(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護層の機能の一つには、キャパシタ素子に耐湿性を付加することがある。このため、保護層はキャパシタ素子の使用中の変形に対しても形状を維持できることが望ましい。本発明者らは、従来の保護層では長期的な形状の維持が困難であることを見出した。
【0005】
例えば、特許文献1および2に記載の薄膜キャパシタでは、長期的な使用を通じて誘電体層の伸縮を伴う。この伸縮により保護層に反りを生む応力が生じ、保護層にクラックが発生する場合がある。このクラックによって、薄膜キャパシタの耐湿性は劣化しやすくなる。こうした劣化は薄膜キャパシタを実装する際も生じやすく、電気接続時の応力によって開口部を中心にクラックを引き起こす場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、高い耐湿性を維持しうる薄膜キャパシタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明に係る薄膜キャパシタによって解決される。本発明に係る薄膜キャパシタは、下地電極上に誘電体層および上部電極層を順次積層した積層体と、誘電体層および上部電極層を被覆するとともに下地電極および上部電極層上に貫通孔を備えた保護層と、保護層内の貫通孔を通して下地電極および上部電極層と電気的に接続する端子電極と、を備える。このとき、保護層の縦弾性係数(一般に「ヤング率」と称する。以下、単に「ヤング率」という。)を2.0GPa以下とする。これにより、保護層に対して反りを生む応力を抑えることができ、保護層のクラック発生を防ぐことができる。その結果、保護層が持つ耐湿性を失うことがなく、もって薄膜キャパシタの耐湿性を向上させることができる。
【0008】
本発明の薄膜キャパシタの保護層は、ヤング率が0.1GPa以上であることが好ましい。これにより、誘電体層の使用時の伸縮によって発生する、反りを生む方向の応力が保護層に加わること、および、外部からの物理的な衝撃が誘電体層に加わること、を、より効率的に防ぐことができる。加えて、薄膜キャパシタを実装する際の熱収縮による応力の影響を低減することができるという利点もある。
【0009】
本発明に係る薄膜キャパシタは、保護層に加えて絶縁層を有すること、この絶縁層は下地電極層上であって、望ましくは誘電体層から離間した位置に設けられていること、および、薄膜キャパシタの端子電極は、下地電極上、かつ、保護層に加えて設けられた絶縁層上まで延伸されていることが好ましい。このとき、絶縁層のヤング率は3.0GPa以上5.0GPa以下であることが好ましい。この構成によって、薄膜キャパシタの誘電体層との熱膨張係数差が大きい金属層を、誘電体層から離間して固定できる。これにより、誘電体層の使用時の伸縮によって発生する、反りを生む方向の応力が端子電極に伝搬されることを回避できる。この結果、保護層のクラック発生をより効果的に回避することができる。加えて、実装する際の電気的接続を安定化しうるため、薄膜キャパシタの耐湿性をより向上させることができるという利点もある。
【0010】
本発明の薄膜キャパシタの下地電極は、Ni箔であることが好ましい。Ni箔は耐酸化性と低電気抵抗を有する材料であり、薄膜キャパシタなど酸化物誘電体素子の電極材料として好ましいことが知られている。加えて、他の代表的な導電材料(CuやAlなどの金属)に比して高い硬度とヤング率とを有する。そのため、下地電極が保護層と絶縁層との形状維持に寄与し、本発明の効果である保護層のクラック発生の抑制をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る薄膜キャパシタによれば、高い耐湿性を有する薄膜キャパシタを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る薄膜キャパシタの構造を示す概略断面図である。薄膜キャパシタ10は、下地電極11と、この下地電極11の上に積層された誘電体層12と、誘電体層12の上に積層された上部電極層13と、表面保護膜としての保護層14と、端子電極15と、端子電極15を絶縁するための絶縁層16と、を備えて構成されている。ここで、本実施形態の絶縁層16は、誘電体層12上に形成してもよいし、誘電体層12の存在しない下地電極11の上に形成してもよい。
【0015】
下地電極11は、導電性を有する材料であれば特に制限されない。金属、酸化物、有機導電材料等を適宜選択することができる。高い電気伝導性を有する材料として、例えば、Ni、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh、Re、Os、Au、Ag、Cu、IrO
2、RuO
2、SrRuO
3、およびLaNiO
3の少なくともいずれか1つを含むように構成してもよい。下地電極11の膜厚は、電気伝導度と機械的強度との観点から、50〜2000nmであることが好ましい。50nmを下回る場合、下地電極11の電気抵抗が大きくなり薄膜キャパシタの電気特性を低下させる場合がある。2000nmを超える場合、下地電極11の内部応力が誘電体層12に及ぼす圧力が顕著となる傾向がある。下地電極11は、Siやアルミナなどの基板(図示せず)の上に設けられていてもよいが、下地電極11が基板の機能を兼ねていてもよい。この場合、下地電極11と基板とは同一の材料となる。例えば、Ni、Cu、Al等の卑金属またはこれらの合金を主成分とした箔や板、ステンレス鋼、インコネル(登録商標)等の板や箔を好適に用いることができる。特にNi箔は、高い伝導性を有するとともに高い硬度とヤング率とを有し、保護層14と絶縁層16との形状維持に寄与するため好ましい。下地電極11と基板を同一材料とした場合の下地電極11の厚さは5μm〜500μmであることが好ましい。下地電極11の厚さが5μmを下回る場合は、下地電極11の機械的強度が保護層14と絶縁層16との形状を維持できる大きさを下回る場合がある。逆に下地電極11の厚さが500μmを超える場合は、薄膜キャパシタ製造工程に不可避な熱履歴に起因する歪の蓄積量が大きくなり、保護層14と絶縁層16との形状維持に悪影響を及ぼす場合がある。本実施形態では、下地電極11にNi箔を用いた態様を示す。Ni箔である下地電極11は、誘電体層12や上部電極13等を保持する保持部材としての機能と、下部電極としての機能と、を兼ね備えている。なお、基板/電極膜構造を用いる形態の場合は、基板/電極膜を組合せた構造体を本実施形態の下地電極11に対応させて、本発明の実施形態とすることができる。
【0016】
誘電体層12は、チタン酸バリウム(BaTiO
3、以下「BT」という。)、チタン酸バリウムストロンチウム((BaSr)TiO
3、以下「BST」という。)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3、以下「ST」という。)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO
3、(BaSr)(TiZr)O
3、以下「CZ」という。)、BaTiZrO
3などのペロブスカイト型酸化物が好適に用いられる。誘電体層12は、これらの酸化物のうち一つ以上を含む複合材料であってもよいし、複数の誘電体層の積層体であってもよい。誘電体層12の膜厚は、誘電体素子の機能と機械的強度保持の観点から100〜1000nm程度が好ましい。誘電体層12の形成方法は特に制限されず、公知の誘電体薄膜作成方法を適宜選択して用いることができる。例えば、スパッタリング法や蒸着法等の物理的気相成長法を用いてもよいし、プラズマCVD法等の化学的気相成長法を用いてもよい。あるいは、出発原料を含む溶液を塗布して焼成する溶液法を用いてもよい。
【0017】
上部電極層13は、導電性を有する材料であれば特に制限されない。金属、酸化物、有機導電材料等を適宜選択することができる。高い電気伝導性を有する材料として、例えば、Ni、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh、Re、Os、Au、Ag、Cu、IrO
2、RuO
2、SrRuO
3、およびLaNiO
3の少なくともいずれか1つを含むように構成してもよい。特に、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh、Re、Os、Au、Agを主成分として構成される導電性材料が好ましく、中でもNiを主成分として構成される導電性材料が電気的特性と機械的強度との観点から好ましい。上部電極層13はNiを単体で用いる必要はなく、たとえばNi/Cuのような積層構造としてもよい。この場合、上部電極層13のNi層側を誘電体層12側にコンタクトさせ、Cu側を外部とすることができる。さらに、CuはNiに比して導電性が高いため、Cuの厚みをNiに比して増すことにより上部電極層13の導電性を高めることができる。
【0018】
保護層14は、ヤング率が0.1GPa以上2.0GPa以下の材料を適宜選択して用いることができる。例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂などの絶縁樹脂を好適に用いることができる。特に、ポリイミド系樹脂は吸湿率および吸水率が小さいという点で好ましい。これら材料のヤング率は、高分子材料の機械的特性を調整する公知の手段を適宜用いて調整することができる。例えば、(1)側鎖もしくは分子鎖へのアルキル基の導入、(2)分子鎖へのイオウの導入(加硫)、(3)架橋点の削減(分子鎖の酸素基を水素終端に変える、など)、(4)反応途中での重合禁止剤の投入による重合反応の制限、のような手段を用いることができる。
【0019】
保護層14のヤング率は、ナノインデンテーション法により求めることができる。ナノインデンテーション法に用いられるナノインデンターは、薄膜の機械的特性を評価する手法として知られているところ、薄膜自体の機械的強度評価には下地の影響を受けない程度の最大押し込み深さで荷重−変位曲線を得る必要がある。上述した保護層14のヤング率は、下地の影響を考慮して最大押し込み深さを保護層14の膜厚の1/5から1/3程度として得られた荷重−変位曲線から算出された結果であることが望ましい。具体的には、荷重20mNから100mN程度の低荷重で予備測定を行っておくことが望ましい。
【0020】
端子電極15は、導電性の高い材料を適宜選択して用いることができる。例えば、Au、Ag、Pt、Cuなどを用いることができる。機械的特性と電気伝導性の両立という観点から、Cuを主成分として構成されるのが好ましい。端子電極の外層には、Au、Ni、Sn、Pdなどの層を設けてもよい。
【0021】
絶縁層16は、ヤング率が3.0GPa以上5.0GPa以下の材料を適宜選択することが望ましい。例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂などの絶縁樹脂などを好適に用いることができる。絶縁層16の材料のヤング率も、保護層14の場合と同様に、高分子材料の機械的特性を調整する公知の手段を適宜用いて調整することができる。改めて例示するならば、(1)側鎖もしくは分子鎖へのアルキル基の導入、(2)分子鎖へのイオウの導入(加硫)、(3)架橋点の削減(分子鎖の酸素基を水素終端に変える、など)、(4)反応途中での重合禁止剤の投入による重合反応の制限、のような手段である。絶縁層16のヤング率も、保護層14と同様にナノインデンテーション法を用いて求めることができる。
【0022】
次に、
図2および
図3を参照して、本実施形態に係る薄膜キャパシタ10の製造方法を説明する。
【0023】
まず、
図2(a)に示すように、下地電極11上に誘電体層12の成膜及び上部電極層13の成膜を行い、積層体を形成する。
【0024】
次に、
図2(b)に示すように、上部電極層13の一部に対して下地電極11方向にウェットエッチングを施し、開口部21を形成する。上部電極層13をエッチングするときは、フォトリソグラフィによるパターニングを実施した後、塩化第二鉄等のエッチング液(エッチャント)を用いる。
【0025】
次に、
図2(c)に示すように、開口部21にて露出した誘電体層12の一部を、積層体における下地電極11の反対側に位置する表面から下地電極11方向にウェットエッチングを施し、開口部22を形成する。誘電体層12をエッチングするときは、誘電体はエッチングするが電極層をエッチングしないエッチング液(エッチャント)を用いる。具体的には、例えば誘電体膜がBT、BST、STの場合、好ましいエッチャントは塩酸+フッ化アンモニウム水溶液である。また、誘電体膜がCZの場合、好ましいエッチャントは硫酸+フッ化アンモニウム水溶液である。
【0026】
次に、
図2(d)に示すように、保護層14を形成する。この際、開口部22の内部、および開口部21以外の領域に存在する上部電極層13上にそれぞれ開口部23および開口部24を設ける。
【0027】
そして、
図2(e)および
図3に示すように、絶縁層16を形成し、さらにシード成膜及びめっき処理を行って、開口部23および開口部24を介して、それぞれ下地電極11および上部電極層13と接続するように端子電極15を形成する(
図2(f))。
【0028】
このように、本実施形態に係る薄膜キャパシタ10によれば、保護層14のヤング率が2.0GPa以下であることにより、保護層14に対して反りを生む方向の応力を抑えることができ、保護層14へのクラック発生を防ぐことができる。また、保護層14のヤング率が0.1GPa以上であることにより、誘電体層12の使用時の伸縮によって発生する、反りを生む方向の応力が保護層14に加わることや、外部からの物理的な衝撃による力が直接誘電体層12に加わることを防ぐことができる。
【0029】
図3に、本実施形態に係る薄膜キャパシタ10の平面概略図を示す。端子電極15は、保護層14の直上に設けてもよいが、
図3のように保護層14に加えて形成した絶縁層16上まで延伸させてもよい。このとき、ヤング率が3.0GPa以上5.0GPa以下である絶縁層16を用いて下地電極11から絶縁させることによって、誘電体層12の使用時の伸縮によって発生する、反りを生む方向の応力が端子電極15に伝搬されることを回避できる。この結果、保護層14のクラック発生をより効果的に回避することができる。
【0030】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
図1に示す断面形状を有する薄膜キャパシタ10を、実施例1〜21、および比較例1〜3として作製し評価した。
【0032】
(実施例1〜9)
下地電極11として厚み100μmのNi箔を用意し、その片面に誘電体層12であるBT層を誘電率1000、膜厚800nmとなるようにスパッタリング法で形成した。誘電体層12上には、上部電極層13(下層、誘電体層12側)であるNi層をスパッタリング法で形成し、Ni層上に上部電極層13(上層)であるCu層をスパッタリング法で形成した。その際、容量が約8000pF(8nF)となるように、上部電極層13の面積及びパターン形状と、誘電体層12の厚みと、を設定した(
図2(a)参照)。
【0033】
誘電体層12及び上部電極層13の形成後、熱処理を行った。熱処理後の上部電極層13に対して、下地電極11との接続を行う位置に開口部21を有するレジスト層を形成した。開口部21の形状はマスクパターン上で正方形とし、サイズはマスクパターン上で150μm×150μmとした。その後、開口部21の上部電極層13を塩化第二鉄溶液によりエッチング除去した。その後レジスト層を剥離した(
図2(b)参照)。
【0034】
開口部21の位置に露出した誘電体層12に対して、さらに開口部22を有するレジスト層を形成した。開口部22の形状はマスクパターン上で正方形とし、サイズはマスクパターン上で100×100μmとした。その後、開口部22の誘電体層12を塩酸とフッ化アンモニウム水溶液の混合液を用いてエッチングを行なった。その後レジスト層を剥離した後、熱処理を行った(
図2(c)参照)。
【0035】
感光性を有するポリイミド樹脂を用いて保護層14を形成した。ポリイミド樹脂の材料には、(1)通常のポリイミドモノマーと、(2)アルキル基を結合させたポリイミドモノマーと、を混合させた材料を用いた。これらモノマー(1)とモノマー(2)との混合比を変えて予備試験片を作成し、ヤング率を求めた。予備試験の結果を基に、実施例に係る保護層14のヤング率が三水準で得られるよう形成を試みた。得られた保護層14のヤング率を、ナノインデンテーションシステム(Hysitron社製)を用いて求めた。測定は、最大荷重20mNの条件で荷重−変位曲線を一試料あたり100回求め、ヤング率を算出して平均値を求めた。なお、最大変位量は保護層14の膜厚6μmに対して表面から約1/4以下であり、下地電極11の影響は認められなかった。測定の結果、保護層14のヤング率は、0.1GPa、1.0GPa、2.0GPaの三水準となっていることを確認した。形成された保護層14に対し、フォトリソグラフィによって開口部22の内部にさらに開口部23を、および上部電極層13上の開口部21の無い部位に別の開口部24を設けた。開口部23および開口部24の形状はマスクパターン上で正方形とし、サイズはマスクパターン上で50×50μmとした。(
図2(d)参照)。
【0036】
感光性を有するポリイミド樹脂を用いて絶縁層16を形成した。絶縁層16の膜厚は7μmとした。保護層14の場合と同じ要領でモノマーの混合比を変え、ヤング率が3.0GPa、3.5GPa、5.0GPaの三水準である絶縁層16を得た。フォトリソグラフィによって保護層14の外縁部およびその外側のみ絶縁層16が残留するようパターンを形成した。(
図2(e)参照)。
【0037】
以上の手順で、保護層14のヤング率が三水準、絶縁層16のヤング率が三水準、それらの組み合わせにより九水準(実施例1〜9に対応。各水準は表1を参照。)にヤング率を変化させた計270個(一水準あたり30個)の薄膜キャパシタ素体を得た。薄膜キャパシタ素体に対し、Cuを用いて端子電極15を形成した。その際、保護層14に露出した開口部23および開口部24を通して、それぞれ下地電極11および上部電極層13と接続させ、かつ、端子電極15を保護層14および絶縁層16をまたぐ形状で作製した(
図2(f)および
図3参照)。以上の手順で270個の薄膜キャパシタ10を得た。得られた薄膜キャパシタ10について静電容量の平均値及び標準偏差を算出したところ、平均値は8.05nF,標準偏差は0.2nFとなった。また、絶縁抵抗値を測定したところ、1.0〜2.0×10
11Ωの範囲内であった。
【0038】
薄膜キャパシタ10に対して耐湿信頼性試験をおこなった。耐湿信頼性試験では、薄膜キャパシタ10をプリント配線基板上に実装したうえで60℃、90%RHに調節した恒温槽内に入れ、電圧4Vを1000時間印加した。1000時間経過後の薄膜キャパシタ10の抵抗値が、恒温槽に入れる前の絶縁抵抗値に対して1/100以下となった薄膜キャパシタ10をNGと判断し、NG個数をカウントして評価結果とした。
【0039】
(実施例10、11)
保護層14のヤング率を0.1GPaの一水準に固定し、絶縁層16のヤング率を2.7GPa(実施例10)、5.4GPa(実施例11)の二水準としたこと以外は、実施例1〜9と同様の手順で薄膜キャパシタ10を作製し、実施例1〜9と同様の評価を行った。得られた薄膜キャパシタ10の静電容量を測定し、その平均値及び標準偏差を算出したところ、平均値は8.02nF,標準偏差は0.17nFとなった。また、絶縁抵抗値を測定したところ、1.0〜2.0×10
11Ωの範囲内であった。
【0040】
(実施例12、13)
保護層14のヤング率を1.0GPaの一水準に固定し、絶縁層16のヤング率を2.7GPa(実施例12)、5.4GPa(実施例13)の二水準としたこと以外は、実施例1〜9と同様の手順で薄膜キャパシタ10を作製し、実施例1〜9と同様の評価を行った。得られた薄膜キャパシタ10の静電容量を測定し、その平均値及び標準偏差を算出したところ、平均値は8.02nF,標準偏差は0.17nFとなった。また、絶縁抵抗値を測定したところ、1.0〜2.0×10
11Ωの範囲内であった。
【0041】
(実施例14、15)
保護層14のヤング率を2.0GPaの一水準に固定し、絶縁層16のヤング率を2.7GPa(実施例14)、5.4GPa(実施例15)の二水準としたこと以外は、実施例1〜9と同様の手順で薄膜キャパシタ10を作製し、実施例1〜9と同様の評価を行った。得られた薄膜キャパシタ10の静電容量を測定し、その平均値及び標準偏差を算出したところ、平均値は8.02nF,標準偏差は0.17nFとなった。また、絶縁抵抗値を測定したところ、1.0〜2.0×10
11Ωの範囲内であった。
【0042】
(
参考例16、17)
保護層14のヤング率を0.1GPa(
参考例16)、2.0GPa(
参考例17)の二水準とし、絶縁層16を設けなかったこと、および、端子電極15を保護層14上に設けたこと以外は、実施例1〜9と同様の手順で薄膜キャパシタ10を作製し、同様の耐湿信頼性試験を行った。得られた薄膜キャパシタ10の静電容量を測定し、その平均値及び標準偏差を算出したところ、平均値は8.01nF,標準偏差は0.22nFとなった。また、絶縁抵抗値を測定したところ、1.0〜2.0×10
11Ωの範囲内であった。
【0043】
(
参考例18)
下地電極11を、500μm厚みのアルミナ基板上に厚み600nmのNi薄膜を形成したものとしたこと、保護層14のヤング率を1.0GPaの一水準に固定したこと、絶縁層16を設けなかったこと、および、端子電極15を保護層14上に設けたこと以外は、実施例1〜9と同様の手順で薄膜キャパシタ10を作製し、同様の耐湿信頼性試験を行った。得られた薄膜キャパシタ10の静電容量を測定し、その平均値及び標準偏差を算出したところ、平均値は8.06nF,標準偏差は0.14nFとなった。また、絶縁抵抗値を測定したところ、1.0〜2.0×10
11Ωの範囲内であった。
【0044】
(実施例19〜20)
下地電極11を、500μm厚みのアルミナ基板上に厚み600nmのNi薄膜を形成したものとしたこと、保護層14のヤング率を1.0GPaの一水準に固定したこと、絶縁層16のヤング率を2.7GPa(実施例19)、5.4GPa(実施例20)の二水準としたこと以外は、実施例1〜9と同様の手順で薄膜キャパシタ10を作製し、同様の耐湿信頼性試験を行った。得られた薄膜キャパシタ10の静電容量を測定し、その平均値及び標準偏差を算出したところ、平均値は8.07nF,標準偏差は0.13nFとなった。また、絶縁抵抗値を測定したところ、1.0〜2.0×10
11Ωの範囲内であった。
【0045】
(実施例21)
下地電極11を、500μm厚みのアルミナ基板上に厚み600nmのNi薄膜を形成したものとしたこと、保護層14のヤング率を1.0GPaの一水準に固定したこと、絶縁層16のヤング率を3.5GPaの一水準に固定したこと以外は、実施例1〜9と同様の手順で薄膜キャパシタ10を作製し、同様の耐湿信頼性試験を行った。得られた薄膜キャパシタ10の静電容量を測定し、その平均値及び標準偏差を算出したところ、平均値は8.07nF,標準偏差は0.14nFとなった。また、絶縁抵抗値を測定したところ、1.0〜2.0×10
11Ωの範囲内であった。
【0046】
(比較例1〜3)
保護層14のヤング率を0.05GPa(比較例1)、2.5GPa(比較例2)、3.0GPa(比較例3)とし、絶縁層16のヤング率を3.5GPaの一水準に固定したこと以外は、実施例1〜9と同様に薄膜キャパシタ10を作製し、実施例1〜9と同様の評価を行った。得られた薄膜キャパシタ10の静電容量を測定し、その平均値及び標準偏差を算出したところ、平均値は7.98nF,標準偏差は0.15nFとなった。また、絶縁抵抗値を測定したところ、1.0〜2.0×10
11Ωの範囲内であった。
【0047】
以上の実施例
1〜15、参考例16〜18、実施例19〜21及び比較例1〜3について、耐湿信頼性試験の結果を表1に示す。
【0049】
表1に示すように、本発明の実施により得られる薄膜キャパシタは、高い耐湿性が確保されていることが確認された。