【実施例】
【0072】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)ガーレ透気度
B型ガーレーデンソメーター(安田精機製作所製)を使用し、JIS−P8117(1998)に規定された方法に従って測定を行った。フィルム試料を直径28.6mm、面積642mm
2の円孔に締め付け、内筒により(内筒質量567g)、筒内の空気を試験円孔部から筒外へ通過させ、空気100mlが通過する時間を測定することでガーレ透気度とした。幅方向に、100mm間隔で3箇所測定し、平均値を求めた。
【0073】
(2)熱収縮率
セイコーインスツルメンツ社製の熱・応用・歪み測定装置TMA/SS6000を用いて以下の条件で測定し、200℃での寸法変化率を求めた。
【0074】
試料サイズ:幅4mm、長さ15mm
昇温範囲:25〜400℃
昇温速度:10℃/分
測定荷重:1.11N/mm
2
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中
200℃での寸法変化率は、温度25℃、相対湿度65%における初期のフィルム長さをL1(=15mm)、温度200℃におけるフィルム長さをL2とし、以下の式で求めた。
【0075】
200℃での熱収縮率(%)=((L1−L2)/L1)×100
(3)厚み方向の電気抵抗
(株)カスタム社製のデジタルテスターCDM−17Dを用い、100mm角の正方形に切り取った導電層積層多孔性フィルムの表裏面に測定端子を接触させて測定を行った。かかる測定を5回行い、その平均値を本発明における厚み方向の電気抵抗とした。
【0076】
(4)空孔率
100mm角の試料の厚みと質量を測定し、フィルム試料の見かけの密度(かさ密度)d
1を求めた。これとポリマーの真密度d
0より、下式を用いて空孔率を算出した。
【0077】
空孔率(%)=(1−d
1/d
0)×100
(5)多孔性フィルム厚み(t
1)及び導電層厚み測定
フィルムの断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用いて断面観察を行い、多孔性フィルム厚みt
1と導電層厚みt
2を10箇所測定し、その平均値t
2を求めた。また、(t
1-t
2)/t
2を求めた。
【0078】
(6)表面比抵抗
表面比抵抗の範囲によって、測定可能な装置が異なるため、まずi)の方法でフィルムの測定を行い、表面抵抗率が低すぎて測定不可能なサンプルをii)の方法で測定する。5回の測定結果の平均値を本発明における表面比抵抗とする。
【0079】
i)高抵抗率測定 JIS−C2151(1990年)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。
【0080】
・測定装置:デジタル超高抵抗/微小電流計R8340 アドバンテスト(株)製
・印加電圧:100V
・印加時間:10秒間
・測定単位:Ω
・測定環境:温度23℃湿度65%RH
・測定回数:3回測定する。
【0081】
ii)低抵抗率測定
JIS−K7194(1994年)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。
【0082】
・測定装置:ロレスターEP MCP−T360 三菱化学製
・測定環境:温度23℃湿度65%RH
・測定回数:3回測定する。
【0083】
(7)電池の作製
宝泉(株)製の厚みが40μmのリチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)を活物質として用いた正極を直径14.85mmの円形に打ち抜いた。また、宝泉(株)製の厚みが50μmの黒鉛を活物質として用いた負極を直径15.80mmの円形に打ち抜いた。次に、導電層積層多孔性フィルムまたは多孔性フィルムを直径16.5mmの円形に打ち抜いた。正極活物質と負極活物質面が対向するように、下から負極、導電層積層多孔性フィルムまたは多孔性フィルム、正極の順に重ね、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF
6を濃度1モル/リットルとなるように溶解させた電解液を注入して密閉し、2032型コインセルを作製した。導電層が片面にのみ形成されている場合は導電層と正極が対向するように重ねた。導電層が両面に形成されている場合は、導電性の高い(表面比抵抗の低い)面を正極と対向するように重ねた。
【0084】
(8)電池抵抗及び出力特性
作製した二次電池について、25℃の雰囲気下で試験を行った。
【0085】
(仕上充放電)
1.3mAの電流値で4.2Vとなるまで定電流充電を行い、4.2Vの電圧で電流値が50μAになるまで定電圧充電を行った。続いて、2.6mAの電流値で2.7Vの電圧まで定電流放電を行った。充電及び放電が交互となるように、上記充電・放電を合計4回行った。充電時間が24時間を越えるセルはその時点で試験を終了し、仕上充放電の評価を×とした。かかる操作が可能なセルは仕上充放電の評価を○とした。4回目の放電容量が2.6mA±0.26mAのセルを用いて以降の試験を行った。
【0086】
(電池抵抗及び出力特性)
仕上充放電後のセルを用いて電池抵抗及び出力特性試験を行った。充放電試験の手順を次に示す。
【0087】
充電(1):1.3mAの電流値で4.2Vとなるまで定電流充電を行い、4.2Vの電圧で電流値が50μAになるまで定電圧充電を行った。
【0088】
放電(1):2.6mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(1)を得た。
【0089】
充電(2):充電(1)と同条件にて行った。
【0090】
放電(2):5.2mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(2)を得た。
【0091】
放電(2’):放電(1)と同条件にて行った。
【0092】
充電(3):充電(1)と同条件にて行った。
【0093】
放電(3):7.8mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(3)を得た。
【0094】
放電(3’):放電(1)と同条件にて行った。
【0095】
充電(4):充電(1)と同条件にて行った。
【0096】
放電(4):13.0mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(4)を得た。
【0097】
放電(4’):放電(1)と同条件にて行った。
【0098】
充電(5):充電(1)と同条件にて行った。
【0099】
放電(5):26.0mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(5)を得た。
【0100】
放電(5’):放電(1)と同条件にて行った
電池抵抗は放電(1)(2)(3)(4)(5)の際のt=10sec.の電圧をY軸に、放電電流をX軸としてプロットし、その傾きより電池抵抗を求めた。電池抵抗が21Ω以上の範囲を×、19Ω以上21Ω未満の範囲を△、17Ω以上19Ω未満の範囲を○、17Ω未満を◎とした。また、仕上充放電が×のセルは××と評価した。
【0101】
出力特性は
(放電容量(5)/放電容量(1))×100
の値にて定義した。出力特性が68%未満を×、68%以上71%未満の範囲を△、71%以上74%未満の範囲を○、74%以上の範囲を◎とした。また、仕上充放電が×のセルは××と評価した。
【0102】
(9)寿命特性
仕上充放電の評価が○となるセルを用いて寿命特性試験を行った。充電、放電を1サイクルとし、下記条件を100回繰返し行った。
【0103】
充電:25℃、2.6mAの定電流充電で4.2Vまで充電し、充電容量を得た。
【0104】
放電:25℃、2.6mAの定電流放電で2.7Vまで放電し、放電容量を得た。
【0105】
〈寿命容量維持率の算出〉
(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100で放電容量維持率とした。放電容量維持率が60%未満を×、60%以上70%未満を△、70%以上80%未満の場合を○、80%以上の場合を◎とした。
【0106】
(10)短絡性
仕上充放電後のセルを24時間、室温にて放置し、その後の電圧を測定し、2.5V以上あるセルは短絡無し、2.5V未満であるセルを短絡有りと判断した。電圧測定は(株)カスタム社製のデジタルテスターCDM−17Dを用い、正負極間の電池電圧を測定した。作製したセルのうち短絡有りのセルが50%以上の場合は短絡性に難があり、×と評価した。すべてのセルで短絡があった場合は××と評価した。短絡ありのセルが20%を超えて、50%未満である場合は△、20%以下の場合は短絡性は良好であり、○と評価した。
【0107】
(11)過充電検出性
短絡性の評価が△または○となるセルを用い、下記2条件にて過充電検出性を確認した。
【0108】
本願発明において「過充電検出性を有する」とは、以下の2条件の少なくとも一つの条件において「過充電検出性あり」と判定されることをいう。
【0109】
<1>25℃、1.3mAの定電流充電で4時間充電した。定電流充電終了後、2時間放置した後、電圧を測定し、絶対値が0.1V未満であった場合は過充電検出性ありとし、○とした。電圧の絶対値が0.1V以上であった場合は過充電検出性なしで×とした。
【0110】
<2>上記<1>と同様の方法で、定電流充電の時間を8時間としたこと以外は同様とし、電圧の絶対値が0.1V未満であった場合は過充電検出性ありとし、◎とした。電圧の絶対値が0.1V以上であった場合は過充電検出性なしで×とした。
【0111】
(
参考例1)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに80モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと20モル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを溶解させ、これに98.5モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロリドを添加し、2時間攪拌により重合後、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が11質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。この溶液を水で再沈してポリマーを取り出した。
【0112】
このポリマーを2質量%、N−メチル−2−ピロリドン70質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)28質量%となるように量り取り、ポリマーをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた後ポリエチレングリコールを加え、均一に完全相溶したポリマー溶液を得た。
【0113】
このポリマー溶液を、バーコーターを用いてガラス板上に約100μmの膜状に形成し、20℃、相対湿度80%に調整されたオーブン中に1時間静置し、析出を行い多孔質フィルムとした。この多孔質フィルムをガラス板上から剥離し、50℃の水浴にて1時間、溶媒と不純物の抽出を行った。その後アルミ製の枠に固定し、3時間風乾後、320℃にて1分間の熱処理を行い、多孔性フィルムを得た。
【0114】
得られた多孔性フィルムの片面に、固体炭素材料としてカーボンナノチューブを用い、下記の組成の分散液をマイクロバーにて導電層厚みが4μmとなるように均一に塗布し、100℃に調整したオーブン中に1時間静置し、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0115】
<分散液組成>
・固体炭素材料:カーボンナノチューブ 98質量部
・結着剤:ポリテトラフルオロエチレン 1質量部
・増粘剤:カルボキシメチルセルロース 1質量部
・溶剤:蒸留水 1,900質量部
得られた導電層積層多孔性フィルムの特性を、表1に示す。また、電池として使用した際には、仕上充放電は可能であり、電池抵抗は18.6Ωで評価は○、出力特性は75.2%で評価は○、寿命特性は74%で評価は○であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0116】
仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中4セルあり、短絡性は△であった。
【0117】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は4.9Vで×であり過充電検出性はなかった。
【0118】
(実施例2)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、真空蒸着装置の減圧度を1.5×10
−3Paとし、純度99.5質量%のAuを加熱蒸発させ、冷却ロールの温度を25℃として、厚さ100nmの導電層を形成した導電層積層多孔性フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表1に示す。
【0119】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は15.5Ωで評価は◎、出力特性は78.1%で評価は◎、寿命特性は84%で評価は◎であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0120】
仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中5セルあり、短絡性は△であった。
【0121】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は0.01Vで◎であり過充電検出性も有した。
【0122】
(
参考例3)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、真空蒸着装置の減圧度を1.5×10
−3Paとし、純度99.5質量%のAlを加熱蒸発させ、冷却ロールの温度を25℃として、厚さ100nmの導電層を形成した導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0123】
得られた導電層積層多孔性フィルムの特性を表1に示す。
【0124】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は16.4Ωで評価は◎、出力特性は79.0%で評価は◎、寿命特性は81%で評価は◎であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0125】
また、仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中4セルあり、短絡性は△であった。
【0126】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は4.9Vで×であり、過充電検出性はなかった。
【0127】
(
参考例4)
参考例1と同様にして得られたポリマーを用いて、ポリマーを2質量%、N−メチル−2−ピロリドン70質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)28質量%となるように量り取り、ポリマーをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた後ポリエチレングリコールを加え、均一に完全相溶したポリマー溶液を得た。
【0128】
このポリマー溶液を、バーコーターを用いてガラス板上に約50μmの膜状に形成し、−10℃、相対湿度100%に調整されたオーブン中に10分間静置し、析出を行い多孔質フィルムとした。この多孔質フィルムをガラス板上から剥離し、50℃の水浴にて1時間、溶媒と不純物の抽出を行った。その後アルミ製の枠に固定し、3時間風乾後、320℃にて1分間の熱処理を行い、多孔性フィルムを得た。
【0129】
得られた多孔性フィルム上に、
参考例3と同様の方法にて厚さ100nmのAlを導電層として形成した、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0130】
得られた導電層積層多孔性フィルムの特性を表1に示す。また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は16.8Ωで評価は◎、出力特性は77.2%で評価は◎、寿命特性は80%で評価は◎であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0131】
また、仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中3セルあり、短絡性は○で、短絡性にも優れるセルであった。
【0132】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は4.9Vで×であり、過充電検出性はなかった。
【0133】
(
参考例5)
参考例1と同様にして得られたポリマーを用いて、ポリマーを10質量%、N−メチル−2−ピロリドン70質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)20質量%となるように量り取り、ポリマーをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた後ポリエチレングリコールを加え、均一に完全相溶したポリマー溶液を得た。
【0134】
このポリマー溶液を、バーコーターを用いてガラス板上に約50μmの膜状に形成し、20℃、相対湿度80%に調整されたオーブン中に1時間静置し、析出を行い多孔質フィルムとした。この多孔質フィルムをガラス板上から剥離し、50℃の水浴にて1時間、溶媒と不純物の抽出を行った。その後アルミ製の枠に固定し、3時間風乾後、320℃にて1分間の熱処理を行い、多孔性フィルムを得た。
【0135】
得られた多孔性フィルム上に、
参考例3と同様の方法にて厚さ100nmのAlを導電層として形成した、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0136】
得られた導電層積層多孔性フィルムの特性を表1に示す。また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は17.2Ωで評価は○、出力特性は76.5%で評価は○、寿命特性は78%で評価は○であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0137】
また、仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中2セルあり、短絡性は○で、短絡性にも優れるセルであった。
【0138】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は4.9Vで×であり、寿命特性には優れるが過充電検出性はなかった。
【0139】
(実施例6)
実施例2において、Au代わりにPtを用いたこと以外は同様にして導電層積層多孔性フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表1に示す。
【0140】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は15.5Ωで評価は◎、出力特性は78.1%で評価は◎、寿命特性は82%で評価は◎であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0141】
仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中5セルあり、短絡性は△であった。
【0142】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が0.002Vで○、過充電検出性<2>は0.001Vで◎であり、過充電検出性を有した。
【0143】
(比較例1)
参考例1と同様にして得られた多孔性フィルムを用いた。電池として使用した際の評価結果を表2に示す。電池抵抗が19.7Ωと高く、出力特性は71%、寿命特性は62%で評価は△と劣り、電池特性の悪い電池となった。
【0144】
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂からなる多孔性フィルムを用いた。
【0145】
ポリプロピレン樹脂は下記のものを用いた。
【0146】
ポリプロピレン:住友化学(株)製ポリプロピレンWF836DG3・・・99.70質量%
添加剤:新日本理化(株)製N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカフボサミドNU−110・・・0.05質量%
酸化防止剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、IRGANOX1010・・・0.15質量%
熱安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、IRGAFOS168を0.10質量%
これを二軸押出機にて供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽にて冷却して、チップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
【0147】
得られたポリプロピレン樹脂を一軸押出機にて220℃で溶融・押出しし、200℃に加熱された口金から押し出し、120℃に加熱されたキャストドラムにキャストし、フィルムの非ドラム面からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながらシート状に成型し、未延伸シートを得た。
【0148】
得られた未延伸シートを120℃に加熱されたロール群に通して加熱し、ロールの周速差により縦方向に4倍延伸し、95℃に冷却した。引き続きこの1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導入して135℃に加熱しながら横方向に6倍に延伸した。ついで、テンター内で横方向に5%の弛緩を与えながら150℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して厚さ20μmの多孔性フィルムを得た。
【0149】
得られた多孔性フィルムを用い、実施例2と同様の方法にて導電層を積層し、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0150】
得られた導電層積層多孔性フィルムは表1に示すような特性であった。200℃において溶解し、熱収縮率は本発明の範囲外であった。
【0151】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。電池抵抗は52Ωと非常に高く、出力は0.2%と非常に低く、寿命特性も48%と低く、電池特性の悪い電池となった。また、短絡性も非常に悪い電池であった。
【0152】
(比較例3)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、その片面に、固体炭素材料として天然球状黒鉛を用い、下記の組成の分散液をマイクロバーにて導電層の厚みが50μmとなるように均一に塗布し、100℃に調整したオーブン中に1時間静置し、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0153】
<分散液組成>
・固体炭素材料:天然黒鉛 98質量部
・増粘剤:カルボキシメチルセルロース 1質量部
・結着剤:ポリテトラフルオロエチレン 1質量部
・溶剤:蒸留水 100質量部
得られた導電層積層多孔性フィルムは表1に示すような特性であった。導電層の厚みが厚く、本発明の範囲外であった。また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。電池抵抗が32Ωと高く、出力特性は44%と劣り、寿命特性は64%で評価は△となり、電池特性の悪い電池となった。
【0154】
(比較例4)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、真空蒸着装置の減圧度を1.5×10
−3Paとし、純度99.5質量%のAgを加熱蒸発させ、冷却ロールの温度を25℃として、厚さ100nmの導電層を形成した導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0155】
得られた導電層積層多孔性フィルムは表1に示すような特性であった。導電層を構成する材料がAgであり、Li対比の溶解析出電位が3.8Vであり、本発明の範囲外であった。また、AgはLi対比で5.0V以下で不動態被膜(酸化皮膜)を形成せず、本発明の範囲外であった。また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。かかる導電層積層多孔性フィルムを電池として使用した際には、仕上充放電の際に充電時間が24時間を超え、仕上充放電が不可能であり、もはや電池としての性能を評価するに至らなかった。
【0156】
(比較例5)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、真空蒸着装置の減圧度を1.5×10
−3Paとし、純度99.5質量%のCuを加熱蒸発させ、冷却ロールの温度を25℃として、厚さ100nmの導電層を形成した導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0157】
得られた導電層積層多孔性フィルムは表1に示すような特性であった。導電層を構成する材料がCuであり、Li対比の溶解析出電位が3.4Vであり、本発明の範囲外であった。また、CuはLi対比で5.0V以下で不動態被膜(酸化皮膜)を形成せず、本発明の範囲外であった。
【0158】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。かかる導電層積層多孔性フィルムを電池として使用した際には、仕上充放電の際に充電時間が24時間を超え、仕上充放電が不可能であり、もはや電池としての性能を評価するに至らなかった。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】