(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357932
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】介助支援装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/00 20060101AFI20180709BHJP
A61G 5/14 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
A61G5/00 704
A61G5/14 702
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-140469(P2014-140469)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-16099(P2016-16099A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩充
(72)【発明者】
【氏名】金谷 学
【審査官】
山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−034288(JP,A)
【文献】
特開2002−153515(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3113742(JP,U)
【文献】
実開昭52−076056(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第02258331(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00
A61G 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座っているあるいは立っている被介助者の前に配置される本体と、前記被介助者を真ん中にして左右両側に配置される一対の脚リンクと、前記被介助者が把持するハンドルとを備え、
前記本体に前記一対の脚リンクを左右水平軸である第2軸まわりに回転自在に係合し、前記本体に前記ハンドルを備え、前記本体の高さ位置を変えることで、前記被介助者の立ち上がり、移乗、歩行、移動に適し、前記被介助者の立ち上がり、移乗、歩行、移動のいずれかを支援する介助支援装置であって、
前記脚リンクは、下端に第1車輪を備える第1リンクと、下端に第2車輪を備え上端が前記第1リンクに対して前記第2軸と平行な第1軸まわりに回転可能に連結される第2リンクとを備え、
前記第1リンクに対して前記第2リンクを回転させる第1モータを備え、前記一対の脚リンクに対して前記本体を回転させる第2モータを備え、前記第1車輪と前記第2車輪が接地面に接触した状態で、前記第1車輪と前記第2車輪が近接するように前記第1軸まわりに前記第2リンクを回転させると、前記本体の前記接地面からの高さが高くなる介助支援装置。
【請求項2】
前記脚リンクは、前記第1リンクの上端に前記第1軸と平行な第3軸まわりに回転可能に連結され、前記本体に対して前記第2軸まわりに回転可能に係合される第3リンクを備え、
前記第1リンクに対して前記第3リンクを回転させる第3モータを備えてなる請求項1に記載の介助支援装置。
【請求項3】
前記本体または前記脚リンクに保持され移動可能な一対の座部材が、近接動作することで構成される座面を備える、請求項1または請求項2に記載の介助支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介助者の立ち上がりや移乗、歩行動作を支援する介助支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被介助者の立ち上がりや移乗、歩行動作を支援する介助支援装置として、本体に車輪と、前後進および上下動するキャリアと、補助アームと、着座シートを備え、キャリアの先端に胸部支持部材を備えた介助支援装置が開示されている。この介助支援装置においては、立ち上がりおよび移乗動作は、被介助者が胸部支持部材に保持された状態で、胸部支持部材が前後進および上下動運動を行うことで実行する。また、歩行動作の支援は、被介助者が胸部支持部材に掴り補助アームで腰部を補助支持されて行うか、胸部支持部材に吊り具を装着し吊り具により被介助者を支えた状態で行う。さらに、被介助者が着座シートに座り、介助者に介助支援装置を操作してもらうことで車椅子として使用できる。
特許文献2には、被介助者の立ち上がり動作を支援する介助支援装置として、互いに揺動可能に連結されたリンクの先端に配置された被介助者を保持する保持部と、下部に車輪を備えた介助支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−187089号公報
【特許文献2】特開2011−92324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被介助者の立ち上がり及び移乗動作時は、介助支援装置に大きな力が作用するので、介助支援装置の安定性が必要なため車輪間隔が広い方が良い。歩行時には、介助支援装置の方向変換が容易であるため車輪間隔が狭い方が良い。特許文献1及び特許文献2に記載の従来の装置では、車輪の配置は固定であるので、各々の動作時に最適な車輪間隔とすることができない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、立ち上がり及び移乗動作時の車輪間隔を広くすることで、立ち上がり及び移乗動作時の安定性を向上し、歩行時には車輪間隔を狭くすることで方向変換が容易となる介助支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、
座っているあるいは立っている被介助者の前に配置される本体と、前記被介助者を真ん中にして左右両側に配置される一対の脚リンクと、前記被介助者が把持するハンドルとを備え、前記本体に前記一対の脚リンクを左右水平軸である第2軸まわりに回転自在に係合し、前記本体に前記ハンドルを備え、前記本体の高さ位置を変えることで、
前記被介助者の立ち上がり、移乗、歩行、移動に
適し、前記被介助者の立ち上がり、移乗、歩行、移動のいずれかを支援する介助支援装置
であって、前記脚リンクは、
下端に第1車輪を備える第1リンクと、
下端に第2車輪を備え
上端が前記第1リンクに対して
前記第2軸と平行な第1軸まわりに回転可能に連結される第2リンク
とを備え、
前記第1リンクに対して前記第2リンクを回転させる第1モータを備え、前記一対の脚リンクに対して前記本体を回転させる第2モータを備え、前記第1車輪と前記第2車輪が接地面に接触した状態で、前記第1車輪と前記第2車輪が近接するように前記第1軸まわりに前記第2リンクを回転させると、前記本体の前記接地面からの高さが高くなることである。
【0008】
請求項
2に係る発明の特徴は、請求項1に係る発明において、
前記脚リンクは、前記第1リンクの上端に前記第1軸と平行な第3軸まわりに回転可能に連結され、前記本体に対して前記第2軸まわりに回転可能に係合される第3リンクを備え、前記第1リンクに対して前記第3リンクを回転させる第3モータを備えてなることである。
【0009】
請求項
3に係る発明の特徴は、請求項1
または請求項2に係る発明において、前記本体または前記脚リンクに保持され移動可能な一対の座部材が、近接動作することで構成される座面を備えることである。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、本体の高さが高くなるにつれて、車輪1と車輪2の間隔が狭くなる。本体の高さが高くなる動作によって、被介助者の移乗及び立ち上がり動作を支援するので、被介助者の姿勢が低く介助装置に大きな力が作用するときは車輪間の間隔が広く安定性が大きい。立位姿勢になると車輪間隔が狭くなり、歩行時の方向変換が容易となる。移乗及び立ち上がり時には安定性が高く、歩行時には方向変換が容易な介助支援装置を実現できる。
【0012】
請求項
2に係る発明によれば、第1リンクの他端に第3リンクの一端が回転可能に連結されるので、本体の上下動の動作の自由度が大きくなる。このため、本体の位置を、移乗及び立ち上がり、歩行に最適に設定できる。
【0013】
請求項
3に係る発明によれば、座面は一対の座部材が近接動作することで構成されるので、座面を使用しない時には分離格納されるため、格納スペースが小さくでき、被介助者の動作の邪魔にならない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被介助者の立ち上がり及び移乗動作時には車輪間隔を広くすることで安定性を向上し、歩行時には車輪間隔を狭くすることで方向変換が容易となる介助支援装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】介助支援装置を被介助者が座位で使用する状態の図である。
【
図5】介助支援装置を被介助者が立位で使用する状態の図である。
【
図6】介助支援装置を車椅子として使用する状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施形態の介助支援装置について説明する。
図1に示すように、介助支援装置1は、本体2の右側面に右脚リンクとして、下端に第1車輪5Rを具備する第1リンク3Rと、第1リンク3Rの中間部に係合し下端に第2車輪6Rを具備する第2リンク4Rを備えている。また、本体2の左側面に左脚リンクとして、下端に第1車輪5Lを具備する第1リンク3Lと、第1リンク3Lの中間部に係合し下端に第2車輪6Lを具備する第2リンク4Lを備えている。第2車輪6R、6Lはキャスターまたは操舵輪とすることが好適である。
介助支援装置1の前面には、本体2に回転可能に保持された座部材7R、7Lが、回転して近接することで構成される座面7を備えている。
本体2の上部にはハンドル8を備えている。
【0018】
図3に示す右脚リンクの断面図において、第1リンク3Rと本体2の係合部は軸受け9Rにより形成される第2軸Pを介して回転自在に係合し、モータ10Rにより第1リンク3Rは本体2に対して第2軸Pまわりに回転する。第2リンク4Rと第1リンク3Rの係合部は軸受け11Rにより形成される第1軸Qを介して回転自在に係合し、モータ7Rにより第2リンク4Rは第1リンク3Rに対して第1軸Qまわりに回転する。左脚リンクにおいても同様に、第1リンク3Lと第2リンク4Lはモータにより回転する。
【0019】
図2に示す右脚リンクの側面図において、実線で示す低い形態の介助支援装置1の接地面Fに垂直な線mと第2軸Pと第1車輪5Rの回転中心を結ぶ直線の成す角度をα
1とし、第1軸Qと第1車輪5Rの回転中心を結ぶ直線と、第1軸Qと第2車輪6Rの回転中心を結ぶ直線の成す角度をβ
1とする。このときの、第1車輪5Rと第2車輪6Rの間隔はL
1である。
【0020】
この状態から、モータ7Rにより第2リンク4Rを右回りに回転させて、第1軸Qと第1車輪5Rの回転中心を結ぶ直線と、第1軸Qと第2車輪6Rの回転中心を結ぶ直線の成す角度をβ
2とする。同時に、モータ10Rにより第1リンク3Rを左回りに回転させて、線mと第2軸Pと第1車輪5Rの回転中心を結ぶ直線の成す角度をα
2とする。こうすると、破線で示すように形態が変化し、第1車輪5Rと第2車輪6Rの間隔はL
2となり、第2軸Pの接地面Fからの距離は大きくなる。ここで、リンクの回転角度の関係をβ
1−β
2=2・(α
1−α
2)とすると、本体2の接地面Fに対する角度は一定となる。
【0021】
被介助者の移乗または立ち上がりに介助支援装置1を用いる場合は、以下のように操作する。
図4に示すように本体2が低く、座面7が左右に開いた状態で、座位の姿勢の被介助者がハンドル8を把持し、必要であれば上体を本体2に覆いかぶさる姿勢をとる。
図示されていない操作部材を被介助者が操作して、第1リンク3Rと第2リンク4Rを回転させて、
図5に示すように本体2を所望の高さに上昇させて、被介助者が中腰または立位の姿勢となったら回転を停止する。この動作の初期には、介助支援装置1には被介助者を引起すために前方に引く大きな力が作用するが、第1車輪5Rと第2車輪6Rの間隔が広いため安定している。
被介助者が介助支援装置1を移動・旋回させて所望の位置へ移動する。この時は、第1車輪5Rと第2車輪6Rの間隔が狭いため旋回時の抵抗となる力のモーメントが小さくなり、容易に旋回できる。また、第2車輪6Rが操舵輪であるときは介助支援装置1の旋回半径を小さくできる。
被介助者が操作部材を操作して、第1リンク3Rと第2リンク4Rを回転させて、本体2を所望の高さに下降させて、所望の位置で被介助者が座位の姿勢となったら回転を停止する。
【0022】
被介助者の歩行訓練に介助支援装置1を用いる場合は、
図5に示すように、立位の姿勢の被介助者がハンドル8を把持して上体を支えながら、介助支援装置1を押しながら所望の方向へ移動する。この時、本体2は高い位置にあり第1車輪5Rと第2車輪6Rの間隔が狭い、このため、介助支援装置1の方向変換時に抵抗となる力のモーメントが小さくなり、被介助者の操作性が向上する。
また、被介助者が歩行訓練に疲れた場合、
図6に示すように、座部材7R、7Lを自らの取付け軸周りに回転させて接近させることで座面7を構成し、本体2の位置を低くすることで、被介助者が座面7に腰掛けて休息することができる。
さらに、
図6に示す形態においては、第1車輪5R、5Lに駆動手段を付加して回転を制御することで、自走式の車椅子としても使用できる。
【0023】
[第2実施形態]
図7、
図8に示すように、介助支援装置100は介助支援装置1の第1リンク3Rの一端に第3リンクを付加することで、介助支援装置100の形態の自由度を高くしたものである。
図8に示す右脚リンクの断面図において、第3リンク106Rと本体2の係合部は軸受け9Rにより形成される第4軸Oを介して回転自在に係合し、モータ10Rにより第3リンク106Rは本体2に対して回転する。第1リンク103Rと第3リンク106Rの係合部は軸受け112Rにより形成される第3軸Rを介して回転自在に係合し、モータ105Rにより第1リンク103Rは第3リンク106Rに対して回転する。第1リンク103Rと第2リンク104Rの係合部は軸受け113Rにより形成される第1軸Qを介して回転自在に係合し、モータ107Rにより第2リンク104Rは第1リンク103Rに対して回転する。左脚リンクにおいても同様に、第1リンク、第2リンク、第3リンクがモータにより回転する。
【0024】
図7に示す右脚リンクの側面図において、介助支援装置100の接地面Fに垂直な線mと第4軸Oと第3軸Rを結ぶ直線の成す角度をαとし、第3軸Rと第1車輪5Rの回転中心を結ぶ直線と、第1軸Qと第2車輪6Rの回転中心を結ぶ直線の成す角度をβとする。第1リンク103Rと第3リンク106Rの成す角度をγとする。
角度αはモータ10Rにより制御され、角度βはモータ107Rにより制御され、角度γはモータ105Rにより制御される。この3つの角度を適切に組み合わせることで、介助支援装置100は被介助者の座位から立位までの姿勢に対応した形態に変化することができる。
【0025】
本実施例では、本体2は接地面Fに対して一定の角度として説明したが、形態変化の過程で角度を変えてもよい。
また、車椅子として使用しない場合は、座面7を除いた構造としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1:介助支援装置 2:本体 3R、3L、103R:第1リンク 4R、4L、104R:第2リンク 5R、5L:第1車輪 6R、6L:第2車輪 7:座面 7R、7L:座部材 8:ハンドル 9R、11R、112R、113R:軸受け 7R、10R、105R、107R:モータ 106R:第3リンク