(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357914
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】スクライブ装置
(51)【国際特許分類】
B28D 5/00 20060101AFI20180709BHJP
B65G 49/06 20060101ALI20180709BHJP
C03B 33/03 20060101ALI20180709BHJP
B65G 47/91 20060101ALN20180709BHJP
【FI】
B28D5/00 Z
B65G49/06 A
C03B33/03
!B65G47/91 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-131719(P2014-131719)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-7842(P2016-7842A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】得永 直
【審査官】
貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−052995(JP,A)
【文献】
特開2012−121680(JP,A)
【文献】
特開平07−010301(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/053925(WO,A1)
【文献】
特開2013−014488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
B65G 49/06
C03B 33/03
B65G 47/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を第一の位置から下流側の第二の位置へ移送するローダと、前記第二の位置に移送された基板の上流側端部をチャック爪により把持した状態で、下流側のスクライブユニットへ搬送する把持搬送ユニットとを備え、前記スクライブユニットが具備するカッターホイールにより、前記基板の表面に基板搬送方向である第一の方向に延びるスクライブラインを加工するスクライブ装置であって、
前記ローダは前記基板をピックアップする吸着搬送部材を備え、前記ローダが前記吸着搬送部材とともに前記第一の方向と直交する第二の方向に移動できるように形成されており、
前記スクライブユニットは、前記基板の上面を押さえて前記基板を載置する台盤との間で前記基板を保持する昇降可能な押圧部材を備えているスクライブ装置。
【請求項2】
前記カッターホイールが、その刃先の向きを前記第二の方向に向けた姿勢で前記第二の方向に移動できるように形成され、前記カッターホイールにより前記チャック爪に隣接する第二の方向のスクライブラインを加工する際に、前記チャック爪が前記基板の把持を解除すると共に前記チャック爪が前記カッターホイールと干渉しない位置に退避するように形成されている請求項1に記載のスクライブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、シリコン、セラミック等の脆性材料からなる基板の表面にスクライブ予定ラインに沿ってブレイク用のスクライブライン(切り溝)を加工するスクライブ装置に関する。特に本発明は、四方の周辺部分に端材領域が形成される脆性材料基板のスクライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、脆性材料基板(以下、単に「基板」という)から単位基板を切り出すには、
図10に示すように、まず基板W’の表面に互いに直交するX方向のスクライブ予定ラインS1並びにY方向のスクライブ予定ラインS2に沿ってスクライブラインを加工し、次の工程でこれらのスクライブラインS1、S2に沿ってブレイクすることによって製品となる単位基板を切り出している。この場合、切り出された単位基板の端面精度を高めるために、基板W’の四辺近傍には端材領域Tが形成されており、ブレイク時に端材領域Tは切り離されて破棄される。
【0003】
上記スクライブラインS1、S2を形成する方法として、基板の一端部(搬送方向に対して上流側端部)をチャック爪で把持した状態でスクライブユニットに向かって搬送し、当該スクライブユニットによりスクライブラインを形成する手法が、例えば特許文献1等で知られている。
【0004】
図11(a)は、上記
図10で示した基板W’をチャック爪で把持してスクライブユニットに搬送し、スクライブユニットのカッターホイールで基板表面にスクライブラインを形成する一般的な方法を示す説明図である。
基板W’は、水平な姿勢でチャック爪30によって把持され、スクライブユニット31のビーム32に向かって搬送され、ビーム32に取り付けたスクライブヘッド33のカッターホイール34を基板W’表面に押しつけながらX方向に転動させることによって、X方向のスクライブ予定ラインS1に沿ってスクライブラインが加工される。また、Y方向のスクライブ予定ラインS2の加工は、カッターホイール34のホルダ(図示外)を回転させる等してカッターホイール34の転動方向をY方向に変更し、基板W’をチャック爪30で把持してカッターホイール34に向かって移動させることによって行われる。
【0005】
通常、チャック爪30で基板W’を把持する場合、
図11(b)に示すように、チャック代L1には2.5〜3mmが必要である。従来では、端材領域Tの幅L2が10mm程度で形成されており、チャック代に2.5〜3mmを要しても、隣接するX方向のスクライブ予定ラインS1との間には7〜7.5mmが残っているので、チャック爪30に干渉されることなくスクライブすることができる。また、カッターホイール34の刃先の向きを基板搬送方向に沿ったY方向に向けてスクライブ予定ラインS2をスクライブする場合に、加工すべきY方向のスクライブ予定ラインS2上にチャック爪30が乗っていても、カッターホイール34がこれに隣接するX方向のスクライブ予定ラインS1を越えた位置でチャック爪30との接触前に基板送りを止めることにより、Y方向のスクライブ予定ラインS2をスクライブすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−249206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが近年、製品となる単位基板のコンパクト化や、材料の有効利用のために、端材領域Tの幅を小さくすることが求められており、具体的には3mm程度まで小さくすることが要求されている。しかし、端材領域Tの幅を3mmまで小さくすると、
図6(b)に示すように、チャック爪11がこれに隣接するX方向のスクライブ予定ラインS1に干渉し、当該スクライブ予定ラインS1をスクライブすることができない。
また、Y方向のスクライブ予定ラインS2をスクライブする場合も、
図8で示すチャック爪11の位置が、加工すべきY方向のスクライブ予定ラインS2上に乗っていると、カッターホイール23がチャック爪11に干渉されてY方向のスクライブ予定ラインS2を最後まで完全にスクライブすることができない。
【0008】
そこで本発明は上記課題に鑑み、基板の端材領域の幅がチャック爪の掴み代と略同じ3mm程度まで小さい場合でも、チャック爪に干渉されることなくスクライブ予定ラインに沿ってスクライブすることができるスクライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち、本発明のスクライブ装置は、基板を第一の位置から下流側の第二の位置へ移送するローダと、前記第二の位置に移送された基板の上流側端部をチャック爪により把持した状態で、下流側のスクライブユニットへ搬送する把持搬送ユニットとを備え、前記スクライブユニットが具備するカッターホイールにより、前記基板の表面に基板搬送方向である第一の方向に延びるスクライブラインを加工するスクライブ装置であって、前記ローダは前記基板をピックアップする吸着搬送部材を備え、前記ローダが前記吸着搬送部材とともに前記第一の方向と直交する第二の方向に移動できるように形成されている構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ローダの吸着搬送部材で基板をピックアップして第一の位置から第二の位置に移送する過程において、ローダを吸着搬送部材とともに第二の方向(X方向)に移動させることによって、チャック爪が第一の方向(Y方向)に延びるスクライブ予定ラインから外れた箇所で基板をチャックできるようになる。これにより、Y方向のスクライブラインを加工する際にカッターホイールがチャック爪と干渉することがなく、円滑にスクライブすることができる。
【0011】
上記発明において、前記カッターホイールが、その刃先の向きを前記第二の方向に向けた姿勢で前記第二の方向に移動できるように形成され、前記カッターホイールにより前記チャック爪に隣接する第二の方向のスクライブラインを加工する際に、前記チャック爪が前記基板の把持を解除すると共に前記チャック爪が前記カッターホイールと干渉しない位置に退避するように形成されている構成とするのがよい。
【0012】
これにより、加工される基板の端材領域がチャック爪の掴み代と略同じ程度の小さな幅で設定されている場合であっても、チャック爪に隣接する第二の方向(X方向)のスクライブラインを加工する際に、チャック爪による基板の把持を解除すると共に当該チャック爪をカッターホイールと干渉しない位置に退避させることによって、円滑にスクライブすることが可能となる。
【0013】
上記発明において、前記スクライブユニットには、前記基板の上面を押さえて前記基板を載置する台盤との間で前記基板を保持する昇降可能な押圧部材を設けた構成とするのがよい。
【0014】
これにより、チャック爪が基板の把持を解除した後であっても、基板の表面を押圧部材で押さえつけることで基板を安定的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るスクライブ装置の一例を示す全体斜視図。
【
図3】台盤上でのチャック爪による基板把持状態を示す一部拡大断面図。
【
図4】把持搬送ユニットのチャック爪の動作説明図。
【
図6】チャック爪による基板把持後のスクライブユニットへの搬送状態を平面視で示す説明図。
【
図7】ローダによる基板の台盤搬送過程を示す説明図。
【
図8】Y方向スクライブ予定ラインのスクライブ工程を平面視で示す説明図。
【
図9】チャック爪による干渉回避動作の別の一例を示す説明図。
【
図10】基板におけるスクライブ予定ラインの従来のレイアウトを示す平面図。
【
図11】
図10の基板スクライブ方法の一例を平面視で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明のスクライブ装置の詳細を、
図1〜9を参照して説明する。
本発明においてスクライブされる基板Wは、
図6(a)に示すように、互いに直交するX方向のスクライブ予定ラインS1とY方向のスクライブ予定ラインS2によって、六つの単位基板領域W1と、四方周辺の端材領域Tとに区分けされる。本実施例では、この端材領域Tの幅が3mm程度としてある。
【0017】
本発明のスクライブ装置は、
図1、2で示すように、基板搬送方向の上流側から順に配置されたローダAと、把持搬送ユニットBと、スクライブユニットCとから構成される。以下の説明においては、基板搬送方向をY方向とし、基板搬送方向(Y方向)と直交する方向をX方向とする。また、基板搬送方向の上流側を単に上流側といい、基板搬送方向の下流側を単に下流側という。
【0018】
ローダAは、コンベア1によって送られてきた基板Wをピックアップして下流側の把持搬送ユニットBの台盤10に移送する吸着搬送部材2を備えている。ここでは、コンベア1上に載置されている基板Wの位置を第一の位置といい、台盤10上の位置を第二の位置という。
吸着搬送部材2は、下面に多数のエア吸引孔を有する吸着板3を備え、吸着板3は流体シリンダなどの昇降機構4により昇降できるように支持部材5に保持されている。また、支持部材5はY方向に延びる支柱6に形成されたレール7に沿って往復移動できるようにしてある。
さらに、ローダAの支持部材5を支える支柱6は、上流側の門型ビーム8と、下流側にあるスクライブユニットCの門型ビーム20とによって支えられ、それぞれのビームに形成されたレール8a、20aに沿って吸着搬送部材2とともにX方向に移動できるように形成されている。
【0019】
把持搬送ユニットBは、台盤10上に載置される基板Wの上流側端部をチャック爪11で把持した状態で、基板Wを下流側のスクライブユニットCへ搬送する複数の、本実施例では5個のチャック部材12を備えている。チャック部材12はX方向に延びる共通のフレーム13に保持され、フレーム13はその両端部分でY方向に延びる左右のレール14に沿って往復移動できるように形成されている。
各チャック部材12のチャック爪11は、台盤10に設けられたY方向に延びる溝15に沿って移動できるように配置されている。そして、基板Wをチャック爪11で把持したときには、
図3に示すように、基板Wの下面が台盤10の上面に接した状態で台盤10上に載置できるように形成されている。
また、チャック爪11は、
図4に詳しく示すように、上部爪片11aと下部爪片11bとからなり、上部爪片11aが枢軸11cを支点として、
図4(a)の基板チャック位置から
図4(b)の解除位置に回動できるようになっている。この解除位置において、本実施例では、後述するスクライブユニットCのカッターホイール23により、最上流側のX方向のスクライブ予定ラインS1をスクライブする際に、上部爪片11aがカッターホイール23と干渉しない退避姿勢となるべく大きく開くように形成されている。なお、上部爪片11aのチャック並びに解除動作は、流体シリンダ11dによって行われる。
【0020】
スクライブユニットCは、
図5に詳しく示すように、台盤10を跨ぐように配置された門型のビーム20と、このビーム20に設けられたX方向(
図5の前後方向)に延びるガイド部材21と、このガイド部材21に設けられたレール21aに沿ってX方向に移動可能に取り付けられたスクライブヘッド22とを備えている。スクライブヘッド22には、下端部にカッターホイール23を有するホルダ24が流体シリンダ等の昇降機構25を介して昇降可能に設けられている。ホルダ24はスクライブヘッド22に対して取付角度が変更できるように取り付けられており、これによりカッターホイール23の刃先の向きをX方向並びにY方向に変更できるようにしてある。
また、スクライブユニットCには、台盤10上に載置される基板Wの上面の一部を押さえて台盤10との間で基板Wを保持する昇降可能な押圧部材26が設けられている。押圧部材26の駆動は流体シリンダ等の駆動機構27により行われる。
【0021】
なお、
図1、2において、上記したローダAの吸着搬送部材2をレール7に沿ってY方向へ往復移動させるための駆動機構、レール8a、20aに沿ってX方向に移動させるための駆動機構、把持搬送ユニットBのフレーム13をレール14に沿ってY方向へ往復移動させるための駆動機構、スクライブユニットCのスクライブヘッド22をレール21aに沿ってX方向へ往復移動させるための駆動機構は、それぞれ図面の複雑化を避けるために図示を省略した。
【0022】
次に、上記のスクライブ装置の動作について説明する。
図7(a)〜(d)に示すように、コンベア1上の第一の位置にある基板Wは、ローダAの吸着板3でピックアップされてレール7に沿って下流側に移動し、把持搬送ユニットBのフレーム13を乗り越えて第二の位置である台盤10上に受け渡される。
台盤10上に移送された基板Wは、
図6(a)に示すように、その上流側一端部の端材領域T部分が把持搬送ユニットBのチャック爪11に把持される。この場合のチャック爪11の掴み代は、端材領域Tの幅と略同じ3mmである。この状態で基板Wは下流側のスクライブユニットCに向かって移動する。そして、基板Wの最下流側(先導端側)のX方向スクライブ予定ラインS1がスクライブユニットCのカッターホイール23の直下に到達したときに、把持搬送ユニットBの基板送りを停止し、カッターホイール23を降下させてこのスクライブ予定ラインに沿って押しつけながらX方向にスクライブする。
このようにしてX方向のスクライブ予定ラインS1を下流側から順次スクライブしていく。しかし、
図6(b)に示すように、最上流のX方向スクライブ予定ラインS1を加工する場合は、チャック爪11の掴み代が端材領域Tの幅と略同じであるので、カッターホイール23がチャック爪11と干渉してスクライブすることができない。したがってこの際は、
図4(b)に示すように、基板Wを把持するチャック爪11の上部爪片11aを流体シリンダ11dによりカッターホイール23と干渉しない解除姿勢まで回動退避させている。これにより、最上流側のX方向スクライブ予定ラインS1を円滑にスクライブすることができる。
また、この実施例では、チャック爪11が基板Wの把持を解除した位置で、チャック爪11の上部爪片11aが退避姿勢まで回動するので、チャック爪11の基板解除動作と干渉回避動作とをワンアクションで迅速に行うことができる。
なお、最上流のX方向スクライブ予定ラインS1をスクライブする際は、押圧部材27を基板W表面に接する位置まで降下させて、チャック爪11のチャック解除により不安定となった基板Wを台盤10との間で挟着保持するのがよい。
【0023】
全てのX方向スクライブ予定ラインS1をスクライブした後、Y方向のスクライブ予定ラインS2を加工する際は、
図8に示すように、カッターホイール23の刃先の向きをY方向に変更し、チャック爪11により基板Wを把持してカッターホイール23に向かって移動させて行う。このスクライブに先立って、ローダAの吸着搬送部材2で基板Wを第二の位置に移送する過程で、吸着搬送部材2をレール8a、20aに沿ってX方向に移動させることによって、チャック爪11がY方向のスクライブ予定ラインS2から外れた位置でチャックするように調整しておく。これにより、カッターホイール23がチャック爪11に干渉されることなくY方向のスクライブ予定ラインS2を最後までスクライブすることができる。
【0024】
上記実施例では、最上流のX方向スクライブ予定ラインS1を加工する際に、チャック爪11の解除位置で、上部爪片11aを大きく上方に開くことによってカッターホイール23との干渉を回避するようにしたが、
図9に示すように、チャック爪11をフレーム13ごと上流側に移動させてカッターホイール23との干渉を回避させるように形成してもよい。
【0025】
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施例構造のみに特定されるものでなく、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ガラス等の脆性材料基板の表面にスクライブラインを加工するスクライブ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
A ローダ
B 把持搬送ユニット
C スクライブユニット
S1 X方向のスクライブ予定ライン
S2 Y方向のスクライブ予定ライン
T 端材領域
W 基板
W1 単位基板領域
1 コンベア
2 吸着搬送部材
3 吸着板
10 台盤
11 チャック爪
11a 上部爪片
11b 下部爪片
12 チャック部材
20 ビーム
23 カッターホイール
26 押圧部材