特許第6357776号(P6357776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357776
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/86 20130101AFI20180709BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20180709BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20180709BHJP
   H01M 10/0583 20100101ALI20180709BHJP
【FI】
   H01G11/86
   H01G13/00 381
   H01M10/04 Z
   H01M10/0583
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-82(P2014-82)
(22)【出願日】2014年1月6日
(65)【公開番号】特開2015-130370(P2015-130370A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和久
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0154795(US,A1)
【文献】 特開2013−219057(JP,A)
【文献】 特開平09−102302(JP,A)
【文献】 特開平10−079254(JP,A)
【文献】 特開2003−123743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/00−11/86
13/00
H01M10/00−10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極箔と負極電極箔とをセパレータ箔を介して交互に積層された蓄電部材を備える、蓄電デバイスの製造方法であって、
前記蓄電部材は、
前記正極電極箔の2枚分の長さからなる複数の正極素材箔のそれぞれを中央部にて折り曲げる正極折り曲げ工程と、
前記負極電極箔の2枚分の長さからなる複数の負極素材箔のそれぞれを中央部にて折り曲げる負極折り曲げ工程と、
前記複数の正極素材箔および前記複数の負極素材箔の一方を一体移動可能な又は固定された第一把持装置により把持させ、前記複数の正極素材箔および前記複数の負極素材箔の他方のそれぞれを独立移動可能な複数の第二把持装置のそれぞれにより把持させ、前記複数の正極素材箔と前記複数の負極素材箔との間に前記セパレータ箔を介在させ折り曲げられた前記正極素材箔の開口側と折り曲げられた前記負極素材箔の開口側とを向かい合わせて配置する初期配置工程と、
前記複数の第二把持装置を前記第一把持装置に近づくように配列順に順次独立して移動させて、折り曲げられた前記正極素材箔および前記負極素材箔の一方の開口側から谷底側に向かって前記正極素材箔および前記負極素材箔の他方の一端部を順次挿入し、前記素材箔の一方の谷底と前記素材箔の他方の一端部との規制により前記正極素材箔と前記負極素材箔とが順次位置決めされる位置決め工程と、
により製造される、
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記正極素材箔は、正極集電箔と前記正極集電箔の両面に配置される正極活物質層とを備え、
前記負極素材箔は、負極集電箔と前記負極集電箔の両面に配置される負極活物質層とを備え、
1つのユニットは、1つの前記正極素材箔と、1つの前記負極素材箔と、1つの前記正極素材箔と1つの前記負極素材箔との間に介在する1つのセパレータ箔とを備え、前記正極折り曲げ工程、前記負極折り曲げ工程、前記初期配置工程および前記位置決め工程により形成され、
前記蓄電部材は、複数の前記ユニットを積層することにより製造される、
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記セパレータ箔は、1つの帯状に形成され、
前記初期配置工程は、前記複数の正極素材箔と前記複数の負極素材箔との間に前記セパレータ箔を介在させる、請求項1または2に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記セパレータ箔は、折り目を有しない帯状に形成され、前記位置決め工程において前記複数の第二把持装置を順次移動させることにより折り曲げられる、請求項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記位置決め工程は、前記第一把持装置を移動させることにより、前記複数の正極素材箔および前記複数の負極素材箔の一方を前記セパレータ箔に接触させ、前記セパレータ箔の張力を調整し、続いて前記複数の第二把持装置を前記第一把持装置に近づくように配列順に順次独立して移動させる、請求項4に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記セパレータ箔は、折り曲げられた前記複数の正極素材箔および折り曲げられた前記複数の負極素材箔に対応するように複数の折り目を有する帯状に形成され、前記位置決め工程において前記複数の第二把持装置を順次移動させることにより前記正極素材箔と前記負極素材箔との間に介在される、請求項1−5の何れか一項に記載の蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタおよび電池などの蓄電デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、正極電極箔と負極電極箔とをセパレータ箔を介して交互に積層された蓄電部材を備える、キャパシタおよび電池などの蓄電デバイスが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の蓄電部材は、正極電極箔と負極電極箔との間に折り曲げられたセパレータ箔を配置し、正極電極箔と負極電極箔とを近付けることにより製造される。特許文献2に記載の蓄電部材は、多数枚の正極電極箔の長さからなる正極素材箔と、多数枚の負極電極箔の長さからなる負極素材箔と、正極素材箔と負極素材箔との間に介在させたセパレータ箔とを重ねて配置し、巻回または九十九折りされることにより製造される。特許文献3に記載の蓄電部材は、多数枚の正極電極箔の長さからなる正極素材箔と、多数枚の負極電極箔の長さからなる負極素材箔と、正極素材箔と負極素材箔との間に介在させたセパレータ箔とを重ねて配置し、つづら折りにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−220696号公報
【特許文献2】特開2008−258222号公報
【特許文献3】特許第4441976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、正極電極箔と負極電極箔との重なり領域が、キャパシタまたは電池の性能に影響を及ぼす。また、正極電極箔と負極電極箔とがずれて配置されると、その分、キャパシタまたは電池が大型化する。そのため、高性能化しつつ小型化するためには、正極電極箔と負極電極箔とを高精度に位置決めすることが求められる。
【0006】
特許文献1に記載の蓄電部材では、それぞれの正極電極箔とそれぞれの負極電極箔とを高精度に位置決めすることは容易ではない。また、特許文献1に記載の蓄電部材において、セパレータ箔の折り目によって位置決めすることも考えられるが、セパレータ箔の剛性は低いため、これもまた容易ではない。
【0007】
特許文献2に記載の蓄電部材では、巻回または九十九折りされることにより形成するため、巻回数が多ければ多いほど、性能に影響を及ぼさない部分(非蒸着部)の領域が大きくなる。従って、当該蓄電部材は、巻回数が多いほど大型化する。
特許文献3に記載の蓄電部材では、帯状の正極素材箔、セパレータ箔および負極素材箔に対して、折り曲げ位置を高精度にすることが容易ではない。そのため、当該蓄電部材は、積層数が多いほど大型化するおそれがある。
【0008】
本発明は、高性能化と小型化との両立を図ることができる蓄電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1)本発明の一側面に係る蓄電デバイスの製造方法は、正極電極箔と負極電極箔とをセパレータ箔を介して交互に積層された蓄電部材を備える、蓄電デバイスの製造方法であって、前記蓄電部材は、前記正極電極箔の2枚分の長さからなる複数の正極素材箔のそれぞれを中央部にて折り曲げる正極折り曲げ工程と、前記負極電極箔の2枚分の長さからなる複数の負極素材箔のそれぞれを中央部にて折り曲げる負極折り曲げ工程と、前記複数の正極素材箔および前記複数の負極素材箔の一方を一体移動可能な又は固定された第一把持装置により把持させ、前記複数の正極素材箔および前記複数の負極素材箔の他方のそれぞれを独立移動可能な複数の第二把持装置のそれぞれにより把持させ、前記複数の正極素材箔と前記複数の負極素材箔との間に前記セパレータ箔を介在させた状態で、折り曲げられた前記正極素材箔の開口側と折り曲げられた前記負極素材箔の開口側とを向かい合わせて配置する初期配置工程と、前記複数の第二把持装置を前記第一把持装置に近づくように配列順に順次独立して移動させて、折り曲げられた前記正極素材箔および前記負極素材箔の一方の開口側から谷底側に向かって前記正極素材箔および前記負極素材箔の他方の一端部を順次挿入し、前記素材箔の一方の谷底と前記素材箔の他方の一端部との規制により前記正極素材箔と前記負極素材箔とが順次位置決めされる位置決め工程とにより製造される。
【0010】
上述したように、蓄電部材は、正極電極箔2枚分の長さからなる複数の正極素材箔と、負極電極箔2枚分の長さからなる複数の負極素材箔とを用いる。そして、折り曲げられた素材箔の一方の谷底と折り曲げられた素材箔の他方の一端部との規制によって、正極素材箔と負極素材箔とが位置決めされる。ここで、正極素材箔はセパレータ箔に比べて高剛性であるため、素材箔の一方の谷底の剛性は、セパレータ箔の折り目の剛性より高い。従って、上記により、正極素材箔と負極素材箔とが高精度に位置決めされる。その結果、上記のように製造された蓄電デバイスは、高性能化と小型化との両立を図ることができる。
【0011】
(請求項2)また、前記正極素材箔は、正極集電箔と前記正極集電箔の両面に配置される正極活物質層とを備え、前記負極素材箔は、負極集電箔と前記負極集電箔の両面に配置される負極活物質層とを備え、1つのユニットは、1つの前記正極素材箔と、1つの前記負極素材箔と、1つの前記正極素材箔と1つの前記負極素材箔との間に介在する1つのセパレータ箔とを備え、前記正極折り曲げ工程、前記負極折り曲げ工程、前記初期配置工程および前記位置決め工程により形成され、前記蓄電部材は、複数の前記ユニットを積層することにより製造されるようにしてもよい。
【0012】
これにより、それぞれのユニットにおいて、正極素材箔と負極素材箔とは高精度に位置決めされる。そして、複数のユニットを位置決めすることで、多数層の蓄電部材が形成される。従って、高性能化および小型化の両立を図ることができる蓄電デバイスが製造される。さらに、正極素材箔および負極素材箔は、両面に活物質層を備える。そして、複数のユニットを積層することで、蓄電部材が製造される。つまり、あるユニットの端面が正極素材箔である場合に、当該ユニットに重ね合わせる別のユニットの端面が負極素材箔となるようにする。こうすることで、ユニットの重ね合わせ部分においても、蓄電機能を有する。従って、上記構成の蓄電デバイスは、正極素材箔および負極素材箔の数を少なくしつつ、蓄電性能を高くすることができる。
【0015】
(請求項)また、前記セパレータ箔は、1つの帯状に形成され、前記初期配置工程は、前記複数の正極素材箔と前記複数の負極素材箔との間に前記セパレータ箔を介在させるようにしてもよい。これにより、セパレータ箔を小さく切断する必要がなく、製造の容易化が図れる。
【0016】
(請求項)また、前記セパレータ箔は、折り目を有しない帯状に形成され、前記位置決め工程において前記複数の第二把持装置を順次移動させることにより折り曲げられるようにしてもよい。これにより、セパレータ箔に予め折り目を付ける必要がないため、製造コストを低減できる。この場合、セパレータ箔は、正極素材箔および負極素材箔によって折り曲げられる。
(請求項5)また、前記位置決め工程は、前記第一把持装置を移動させることにより、前記複数の正極素材箔および前記複数の負極素材箔の一方を前記セパレータ箔に接触させ、前記セパレータ箔の張力を調整し、続いて前記複数の第二把持装置を前記第一把持装置に近づくように配列順に順次独立して移動させるようにしてもよい。
【0017】
(請求項6)また、前記セパレータ箔は、折り曲げられた前記複数の正極素材箔および折り曲げられた前記複数の負極素材箔に対応するように複数の折り目を有する帯状に形成され、前記位置決め工程において前記複数の第二把持装置を順次移動させることにより前記正極素材箔と前記負極素材箔との間に介在されるようにしてもよい。これにより、セパレータ箔が正極素材箔および負極素材箔によって押し付けられる際において、セパレータ箔にかかる引張力が小さくなる。従って、セパレータ箔が破れることを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一実施形態の蓄電デバイスの概略斜視図である。
図2図1の蓄電デバイスの概略平面図である。
図3図1の蓄電デバイスの蓄電部材の製造方法を示す斜視図である。
図4A図3に示す蓄電部材の製造方法における初期状態を示す。
図4B図4Aに示す初期状態から複数の正極電極箔を移動させた状態を示す。
図4C図4Bに示す状態から1つの負極電極箔を移動させた状態を示す。
図4D図4Cに示す状態から他の1つの負極電極箔を移動させた状態を示す。
図4E図4Dに示す状態の部材を押しつぶすことにより蓄電部材を製造する状態を示す。
図5】第二実施形態の蓄電デバイスの蓄電部材の製造方法の初期状態を示す図である。
図6】第三実施形態の蓄電デバイスの蓄電部材の製造方法を示す斜視図である。
図7A】蓄電部材の製造方法における初期状態を示す。
図7B図7Aに示す状態から複数の正極電極箔を移動させた状態を示す。
図7C図7Bに示す状態から1つの負極電極箔を移動させた状態を示す。
図7D図7Cに示す状態から負極電極箔を順次移動させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一実施形態>
(蓄電デバイスの構成)
蓄電デバイスは、キャパシタまたは電池等である。本実施形態においては、蓄電デバイスは、リチウムイオンキャパシタ1を例に挙げて、図1および図2を参照して説明する。図1および図2に示すように、リチウムイオンキャパシタ1は、蓄電部材10と、蓄電部材10を内包してシールする袋状のカバー21(図1において二点差線で示す)と、カバー21内に封入される電解液22とを備える。なお、リチウムイオンキャパシタ1は、図示しないが、製造過程においてリチウムイオンを負極電極箔12a,12bにドーピングするためのドーピング部材を備える。
【0020】
蓄電部材10は、複数枚の正極電極箔11a,11bと、複数枚の負極電極箔12a,12bと、複数枚のセパレータ箔13と、正極外部端子14a,14bと、負極外部端子15a,15bとを備える。蓄電部材10は、図2に示すように、正極電極箔11a,11bと負極電極箔12a,12bとがセパレータ箔13を介して交互に積層される。つまり、蓄電部材10は、正極電極箔11a→セパレータ箔13→負極電極箔12a→セパレータ箔13→正極電極箔11b→セパレータ箔13→負極電極箔12bの順に繰り返して積層される。ここで、1枚の正極電極箔11a,11bの長さは、図1および図2に示す蓄電部材10の横幅に相当する。また、1枚の負極電極箔12a,12bの長さは、図1および図2に示す蓄電部材10の横幅に相当する。
【0021】
正極外部端子14a,14bは、それぞれの正極電極箔11a,11bの端部(図1の右上端)に一体的に設けられる。複数の正極外部端子14a,14bは、例えば溶接等により電気的に接続される。また、負極外部端子15a,15bは、それぞれの負極電極箔12a,12bの端部(図1の左上端)に一体的に設けられる。複数の負極外部端子15a,15bは、例えば溶接等により電気的に接続される。正極外部端子14a,14bおよび負極外部端子15a,15bは、外部機器と接続するための端子であり、カバー21から突出して設けられている。
【0022】
図1および図2に示すように、隣り合う2枚の正極電極箔11a,11bとそれらに設けられる正極外部端子14a,14bとは、一体的な正極素材箔30により形成される。つまり、1枚の正極素材箔30は、中央部にて折り曲げられることにより、一方の正極電極箔11aおよび一方の正極外部端子14aを有する面と、他方の正極電極箔11bおよび他方の正極外部端子14bを有する面とに区画される。つまり、1枚の正極素材箔30の長さは、正極電極箔11aの2枚分の長さからなる。
【0023】
正極素材箔30は、正極集電箔31と、正極集電箔31の両面に設けられる正極活物質層32,33とを備える。従って、正極電極箔11a,11bのそれぞれは、正極集電箔31とその両面に正極活物質層32,33とを備える。ここで、正極集電箔31は、アルミニウムやアルミニウム合金等により形成される。正極活物質層32,33は、アニオン、カチオンを可逆的に担持できる炭素材料、バインダおよび導電剤等により形成される。導電剤は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、天然黒鉛、熱膨張黒鉛炭素繊維等を用いる。バインダは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム系バインダ、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂等を用いる。
【0024】
また、図1および図2に示すように、隣り合う2枚の負極電極箔12a,12bとそれらに設けられる負極外部端子15a,15bとは、一体的な負極素材箔40により形成される。つまり、1枚の負極素材箔40は、中央部にて折り曲げられることにより、一方の負極電極箔12aおよび一方の負極外部端子15aを有する面と、他方の負極電極箔12bおよび他方の負極外部端子15bを有する面とに区画される。つまり、1枚の負極素材箔40の長さは、負極電極箔12aの2枚分の長さからなる。
【0025】
負極素材箔40は、負極集電箔41と、負極集電箔41の両面に設けられる負極活物質層42,43とを備える。従って、負極電極箔12a,12bのそれぞれは、負極集電箔41とその両面に負極活物質層42,43とを備える。ここで、負極集電箔41は、銅や銅合金、ニッケルステンレス等により形成される。負極活物質層42,43は、グラファイト、不定形炭素等の炭素材料、バインダおよび導電剤等により形成される。導電剤およびバインダは、正極活物質層32,33の導電剤およびバインダと同様のものを用いる。
【0026】
図2に示すように、折り曲げられた正極素材箔30の他方の面(11b,14b)が、折り曲げられた負極素材箔40の内側に配置される。つまり、正極素材箔30の他方の面(11b,14b)は、負極素材箔40の一方の面(12a,15a)および他方の面(12b,15b)に対向する。また、折り曲げられた負極素材箔40の一方の面(12a,15a)が、折り曲げられた正極素材箔30の内側に配置される。つまり、負極素材箔40の一方の面(12a,15a)は、正極素材箔30の一方の面(11a,14a)および他方の面(11b,14b)に対向する。
【0027】
ただし、正極素材箔30と負極素材箔40との間には、連続して形成された1つの帯状のセパレータ箔13が介在している。セパレータ箔13は、ビスコースレイヨンや天然セルロースの抄紙やポリエチレンやポリプロピレンなどの不織布等を用いる。セパレータ箔13は、絶縁性があって電解液22を浸透しやすい材料であることが必要である。
【0028】
また、図2に示すように、1枚の正極素材箔30、1枚の負極素材箔40およびそれらの間に介在するセパレータ箔13が、1つのユニット50を構成する。蓄電部材10は、複数のユニット50を積層することにより形成される。このとき、セパレータ箔13は、複数のユニット50に跨って連続的につながっている。
【0029】
以上より構成されるリチウムイオンキャパシタ1は、複数の正極電極箔11a,11bと複数の負極電極箔12a,12bとをセパレータ箔13を介して積層されている。ここで、リチウムイオンキャパシタ1において各電極箔11a,11b,12a,12bにおける活物質層32,33,42,43の対向面積の大きさが大きいほど、リチウムイオンキャパシタ1は高性能となる。さらに、リチウムイオンキャパシタ1の大きさは、各電極箔11a,11b,12a,12bそれぞれの大きさ、および、電極箔11a,11b,12a,12bの位置ずれの大きさに起因する。つまり、電極箔11a,11b,12a,12bの位置ずれが大きいほど、リチウムイオンキャパシタ1は大型化する。ここで、リチウムイオンキャパシタ1は、高性能化と小型化の両立を図ることが求められる。本実施形態のリチウムイオンキャパシタ1は、上記構成を採用することとともに、以下に説明する蓄電部材10の製造方法を適用することにより、高性能化と小型化の両立をなしえた。
【0030】
(蓄電部材の製造方法)
次に、蓄電部材10の製造方法について、図3および図4A図4Eを参照して説明する。ここで、便宜上、図4A図4Eにおいて、セパレータ箔13は、破線にて示す。図3に示すように、正極電極箔11aの2枚分の長さからなる正極素材箔30を準備して、正極素材箔30を中央部にて折り曲げることにより、折り曲げられた正極素材箔30が形成される(正極折り曲げ工程)。この状態における正極素材箔30は、開口側ほど広くなるように形成される。折り曲げられた正極素材箔30は複数枚準備される。
【0031】
負極電極箔12aの2枚分の長さからなる負極素材箔40を準備して、負極素材箔40を中央部にて折り曲げることにより、折り曲げられた負極素材箔40が形成される(負極折り曲げ工程)。この状態における負極素材箔40は、開口側ほど広くなるように形成される。折り曲げられた負極素材箔40は複数枚準備される。
【0032】
続いて、セパレータ箔13が、上側ローラ61,61と下側ローラ62,62とにより把持されており、所定の張力となるように調整される(セパレータ箔配置工程)。本実施形態においては、セパレータ箔13は、折り目を有しない帯状に形成されている。
【0033】
続いて、図3および図4Aに示すように、複数の正極素材箔30の折り曲げ部が、把持装置70により把持され、セパレータ箔13の一方の面側に配置される。このとき、複数の正極素材箔30の開口側が、セパレータ箔13側を向く。複数の負極素材箔40の折り曲げ部は、独立して動作可能な把持装置81,82により把持され、セパレータ箔13の他方の面側に配置される。このとき、複数の負極素材箔40の開口側が、セパレータ箔13側を向く。つまり、正極素材箔30と負極素材箔40との間にセパレータ箔13を介在させた状態で、折り曲げられた正極素材箔30の開口側と折り曲げられた負極素材箔40の開口側とを向かい合わせて配置する(初期配置工程)。
【0034】
より詳細には、図4Aに示すように、同一ユニット50を形成する正極素材箔30の谷底と負極素材箔40の一端部とが対向する位置に位置する。同時に、同一ユニット50を形成する正極素材箔30の一端部と負極素材箔40の谷底とが対向する位置に位置する。
【0035】
続いて、把持装置70が移動することにより、複数の正極素材箔30が同時にセパレータ箔13に接触し、図4Bに示す所定位置へ移動する。このとき、上側ローラ61,61および下側ローラ62,62が動作することにより、セパレータ箔13の張力が調整される。ここで、把持装置70は、複数の正極素材箔30を一体的に把持しており、複数の正極素材箔30の相対移動を規制する。従って、把持装置70に把持された複数の正極素材箔30の相対的な位置は、常に一定となる。
【0036】
続いて、図4Cに示すように、1つの負極素材箔40を把持する把持装置81が、セパレータ箔13側、すなわち正極素材箔30に近付くように移動する。まず、1つの負極素材箔40の開口端が、セパレータ箔13に接触する。さらに1つの負極素材箔40が移動するとき、当該負極素材箔40の一端側が、セパレータ箔13を押しつけながら、1つの正極素材箔30の開口側から谷底側に向かって挿入される。当該負極素材箔40は正極素材箔30の谷底に規制されて、負極素材箔40と正極素材箔30とは位置決めされる(位置決め工程)。ここで、上記においては、負極素材箔40の一端部が正極素材箔30の谷底に規制されることとして説明したが、このことは、同時に、正極素材箔30の一端部が負極素材箔40の谷底に規制されることとなる。このように、それぞれの谷底とそれぞれの一端部とが規制し合うことにより、両者30,40が位置決めされる。つまり、1つのユニット50が形成される。
【0037】
続いて、図4Dに示すように、他の負極素材箔40を把持する把持装置82が、セパレータ箔13側、すなわち正極素材箔30に近付くように移動する。このときの動作は、上述したように把持装置81を動作した場合と同様である。このようにして、もう1つのユニット50が形成される。
【0038】
続いて、図4Eに示すように、セパレータ箔13を上側ローラ61,61および下側ローラ62,62から分離して、複数の正極素材箔30、複数の負極素材箔40およびセパレータ箔13に対して、図4Eの上下方向から力を付与して押しつぶすことにより、蓄電部材10が製造される。このとき、図4Eにおいて、蓄電部材10の構成部材30,40,13に対して、上下方向への相対移動を許容するが、左右方向の相対移動は規制される。
【0039】
(本実施形態の効果)
上述したように、蓄電部材10は、正極電極箔11aの2枚分の長さからなる正極素材箔30と、負極電極箔12aの2枚分の長さからなる負極素材箔40とを用いる。そして、折り曲げられた正極素材箔30の谷底と折り曲げられた負極素材箔40の一端部との規制によって、正極素材箔30と負極素材箔40とが位置決めされる。ここで、正極素材箔30および負極素材箔40はセパレータ箔13に比べて高剛性であるため、正極素材箔30および負極素材箔40の谷底の剛性は、セパレータ箔13の折り目の剛性より高い。従って、上記により、正極素材箔30と負極素材箔40とが高精度に位置決めされる。その結果、製造されたリチウムイオンキャパシタ1は、高性能化と小型化との両立を図ることができる。
【0040】
さらに、それぞれのユニット50,50において、正極素材箔30と負極素材箔40とは高精度に位置決めされる。そして、複数のユニット50,50を位置決めすることで、多数層の蓄電部材10が形成される。従って、高性能化および小型化の両立を図ることができるリチウムイオンキャパシタ1が製造される。さらに、正極素材箔30および負極素材箔40は、両面に活物質層32,33,42,43を備える。そして、複数のユニット50,50を積層することで、蓄電部材10が製造される。つまり、あるユニット50の端面が正極素材箔30である場合に、当該ユニット50に重ね合わせる別のユニット50の端面が負極素材箔40となるようにする。こうすることで、ユニット50,50の重ね合わせ部分においても、蓄電機能を有する。従って、上記構成のリチウムイオンキャパシタ1は、正極素材箔30および負極素材箔40の数を少なくしつつ、蓄電性能を高くすることができる。
【0041】
特に、把持装置70が、複数の正極素材箔30,30の相対移動を規制している。従って、複数の正極素材箔30,30同士は、高精度に位置決め可能となる。この状態で、両素材箔30,40を近付けることにより、各正極素材箔30,30と各負極素材箔40,40とが重ね合わさるように位置決めする。ここで、それぞれのユニット50,50においては、上述したように、正極素材箔30の谷底と負極素材箔40の一端部との規制によって、両素材箔30,40が高精度に位置決めされる。さらに、複数の正極素材箔30,30の相対移動が規制されているため、複数のユニット50,50は、初期状態の規制に依存することになる。つまり、複数のユニット50,50の位置決めが高精度にできる。従って、蓄電部材10は、高性能化および小型化の両立を図ることができる。
【0042】
また、セパレータ箔13は、1つの帯状に形成され、初期配置工程において、複数の正極素材箔30,30と複数の負極素材箔40,40との間に介在させる。これにより、セパレータ箔13を小さく切断する必要がなく、製造の容易化が図れる。
【0043】
特に、本実施形態においては、セパレータ箔13は、折り目を有しない帯状に形成され、位置決め工程において折り曲げられた正極素材箔30と折り曲げられた負極素材箔40とを相対的に近付けることにより折り曲げられる。これにより、セパレータ箔13に予め折り目を付ける必要がないため、製造コストを低減できる。この場合、セパレータ箔13は、正極素材箔30および負極素材箔40によって折り曲げられる。
【0044】
<第二実施形態>
第一実施形態においては、図3および図4Aに示すように、セパレータ箔13は折り目を有しない帯状のものを用いた。第二実施形態においては、図5に示すように、セパレータ箔13は、折り曲げられた正極素材箔30および折り曲げられた負極素材箔40に対応するように折り目を有する帯状に形成される。この場合、位置決め工程において、折り曲げられた正極素材箔30と折り曲げられた負極素材箔40とを相対的に近付けることにより正極素材箔30と負極素材箔40との間に介在される。これにより、セパレータ箔13が正極素材箔30および負極素材箔40によって押し付けられる際において、セパレータ箔13にかかる引張力が小さくなる。従って、セパレータ箔13が破れることを確実に防止できる。
【0045】
<第三実施形態>
第一実施形態においては、正極素材箔30および負極素材箔40は、集電箔31,41の両面に活物質層32,33,42,43を有することとした。この他に、集電箔31,41の片面のみに活物質層32,42を有する素材箔130,140を用いることができる。この場合の蓄電部材10の製造方法について、図6および図7A図7Dを参照して説明する。
【0046】
初期配置工程において、図6および図7Aに示すように、1つの正極素材箔130の谷底と2つの負極素材箔140の一端部とが対向するように位置決めする。また、1つの負極素材箔140の谷底と2つの正極素材箔130の一端部とが対向するように位置決めする。ここで、把持装置70は、複数の正極素材箔130を把持する。一方、それぞれの負極素材箔140は、独立して動作可能な把持装置81〜84により把持される。
【0047】
続いて、図7Bに示すように、把持装置70が移動して、複数の正極素材箔130がセパレータ箔13に接触する。続いて、図7Cに示すように、把持装置81が移動して、1つの負極素材箔140が1つの正極素材箔130に近付く。そして、当該負極素材箔140の一端部が正極素材箔130の谷底に規制され、両者130,140が位置決めされる。図7Dに示すように、他の負極素材箔140も同様に位置決めされる。そして、図7Dの上下方向に押しつぶされることにより、蓄電部材10が製造される。
【符号の説明】
【0048】
1:リチウムイオンキャパシタ、 10:蓄電部材、 11a,11b:正極電極箔、 12a,12b:負極電極箔、 13:セパレータ箔、 14a,14b:正極外部端子、 15a,15b:負極外部端子、 21:カバー、 22:電解液、 30,130:正極素材箔、 31:正極集電箔、 32,33:正極活物質層、 40,140:負極素材箔、 41:負極集電箔、 42,43:負極活物質層、 50:ユニット、 61:上側ローラ、 62:下側ローラ、 70、81〜84:把持装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D