塔の壁際に近く、また、コークスが載る部分であり、その上部ファンネルに第2温度計測部を設けることで、周辺部におけるコークスの温度を正確に計測することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記第1温度計測部は、前記中央部において、間隔をあけて複数設けられており、前記第2温度計測部は、前記周辺部において、前記第1温度計測部と同数で且つ前記第1温度計測部の配置に対応する配置で複数設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、冷却塔の下部の中央部において第1温度計測部を複数設けると共に、冷却塔の下部の周辺部において第2温度計測部を複数設けることで、冷却塔の半径上におけるコークスの温度分布を正確に把握することができる。また、本発明では、第2温度計測部を第1温度計測部と同数で且つ第1温度計測部の配置に対応する配置で設けることで、冷却塔の中心を通る放射線上において第1温度計測部と第2温度計測部とを配置することができ、例えば、ブラストヘッドと上部ファンネルとの間にコークスの粉体が跨るブリッジ現象等を検知することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記第1温度計測部は、前記中央部において、間隔をあけて複数設けられており、前記第2温度計測部は、前記周辺部において、前記第1温度計測部より多数で且つ前記第1温度計測部の間隔に対応する間隔で複数設けられている、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、冷却塔の下部の中央部において第1温度計測部を複数設けると共に、冷却塔の下部の周辺部において第2温度計測部を複数設けることで、冷却塔の半径上におけるコークスの温度分布を正確に把握することができる。また、本発明では、第2温度計測部を第1温度計測部より多数で且つ第1温度計測部の間隔に対応する間隔で設けることで、中央部よりも大きい周辺部において中央部と同じ間隔でコークスの温度分布を把握することができ、相対的に中央部における第1温度計測部の設置数を低減することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記ガス風量制御部は、複数の前記第1温度計測部のそれぞれの計測結果の平均値と、複数の前記第2温度計測部のそれぞれの計測結果の平均値とを比較して、前記第1ガス吹込部から吹き込まれる前記ガスの風量と前記第2ガス吹込部から吹き込まれる前記ガスの風量の比率を制御する、という構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、複数の前記第1温度計測部のそれぞれの計測結果の平均値と、複数の第2温度計測部のそれぞれの計測結果の平均値とを比較して、第1ガス吹込部から吹き込まれるガスの風量と第2ガス吹込部から吹き込まれるガスの風量の比率を制御するため、一部の計測結果に惑わされずに、冷却塔の半径上におけるコークスの温度を均一化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却塔の半径上におけるコークスの温度分布を均一化し、コークス乾式消火設備においてより安定した操業を可能とするコークス乾式消火設備のガス吹込装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態におけるコークス乾式消火設備のガス吹込装置1の構成を示す断面図である。
図2は、本発明の実施形態における冷却塔3の周辺部3b2の構成を示す要部拡大断面図である。
図3は、本発明の実施形態における第1温度計測部31と第2温度計測部32の配置を示す平面図である。
図4は、本発明の実施形態におけるコークス乾式消火設備のガス吹込装置1の制御構成を示す制御ブロック図である。
【0018】
図1に示すように、コークス乾式消火設備のガス吹込装置1は、冷却塔3に設けられている。冷却塔3は、上部が予備室3A(プリチャンバー、貯留帯)であり、下部が冷却室3B(冷却帯)となっている。なお、冷却室3Bは、小煙道5(ガス吸引帯)の上端までの領域であり、その上は、予備室3Aとなる。ガス吹込装置1は、予備室3Aを介してコークス2が装入される冷却室3Bの下部3b(冷却塔の下部)からガスを吹き込み、コークス2を冷却(消火)するものである。本実施形態では、コークス2を冷却するガスとして、不活性ガスを吹き込む構成となっている。
【0019】
冷却塔3は、ガスの吹き込みによって消火されたコークス2を冷却室3Bの下部3bから切り出すコークス切出口4を有する。本実施形態では、コークス切出口4から切り出されたコークス2を、不図示のコンベアによって高炉等に搬送するようになっている。また、冷却室3Bの上部に、下部3bから吹き込んだガスを排気する小煙道5を有する。小煙道5は、略円筒形の冷却室3Bの側壁に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、コークス2を冷却したガスを、小煙道5を通して不図示のボイラ等に送り、コークス2と熱交換することによって得た熱の有効利用を図るようになっている。
【0020】
冷却室3Bには、下部3bの中央部3b1からガスを吹き込む第1ガス吹込部10と、下部3bの周辺部3b2からガスを吹き込む第2ガス吹込部20と、が設けられている。第1ガス吹込部10は、冷却室3Bの下部3bの中央部3b1に設けられたブラストヘッド11に設けられている。一方、第2ガス吹込部20は、冷却室3Bの下部3bの周辺部3b2に設けられた上部ファンネル21と下部ファンネル22との間に設けられている。
【0021】
ブラストヘッド11は、コークス切出口4の上方を横切って設けられた分配器12によって支持されている。ブラストヘッド11は、傘型に形成されており、ヘッド部13aとスカート部13b(傘部)とを有する。第1ガス吹込部10は、ヘッド部13aとスカート部13bとの間と、スカート部13bの下部に設けられている。本実施形態では、分配器12からブラストヘッド11に送り込まれたガスを、ヘッド部13aとスカート部13bとの間と、スカート部13bの下部に設けられた第1ガス吹込部10から冷却室3Bの中央部3b1に吹き込むようになっている。
【0022】
分配器12は、環状ダクト14に接続されている。環状ダクト14は、下部ファンネル22の裏側に環状に設けられている。
図3に示すように、分配器12には、第1バタフライ弁15が設けられている。第1バタフライ弁15は、分配器12のガス流路を開閉可能に設けられている。本実施形態の第1バタフライ弁15は、梁のように両端部を支持された分配器12の両端部のそれぞれに設けられている。
【0023】
上部ファンネル21と下部ファンネル22は、
図1に示すように、冷却室3Bの下部3bを円錐状(漏斗状)に形成するものである。上部ファンネル21は、その上端が冷却室3Bの側壁に対応する径を有し、その下端がその上端よりも小さな径を有するように傾斜している。また、下部ファンネル22は、その上端が上部ファンネル21の下端よりも大きな径を有し、その下端がその上端よりも小さな径を有し、コークス切出口4に連通するように傾斜している。
【0024】
第2ガス吹込部20は、上部ファンネル21の下端と下部ファンネル22の上端とがオーバーラップする隙間に設けられている。第2ガス吹込部20は、上部ファンネル21の裏側に環状に設けられたバッファ部23と連通している。バッファ部23は、環状ダクト14と接続されている。本実施形態では、環状ダクト14からバッファ部23に分配されたガスを、上部ファンネル21と下部ファンネル22との間の第2ガス吹込部20から冷却室3Bの周辺部3b2に環状に吹き込むようになっている。
【0025】
バッファ部23と環状ダクト14との接続部には、第2バタフライ弁24が設けられている。第2バタフライ弁24は、その接続部におけるガス流路を開閉可能に設けられている。環状ダクト14とバッファ部23は、複数箇所で接続可能とされており、第2バタフライ弁24は、
図3に示すように、環状のバッファ部23の底部において間隔をあけて複数設けられている。本実施形態の第2バタフライ弁24は、例えば、平面視で60°毎に計6個設けられている。
【0026】
冷却室3Bには、
図1に示すように、中央部3b1における温度を計測する第1温度計測部31と、周辺部3b2における温度を計測する第2温度計測部32と、が設けられている。第1温度計測部31及び第2温度計測部32は、高温のコークス2に曝されても温度計測が可能な耐熱性を有するものが好ましく、本実施形態では熱電対から構成されている。この熱電対からなる第2温度計測部32は、例えば、
図2に示すように取り付けられている。なお、第1温度計測部31においても、第2温度計測部32と同様にして取り付けられている。
【0027】
図2に示すように、第2温度計測部32は、上部ファンネル21に取り付けられている。上部ファンネル21は、コークス2に接触するライナー25と、隙間をあけてライナー25を支持する支持部材26と、を有する。この上部ファンネル21には、貫通孔27が形成されており、この貫通孔27に第2温度計測部32(熱電対)を挿し込むようになっている。支持部材26には、第2温度計測部32をネジ固定する固定部28が設けられており、第2温度計測部32の先端をライナー25の表面以下の貫通孔27の中に配置するようになっている。
【0028】
図1に示すように、第1温度計測部31は、ブラストヘッド11のスカート部13bに設けられている。第1温度計測部31は、スカート部13bの下部からのガスの吹き上げの影響が少なくなるように、スカート部13bの外縁よりも内側に設けられている。また、第2温度計測部32は、上部ファンネル21に設けられている。第2温度計測部32は、上部ファンネル21の下部からのガスの吹き上げの影響が少なくなるように、上部ファンネル21の下端よりも上方に設けられている。
【0029】
図3に示すように、第1温度計測部31は、中央部3b1において、間隔をあけて複数設けられている。本実施形態の第1温度計測部31は、冷却室3Bの中心を基準とした同心円C1上において平面視で30°毎に計12個設けられている。また、第2温度計測部32は、周辺部3b2において、第1温度計測部31と同数で且つ第1温度計測部31の配置に対応する配置で複数設けられている。すなわち、本実施形態の第2温度計測部32は、冷却室3Bの中心を基準とした同心円C2において平面視で30°毎に計12個設けられている。
【0030】
図4に示すように、コークス乾式消火設備のガス吹込装置1は、第1温度計測部31及び第2温度計測部32の計測結果に基づいて、第1ガス吹込部10から吹き込まれるガスの風量と第2ガス吹込部20から吹き込まれるガスの風量の比率を制御するガス風量制御部40を有する。ガス風量制御部40は、第1温度計測部31及び第2温度計測部32と電気的に接続されており、それらの計測結果に基づいて、第1バタフライ弁駆動部41及び第2バタフライ弁駆動部42を駆動させる構成となっている。第1バタフライ弁駆動部41は、第1バタフライ弁15と接続されており、第1バタフライ弁15を開閉駆動させるものである。第2バタフライ弁駆動部42は、第2バタフライ弁24に接続されており、第2バタフライ弁24を開閉駆動させるものである。
【0031】
本実施形態のガス風量制御部40は、複数の第1温度計測部31のそれぞれの計測結果の平均値A1と、複数の第2温度計測部32のそれぞれの計測結果の平均値A2とを比較して、第1ガス吹込部10から吹き込まれるガスの風量と第2ガス吹込部20から吹き込まれるガスの風量の比率を制御する構成となっている。具体的に、ガス風量制御部40は、12個の第1温度計測部31の平均値A1と12個の第2温度計測部32の平均値A2の差分の絶対値が所定の閾値を超えた場合に、第2バタフライ弁24の開放数を増減させ、第1ガス吹込部10から吹き込まれるガスの風量と第2ガス吹込部20から吹き込まれるガスの風量の比率を制御するようになっている。
【0032】
続いて、上記構成のコークス乾式消火設備のガス吹込装置1の具体的な動作について説明する。先ず、
図5を参照して、コークス2の降下不均一の影響について説明する。
図5は、コークス2の降下速度と温度との関係を説明するための図である。
【0033】
冷却塔3にあっては、コークス2の降下速度の不均一は、冷却室3B内に風量の過大な部分と逆に風量の少ない部分とを必然的に発生させる。コークス2の降下速度が速い部分(冷却室3Bの半径中間部(ブラストヘッド11と上部ファンネル21との中間))は、風量が少なく、単位コークス通過量に対する風量が過小となって冷え難いため(冷却風量原単位:小)、コークス2の温度がやや高くなる。そうすると、高温のコークス2と熱交換したガスの温度が高くなり、そのガスの熱膨張による圧損によって、ますますガスが流れ難くなる。結果、コークス2の温度がさらに高くなってしまう。
また、コークス2の降下速度が遅い部分(冷却室3Bの炉心部(ブラストヘッド11の直上))は、風量が大幅に少なく、単位コークス通過量に対する風量が過小となって冷え難いため(冷却風量原単位:小)、コークス2の温度がやや高くなる。
【0034】
一方、コークス2の降下速度が遅い部分(冷却室3Bの炉壁部(側壁))は、風量が多く、単位コークス通過量に対する風量が過大となって冷えるため(冷却風量原単位:大)、コークス2の温度が低くなる。そうすると、低温のコークス2と熱交換したガスの温度が低いままとなり、そのガスの熱膨張による圧損が小さく、ますますガスが流れやすくなる。結果、コークス2の温度がさらに低くなってしまう。したがって、このままだと冷却室3Bの半径上においてコークス2の温度の不均一が生じる。
【0035】
本実施形態では、冷却室3Bの下部3bにおいて、その中央部3b1に第1ガス吹込部10を設け、その周辺部3b2に第2ガス吹込部20を設けることにより、冷却室3Bの半径上において吹き込むガスの風量を調整可能とする。また、本実施形態では、冷却室3Bの下部3bにおいて、その中央部3b1に第1温度計測部31を設け、その周辺部3b2に第2温度計測部32を設けることにより、冷却塔3の半径上においてコークス2の温度分布を把握可能とする。そして、本実施形態では、ガス風量制御部40を設け、第1温度計測部31と第2温度計測部32によって冷却塔3の半径上におけるコークス2の温度分布を把握しつつ、第1ガス吹込部10と第2ガス吹込部20から吹き込まれるガスの風量の比率を制御する。
【0036】
ガス風量制御部40は、複数の第1温度計測部31のそれぞれの計測結果の平均値A1と、複数の第2温度計測部32のそれぞれの計測結果の平均値A2とを比較して、第1ガス吹込部10から吹き込まれるガスの風量と第2ガス吹込部20から吹き込まれるガスの風量の比率を制御する。具体的に、ガス風量制御部40は、平均値A1と平均値A2の差分の絶対値が所定の閾値を超えた場合であって、例えば平均値A1>平均値A2の関係を有する場合、
図3に示す第2バタフライ弁24の開放数を減少させる。そうすると、トータル風量は維持しつつ、第2ガス吹込部20から吹き込まれるガスの風量比率が縮小し、相対的に第1ガス吹込部10から吹き込まれるガスの風量比率が増大する。そうすると、冷却塔3の半径中間部及び炉心部における冷却風量原単位が大きくなり、その高めのコークス2の温度を低下させることができる(
図5参照)。
【0037】
また、ガス風量制御部40は、平均値A1と平均値A2の差分の絶対値が所定の閾値を超えた場合であって、例えば平均値A1<平均値A2の関係を有する場合、
図3に示す第2バタフライ弁24の開放数を増加させる。そうすると、第2ガス吹込部20から吹き込まれるガスの風量比率が増大し、相対的に第1ガス吹込部10から吹き込まれるガスの風量比率が縮小する。そうすると、冷却塔3の炉壁部における冷却風量原単位が大きくなり、その高めのコークス2の温度を低下させることができる。
このように、本実施形態では、冷却室3Bの半径上におけるコークス2の温度を均一化することができる。また、本実施形態では、複数の第1温度計測部31のそれぞれの計測結果の平均値A1と、複数の第2温度計測部32のそれぞれの計測結果の平均値A2とを比較するため、一部の計測結果に惑わされずに、冷却室3Bの半径上におけるコークス2の温度を均一化することができる。このため、本実施形態によれば、コークス乾式消火設備においてより安定した操業を可能とすることができる。
【0038】
また、本実施形態では、
図1に示すように、冷却室3Bの下部3bの中央部3b1に設けられたブラストヘッド11のスカート部13bに第1温度計測部31を設けることで、中央部3b1におけるコークス2の温度を計測可能とする。ブラストヘッド11のスカート部13bは、コークス2が載る部分であり、そのスカート部13bに第1温度計測部31を設けることで、中央部3b1におけるコークス2の温度を正確に計測することができる。また、第1温度計測部31は、スカート部13bの外縁よりも内側に設けられており、スカート部13bの下部からの吹き上げられるガスが直接当たることがないため、測定誤差も少ない。
【0039】
また、本実施形態では、冷却室3Bの下部3bの周辺部3b2に設けられた上部ファンネル21に第2温度計測部32を設けることで、周辺部3b2におけるコークス2の温度を計測可能とする。上部ファンネル21は、下部ファンネル22より冷却塔3の壁際に近く、また、コークス2が載る部分であり、その上部ファンネル21に第2温度計測部32を設けることで、周辺部3b2におけるコークス2の温度を正確に計測することができる。また、第2温度計測部32は、上部ファンネル21の下端よりも上方に設けられており、スカート部13bの下部からの吹き上げられるガスが直接当たることがないため、測定誤差も少ない。
【0040】
また、本実施形態では、冷却室3Bの下部3bの中央部3b1において第1温度計測部31を複数設けると共に、冷却室3Bの下部3bの周辺部3b2において第2温度計測部32を複数設けることで、上述したように、一部の計測結果に惑わされずに、冷却室3Bの半径上におけるコークス2の温度分布を正確に把握することができる。また、本実施形態では、
図3に示すように、第2温度計測部32を第1温度計測部31と同数で且つ第1温度計測部31の配置に対応する配置で設けることで、冷却室3Bの中心を通る放射線上において第1温度計測部31と第2温度計測部32とを配置することができる。したがって、例えば、ブラストヘッド11と上部ファンネル21との間にコークス2の粉体が跨るブリッジ現象等を検知することができる。例えば、
図3において二点鎖線で囲ったものを一組として設定しておき、コークス2を切り出した後に、同一の放射線上にある第1温度計測部31と第2温度計測部32のそれぞれの組の平均値が、他の放射線上にある組の平均値より高い場合には、その場所においてコークス2がブラストヘッド11と上部ファンネル21との間にブリッジしていると判断できる。
【0041】
このように、上述の本実施形態によれば、予備室3Aにおいてコークス2が装入される冷却室3Bの下部3bからガスを吹き込むコークス乾式消火設備のガス吹込装置1であって、冷却室3Bの下部3bの中央部3b1からガスを吹き込む第1ガス吹込部10と、冷却室3Bの下部3bの周辺部3b2からガスを吹き込む第2ガス吹込部20と、中央部3b1における温度を計測する第1温度計測部31と、周辺部3b2における温度を計測する第2温度計測部32と、第1温度計測部31及び第2温度計測部32の計測結果に基づいて、第1ガス吹込部10から吹き込まれるガスの風量と第2ガス吹込部20から吹き込まれるガスの風量の比率を制御するガス風量制御部40と、を有する、という構成を採用することによって、冷却塔3の半径上におけるコークス2の温度分布を均一化し、コークス乾式消火設備においてより安定した操業を可能とするコークス乾式消火設備のガス吹込装置1が得られる。
【0042】
例えば、本発明は、以下に説明する別実施形態も採用し得る。
図6は、本発明の一別実施形態における第1温度計測部31と第2温度計測部32の配置を示す平面図である。なお、以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部材については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0043】
図6に示す、別実施形態においては、第1温度計測部31は、冷却室3Bの中心を基準とした同心円C1上において平面視で45°毎に計8個設けられている。また、別実施形態では、第2温度計測部32は、周辺部3b2において、第1温度計測部31より多数で且つ第1温度計測部31の間隔に対応する間隔で複数設けられている。すなわち、本実施形態の第2温度計測部32は、冷却室3Bの中心を基準とした同心円C2において平面視で30°毎に計12個設けられている。
【0044】
この構成によれば、冷却室3Bの下部3bの中央部3b1において第1温度計測部31を複数設けると共に、冷却室3Bの下部3bの周辺部3b2において第2温度計測部32を複数設けることで、上述したように、一部の計測結果に惑わされずに、冷却室3Bの半径上におけるコークス2の温度分布を正確に把握することができる。また、この構成によれば、第2温度計測部32を第1温度計測部31より多数で且つ第1温度計測部31の間隔に対応する間隔で設けることで、中央部3b1よりも大きい周辺部3b2において中央部3b1と同じ間隔でコークス2の温度分布を把握することができ、また、相対的に中央部3b1における第1温度計測部31の設置数を低減することが可能となる。
【0045】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、第1温度計測部31及び第2温度計測部32をそれぞれ複数設ける構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、第1温度計測部31及び第2温度計測部32をそれぞれ単数で設ける構成であってもよい。また、例えば、冷却室3Bの半径上の温度分布を把握するために、分配器12の上に第1温度計測部31及び第2温度計測部32のいずれか一方、若しくは、第3の温度計測部を設けてもよい。