(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脂肪族飽和アルコールの混合物が、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造された直鎖構造及び分岐鎖構造を有する脂肪族飽和アルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載のゴム用可塑剤。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ゴム用可塑剤>
本発明のゴム用可塑剤は、特定の脂肪族飽和アルコール(アルコール成分)とフタル酸若しくはその無水物(酸成分)とをエステル化反応して得られるフタル酸ジエステルを含有することを最大の特徴としている。
本発明に係るフタル酸ジエステル(以下、「本エステル」という。)は、所定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。
【0018】
[脂肪族飽和アルコールの混合物]
本発明で用いる脂肪族飽和アルコールの混合物は、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコールの混合物であり、主成分である炭素数9の脂肪族飽和アルコールの割合が、本発明で用いる脂肪族飽和アルコールの混合物中に、好ましくは65重量%以上、より好ましくは85重量%以上が推奨される。
【0019】
また、本発明に係る脂肪族飽和アルコールの混合物は、該脂肪族飽和アルコールの混合物の直鎖率が、60〜95%、好ましくは75〜90%の範囲が推奨される。更に、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が、本発明で用いる脂肪族飽和アルコールの混合物中に、60〜95重量%、好ましくは75〜90重量%の範囲が推奨され、かつ、炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコール(例えば2−メチルオクタノール等)の含有量が、5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%の範囲が推奨される。
【0020】
本発明で用いる脂肪族飽和アルコールの混合物の態様の詳細として、該脂肪族飽和アルコールの混合物は、炭素数9の脂肪族飽和アルコールが主成分(好ましくは65重量%以上)であり、その脂肪族飽和アルコール混合物中の含有量が60〜95重量%の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと5〜40重量%の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの混合物の直鎖率が60〜95%である。より好ましい態様としては、脂肪族飽和アルコールの混合物が、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分(好ましくは85重量%以上)とし、該脂肪族飽和アルコール混合物中の含有量が75〜90重量%の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと10〜25重量%の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの混合物の直鎖率が75〜90%である態様が推奨される。
【0021】
直鎖率が60%以上であり、かつ炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの含有量が60重量%以上であれば、柔軟性を低下することなく、本発明の目的である耐熱性及び耐寒性の向上が得られる。逆に、直鎖率が60%未満または炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの含有量が60重量%未満では、耐寒性及び耐熱性の向上が不十分であり、更に柔軟性が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0022】
また、直鎖率が90%を超えるか、または炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの含有量が90重量%を超えると、ゴムとの相溶性が低下し、成形加工性が低下するだけでなく、ブリードアウトや耐油性・樹脂への移行性の低下の原因となり、好ましくない。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲において、脂肪族飽和アルコールの混合物の直鎖率とは、該脂肪族飽和アルコールの混合物中に占める直鎖アルコールの割合(重量比)であり、本発明の効果の観点から、実質的には炭素数7〜11の直鎖アルコールが占める割合とも言え、具体的にはガスクロマトグラフィーで分析する方法により求めることができる。
【0024】
本発明で用いる炭素数9の脂肪族飽和アルコールの混合物は、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造することができる。
【0025】
(1)の工程であるヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
【0026】
(2)の工程である水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧化で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。
【0027】
上記の工程で得られる炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコールの混合物の具体例(市販品)としては、約70重量%以上の直鎖状のノナノールと約30重量%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるリネボール9(商品名、シェルケミカルズ社)等が挙げられる。
【0028】
[エステル化反応]
上記アルコール成分と酸成分とのエステル化反応を行うに際し、該アルコール成分は、例えば、酸成分1モルに対して2.00モル〜5.00モル、好ましくは2.01モル〜3.00モル、特に好ましくは2.02モル〜2.50モル程度を使用することが推奨される。
【0029】
エステル化反応に用いる触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類又はアルカリ金属類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体が例示され、これらの1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。
【0030】
中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜4.0重量%、特に0.03重量%〜3.0重量%を使用することが推奨される。
【0031】
エステル化温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3時間〜30時間で反応は完結する。
【0032】
エステル化においては、反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
【0033】
又、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去することが推奨される。
【0034】
又、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去する。
【0035】
上記エステル化方法により得られた本エステルは、引き続き、必要に応じて塩基処理(中和処理)→水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着精製処理等により精製してもよい。
【0036】
塩基処理に用いる塩基としては、塩基性の化合物であれば特に制約はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。
【0037】
吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0038】
上記処理は、常温で行なっても良いが、40〜90℃程度に加温して行なうこともできる。
【0039】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本エステルを、可塑剤としてゴムに配合することにより得られる。
【0040】
[ゴム]
本発明で用いられるゴムは、特に限定されるものではなく、一般に知られているゴム、エラストマーを単独で、または2種以上併用して用いることが可能であり、例えば、天然ゴム、合成天然ゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、パイパロン、アクリルゴム、ウレタンゴムなどが例示される。
【0041】
中でも、溶解度パラメーターが8.1〜10.5の範囲にあるものが、本発明の可塑剤との相溶性に優れ、その結果、柔軟性に優れ、かつ耐寒性や耐熱性の向上したゴム組成物となるため好ましく、また、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムからなる群より選ばれた1種または2種以上の混合物を用いることが上記の観点より好ましい。更に好ましくは、溶解度パラメータが8.1〜10.5の範囲であり、かつニトリルゴム、スチレンーブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムからなる群より選ばれた1種または2種以上の混合物が、特に本発明の可塑剤との相溶性に優れ、本発明の効果を発現することができる。
【0042】
なお、溶解度パラメーターには種々の測定方法、計算方法があるが、ここで言う溶解度パラメーターは、「K.L.Hoy,Journal of Paint Technology,42(541),76(1970)」等の文献で報告されている分子構造から推算するHoyの計算方法により求めた値である。
【0043】
[ゴム組成物]
ゴム組成物における本エステルの含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、通常、ゴム100重量部に対し、1〜80重量部であり、好ましくは5〜50重量部、更に好ましくは5〜30重量部である。1重量部未満では所定の可塑化効果が得られにくく、80重量部を越えて配合した場合には、成形品表面へのブリードが激しく、いずれの場合も好ましくない。但し、上記のゴム系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて本エステルを配合することができる。例えば、ゴム100重量部に対し、充填剤を100重量部配合した場合には、本エステルを1〜100重量部程度配合することができる。
【0044】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて主成分であるゴム以外のゴムを本発明の効果を損なわない範囲で適宜併用することができる。
【0045】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて架橋剤(加硫剤)、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、素練促進剤、スコーチ防止剤、充填剤、着色剤、難燃剤等の可塑剤以外の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。また、本エステルと共に他の公知の可塑剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用しても良い。
【0046】
架橋剤(加硫剤)としては、粉末硫黄、表面処理硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄等の硫黄、ジチオジモルホリン、アルキルフェノールジスルフィド、高分子多硫化物等の硫黄供与体等の硫黄系架橋剤、フェノールホルムアルデヒド樹脂、キノンジオキシム、各種アミン化合物、N,N‘−m−フェニレンジマレイミド、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキサイド、ジベンゾイルペルオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、n−ブチル−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシ)パレレート、ジクミルペルオキサイド、ビス(t−ブチルペルオキシ)1,3−ジイソプロピルベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等の各種過酸化物等の非硫黄系架橋剤等が例示される。
【0047】
加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、ブチルアルデヒドアニリン等のアルデヒドアンモニア/アミン系加硫促進剤、ジフェニルチオウレア、ジ(o−トリル)チオウレア、2−イミダゾリン−2−チオール、ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア、ジラウリルチオウレア、トリメチルチオウレア等のチオウレア系加硫促進剤、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系加硫促進剤、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(4‘−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール系加硫促進剤、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チラウムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラメチルチラウムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤、ピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバマート、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸塩、等のキサントゲン酸塩系加硫促進剤等が例示される。
【0048】
加硫促進助剤としては酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物やステアリン酸等の脂肪酸が例示される。
【0049】
老化防止剤としては、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンポリマー、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、p,p‘−ジオクチルジフェニルアミン、p,p’−ジクミルジフェニルアミン、N,N‘−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N‘−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系老化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ・フェニル)プロピオン酸ステアレート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ・フェニル)プロピオネート)メタン)、4,4‘−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等のフェノール系老化防止剤、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系老化防止剤、トリス(ノニル化フェニル)ホスファイト等のリン系老化防止剤、トリブチルチオウレアが例示される。
【0050】
素練促進剤としては、o−o‘−ジベンズアミドジフェニルジスルフィド、ジ−2−ベンズアミドチオフェノールの亜鉛塩、ペンタクロロチオフェノール等が例示される。
【0051】
スコーチ防止剤としては、無水フタル酸、N−シクロヘキシルチオフタルイミド、N−ニトロソジフェニルアミン等が例示される。
【0052】
充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機充填剤、樹脂、木粉、コルク粉等の有機充填剤等が例示される。
【0053】
着色剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、石こう、カーボンブラック、ベンガラ、鉛丹、黄鉛、黄色酸化鉄、群青、コバルト青等の無機顔料、アゾ顔料、ニトロソ顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料が例示される。
【0054】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。
【0055】
本エステルと併用することができる公知の可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOTP)、イソフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOIP)等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)等のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル、アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル類、ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニルエステル(DINCH)等の脂環式二塩基酸類、ジカプリン酸1.4−ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等、メザモール(ランクセス社)等のフェノール系アルキルスルホン酸エステル類、RS−735((株)ADEKA製)等のポリエーテルエステル類、ジブロピレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類が例示される。
【0056】
上記可塑剤以外の添加剤や本エステル以外の他の可塑剤は、1種でまたは2種以上組み合わせて本エステルと共に配合されていてもよい。
【0057】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法は、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、通常行なわれている混練方法並びに加硫方法を用いることができる。例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサ、ブラベンダ、ニーダ、高剪断型ミキサ等を用いて加硫温度以下で混合しした後、射出成形機、圧縮成形機、プレス機などを用いて加硫温度以上に加熱して目的に応じた形状に成形する方法等が例示される。
【0058】
かくして得られた本発明のゴム組成物は、良好な耐熱性を有し、かつ耐寒性、柔軟性に優れることより、自動車タイヤ、履物、ゴム引布、運動用品、床タイル、バッテリーケースベルト、電線被覆、コンベヤベルト、防振ゴム、窓枠ゴム、オイルシール、ガスケット、耐油ホース、印刷ロール、紡績用トップロール、ソリッドタイヤ、高圧パッキン、カプリング、ダイパッドなどの工業用品および一般用ゴム製品等のゴム組成物として広く使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
【0060】
(1)原料アルコールの直鎖率
本発明の実施例及び比較例で用いる原料アルコールの直鎖率はガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した。GCによる原料アルコールの測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μl
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
なお内部標準物質の選定に当たっては、原料アルコールに1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
【0061】
(2)エステルの評価
下記の製造例で得られたエステルは次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色相:JIS K−4101(Hazen)(1993)に準拠して測定した。
【0062】
(3)ゴム組成物及び試験片の作製
ロールにより混合・混練りし、油圧プレスにて160℃×20分間(クロロプレンゴムのみ40分間)加硫してゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物から切り出した厚さ1mmと2mmの試験片を以下に示す評価に供した。
【0063】
[ゴムの物性評価]
(4)引張試験
JIS K−6251に準拠して、引張速度500mm/min、23℃の条件にて、<引張強度、破断時伸び、100%モジュラス>を評価した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示す。
【0064】
(5)硬度
JIS K−6253に準拠して、デュロメータ硬さ計を用いて23℃にて測定した。デュロメータ硬さの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示す。
【0065】
(6)耐寒性試験
クラッシュベルグ試験機を用いて耐寒性を評価した。柔軟温度(℃)が低いほど耐寒性に優れる。ここで言う柔軟温度とは、前記測定において所定のねじり剛性率(3.17×10
3kg/cm
2)を示す低温限界の温度を指す。
【0066】
(7)耐熱性試験
揮発減量:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で60分間、120分間加熱した後のロールシートの重量変化を測定し、重量減少率(重量%)を算出した。数値が少ないほど、耐熱性が高い。
揮発減量(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100
【0067】
[製造例1]
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、無水フタル酸74.1g(0.5モル)、脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)173.1g(1.2モル)、及びエステル化触媒としてp−トルエンスルホン酸0.2gを加え、反応温度を140℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするフタル酸ジエステル(以下、「エステル1」という。)167.4gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:267mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:15であった。
【0068】
[製造例2]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)の代わりにn−ノニルアルコール121.2g(0.84モル)とイソノニルアルコール51.9g(0.36モル)を加えた以外は製造例1と同様にして、フタル酸ジエステル(以下、「エステル2」という。)159.1gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:266mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:15であった。
【0069】
[製造例3]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)の代わりにn−ノニルアルコール155.8g(1.08モル)とイソノニルアルコール17.3g(0.12モル)を加えた以外は製造例1と同様にして、フタル酸ジエステル(以下、「エステル3」という。)163.3gを得た。
得られたエステル3は、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:15であった。
【0070】
[製造例4]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)の代わりにn−ノニルアルコール86.6g(0.6モル)とイソノニルアルコール86.6g(0.6モル)を加えた以外は製造例1と同様にして、フタル酸ジエステル(以下、「エステル4」という。)165.3gを得た。
得られたエステル4は、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:15であった。
【0071】
[製造例5]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)の代わりにn−ノニルアルコール173.1g(1.2モル)を加えた以外は製造例1と同様にして、フタル酸ジエステル(以下、「エステル5」という。)167.4gを得た。
得られたエステル5は、エステル価:267mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:15であった。
【0072】
[実施例1]
製造例1で得られたフタル酸ジエステル(エステル1)を用いて、表1に記載の配合比率でニトリルゴム及びその他添加剤と混合・混練り後、加硫してゴム組成物及び試験片を作製した。続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0073】
[実施例2]
ニトリルゴムの代わりにクロロプレンゴムを用い、表1に記載の配合比率で実施例1と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0074】
[実施例3]
ニトリルゴムの代わりにスチレン−ブタジエンゴムを用い、表1に記載の配合比率で実施例1と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0075】
[実施例4]
エステル1の代わりに製造例2で得られたフタル酸ジエステル(エステル2)を用いた以外は、実施例3と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0076】
[実施例5]
エステル1の代わりに製造例2で得られたフタル酸ジエステル(エステル3)を用いた以外は、実施例3と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0077】
[比較例1]
エステル1の代わりにフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDOP)を用いた以外は、実施例3と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0078】
[比較例2]
エステル1の代わりにフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDOP)を用いた以外は、実施例2と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0079】
[比較例3]
エステル1の代わりにフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDOP)を用いた以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0080】
[比較例4]
エステル1の代わりにフタル酸ジイソデシル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDIDP)を用いた以外は、実施例3と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0081】
[比較例5]
エステル1の代わりにフタル酸ジイソノニル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDINP)を用いた以外は、実施例3と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0082】
[比較例6]
エステル1の代わりに製造例4で得られたフタル酸ジエステル(エステル4)を用いた以外は、実施例3と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製し、続いて,得られた試験片を用いて、硬度測定、引張試験,耐寒性試験、耐熱性試験を行なった。得られた結果を表2に示す。
【0083】
[比較例7]
エステル1の代わりに製造例5で得られたフタル酸ジエステル(エステル5)を用いた以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物及び試験片を作製した。得られた試験片は,時間経過とともに表面にべとつきが発生し、ゴムと可塑剤の相溶性不良が確認された。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表2の耐寒性及び耐熱性の結果より、本発明のフタル酸ジエステル(実施例1〜5)は、従来のフタル酸ジエステル(比較例1〜6)と比べて、いずれのゴム系でも耐寒性、耐熱性が大きく向上していることがわかる。更に、柔軟性に関しても、数字上の差は小さいが、本発明のフタル酸ジエステルは、いずれのゴム系でもデュロメータ硬さ及び100%モジュラスの値が小さく、柔軟性に優れていることを示唆する結果となっており、実際に試験片を触った感じは、数字の差以上に明確にゴムとしての柔軟性(弾性)に優れていることが確認されている。また、直鎖率が本発明の範囲を超えたエステルは、ニトリルゴム(NBR)等のゴムとの相溶性が悪く、均一な成形品の作成が困難であり、更に成形後のゴムから分離してしまい、実用的ではない。