特許第6357799号(P6357799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6357799導電層積層多孔性フィルム及び電池用セパレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357799
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】導電層積層多孔性フィルム及び電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/02 20060101AFI20180709BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20180709BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   B32B7/02 104
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   B32B5/18
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-36450(P2014-36450)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-208448(P2014-208448A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-68384(P2013-68384)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾形 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佃 明光
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−065984(JP,A)
【文献】 特開2007−305574(JP,A)
【文献】 特開2004−022295(JP,A)
【文献】 特開2012−043629(JP,A)
【文献】 特開2005−196999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H01M 2/14− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性フィルムの少なくとも片面に導電層を有し、ガーレ透気度が1〜10,000秒/mlであり、200℃における熱収縮率が1%以下であり、導電層が以下の(1)〜(3)のいずれかに該当する成分を合計量で50質量%以上含み、導電層の厚みが多孔性フィルムの厚みより小さく、かつ過充電検出性を有することを特徴とする導電層積層多孔性フィルム。
(1)Li対比の電位が4.0V以上5.0V以下の溶解析出電位を有する導電性材料
(2)Li対比の電位が5.0V以下で酸化皮膜を形成する導電性材料
(3)固体炭素材料または導電性高分子材料
【請求項2】
前記(1)に記載される導電性材料が、金、白金およびイリジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の導電層積層多孔性フィルム。
【請求項3】
前記(2)に記載される導電性材料が、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロムおよびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の導電層積層多孔性フィルム。
【請求項4】
固体炭素材料が、活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボンマイクロビーズ、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェンおよび炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、導電性高分子材料が、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリp−フェニレン、ポリp−フェニレンビニレン、ポリジアセチレン、ポリヘプタノジイン、ポリ−2,5−ポリビンジイル、ポリキノリン、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリ−1,1’−フェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリピロール、ポリフラン、ポリエチレンジオキシチオフェンおよびポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の導電層積層多孔性フィルム。
【請求項5】
厚み方向の電気抵抗が1×10Ω以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の導電層積層多孔性フィルム。
【請求項6】
空孔率が20〜85%である、請求項1〜5のいずれかに記載の導電層積層多孔性フィルム。
【請求項7】
表面比抵抗が1×10−2〜1×10Ω/□である、請求項1〜6のいずれかに記載の導電層積層多孔性フィルム。
【請求項8】
多孔性フィルムが芳香族ポリアミドを構成成分とする、請求項1〜7のいずれかに記載の導電層積層多孔性フィルム。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の導電層積層多孔性フィルムを用いてなる電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電層積層多孔性フィルムに関する。特に電池などの蓄電デバイス用のセパレータとして好適に使用できる導電層積層多孔性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池用セパレータとしてはポリエチレンやポリプロピレンといったオレフィン系高分子多孔性フィルムが主に用いられてきた。
【0003】
セパレータ用の多孔性フィルムにおいては、生産性に優れ低コストであることに加え、電池抵抗が低く出力特性が高いこと、フィルムの剛性が高く、耐熱保護層などの機能層の塗工性および電池組立工程適性に優れていること、さらには、多孔性フィルムの耐熱性が高く、異常時に電池の温度が上昇しても安全性が確保されることなどの特性が求められる。
【0004】
これらのうち、耐熱性や安全性確保のために、より高温でも寸法変化の少ない、耐熱性の高いセパレータの必要性が高まっており検討が進められている。
【0005】
耐熱性の高いセパレータとしては、例えば、特許文献1〜3に、耐熱性および化学的安定性に優れる、芳香族ポリアミド(アラミド)からなる多孔性フィルムが開示されている。特許文献1は、アラミド不織布やアラミドペーパーのセパレータとしての用途を開示した例である。また、特許文献2および3は、溶液製膜により得られるアラミド多孔性フィルムを開示した例である。
【0006】
また、電池抵抗の低下と出力特性向上のためには孔構造を制御することが検討されており、大孔径化、高空孔率化などが検討されている(例えば、特許文献4、5)。
【0007】
しかし、孔径を大きくしたり、高空孔率化すると、出力特性は向上するが、フィルムの剛性が低くなり、電池組立時にフィルム切れが起こったり、正負極間の電気絶縁性に難があり、短絡頻度が増加して、電池組立工程適性に難が生じるなど、孔構造の制御だけでは電池特性と、機械特性、電池組立工程適性を同時に満たすことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−335005号公報
【特許文献2】特開2005−209989号公報
【特許文献3】特開2010−77335号公報
【特許文献4】特開平11−302434号公報
【特許文献5】国際公開第2005/61599号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、蓄電池用セパレータとして使用したとき、電池抵抗が低下し、優れた出力特性と寿命特性を得ることができる導電層積層多孔性フィルムを提供することにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、導電層を積層した多孔性フィルムを提供することが可能である。これをセパレータとして用いると、電池抵抗の低下及び出力特性と寿命特性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】蒸着法により導電層を形成する際に用いる巻き取り式の真空蒸着装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の導電層積層多孔性フィルムは、ガーレ透気度が1〜10,000秒/100mlであることが好ましい。より好ましくは1〜200秒/100mlであり、さらに好ましくは1〜150秒/100mlである。ガーレ透気度が1秒/100mlより小さいとフィルムの強度が低下し、10,000秒/100mlより大きいと抵抗が大きく、セパレータとして使用した際に内部抵抗が上昇し、十分な特性が得られないことがある。なお、ガーレ透気度は、JIS−P8117(1998)に規定された方法に従って、空気100mlが通過する時間を測定した値であり、ガーレ透気度の値が小さい方が、より多孔性フィルムの透気性が高いことを示している。
【0013】
本発明の導電層積層多孔性フィルムは、200℃における熱収縮率が1%以下であることが好ましく、−0.5%以上1.0%以下であることがより好ましい。より好ましくは−0.5%以上0.6%以下、さらに好ましくは−0.5%以上0.4%以下である。熱収縮率が1%を超える場合、電池の異常発熱時にセパレータの収縮により、電池端部において短絡が起こることがある。
【0014】
また、熱収縮率が小さいため、導電層を設ける際にフィルムに熱がかかっても孔構造を維持することが可能となる。さらには高温プロセスが適用可能であり、生産速度の向上も可能である。
【0015】
次に多孔性フィルムの作製方法について、芳香族ポリアミドを例として以下に説明するが、これに限定されるものではない。まず、芳香族ポリアミドを、例えば、酸ジクロライドとジアミンを原料として重合する場合には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合により合成する方法や、水系媒体を使用する界面重合で合成する方法等をとることができる。ポリマーの分子量を制御しやすいことから、非プロトン性有機極性溶媒中での溶液重合が好ましい。
【0016】
溶液重合の場合、分子量の高いポリマーを得るために、重合に使用する溶媒の水分率を500ppm以下(質量基準、以下同様)とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましい。使用する酸ジクロライドおよびジアミンの両者を等量用いると超高分子量のポリマーが生成することがあるため、モル比を、一方が他方の95.0〜99.5モル%になるように調整することが好ましい。また、芳香族ポリアミドの重合反応は発熱を伴うが、重合系の温度が上がると、副反応が起きて重合度が十分に上がらないことがあるため、重合中の溶液の温度を40℃以下に冷却することが好ましい。重合中の溶液の温度は30℃以下にすることがより好ましい。さらに、酸ジクロライドとジアミンを原料とする場合、重合反応に伴って塩化水素が副生するが、これを中和する場合には炭酸リチウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機の中和剤、あるいは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機の中和剤を使用するとよい。
【0017】
本発明の芳香族ポリアミドの多孔性フィルムを得るために、芳香族ポリアミドポリマーの対数粘度(ηinh)は、1.8〜3.5dl/gであることが好ましく、2.2〜3.0dl/gであることがより好ましい。対数粘度が1.8dl/g未満であると、ポリマー分子鎖の絡み合いによる鎖間の結合力が減少するため、靭性や強度などの機械特性の低下や、熱収縮率が大きくなることがある。対数粘度が3.5dl/gを超えると、溶媒への溶解性の低下や、芳香族ポリアミド分子が凝集し、多孔性フィルムを製膜することが困難になることがある。
【0018】
次に、本発明の導電層積層多孔性フィルムに用いる多孔性フィルムの製造に好適な製膜原液(以下、単に製膜原液ということがある。)について、芳香族ポリアミドを例として説明する。
【0019】
製膜原液には重合後のポリマー溶液をそのまま使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから上述の非プロトン性有機極性溶媒や硫酸などの無機溶剤に再溶解して使用してもよい。芳香族ポリアミドを単離する方法としては、特に限定しないが、重合後の芳香族ポリアミド溶液を多量の水中に投入することで溶媒および中和塩を水中に抽出し、析出した芳香族ポリアミドのみを分離した後、乾燥させる方法などが挙げられる。また、再溶解時に溶解助剤として金属塩などを添加してもよい。金属塩としては、非プロトン性有機極性溶媒に溶解するアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましく、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウムなどが挙げられる。
【0020】
製膜原液100質量%中の芳香族ポリアミドの含有量は、2〜25質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。製膜原液における芳香族ポリアミドの含有量が2質量%未満であると、靭性や強度などの機械特性の低下や、熱収縮率が大きくなることがある。製膜原液における芳香族ポリアミドの含有量が25質量%を超えると、多孔性フィルムの製造の際に芳香族ポリアミドポリマー同士の凝集が起こりやすくなり、空孔率やガーレ透気度が本発明の範囲内とならないことがある。
【0021】
製膜原液には孔形成能を向上させる目的で、親水性ポリマーを混合することが好ましい。混合する親水性ポリマーは製膜原液100質量%に対して1〜10質量%であることが好ましく、1〜6質量%であることがより好ましい。製膜原液における親水性ポリマーの含有量が1質量%未満の場合、多孔性フィルムを形成する過程において、芳香族ポリアミド分子が凝集し、多孔性フィルムを製膜することが困難になることがある。含有量が10質量%を超える場合、得られる多孔性フィルムにおいて、孔構造の粗大化や強度の低下が起きることがある。また、最終的に多孔性フィルム中の親水性ポリマーの残存量が多くなり、耐熱性や剛性の低下、親水性ポリマーの電解液中への溶出などが起きることがある。
【0022】
親水性ポリマーとしては、非プロトン性有機極性溶媒に溶解するポリマーのうち、極性の置換基、特に、水酸基、アシル基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を含有するポリマーであることが好ましい。このようなポリマーとして、例えば、ポリビニルピロリドン(以下、PVPと記すことがある。)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン等が挙げられる。芳香族ポリアミドとの相溶性が良いPVPを用いることが最も好ましい。PVPの重量平均分子量は、50万〜300万であることが好ましい。重量平均分子量が50万未満であると、低分子量のPVPが多孔性フィルムに残った場合、多孔性フィルムの耐熱性が低下したり、電池用セパレータとして使用した際にPVPが電解液中に溶出したりする恐れがある。重量平均分子量が300万を超えると、製膜原液の溶液粘度が高くなり過ぎることで多孔性フィルムを製膜することが困難になることがある。親水性ポリマーは重合後の芳香族ポリアミド溶液あるいは再溶解した芳香族ポリアミド溶液中に投入しても、単離した芳香族ポリアミドとともに非プロトン性有機極性溶媒中に投入して混練してもよい。
【0023】
製膜原液には、得られる多孔性フィルムの表面に突起を形成して静摩擦係数を低減し加工性を向上させる目的で、無機粒子または有機粒子を添加してもよい。
【0024】
製膜原液の溶液粘度は、B型粘度計を用いて30℃、10rpmにおいて測定される値が、100〜800Pa・sであることが好ましい。より好ましくは200〜600Pa・sである。溶液粘度が100Pa・s未満であると、靭性や強度などの機械特性がの低下や、熱収縮率が大きくなることがある。溶液粘度が800Pa・sを超えると、多孔性フィルムを製膜することが困難になることがある。
【0025】
上記のようにして調製された製膜原液を用いて、いわゆる溶液製膜法により、多孔性フィルムの製造が行われる。溶液製膜による多孔性フィルムの製造の方法として、代表的には湿式法、析出法などが挙げられるが、凝固浴を用いる湿式法では、形成される孔の粗大化や厚み方向の孔形状の不均一化が起きやすかったり、孔間に隔壁が生じやすい場合がある。そのため、本発明に用いる多孔性フィルムを得るには、孔構造を微細かつ均一に制御しやすい析出法で製膜することが好ましい。
【0026】
析出法による多孔性フィルムの製造を行う場合、まず、製膜原液を口金やダイコーターを用いて、支持体上にキャスト(流延)し、製膜原液のキャスト膜を得た後、ポリマーを析出させて多孔性フィルムを得る。支持体の素材は、特に限定しないが、ステンレス、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂などが挙げられる。キャスト膜からポリマーを析出させる方法として、調温調湿雰囲気下でキャスト膜を吸湿させてポリマーを析出させる方法、キャスト膜を冷却することによりポリマーの溶解性を低下させて相分離または析出させる方法、キャスト膜に霧状の水を吹き付けてポリマーを析出させる方法などが挙げられる。冷却する方法ではポリマーの析出までに時間を要し、孔形状の不均一化が起きやすかったり、生産性が低下することがある。一方、霧状の水を吹き付ける方法では、表面に緻密な層が形成されることがある。これらのことから、調温調湿雰囲気下でキャスト膜に吸湿させる方法が、水の供給速度および量を任意に制御可能で、均質な多孔質構造を短時間で形成させることができることから好ましい。
【0027】
本発明に用いる多孔性フィルムの製造工程において、調温調湿雰囲気の容積絶対湿度は10〜180g/mとすることが好ましい。より好ましくは30〜100g/m、さらに好ましくは40〜90g/mである。また、この絶対湿度を満たす範囲内で、雰囲気の温度は20〜70℃、相対湿度は60〜95%RHとすることが好ましい。より好ましくは、雰囲気の温度は30〜60℃、相対湿度は70〜90%RHである。調温調湿雰囲気下での処理時間は0.5〜5分とすることが好ましく、0.5〜3分とすることがより好ましい。
【0028】
次に、析出させた芳香族ポリアミドのシートを、支持体ごとあるいは支持体から剥離して湿式浴に導入し、溶媒、取り込まれなかった親水性ポリマー、および無機塩等の添加剤の除去を行う。浴組成は特に限定されないが、水、あるいは有機溶媒/水の混合系を用いることが、経済性および取扱いの容易さから好ましい。また、湿式浴中には無機塩が含まれていてもよい。湿式浴温度は、溶媒等を効率的に除去できることから、20℃以上であることが好ましい。浴温度の上限は特に定めることはないが、水の蒸発や沸騰による気泡の発生の影響を考えると、90℃までに抑えることが効率的である。導入時間は、1〜20分にすることが好ましい。さらに、湿式浴中でシートの長手方向(MD)および幅方向(TD)に延伸を施してもよい。
【0029】
次に、脱溶媒を終えたシートに、テンターなどを用いて熱処理を施す。この時、含水状態のシートから水分を乾燥させる前に、シートの長手方向(MD)および幅方向(TD)への延伸を完了させた後、芳香族ポリアミドのガラス転移温度を上回る温度で熱処理を施すことが好ましい。
【0030】
延伸を施すことで、多孔性フィルムの孔形状が面方向に偏平形になり、厚み方向の圧縮に対しての変形弾性率が向上する。さらに、多孔性フィルムの孔経路が面内方向に広がり、液吸い上げ性が向上するため、電池用セパレータとして用いた際に液枯れなどによる電池出力やサイクル特性の低下を抑制できる。
【0031】
多孔性フィルムに導電層を積層する方法としてはコーティング法や物理蒸着法、化学蒸着法などを用いることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
コーティング法による塗工方法としては、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、マイクログラビア方式、ロッドコート方式、バーコート方式、ダイコート方式または、スプレーコート方式等、特に規制はされないが、平滑な塗膜の形成と経済性から考えてバーコート方式が好ましい。
【0033】
コーティング法による導電層の形成方法を説明するが、これに限定されるわけではない。
【0034】
固体炭素材料または導電性高分子材料を分散した塗剤を多孔性フィルム上に滴下し、バーコーターを用いて多孔性フィルム上に均一に塗布し、100℃に調整されたオーブン中に30分静置し、乾燥を行い導電層積層多孔性フィルムとする。
【0035】
固体炭素材料または導電性高分子材料を分散した塗剤には、導電性を損なわない範囲で界面活性剤、結着剤、架橋剤、増粘剤等を添加してもよい。また、導電性高分子材料には導電性を向上させる、所謂ドーピングのための添加剤を加えてもよい。
【0036】
本発明における多孔性フィルムへの化学蒸着法にはプラズマCVD法、光CVD法などがあるが、化学蒸着法は一般に製膜速度が遅く生産性が低い場合がある。物理蒸着法には真空蒸着法、スパッタリング法があるが、真空蒸着法は製膜速度が速く、生産性に優れるため好ましい。
【0037】
真空蒸着法について説明すると、真空蒸着法にはバッチ式と連続式があるが、生産性の観点から連続式が好ましい。連続式は、ロール状のフィルムを巻きだし、ドラムに密着させながら蒸着を行い、ロール状に巻き取る工程を減圧状態に保たれた機器の中で行う方法である。
【0038】
この蒸発源としては抵抗加熱方式のボート形式や、輻射あるいは高周波加熱によるルツボ形式や、電子ビーム加熱による方式などが挙げられる。
【0039】
蒸着法により導電層を設ける場合、導電層の構成材料の純度が99%以上、望ましくは99.5%以上の粒状、ロッド状、タブレット状、ワイヤー状あるいはルツボの形状に加工したものが好ましい。
【0040】
蒸着法による導電層の形成方法を説明するが、これに限定されるわけではない。
【0041】
図1に示す装置構造の巻き取り式の真空蒸着装置を使用し、多孔性フィルムを高分子フィルム基材とし、その片面に、所望の金属を蒸着材料に用いて抵抗加熱方式により所望の金属を蒸気化して導電層を設ける。図1は本発明の導電層積層多孔性フィルムの製造に当たり導電層を形成する工程に用いるための巻き取り式真空蒸着装置の概略図である。まず、巻き取り式真空蒸着装置4の巻き取り室5の中で、巻き出しロール6にセットされた高分子フィルム基材1を搬送速度10m/minで巻き出し、ガイドロール8,9,10を介して、冷却ドラム11に通す。ボート7上には所望の金属のワイヤーが導入されていて、ボート7から金属を蒸発させ、冷却ドラム11上の位置において高分子フィルム基材1の表面に所望の導電層を形成する。その後、導電層を形成した高分子フィルム基材をガイドロール12、13、14を介して、巻き取りロール15に巻き取る。
【0042】
導電層の厚みは多孔性フィルムよりも小さいことが好ましい。かかる要件を満たすことでセパレータとしての厚みを薄くすることが可能となり、電池に用いた際にはセパレータ体積が大きくならず、正極・負極体積の増加が可能となり、電池容量を大きくすることができるようになる。
【0043】
多孔性フィルムの片面に導電層を設けた導電層積層多孔性フィルムを電池に組み込む場合は、導電性が低い材料からなる正極と対向するようにして組み込むことが好ましい。かかる要件を満たすことで正極側の電極反応不均一性を解消し、反応面積の増加及び電池抵抗の低下、さらに出力特性の向上、寿命特性の向上を発現することができる。
【0044】
多孔性フィルムの両面に導電層を設けた導電層積層多孔性フィルムを電池に組み込む場合は、導電性が高い面を正極と対向するようにして組み込むことが好ましい。かかる組み込み方により、正極側の電極反応不均一性解消に効果的となり、電池抵抗の低下、出力特性の向上、寿命特性の向上にはより効果を発現することができる。
【0045】
導電層を構成する導電性材料は次の(1)〜(3)の少なくとも1つの要件を満たす材料であることが好ましい。これらの材料は単一の材料であってもよいし、複数種の材料の混合物であっても構わない。
【0046】
(1)Li対比の電位が4.0V以上5.0V以下の溶解析出電位を有する導電性材料
(2)Li対比の電位が5.0V以下で酸化皮膜を形成する導電性材料
(3)固体炭素材料または導電性高分子材料
なお、ここでいう導電性材料とは導電率が1×100〜1×107Scm−1の範囲にある材料のことをいう。
【0047】
導電層を構成する材料が上記(1)の要件を満たす場合、電池に用いた際の充電反応における正極の強烈な酸化雰囲気でも導電性材料が溶解することなく所望の機能を発現することができるようになる。溶解析出電位がLi対比の電位で4.0V未満の場合、充電時に正極側で導電性材料が溶解し、それが電解液を通じて負極側へ移動すると析出が起こり、内部短絡が起こることがある。Li対比5.0Vを超える溶解析出電位を有する導電性材料を用いても、現在の技術では電池を作動するために必須の電解液が酸化分解により電解液の枯渇が起こり、電池として作動することができないため、5.0Vを超える溶解析出電位を有する導電材料は過剰性能となる。
【0048】
(1)の要件を満たす材料として、金、白金、イリジウムがあり、これら一群から選ばれる少なくとも1種の材料を用いることが好ましい。
【0049】
導電層を構成する材料が(2)の要件を満たす場合、充電反応時に導電性材料に酸化皮膜が形成され、いわゆる不動態を形成し、充電時の強烈な酸化雰囲気でも導電性材料が溶解することなく、所望の機能を発現することができるようになる。5.0Vを超える電位で酸化皮膜を形成できる材料を組み込んでも、現在の技術では電池を作動するために必須の電解液が酸化分解により電解液の枯渇が起こり、5.0Vを超える溶解析出電位を有する導電材料は過剰性能となる。
【0050】
(2)の要件を満たす材料として、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、コバルトがあり、これら一群から選ばれる少なくとも1種の材料を用いることが好ましい。
【0051】
導電層を構成する材料が(3)の要件を満たす場合、充電時においても導電性材料の溶解・析出が起こらず、所望の機能を発現することができる。
【0052】
固体炭素材料としては、例えば、活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボンマイクロビーズ、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、炭素繊維などを用いることができる。これら一群から選ばれる少なくとも1種の材料を用いることが好ましい。
【0053】
また導電性高分子材料としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリp−フェニレン、ポリp−フェニレンビニレン、ポリジアセチレン、ポリヘプタノジイン、ポリ−2,5−ポリビンジイル、ポリキノリン、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリ−1,1’−フェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリピロール、ポリフラン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェンがある。これら一群から選ばれる少なくとも1種の材料を用いることが好ましい。
【0054】
本発明の導電層積層多孔性フィルムは、過充電検出機能(過充電検出性を有すること)を備えることが好ましい。一組の正・負極、セパレータ及び電解液からなる単電池では、過充電は電池の顕著な劣化の原因となり、好ましくない現象である。また単電池を組み合わせて用いる組電池では、過充電による単電池の顕著な劣化に加え、過充電が起こった単電池と過充電が起こっていない単電池の混在により、単電池間の性能バランスが崩れ、組電池として大きな劣化を引き起こすことがあり、単電池で使用する場合よりも過充電は大きな問題となる。しかしながら、組電池では過充電が起こったか否かを判断することが困難であったが、本発明による過充電検出機能を備える導電層積層多孔性フィルムを単電池に用いることで、過充電が起こった単電池は短絡し、電圧が大きく低下するため、組電池においても電圧の変動が確認され、過充電の検出が容易にできるようになる。
【0055】
ここでいう過充電とは、電池を所定の電圧を超えて充電することをいう。リチウムイオン電池はで通常4.2〜4.3V程度が上限電圧とされる。本発明においては4.3Vを超えた充電のことを過充電という。
【0056】
導電層積層多孔性フィルムに過充電検出機能を付与させる方法としては、過充電電圧で溶解・イオン化する材料を正極に含有せしめる方法がある。過充電電圧で溶解・イオン化する材料を正極に含有せしめることで、過充電時に正極側で溶解・イオン化した材料が負極に到達・析出し、正・負極間を繋ぐために短絡が生じ、電圧を大きく低下させることができるようになり過充電検出機能が発現する。過充電検出機能を発現する材料としては、金、イリジウム、白金等があり、これら一群から選ばれる少なくとも1種の材料を用いることが好ましい。
【0057】
これら材料は多孔性フィルムの表面に用いることが好ましく、リチウムイオン電池に用いる場合は正極と対向する面に用いることで過充電検出機能を発現することができる。導電層積層多孔性フィルムにおいては導電層にこれら材料を混在させてもよいし、導電層と多孔性フィルムの間にこれら材料からなる層を設けてもよい。
【0058】
導電層を構成する材料を同定するためには、例えばエネルギー分散型X線分光法や、ICP発光分光分析法、ラマン分光法、NMR法などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0059】
導電層は、上記した導電性材料(成分)を、合計量で50質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含むことである。かかる要件をみたすことでより好ましい導電性を発現することができるようになる。
【0060】
本発明の導電層積層多孔性フィルムの厚みは、3〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜25μmである。3μm未満であると強度が低く、加工時や電池を作製する際にフィルムの破断が起きたり、耐電圧性が低く、セパレータとして使用した際に電極間が短絡する可能性がある。50μmを超えるとセパレータとして使用した際に内部抵抗の上昇により出力が低下したり、電池内に組み込める活物質層の厚みが薄くなり体積あたりの容量が小さくなることがある。導電層積層多孔性フィルムの厚みは、ポリマー構造、重合度、製膜原液濃度、製膜原液粘度、製膜原液中の添加物、流延厚み、多孔化条件、湿式浴温度、熱処理時の温度および延伸条件や、導電層の成型条件など種々の条件により制御することができる。
【0061】
本発明の導電層積層多孔性フィルムは厚み方向の電気抵抗が1×10Ω以上であることが好ましく、1×10Ω以上1×1014Ω以下であることがより好ましい。かかる要件を満たすことでフィルム表裏の電気絶縁性を充分に保持することができ、本発明の導電層積層多孔性フィルムを電池に組み込んだ際に電極間の短絡を減じることができる。電気抵抗が1×10Ω未満であると電気絶縁性が不十分となり、電極間の短絡頻度が増加する傾向にある。
【0062】
本発明の導電層積層多孔性フィルムは、空孔率が20〜85%であることが好ましい。より好ましくは25〜70%である。空孔率が20%未満であると、電池用セパレータとして用いたときに、電解液の保液量が少なく、急速充放電を行った際に、リチウムイオンが溶媒和するのに十分な溶媒分子を補うことができず、分極を起こすことがある。また、空孔量が小さいためにイオン伝導経路が充分でなく、十分な出力が得られないことがある。さらに、充放電を繰り返した際に液枯れによる性能低下が起きることがある。空孔率が85%を超えると、電池セパレータとして使用した際に電極間の短絡が起こりやすくなることがある。さらにはフィルム強度が大きく低下し、ハンドリング性が低下して生産性に劣るようになる。空孔率を上記範囲内とするため、製膜原液の処方、多孔性フィルムの製造条件を上述の範囲内とすることが好ましい。
【0063】
また、本発明の導電層積層多孔性フィルムは、表面比抵抗が1×10−2〜1×10Ω/□であることが好ましい。より好ましくは1×10−2〜1×10Ω/□、さらに好ましくは1×10−2〜1×10Ω/□である。ここでいう表面比抵抗とは、導電層を片面側にのみ設けた場合は導電層側に測定端子を押し当て測定した値のことをいう。導電層を両面に設けた場合は、両面を測定したもののうち、より低い表面比抵抗の数値のことをいう。かかる要件を満たすことで導電層による面内の反応不均一性を解消する効果が顕著に発現することが可能となり、電池抵抗の低下、及び出力特性の向上が見込める。表面比抵抗をかかる範囲とするためには、導電層の構成材料の処方、及び導電層の厚みにより制御が可能となる。
【0064】
また、本発明の導電層積層多孔性フィルムは芳香族ポリアミドを構成成分とすることが好ましい。芳香族ポリアミドとしては、例えば次の化学式(1)及び/または(2)で表される繰り返し単位を有するものを用いることができる。
【0065】
【化1】
【0066】
【化2】
【0067】
ここでAr、Ar、Arとしては、例えば式(3)〜(7)が挙げられ、X、Yとしては、−O−、−CH−、−CO−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH)−、等から選ばれる。
【0068】
【化3】
【0069】
さらに、これらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素等のハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチルやエチル、プロピル等のアルキル基(特にメチル基)、メトキシやエトキシ、プロポキシ等のアルコキシ基等の置換基で置換されているものが、吸湿率を低下させ湿度変化による寸法変化が小さくなるため好ましい。また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。本発明に用いられる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上を占めていることが好ましい。ここでいうパラ配向性とは、例えば芳香環上主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にあるい状態をいう。このパラ配向性が80モル%未満の場合、フィルムの剛性および耐熱性が不十分となる場合がある。さらに芳香族ポリアミドが式(8)で表される繰り返し単位を60モル%以上含有する場合、延伸性及び多孔質特性が特に優れることから好ましい。
【0070】
【化4】
【0071】
本発明の導電層積層多孔性フィルムは、優れた耐熱性を有し、透気性に優れており、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池などの電池用セパレータとして好適に使用できる。本発明の導電層積層多孔性フィルムをリチウムイオン電池用セパレータとして用いた二次電池は、導電層が正極側の反応不均一性を解消する役割を担い、反応面積を増加させるために、電池抵抗の低下及び出力特性が改善し、さらには寿命特性を改善することができる。従って、本発明の導電層積層多孔性フィルムをセパレータとして用いた二次電池は、小型の電子機器を始め、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などの交通手段、産業用クレーンなどの大型の産業機器の動力源として好適に用いることができる。また、太陽電池、風力発電装置などにおける電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0072】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)ガーレ透気度
B型ガーレーデンソメーター(安田精機製作所製)を使用し、JIS−P8117(1998)に規定された方法に従って測定を行った。フィルム試料を直径28.6mm、面積642mmの円孔に締め付け、内筒により(内筒質量567g)、筒内の空気を試験円孔部から筒外へ通過させ、空気100mlが通過する時間を測定することでガーレ透気度とした。幅方向に、100mm間隔で3箇所測定し、平均値を求めた。
【0073】
(2)熱収縮率
セイコーインスツルメンツ社製の熱・応用・歪み測定装置TMA/SS6000を用いて以下の条件で測定し、200℃での寸法変化率を求めた。
【0074】
試料サイズ:幅4mm、長さ15mm
昇温範囲:25〜400℃
昇温速度:10℃/分
測定荷重:1.11N/mm
測定環境:温度23℃、相対湿度65%、大気中
200℃での寸法変化率は、温度25℃、相対湿度65%における初期のフィルム長さをL1(=15mm)、温度200℃におけるフィルム長さをL2とし、以下の式で求めた。
【0075】
200℃での熱収縮率(%)=((L1−L2)/L1)×100
(3)厚み方向の電気抵抗
(株)カスタム社製のデジタルテスターCDM−17Dを用い、100mm角の正方形に切り取った導電層積層多孔性フィルムの表裏面に測定端子を接触させて測定を行った。かかる測定を5回行い、その平均値を本発明における厚み方向の電気抵抗とした。
【0076】
(4)空孔率
100mm角の試料の厚みと質量を測定し、フィルム試料の見かけの密度(かさ密度)dを求めた。これとポリマーの真密度dより、下式を用いて空孔率を算出した。
【0077】
空孔率(%)=(1−d/d)×100
(5)多孔性フィルム厚み(t)及び導電層厚み測定
フィルムの断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用いて断面観察を行い、多孔性フィルム厚みtと導電層厚みtを10箇所測定し、その平均値tを求めた。また、(t-t)/tを求めた。
【0078】
(6)表面比抵抗
表面比抵抗の範囲によって、測定可能な装置が異なるため、まずi)の方法でフィルムの測定を行い、表面抵抗率が低すぎて測定不可能なサンプルをii)の方法で測定する。5回の測定結果の平均値を本発明における表面比抵抗とする。
【0079】
i)高抵抗率測定 JIS−C2151(1990年)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。
【0080】
・測定装置:デジタル超高抵抗/微小電流計R8340 アドバンテスト(株)製
・印加電圧:100V
・印加時間:10秒間
・測定単位:Ω
・測定環境:温度23℃湿度65%RH
・測定回数:3回測定する。
【0081】
ii)低抵抗率測定
JIS−K7194(1994年)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。
【0082】
・測定装置:ロレスターEP MCP−T360 三菱化学製
・測定環境:温度23℃湿度65%RH
・測定回数:3回測定する。
【0083】
(7)電池の作製
宝泉(株)製の厚みが40μmのリチウムコバルト酸化物(LiCoO)を活物質として用いた正極を直径14.85mmの円形に打ち抜いた。また、宝泉(株)製の厚みが50μmの黒鉛を活物質として用いた負極を直径15.80mmの円形に打ち抜いた。次に、導電層積層多孔性フィルムまたは多孔性フィルムを直径16.5mmの円形に打ち抜いた。正極活物質と負極活物質面が対向するように、下から負極、導電層積層多孔性フィルムまたは多孔性フィルム、正極の順に重ね、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1モル/リットルとなるように溶解させた電解液を注入して密閉し、2032型コインセルを作製した。導電層が片面にのみ形成されている場合は導電層と正極が対向するように重ねた。導電層が両面に形成されている場合は、導電性の高い(表面比抵抗の低い)面を正極と対向するように重ねた。
【0084】
(8)電池抵抗及び出力特性
作製した二次電池について、25℃の雰囲気下で試験を行った。
【0085】
(仕上充放電)
1.3mAの電流値で4.2Vとなるまで定電流充電を行い、4.2Vの電圧で電流値が50μAになるまで定電圧充電を行った。続いて、2.6mAの電流値で2.7Vの電圧まで定電流放電を行った。充電及び放電が交互となるように、上記充電・放電を合計4回行った。充電時間が24時間を越えるセルはその時点で試験を終了し、仕上充放電の評価を×とした。かかる操作が可能なセルは仕上充放電の評価を○とした。4回目の放電容量が2.6mA±0.26mAのセルを用いて以降の試験を行った。
【0086】
(電池抵抗及び出力特性)
仕上充放電後のセルを用いて電池抵抗及び出力特性試験を行った。充放電試験の手順を次に示す。
【0087】
充電(1):1.3mAの電流値で4.2Vとなるまで定電流充電を行い、4.2Vの電圧で電流値が50μAになるまで定電圧充電を行った。
【0088】
放電(1):2.6mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(1)を得た。
【0089】
充電(2):充電(1)と同条件にて行った。
【0090】
放電(2):5.2mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(2)を得た。
【0091】
放電(2’):放電(1)と同条件にて行った。
【0092】
充電(3):充電(1)と同条件にて行った。
【0093】
放電(3):7.8mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(3)を得た。
【0094】
放電(3’):放電(1)と同条件にて行った。
【0095】
充電(4):充電(1)と同条件にて行った。
【0096】
放電(4):13.0mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(4)を得た。
【0097】
放電(4’):放電(1)と同条件にて行った。
【0098】
充電(5):充電(1)と同条件にて行った。
【0099】
放電(5):26.0mAの電流値で2.7Vとなるまで定電流放電を行い、放電容量(5)を得た。
【0100】
放電(5’):放電(1)と同条件にて行った
電池抵抗は放電(1)(2)(3)(4)(5)の際のt=10sec.の電圧をY軸に、放電電流をX軸としてプロットし、その傾きより電池抵抗を求めた。電池抵抗が21Ω以上の範囲を×、19Ω以上21Ω未満の範囲を△、17Ω以上19Ω未満の範囲を○、17Ω未満を◎とした。また、仕上充放電が×のセルは××と評価した。
【0101】
出力特性は
(放電容量(5)/放電容量(1))×100
の値にて定義した。出力特性が68%未満を×、68%以上71%未満の範囲を△、71%以上74%未満の範囲を○、74%以上の範囲を◎とした。また、仕上充放電が×のセルは××と評価した。
【0102】
(9)寿命特性
仕上充放電の評価が○となるセルを用いて寿命特性試験を行った。充電、放電を1サイクルとし、下記条件を100回繰返し行った。
【0103】
充電:25℃、2.6mAの定電流充電で4.2Vまで充電し、充電容量を得た。
【0104】
放電:25℃、2.6mAの定電流放電で2.7Vまで放電し、放電容量を得た。
【0105】
〈寿命容量維持率の算出〉
(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100で放電容量維持率とした。放電容量維持率が60%未満を×、60%以上70%未満を△、70%以上80%未満の場合を○、80%以上の場合を◎とした。
【0106】
(10)短絡性
仕上充放電後のセルを24時間、室温にて放置し、その後の電圧を測定し、2.5V以上あるセルは短絡無し、2.5V未満であるセルを短絡有りと判断した。電圧測定は(株)カスタム社製のデジタルテスターCDM−17Dを用い、正負極間の電池電圧を測定した。作製したセルのうち短絡有りのセルが50%以上の場合は短絡性に難があり、×と評価した。すべてのセルで短絡があった場合は××と評価した。短絡ありのセルが20%を超えて、50%未満である場合は△、20%以下の場合は短絡性は良好であり、○と評価した。
【0107】
(11)過充電検出性
短絡性の評価が△または○となるセルを用い、下記2条件にて過充電検出性を確認した。
【0108】
本願発明において「過充電検出性を有する」とは、以下の2条件の少なくとも一つの条件において「過充電検出性あり」と判定されることをいう。
【0109】
<1>25℃、1.3mAの定電流充電で4時間充電した。定電流充電終了後、2時間放置した後、電圧を測定し、絶対値が0.1V未満であった場合は過充電検出性ありとし、○とした。電圧の絶対値が0.1V以上であった場合は過充電検出性なしで×とした。
【0110】
<2>上記<1>と同様の方法で、定電流充電の時間を8時間としたこと以外は同様とし、電圧の絶対値が0.1V未満であった場合は過充電検出性ありとし、◎とした。電圧の絶対値が0.1V以上であった場合は過充電検出性なしで×とした。
【0111】
参考例1)
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに80モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと20モル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを溶解させ、これに98.5モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロリドを添加し、2時間攪拌により重合後、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が11質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。この溶液を水で再沈してポリマーを取り出した。
【0112】
このポリマーを2質量%、N−メチル−2−ピロリドン70質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)28質量%となるように量り取り、ポリマーをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた後ポリエチレングリコールを加え、均一に完全相溶したポリマー溶液を得た。
【0113】
このポリマー溶液を、バーコーターを用いてガラス板上に約100μmの膜状に形成し、20℃、相対湿度80%に調整されたオーブン中に1時間静置し、析出を行い多孔質フィルムとした。この多孔質フィルムをガラス板上から剥離し、50℃の水浴にて1時間、溶媒と不純物の抽出を行った。その後アルミ製の枠に固定し、3時間風乾後、320℃にて1分間の熱処理を行い、多孔性フィルムを得た。
【0114】
得られた多孔性フィルムの片面に、固体炭素材料としてカーボンナノチューブを用い、下記の組成の分散液をマイクロバーにて導電層厚みが4μmとなるように均一に塗布し、100℃に調整したオーブン中に1時間静置し、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0115】
<分散液組成>
・固体炭素材料:カーボンナノチューブ 98質量部
・結着剤:ポリテトラフルオロエチレン 1質量部
・増粘剤:カルボキシメチルセルロース 1質量部
・溶剤:蒸留水 1,900質量部
得られた導電層積層多孔性フィルムの特性を、表1に示す。また、電池として使用した際には、仕上充放電は可能であり、電池抵抗は18.6Ωで評価は○、出力特性は75.2%で評価は○、寿命特性は74%で評価は○であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0116】
仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中4セルあり、短絡性は△であった。
【0117】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は4.9Vで×であり過充電検出性はなかった。
【0118】
(実施例2)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、真空蒸着装置の減圧度を1.5×10−3Paとし、純度99.5質量%のAuを加熱蒸発させ、冷却ロールの温度を25℃として、厚さ100nmの導電層を形成した導電層積層多孔性フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表1に示す。
【0119】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は15.5Ωで評価は◎、出力特性は78.1%で評価は◎、寿命特性は84%で評価は◎であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0120】
仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中5セルあり、短絡性は△であった。
【0121】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は0.01Vで◎であり過充電検出性も有した。
【0122】
参考例3)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、真空蒸着装置の減圧度を1.5×10−3Paとし、純度99.5質量%のAlを加熱蒸発させ、冷却ロールの温度を25℃として、厚さ100nmの導電層を形成した導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0123】
得られた導電層積層多孔性フィルムの特性を表1に示す。
【0124】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は16.4Ωで評価は◎、出力特性は79.0%で評価は◎、寿命特性は81%で評価は◎であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0125】
また、仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中4セルあり、短絡性は△であった。
【0126】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は4.9Vで×であり、過充電検出性はなかった。
【0127】
参考例4)
参考例1と同様にして得られたポリマーを用いて、ポリマーを2質量%、N−メチル−2−ピロリドン70質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)28質量%となるように量り取り、ポリマーをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた後ポリエチレングリコールを加え、均一に完全相溶したポリマー溶液を得た。
【0128】
このポリマー溶液を、バーコーターを用いてガラス板上に約50μmの膜状に形成し、−10℃、相対湿度100%に調整されたオーブン中に10分間静置し、析出を行い多孔質フィルムとした。この多孔質フィルムをガラス板上から剥離し、50℃の水浴にて1時間、溶媒と不純物の抽出を行った。その後アルミ製の枠に固定し、3時間風乾後、320℃にて1分間の熱処理を行い、多孔性フィルムを得た。
【0129】
得られた多孔性フィルム上に、参考例3と同様の方法にて厚さ100nmのAlを導電層として形成した、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0130】
得られた導電層積層多孔性フィルムの特性を表1に示す。また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は16.8Ωで評価は◎、出力特性は77.2%で評価は◎、寿命特性は80%で評価は◎であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0131】
また、仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中3セルあり、短絡性は○で、短絡性にも優れるセルであった。
【0132】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は4.9Vで×であり、過充電検出性はなかった。
【0133】
参考例5)
参考例1と同様にして得られたポリマーを用いて、ポリマーを10質量%、N−メチル−2−ピロリドン70質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量200)20質量%となるように量り取り、ポリマーをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた後ポリエチレングリコールを加え、均一に完全相溶したポリマー溶液を得た。
【0134】
このポリマー溶液を、バーコーターを用いてガラス板上に約50μmの膜状に形成し、20℃、相対湿度80%に調整されたオーブン中に1時間静置し、析出を行い多孔質フィルムとした。この多孔質フィルムをガラス板上から剥離し、50℃の水浴にて1時間、溶媒と不純物の抽出を行った。その後アルミ製の枠に固定し、3時間風乾後、320℃にて1分間の熱処理を行い、多孔性フィルムを得た。
【0135】
得られた多孔性フィルム上に、参考例3と同様の方法にて厚さ100nmのAlを導電層として形成した、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0136】
得られた導電層積層多孔性フィルムの特性を表1に示す。また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は17.2Ωで評価は○、出力特性は76.5%で評価は○、寿命特性は78%で評価は○であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0137】
また、仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中2セルあり、短絡性は○で、短絡性にも優れるセルであった。
【0138】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が4.5Vで×、過充電検出性<2>は4.9Vで×であり、寿命特性には優れるが過充電検出性はなかった。
【0139】
(実施例6)
実施例2において、Au代わりにPtを用いたこと以外は同様にして導電層積層多孔性フィルムを得た。得られたフィルムの物性値を表1に示す。
【0140】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。仕上充放電は可能であり、電池抵抗は15.5Ωで評価は◎、出力特性は78.1%で評価は◎、寿命特性は82%で評価は◎であり、電池抵抗が低く、出力特性及び寿命特性に優れる電池となった。
【0141】
仕上充放電後に短絡しているセルは10セル中5セルあり、短絡性は△であった。
【0142】
過充電検出性<1>は電圧の絶対値が0.002Vで○、過充電検出性<2>は0.001Vで◎であり、過充電検出性を有した。
【0143】
(比較例1)
参考例1と同様にして得られた多孔性フィルムを用いた。電池として使用した際の評価結果を表2に示す。電池抵抗が19.7Ωと高く、出力特性は71%、寿命特性は62%で評価は△と劣り、電池特性の悪い電池となった。
【0144】
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂からなる多孔性フィルムを用いた。
【0145】
ポリプロピレン樹脂は下記のものを用いた。
【0146】
ポリプロピレン:住友化学(株)製ポリプロピレンWF836DG3・・・99.70質量%
添加剤:新日本理化(株)製N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカフボサミドNU−110・・・0.05質量%
酸化防止剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、IRGANOX1010・・・0.15質量%
熱安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、IRGAFOS168を0.10質量%
これを二軸押出機にて供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽にて冷却して、チップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
【0147】
得られたポリプロピレン樹脂を一軸押出機にて220℃で溶融・押出しし、200℃に加熱された口金から押し出し、120℃に加熱されたキャストドラムにキャストし、フィルムの非ドラム面からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながらシート状に成型し、未延伸シートを得た。
【0148】
得られた未延伸シートを120℃に加熱されたロール群に通して加熱し、ロールの周速差により縦方向に4倍延伸し、95℃に冷却した。引き続きこの1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導入して135℃に加熱しながら横方向に6倍に延伸した。ついで、テンター内で横方向に5%の弛緩を与えながら150℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して厚さ20μmの多孔性フィルムを得た。
【0149】
得られた多孔性フィルムを用い、実施例2と同様の方法にて導電層を積層し、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0150】
得られた導電層積層多孔性フィルムは表1に示すような特性であった。200℃において溶解し、熱収縮率は本発明の範囲外であった。
【0151】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。電池抵抗は52Ωと非常に高く、出力は0.2%と非常に低く、寿命特性も48%と低く、電池特性の悪い電池となった。また、短絡性も非常に悪い電池であった。
【0152】
(比較例3)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、その片面に、固体炭素材料として天然球状黒鉛を用い、下記の組成の分散液をマイクロバーにて導電層の厚みが50μmとなるように均一に塗布し、100℃に調整したオーブン中に1時間静置し、導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0153】
<分散液組成>
・固体炭素材料:天然黒鉛 98質量部
・増粘剤:カルボキシメチルセルロース 1質量部
・結着剤:ポリテトラフルオロエチレン 1質量部
・溶剤:蒸留水 100質量部
得られた導電層積層多孔性フィルムは表1に示すような特性であった。導電層の厚みが厚く、本発明の範囲外であった。また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。電池抵抗が32Ωと高く、出力特性は44%と劣り、寿命特性は64%で評価は△となり、電池特性の悪い電池となった。
【0154】
(比較例4)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、真空蒸着装置の減圧度を1.5×10−3Paとし、純度99.5質量%のAgを加熱蒸発させ、冷却ロールの温度を25℃として、厚さ100nmの導電層を形成した導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0155】
得られた導電層積層多孔性フィルムは表1に示すような特性であった。導電層を構成する材料がAgであり、Li対比の溶解析出電位が3.8Vであり、本発明の範囲外であった。また、AgはLi対比で5.0V以下で不動態被膜(酸化皮膜)を形成せず、本発明の範囲外であった。また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。かかる導電層積層多孔性フィルムを電池として使用した際には、仕上充放電の際に充電時間が24時間を超え、仕上充放電が不可能であり、もはや電池としての性能を評価するに至らなかった。
【0156】
(比較例5)
参考例1と同様にして得た多孔性フィルムを用い、真空蒸着装置の減圧度を1.5×10−3Paとし、純度99.5質量%のCuを加熱蒸発させ、冷却ロールの温度を25℃として、厚さ100nmの導電層を形成した導電層積層多孔性フィルムを得た。
【0157】
得られた導電層積層多孔性フィルムは表1に示すような特性であった。導電層を構成する材料がCuであり、Li対比の溶解析出電位が3.4Vであり、本発明の範囲外であった。また、CuはLi対比で5.0V以下で不動態被膜(酸化皮膜)を形成せず、本発明の範囲外であった。
【0158】
また、電池として使用した際の評価結果を表2に示す。かかる導電層積層多孔性フィルムを電池として使用した際には、仕上充放電の際に充電時間が24時間を超え、仕上充放電が不可能であり、もはや電池としての性能を評価するに至らなかった。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【符号の説明】
【0161】
1 高分子フィルム基材
4 巻き取り式真空蒸着装置
5 巻き取り室
6 巻き出しロール
7 ボート
8 ガイドロール
9 ガイドロール
10 ガイドロール
11 冷却ドラム
12 ガイドロール
13 ガイドロール
14 ガイドロール
15 巻き取りロール
図1