特許第6357688号(P6357688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6357688-接地監視装置 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357688
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】接地監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/02 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   G01R31/02
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-528013(P2016-528013)
(86)(22)【出願日】2014年11月17日
(65)【公表番号】特表2016-537625(P2016-537625A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】US2014065919
(87)【国際公開番号】WO2015077178
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年12月1日
(31)【優先権主張番号】61/906,957
(32)【優先日】2013年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515163690
【氏名又は名称】デスコ インダストリーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】サビッチ, シャルヘイ ブイ.
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06930612(US,B1)
【文献】 特開2002−350478(JP,A)
【文献】 特開昭60−021467(JP,A)
【文献】 特開平03−068875(JP,A)
【文献】 実開平01−140799(JP,U)
【文献】 米国特許第04710751(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0107379(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0254693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の部位とグランドとの間に第1の放電経路を提供するための第1の導電部、および、
前記人の部位と前記グランドとの間に異なる第2の放電経路を提供するための第2の導電部
を備える、リストストラップと、
前記第1の導電部に第1の電圧をある周波数で印加し、かつ前記第2の導電部に逆の第2の電圧を前記周波数で印加するための信号源と、
電気回路であって、
前記第1の導電部から第1の全信号を受信し、
前記第2の導電部から第2の全信号を受信し、
該電気回路の差動利得およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成する
ための電気回路と、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較する
ための比較器であって、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分が前記第1の閾値よりも大きく、かつ
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が前記第2の閾値未満である場合に、
警報信号がアクティブ化される、比較器と、
を具備する、接地監視装置。
【請求項2】
前記電気回路が少なくとも2つの演算増幅器を備える、請求項1に記載の接地監視装置。
【請求項3】
前記比較器が、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分を前記第1の閾値と比較するための第1の比較器と、
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を前記第2の閾値と比較するための異なる第2の比較器と
を備える、請求項1に記載の接地監視装置。
【請求項4】
前記比較器が、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分と、
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分と
を抽出するためのフィルタを備える、請求項1に記載の接地監視装置。
【請求項5】
前記フィルタが、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分を抽出するための第1のフィルタと、
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を抽出するための異なる第2のフィルタと
を備える、請求項4に記載の接地監視装置。
【請求項6】
記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のそれぞれの一部分が前記第2の閾値未満である場合に、
前記警報信号がアクティブ化される、請求項1に記載の接地監視装置。
【請求項7】
記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が前記第2の閾値よりも大きい場合には
前記警報信号がアクティブ化されない、請求項1に記載の接地監視装置。
【請求項8】
人の部位とグランドとの間に第1の放電経路を提供するための第1の導電部、および、
前記人の部位と前記グランドとの間に異なる第2の放電経路を提供するための第2の導電部
を備える、リストストラップと、
前記第1の導電部に第1の電圧をある周波数で印加し、かつ前記第2の導電部に逆の第2の電圧を前記周波数で印加するための信号源と、
電気回路であって、
前記第1の導電部から第1の全信号を受信し、
前記第2の導電部から第2の全信号を受信し、
該電気回路の差動利得およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成する
ための電気回路と、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較する
ための比較器であって、該比較器によってなされた比較に応じて警報信号がアクティブ化される、比較器と、
を具備しており、
前記電気回路が、
第1の値を有する第1の抵抗器であって、前記信号源の第1の出力端子を前記第1の導電部および第1の演算増幅器の非反転入力に接続する第1の抵抗器と、
第2の値を有する第2の抵抗器であって、前記信号源の前記第1の出力端子を前記グランドに接続する第2の抵抗器と、
前記第1の値を有する第3の抵抗値であって、前記信号源の第2の出力端子を前記第2の導電部および第2の演算増幅器の非反転入力に接続する第3の抵抗器と、
前記第2の値を有する第4の抵抗器であって、前記信号源の前記第2の出力端子を前記グランドに接続する第4の抵抗器と
を備える、接地監視装置。
【請求項9】
人の部位とグランドとの間に第1の放電経路を提供するための第1の導電部と、前記人の部位と前記グランドとの間に異なる第2の放電経路を提供するための第2の導電部とを備えるリストストラップに接続されるように構成された接地監視装置であって、
前記第1の導電部に第1の電圧をある周波数で印加し、かつ前記第2の導電部に逆の第2の電圧を前記周波数で印加するための信号源と、
電気回路であって、
前記第1の導電部から第1の全信号を受信し、
前記第2の導電部から第2の全信号を受信し、
該電気回路の差動利得およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成する
ための電気回路と、
第1の周波数に対応する前記出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、
前記第1の周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較する
ための比較器であって、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分が前記第1の閾値よりも大きく、かつ
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が前記第2の閾値未満である場合に、
警報信号がアクティブ化される、比較器と、
を具備する、接地監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のデュアル式リストストラップ型オペレータ接地監視装置は、主として人体の抵抗またはインピーダンスの測定値に基づいて、リストストラップへの接続が適切になされていることを示す。一般に、リストストラップは、人(すなわち、ユーザ)の手首と直接接触する2つの別個の導電性の部品を備える。これらの2つの部品の間に制御電圧を印加すると手首の皮膚に電流が流れる。抵抗は測定電圧に比例して変化することから、2つの導電性部品間の電圧を測定することによって電流の抵抗を得ることができる。
【0003】
得られた抵抗の抵抗値を既定の閾値(通常、10メガオームまたは35メガオーム)と比較して、閾値を超えた場合には警報を発生させる。この警報は、警告音、警告灯、またはこの両方の形態を取ることができる。重要な環境では、ユーザの体内に静電荷が蓄積しないようにすることがより一層重要であり、そのため、監視装置の安定性および信頼性は重要である。しかしながら、印加される制御電圧は16Vの直流であることもあり、これは、ユーザには安全であるが、影響を受けやすい電子デバイスには問題が生じ得る。さらに、リストストラップの連続装用は、ユーザに不快感をもたらし得る。したがって、印加制御電圧のレベルを低減することは十分理に適っている。
【0004】
ユーザが高い印加制御電圧に曝されるのを低減するために、いくつかの解決策が提案されてきた。そのうちの1つは、16Vの直流信号の代わりにパルス制御信号を用いることである。パルス制御信号を使うことの欠点は、制御パルス間における時間においては監視が行われないために、抵抗の監視が連続ではないことである。代替的手法として、リストストラップの各導電性部品に2つの等しい電圧を有する制御信号を逆の極性で印加して、ユーザが結果として受ける電圧をゼロまたはゼロ近くにする手法がある。しかしながら、リストストラップの2つの導電性部品とユーザの手首との間における接触状態に差がある場合には、この手法はうまくいかない上に、これにより、静電気放電の影響を受けやすい素子に損傷を与え得る望ましくない帯電を生じることがある。
【0005】
さらなる代替的解決策として、デジタルフィルタ処理した特殊な形態の印加電圧信号を用いて、ユーザが曝される電圧レベルを数十ミリボルト未満まで低減することを含む。しかしながら、そのような監視装置は、監視結果の信頼性を損なう周辺機器が生じる特定の形態の外部電磁雑音の影響を受けることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の欠点のうちの少なくとも1つに対処するため、および/または有用な選択肢を一般に提供するための接地監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、接地監視装置であって、人の部位とグランドとの間に第1の放電経路を提供するための第1の導電部と、人の部位とグランドとの間に異なる第2の放電経路を提供するための、第1の導電部から電気的に絶縁された第2の導電部とを備えるリストストラップを備える、接地監視装置を提供する。接地監視装置はまた、第1の導電部に第1の電圧をある周波数で印加し、かつ第2の導電部に逆の第2の電圧を上記周波数で印加するための信号源と、電気回路であって、第1の導電部から第1の全信号を受信し、第2の導電部から第2の全信号を受信し、電気回路の差動およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成するための電気回路と、上記周波数に対応する、出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較するための比較器であって、警報信号が、比較器によってなされた比較に応じてアクティブ化される、比較器とを備える。
【0008】
本出願では、「リストストラップ」の語を用いることは、ユーザの手首での使用に限定されない。そうではなく、「リストストラップ」の語は、広い意味で使用されて、一般に、ユーザが装着して、そのユーザ(すなわち、人間)の一部分からグランドまでの放電経路を設ける、あらゆる帯電防止またはESDストラップを意味する。ユーザの一部分には、手首、腕、踵、足首など、すなわち人間の任意の部位を含むことができる。
【0009】
上記実施形態の利点は、誤発報を減らす、または避けるために、接地監視装置に工業電磁雑音からの「保護」を追加的に設けてあることである。具体的には、測定において少なくとも1つのチャネルを追加することによって、製造環境における外部雑音の影響を排除または低減可能にし、そのような雑音の存在に関する情報をさらに提供する。
【0010】
第1および第2の放電経路のそれぞれが少なくとも1つの抵抗器を備え得ることが好ましい。第1および第2の放電経路のそれぞれは、同じ第1の抵抗器と同じ第2の抵抗器とを備えてもよい。信号源は、双極性信号源を備え得ることが想定されているが、他の種類の信号源を使用してもよい。
【0011】
場合によっては、第1および第2の電圧は、同じ振幅を有し、例として、第1および第2の電圧のそれぞれは、上記周波数の矩形波で、第1の電圧の範囲がゼロからVmaxであり、第2の電圧の範囲がVmaxからゼロであってもよい。上記周波数は、注意深く選択され、50もしくは60Hz、または50もしくは60Hzの高調波ではないことが好ましい。上記周波数は、好適には、50Hz未満である。ある実施形態では、周波数は20Hzであるが、他の周波数も可能である。
【0012】
電気回路は、少なくとも2つの演算増幅器を備えることが好ましい。電気回路は、少なくとも2つのインピーダンスを有してもよい。
【0013】
具体的には、比較器は、上記周波数に対応する、出力信号の一部分を第1の閾値と比較するための第1の比較器と、上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較するための異なる第2の比較器とを備えてもよい。
【0014】
比較器はまた、上記周波数に対応する、出力信号の一部分と、上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分とを抽出するためのフィルタを備えてもよい。実施形態では、フィルタは、上記周波数に対応する、出力信号の一部分を抽出するための第1のフィルタと、上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を抽出するための異なる第2のフィルタとを備えてもよい。
【0015】
接地監視装置の構成の仕方に応じて、様々な条件下で警報信号を発生させ得ることが想定されている。例えば、上記周波数に対応する、出力信号の一部分が第1の閾値よりも大きく、かつ上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が第2の閾値未満である場合に、警報信号を発生させてもよい。
【0016】
別の例では、上記周波数に対応する、出力信号の一部分が第1の閾値よりも大きく、かつ上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のそれぞれの一部分が第2の閾値未満である場合に、警報信号を発生させてもよい。
【0017】
さらなる例では、第1の周波数に対応する、出力信号の一部分が第1の閾値よりも大きく、かつ上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が第2の閾値よりも大きい場合には、警報信号を発生させない。
【0018】
第1の全信号は、第1の電圧の少なくとも一部分を含んでよく、第2の全信号は、第2の電圧の少なくとも一部分を含むことが理解されよう。第1および第2の全信号のうちの少なくとも1つは、少なくとも上記周波数の雑音信号を含んでよい。第1または第2の電圧の振幅に対する雑音信号の振幅の比率は、少なくとも20であり得る。
【0019】
電気回路は、第1の値を有し、信号源の第1の出力端子を第1の導電部および第1の演算増幅器の非反転入力に接続する、第1の抵抗器と、第2の値を有し、信号源の第1の出力端子をグランドに接続する、第2の抵抗器と、第1の値を有し、信号源の第2の出力端子を第2の導電部および第2の演算増幅器の非反転入力に接続する、第3の抵抗器と、第2の値を有し、信号源の第2の出力端子をグランドに接続する、第4の抵抗器とを備え得ることが好ましい。第1の演算増幅器の出力は、第1の演算増幅器の反転入力に接続されてもよく、第2の演算増幅器の出力は、第2の演算増幅器の反転入力に接続されてもよい。
【0020】
一実施形態の具体的な構成では、第1の値を有する第1のインピーダンスは、第1の演算増幅器の出力を第3の演算増幅器の非反転入力に接続してもよく、第2の値を有する第2のインピーダンスは、第3の演算増幅器の非反転入力をグランドに接続してもよく、第1の値を有する第3のインピーダンスは、第2の演算増幅器の出力を第3の演算増幅器の反転入力に接続してもよく、第2の値を有する第4のインピーダンスは、第3の演算増幅器の反転入力をグランドに接続してもよい。
【0021】
比較器は、第1の周波数に対応する、第3の演算増幅器の出力信号の一部分を第1の閾値と比較し得ることが好ましく、また第1の周波数に対応する、第1および第2の演算増幅器の出力信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較し得ることが好ましい。
【0022】
リストストラップは、接地監視装置とは別個に設けてもよいことが理解されよう。また、このことによって第2の態様が形成され、第2の態様によれば、リストストラップに接続されるように適合される接地監視装置が提供され、リストストラップが、人の部位とグランドとの間に第1の放電経路を提供するための第1の導電部と、人の部位とグランドとの間に異なる第2の放電経路を提供するための、第1の導電部から電気的に絶縁された第2の導電部とを備え、接地監視装置が、第1の導電部に第1の電圧をある周波数で印加し、かつ第2の導電部に逆の第2の電圧を上記周波数で印加するための信号源を備える。接地監視装置は、電気回路であって、第1の導電部から第1の全信号を受信し、第2の導電部から第2の全信号を受信し、電気回路の差動およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成するための電気回路と、第1の周波数に対応する、出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、第1の周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較するための比較器であって、警報信号が、比較器によってなされた比較に応じてアクティブ化される、比較器とをさらに備える。
【0023】
1つの態様に関係する特徴は、他の態様にも適用可能であることが理解されよう。
【0024】
ここで、添付の図面を参照しながら本発明の例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】好ましい実施形態による接地監視装置の回路図である。
図2図1の接地監視装置の各点における各種信号を示すグラフである。接地監視装置は、20Hzの雑音信号に曝された状態にある。
図3図2と同じ信号を示すグラフである。ただし、接地監視装置は、50Hzの雑音信号に曝された状態にある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、好ましい実施形態による接地監視装置10の回路図である。接地監視装置10は、第1の導電部103と、第1の導電部103から電気的に絶縁された第2の導電部104とを有するリストストラップ12を含む。このようなリストストラップ12は、一般に「デュアル式」リストストラップと呼ばれるが、これは、第1および第2の導電部103、104が、リストストラップ12を装着するユーザ(すなわち、ユーザの腕)とグランド18との間に、それぞれの第1および第2の放電経路14、16を提供することによる。ユーザがリストストラップ12を装着した場合、接地監視装置10から「みた」ユーザの抵抗は、値Ropの等価皮膚抵抗器105(図1に破線で示す)として表れる。
【0027】
接地監視装置10は、第1の導電部103に第1の電圧をある制御電圧周波数で印加し、第2の導電部104に逆の第2の電圧を上記制御電圧周波数で印加するための信号源をさらに含み、この実施形態では、信号源は、電圧振幅+/−Umaxかつ制御電圧周波数fで基準正弦波信号を生成する双極性制御電圧発生器107を含む。換言すると、電圧振幅+Umaxは、第1の導電部103において印加され、逆の電圧振幅−Umaxは、第2の導電部104において印加される。この実施形態では、基準正弦波信号の電圧振幅Umaxは30mVであり、これは、一般的に16Vの直流を用いる従来の接地監視装置よりもはるかに低い。このことにより、ユーザに近接する、静電気放電の影響を受けやすい素子に対して基準正弦波信号が影響を与える可能性が低減する。
【0028】
接地監視装置10はまた、第1および第2の導電部103、104から信号を受信するための電気回路20と、警報信号をアクティブ化させるためにその出力が使用される比較器22とを含む。これらについて次に詳述する。
【0029】
双極性制御電圧発生器107の第1および第2の出力端子107a、107bは、電気回路20の対応する抵抗器106、110、108、111を介して、それぞれの第1および第2の導電部103、104に電気的に接続される。具体的には、第1の出力端子107aは、第1の抵抗器106を介して第1の導電部103に電気的に連結され、第1の出力端子107aはまた、グランド18の第2の抵抗器110に連結される。このようにして、第1および第2の抵抗器106、110を直列に介して第1の導電部103とグランド18との間に第1の放電経路14が形成され、これにより、電気的に安全な静電気拡散性経路が得られる。
【0030】
他方、第2の出力端子107bは、第3の抵抗器108を介して第2の導電部104に電気的に連結され、第2の出力端子107bはまた、グランド18の第4の抵抗器111に連結される。このようにして、第3および第4の抵抗器108、111を直列に介して第2の導電部104とグランド18との間に第2の放電経路16が形成され、これにより、別の電気的に安全な静電気拡散性経路が得られる。
【0031】
第1および第3の抵抗器106、108は、同じ値R1を有する一方、第2および第4の抵抗器110、111は、同じ値R2を有する。しかしながら、この限りではないこともあり、抵抗器106、108、110、111の値が互いに異なっていてもよいことが理解されよう。
【0032】
図1から分かるように、ユーザがリストストラップ12を装着した場合、等価皮膚抵抗器105と、双極性制御電圧発生器107と、第1および第3の抵抗器106、108とが閉ループを形成し、これにより、第1および第2の導電部103、104間の差動電圧Uopが測定され得る。差動電圧Uopが等価皮膚抵抗105の値Ropに比例して変化することから、差動電圧Uopを測定することによって、等価皮膚抵抗105を求めることができる。
【0033】
この実施形態では、電気回路20は、3つの演算増幅器(オペアンプ)109、112、117を含み、3つのオペアンプ109、112、117は、第1および第2のオペアンプ109、112が負帰還で構成され、かつ第3のオペアンプ117が差動増幅器として構成されている、1つの計装アンプとして構成されている。具体的には、双極性制御電圧発生器107の第1の出力端子107aは、第1の抵抗器106(これによって第1の導電部103に連結される)を介して第1のオペアンプ109の非反転入力109aに連結され、第1のオペアンプ109の反転入力109bは、第1のオペアンプ109の出力109cに連結される。第1のオペアンプ109の出力109cはまた、値Z1を有する第1のインピーダンス113を介して第3のオペアンプ117の非反転入力117aに連結される。第3のオペアンプ117の非反転入力117aはまた、値Z2を有する第2のインピーダンス115を介してグランド18に接続される。
【0034】
さらに、双極性制御電圧発生器107の第2の出力端子107bは、第3の抵抗器108(これによって第2の導電部104に連結される)を介して第2のオペアンプ112の非反転入力112aに連結され、第2のオペアンプ112の反転入力112bは、第2のオペアンプ112の出力112cに連結される。第2のオペアンプ112の出力112cはまた、値Z1(すなわち、第1のインピーダンス113と同じ値)を有する第3のインピーダンス114を介して第3のオペアンプ117の反転入力117bに連結される。第3のオペアンプ117の反転入力117bはまた、値Z2(すなわち、第2のインピーダンス115と同じ値)を有する第4のインピーダンス116を介して第3のオペアンプ117の出力117cに接続される。
【0035】
第1、第2および第3のオペアンプ109、112、117の出力109c、112c、117cは、比較器22のフィルタ24に連結され、この実施形態では、フィルタ24は、第3のオペアンプ117の出力117cをフィルタ処理するための第1のデジタル帯域フィルタ120を含み、第1のデジタル帯域フィルタの出力は、第1のレベル検出器121に連結される。フィルタ24は、第1および第2のオペアンプ109、112の出力109c、112cにそれぞれ連結される第2および第3のデジタル帯域フィルタ118、122の形態で、第2のフィルタをさらに含む。次いで、第2および第3のデジタル帯域フィルタ118、122の出力は、第2および第3のレベル検出器119、123に連結される。
【0036】
比較器22は、比較器22の結果に基づいて警報信号を発生させるための警報発生装置124をさらに含む。
【0037】
次に接地監視装置10の動作を説明する。
【0038】
実際には、接地監視装置10は、機械や電力線が接地監視装置10のユーザに近接して存在する製造環境などの産業環境において使用されることが理解されよう。そのため、リストストラップ12の第1および第2の導電部103、104は、差動電圧Uopの測定値を歪ませ得るかなりの振幅の電磁雑音に曝されることがあり、実際、雑音は、第1および第2の導電部103、104の両方にかかるコモンモード電圧を誘導し得る。図1には、第1の導電部103にコモンモード電圧U1cmを、また第2の導電部104にU2cmを誘導する雑音信号102を発生させる可変周波数駆動装置(VFD)101が示してある。さらに、他の機械や機器と同様に、VFD101は、接地監視装置10の精度に影響し得る50/60Hzの信号を誘導する。この実施形態の接地監視装置10をどのように構成して、監視プロセスの間、雑音の影響を除去または緩和し、有用な情報(すなわち、Uop)を雑音成分から切り分けるかについて、以下に説明する。
【0039】
まず、信号対雑音比を高めるために、双極性制御電圧発生器107の制御電圧周波数fを選択して、製造環境において典型的な持続的な雑音信号とは異なるスペクトルを有するようにする。実際、制御電圧周波数fは、50Hzもしくは60Hzとなるようには選択されないこと、または50もしくは60Hzの高調波ではないことが好ましい。制御電圧周波数fは、50Hz未満であることが好ましく、この実施形態では、制御電圧周波数fは、20Hzとなるように選択されて、接地監視装置10の適切な機能に及ぼす雑音の影響を緩和する。
【0040】
次に、電気回路20を構成して、第1の導電部103からの第1の全信号と、第2の導電部104からの第2の全信号とを受信し、電気回路20の差動およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成するようにする。第1および第2の全信号のうちの少なくとも1つは、少なくとも周波数fで雑音信号を含んでよく、第1および第2の電圧の振幅に対する雑音信号の振幅の比率は、少なくとも20であってもよい。最初、第1のオペアンプ109の出力109cは、Uop/2およびU1cmで表すことができ、それぞれ、必要な成分および不要な成分である(すなわち、第1のオペアンプ109で処理された後の第1の全信号)。同様に、第2のオペアンプ112の出力112cは、−Uop/2およびU2cmで表すことができる(第2のオペアンプ112で処理された後の第2の全信号)。このように第1、第2および第3のオペアンプ109、112、117を構成することによって、差動電圧Uopのための利得が与えられ、コモンモード電圧U1cmおよびU2cmが拒絶または低減される。しかしながら、U1cmおよびU2cmの値は全く同じではないこともあり、部品公差および精度もまた電気回路20の特性に非対称性をもたらし得ることが理解されよう。接続状態の差のため、あるいは導電部103、104のうちの一方がいくらかの電磁雑音に曝されている一方、他方の導電部103、104が雑音から遮蔽されている(例えば、ユーザの手の位置に起因して)場合には、U1cmおよびU2cmの値が異なることがある。そのため、(第1および第2のオペアンプ109、112による)増幅後であり、かつ第3のオペアンプ117の入力117a、117bに存在するコモンモード電圧間の差(U1cm−U2cm)によって、第3のオペアンプ117の出力117cにおいて、いくらか不要な電圧成分が生じることもある。
【0041】
電気回路20(すなわち、計装アンプ)の利得は、第1から第4のインピーダンス113、114、115、116の値によって規定され、第1のインピーダンス113と第3のインピーダンス114とが同じ値(Z1)を有し、第2のインピーダンス115と第4のインピーダンス116とが同じ値(Z2)を有することから、Z2とZ1との比で利得を表すことができることが理解されよう。数学的には、差動利得に基づく第3のオペアンプ117の出力117cは、次の式で表すことができる。
【数1】
【0042】
インピーダンス113、114、115、116のZ2およびZ1の値は、一般に複素数であるが、これは、第3のオペアンプ117が、前置アナログフィルタ処理の機能も提供することがあるためであることが理解されよう。アナログフィルタ部品の公差(コンデンサの精度など)の観点から、電気回路20はまた、コモンモード電圧U1cmおよびU2cmのためのコモンモード利得を与え得る。換言すると、コモンモード電圧U1cmおよびU2cmの値が等しかったとしても、第3のオペアンプの出力117cにおける不要な成分は依然として存在する。数学的には、不要な成分または雑音を含む、第3のオペアンプの出力117cにおけるコモンモード電圧U1cmおよびU2cmは、次の式で表すことができる。
【数2】

上式で、CMRRは、第3のオペアンプ117の同相信号除去比である。
【0043】
このように、出力信号は、式(1)および式(2)で定義される信号を含むことが理解されよう。
【0044】
不要な成分の存在に対処するために、第3のオペアンプ117の出力117cからの信号を受信して、第1のレベル検出器121に通すために、制御電圧周波数fに対応する、出力信号の一部分(すなわち、
【数3】

および
【数4】

によって表される)を抽出するようにデジタル帯域フィルタ120を構成する。次いで、第1のレベル検出器121は、出力信号の一部分を第1の閾値と比較する。比較に基づいて警報信号を発生させることもできるが、正確でないことがある。これは、制御電圧発生器107の制御電圧周波数の値fに等しいまたは近い周波数で高いレベルのコモン電圧を発生させ得る、先に説明したVFD101のような機械または装置が存在するためである。この種のコモン電圧雑音は、フィルタ120の出力電圧値を増大させ得るものであり、このことにより、接地監視装置10は、オペレータの抵抗が許容範囲内にあるときでさえ、警報信号または機器停止信号を発生させることがある。パワーソレノイドおよび一部の種類のパルスDCイオナイザもまた、同様の雑音を生じることがある。
【0045】
よって、この実施形態では、警報信号がアクティブ化されるべきか否かを判定するために第2のチャネルを用いることを提案する。この点において、比較器22は、制御電圧周波数fに対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値とさらに比較し、この比較に基づいて、警報信号が発生させられ、この比較は、第2のレベル検出器119において行われる。具体的には、第2のデジタル帯域フィルタ118は、制御電圧周波数fに対応する、第1の全信号の一部分(すなわち、Uop/2およびU1cm)を抽出し、第1の全信号のフィルタ処理した部分を第2のレベル検出器119に通し、第2のレベル検出器119が、フィルタ処理した部分を第2の閾値と比較する。
【0046】
制御電圧発生器107によって作られる、第2のデジタルフィルタ118の出力における最大可能交流電圧値振幅は、Umaxに等しく、数十ミリボルトであり得る。演算増幅器109の入力に、スペクトル成分fを有するコモン電圧が存在する場合には、この最大値を超え得る。このようなコモン電圧はまた、第1の帯域フィルタ120の出力に信号を生じることもあり、それにより、警報または機器停止の信号が発生させられることもある。
【0047】
さらに精度を高めるために、接地監視装置10は、第2の全信号を考慮に入れる比較のための第3のチャネルを含む。図1に示すように、第3のデジタル帯域フィルタ122は、制御電圧周波数fに対応する、第2の全信号の一部分を抽出し、第2の全信号のフィルタ処理した部分(すなわち、−Uop/2およびU2cm)を第3のレベル検出器123に通し、第3のレベル検出器123が、フィルタ処理した部分を第2の閾値と比較する。提案した第3のチャネルの使用は、導電部103のうちの一方だけが外部雑音または干渉に曝され、かつ他方の導電部104が遮蔽または直接接地されているという問題に対処するのに有用である。第2および第3の検出器119、123からの出力を追加的なパラメータとして用いて、警報信号を発生させるか否かに影響を及ぼしてもよく、この警報信号を用いて、ユーザが制御電圧周波数fに近いスペクトル成分を有する雑音または干渉の影響を受けていることを示してもよい。この種の通知は、例えば、接地監視装置10のユーザの近くにDCパルスイオナイザが適切な切り替え周波数で配置されていて、第3のチャネルを使用しなければ正確な接地監視に問題を生じ得る場合に、制御電圧周波数fを有する一定のコモンモード電圧U1cm/U2cmの存在を表示するために使用してもよい。
【0048】
このような状況下では、警報発生装置124は、第1のレベル検出器121からの出力を考慮するだけでなく、第2および第3のレベル検出器119、123(またはこれらのうちの少なくとも1つ)の出力も考慮する。この実施形態では、警報発生装置124は、次の場合に警報信号を発生させるように構成される。
(i)出力信号の(制御電圧周波数fに対応する)一部分が第1の閾値よりも大きいことを第1のレベル検出器121が検出し、かつ
(ii)第1の全信号および第2の全信号のそれぞれの(制御電圧周波数fに対応する)一部分が第2の閾値未満であることを第2および第3の検出器119、123が検出した場合。
【0049】
当然のことながら、接地監視装置10の用途や要求される精度水準に応じて、接地監視装置10は、第2または第3の検出器119、123の出力のうちの1つだけを利用するのであってもよい。そのような状況下では、出力信号の一部分が第1の閾値よりも大きい場合、および第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が第2の閾値未満である場合に、警報信号が発生させられるのであってもよい。第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が第2の閾値よりも大きい場合に警報信号を発生させられ得ることも想定されている。
【0050】
図2は、20Hz(すなわち、制御電圧周波数fに近い)のスペクトル成分が存在している外部間欠雑音102によって影響を受ける前と後の接地監視装置10の効果を説明するために、接地監視装置10の諸段における信号波形(特に、出力信号および第2のチャネル沿いの信号)を示したものである。グラフ201は、第3のオペアンプ117の出力117cにおける主電圧信号を示し、グラフ202は、デジタルフィルタ処理前に、第1のオペアンプ109の出力109cにおける二次電圧信号を示している。グラフ203は、主電圧信号に対応し、アナログ信号からデジタル信号への変換後である、第1のデジタルフィルタ120の出力におけるフィルタ処理された主電圧信号を表し、グラフ204は、二次電圧信号に対応し、アナログ信号からデジタル信号への変換後である、第2のデジタルフィルタ118の出力におけるフィルタ処理された二次電圧信号を表す。
【0051】
グラフ201の第1の部分205は、
【数5】

で表される主電圧信号を表し、このピークトゥピーク電圧は、等価皮膚抵抗105の値Ropに比例することが理解されよう。またグラフ203の第1の部分207は、対応するフィルタ処理された主信号であり、第1の閾値213よりも小さい一定の直流レベルを有する。部分205が約20Hzの略矩形対称パルス信号を呈することに言及しておきたい。
【0052】
換言すると、第1の部分205および207は、接地監視装置10が外部間欠雑音102に曝されていない場合の信号を示している。このような状況下で、グラフ202の第1の部分206は、第1のオペアンプ109の出力109cが約50Hzの小さいコモン電圧U1cmを有することを示しており、これは、グラフ204の第1の部分208に示されるような、第2のデジタルフィルタ118の出力(すなわち、フィルタ処理された二次電圧信号)におけるゼロ値に対応する。第1の部分208のゼロ値は、第2の閾値214未満であることが理解されよう。
【0053】
(リストストラップ12を装着している)ユーザが外部間欠雑音102に曝されていることの影響が、グラフ202の第2の部分210に示され、ここでは、コモン電圧U1cmの大幅なジャンプが示されている。この結果、第3のオペアンプ117の出力117cは、グラフ201の第2の部分209にみられるように増大し、そしてこれが上式(2)で表される不要な成分に対応する。雑音102の影響はさらに、グラフ203、204の第2の部分211、212にそれぞれ示されるように、両方のフィルタ120、118の出力において同様の応答を引き起こし、その結果、第1および第2のレベル検出器121、119は、(図2において抵抗警報レベル213および警報防止レベル214として表される)第1および第2の閾値のレベルを超えたことを検出する。この例では、接地監視装置10は、オペレータの抵抗の変化は、雑音干渉であり、純粋な接地の問題ではないと判定したため、警報発生装置124によって警報信号は発生させられない。
【0054】
図3は、接地監視装置10が50Hzの雑音信号に曝された場合に何が起こるかを示したものであり、差を分かりやすくするために、1000を加えた上で図2と同じ参照番号を図3でも使用する。グラフ1202の第2の部分1210において、接地監視装置10は、約50Hzの外部間欠雑音信号に曝されているが、グラフ1203、1204の第2の部分1211、1212から分かるように、デジタルフィルタ120、118の出力は、間欠雑音信号の影響を受けていない。そのため、警報発生装置124は、警報信号を発生させない。
【0055】
上記実施形態では、測定に追加的なチャネルを用いることによって、製造現場におけるある種の外部雑音の影響を排除することができ、雑音の存在に関する情報が得られることが1つの利点であることが理解されよう。換言すると、誤発報のリスクが抑えられる。さらに、提案された接地監視装置10は、既存の接地監視装置と(もしあったとしても)大きな価格差なく、廉価な方法で実施することができる。
【0056】
上記実施形態は、限定するものとして解釈されるべきではない。例えば、上記実施形態では、第2のデジタル帯域フィルタ118のパラメータは、第1のデジタル帯域フィルタ120のパラメータと厳密に同じであるが、そうでなくてもよい。さらに、フィルタ24は必ずしも必要ではない。また、帯域フィルタ120、118、122およびレベル検出器121、119、123などは、別個に示されているが、これらの装置を単一のデバイスとして実施しても別個に実施してもよいことが理解されよう。
【0057】
上記実施形態は、基準正弦波信号を制御電圧として用いているが、制御電圧は、他の形態をとってもよいことが理解されよう。例えば、制御電圧は、制御電圧周波数fの矩形波であって、(第1の導電部103に印加される)第1の電圧の範囲は、ゼロからVmaxであり、(第2の導電部104に印加される)第2の電圧の範囲は、Vmaxからゼロであってもよい。
【0058】
さらに、電気回路20は、計装アンプとして構成される3つの演算増幅器(オペアンプ)109、112、117を含む。しかしながら、電気回路20は、異なる構成であってもよく、実際、オペアンプ109、112のうちの1つを回路20から省略してもよい。
【0059】
リストストラップ12は、接地監視装置の一部を形成しなくてもよく、リストストラップ12を別個に設け、接地監視装置がリストストラップ12のプラグまたは電気コネクタを受容するためのソケットを含むことも可能である。
【0060】
以下は、本開示の項目である。
【0061】
項目1は、
人の部位とグランドとの間に第1の放電経路を提供するための第1の導電部と、
人の部位とグランドとの間に異なる第2の放電経路を提供するための、第1の導電部から電気的に絶縁された第2の導電部と
を備える、リストストラップと、
第1の導電部に第1の電圧をある周波数で印加し、かつ第2の導電部に逆の第2の電圧を上記周波数で印加するための信号源と、
電気回路であって、
第1の導電部から第1の全信号を受信し、
第2の導電部から第2の全信号を受信し、
電気回路の差動およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成する
ための電気回路と、
上記周波数に対応する、出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、
上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較するための比較器であって、警報信号が、比較器によってなされた比較に応じてアクティブ化される、比較器と、
を備える、接地監視装置である。
【0062】
項目2は、第1および第2の放電経路のそれぞれが少なくとも1つの抵抗器を備える、項目1の接地監視装置である。
【0063】
項目3は、第1および第2の放電経路のそれぞれが同じ第1の抵抗器および同じ第2の抵抗器を備える、項目1の接地監視装置である。
【0064】
項目4は、信号源が双極性信号源を備える、項目1の接地監視装置である。
【0065】
項目5は、第1および第2の電圧が同じ振幅を有する、項目1の接地監視装置である。
【0066】
項目6は、第1および第2の電圧のそれぞれがある周波数の矩形波であり、第1の電圧の範囲がゼロからVmaxであり、第2の電圧の範囲がVmaxからゼロである、項目1の接地監視装置である。
【0067】
項目7は、上記周波数が50もしくは60Hzではない、または50もしくは60Hzの高調波ではない、項目1の接地監視装置である。
【0068】
項目8は、上記周波数が50Hz未満である、項目1の接地監視装置である。
【0069】
項目9は、上記周波数が20Hzである、項目1の接地監視装置である。
【0070】
項目10は、電気回路が少なくとも2つの演算増幅器を備える、項目1の接地監視装置である。
【0071】
項目11は、電気回路が少なくとも2つのインピーダンスを備える、項目1の接地監視装置である。
【0072】
項目12は、比較器が、
上記周波数に対応する、出力信号の一部分を第1の閾値と比較するための第1の比較器と、
上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較するための異なる第2の比較器と
を備える、項目1の接地監視装置である。
【0073】
項目13は、比較器が、
上記周波数に対応する、出力信号の一部分と、
上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分と
を抽出するためのフィルタを備える、項目1の接地監視装置である。
【0074】
項目14は、フィルタが、
上記周波数に対応する、出力信号の一部分を抽出するための第1のフィルタと、
上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を抽出するための異なる第2のフィルタと
を備える、項目13の接地監視装置である。
【0075】
項目15は、警報信号が、
上記周波数に対応する、出力信号の一部分が第1の閾値よりも大きく、かつ
上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が第2の閾値未満である場合に
発生させられる、項目1の接地監視装置である。
【0076】
項目16は、警報信号が、
上記周波数に対応する、出力信号の一部分が第1の閾値よりも大きく、かつ
上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のそれぞれの一部分が第2の閾値未満である場合に
発生させられる、項目1の接地監視装置である。
【0077】
項目17は、警報信号が、
第1の周波数に対応する、出力信号の一部分が第1の閾値よりも大きく、かつ
上記周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が第2の閾値よりも大きい場合には
発生させられない、項目1の接地監視装置である。
【0078】
項目18は、
第1の全信号が第1の電圧の少なくとも一部分を含み、
第2の全信号が第2の電圧の少なくとも一部分を含む、
項目1の接地監視装置である。
【0079】
項目19は、第1および第2の全信号のうちの少なくとも1つが少なくとも上記周波数において雑音信号を含む、項目1の接地監視装置である。
【0080】
項目20は、第1または第2の電圧の振幅に対する雑音信号の振幅の比率が少なくとも20である、項目19の接地監視装置である。
【0081】
項目21は、電気回路が、
第1の値を有し、信号源の第1の出力端子を第1の導電部および第1の演算増幅器の非反転入力に接続する、第1の抵抗器と、
第2の値を有し、信号源の第1の出力端子をグランドに接続する、第2の抵抗器と、
第1の値を有し、信号源の第2の出力端子を第2の導電部および第2の演算増幅器の非反転入力に接続する、第3の抵抗器と、
第2の値を有し、信号源の第2の出力端子をグランドに接続する、第4の抵抗器と
を備える、項目1の接地監視装置である。
【0082】
項目22は、
第1の演算増幅器の出力が第1の演算増幅器の反転入力に接続され、
第2の演算増幅器の出力が第2の演算増幅器の反転入力に接続される、
項目21の接地監視装置である。
【0083】
項目23は、
第1の値を有する第1のインピーダンスが第1の演算増幅器の出力を第3の演算増幅器の非反転入力に接続し、
第2の値を有する第2のインピーダンスが第3の演算増幅器の非反転入力をグランドに接続し、
第1の値を有する第3のインピーダンスが第2の演算増幅器の出力を第3の演算増幅器の反転入力に接続し、
第2の値を有する第4のインピーダンスが第3の演算増幅器の反転入力をグランドに接続する、
項目22の接地監視装置である。
【0084】
項目24は、比較器が、
第1の周波数に対応する、第3の演算増幅器の出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、
第1の周波数に対応する、第1および第2の演算増幅器の出力信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較する、
項目23の接地監視装置である。
【0085】
項目25は、人の部位が腕である、項目1の接地監視装置である。
【0086】
項目26は、
人の部位とグランドとの間に第1の放電経路を提供するための第1の導電部と、人の部位とグランドとの間に異なる第2の放電経路を提供するための、第1の導電部から電気的に絶縁された第2の導電部とを備えるリストストラップに接続されるように構成された接地監視装置であって、
第1の導電部に第1の電圧をある周波数で印加し、かつ第2の導電部に逆の第2の電圧を上記周波数で印加するための信号源と、
電気回路であって、
第1の導電部から第1の全信号を受信し、
第2の導電部から第2の全信号を受信し、
電気回路の差動およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成する
ための電気回路と、
周波数に対応する、出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、
周波数に対応する、第1の全信号および第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較するための比較器であって、警報信号が、比較器によってなされた比較に応じてアクティブ化される、比較器と
を備える、接地監視装置である。
【0087】
本発明を詳細に説明してきたが、当業者には明らかなように、特許請求の範囲で請求した範囲から逸脱することなく、これに多くの修正をなし得る。
[発明の条項]
[条項1]
人の部位とグランドとの間に第1の放電経路を提供するための第1の導電部、および、
前記人の部位と前記グランドとの間に異なる第2の放電経路を提供するための、前記第1の導電部から電気的に絶縁された第2の導電部
を備える、リストストラップと、
前記第1の導電部に第1の電圧をある周波数で印加し、かつ前記第2の導電部に逆の第2の電圧を前記周波数で印加するための信号源と、
電気回路であって、
前記第1の導電部から第1の全信号を受信し、
前記第2の導電部から第2の全信号を受信し、
該電気回路の差動利得およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成する
ための電気回路と、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較する
ための比較器であって、警報信号が前記比較器によってなされた比較に応じてアクティブ化される、比較器と、
を具備する、接地監視装置。
[条項2]
前記電気回路が少なくとも2つの演算増幅器を備える、条項1に記載の接地監視装置。
[条項3]
前記比較器が、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分を前記第1の閾値と比較するための第1の比較器と、
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を前記第2の閾値と比較するための異なる第2の比較器と
を備える、条項1に記載の接地監視装置。
[条項4]
前記比較器が、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分と、
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分と
を抽出するためのフィルタを備える、条項1に記載の接地監視装置。
[条項5]
前記フィルタが、
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分を抽出するための第1のフィルタと、
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を抽出するための異なる第2のフィルタと
を備える、条項4に記載の接地監視装置。
[条項6]
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分が前記第1の閾値よりも大きく、かつ
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が前記第2の閾値未満である場合に、
前記警報信号が発生される、条項1に記載の接地監視装置。
[条項7]
前記周波数に対応する前記出力信号の一部分が前記第1の閾値よりも大きく、かつ
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のそれぞれの一部分が前記第2の閾値未満である場合に、
前記警報信号が発生される、条項1に記載の接地監視装置。
[条項8]
第1の周波数に対応する前記出力信号の一部分が前記第1の閾値よりも大きく、かつ
前記周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分が前記第2の閾値よりも大きい場合には
前記警報信号が発生されない、条項1に記載の接地監視装置。
[条項9]
前記電気回路が、
第1の値を有する第1の抵抗器であって、前記信号源の第1の出力端子を前記第1の導電部および第1の演算増幅器の非反転入力に接続する第1の抵抗器と、
第2の値を有する第2の抵抗器であって、前記信号源の前記第1の出力端子を前記グランドに接続する第2の抵抗器と、
前記第1の値を有する第3の抵抗値であって、前記信号源の第2の出力端子を前記第2の導電部および第2の演算増幅器の非反転入力に接続する第3の抵抗器と、
前記第2の値を有する第4の抵抗器であって、前記信号源の前記第2の出力端子を前記グランドに接続する第4の抵抗器と
を備える、条項1に記載の接地監視装置。
[条項10]
人の部位とグランドとの間に第1の放電経路を提供するための第1の導電部と、前記人の部位と前記グランドとの間に異なる第2の放電経路を提供するための、前記第1の導電部から電気的に絶縁された第2の導電部とを備えるリストストラップに接続されるように構成された接地監視装置であって、
前記第1の導電部に第1の電圧をある周波数で印加し、かつ前記第2の導電部に逆の第2の電圧を前記周波数で印加するための信号源と、
電気回路であって、
前記第1の導電部から第1の全信号を受信し、
前記第2の導電部から第2の全信号を受信し、
該電気回路の差動利得およびコモンモード利得に基づいて出力信号を形成する
ための電気回路と、
第1の周波数に対応する前記出力信号の一部分を第1の閾値と比較し、
前記第1の周波数に対応する前記第1の全信号および前記第2の全信号のうちの少なくとも1つの一部分を第2の閾値と比較する
ための比較器であって、警報信号が前記比較器によってなされた比較に応じてアクティブ化される、比較器と、
を具備する、接地監視装置。
図1
図2
図3