(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記焼結ストランドの点火炉出口から焼結ストランド末端までのうち、点火炉出口側の20%の範囲内のみで、前記充填層の表面に水蒸気を散布することを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱製造方法。
【背景技術】
【0002】
周知のごとく、高炉法において、高炉に投入する鉄鉱石は、焼結鉱にすることが望ましく、現在広く実施されている。焼結鉱の品質として、他の成分に比べて還元し難い性質を有するFeO成分が管理されている。なお、ここでいうFeOは、酸化鉄のFe(II)イオンとなる物質全体を指すもので、狭義のFeO(ウスタイト)だけを指すものではない。
高FeO成分の焼結鉱は、被還元性が悪いため、高炉における還元材比を高くするという問題点がある。特に、FeO成分の濃度が10.0質量%以上の焼結鉱は、還元材比を悪化させる問題があるため、得られる焼結鉱がこの濃度以下となるように、FeO成分の高い焼結原料はできるだけ使用しないように努められている。
【0003】
しかし、近年、良質な鉄鉱石資源の枯渇が顕在化しており、トータル鉄(T.Fe)成分の低い低品位鉄鉱床の新規開発が進められている。鉄分の低い低品位鉄鉱石は、高炉で使用すると還元材比が悪化するので、鉄鉱石の品位を上昇させるために、採掘した鉄鉱石の選鉱処理が事前に行われている。選鉱処理には、鉄鉱石を脈石と酸化鉄とに粒子単位で分離すべく、鉄鉱石を100μm以下にまで微粉砕し、これを重液や界面活性液や磁力、遠心力などを用いて分離する方法が採られている。
【0004】
マグネタイト系鉱石は、選鉱処理として磁力選鉱が効率的に行えるために注目されている。しかし、マグネタイト系鉱石は、主要組成がマグネタイト(FeO・Fe
2O
3)で構成されているため、FeO成分が20〜30質量%と高い。また微粉である性状故、直接高炉に投入するのもままならない。このため、マグネタイト系鉱石を、低FeO成分が求められる焼結鉱製造の原料として使用する方法が大きな課題となっている。
【0005】
一般に、焼結鉱の製造に際しては、種々の鉄鉱石や製鉄所で発生するスケールに、石灰石及びコークスを添加混合し、更に造粒処理することで、配合原料が製造される。
この配合原料を、焼結パレットに装入することで、層厚が500mm程度の充填層が形成される。そして、充填層の表面が点火バーナーにより点火される。点火時間は数十秒程度であり、充填層の表面が1300℃程度にまで加熱される。点火完了後は、大気中の空気を充填層の表面から吸引させることで焼結化が開始される。
大気中の空気の吸引は、充填層の底部に位置する風箱により行われる。これにより、充填層内では、空気や焼結後の排ガスが上層から下層へと流れ、充填層中の燃焼は上層から下層へとゆっくりと進行してゆく。焼結は、34分程度で終了する。
【0006】
商業用の焼結鉱製造設備(ドワイトロイド型(DL型)焼結機)においては、焼結パレットは連続無端に連結されている。配合原料が装入された焼結パレットは、焼結が完了するまでの時間で、点火炉をくぐり、水平方向に移動し、最終的に排鉱端にまで至り、焼結パレットから焼結ケーキが排出される。
この過程において、コークス中のカーボンは、充填層表面から吸引された空気によって燃焼される。これにより、充填層の燃焼領域の温度が上昇し、鉄鉱石と石灰石との焼結反応を生じさせることで焼結化が進行する。焼結化された焼結鉱組織は、主にヘマタイト(Fe
2O
3)、マグネタイト(FeO・Fe
2O
3)、カルシウムフェライト(CaO・Fe
2O
3)、硅酸塩スラグ(2FeO・SiO
2)で形成されている。
焼結鉱組織中のFeO成分値は、配合原料のFeO成分値に大きな影響を受ける。このため、焼結過程で大幅なガス酸素ポテンシャルを変更しない限り、高FeO成分の配合原料からは、低FeO成分の焼結鉱を製造することは困難である。
【0007】
焼結鉱の製造方法として、焼結原料に細粒の石灰石を用い、造粒水分を通常よりも低下させるとともに、コークス燃焼反応進行中の焼結ベッド表面へ水分を供給することが開示されている(特許文献1)。特許文献1は、充填層中に存在するコークスのカーボンと供給する水を反応させて、COとH
2を生成させることで、還元雰囲気を強化してNOxの生成を抑制するものである。
【0008】
また、焼結後の風箱排ガスを原料層上面に供給し、下方に吸引して焼結することが開示されている(特許文献2)。特許文献2では、中層部の燃焼時に低酸素濃度のガスを吸引させることでNOx生成を抑制させている。また、焼結過程後半の燃料の燃焼が完了した後の水蒸気を含むガスを吸引させることで、焼結層内の冷却速度を増加させ、焼結速度を増加させている。更に、焼結過程前半から中間時に、廃鉱部に近い後半部で排出される環境汚染物質が含まれるガスを吸引させることで、シンターケーキに環境汚染物質を吸着させ、その発生を抑制させている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態における焼結鉱製造方法は、FeO成分が10.0質量%以上の配合原料を用いてFeO成分が10.0質量%以下の焼結鉱を製造する方法であり、充填層への表面点火後、焼結機の全ストランド長さに対し、焼結ストランドの点火炉出口から焼結ストランド末端までのうち、点火炉出口側の30%の範囲内で、前記充填層の表面に水蒸気を散布して焼結することを特徴とする。
【0016】
配合原料としては、FeO成分が10.0質量%以上の配合原料を用いる。このうち、15.0質量%以上のマグネタイト系鉱石を配合することが好ましい。15.0質量%以上のマグネタイト系鉱石は、スケールなどに比べて粒径が細かく、かつ、多孔質であるので水蒸気との酸化反応が活発に起こる特徴を有している。また、スケールなどよりも微粉のマグネタイト系ペレットフィード(PF)による高FeO原料を配合することが、水蒸気との酸化反応がより活発に起こるため、特に好ましい。
【0017】
本実施形態では、焼結時の所定の領域において、充填層の表面に水蒸気を散布することで焼結する。
焼結の際に吸引する空気は、大気中の空気が好ましい。例えば、上記特許文献2のように、焼結後の風箱排ガスの一部を循環して用いると、吸引する空気の酸素濃度は低くなるが、これは、カーボン燃焼やFeO成分の燃焼の妨げとなる。これにより、未燃焼カーボンや残留FeO成分が増加し、焼結成品歩留が悪化するおそれがある。
焼結の際に吸引する空気と混合させるのは水蒸気である。水ミストなどの液体の水分では、水蒸気とするために大きな気化熱が必要となるためである。これに対して、水蒸気は、気化熱を必要としないため最適である。
【0018】
本実施形態では、充填層への表面点火後、焼結機の全ストランド長さに対し、焼結ストランドの点火炉出口から焼結ストランド末端までのうち、点火炉出口側の30%の範囲内で、水蒸気を散布する。
一般に焼結鉱の工業生産においては、焼結パレットを連続無端に連結した、DL型焼結機が広く用いられている。これは焼結パレットを回分式に結合したもので、その焼結過程は1枚の焼結パレット内の挙動で代表される。焼結パレットには、配合原料を装入することで充填層が形成される。
焼結過程では、充填層の表面から1300℃の燃焼排ガスを数十秒間吸引させる。これによって、充填層表面のコークス中のカーボンが点火される。その後、常温の空気を吸引させることで、継続的にコークスが燃焼され発熱する。これが焼結の熱源となる。また、同時に配合原料中のFeO成分も燃焼(酸化)されてFe
2O
3となり、この酸化反応における発熱が熱源となることがある。
【0019】
充填層の任意点における焼結化反応過程では、常温の配合原料は上方から供給される高温燃焼排ガスによって昇温される。これにより、先ず300℃以下で水分が蒸発し、次に600℃以上でカーボンが燃焼発熱し、最後に1200℃以上でFeO成分が燃焼発熱する。そして、カーボンとFeO成分の燃焼量が低下すると、表面から吸引される常温の空気によって冷却が開始される。
この焼結化反応過程では、カーボンの燃焼は概ね600℃以上、かつ大きい燃焼速度で起こるのに対して、FeO成分の燃焼は1200℃以上の高温、かつ非常に緩慢な燃焼速度で起こる。このため、未燃焼カーボンは殆ど生じないが、未燃焼のFeO成分(即ち、成品FeO)は多く残留する。
これらの燃焼挙動を反映して、充填層の高さ方向における燃焼部位は、点火完了から逐次、時間の経過とともに変化する。即ち、燃焼部位は、空気や水蒸気が吸引される上層から吸引出口の下層に向かって進行する。そして、最下層の床敷層に到達した時点で燃焼が完了する。層厚が500mm程度の充填層の場合では、焼結は34分間程度で完了する。
【0020】
本発明者らが、充填層内におけるカーボンとFeO成分の燃焼挙動の差を鋭意調査したところ、
図1に示すような差が存在することが判明した。
図1において、左側は、充填層内におけるカーボン燃焼前線とFeO成分の燃焼前線を示し、右側は、充填層内の(A)位置、(B)位置及び(C)位置における温度分布を示している。
カーボンの燃焼では、燃焼開始温度が600℃以上の低温でかつ燃焼速度が速いことから、
図1左側の実線で示すように、上層から下層に向かって速い速度でカーボン燃焼前線が降下する特徴を有している。また、このカーボンの燃焼による、残留(未燃焼)カーボン量も少ない。
これに対して、FeO成分の燃焼は、燃焼開始温度が1200℃以上でかつ燃焼速度が遅く緩慢なことから、
図1左側の破線で示すように、上層から下層に向かって遅い速度でFeO燃焼前線が降下する特徴を有している。そして、このFeO成分の燃焼による、残留(未燃焼)FeO量も多い。
即ち、カーボンの燃焼前線とFeO成分の燃焼前線とでは、進行速度が異なり、焼結過程の初期段階(上層での燃焼)では、燃焼反応領域がほぼ重なっているが、中期段階(中層での燃焼)や、後期段階(下層での燃焼)では、徐々に両者の燃焼反応領域にずれが生じていることが判る。
従って、焼結過程の初期段階(上層での燃焼)に、酸素(空気)とともに水蒸気H
2Oを吸引させることで、カーボンとFeO成分は双方同時に酸化反応を起こし、酸化発熱反応が強化され、1200℃以上の高温となって焼結鉱組織のFeO成分を低下させることができる。
【0021】
一方で、焼結過程の中期段階や焼結過程の後期段階においては、カーボンとFeO成分の燃焼発熱位置が乖離した状態である。このため、この状態で空気とともに水蒸気を吸引させてFeO成分の燃焼反応を促進させようと試みても、FeO成分の燃焼は起こらず、
図1右側の温度分布に示すように、温度は上昇せず、逆に1000℃〜1200℃の領域が拡大する。結果として、充填層の焼結した領域の冷却遅れによる生産性の低下やカーボン燃焼の妨害による成品FeOの上昇に繋がる。
即ち、充填層の表面から吸引される水蒸気は、まず上側に位置する高温のFeO成分が燃焼している領域で下記式(1)に示す反応で燃焼したのち、下側に位置するカーボンが燃焼している領域へとH
2になって移動する。
2FeO+H
2O → Fe
2O
3+H
2 …(1)
上記式(1)に示す反応は、わずかな発熱反応であるため、この反応によってFeO成分が燃焼している領域に温度変化を生じさせることは僅かしかない。しかし、下側に位置するカーボンが燃焼している領域へとH
2を供給することになる。そして、供給されたH
2は、カーボンが燃焼している領域に向かう間に、FeO成分が燃焼している領域とカーボンが燃焼している領域との間で、燃焼による発熱が起こってしまう(2H
2+1/2O
2→H
2O)。そうすると、燃焼領域は高温とならずに、比較的低い温度が幅広い形で存在することになるため、燃焼温度の低下から、FeO成分の燃焼も抑制される結果となる。
【0022】
従って、焼結過程で空気とともに水蒸気を吸引させて、FeO成分を燃焼させるには、カーボン燃焼領域とFeO成分の燃焼領域との位置の乖離が少ない、初期段階(上層での燃焼)だけに限定する必要がある。この初期段階は、点火炉出側から20%以上30%以下の範囲内までのストランド位置が該当する。
なお、30%を超える位置から排鉱端までの場所での水蒸気の散布は、上述したようにFeO成分の酸化促進にはあまり効果的でなく、酸化ゾーンが広く分散拡大し、逆に焼結ケーキの冷却に時間を要する結果となり好ましくない。
なお、ストランドの全領域で水蒸気を散布した場合には、初期段階(上層での燃焼)では改善するものの、中期段階(中層での燃焼)や後期段階(下層での燃焼)では、悪影響が顕著になり、総合的には改善されない結果となる。
このうち、水蒸気散布は、焼結ストランドの点火炉出口から焼結ストランド末端までのうち、点火炉出口側の20%の範囲内で、実施することが好ましい。更に、点火炉出口側の26%の範囲内が特に好ましい。
【0023】
なお、水蒸気の散布量は、5kg/原料乾量t以上18kg/原料乾量t以下が好ましい。5kg/原料乾量t未満ではFeO成分を十分に低減することができないおそれがある。他方、18kg/原料乾量tを超えると、FeO成分の酸化燃焼が活発化し過ぎてしまい、酸素濃度が低下する。このため、カーボン燃焼の妨害となり、逆に未燃焼カーボンや残留FeO成分が増加し焼結成品歩留が悪化するおそれがある。
水蒸気の散布は、上記範囲内において、連続的に実施してもよいし、間欠的に実施してもよい。
【0024】
このように、本実施形態の焼結鉱製造方法では、高FeO成分の配合原料から10質量%以下の低FeO成分と良歩留の焼結鉱を高生産率で製造することができる。
【実施例】
【0025】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
(焼結原料)
実験に用いた焼結原料の配合比率を以下の表1に示す。配合1はFeO成分を10%以下とした原料である。配合2はスケールを多く配合し、FeO成分を10.5%とした原料である。配合3はマグネタイト系PFとスケールを配合し、FeO成分を10.5%とした原料である。配合4はマグネタイト系PFを配合し、FeO成分を13.0%とした原料である。配合5はマグネタイト系PFを配合し、FeO成分を17.20%とした原料である。
【0026】
【表1】
【0027】
(鍋試験装置)
鍋試験装置及び焼結実験手順を
図2に示す。
図2(A)は点火、
図2(B)は水蒸気散布、
図2(C)は水蒸気散布なし(空気吸引のみ)を示している。なお、鍋試験装置には、内径100mmで層高500mmの試験が可能な小型焼結鍋試験装置と、内径300mmで層高500mmの試験が可能な中型焼結鍋試験装置を用いた。
焼結鍋1は、筒状に形成され、その内底部には通気が可能なグレート2が設けられている。また、焼結鍋1の下部には吸引可能な風箱3が設置されている。この風箱3には、吸引したガスを排気する排ガス配管4が接続されている。なお、排ガス配管4には、吸引した焼結排ガスの温度を測定する図示しない温度センサーが設けられている。そして、焼結鍋1の内部に、配合原料を装入することで充填層5が形成される。なお、点火、水蒸気散布、水蒸気散布なしのいずれにおいても、風箱3により空気が吸引され、排ガス配管4から吸引したガスが排気される。
図2(A)に示すように、点火する際には、焼結鍋1の上部には点火バーナー6が設置される。また、水蒸気散布する際には、焼結鍋1の上部からは点火バーナー6が撤去され、代わりに、
図2(B)に示すように、焼結鍋1の上部に水蒸気散布用フード7が設置される。水蒸気散布用フード7には、水蒸気を供給するための水蒸気供給管8と、空気を供給するための空気供給管9がそれぞれ接続されている。なお、水蒸気散布しないときには、
図2(C)に示すように、焼結鍋1の上部には、点火バーナー6や水蒸気散布用フード7などは特に何も設置しない。
【0028】
(焼結実験手順)
図2(A)から
図2(C)までは、焼結鍋試験装置を使用した焼結実験の手順を示している。
配合原料は、内径600mm、長さ800mmのバッチ式円筒型ドラムミキサーにより4分間混合し、水分を添加して4分間造粒した。
図2に示す焼結鍋1に、造粒した配合原料を7.1kg乾量(約500mm層厚)で装入し、焼結鍋1中に充填層5を形成した。
焼結鍋1への配合原料装入後は、
図2(A)に示すように、焼結鍋1の上部に点火バーナー6を設置し、焼結鍋1の下部に設置された風箱3から10kPaで吸引しながら、充填層5の表面を点火バーナー6により1分間加熱した。
点火完了後は、
図2(B)に示すように、焼結鍋1の上部から点火バーナー6を撤去し、直ちに水蒸気散布用フード7を設置した。そして、水蒸気供給管8から水蒸気を、空気供給管9から空気をそれぞれ水蒸気散布用フード7内に供給することで、充填層5の表面に水蒸気を散布し、充填層5の表面から、空気と水蒸気の混合ガスを所定の時間吸引させた。
水蒸気散布後は、
図2(C)に示すように、水蒸気の供給を停止するとともに、焼結鍋1の上部から水蒸気散布用フード7を撤去し、風箱3による吸引によって、空気だけを吸引して焼結を実施した。
排ガス配管4に設置した図示しない温度センサーによる測定で、焼結排ガスの温度が最大を示した後は、その3分後に吸引を停止し、得られた焼結ケーキを自然放置で冷却した。
冷却後の焼結ケーキは図示しない落下試験装置に投入して、4回落下させて粉砕した後、粉砕物を5mm角の篩で分級し、5mm上を焼結鉱成品として成品歩留及びFeO成分値を評価した。
【0029】
<実施例1>
配合4の焼結原料と小型焼結鍋試験装置を用い、水蒸気散布の位置の違いによる効果を確認する実験を実施した。
焼結を、前期区間(点火完了後0.3分〜8分)、中期区間(点火完了後8分〜20分)及び後期区間(点火完了後20分〜30分)の3つの区間に分け、水蒸気を散布する区間を、上記3つの区間でそれぞれ行った。水蒸気散布量は、17kg/原料乾量tとした。また、併せて、水蒸気を散布する区間を設けない実験についても実施した。実験結果を
図3に示す。
なお、水蒸気を散布する区間を中期区間とした場合には、
図2(A)に示す点火、
図2(C)に示す水蒸気散布なし、
図2(B)に示す水蒸気散布、
図2(C)に示す水蒸気散布なしの順に実施した。また、水蒸気を散布する区間を後期区間とした場合には、
図2(A)に示す点火、
図2(C)に示す水蒸気散布なし、
図2(B)に示す水蒸気散布の順に実施した。水蒸気を散布する区間を設けない場合には、
図2(A)に示す点火、
図2(C)に示す水蒸気散布なしの順に実施した。
【0030】
鍋試験は、商用のDL型焼結機のように、焼結パレットが連続移動するものではないが、JIS/ISO規格に制定されている焼結現象をシミュレートできる試験方法である。この場合、パレットに相当する鍋本体は移動しないが、下記の式(F1)を用いて、点火開始からの経過時間をストランド位置に換算することができる。
ストランド相対位置X(%)=点火開始からの経過時間t/焼結完了時間 …(F1)
【0031】
焼結完了までの時間を34分間とした場合の、点火開始からの経過時間とストランドの相対位置を以下の表2に示す。
なお、下記表2に示すストランド相対位置は、点火開始からの経過時間における位置である。このため、点火完了後からの経過時間におけるストランド相対位置を求める場合には、下記の式(F1)から算出されるストランド相対位置から、経過時間が点火完了後におけるストランド相対位置を引く必要がある。
【0032】
【表2】
【0033】
図3に示すように、水蒸気散布した全ての例で、水蒸気散布なしの例に比べてFeO成分量が低下した。また、水蒸気散布した例をそれぞれ比較すると、前期区間で水蒸気散布した例について、成品FeO量が大きく低減される結果が得られた。この結果から、水蒸気散布は、焼結の前期区間において実施することが最も効果的であることが確認された。
【0034】
<実施例2>
配合4の焼結原料と小型焼結鍋試験装置を用い、水蒸気を散布する焼結区間を前期区間(点火完了後0.3分〜8分)に限定し、水蒸気散布量の違いによる効果を確認する実験を実施した。水蒸気散布量を以下の表3に示す。また、実験結果を
図4に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
図4に示すように、水蒸気散布量が18kg/原料乾量tを越えるあたりから、成品FeO量が上昇し、製品歩留まりが低下する結果となった。その理由としては、カーボンとFeO成分の双方を燃焼させる酸素濃度不足からか、双方の燃焼が不安定になった結果、未燃焼カーボンや残留FeO成分が増加したものと推察される。また、燃焼温度の低下によって成品歩留が低下するとともに、低FeO成分化への効果がなくなったものと推察される。
【0037】
<実施例3>
配合1〜配合5の焼結原料と中型焼結鍋試験装置を用い、焼結原料の違いによる効果を確認する実験を実施した。水蒸気散布量を以下の表4に示す。実験結果を
図5、
図6及び
図7に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
図5に示すように、FeO成分が10質量%以上配合されている配合2〜配合5の焼結原料を使用した場合、得られる焼結鉱の成品FeO量は、水蒸気を散布しない焼結方法では、焼結原料に含有するFeO成分量に相応する結果となった。一方で、水蒸気の散布を実施した焼結方法では、成品FeO量を10質量%以下にすることができることが確認された。
また、
図6及び
図7に示すように、水蒸気の散布を実施することにより、成品歩留及び生産率の向上が確認できる。
なお、ヘマタイト系PFやスケールを多く配合した高FeO成分の配合原料(配合2)よりも、マグネタイト系PFを多く配合した高FeO成分の配合原料(配合3〜配合5)の方が微細多孔質鉱でFeO成分の燃焼が促進され、成品歩留が高く、望ましい様態であることがいえる。