(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
片引戸は、引戸枠と1枚の引戸で構成され、引戸を左右どちらかへスライドさせて開閉するので、引戸をスライドさせて開口を開けた際に邪魔になることがなく、すっきりとした印象になるため、玄関や室内の出入り口等に広く用いられている。
片引戸用の引戸枠において、横枠(鴨居及び敷居)の形状が左開き用と右開き用で異なることから、一体の横枠では、同じ商品について左開き用と右開き用の2種類の横枠を準備しておく必要があるため、製造コストや在庫管理コストが嵩むという問題点がある。
【0003】
このような一体の横枠の問題点を解消するために、横枠を奥行き方向(前後方向)に2分割して長横枠及び短横枠により構成し、施工現場で左右の開き方向に応じて長横枠及び短横枠を連結するものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特許文献1に開示された片引戸用2分割横枠は、長横枠の左右方向側面の全長にわたって凹部を設けるとともに、短横枠の左右方向側面の全長にわたって凸部を設け、長横枠に対して短横枠を左側又は右側に寄せて長横枠の凹部と短横枠の凸部を嵌合しつつ、接着剤を介して長横枠及び短横枠を固着するものである。
また、特許文献2に開示された片引戸用2分割横枠は、長横枠(長尺板)の左右方向側面の4箇所に木ネジ用のガイド穴を形成するとともに、短横枠(短尺板)の左右方向側面の2箇所に前後方向の貫通穴を形成し、短横枠の2箇所の貫通穴に木ネジを通し、これらの木ネジを長横枠の左側又は右側の2つのガイド穴にネジ込んで固定した後、貫通穴をだぼで塞ぐものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような片引戸用2分割横枠の構成では、長横枠の左右方向側面の全長にわたって凹部を設けるとともに、短横枠の左右方向側面の全長にわたって凸部を設ける必要があるので、加工コストが増大する。
その上、施工現場で接着剤を塗布して長横枠及び短横枠を固着するので、接着剤の塗布作業に手間が掛かるため、施工現場における作業コストが増大する。
その上さらに、長横枠の左右方向側面の全長にわたって設ける凹部及び短横枠の左右方向側面の全長にわたって設ける凸部の加工精度の程度により位置ずれが生じることがあるとともに、施工現場で横枠を形成する際に左開き用と右開き用とを間違えた場合にやり直すことができない。
【0006】
また、特許文献2のような片引戸用2分割横枠の構成では、施工現場で工具を使って木ネジを回す作業や、貫通穴をだぼで塞ぐ作業に手間が掛かるため、施工現場における作業コストが増大する。
その上、長横枠及び短横枠の当接面である長横枠の左右方向側面にはガイド穴が形成され、前記当接面である短横枠の左右方向側面には木ネジが通る穴が形成されているので、前記当接面に凹凸嵌合部や段部を形成しにくいことから、レベル出し作業を行いにくく手間が掛かるため、施工現場における作業コストが増大する。
その上さらに、ガイド穴と貫通穴の位置ずれによって木ネジが通りにくくなる場合があり、それにより長横枠と短横枠との間に段差やガタツキが生じることがある。
【0007】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、加工コストの増大を抑制できる簡素な構成でありながら、施工現場での作業の手間を少なくして作業コストを低減でき、施工現場で横枠を形成する際に左開き用と右開き用とを間違えた場合であっても容易にやり直すことができる片引戸用2分割横枠の連結具、及び片引戸用2分割横枠を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る片引戸用2分割横枠の連結具は、前記課題解決のために、片引戸用の引戸枠の横枠を奥行き方向に2分割した片引戸用2分割横枠を構成する長横枠及び短横枠を連結する連結具であって、前記長横枠の前記短横枠との接合面側端部に取り付けられる長横枠側連結部材、及び前記短横枠の前記長横枠との接合面側端部に取り付けられる短横枠側連結部材により構成され、前記長横枠側連結部材は円筒状で、その円筒軸が鉛直方向となるように前記長横枠に取り付けられて前記円筒軸まわりに回動するものであり、その周壁に、連結開始状態で前記短横枠側連結部材に対向する開口部、及び前記開口部に繋がり、前記開口部よりも溝幅が小さい掛止溝が形成され、前記短横枠側連結部材には、前記長横枠側連結部材に向かって突出する掛止突片が設けられ、前記掛止突片の中間部分は前記掛止溝内に入る外形を有し、前記掛止突片の先端膨出部は前記開口部よりも外形が小さく前記掛止溝の溝幅よりも外形が大きく形成され、前記開口部に前記先端膨出部を入れた状態で、前記長横枠側連結部材を前記円筒軸まわりに回動させると、前記中間部分が前記開口部から前記掛止溝に入った前記掛止突片の先端膨出部が掛止されて連結完了状態にな
り、前記長横枠側連結部材に、前記円筒軸まわりに回動させる際に操作される回動操作片を設けるとともに、前記回動操作片を操作して前記長横枠側連結部材を前記円筒軸まわりに回動すると、連結完了状態になった後に前記回動操作片が分離するように破断する切欠部を設けてなることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このような構成によれば、予め短横枠に短横枠側連結部材を取り付けた状態で、長横枠及び長横枠側連結部材とともに施工現場へ送付することにより、施工現場では、長横枠の凹所に長横枠側連結部材を嵌合させた状態で、長横枠側連結部材の開口部に短横枠側連結部材の掛止突片の先端膨出部を入れ、長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させると、中間部分が長横枠側連結部材の開口部から掛止溝に入った掛止突片の先端膨出部が掛止されて連結完了状態になる。
よって、長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させるワンタッチ操作で連結完了状態にできるため、施工現場での作業の手間を少なくして作業コストを低減できる。
その上、長横枠には長横枠側連結部材を保持する凹所を、短横枠には短横枠側連結部材を保持する凹所を、所要箇所にのみ形成しておけばよいので、連結具により連結される長横枠及び短横枠の加工コストを低減できる。
その上さらに、長横枠側連結部材が円筒状であるので、長横枠に形成する凹所を丸穴状にして工具にエンドミルを用いて効率的な加工ができるため、長横枠の加工コストをさらに低減できる。
その上、連結具により長横枠及び短横枠を連結した後においても、長横枠側連結部材を回動して連結開始状態の位置まで戻して開口部から掛止片の先端膨出部を抜き出すことにより、長横枠側連結部材及び短横枠側連結部材を容易に分離できる。
よって、施工現場で左開き用の横枠又は右開き用の横枠を間違って形成してしまった場合であっても、長横枠側連結部材及び短横枠側連結部材を分離して施工現場で形成すべきであった正しい左開き用の横枠又は右開き用の横枠を容易に形成できる。
【0011】
その上さらに、回動操作片を操作して長横枠側連結部材を回動させることにより、ドライバーや六角レンチ等の工具を使わずに長横枠及び短横枠を容易に連結できるので、施工現場における作業コストをさらに低減できる。
その上、回動操作片の操作に伴って、連結完了状態になった後に切欠部が破断して回動操作片が分離するので、長横枠及び短横枠を連結して片引戸用2分割横枠が形成された後に回動操作片が邪魔になることがない。
【0012】
また、本発明に係る片引戸用2分割横枠の連結具は、前記課題解決のために、片引戸用の引戸枠の横枠を奥行き方向に2分割した片引戸用2分割横枠を構成する長横枠及び短横枠を連結する連結具であって、前記長横枠の前記短横枠との接合面側端部に取り付けられる長横枠側連結部材、及び前記短横枠の前記長横枠との接合面側端部に取り付けられる短横枠側連結部材により構成され、前記長横枠側連結部材は円筒状で、その円筒軸が鉛直方向となるように前記長横枠に取り付けられて前記円筒軸まわりに回動するものであり、その周壁に、連結開始状態で前記短横枠側連結部材に対向する開口部、及び前記開口部に繋がり、前記開口部よりも溝幅が小さい掛止溝が形成され、前記短横枠側連結部材には、前記長横枠側連結部材に向かって突出する掛止突片が設けられ、前記掛止突片の中間部分は前記掛止溝内に入る外形を有し、前記掛止突片の先端膨出部は前記開口部よりも外形が小さく前記掛止溝の溝幅よりも外形が大きく形成され、前記開口部に前記先端膨出部を入れた状態で、前記長横枠側連結部材を前記円筒軸まわりに回動させると、前記中間部分が前記開口部から前記掛止溝に入った前記掛止突片の先端膨出部が掛止されて連結完了状態になり、前記短横枠側連結部材は、前記短横枠に形成した丸穴状の凹所内に嵌合した状態で接着されるものであり、前記短横枠側連結部材を前記短横枠に対して鉛直軸まわりに回り止めする
、前記短横枠の上面に形成された凹条内に収容される突片を前記短横枠側連結部材に
一体に設けてなる
ことを特徴とする(請求項
2)。
このような構成によれば、
予め短横枠に短横枠側連結部材を取り付けた状態で、長横枠及び長横枠側連結部材とともに施工現場へ送付することにより、施工現場では、長横枠の凹所に長横枠側連結部材を嵌合させた状態で、長横枠側連結部材の開口部に短横枠側連結部材の掛止突片の先端膨出部を入れ、長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させると、中間部分が長横枠側連結部材の開口部から掛止溝に入った掛止突片の先端膨出部が掛止されて連結完了状態になる。
よって、長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させるワンタッチ操作で連結完了状態にできるため、施工現場での作業の手間を少なくして作業コストを低減できる。
その上、長横枠には長横枠側連結部材を保持する凹所を、短横枠には短横枠側連結部材を保持する凹所を、所要箇所にのみ形成しておけばよいので、連結具により連結される長横枠及び短横枠の加工コストを低減できる。
その上さらに、長横枠側連結部材が円筒状であるので、長横枠に形成する凹所を丸穴状にして工具にエンドミルを用いて効率的な加工ができるため、長横枠の加工コストをさらに低減できる。
その上、連結具により長横枠及び短横枠を連結した後においても、長横枠側連結部材を回動して連結開始状態の位置まで戻して開口部から掛止片の先端膨出部を抜き出すことにより、長横枠側連結部材及び短横枠側連結部材を容易に分離できる。
よって、施工現場で左開き用の横枠又は右開き用の横枠を間違って形成してしまった場合であっても、長横枠側連結部材及び短横枠側連結部材を分離して施工現場で形成すべきであった正しい左開き用の横枠又は右開き用の横枠を容易に形成できる。
その上さらに、短横枠に形成する凹所が丸穴状であることから、工具にエンドミルを用いて効率的な加工ができるため、短横枠の加工コストをさらに低減できる。
その上、
短横枠の上面に形成された凹条内に収容される、短横枠側連結部材に一体に設けた突片により短横枠側連結部材を短横枠に対して鉛直軸まわりに回り止めできるので、施工現場へ送付する前に工場等で行う短横枠の凹所に短横枠側連結部材を嵌合させた状態で接着する作業を行う際に、短横枠側連結部材が短横枠に対して鉛直軸まわりの回動方向に位置決めされるため、前記作業の作業コストが増大することがない。
【0013】
本発明に係る片引戸用2分割横枠は、前記課題解決のために、請求項1
又は2に記載の片引戸用2分割横枠の連結具により連結される長横枠及び短横枠を備えた片引戸用2分割横枠であって、前記長横枠の前記短横枠との接合面側端部に円筒状の前記長横枠側連結部材が嵌合する丸穴状の凹所が、左開き用に2箇所以上、右開き用に2箇所以上形成され、前記短横枠の前記長横枠との接合面側端部に前記短横枠側連結部材が嵌合する丸穴状の凹所が2箇所以上形成され、前記短横枠の凹所に前記短横枠側連結部材を嵌合して接着したもの、前記長横枠、及び前記長横枠側連結部材により構成されることを特徴とする(請求項
3)。
【0014】
このような構成によれば、片引戸用2分割横枠を施工現場で連結する際に、長横枠の凹所に長横枠側連結部材を嵌合させた状態で、長横枠側連結部材の開口部に短横枠側連結部材の掛止突片を入れ、長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させると、長横枠側連結部材の開口部から掛止溝に入った掛止突片が掛止されて連結完了状態になる。
よって、長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させるワンタッチ操作で連結完了状態にできるため、施工現場での作業の手間を少なくして作業コストを低減できる。
その上、左開き用の片引戸用2分割横枠を形成する際には、長横枠の左開き用の凹所に長横枠側連結部材を嵌合させた状態で短横枠と連結すればよく、右開き用の片引戸用2分割横枠を形成する際には、長横枠の右開き用の凹所に長横枠側連結部材を嵌合させた状態で短横枠と連結すればよい。
よって、同じ片引戸用2分割横枠により必要に応じて左開き用又は右開き用にできるので、同じ商品について左開き用と右開き用の2種類の横枠を準備しておく必要がないため、製造コスト及び在庫管理コストを低減できる。
その上さらに、長横枠に形成する長横枠側連結部材を保持するための凹所、及び短横枠に形成する短横枠側連結部材を保持するための凹所を所要箇所にのみ形成しておけばよいので、長横枠及び短横枠の加工コストを低減できる。
その上、長横枠に形成する凹所及び短横枠に形成する凹所が丸穴状であるので、工具にエンドミルを用いて効率的な加工ができるため、長横枠及び短横枠の加工コストをさらに低減できる。
その上さらに、連結具により長横枠及び短横枠を連結した後においても、長横枠側連結部材を回動して連結開始状態の位置まで戻して開口部から掛止片の先端膨出部を抜き出すことにより、長横枠側連結部材及び短横枠側連結部材を容易に分離できる。
よって、施工現場で左開き用の横枠又は右開き用の横枠を間違って形成してしまった場合であっても、長横枠側連結部材及び短横枠側連結部材を分離して施工現場で形成すべきであった正しい左開き用の横枠又は右開き用の横枠を容易に形成できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る片引戸用2分割横枠の連結具、及び片引戸用2分割横枠によれば、
(1)片引戸用2分割横枠を施工現場で連結する際に、長横枠の凹所に長横枠側連結部材を嵌合させた状態で、長横枠側連結部材の開口部に短横枠側連結部材の掛止突片の先端膨出部を入れ、長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させると、中間部分が長横枠側連結部材の開口部から掛止溝に入った掛止突片の先端膨出部が掛止されて連結完了状態になるので、施工現場での作業の手間を少なくして作業コストを低減できること、
(2)同じ片引戸用2分割横枠により必要に応じて左開き用又は右開き用にできるので、同じ商品について左開き用と右開き用の2種類の横枠を準備しておく必要がないため、製造コスト及び在庫管理コストを低減できること、
(3)長横枠に形成する長横枠側連結部材を保持するための凹所、及び短横枠に形成する短横枠側連結部材を保持するための凹所を所要箇所にのみ形成しておけばよいので、長横枠及び短横枠の加工コストを低減できること、
(4)長横枠に形成する凹所及び短横枠に形成する凹所を丸穴状にできるので、工具にエンドミルを用いて効率的な加工ができるため、長横枠及び短横枠の加工コストをさらに低減できること、
(5)連結具により長横枠及び短横枠を連結した後においても長横枠側連結部材及び短横枠側連結部材を容易に分離できるので、施工現場で左開き用の横枠又は右開き用の横枠を間違って形成してしまった場合であっても、施工現場で形成すべきであった正しい左開き用の横枠又は右開き用の横枠を容易に形成できる。
(
6)長横枠側連結部材に回動操作片を設けるとともに、回動操作片を操作して長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動すると、連結完了状態になった後に回動操作片が分離するように破断する切欠部を設けてなる場合は、回動操作片を操作して長横枠側連結部材を回動させることにより、ドライバーや六角レンチ等の工具を使わずに長横枠及び短横枠を容易に連結できるので、施工現場における作業コストをさらに低減できるとともに、回動操作片の操作に伴って、連結完了状態になった後に切欠部が破断して回動操作片が分離するので、長横枠及び短横枠を連結して片引戸用2分割横枠が形成された後に回動操作片が邪魔になることがないこと、
等の顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る片引戸用2分割横枠の連結具を示す斜視図である。
【
図2】(a)は短横枠側連結部材の掛止突片を長横枠側連結部材の開口部へ入れた状態、(b)は回動操作片を操作して長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させて掛止突片が開口部から掛止溝内に移動した状態を示している。
【
図3】回動操作片を操作して長横枠側連結部材を円筒軸まわりにさらに回動させ、連結完了状態になった後に切欠部が破断して回動操作片が分離した状態を示している。
【
図4】本発明の実施の形態に係る片引戸用2分割横枠の短横枠への短横枠側連結部材の取付けを示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る片引戸用2分割横枠の長横枠に短横枠を取り付けて左開き用の横枠を形成する作業を示す分解斜視図である。
【
図6】回動操作片を操作して長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させた状態を示す斜視図である。
【
図7】回動操作片を操作して長横枠側連結部材を円筒軸まわりにさらに回動させ、連結完了状態になった後に回動操作片が分離して完成した左開き用の横枠を示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る片引戸用2分割横枠の長横枠に短横枠を取り付けて右開き用の横枠を形成する作業を示す分解斜視図である。
【
図9】回動操作片を操作して長横枠側連結部材を円筒軸まわりに回動させた状態を示す斜視図である。
【
図10】回動操作片を操作して長横枠側連結部材を円筒軸まわりにさらに回動させ、連結完了状態になった後に回動操作片が分離して完成した右開き用の横枠を示す斜視図である。
【
図11】長横枠側連結部材が嵌合する凹所及び短横枠側連結部材が嵌合する凹所に奥行き方向への位置ずれがある場合における片引戸用2分割横枠の連結具の連結を示す説明図であり、(a)は要部拡大平面図、(b)は要部拡大部分縦断平面図である。
【
図12】長横枠側連結部材が嵌合する凹所及び短横枠側連結部材が嵌合する凹所に左右方向への位置ずれがある場合における片引戸用2分割横枠の連結具の連結を示す説明図であり、(a)は要部拡大平面図、(b)は要部拡大部分縦断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
以下の実施の形態においては、本発明の片引戸用2分割横枠が鴨居である場合について説明するが、本発明の片引戸用2分割横枠は敷居であってもよい。
なお、以下の説明において、引戸の開口を通過する方向を前後方向、引戸を開閉するスライド方向を左右方向とする。
【0019】
図1〜
図3の斜視図、並びに
図5の分解斜視図に示すように、本発明の実施の形態に係る片引戸用2分割横枠の連結具1は、片引戸用の引戸枠の横枠を奥行き方向に2分割した片引戸用2分割横枠11を構成する長横枠12及び短横枠13を連結するものであり、長横枠12の短横枠13との接合面12A側端部に取り付けられる長横枠側連結部材2、及び短横枠13の長横枠12との接合面13A側端部に取り付けられる短横枠側連結部材3により構成される。
なお、長横枠12には、引戸用の溝(本実施の形態では鴨居溝であり、横枠が敷居である場合は敷居溝である)12Bが形成されており、溝12Bが引戸の左右方向の移動をガイドする。
【0020】
長横枠側連結部材2は円筒状で、その円筒軸が鉛直方向となるように長横枠12に取り付けられて前記円筒軸まわりに回動するものであり、その周壁4に、連結開始状態で短横枠側連結部材3に対向する開口部5、及び開口部5に繋がり、開口部5よりも溝幅が小さい掛止溝6が形成される。
短横枠側連結部材3には、長横枠側連結部材2に向かって突出する掛止突片7が設けられ、掛止突片7の中間部分は掛止溝6内に入る外形を有し、掛止突片7の先端膨出部7Aは開口部5よりも外形が小さく掛止溝6の溝幅よりも外形が大きく形成される。
ここで、長横枠側連結部材2、及び短横枠側連結部材3は、ABS、ナイロン、ポリアセタール、又はポリプロピレン等の合成樹脂であり、射出成形等により形成される。
【0021】
長横枠側連結部材2の円筒軸(回動中心軸)まわりの回動は、上方へ突出する回動操作片8を操作することにより行うことができる。
また、回動操作片8の下端部に切欠部9(
図1参照)が形成されているので、
図2(a)の連結開始状態から、回動操作片8を操作して長横枠側連結部材2を
図2(b)のように回動させ、さらに回動させると、中間部分が開口部5から掛止溝6に入った掛止突片7の先端膨出部7Aが掛止された連結完了状態を経て、
図3に示すように切欠部9が破断して(破断面C参照)回動操作片8が分離する。
なお、回動操作片8が分離した
図3の状態であっても、破断面Cがある中央の径方向の壁を摘んで長横枠側連結部材2を回動させるように操作できるので、長横枠側連結部材2を
図2(a)の連結開始状態の位置まで戻すように回動させた状態で、開口部5から掛止片7の先端膨出部7Aを抜き出すことにより、長横枠側連結部材2及び短横枠側連結部材3を容易に分離できる。
【0022】
短横枠側連結部材3は、施工現場へ送付する前に工場等で
図4の分解斜視図に示すように、短横枠13の上面の長横枠12との接合面13A側端部に形成した2箇所の丸穴状の凹所15内に嵌合した状態で接着されるものであり、短横枠側連結部材3を短横枠13に対して鉛直軸まわりに回り止めする突片10,10が左右方向へ突出しており、突
片10,10は短横枠13の上面に形成された左右方向の凹条16内に収容される。
【0023】
施工現場で左開き用の横枠にする場合には、
図5の分解斜視図に示すように、長横枠12の上面の短横枠13との接合面12A側端部に形成した左開き用の2箇所の丸穴状の凹所14L,14Lに2個の長横枠側連結部材2,2を嵌合した後、短横枠側連結部材3,3の掛止突片7,7の先端膨出部7A,7Aを長横枠側連結部材2,2の開口部5,5(
図1参照)内に挿入する。
次に、
図6の斜視図に示すように回動操作片8,8を回動することにより、長横枠側連結部材2,2の開口部5,5から掛止溝6,6(
図1及び
図2参照)に入った掛止突片7,7が掛止された連結完了状態を経て、
図7に示すように切欠部9が破断して(破断面C参照)回動操作片8,8が分離した状態で左開き用の横枠が完成する。
【0024】
また、施工現場で右開き用の横枠にする場合には、
図8の分解斜視図に示すように、長横枠12の上面の短横枠13との接合面12A側端部に形成した右開き用の2箇所の丸穴状の凹所14R,14Rに2個の長横枠側連結部材2,2を嵌合した後、短横枠側連結部材3,3の掛止突片7,7の先端膨出部7A,7Aを長横枠側連結部材2,2の開口部5,5(
図1参照)内に挿入する。
次に、
図9の斜視図に示すように回動操作片8,8を回動することにより、長横枠側連結部材2,2の開口部5,5から掛止溝6,6(
図1及び
図2参照)に入った掛止突片7,7が掛止された連結完了状態を経て、
図10に示すように切欠部9が破断して(破断面C参照)回動操作片8,8が分離した状態で右開き用の横枠が完成する。
【0025】
施工現場で左開き用の横枠又は右開き用の横枠を間違って形成してしまった場合、すなわち、例えば、
図7の左開き用の横枠にすべきであるにもかかわらず、
図10の右開き用の横枠にしてしまった場合であっても、前記のとおり長横枠側連結部材2を
図2(a)の連結開始状態の位置まで戻すように回動させることができるので、長横枠側連結部材2及び短横枠側連結部材3を分離できる。
よって、長横枠側連結部材2及び短横枠側連結部材3を分離させた後に、長横枠側連結部材2,2を凹所14R,14Rから取り出して14L,14Lに嵌合して短横枠側連結部材3,3と連結することにより、施工現場で形成すべきであった正しい左開き用の横枠を形成できる。
なお、このような右開き用の横枠から左開き用の横枠への変更、又は左開き用の横枠から右開き用の横枠への変更を行う際に、分離した長横枠側連結部材2ではなく、回動操作片8が分離していない別の長横枠側連結部材2を用いてもよい。
【0026】
以上のように横枠を形成する作業において、長横枠12及び短横枠13の接合面には左右方向に延びる段部17,18が設けられており、長横枠12及び短横枠13を連結する際に段部17,18で当て止めされ、この当止め状態で長横枠2及び短横枠13のレベル出し作業が完了する。よって、レベル出し作業の手間が掛からないため、施工現場における作業コストを低減できる。
【0027】
図5〜
図10では、長横枠12及び短横枠13を、2対の長横枠側連結部材2及び短横枠側連結部材3、すなわち2個の片引戸用2分割横枠の連結具1,1により連結する例を示したが、引戸が大きい場合においては、3個以上の片引戸用2分割横枠の連結具1,1,…により長横枠12及び短横枠13を連結するように構成してもよい。
その場合は、長横枠12の左開き用の凹所14L及び右開き用の凹所14Rをそれぞれ3個以上形成し、短横枠13の凹所15(
図4参照)を3個以上形成すればよい。
【0028】
次に、
図11及び
図12の説明図を参照して長横枠側連結部材2が嵌合する凹所14L又は14R及び短横枠側連結部材3が嵌合する凹所15に位置ずれがある場合における片引戸用2分割横枠の連結具1(長横枠側連結部材2及び短横枠側連結部材3)の連結について説明する。
ここで、
図11(b)及び
図12(b)の要部拡大部分縦断平面図に示すように、長横枠側連結部材2の周壁4の掛止溝6を形成する部分の肉厚は、開口部5から周方向へ離間するにしたがって、例えば2mmから4mmまで漸増する。
【0029】
図11(a)の要部拡大平面図、及び
図11(b)の要部拡大部分縦断平面図は、奥行き方向(前後方向)へ離れる方向への位置ずれがある場合の例を示している。
回動操作片8を操作して
図11(a)の矢印Bのように円筒軸(回動中心軸)Aまわりに長横枠側連結部材2を回動させると、
図11(b)のように掛止突片7の中間部分が開口部5から掛止溝6に入って開口部5から遠ざかるように相対的に移動する。
したがって、横枠側連結部材2の周壁4よりも内側に位置する、掛止突片7の先端膨出部7Aも開口部5から遠ざかるように相対的に移動し、肉厚が漸増する周壁4の径方向内面に徐々に近づいて
図11(b)のように周壁4の径方向内面に当接して掛止された状態になる。
よって、
図11(a)のように長横枠12の凹所14L(14R)が短横枠13から離反する方向へd1位置ずれし、短横枠13の凹所15が長横枠12から離反する方向へd2位置ずれした場合においても、位置ずれの合計d1+d2が1mm程度でれば、このような位置ずれを吸収しながら横枠側連結部材2及び短横枠側連結部材3を強固に連結できる。
なお、奥行き方向(前後方向)へ近づく方向への位置ずれがある場合においても、
図11と同様に位置ずれを吸収できる。
【0030】
図12(a)の要部拡大平面図、及び
図12(b)の要部拡大部分縦断平面図は、左右方向への位置ずれがある場合の例を示している。
回動操作片8を操作して
図12(a)の矢印Bのように円筒軸(回動中心軸)Aまわりに長横枠側連結部材2を回動させると、
図12(b)のように掛止突片7の中間部分が開口部5から掛止溝6に入って開口部5から遠ざかるように相対的に移動する。
したがって、横枠側連結部材2の周壁4よりも内側に位置する、掛止突片7の先端膨出部7Aも開口部5から遠ざかるように相対的に移動し、肉厚が漸増する周壁4の径方向内面に徐々に近づいて
図12(b)のように周壁4の径方向内面に当接して掛止された状態になる。
よって、
図12(a)のように長横枠12の凹所14L(14R)及び短横枠13の凹所15が左右方向へ相対的にd3位置ずれした場合においても、d3が1mm程度でれば、このような位置ずれを吸収しながら横枠側連結部材2及び短横枠側連結部材3を強固に連結できる。
なお、
図12における相対的な位置ずれと反対の左右方向への位置ずれがある場合においても、
図12と同様に位置ずれを吸収できる。
【0031】
以上のような片引戸用2分割横枠11(長横枠12及び短横枠13)の連結具1(長横枠側連結部材2及び短横枠側連結部材3)の構成によれば、予め短横枠13に短横枠側連結部材3を取り付けた状態で、長横枠12及び長横枠側連結部材2とともに施工現場へ送付することにより、施工現場では、長横枠12の凹所14L又は14Rに長横枠側連結部材2を嵌合させた状態で、長横枠側連結部材2の開口部5に短横枠側連結部材3の掛止突片7の先端膨出部7Aを入れ、長横枠側連結部材2を円筒軸Aまわりに回動させると、中間部分が開口部5から掛止溝6に入った掛止突片7の先端膨出部7Aが掛止されて連結完了状態になる。
よって、長横枠側連結部材2を円筒軸Aまわりに回動させるワンタッチ操作で連結完了状態にできるため、施工現場での作業の手間を少なくして作業コストを低減できる。
また、長横枠12には長横枠側連結部材2を保持する凹所14L及び14Rを、短横枠13には短横枠側連結部材3を保持する凹所15を、所要箇所にのみ形成しておけばよいので、連結具1により連結される長横枠12及び短横枠12の加工コストを低減できる。
さらに、長横枠側連結部材2が円筒状であるので、長横枠12に形成する凹所14L及び14Rを丸穴状にして工具にエンドミルを用いて効率的な加工ができるため、長横枠12の加工コストをさらに低減できる。
【0032】
さらにまた、長横枠側連結部材2の周壁4の掛止溝6を形成する部分の肉厚が、開口5部から周方向へ離間するにしたがって漸増するように形成されているので、長横枠側連結部材2を円筒軸Aまわりに回動させる操作に伴って、掛止突片7の先端膨出部7Aが徐々に肉厚が漸増する周壁4の径方向内面に近づき、前記径方向内面に当接して掛止された状態になるため、連結完了状態にするための操作が容易かつ確実になる。
また、長横枠12に形成する長横枠側連結部材2を保持するための凹所14L又は14R、及び短横枠13に形成する短横枠側連結部材3を保持するための凹所15の位置ずれをある程度吸収できるので、前記凹所を形成する箇所の前記横枠に対する位置精度を高める必要がないため、連結具1を用いる片引戸用2分割横枠11(長横枠12及び短横枠13)の加工コストをさらに低減できる。
【0033】
さらに、長横枠側連結部材2に、円筒軸Aまわりに回動させる際に操作される回動操作片8を設けるとともに、回動操作片8を操作して長横枠側連結部材2を円筒軸Aまわりに回動すると、連結完了状態になった後に回動操作片8が分離するように破断する切欠部9を設けているので、回動操作片8を操作して長横枠側連結部材2を回動させることにより、ドライバーや六角レンチ等の工具を使わずに長横枠12及び短横枠13を容易に連結できるため、施工現場における作業コストをさらに低減できる。
さらにまた、回動操作片8の操作に伴って、連結完了状態になった後に切欠部9が破断して回動操作片8が分離するので、長横枠12及び短横枠13を連結して片引戸用2分割横枠11が形成された後に回動操作片8が邪魔になることがない。
また、短横枠側連結部材3は、短横枠13に形成した丸穴状の凹所15内に嵌合した状態で接着されるものであり、短横枠側連結部材3を短横枠13に対して鉛直軸まわりに回り止めする突片10,10を短横枠側連結部材3に設けているので、短横枠側連結部材3は短横枠13に形成した丸穴状の凹所15に嵌合するものであるので、短横枠13に形成する凹所15が丸穴状であることから、工具にエンドミルを用いて効率的な加工ができるため、短横枠13の加工コストをさらに低減できる。
さらに、突片10,10により短横枠側連結部材3を短横枠13に対して鉛直軸まわりに回り止めできるので、施工現場へ送付する前に工場等で行う短横枠13の凹所15に短横枠側連結部材3を嵌合させた状態で接着する作業を行う際に、短横枠側連結部材3が短横枠13に対して鉛直軸まわりの回動方向に位置決めされるため、前記作業の作業コストが増大することがない。
【0034】
以上のような片引戸用2分割横枠11(長横枠12及び短横枠13)の構成によれば、左開き用の片引戸用2分割横枠を形成する際には、長横枠12の左開き用の凹所14Lに長横枠側連結部材2を嵌合させた状態で短横枠13と連結すればよく、右開き用の片引戸用2分割横枠を形成する際には、長横枠12の右開き用の凹所14Rに長横枠側連結部材2を嵌合させた状態で短横枠13と連結すればよいので、同じ片引戸用2分割横枠により必要に応じて左開き用又は右開き用にできるので、同じ商品について左開き用と右開き用の2種類の横枠を準備しておく必要がないため、製造コスト及び在庫管理コストを低減できる。