(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の構成を適用しても、ポンプ起動時に、例えばポンプ駆動装置の不具合等、何らかの原因で動圧軸受ポンプの羽根車の回転数が浮上最小回転数まで増加しない可能性がある。そのような場合、そのままポンプ起動を続けていると、回転している羽根車と動圧軸受部とが接触している時間が長くなってしまい、動圧軸受ポンプの耐久性が低下してしまう。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、動圧軸受ポンプの耐久性を向上させることができる動圧軸受ポンプシステム、動圧軸受ポンプユニットの駆動制御装置、動圧軸受ポンプユニットの駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としての動圧軸受ポンプシステムは、
羽根車、及び前記羽根車を回転軸線回りに回転可能に支持する動圧軸受部が形成されている固定体
、血液を吸い込む吸込口、及び血液を吐出する吐出口を有する動圧軸受ポンプと、供給される電力に応じて前記動圧軸受ポンプの羽根車を回転させるポンプ駆動装置と、前記ポンプ駆動装置を制御することによって、前記動圧軸受ポンプを作動させる駆動制御装置と、を備え、前記駆動制御装置は、前記羽根車の回転数を変えるための回転数操作端と、前記回転数操作端の操作量が操作量0から増加する過程で、前記操作量0から予め定められた特定操作量までの初期操作区間では、前記初期操作区間の操作量変化に関わらず、前記回転数操作端の操作量が前記特定操作量になったことを条件として、前記羽根車が前記動圧軸受部から浮上して非接触状態で支持される浮上最小回転数まで予め定められた回転数変化率で前記羽根車の回転数が増加するよう、前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御し、前記回転数操作端の操作量が前記特定操作量以上では、前記回転数操作端の操作量に前記羽根車の回転数が対応するよう前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御する電力制御部と、前記ポンプ駆動装置の駆動状態を示すパラメータを検知する検知部と、前記電力制御部が、前記浮上
最小回転数まで前記予め定められた回転数変化率で前記羽根車の回転数が増加するよう、前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御している過程で、前記検知部が検知した前記ポンプ駆動装置の駆動状態を示すパラメータが予め定められた正常範囲内であるか否かを判断し、前記正常範囲内ではないと判断すると、前記電力制御部に対して前記ポンプ駆動装置への電力供給の停止を指示する判断部と、を備
えている。
【0010】
この動圧軸受ポンプシステムでは、ポンプ起動時に、羽根車の回転数を浮上最小回転数まで増加させる過程で、ポンプ駆動装置の駆動状態を示すパラメータが予め定められた正常範囲内でない場合に、ポンプ駆動装置への電力供給を停止させる。よって、この動圧軸受ポンプシステムでは、回転している羽根車と動圧軸受部とが接触している時間が長くなるのを防ぐ。
【0011】
ここで、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記駆動制御装置は、前記ポンプ駆動装置の停止後、前記回転数操作端の操作量が0に戻ったと認識された場合に、前記ポンプ駆動装置を再起動可能とするようにしてもよい。これにより、ポンプ再起動を、オペレータが確認して行うことができる。
【0012】
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記駆動制御装置は、前記ポンプ駆動装置の再起動が、予め定めた規定回数に到達したら、前記ポンプ駆動装置の再起動を制限するようにしてもよい。
これにより、再起動を過度に繰り返すと何らかの不利益が生じる場合に、これを防ぐことができる。
【0013】
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記駆動制御装置は、前記ポンプ駆動装置の駆動状態を示すパラメータが前記正常範囲内ではないと判断された場合、前記ポンプ駆動装置に生じた異常の原因が解消されたことを示す入力がなされたら、前記ポンプ駆動装置を再起動可能とするようにしてもよい。
このようにして、ポンプ駆動装置の停止後、ポンプ駆動装置の駆動状態に生じた異常が解消されない限り、ポンプを再起動できないようにした。これにより、ポンプを再起動した場合に、再び駆動状態に異常が生じるのを防ぐことができる。
【0014】
また、前記動圧軸受ポンプにおいて、前記ポンプ駆動装置の駆動状態を示すパラメータが前記正常範囲内であると前記判断部が判断し、前記羽根車の回転数が前記浮上最小回転数に到達した後、前記電力制御部は、前記回転数操作端の操作量が一旦前記特定操作量以上になると、前記操作量が前記特定操作量未満になっても、前記操作量が操作量0にならない限り、前記羽根車の回転数が前記浮上最小回転数を維持するよう前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御してもよい。
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記電力制御部は、前記回転数操作端の操作量が一旦前記特定操作量以上になった後に該操作量が操作量0になると、前記羽根車の回転数が前記浮上最小回転数から0になるまで予め定められた回転数変化率で該回転数が減少するよう前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御してもよい。
【0015】
この動圧軸受ポンプシステムでは、ポンプ停止時において、回転数操作端の操作量が操作量0になると、羽根車の回転数が浮上最小回転数から0になるまで予め定められた回転数変化率で回転数が減少する。このため、動圧軸受ポンプシステムでは、ポンプ停止時において、回転している羽根車と動圧軸受部とが接触している時間を短くすることができる。
【0016】
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記回転数操作端は、前記ポンプ駆動装置への電力の供給及び切断を操作するスイッチ機能を有し、前記操作量0の前記回転数操作端の位置はオフ位置であり、前記特定操作量の回転数操作端の位置はオン位置であってもよい。
【0017】
この動圧軸受ポンプシステムでは、回転数操作端がポンプ駆動装置のスイッチ機能も兼ねているため、動圧軸受ポンプが一旦駆動すると、回転数操作端の操作量が中途半端な操作量のときに、動圧軸受ポンプを停止させることができず、起動時に、回転数操作端の操作量が中途半端な操作量になっていることはない。
【0018】
また、上記の場合、前記電力制御部は、前記回転数操作端が前記オン位置から前記オフ位置側になると、前記羽根車の回転数が0になるまで予め定められた回転数変化率で該回転数が減少するよう前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御してもよい。
【0019】
この動圧軸受ポンプシステムでは、ポンプ停止時において、回転数操作端がオン位置からオフ位置側になると、羽根車の回転数が浮上最小回転数から0になるまで予め定められた回転数変化率で回転数が減少する。このため、この動圧軸受ポンプシステムでは、ポンプ停止時において、回転している羽根車と動圧軸受部とが接触している時間を短くすることができる。
【0020】
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記動圧軸受ポンプの状態を示す表示部を有し、前記表示部は、前記浮上最小回転数又は該浮上最小回転数に対応する前記動圧軸受ポンプの吐出量を表示してもよい。
【0021】
この動圧軸受ポンプシステムでは、オペレータは、当該動圧軸受ポンプの浮上最小回転数、又は浮上最小回転数に対応する動圧軸受ポンプの吐出量を認識することができる。
【0022】
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記電力制御部が収納されていると共に前記回転数操作端が外部に取り付けられている筐体を有し、前記筐体には、前記回転数操作端の前記特定操作量の位置を示す印が付されていてもよい。
【0023】
この動圧軸受ポンプシステムでは、オペレータは、回転数操作端の特定操作量の位置、つまり、ポンプ回転数を浮上最低回転数にするための操作量の位置を認識することができる。
【0024】
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記羽根車の回転数を予め定められた周期で増減させるための周期変化操作端を有し、前記電力制御部は、前記回転数操作端の操作量が前記特定操作量以上の場合に、前記周期変化操作端が操作されると、前記羽根車の回転数が予め定められた周期で増減するよう、前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御してもよい。
【0025】
この動圧軸受ポンプシステムでは、羽根車の回転数を予め定められた周期で増減変化させることがきる。このため、例えば、ポンプケーシング内に気泡等が溜まっている場合に、羽根車の回転数を増減変化させることで、気泡をポンプケーシング外へ効率的に排出することができる。
【0026】
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記羽根車の回転数を予め定められた周期で増減させるための周期変化操作端を有し、前記電力制御部は、前記回転数操作端の操作量が前記特定操作量以上の場合に、前記周期変化操作端が操作されると、前記羽根車の回転数が予め定められた周期で増減するよう、前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御するようにしてもよい。
【0027】
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記動圧軸受ポンプの前記羽根車には、永久磁石で形成された従動磁石が設けられ、前記ポンプ駆動装置は、前記従動磁石と磁気結合しつつ前記回転軸線回りで回転する回転磁界を発生させる回転磁界発生手段を有し、前記駆動制御装置は、前記回転磁界の回転数を制御することで前記羽根車の回転数を制御するようにしてもよい。
【0028】
この場合、前記回転磁界発生手段は、永久磁石で形成された駆動磁石と、前記駆動磁石を前記従動磁石と磁気結合している状態で前記回転軸線回りに回転させるモータと、を有するようにしてもよい。
【0029】
この動圧軸受ポンプシステムでは、ポンプケーシング内で羽根車を回転させるために、ケーシングを貫通する回転軸が不用になる。このため、当該動圧軸受ポンプシステムでは、動圧軸受ポンプが血液を搬送する人工心臓ポンプである場合、ケーシング内からの血液の漏れを無くすことができる上に、回転軸がケーシングを貫通する部分での血液の溶血や血栓の発生を無くすことができる。
【0030】
また、前記動圧軸受ポンプシステムにおいて、前記電力制御部は、前記回転数操作端の操作量が前記特定操作量以上の場合で、前記回転数操作端の操作量の単位時間あたりの操作量である操作量変化率が予め定められた値を超える場合には、前記回転磁界の回転数の単位時間あたりの回転数変化量である回転数変化率が予め定めた値になるよう、前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御するようにしてもよい。
【0031】
この動圧軸受ポンプシステムでは、回転磁界の回転に対する従動磁石の脱調を防ぐことができる。
【0032】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としての動圧軸受ポンプユニットの駆動制御装置は、
羽根車、及び該羽根車を回転軸線回りに回転可能に支持する動圧軸受部が形成されている固定体
、血液を吸い込む吸込口、及び血液を吐出する吐出口を有する動圧軸受ポンプと、供給される電力に応じて該動圧軸受ポンプの羽根車を回転させるポンプ駆動装置と、を備えている動圧軸受ポンプユニットの駆動制御装置において、前記羽根車の回転数を変えるための回転数操作端と、前記回転数操作端の操作量が操作量0から増加する過程で、前記操作量0から予め定められた特定操作量までの初期操作区間では、前記初期操作区間の操作量変化に関わらず、前記回転数操作端の操作量が前記特定操作量になったことを条件として、前記羽根車が前記動圧軸受部から浮上して非接触状態で支持される浮上最小回転数まで予め定められた回転数変化率で前記羽根車の回転数が増加するよう、前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御し、前記回転数操作端の操作量が前記特定操作量以上では、前記回転数操作端の操作量に前記羽根車の回転数が対応するよう前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御する電力制御部と、前記ポンプ駆動装置の駆動状態を示すパラメータを検知する検知部と、前記電力制御部が、前記浮上
最小回転数まで前記予め定められた回転数変化率で前記羽根車の回転数が増加するよう、前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御している過程で、前記検知部が検知した前記ポンプ駆動装置の駆動状態を示すパラメータが予め定められた正常範囲内であるか否かを判断し、前記正常範囲内ではないと判断すると、前記電力制御部に対して前記ポンプ駆動装置への電力供給の停止を指示する判断部と、を備
えている。
【0033】
また、上記目的を達成するための発明に係る一態様としての動圧軸受ポンプユニットの駆動制御方法は、
羽根車、及び前記羽根車を覆うと共に前記羽根車を回転軸線回りに支持する動圧軸受部
、血液を吸い込む吸込口及び血液を吐出する吐出口が形成されているケーシングを有する動圧軸受ポンプと、供給される電力に応じて前記動圧軸受ポンプの羽根車を回転させるポンプ駆動装置と、を備え、回転数操作端の操作量に応じて前記羽根車を回転させる動圧軸受ポンプユニットの駆動制御方法において、前記回転数操作端の操作量が操作量0から増加する過程で、前記操作量0から予め定められた特定操作量までの初期操作区間では、前記初期操作区間の操作量変化に関わらず、前記回転数操作端の操作量が前記特定操作量になったことを条件として、前記羽根車が前記動圧軸受部から浮上して非接触状態で支持される浮上最小回転数まで予め定められた回転数変化率で前記羽根車の回転数が増加するよう前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御し、前記回転数操作端の操作量が前記特定操作量以上では、前記回転数操作端の操作量に前記羽根車の回転数が対応するよう前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御するとともに、前記浮上
最小回転数まで前記予め定められた回転数変化率で前記羽根車の回転数が増加するよう、前記ポンプ駆動装置へ供給する電力を制御している過程で、前記検知部が検知した前記ポンプ駆動装置の駆動状態を示すパラメータが予め定められた正常範囲内であるか否かを判断し、前記正常範囲内ではないと判断すると、前記電力制御部に対して前記ポンプ駆動装置への電力供給の停止を指示
する。
【発明の効果】
【0034】
この発明では、ポンプ起動時に、羽根車の回転数を浮上最小回転数まで増加させる過程で、ポンプ駆動装置の駆動状態を示すパラメータが予め定められた正常範囲内でない場合に、ポンプ駆動装置への電力供給を停止させる。このため、本発明によれば、回転している羽根車と動圧軸受部とが接触している時間が長くなるのを防ぎ、動圧軸受ポンプの耐久性を向上させることできる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る動圧軸受ポンプシステムの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
「第一実施形態」
まず、動圧軸受ポンプシステムの第一実施形態について、
図1〜
図12を用いて説明する。
【0038】
本実施形態の動圧軸受ポンプシステムは、
図1に示すように、動圧軸受ポンプ100と、この動圧軸受ポンプ100を駆動させるポンプ駆動装置200と、ポンプ駆動装置200による動圧軸受ポンプ100の駆動を制御する駆動制御装置300と、を備えている。なお、本実施形態では、動圧軸受ポンプ100とポンプ駆動装置200とで、動圧軸受ポンプユニット1を構成している。
【0039】
動圧軸受ポンプ100は、血液を搬送する人工心臓ポンプである。この動圧軸受ポンプ100は、
図5に示すように、密閉型の羽根車10と、この羽根車10を回転軸線A回りに回転可能に覆うポンプケーシング60と、を備えている。
【0040】
ポンプケーシング60には、血液を吐出するための吐出口(
図2及び
図3参照)7が形成されていると共に、回転軸線Aの延長線上に血液を吸い込むための吸込口6が形成されている。なお、以下では、回転軸線Aが延びている軸線方向Daで、ポンプケーシング60の吸込口6側を前側、その反対側を後側とする。また、回転軸線Aに垂直な方向な径方向Drで、回転軸線Aに近づく向き側を内側、回転軸線Aから遠ざかる向き側を外側とする。
【0041】
羽根車10は、回転軸線Aを中心として設けられた複数の羽根11と、複数の羽根11の前側を覆う前シュラウド20と、複数の羽根11の後側を覆う後シュラウド40と、を有している。この羽根車10は、以上のように、複数の羽根11の前後が前シュラウド20及び後シュラウド40により覆われることにより、密閉型の羽根車を成している。羽根車10の複数の羽根11、前シュラウド20、後シュラウド40は、それぞれ、樹脂による一体成形品で、これらは、互いに接着剤により接合されている。
【0042】
前シュラウド20は、回転軸線Aを中心として円筒状を成し、軸線方向Daの前側の開口がポンプケーシング60の吸込口6と対向する羽根車入口12を成す入口筒部21と、入口筒部21の後端に設けられ、複数の羽根11の前側を覆う前側板部31と、を有している。また、後シュラウド40は、複数の羽根11の後側を覆う後側板部41と、後側板部41に後端に設けられ、回転軸線Aを中心として円柱状の軸部51と、を有している。
【0043】
前シュラウド20の前側板部31及び後シュラウド40の後側板部41は、軸線方向Daから見た形状がいずれも回転軸線Aを中心とした円形である。前側板部31と後側板部41とは、軸線方向Daに離れている。これら前側板部31と後側板部41との間に複数の羽根11が固定されている。前側板部31と後側板部41との間であって径方向Drの外縁は、羽根車出口13を成している。入口筒部21内、及び前側板部31と後側板部41との間であって複数の羽根11の相互間は、羽根車内流路Prを形成している。
【0044】
後シュラウド40の軸部51には、軸線方向Daに回転軸線A上を貫通し、軸部51の後端面53とポンプケーシング60との間と羽根車内流路Prとを連通させる貫通孔56が形成されている。この軸部51には、その外周面52と貫通孔56の内周面との間の位置に、永久磁石で形成された複数の従動磁石19が埋め込まれている。
【0045】
ポンプケーシング60は、羽根車10の前シュラウド20を覆うポンプ前ケーシング61と、羽根車10の後シュラウド40を覆うポンプ後ケーシング81とを有している。
【0046】
ポンプ前ケーシング61は、吸込ホースが接続される略円筒状の吸込ホース接続管部62と、吸込ホース接続管部62の後端から後側に向って次第に内径が拡径されている拡径管部65と、拡径管部65の後端に設けられ前シュラウド20の入口筒部21の外周面22と間隔を開けて対向する内周面(前動圧軸受面、動圧軸受部)68が形成されている前軸受形成部67と、前軸受形成部67の後端に設けられ前シュラウド20の前側板部31を覆う前ケーシング本体部71と、を有している。
【0047】
吸込ホース接続管部62の前端は開口しており、この開口がポンプケーシング60の吸込口6を成している。
【0048】
前ケーシング本体部71は、前軸受形成部67の後端から外側に広がり、前シュラウド20の前側板部31の前面32と軸線方向Daに間隔をあけて対向する平板リング状の前面対向部72と、回転軸線Aを中心として略円筒状を成し、前面対向部72の外周縁から後側に延びる前本体筒部75と、を有している。前本体筒部75の内周面76の回転軸線Aに対して垂直な断面での形状は、ボリュート形状を成している。この前本体筒部75の内周面76は、前シュラウド20の前側板部31の外周縁と間隔をあけて対向している。
【0049】
ポンプ後ケーシング81は、前ケーシング本体部71の後端に設けられ後シュラウド40の後側板部41を覆う後ケーシング本体部91と、後ケーシング本体部91に設けられ後シュラウド40の軸部51の外周面52と間隔をあけて対向する内周面83が形成されている後軸受形成部82と、後軸受形成部82の後端に設けられ後シュラウド40の軸部51と軸線方向Daに間隔をあけて対向する平板円形の後壁板部85と、を有している。
【0050】
後ケーシング本体部91は、回転軸線Aを中心として略円筒状を成し、前ケーシング本体部71の後端から後側に延びる後本体筒部92と、後本体筒部92の後端から内側に広がり、後シュラウド40の後側板部41の後面42と軸線方向Daに間隔をあけて対向する平板リング状の後面対向部95と、を有している。後本体筒部92の内周面93は、前本体筒部75の内周面76に連続するよう形成されている。この後面対向部95の内縁に、ここから後方に延在するよう後軸受形成部82が設けられている。
【0051】
図2及び
図3に示すように、ポンプケーシング60は、吐出ホースが接続される略円筒状の吐出ホース接続管部9を有している。略円筒状の吐出ホース接続管部9の軸Adは、回転軸線Aに対して垂直な面に平行である。また、この吐出ホース接続管部9は、その軸Adを通る平面で前後方向に二分割されている。二分割された吐出ホース接続管部9の一方は、接続管前割部78として、ポンプ前ケーシング61の前本体筒部75に設けられている。二分割された吐出ホース接続管部9の他方は、接続管後割部98として、ポンプ後ケーシング81の後本体筒部92に設けられている。この吐出ホース接続管部9の外側端は開口しており、この開口がポンプケーシング60の吐出口7を成している。
【0052】
ポンプ前ケーシング61及びポンプ後ケーシング81は、それぞれ、樹脂による一体成形品である。ポンプ前ケーシング61とポンプ後ケーシング81とは、接着剤により接合されている。
【0053】
図4及び
図6に示すように、ポンプ駆動装置200は、回転する出力軸211を有するモータ210と、有底円筒状を成すカップ220と、カップ220の内周側に固定されている複数の駆動磁石219と、モータ210及びカップ220を覆う駆動装置ケーシング230と、駆動装置ケーシング230に装着された動圧軸受ポンプ100の装着を維持するためのロック部材250と、を備えている。
【0054】
カップ220は、例えば、強磁性材であるSS400等の炭素鋼で形成され、複数の駆動磁石219のヨークとしての役目を担っている。このカップ220は、円筒状のカップ円筒部221と、このカップ円筒部221の一方の開口を塞ぐ平板円形のモータ接続部225とを有している。モータ接続部225上であって、カップ円筒部221の軸の延長線上には、モータ210の出力軸211が固定されている。カップ円筒部221の内周側には、前述したように複数の駆動磁石219が固定されている。この駆動磁石219は、永久磁石であり、例えば、Nd(ネオジウム)磁石である。
【0055】
カップ円筒部221の内径は、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の外径よりも大きい。また、カップ円筒部221の軸から各駆動磁石219の内面までの半径方向の距離の2倍の長さ(以下、磁石配列径とする)は、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の外径よりも大きい。
【0056】
駆動装置ケーシング230は、有底円筒状のケーシング本体231と、ケーシング本体231の開口を塞ぐキャップ241と、を有している。
【0057】
ケーシング本体231は、例えば、常磁性材であるAl(アルミニウム)合金で形成されている。ケーシング本体231は、内径がカップ220の外径及びモータ210の外径よりも大きい円筒状のケーシング円筒部232と、ケーシング円筒部232の一方の開口を塞ぐ平板円形のケーシング底部235と、を有している。
【0058】
モータ210は、このケーシング本体231内に入れられ、ケーシング底部235にネジ236で固定されている。ケーシング円筒部232の外周の一部は、径方向Drに凹凸形状を成し、凸部が放熱フィン233を形成している。また、ケーシング円筒部232の他の一部には、モータ210の電源ケーブルを通すための電源ケーブル板234を構成している。
【0059】
キャップ241は、例えば、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)樹脂等の樹脂で形成されている。このキャップ241は、有底円筒状を成しポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82及び後壁板部85が内側に嵌まり込むポンプ嵌合部242と、有底円筒状のポンプ嵌合部242の開口縁から外側に広がり平板リング状を成すポンプ受け部244と、ポンプ受け部244の外周縁に形成されケーシング本体231の開口縁部と係合する係合部246と、を有している。
【0060】
有底円筒状のポンプ嵌合部242の内径は、ポンプケーシング60の後軸受形成部82の外径と実質的に同じである。よって、キャップ241のポンプ嵌合部242内に、ポンプケーシング60の後軸受形成部82を嵌めることができる。また、このポンプ嵌合部242は、その外径がカップ円筒部221の内径及び前述の磁石配列径よりも小さく、有底円筒状のカップ220内に、このカップ220に固定されている駆動磁石219と非接触状態で入り込んでいる。
【0061】
ポンプケーシング60の後軸受形成部82を駆動装置ケーシング230のキャップ241のポンプ嵌合部242内に嵌め込んで、動圧軸受ポンプ100をポンプ駆動装置200に取り付ける。すると、動圧軸受ポンプ100の軸部51内に埋め込まれている従動磁石19と、ポンプ駆動装置200のカップ220に固定されている駆動磁石219とが、径方向Drにおいて非接触で対向し、両磁石が磁気結合した状態になる。この状態でモータ210が駆動して、その出力軸211と共に駆動磁石219が回転すると、この駆動磁石219と磁気結合している動圧軸受ポンプ100の従動磁石19も、駆動磁石219の回転に伴って、回転軸線A回りに回転する。このため、ポンプ駆動装置200の駆動磁石219が回転すると、従動磁石19と共にこの従動磁石19が内部に埋め込まれている羽根車10も、駆動磁石219の回転に同期して回転軸線A回りに回転する。
【0062】
駆動制御装置300は、
図1に示すように各種演算処理等を実行するコンピュータ(電力制御部、判断部)310と、各種情報を表示するディスプレイ320と、各部へ電力を供給する電源回路330と、電源回路330からの電力をコンピュータ310からの指示に応じた電力に変換して、ポンプ駆動装置200のモータ210に供給する電力変換回路(電力制御部)335と、これらを収納する筐体340と、駆動制御装置300を起動させるための電源スイッチ355と、羽根車10の回転数を変えるための回転数ボリューム(回転数操作端)350と、羽根車10の回転数を予め定められた周期で増減させるための周期変化スイッチ(周期変化操作端)356と、を有している。
【0063】
回転数ボリューム350は、可変抵抗器であり、ボリューム摘み351と、このボリューム摘み351に取り付けられている導体352と、この導体352に接触している抵抗体353と、を有している。導体352と抵抗体353との間の電圧は、ボリューム摘み351の操作に応じて変化する。コンピュータ310には、このボリューム摘み351の操作に応じて移動する導体352と抵抗体353との間の電圧が入力される。なお、本実施形態では、ボリューム摘み351の操作は、
図7に示すように、このボリューム摘み351を回転させることである。従って、この回転数ボリューム350の操作量とは、ボリューム摘み351の回転量のことである。このボリューム摘み351が設けられている筐体340には、回転数ボリューム350の操作量が操作量0を示す0操作量マーク341と、回転数ボリューム350の操作量が予め定めた特定操作量Sであることを示すS操作量マーク342とが付されている。
【0064】
電源スイッチ355及び周期変化スイッチ356は、いずれも、コンピュータ310に電気的に接続されている。このため、これらのスイッチ355,356が操作されると、その旨がコンピュータ310に入力される。
【0065】
また、駆動制御装置300において、後に詳述するように、ポンプ駆動装置200による動圧軸受ポンプ100の駆動を制御するため、コンピュータ310は、電力変換回路335からモータ210に供給する電力、モータ210の駆動状態を監視する。このため、電力変換回路335には、モータ210に供給する電流及び電圧を検出する検出回路(図示無し)が備えられている。また、モータ210には、モータ210の回転数を検出するため、モータ210の回転に伴って発生する磁気パルスを検出するセンサ(検知部)339が設けられている。
【0066】
前述したように、動圧軸受ポンプ100の羽根車10の回転は、駆動磁石219の回転、すなわちモータ210の出力軸211の回転に同期する。このため、羽根車10の回転数を制御する場合、モータ210の出力軸211の回転数を制御すればよい。このため、駆動制御装置300は、電力変換回路335からモータ210に供給される電力を制御することで、モータ回転数を制御する。
【0067】
モータ回転数制御の方法としては、直流モータでは、例えば、直流電力の電圧を制御する方法、交流モータでは、例えば、交流電力の電圧を制御する方法、交流電力の周波数を制御する方法等、モータの種類に応じて各種方法がある。
【0068】
例えば、モータ210が交流モータで、このモータ210に供給する交流電圧の周波数を制御することでモータ回転数を制御する場合、コンピュータ310は、基本的に回転数ボリューム350の操作量に応じた周波数の値を示す制御信号を電力変換回路335に送る。電力変換回路335は、電源回路330からの交流電力を、この制御信号が示す値の周波数の交流電力に変換して、モータ210に供給する。この結果、モータ210の出力軸211は、基本的に回転数ボリューム350の操作量に応じた回転数で回転する。
【0069】
なお、本実施形態では、コンピュータ310と電力変換回路335とで電力制御部を構成している。また、以下で説明するコンピュータ310による処理は、コンピュータ310のメモリ中に予めインストールされているプログラムに従って、コンピュータ310のCPUが実行する。
【0070】
次に、以上で説明した動圧軸受ポンプシステムの動作について説明する。
【0071】
まず、動圧軸受ポンプシステムの概略操作、及びこの操作に基づく当該システムの概略動作について説明する。
【0072】
動圧軸受ポンプ100を駆動させる際には、オペレータは、まず、動圧軸受ポンプ100の吸込ホース接続管部62に吸込ホースを接続すると共に、吐出ホース接続管部9に吐出ホースを接続する。
【0073】
次に、ポンプケーシング60の後軸受形成部82を駆動装置ケーシング230のキャップ241のポンプ嵌合部242内に嵌め込んで、動圧軸受ポンプ100をポンプ駆動装置200に取り付ける。この際、ポンプケーシング60の後面対向部95とキャップ241のポンプ受け部244とが接する。次に、ロック部材250により、ポンプケーシング60を駆動装置ケーシング230に固定する。
【0074】
動圧軸受ポンプユニット1は、この状態で、動圧軸受ポンプ100の軸部51内に埋め込まれている従動磁石19と、ポンプ駆動装置200のカップ220に固定されている駆動磁石219とが、径方向Drにおいて非接触状態で対向し、磁気的に結合している。また、モータ210の出力軸211は、動圧軸受ポンプ100の回転軸線Aの延長線上に位置している。
【0075】
なお、以上では、吸込ホースや吐出ホースの接続後に、動圧軸受ポンプ100をポンプ駆動装置200に取り付けているが、動圧軸受ポンプ100の取付後に、吸込ホースや吐出ホースの接続を行ってもよい。
【0076】
次に、駆動制御装置300の電源スイッチ355を操作して、この駆動制御装置300を起動させる。この際、駆動制御装置300のコンピュータ310及びディスプレイ320に電源回路330からの電力が供給され、これらが起動する。そして、コンピュータ310は、ディスプレイ320に対して画像信号を送り、この画像信号に応じた内容をディスプレイ320に表示させる。ディスプレイ320には、例えば、
図7に示すように、現在のポンプ吐出流量321、現在のポンプ回転数(羽根車10の回転数)322、ポンプ運転状態323、ポンプ最大回転数324、ポンプ最大回転数時の吐出流量であるポンプ最大流量325、ポンプ最小回転数326、ポンプ最小回転数時の吐出流量であるポンプ最小流量327等が表示される。なお、この時点で、動圧軸受ポンプ100は駆動していないため、ディスプレイ320には、現在のポンプ吐出流量として0(L/min)、ポンプ回転数として0(RPM)、ポンプ運転状態として、例えば「停止」が表示される。
【0077】
次に、オペレータは、駆動制御装置300の回転数ボリューム350を操作する。この回転数ボリューム350は、ポンプ駆動装置200への電力の供給に関するスイッチ機能、つまり動圧軸受ポンプ100の駆動スイッチ機能を兼ねており、この回転数ボリューム350を操作することで、ポンプ駆動装置200のモータ210に電力が供給され、このモータ210が駆動する。
【0078】
ポンプ駆動装置200のモータ210が駆動し、このモータ210の出力軸211が回転すると、この出力軸211に固定されているカップ220及びカップ220に固定されている複数の駆動磁石219が動圧軸受ポンプ100の回転軸線A回りに回転する。ポンプ駆動装置200の駆動磁石219が回転すると、前述したように、この駆動磁石219と磁気結合している動圧軸受ポンプ100の従動磁石19も、駆動磁石219の回転に伴って、回転軸線A回りに回転する。動圧軸受ポンプ100の従動磁石19は、羽根車10の軸部51内に埋め込まれている。このため、ポンプ駆動装置200の駆動磁石219が回転すると、この従動磁石19と共に羽根車10は、ポンプケーシング60内で回転軸線A回りに回転する。
【0079】
ポンプケーシング60内で羽根車10が回転し始めると、
図6に示すように、ポンプケーシング60の吸込口6からポンプケーシング60内に血液が吸い込まれる。ポンプケーシング60内に吸い込まれた血液は、羽根車入口12から羽根車10内の羽根車内流路Prに入る。
【0080】
羽根車内流路Pr内に入った血液は、回転する複数の羽根11から遠心力を受けて、羽根車出口13から流出した後、ポンプケーシング60の吐出口7から吐出する。
【0081】
羽根車出口13から流出した血液の一部は、ポンプ前ケーシング61の前面対向部72の内面73と前シュラウド20の前側板部31の前面32との間から、ポンプ前ケーシング61の前軸受形成部67の内周面68と前シュラウド20の入口筒部21の外周面22との間を経て、ポンプ前ケーシング61の拡径管部65内に戻る。そして、再び、羽根車入口12から羽根車内流路Prに入る。
【0082】
また、羽根車出口13から流出した血液の他の一部は、ポンプ後ケーシング81の後面対向部95の内面96と後シュラウド40の後側板部41の後面42との間から、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の内周面(後動圧軸受面、動圧軸受部)83と後シュラウド40の軸部51の外周面52との間、ポンプ後ケーシング81の後壁板部85の内面86と後シュラウド40の軸部51の後端面53との間、さらに、後シュラウド40の貫通孔56を経て、羽根車内流路Prに戻る。
【0083】
ポンプ前ケーシング61の前軸受形成部67の内周面68の母線と前シュラウド20の入口筒部21の外周面22の母線とは、互いに平行である。言い換えると、前軸受形成部67の内周面68と入口筒部21の外周面22との間隔は、軸線方向Daにおいて一定である。また、ポンプ前ケーシング61の前軸受形成部67の内周面68、及び前シュラウド20の入口筒部21の外周面22の回転軸線Aに対して垂直な断面形状は、いずれも円である。このため、前軸受形成部67の内周面68と入口筒部21の外周面22とは、それぞれ、動圧ラジアル軸受面を成し、両面68,22間を流れる血液が潤滑流体として機能する。よって、羽根車10は、羽根車10の入口筒部21の部分がポンプケーシング60により、径方向Drに非接触で回転可能に支持される。なお、羽根車10の回転開始時等、羽根車10の回転数が低いときには、前軸受形成部67の内周面68(以下、この内周面68を前動圧軸受面68とする)の一部と入口筒部21の外周面22の一部とは、互いに接触しており、羽根車10の回転数が所定回転数以上になると、両面68,22間に働く流体の動圧により、前動圧軸受面68に対して入口筒部21が浮上して、前述したように、羽根車10の入口筒部21が前動圧軸受面68により非接触で回転可能に支持される。
【0084】
また、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の内周面83の母線と後シュラウド40の軸部51の外周面52の母線とは、互いに平行である。言い換えると、後軸受形成部82の内周面83と軸部51の外周面52との間隔は、軸線方向Daにおいて一定である。また、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の内周面83、及び後シュラウド40の軸部51の外周面52の回転軸線Aに垂直な断面形状は、いずれも円である。このため、後軸受形成部82の内周面83と軸部51の外周面52とは、それぞれ、動圧ラジアル軸受面を成し、両面83,52間を流れる血液が潤滑流体として機能する。よって、羽根車10は、羽根車10の軸部51の部分がポンプケーシング60により、径方向Drに非接触で回転可能に支持される。なお、羽根車10の軸部51も、入口筒部21と同様、羽根車10の回転数が低いときには、後軸受形成部82の内周面83(以下、この内周面83を後動圧軸受面83とする)の一部と軸部51の外周面52の一部とは、互いに接触しており、羽根車10の回転数が所定回転数以上になると、両面83,52間に働く流体の動圧により、後動圧軸受面83に対して軸部51が浮上して、羽根車10の軸部51が後動圧軸受面83により非接触で回転可能に支持される。
【0085】
このように、羽根車10の入口筒部21及び軸部51の二箇所が、動圧軸受面68,83により、径方向Drに非接触で回転可能に支持される、言い換えると、羽根車10が径方向Drに非接触で回転可能に両持ち支持される。しかも、羽根車10は、その重心位置を基準にして前側と後側の二箇所で支持される。よって、回転軸線Aに垂直な軸回りのモーメントが発生しても、羽根車10を安定支持することができる。
【0086】
また、前述したように、羽根車10の軸部51の外径を小さくすることができるため、この軸部51の周速度を抑えることができる。よって、軸部51の外周面52とポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82の内周面83との間を流れる血液に作用するせん断ひずみを小さくすることができ、溶血を抑えることができる。
【0087】
また、ポンプケーシング60に対する羽根車10の軸線方向Daの位置は、羽根車10内の従動磁石19とポンプ駆動装置200の駆動磁石219との間の磁気結合力により、保持されている。磁気結合力により保持されている羽根車10の軸線方向Daの位置は、軸線方向Daで互いに対向する羽根車10の面とポンプケーシング60の面とが互いに接触しない位置である。すなわち、羽根車10は、軸線方向Daに関しても、非接触で回転可能に支持されている。
【0088】
次に、動圧軸受ポンプシステムの詳細な操作、及びこの操作に基づく当該システムの動作について説明する。
【0089】
前述したように、羽根車10は、回転していても、その回転数が所定回転数以上でなければ、動圧軸受面68,83から浮上しない。このように、羽根車10が回転していても、動圧軸受面68,83から浮上しておらず、羽根車10と動圧軸受面68,83との接触状態が維持されると、動圧軸受面68,83、及びこの動圧軸受面68,83に接触している羽根車10の部分の磨耗が進み、動圧軸受面68,83の機能が損なわれる。さらに、本実施形態のように、動圧軸受ポンプ100が血液を搬送する人工心臓ポンプである場合には、羽根車10と動圧軸受面68,83との接触により、溶血や血栓の発生の可能性が高まる。
【0090】
ここで、仮に、回転数ボリューム350の操作量に対してポンプ回転数が正比例するとする。このようなシステムで、回転数ボリューム350の操作量が操作量0に近い操作量で停滞している場合や、動圧軸受ポンプ100の起動時において、回転数ボリューム350の操作量を操作量0からゆっくりと増加させる場合には、回転する羽根車10と動圧軸受面68,83との接触時間が長くなり、羽根車10と動圧軸受面68,83との磨耗等が進んでしまう。
【0091】
そこで、羽根車10の回転数が回転数0から浮上最小回転数までの間は、回転数ボリューム350の操作量に関わり無く、羽根車10の回転数、つまりモータ210の回転数を制御する。なお、浮上最小回転数とは、羽根車10がいずれの動圧軸受面68,83からも浮上して、これら動圧軸受面68,83により非接触で支持される回転数のことである。また、
図7中のディスプレイ320中に表示される最小回転数は、この浮上最小回転数のことである。
【0092】
以下に、駆動制御装置300における具体的な制御内容を示す。
図12は、動圧軸受ポンプシステムの動作を実現するため、駆動制御装置300でコンピュータプログラムに基づいて実行する制御の流れを示すものである。
図12に示すように、駆動制御装置300は、動圧軸受ポンプシステムが起動されると、回転数ボリューム350の操作量が0であるか否かを監視する(ステップS101)。
【0093】
次に、回転数ボリューム350の操作量が特定操作量S以上であるか否かを監視する(ステップS102)。回転数ボリューム350の操作量が特定操作量S以上となったら、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数に到達するまでの間、
図9に示すように、ポンプ回転数を所定の予め定められた回転数増加率で増加させる、回転数増加制御を実行する(ステップS103)。
このようにして、
図8に示すように、回転数ボリューム350の操作量が特定操作量Sになるまでの間である初期操作区間では、この操作量に関わらず、操作量が特定操作量Sになった時点で、直ちに、ポンプ回転数を0から浮上最小回転数(例えば、3000RPM)までポンプ回転数を上昇させる。
【0094】
この予め定められた回転数変化率は、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数までの間、一定である必要はなく、ポンプ回転数が0の時点からの時間に応じて定められたものである。
図9に示す例では、ポンプ回転数が0の時点から極めて短時間の間は、回転数変化率が低く、時間経過に伴い徐々に回転数変化率が高まるようになっている。その後、ポンプ回転数変化率は、ポンプ回転数が浮上最小回転数になるまで、時間経過に対して一定で、ポンプ回転数は時間経過に対して直線的に上昇するようになっている。
【0095】
ポンプ回転数が浮上最小回転数まで上昇する時間は、羽根車10と動圧軸受面68,83との接触時間を短くする観点から、できる限り短い方が好ましい。つまり、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数に至るまでの回転数変化率は高い方が好ましい。
しかしながら、モータ210の回転数変化率が極めて高いと、駆動磁石219の回転に対して、従動磁石19が追従しきれず、駆動磁石219に対して従動磁石19が脱調してしまう。
そこで、従動磁石19が脱調しない範囲でモータ210の回転数変化率が最も高い変化率を限度変化率とし、ポンプ回転数が0の時点から極めて短時間の間を除いて、ポンプ回転数が浮上最小回転数になるまでは、回転数変化率を限度変化率としている。
【0096】
駆動制御装置300のコンピュータ310には、回転数ボリューム350の操作量に比例した電圧で示される操作信号が入力される。コンピュータ310は、駆動制御装置300からモータ210に電力を供給していない時点、つまりポンプ回転数が0の時点から、回転数ボリューム350が操作されてこの操作量が特定操作量Sに相当する操作信号が入力されるまでは、電力変換回路335に対してモータ210に供給する電力を示す制御信号を送らない、若しくはモータ210に電力を供給しない旨を示す制御信号を送る。
【0097】
コンピュータ310は、駆動制御装置300からモータ210に電力を供給していない時点から回転数ボリューム350が操作されて特定操作量Sに相当する操作信号が入力されると、予め定められた回転数変化率でポンプ回転数が浮上最小回転数まで上昇する供給電力を示す制御信号を、電力変換回路335に送る。電力変換回路335は、この制御信号を受けると、電源回路330からの電力を、この制御信号が示す電力に変換してからモータ210に供給する。この結果、コンピュータ310に特定操作量Sに相当する操作信号が入力されると、ポンプ回転数は、0から予め定めた回転数変化率で浮上最小回転数まで直ちに上昇する。
【0098】
例えば、前述したように、モータ210が交流モータで、このモータ210に供給する交流電圧の周波数を制御することでモータ回転数を制御する場合、コンピュータ310は、特定操作量Sに相当する操作信号が入力されると、
図9に示す各時間変化に対する回転数に対応した周波数を示す制御信号を電力変換回路335に送る。電力変換回路335は、この制御信号を受けると、電源回路330からの電力をこの制御信号が示す周波数の交流電力に変換してモータ210に供給する。
【0099】
このようにして、駆動制御装置300は、ポンプ起動時において、駆動磁石219に対する従動磁石19の脱調を避けつつも、極めて短時間のうちにポンプ回転数を浮上最小回転数まで上昇させているので、羽根車10と動圧軸受面68,83との接触時間を短くすることができる。
【0100】
上記のように、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数に到達するまでの間、回転数増加制御の実行中、コンピュータ310は、モータ210の回転状態を監視する。具体的に、コンピュータ310は、電力変換回路335の検出回路(図示無し)、センサ339から出力されるモータ210の駆動電流・電圧、モータ210の回転数が、予め定めた規定範囲内にあるか否かを監視する(ステップS104,S105)。
【0101】
モータ210の駆動電流・電圧、モータ210の回転数が、予め定めた規定範囲外であった場合、コンピュータ310は、ディスプレイ320に、「モータ電流・電圧異常」または、「モータ回転数異常」が発生していることを示すメッセージ等を表示する(ステップS121、S122)。
【0102】
さらに、コンピュータ310は、電力変換回路335からの電力供給を停止させ、モータ210の回転を停止させる(ステップS123)。
そして、コンピュータ310は、モータ210の回転数が0になったか否かを監視し、モータ210の回転数が0になった時点で、ディスプレイ320における、異常が発生していることを示すメッセージ等の表示を終了させる(ステップS124、S125)。
【0103】
このようにして、コンピュータ310は、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数に到達するまでの間、モータ210の駆動状態を監視し、異常が検出された場合には、異常が発生したことを示す情報を表示するとともに、モータ210を停止させる。
【0104】
一方、コンピュータ310は、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数に到達するまでの間、モータ210の駆動状態に異常が検出されなければ、モータ210の回転数が浮上最小回転数に到達した時点で、ポンプ回転数を、回転数ボリューム350の操作量に応じた回転数に制御する(ステップS106、S107)。
【0105】
具体的に、コンピュータ310は、回転数ボリューム350の操作による操作信号が入力されると、その操作信号が示す、回転数ボリューム350の操作量に対応した供給電力を示す制御信号を、電力変換回路335に送る。電力変換回路335は、この制御信号を受けると、電源回路330からの電力を、この制御信号が示す電力に変換からモータ210に供給する。この結果、ポンプ回転数は、回転数ボリューム350の操作量に対応した回転数になる。
【0106】
但し、モータ回転数が動圧軸受ポンプ100の浮上最小回転数に対応した回転数以上である場合でも、モータ210の回転数変化率が前述の限度変化率よりも高くなると、駆動磁石219に対して従動磁石19が脱調してしまう。
このため、駆動制御装置300は、
図10に示すように、操作量変化率が限度変化率LIMに対応する操作量変化率よりも高い場合には、この操作量変化率に関わらず、モータ210の回転数変化率を限度変化率LIMに設定する。
具体的に、コンピュータ310は、モータ210の回転数が浮上最小回転数に到達した以降、逐次入力される操作信号から逐次操作量変化率を求め、この操作量変化率が限度変化率LIMに対応する操作量変化率よりも高い場合には、モータ210の回転数変化率が限度変化率LIMになる供給電力を示す制御信号を電力変換回路335に送る。
【0107】
なお、以上では、ソフトウェア上の処理で、モータ210の回転数変化率を限度変化率LIM以下に抑えているが、ハードウェアにより、モータ210の回転数変化率を限度変化率LIM以下に抑えるようにしてもよい。
具体的に、例えば、電力変換回路335に、モータに供給する電力の変化率(例えば、交流電力の周波数変化率)に対応するモータ210の回転数変化率が限度変化率LIM以下になるよう、モータ210に供給する電力の変化率を鈍す回路を設ける。この場合、電力変換回路335の制御信号が入力される側に、制御信号が示す値の電力の変化率を鈍す回路を設けてもよいし、モータ210に電力を出力する側に電力の変化率を鈍す回路を設けてもよい。また、この場合、コンピュータ310は、動圧軸受ポンプ100の起動時に、特定操作量Sに相当する操作信号が入力されると、直ちに、電力変換回路335に対して、ポンプ回転数が浮上最小回転数になる供給電力を示す制御信号を送る。また、コンピュータ310は、回転数ボリューム350の操作量が特定操作量Sになった以降でも、先に受けた操作信号が示す操作量に対して今回受けた操作信号が示す操作量の操作量変化率が、限度変化率LIMに対応する操作量変化率より高い場合でも、今回受けた操作量に比例したポンプ回転数になる供給電力を示す制御信号を送る。電力変換回路335は、これらの制御信号を受けた場合でも、モータに供給する電力の変化率に対応するモータ210の回転数変化率が限度変化率LIM以下になるよう、モータに供給する電力の変化率を鈍して、モータに電力を供給する。
【0108】
この後、駆動制御装置300は、
図8に示すように、回転数ボリューム350の操作量が特定操作量S未満になったか否かを監視する(ステップS108)。
そして、回転数ボリューム350の操作量が特定操作量S未満になった場合には、操作量0にならない限り、ポンプ回転数を浮上最小回転数に維持する(ステップS109、S110)。
【0109】
このため、コンピュータ310は、特定操作量S未満の操作量に相当する操作信号が入力された場合、操作量0に相当する操作信号が入力されない限り、ポンプ回転数が浮上最小回転数になる供給電力を示す制御信号を電力変換回路335に送る。電力変換回路335は、この制御信号を受けると、電源回路330からの電力を、この制御信号が示す電力に変換してからモータ210に供給する。この結果、コンピュータ310に特定操作量S未満の操作量に相当する操作信号が入力されても、操作量0に相当する操作信号が入力されない限り、ポンプ回転数は浮上最小回転数に維持される。
【0110】
駆動制御装置300は、回転数ボリューム350の操作量が操作量0になると、直ちに、ポンプ回転数が0になるよう、モータ210の回転数を減少させる(ステップS111、S112)。この際、
図9に示すように、ポンプ回転数が浮上最小回転数から0になるまでの間、回転数変化率が予め定められた回転数変化率でポンプ回転数を下降させる。
【0111】
このため、コンピュータ310は、操作量0に相当する操作信号が入力されると、
図9を用いて前述した予め定められた回転数変化率でポンプ回転数が浮上最小回転数から0になるまで下降する供給電力を示す制御信号を、電力変換回路335に送る。電力変換回路335は、この制御信号を受けると、電源回路330からの電力を、この制御信号が示す電力に変換してからモータ210に供給する。この結果、コンピュータ310に操作量0に相当する操作信号が入力されると、ポンプ回転数は、浮上最小回転数から予め定めた回転数変化率で回転数0まで直ちに下降する。
【0112】
そして、駆動制御装置300は、モータ210の回転数が0になったことを確認した時点で、制御を終了する(ステップS112)。
【0113】
以上のように、駆動制御装置300は、回転数ボリューム350の操作量が操作量0から予め定められた特定操作量Sまでの初期操作区間では、初期操作区間の操作量変化に関わらず、回転数ボリューム350の操作量が特定操作量Sになったことを条件として、羽根車10が非接触状態で支持される浮上最小回転数まで予め定められた回転数変化率で羽根車10の回転数を増加させる。そして、浮上最少回転数まで予め定められた回転数変化率で羽根車10の回転数が増加するよう、ポンプ駆動装置200へ供給する電力を制御している過程で、ポンプ駆動装置200の駆動状態を示すパラメータが予め定められた正常範囲内ではないと判断すると、ポンプ駆動装置200への電力供給を停止させる。
したがって、ポンプ起動時に、例えばポンプ駆動装置200の不具合等、何らかの原因で動圧軸受ポンプの羽根車10の回転数が浮上最小回転数まで増加しない可能性がある。このような場合に、ポンプ駆動装置200への電力供給を停止させることで、回転している羽根車10と動圧軸受面68,83とが接触している時間が長くなるのを防ぎ、動圧軸受ポンプの耐久性を、より確実に向上させることができる。
【0114】
また、一旦、動圧軸受ポンプ100が駆動すると、回転数ボリューム350の操作量が0にならない限り、ポンプ回転数は浮上最小回転数以上に維持される。このため、一旦、動圧軸受ポンプ100が駆動すると、回転数ボリューム350の操作量に関わらず、この操作量が0にならない限り、羽根車10と動圧軸受面68,83との接触を回避することができる。さらに、動圧軸受ポンプ100が駆動した後、回転数ボリューム350の操作量が0になると、極めて短時間のうちにポンプ回転数を0まで下降させているので、ポンプ停止時における回転する羽根車10と動圧軸受面68,83との接触時間を短くすることができる。
【0115】
動圧軸受ポンプ100が駆動した後、駆動制御装置300の周期変化スイッチ356が操作されると、
図11に示すように、ポンプ回転数が予め定められた周期で増減する。このように、ポンプ回転数を周期的に増減させるのは、ポンプケーシング60内に入っている気泡を効率的にポンプケーシング60外に排出するためである。このため、ポンプ回転数を周期的に増減させる際のポンプ回転数の変化周期及びポンプ回転数の変動幅は、ポンプケーシング60や羽根車10の形状等に応じて、気泡を効率的に排出するに適した値に定められている。
【0116】
コンピュータ310は、動圧軸受ポンプ100の駆動中に、周期変化スイッチ356の操作信号が入力されると、ポンプ回転数が予め定められた周期で且つ予め定められた変動幅で増減する供給電力を示す制御信号を、電力変換回路335に送る。電力変換回路335は、この制御信号を受けると、電源回路330からの電力を、この制御信号が示す電力に変換してからモータ210に供給する。この結果、ポンプ回転数は、予め定められた周期で且つ予め定められた変動幅で増減変化する。
【0117】
ところで、気泡を効率的に排出するため、ポンプ回転数を周期的に増減させる場合の最小回転数を浮上最小回転数未満にすることが考えられる。このように、最小回転数を浮上回転数未満にする場合でも、羽根車10と動圧軸受面68,83との接触時間を短くすることが好ましい。そこで、このような場合、
図11に示すように、一周期T中で、ポンプ回転数が限度変化率で変化する時間T
LIMの合計が、限度変化率未満で変化する時間T
LIM<の合計よりも多くなるように、一周期の期間及び一周期中のポンプ回転数変化傾向を定めることが好ましい。
【0118】
このような動圧軸受ポンプシステムでは、回転する羽根車10と動圧軸受面68,83との接触時間を短くすることができる。このため、羽根車10及び動圧軸受面68,83の磨耗を抑え、動圧軸受ポンプ100の耐久性を向上させることができる。さらに、回転する羽根車10と動圧軸受面68,83との接触部分での溶血や血栓発生を抑えることができる。
【0119】
「第二実施形態」
次に、動圧軸受ポンプシステムの第二実施形態について、
図13を用いて説明する。
本実施形態の動圧軸受ポンプシステムは、上記第一実施形態に対し、ポンプ起動中に、モータ210の状態に異常が検出された場合の対応が異なり、それ以外の構成、制御内容は同様である。したがって、以下においては、上記第一実施形態と異なる構成を中心に説明を行い、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0120】
図13に示すように、この実施形態において、回転数ボリューム350の操作量が、特定操作量S以上となり、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数に到達するまでの間、コンピュータ310により、モータ210の回転状態を監視する。そして、モータ210の駆動電流・電圧、モータ210の回転数が、予め定めた規定範囲外であった場合、コンピュータ310は、ディスプレイ320に、「モータ電流・電圧異常」または、「モータ回転数異常」が発生していることを示すメッセージ等を表示する(ステップS121、S122)。
【0121】
次いで、コンピュータ310は、電力変換回路335からの電力供給を停止させ、モータ210の回転を停止させる(ステップS123)。
【0122】
そして、コンピュータ310は、モータ210の回転数が0になったか否かを監視する(ステップS124)。
モータ210の回転数が0になった後、さらに、回転数ボリューム350の操作量が0に戻ったか否かを監視する(ステップS131)。
回転数ボリューム350の操作量が0に戻った時点で、ディスプレイ320における、異常が発生していることを示すメッセージ等の表示を終了させる(ステップS132)。
【0123】
次に、ステップS123の停止制御処理を連続して実行した回数をカウントし、実行回数が、予め定めた規定回数:N回以下であるか否かを確認する(ステップS133)。そして、実行回数がN回未満であれば、ステップS101に戻り、再度起動処理を実行する。
一方、実行回数がN回以上の場合、そのまま、動圧軸受ポンプシステムの運転を停止する。
【0124】
このようにして、コンピュータ310は、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数に到達するまでの間、モータ210の駆動状態を監視し、異常が検出された場合には、異常が発生したことを示す情報を表示するとともに、モータ210を停止させる。
そして、コンピュータ310は、モータ210の停止後、回転数ボリューム350の操作量が0に戻らない限り、ポンプを再起動させない。コンピュータ310は、ポンプの再起動が、規定回数であるN回に到達した後は、回転数ボリューム350がいかように操作されても、ポンプを再起動させない。
【0125】
以上のように、本実施形態では、モータ210の停止後、回転数ボリューム350の操作量が0に戻らない限り、ポンプを再起動しないようにした。
【0126】
また、また、本実施形態では、ポンプの再起動が、規定回数であるN回に到達した後は、ポンプの再起動を繰り返すことができないようにした。これにより、再起動を繰り返すと、例えば動圧軸受の損傷や溶血等の不利益が生じる場合に、これを防ぐことができる。
【0127】
なお、上記第二実施形態では、モータ210の停止後、回転数ボリューム350の操作量が0に戻らない限り、ポンプを再起動しないようにしたが、これに限らない。ステップS131を廃止し、モータ210の停止後、ポンプの再起動回数が規定回数であるN回に到達するまでは、自動的に再起動するようにしてもよい。
さらに、ステップS133を廃止し、ポンプの再起動回数を制限しないようにして、モータ210の停止後、自動的に再起動するようにしてもよい。このような構成は、ポンプが停止しているよりも、稼働している方が良い場合に適している。
【0128】
「第三実施形態」
次に、動圧軸受ポンプシステムの第三実施形態について、
図14を用いて説明する。
本実施形態の動圧軸受ポンプシステムは、上記第一、第二実施形態に対し、ポンプ起動中に、モータ210の状態に異常が検出された場合の対応が異なり、それ以外の構成、制御内容は同様である。したがって、以下においては、上記第一、第二実施形態と異なる構成を中心に説明を行い、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0129】
図14に示すように、この実施形態において、回転数ボリューム350の操作量が、特定操作量S以上となり、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数に到達するまでの間、コンピュータ310により、モータ210の回転状態を監視する。そして、モータ210の駆動電流・電圧、モータ210の回転数が、予め定めた規定範囲外であった場合、コンピュータ310は、ディスプレイ320に、「モータ電流・電圧異常」または、「モータ回転数異常」が発生していることを示すメッセージ等を表示する(ステップS121、S122)。
【0130】
次いで、コンピュータ310は、電力変換回路335からの電力供給を停止させ、モータ210の回転を停止させる(ステップS123)。
【0131】
そして、コンピュータ310は、モータ210の回転数が0になったか否かを監視する(ステップS124)。
コンピュータ310は、モータ210の回転数が0になった後、さらに、回転数ボリューム350の操作量が0に戻ったか否かを監視する(ステップS141)。
【0132】
回転数ボリューム350の操作量が0に戻った時点で、オペレータ等により、モータ210の回転状態に生じた異常の原因が解消されたか否かを確認する。これには、モータ210の回転状態に生じた異常の原因が解消されたことが確認された場合、オペレータが、不具合がリセットされたことを示す所定の操作を駆動制御装置300に対して実行する。所定の操作が入力された場合(ステップS142)、コンピュータ310は、リセット操作を受け付け、ディスプレイ320における、異常が発生していることを示すメッセージ等の表示を終了させる(ステップS143)。
【0133】
このようにして、コンピュータ310は、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数に到達するまでの間、モータ210の駆動状態を監視し、異常が検出された場合には、異常が発生したことを示す情報を表示するとともに、モータ210を停止させる。
そして、モータ210の停止後、モータ210の駆動状態に生じた異常が解消されない限り、ポンプを再起動できないようにした。
これにより、ポンプを再起動した場合に、再び駆動状態に異常が生じるのを防ぐことができる。
【0134】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0135】
「第一変形例」
例えば、動圧軸受ポンプの駆動制御装置300は、
図1に示した構成に限らない。例えば、
図15に示すように、駆動制御装置300aは、回転数ボリューム350aの構成を第一実施形態と異ならせてもよい。
回転数ボリューム350aは、
図16に示すように、第一実施形態の回転数ボリューム350と同様、可変抵抗器であり、ボリューム摘み351と、このボリューム摘み351に取り付けられている導体352と、この導体352に接触している抵抗体353と、を有している。
【0136】
さらに、回転数ボリューム350aは、ボリューム摘み351の操作量が操作量0から特定操作量Saになるまでの間に、このボリューム摘み351に取り付けられた導体352と抵抗体353とを接触させない接触回避部材354を有している。この接触回避部材354と導体352とのうち、少なくとも一方には、オペレータがボリューム摘み351を操作量0から特定操作量Saになるまで操作する過程で、ボリューム摘み351からオペレータに対してクリック感を与えるクリック感発生部354aが設けられている。なお、クリック感とは、ボリューム摘み351の操作過程で、ボリューム摘み351から受ける力が急激に変化する感覚である。クリック感発生部354aは、例えば、接触回避部材354と導体352とのうち、一方に形成され、他方側へ突出した凸部で構成することができる。また、クリック感発生部354aは、接触回避部材354と導体352とのうち、一方に形成され、他方側に突出した凸部と、他方に形成され、凸部が一時的に入り込む凹部とで構成することができる。また、クリック感発生部354aは、一方に設けられ、他方側に突出した板バネ等の弾性体で構成することもできる。
【0137】
このボリューム摘み351が設けられている筐体340には、回転数ボリューム350aの操作量が操作量0でポンプ駆動オフを示すオフマーク346と、回転数ボリューム350aの操作量が特定操作量Saでポンプ駆動オンを示すオンマーク347とが示されている。
【0138】
このような駆動制御装置300aを備えた動圧軸受ポンプシステムの操作においては、ポンプ起動時に、オペレータが回転数ボリューム350aを操作し、回転数ボリューム350aの操作量が操作量0(ポンプ駆動オフ)から特定操作量Sa(ポンプ駆動オン)になると、
図17に示すように、動圧軸受ポンプ100が起動し、ポンプ回転数が0から直ちに浮上最小回転数(例えば、3000RPM)になる。この際、
図9を用いて前述したように、ポンプ回転数が0から浮上最小回転数までの間、予め定められた回転数変化率でポンプ回転数が上昇する。このとき、オペレータは、回転数ボリューム350aの操作過程で受けるクリック感で、ポンプ駆動オン操作をしたことを明確に認識することができる。
【0139】
また、回転数ボリューム350aの操作量が一旦特定操作量Sa(ポンプ駆動オン)になると、操作量が特定操作量Saを下回らない限り、ポンプ回転数は回転数ボリューム350aの操作量に比例する。
【0140】
回転数ボリューム350aの操作量が一旦特定操作量Sa(ポンプ駆動オン)になった後、操作量が特定操作量Saを下回ると、動圧軸受ポンプ100が停止し、直ちに、ポンプ回転数が0になる。この際、
図9を用いて前述したように、ポンプ回転数が0になるまでの間、予め定められた回転数変化率でポンプ回転数が下降する。
【0141】
なお、回転数ボリューム350aは、クリック感発生部354aを有しているため、基本的に、操作量0と特定操作量Saとの間の途中の位置で、回転数ボリューム350aを維持しておくことができない。このため、回転数ボリューム350aの操作量を操作量0から上げると、この操作量は基本的に特定操作量Sa以上になり、回転数ボリューム350aの操作量を特定操作量Saから下げると、この操作量は基本的に操作量0になる。
【0142】
具体的に、ポンプ起動時において、回転数ボリューム350aの操作量が特定操作量Saになるまでは、ボリューム摘み351に設けられている導体352と抵抗体353とは非接触である。このため、駆動制御装置300aのコンピュータ310には、回転数ボリューム350aの操作量が特定操作量Saにならない限り、操作信号は入力されない。回転数ボリューム350aの操作量が特定操作量Saになると、ボリューム摘み351に設けられている導体352と抵抗体353とが接触し、コンピュータ310には、この特定操作量Saに相当する操作信号が入力される。コンピュータ310は、この操作信号が入力されると、予め定められた回転数変化率でポンプ回転数が浮上最小回転数まで上昇する供給電力を示す制御信号を、電力変換回路335に送る。電力変換回路335は、この制御信号を受けると、電源回路330からの電力を、この制御信号が示す電力に変換してからモータ210に供給する。この結果、ポンプ回転数は、0から予め定めた回転数変化率で浮上最小回転数まで直ちに上昇する。
【0143】
コンピュータ310は、一旦、特定操作量Saに相当する操作信号が入力されると、操作信号が入力されなくなるまでの間、入力される操作信号が示す操作量に比例したポンプ回転数となる供給電力を示す制御信号を電力変換回路335に送る。電力変換回路335は、この制御信号を受けると、電源回路330からの電力を、この制御信号が示す電力に変換してからモータ210に供給する。この結果、ポンプ回転数は、回転数ボリューム350aの操作量に比例した回転数になる。
【0144】
但し、
図10を用いて前述したように、操作量変化率が限度変化率LIMに対応する操作量変化率よりも高い場合、この操作量変化率に関わらず、モータ210の回転数変化率は限度変化率LIMになる。
【0145】
コンピュータ310は、操作信号が入力されなくなると、つまり回転数ボリューム350aの操作量が特定操作量Saを下回ると、
図9を用いて前述したように、予め定めた回転数変化率で回転数0まで直ちに下降する。
【0146】
以上のように、この変形例の動圧軸受ポンプシステムによれば、上記各実施形態と同様、回転する羽根車10と動圧軸受面68,83との接触時間を短くすることができ、動圧軸受ポンプ100の耐久性を向上させることができると共に、回転する羽根車10と動圧軸受面68,83との接触部分での溶血や血栓発生を抑えることができる。
【0147】
また、以上の変形例では、回転数ボリューム350aがポンプ駆動スイッチ機能を兼ねており、別途、ポンプ駆動スイッチは設けられておらず、一旦、動圧軸受ポンプ100が駆動すると、回転数ボリューム350aの操作量が0にならない限り、動圧軸受ポンプ100は停止しない。言い換えると、以上の各実施形態では、例えば、回転数ボリューム350aの操作量が中途半端な操作量のときに、動圧軸受ポンプ100を停止させることができず、起動時に、回転数ボリューム350aの操作量が中途半端な操作量になっていることはない。
【0148】
なお、以上の各実施形態の動圧軸受ポンプ100は、いずれも、動圧軸受面68,83が羽根車10を径方向で非接触支持するラジアル動圧軸受であるが、背景技術の欄で説明したように、動圧軸受が羽根車を軸線方向で非接触支持するスラスト動圧軸受であっても、本発明を提供することができる。また、動圧軸受ポンプは、ラジアル動圧軸受及びスラスト動圧軸受の両方を有していても、本発明を適用することができる。この場合、浮上最小回転数は、羽根車がラジアル動圧軸受及びスラスト動圧軸受の両方に対して浮上する最小回転数となる。
【0149】
「第二変形例」
本発明は、モータを内蔵したビルトインタイプのポンプにも、本発明を適用できる。
図18に示すように、このようなビルトインタイプの軸流ポンプは、円柱状の羽根車装着部501を有する固定体502と、羽根車装着部501の外周に回転可能に装着されている羽根車503と、固定体502及び羽根車503の外周側を覆う円筒状のケーシング504と、を備える。
【0150】
ここで、円柱状の羽根車装着部501の中心軸線を固定体軸線Afとし、この固定体軸線Afが延びている方向を固定体軸方向Dfとする。また、円筒状のケーシング504の中心軸線をケーシング軸線Acとし、このケーシング軸線Acが延びている方向をケーシング軸方向Dcとする。軸流ポンプが完成した状態では、固定体軸線Afとケーシング軸線Acとは一致している。また、固定体軸方向Df及びケーシング軸方向Dcの一方側を吸込側とし、他方側を吐出側とする。
【0151】
固定体502は、固定軸部505と、固定軸部505の外周に固定されている複数の案内羽根506と、固定軸部505の吸込側にネジ固定されている吸込側コーン507と、を備える。固定軸部505は、前述の羽根車装着部501と、羽根車装着部501の吐出側に固定されている吐出側コーン508と、を有している。円柱状の羽根車装着部501の吸込側には、吐出側に向かって凹み且つ固定体軸線Afを中心とする雌ネジ孔509が形成されている。
【0152】
固定軸部505の吐出側コーン508は、吐出側先端部510と、吐出側先端部510の吸込側に形成されている吐出側コーン胴部511と、吐出側コーン胴部511の吸込側に形成されている吐出側直胴部512と、を有している。吐出側先端部510の表面は、固定体軸線Af上であって吐出側先端部510よりも吸込側の点を中心して所定の曲率半径の面で形成されている。吐出側コーン胴部511は、吐出側先端部510の吸込側縁から連続的に形成され、固定体軸線Afを中心として吸込側に向かうに連れて次第に拡径されている。吐出側直胴部512は、吐出側コーン胴部511の吸込側縁から連続的に形成され、固定体軸線Afを中心として円柱状を成している。
【0153】
吸込側コーン507は、吸込側先端部520と、吸込側先端部520の吐出側に形成されている吸込側コーン胴部521と、吸込側コーン胴部521の吐出側に形成されている吸込側直胴部522と、固定軸部505の雌ネジ孔509に螺合可能な雄ネジ523が形成されているコーン軸部524と、を有している。吸込側先端部520の表面は、コーン軸部524の中心軸線上であって吸込側先端部520よりも吐出側の点を中心して所定の曲率半径の曲面で形成されている。吸込側コーン胴部521は、吸込側先端部520の吐出側縁から連続的に形成され、コーン軸部524の中心軸線を中心として吐出側に向かうに連れて次第に拡径されている。吸込側直胴部522は、吸込側コーン胴部521の吐出側縁から連続的に形成され、コーン軸部524の中心軸線を中心として円柱状を成している。
【0154】
吸込側直胴部522内には、磁化方向がコーン軸部524の軸方向を向いている第一永久磁石(図示無し)が設けられている。
【0155】
吸込側コーン507は、そのコーン軸部524の雄ネジ523が固定軸部505の雌ネジ孔509に捩じ込まれることで、固定軸部505にネジ固定される。この際、コーン軸部524の中心軸線と固定軸部505の固定体軸線Afとが一致する。
【0156】
羽根車503は、固定体502の羽根車装着部501の外周側に回転可能に装着される円筒状のスリーブ531と、スリーブ531の外周に固定されている複数の羽根535と、スリーブ531内に設けられている駆動用永久磁石532及び第二永久磁石533と、を有している。
【0157】
駆動用永久磁石532は、磁化方向が固定体軸線Afに対する径方向を向くように配置されている。また、第二永久磁石533は、駆動用永久磁石532よりも吸込側に配置されている。さらに、この第二永久磁石533は、磁化方向が固定体軸方向Dfを向き、且つ第一永久磁石(図示無し)の磁極のうちの一方の磁極に対して、この一方の磁極と同じ極性の磁極が対向するよう配置されている。
【0158】
スリーブ531の外周には、複数の羽根535が周方向に等間隔で固定されている。羽根535は、固定体軸線Afを中心として螺旋状にスリーブ531の外周に延設されている。具体的に、羽根535は、吸込側から見て、最も吸込側の前端から反時計回り方向に延びつつ吐出側に延びている。また、案内羽根506も、同様に、固定体軸線Afを中心として螺旋状に延設されている。但し、案内羽根506は、最も吸込側の前端から時計回り方向に延びつつ吐出側に延びている。
また、ケーシング504は、全体として筒状で、その一端には、吸込口541が形成され、他端には、吐出口542が形成されている。またケーシング504内には、回転磁界を発生するコイル550が設けられている。
【0159】
このような構成において、ケーシング504に設けられているコイル550により、ケーシング504の内側に回転磁界が発生すると、羽根車503内の駆動用永久磁石532がこの回転磁界に追従する。この結果、羽根車503がケーシング軸線Ac(=固定体軸線Af)を中心軸線として回転する。この羽根車503の回転により、羽根535からケーシング504内の流体に対して、吐出側に向かわせつつ旋回させる力が加えられ、ケーシング軸線Acを中心とした旋回方向の流速が増す。案内羽根506は、旋回方向の流速が増した流体に対して、この旋回方向の流速を低下させて静圧を高める。静圧が高まった流体は、ケーシング504の吐出側の吐出口542を経て、吐出される。
【0160】
以上のように、羽根車503を回転させるコイル550を含むポンプ駆動装置がケーシング504に組み込まれている場合でも、このポンプ駆動装置を制御する駆動制御装置は、先の実施形態と同様の構成を採用することができる。
【0162】
さらに、上記各実施形態では、回転数操作端として、回転数ボリューム350,350aを例示したが、これに限らない。例えば、
図19に示すような、操作ボタン410を備えたボタン式、タッチパネル式のコントローラ400を別途備えるようにしてもよい。その場合、コントローラ400からコンピュータ310に向けて出力する信号は、アナログ信号、デジタル信号の何れであってもよい。
【0163】
なお、以上の各実施形態の動圧軸受ポンプ100は、いずれも、動圧軸受面68,83が羽根車10を径方向で非接触支持するラジアル動圧軸受であるが、背景技術の欄で説明した特許文献1に記載の動圧軸受ポンプのように、動圧軸受が羽根車を軸線方向で非接触支持するスラスト動圧軸受であっても、本発明を適用することができる。また、動圧軸受ポンプは、ラジアル動圧軸受及びスラスト動圧軸受の両方を有していても、本発明を適用することができる。この場合、浮上最小回転数は、羽根車がラジアル動圧軸受及びスラスト動圧軸受の両方に対して浮上する最小回転数となる。
【0164】
また、以上の各実施形態は、動圧軸受ポンプの一例として、人工心臓ポンプを例示したが、本発明は人工心臓ポンプに限定されるものではなく、動圧軸受により羽根車を非接触で回転可能に支持するポンプであれば、如何なるポンプに本発明を適用してもよい。