(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤの表面の画像を取得し、赤外線画像に基づいて少なくとも一本のタイヤに対して設けたタイヤ幅方向及びタイヤ周方向の少なくとも一方のタイヤ表面温度の分布を測定するステップと、
計測した前記タイヤの表面温度に基づいて、前記タイヤの表面温度の分布を示す画像を生成するステップと、
タイヤの表面温度の分布を評価する条件に基づいて、前記タイヤの表面温度の分布を評価するステップと、を有し、
前記タイヤの表面温度の分布を評価する条件は、前記タイヤの範囲と温度変化とを組み合わせた条件であり、
前記タイヤの表面温度の分布を評価する条件は、前記タイヤの接地幅よりも狭い設定範囲での最高温度と最低温度との差を含み、
前記タイヤの接地幅よりも狭い設定範囲での最高温度と最低温度との差が、設定した条件より大きい場合、局所的に高温となっている部分があると評価することを特徴とするタイヤ状態評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。以下においては、評価対象の構造体をタイヤとし、移動体を車両として、車両に取り付けられたタイヤの性能を評価する例を説明するが、タイヤの種類は限定されない。
【0022】
図1は、本発明に係るタイヤ状態評価システムの概略構成を示すブロック図である。タイヤ状態評価システム1は、
図1に示すように、タイヤTyの表面温度を測定するタイヤ表面温度計測装置2と、車両の走行条件を検出する走行条件検出部3と、後述する各種のデータベース等を格納する記憶手段4と、タイヤ表面温度計測装置2及び走行条件検出部3から出力される測定信号に基づいてタイヤの状態の評価を行うタイヤ状態評価手段5と、タイヤの状態の評価結果やタイヤ表面温度の測温結果等を表示する表示手段6と、運転者や同乗者等のオペレータが指示を行う入力手段7と、を備える。
【0023】
タイヤ状態評価システム1は、タイヤが装着された車両に全ての構成が搭載されていても、車両にタイヤ表面温度計測装置2と走行条件検出部3のみが搭載されていてもよい。また、タイヤ状態評価システム1は、車両に装着されたタイヤに限定されず試験装置に装着され、試験装置で駆動されるタイヤの状態を評価してもよい。また、タイヤ状態評価システム1は、各部の間で情報を送受信する回線を有線としても無線としてもよい。
【0024】
タイヤ表面温度計測装置2は、赤外線カメラであり、タイヤTyの表面の赤外線画像を取得し、赤外線画像に基づいてタイヤTyの表面の温度また温度分布を測定する。タイヤ表面温度計測装置2は、非接触でタイヤTyの表面の温度の分布を測定できればよく、赤外線画像以外の画像を取得してタイヤTyの表面の温度を測定してもよい。本実施形態のタイヤ表面温度計測装置2は、タイヤ幅方向TWの全域を含む範囲の赤外線画像を取得する。タイヤ表面温度計測装置2は、画像で、タイヤ表面の温度を計測することで、画素単位でタイヤ表面の温度を検出することができる。
【0025】
また、タイヤ表面温度計測装置2は、撮影したタイヤTyの表面の赤外線画像、つまり測定したタイヤ表面温度の情報を、その測定箇所の情報(座標情報)と共にタイヤ状態評価手段5に送る。タイヤ表面温度計測装置2は、タイヤ表面における測定箇所の座標(X,Y)の情報と当該測定箇所におけるタイヤ表面温度の情報との関係を一意に定めて送信する。尚、ここでは、X方向を
図1に示すタイヤ幅方向TWとし、Y方向をタイヤ周方向とする。なお、タイヤ表面温度計測装置2で撮影した赤外線画像と位置との対応付けの処理は、タイヤ状態評価手段で実行してもよい。
【0026】
走行条件検出部3は、タイヤTYが装着された車両の走行条件、走行位置は、走行速度(タイヤの回転数)等の情報を取得する。走行条件検出部3は、検出した走行条件をタイヤ状態評価手段5に送る。走行条件検出部3は、加速度センサによる検出結果や、車両に入力される操作情報を取得し、走行条件として抽出する。
【0027】
記憶手段4は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の磁気記録媒体であって、処理に用いる各種情報を記憶している。記憶手段4は、温度分布情報格納部41と、評価条件格納部42と、を有する。
【0028】
先ず、温度分布情報格納部41は、タイヤ表面温度計測装置2で計測した結果の表示に用いる各種情報を記憶している。温度分布情報格納部41は、複数段階の温度帯の情報と当該温度帯における色調又は明度又は色相等の情報(以下「色情報」という。)との関係を示す情報が記憶されている。温度分布情報格納部41は、少なくとも五段階以上の温度帯(色)が設定されていることが好ましい。温度と色情報との対応関係は、利用者が変更できるように複数記憶されていてもよい。また、温度分布情報格納部41は、タイヤ表面温度計測装置2で計測した結果を表示するためのフレーム情報(どの位置にどの情報を表示させるかの情報)を記憶していてもよい。
【0029】
次に、評価条件格納部42は、タイヤ表面温度計測装置2で計測したタイヤ表面の温度を評価する基準の情報、つまり評価条件が記憶されている。評価条件格納部42は、評価条件を複数有することが好ましい。これにより、複数の基準で評価を行うことができる。評価条件については、後述する。
【0030】
次に、タイヤ状態評価手段5は、制御部51を備えている。制御部51は、処理を行うCPU(中央演算処理装置)等を有し、タイヤ表面温度計測装置2で取得したタイヤ表面温度の情報に基づいて、タイヤの状態を評価する処理を実行する。制御部51は、温度分布検出部51Aと、表示処理部51Bと、タイヤ状態評価部51Cと、を有する。
【0031】
温度分布検出部51Aは、タイヤ表面温度計測装置2で測定されたタイヤ表面温度を取得し、各種処理が実行できるデータに変換する。
【0032】
表示処理部51Bは、温度分布検出部51Aで生成された温度分布のデータや、評価結果に基づいて表示手段6に表示させる画像を生成し、表示手段6に出力する。
【0033】
タイヤ状態評価部51Cは、評価条件格納部42から評価条件を取得し、温度分布検出部51Aで生成された温度分布の情報を評価条件に基づいて評価し、タイヤの状態を評価する。タイヤ状態評価部51Cによる処理は後述する。
【0034】
ここで、制御部51の温度分布検出部51A、表示処理部51B及びタイヤ状態評価部51Cの各種処理機能は、CPU,記憶手段4,表示手段6及び入力手段7等を制御するタイヤ状態評価プログラムにより実現される。例えば、このタイヤ表面温度監視プログラムには、上述した温度分布検出部51A、表示処理部51B及びタイヤ状態評価部51Cの処理機能をCPUに実行させる当該処理機能に対応した指令が設けられている。また、このタイヤ状態評価プログラムは、例えばCD−ROM等の光記録媒体に格納され、図示しない読取装置で読み込んでHDD等の磁気記録媒体に格納することにより評価処理を実行する。
【0035】
表示手段6は、タイヤ状態評価手段5で評価した結果や、タイヤの温度分布の画像を表示させる。表示手段6は、パーソナルコンピュータ等の電子計算機のモニタや車両のダッシュパネルに配設されたモニタ等を用いることができる。
【0036】
入力手段7は、利用者が各種情報を入力するデバイスである。入力手段7としては、パーソナルコンピュータ等の電子計算機のキーボードやマウス,又は車両の所定の位置(例えばダッシュパネル等)に配設されたスイッチや釦やジョイスティック等を用いることができる。
【0037】
次に、
図2から
図6Bを用いて、タイヤ状態評価システムの処理動作について説明する。
図2から
図4は、それぞれタイヤ状態評価システムの処理動作の一例を示すフローチャートである。
図5と
図6Aと
図6Bは、それぞれタイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するためのグラフである。
図2から
図4に示す処理は、タイヤ状態評価システム1の各部でタイヤTyの評価に必要な各種情報を取得し、タイヤ状態評価手段5の制御部51の各部で処理を実行することで実現することができる。
【0038】
まず、
図2を用いて、全体の処理の流れについて説明する。タイヤ状態評価手段5は、タイヤ表面温度計測装置2で計測した結果を取得する(ステップS12)。タイヤ状態評価手段5は、温度の計測結果を取得したら、記憶手段4の評価条件格納部42に記憶されている評価条件を取得する(ステップS14)。タイヤ状態評価手段5は、計測結果を取得するために評価条件を取得してもよい。
【0039】
タイヤ状態評価手段5は、温度の計測結果と評価条件とを取得したら評価条件に基づいて計測結果を評価する(ステップS16)。評価方法については、後述する。タイヤ状態評価手段5は、計測結果を評価したら、評価条件を満たすかを判定する(ステップS18)。タイヤ状態評価手段5は、評価条件を満たす(ステップS18でYes)と判定した場合、高発熱部なしの評価結果を出力し(ステップS20)、本処理を終了する。また、タイヤ状態評価手段5は、評価条件を満たさない(ステップS18でNo)と判定した場合、高発熱部ありの評価結果を出力し(ステップS22)、本処理を終了する。ここで、タイヤ状態評価手段5は、表示処理部51Bで評価結果を示す画像を作成し、表示手段6に出力し、表示させる。
【0040】
次に、
図3及び
図4を用いて、評価条件に基づいて計測結果を評価する方法、つまり評価条件を満たすかの判定の処理動作の一例について説明する。
図3に示す処理と
図4に示す処理は、並列して実行してもよいし、1つの処理として順番に実行してもよい。
【0041】
タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅内でのTmax−Tmin≦20℃であるかを判定する(ステップS30)。ここで、Tmaxは、対象の領域、
図3ではタイヤ接地幅の全域の中において、計測結果の温度が最も高い温度である。Tminは、対象の領域、
図3ではタイヤ接地幅の全域の中において、計測結果の温度が最も低い温度である。
【0042】
タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅内でのTmax−Tmin≦20℃である(ステップS30でYes)と判定した場合、評価条件を満たすとして(ステップS32)、処理を終了する。タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅内でのTmax−Tmin≦20℃ではない(ステップS30でNo)、つまりTmax−Tmin>20℃であると判定した場合、評価条件を満たさないとして(ステップS34)、処理を終了する。
【0043】
次に、
図4を用いて、判定処理の他の一例について説明する。タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の20%の領域内でのTmax−Tmin≦20℃であるかを判定する(ステップS40)。ここで、Tmaxは、対象の領域、
図4ではタイヤ接地幅の20%の領域の中において、計測結果の温度が最も高い温度である。Tminは、対象の領域、
図4ではタイヤ接地幅の20%の領域の中において、計測結果の温度が最も低い温度である。
【0044】
タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の20%の領域内でのTmax−Tmin≦20℃である(ステップS40でYes)と判定した場合、評価条件を満たすとして(ステップS42)、処理を終了する。タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の20%の領域内でのTmax−Tmin≦20℃ではない(ステップS40でNo)、つまりTmax−Tmin>20℃であると判定した場合、評価条件を満たさないとして(ステップS44)、処理を終了する。
【0045】
図5、
図6A及び
図6Bは、タイヤ幅方向におけるタイヤ表面温度の計測結果を示すグラフであり、横軸がタイヤ幅方向位置とし、縦軸をタイヤ表面温度とした。位置は、タイヤ幅方向の中心を原点とし、IN側(車両中心側)を正、OUT側(車両外側)を負とした。
図5には、第1サンプル、第2サンプルの計測結果を示し、
図6に第3サンプル、第4サンプルの計測結果を示す。また、
図5、
図6A及び
図6Bに示す計測結果は、タイヤとしてスリックタイヤ用い、当該タイヤをレース仕様の車両に装着して、レースコースを走行させて、計測を行った結果である。後述する計測結果も同様である。
【0046】
タイヤ状態評価手段5は、
図5に示すように、第1サンプルの場合、タイヤ接地幅に相当する範囲102の20%の範囲である範囲を、タイヤ幅方向に徐々にずらしつつ、最高温度と最低温度との差を検出する。これにより、範囲102の20%の範囲は、範囲104、105、106に示すように、幅方向の位置が異なる複数の範囲となる。タイヤ状態評価手段5は、20%の範囲毎に最高温度と最低温度との差を検出し、20℃より大きい温度差が生じる部分があるかを検出する。
図5に示す第1サンプルは、20%の範囲を範囲102の中のどの位置にしても温度差が20℃以下となる。これに対して、
図5に示す第2サンプルは、範囲104での温度差109が、20℃より大きくなる。また、
図6Aに示す第3サンプルは、範囲112での温度差122が、20℃より大きくなる。
図6Aに示す第4サンプルは、範囲114での温度差124が、20℃より大きくなる。
図6Bに示す第5サンプルは、タイヤ接地幅の20%の範囲116での温度差126が、20℃より小さくなるが、タイヤ接地幅に相当する範囲102での温度差128が、20℃より大きくなる。以上より、タイヤ状態判定手段5は、
図5、
図6A及び
図6Bに示す第1サンプルから第5サンプルのうち、第1サンプル及び第5サンプルが評価条件を満たすと判定し、第2サンプル、第3サンプル及び第4サンプルが評価条件を満たさないと判定する。
【0047】
タイヤ状態評価システム1は、以上のように、タイヤの全域から抽出した一部の領域における温度差を検出し、温度差に基づいてタイヤの状態を評価することでタイヤTyの温度が局所的に上昇している部分を高い精度で計測することができる。例えば、第5サンプルのように、タイヤ幅方向において、タイヤ表面の温度が徐々に変化しているが、タイヤ接地幅の20%の範囲では、温度差が大きくない場合は、局所的に温度が上昇していないと判定することができ、温度が局所的に上昇している部分を高い精度で計測することができる。これにより、タイヤの部分的、局所的な変化をより高い精度で評価することができるため、タイヤの状態をより高い精度で評価することができる。
【0048】
タイヤ状態評価システム1は、評価結果とともにタイヤ表面の温度の計測結果として、タイヤ表面の温度分布の算出結果のグラフも表示部に表示させることが好ましい。温度分布の算出結果を評価結果とともに表示することで、タイヤの状態をよりわかりやすく表示させることができる。タイヤ表面の温度分布は、温度に応じて明度または色調を変化させる画像で表示させることが好ましい。
【0049】
タイヤ状態評価システム1は、本実施形態のように、タイヤ表面の温度分布を算出し、その結果を処理することで、温度差を算出して評価することが好ましいが、タイヤ表面の温度分布を算出せずに、タイヤ表面の温度の検出結果を直接処理して評価してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、タイヤ接地幅の20%の領域を評価対象としたが、20%以下の範囲とすることが好ましい。タイヤの全幅の20%以下の範囲を評価対象の範囲とすることで、タイヤの局所的な部分の状態を高い精度で評価することができる。Tmax−Tminの温度差は、20℃とすることが好ましいが、20℃以上の温度でもよく、20℃未満の温度でもよい。
【0051】
次に、
図7及び
図8を用いて評価方法の他の一例について説明する。
図7は、タイヤ状態評価システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図8は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するためのグラフである。タイヤ状態評価システム1は、
図7を用いた評価を上述した評価と別の処理として実行しても、連続した処理として実行してもよい。つまり、
図3、4及び
図7の全ての条件を用いてタイヤの状態を評価しても、
図7の条件のみでタイヤの状態を評価してもよい。評価方法を組み合わせてもよいのは他の処理方法も同様である。
【0052】
タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の50%の領域内で10℃以上の差があるピークが1か所以下であるかを判定する(ステップS50)。ここで、ピークは、計測結果の位置による温度変動に基づいて抽出される位置であり、上昇から下降に切り替わる変曲点である。また、ピークとの温度差を抽出する位置は、ボトムとなる。ボトムは、下降から上昇に切り替わる変曲点である。タイヤ状態評価手段5は、タイヤ幅方向における温度の変動を検出し、ピークの位置を検出し、ピークに対応するボトムとの温度差を検出し、当該温度が10℃以上であるかを検出する。タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の50%の領域内のピークについて同様の処理を行い、10℃以上の差があるピークの数を算出する。
【0053】
タイヤ状態評価手段5はタイヤ接地幅の50%の領域内で10℃以上の差があるピークが1か所以下である(ステップS50でYes)と判定した場合、評価条件を満たすとして(ステップS52)、処理を終了する。タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の50%の領域内で10℃以上の差があるピークが1か所以下ではない(ステップS50でNo)、つまりピークが2か所以上あると判定した場合、評価条件を満たさないとして(ステップS54)、処理を終了する。
【0054】
図8は、タイヤ幅方向におけるタイヤ表面温度の計測結果を示すグラフであり、横軸が位置とし、縦軸をタイヤ表面温度とした。位置は、タイヤ幅方向の中心を原点とし、IN側(車両中心側)を正、OUT側(車両外側)を負とした。
図8には、第6サンプルの計測結果を示す。
【0055】
タイヤ状態評価手段5は、
図8に示すように、第6サンプルの場合、タイヤ接地幅に相当する範囲102の50%の範囲である範囲132を、タイヤ幅方向に徐々にずらしつつ、最高温度と最低温度との差を検出する。タイヤ状態評価手段5は、50%の範囲毎に温度の変動を検出し、ピーク(上昇から下降に切り替わる変曲点)とボトム(下降から上昇に切り替わる変曲点)を抽出し、さらにピークとボトムの温度差を検出し、ボトムとの温度差が10℃以上となるピークの数を検出する。
図8に示す第6サンプルは、50%の範囲132の中でボトムとの温度差が10℃以上となるピークが2つ以上ある。具体的には、少なくともボトムとの温度差が幅142となるピークと、ボトムとの温度差が幅144となるピークがある。以上より、タイヤ状態判定手段5は、
図7に示す第6サンプルが評価条件を満たさないと判定する。
【0056】
タイヤ状態評価システム1は、以上のように、タイヤの全域から抽出した一部の領域における温度差を検出し、温度差が10℃以上となるピークの数に基づいてタイヤの状態を評価することでタイヤTyの温度が局所的に上昇している部分を高い精度で計測することができる。これにより、タイヤの部分的、局所的な変化をより高い精度で評価することができるため、タイヤの状態をより高い精度で評価することができる。また、上記実施形態では、タイヤ接地幅の50%の領域内としたが、50%に限定されず、50%より広くしても狭くしてもよい。
【0057】
次に、
図9から
図11を用いて評価方法の他の一例について説明する。
図9は、タイヤ状態評価システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図10は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するための説明図である。
図11は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するための説明図である。
【0058】
タイヤ状態評価手段5は、縦筋発熱部分がないかを判定する(ステップS60)。ここで、縦筋発熱部分は、タイヤ表面温度計測装置2で取得した赤外線画像を処理することで検出される。具体的には、
図10に示すように、タイヤ表面温度計測装置2で取得した赤外線画像に写るタイヤの温度分布を検出し、タイヤ周方向(回転方向)に同じ温度帯があり、かつ、タイヤ幅方向に温度が変化し、温度帯160,162,164に示すように温度の分布がタイヤの周方向に延在する筋となっているかを検出する。
【0059】
タイヤ状態評価手段5は、縦筋発熱部分がない(ステップS60でYes)と判定した場合、つまり、
図10に示すようなタイヤ周方向に伸び、タイヤ幅方向に温度が変化する部分がない場合、評価条件を満たすとして(ステップS62)、処理を終了する。タイヤ状態評価手段5は、縦筋発熱部分がある(ステップS60でNo)と判定した場合、評価条件を満たさないとして(ステップS64)、処理を終了する。
【0060】
タイヤ状態評価システム1は、以上のように、温度分布の画像に基づいて縦筋発熱部分があるかを検出し、タイヤの状態を評価することでタイヤTyの温度が局所的に上昇している部分を高い精度で計測することができる。これにより、タイヤの部分的、局所的な変化をより高い精度で評価することができるため、タイヤの状態をより高い精度で評価することができる。また、タイヤ状態評価システム1は、縦筋発熱部分を検出することで、
図11に示すようにタイヤ表面に微細な凸部167が生じるグレーニング、アブレーションが発生しているかを評価することができる。タイヤ状態評価システム1は、縦筋発熱部分が発生している場合、グレーニング、アブレーションが発生している、または発生しやすい状態であると評価する。
【0061】
次に、
図12及び
図13を用いて評価方法の他の一例について説明する。
図12は、タイヤ状態評価システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図13は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するための説明図である。
【0062】
タイヤ状態評価手段5は、タイヤ周方向に接地高発熱分布がないかを判定する(ステップS70)。ここで、接地高発熱分布は、タイヤ表面温度計測装置2で取得した赤外線画像を処理することで検出される。具体的には、
図13に示すように、タイヤ表面温度計測装置2で取得した赤外線画像に写るタイヤの温度分布を検出し、タイヤ周方向(回転方向)に温度の分布があり、周方向の他の部分に比べて高温となっている部分172,174があるかを検出する。
【0063】
タイヤ状態評価手段5は、接地高発熱分布がない(ステップS70でYes)と判定した場合、つまり、
図13に示すようなタイヤ周方向に他の部分よりも高温の部分がない場合、評価条件を満たすとして(ステップS72)、処理を終了する。タイヤ状態評価手段5は、接地高発熱分布がある(ステップS70でNo)と判定した場合、評価条件を満たさないとして(ステップS74)、処理を終了する。
【0064】
タイヤ状態評価システム1は、以上のように、温度分布の画像に基づいて接地発熱部分があるかを検出し、タイヤの状態を評価することでタイヤTyの温度が局所的に上昇している部分を高い精度で計測することができる。これにより、タイヤの部分的、局所的な変化をより高い精度で評価することができるため、タイヤの状態をより高い精度で評価することができる。また、タイヤ状態評価システム1は、接地発熱部分を検出することで、
図13に示すように周方向の一部が高温となるフラットスポットが発生しているかを評価することができる。タイヤ状態評価システム1は、接地発熱部分が発生している場合、フラットスポットが発生していると評価する。
【0065】
ここで、タイヤ状態評価システム1は、タイヤが静止している状態、または低速で回転している状態でタイヤの表面を計測することでタイヤ周方向の接地発熱部分を検出することで、評価することができる。この場合、走行条件検出部3で、車両の走行条件を検出することで、画像を取得するタイミングを特定することができる。また、タイヤ状態評価システム1は、タイヤ表面温度計測装置2に高速度カメラを用い、高速度カメラでタイヤ表面の赤外線画像を取得しても、タイヤ周方向の接地発熱部分を検出することで、評価することができる。
【0066】
次に、
図14及び
図19を用いて評価方法の他の一例について説明する。
図14は、タイヤ状態評価システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図15は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するための説明図である。
図16は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するための説明図である。
図17は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するための説明図である。
図18は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するための説明図である。
図19は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するためのグラフである。
【0067】
タイヤ状態評価手段5は、高発熱頻度分布の割合≦閾値であるかを判定する(ステップS80)。ここで、高発熱頻度分布は、タイヤ表面温度計測装置2で取得した赤外線画像を処理することで検出される。具体的には、高発熱頻度分布は、評価対象の走行区間においてタイヤ表面温度計測装置2で計測したタイヤ表面の計測結果の履歴を抽出し、各タイヤ表面の計測結果について、測定対象範囲の各温度範囲の割合を抽出し、温度の頻度分布(画像の割合、ピクセル量の分布)を算出することで、算出される。
【0068】
タイヤ状態評価手段5は、高発熱頻度分布の割合≦閾値である(ステップS80でYes)と判定した場合、評価条件を満たすとして(ステップS82)、処理を終了する。タイヤ状態評価手段5は、高発熱頻度分布の割合≦閾値ではない、つまり高発熱頻度分布の割合>閾値である(ステップS80でNo)と判定した場合、評価条件を満たさないとして(ステップS84)、処理を終了する。
【0069】
タイヤ状態評価システム1は、
図15に示すように、車両で走行した際のタイヤの表面温度を履歴として取得する。
図15に示す画像182は、各位置で計測した温度を温度分布180で設定した色(明度、色相)で表示させている。なお、タイヤ状態評価システム1は、タイヤ表面温度計測装置2が画像を取得する間隔は任意の間隔としてよい。間隔が短いほどより精度の高い評価を行うことができ、間隔を長くするほど処理量を低減することができる。
図15に示す画像182は、各位置で計測した
図16に示すタイヤ表面温度計測装置2で取得したタイヤの表面の温度分布の画像192の内、範囲194の温度分布を表示しているものである。画像192は、計測した温度を温度分布190で設定した色(明度、色相)で表示させている。
【0070】
図17及び
図18は、
図15及び
図16とは異なる計測結果を示している。
図17に示す画像182Aは、各位置で計測した温度を温度分布180で設定した色(明度、色相)で表示させている。
図17に示す画像182Aは、各位置で計測した
図18に示すタイヤ表面温度計測装置2で取得したタイヤの表面の温度分布の画像192Aの内、範囲194の温度分布を表示しているものである。画像192Aは、計測した温度を温度分布190で設定した色(明度、色相)で表示させている。
【0071】
タイヤ状態評価システム1は、
図15及び
図17の位置A
1から位置A
2で取得された画像192,192Aの領域194の温度分布、つまり各温度範囲の面積を加算して、温度の頻度分布を算出する。
図15及び
図16に示す頻度分布が、
図19の第1分布となり、
図17及び
図18に示す頻度分布が、
図19の第2分布となる。
【0072】
タイヤ状態評価システム1は、110℃以上の割合を高発熱頻度分布とし、閾値を50%以上とした場合、第1分布の計測結果では高発熱頻度分布が閾値以下であると評価し、第2分布の計測結果では高発熱頻度分布が閾値より大きいと評価する。
【0073】
タイヤ状態評価システム1は、以上のように、走行区間におけるタイヤ表面の温度の分布を算出し、高発熱頻度分布が多いかを検出し、タイヤの状態を評価することでタイヤTyの温度が局所的に上昇している部分を高い精度で計測することができる。これにより、タイヤの部分的、局所的な変化をより高い精度で評価することができるため、タイヤの状態をより高い精度で評価することができる。また、タイヤ状態評価システム1は、高発熱頻度分布が多いかを検出することで、タイヤが適正な発熱をしているかを判定することができる。
【0074】
次に、
図20から
図22を用いて評価方法の他の一例について説明する。
図20は、タイヤ状態評価システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図21は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するためのグラフである。
図22は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するためのグラフである。
【0075】
タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の20%の領域内でのTmax−Tmin≦10℃であるかを判定する(ステップS112)。タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の20%の領域内でのTmax−Tmin≦10℃である(ステップS112でYes)と判定した場合、ステップS116に進む。
【0076】
タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の20%の領域内でのTmax−Tmin≦10℃ではない(ステップS112でNo)、つまりTmax−Tmin>10℃であると判定した場合、当該領域内での傾きが0.4以上であるかを判定する(ステップS114)。傾きは、温度の変化の割合であり縦軸を温度とし横軸を位置としたグラフの微分係数である。具体的には、上述した第1サンプル、第2サンプルの傾きは、
図21に示す値となり、第3サンプル、第4サンプルの傾きは、
図22に示す値となる。
【0077】
タイヤ状態評価手段5は、ステップS112でYesまたは、当該領域内での傾きが0.4未満である(ステップS114でNo)と判定した場合、評価条件を満たすとして(ステップS116)、処理を終了する。タイヤ状態評価手段5は、当該領域内での傾きが0.4以上である(ステップS114でYes)と判定した場合、評価条件を満たさないとして(ステップS118)、処理を終了する。
【0078】
タイヤ状態評価システム1は、以上のように、温度変化の傾きを評価することで、タイヤの全域から抽出した一部の領域における温度変化を検出し、温度変化に基づいてタイヤの状態を評価することでタイヤTyの温度が局所的に上昇している部分を高い精度で計測することができる。これにより、タイヤの部分的、局所的な変化をより高い精度で評価することができるため、タイヤの状態をより高い精度で評価することができる。なお、
図20に示す例の温度範囲、タイヤの全幅に対する幅の値は一例であり、上記数値に限定されない。また、本実施形態のように傾きを評価する対象を温度差が10℃以上の部分とすることで、問題となる可能性が高い部分での温度変化を適切に評価することができる。なお、本実施形態では、温度差が10℃以上となる領域を評価対象としたが、温度差を検出せずに傾きのみで評価してもよい。
【0079】
次に、
図23及び
図24を用いて評価方法の他の一例について説明する。
図23は、タイヤ状態評価システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図24は、タイヤ状態評価システムの処理動作の一例を説明するためのグラフである。
【0080】
タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の50%の領域内で10℃以上の差があるピークが1か所以下であるかを判定する(ステップS122)。タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の50%の領域内で10℃以上の差があるピークが1か所以下である(ステップS122でYes)と判定した場合、ステップS126に進む。
【0081】
タイヤ状態評価手段5は、タイヤ接地幅の50%の領域内で10℃以上の差があるピークが1か所以下ではない(ステップS122でNo)、つまりTmax−Tmin>10℃であると判定した場合、当該領域内での傾きが0.4以上であるかを判定する(ステップS124)。傾きは、温度の変化の割合であり縦軸を温度とし横軸を位置としたグラフの微分係数である。具体的には、上述した第6サンプルの傾きは、
図24に示す値となる。
【0082】
タイヤ状態評価手段5は、ステップS122でYesまたは、当該領域内での傾きが0.4未満である(ステップS124でNo)と判定した場合、評価条件を満たすとして(ステップS126)、処理を終了する。タイヤ状態評価手段5は、当該領域内での傾きが0.4以上である(ステップS124でYes)と判定した場合、評価条件を満たさないとして(ステップS128)、処理を終了する。
【0083】
タイヤ状態評価システム1は、以上のように、ピークを検出する場合も温度変化の傾きを評価することで、タイヤの全域から抽出した一部の領域における温度変化を検出し、温度変化に基づいてタイヤの状態を評価することでタイヤTyの温度が局所的に上昇している部分を高い精度で計測することができる。これにより、タイヤの部分的、局所的な変化をより高い精度で評価することができるため、タイヤの状態をより高い精度で評価することができる。なお、
図23に示す例の温度範囲、タイヤの全幅に対する幅の値は一例であり、上記数値に限定されない。