(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
収音機器で収音した音響から抽出される指示情報に応じて動作可能な外部機器に提供される指示情報を含む変調信号と、再生対象音を表す再生信号とを含有する音響信号を再生装置から受信する入力部と、
前記入力部が受信した音響信号のうち前記再生信号の周波数帯域を包含する第1周波数帯域を通過させるフィルタと、
前記入力部が受信した音響信号のうち少なくとも前記変調信号に応じた音響を放音する放音部と、
前記フィルタによる処理後の音響信号をヘッドホンに出力する出力部と
を具備する放音装置。
収音機器で収音した音響から抽出される指示情報に応じて動作可能な外部機器に提供される指示情報を含む変調信号と、再生対象音を表す再生信号とを含有する音響信号を再生装置から受信する入力部と、
前記入力部が受信した音響信号のうち前記変調信号の周波数帯域を包含する第2周波数帯域を通過させるフィルタと、
前記フィルタによる処理後の信号に応じた音響を放音する放音部と、
前記入力部が受信した音響信号のうち少なくとも前記再生信号をヘッドホンに出力する出力部と
を具備する放音装置。
収音機器で収音した音響から抽出される指示情報に応じて動作可能な外部機器に提供される指示情報を含む変調信号と、再生対象音を表す再生信号とを含有する音響信号を再生装置から受信する入力部と、
前記入力部が受信した音響信号のうち前記再生信号の周波数帯域を包含する第1周波数帯域を通過させるフィルタと、
前記入力部が受信した音響信号のうち少なくとも前記変調信号に応じた音響を放音する第1放音部と、
利用者の耳に装着され、前記フィルタによる処理後の音響信号に応じた音響を放音する第2放音部と
を具備するヘッドホン。
収音機器で収音した音響から抽出される指示情報に応じて動作可能な外部機器に提供される指示情報を含む変調信号と、再生対象音を表す再生信号とを含有する音響信号を再生装置から受信する入力部と、
前記入力部が受信した音響信号のうち前記変調信号の周波数帯域を包含する第2周波数帯域を通過させるフィルタと、
前記フィルタによる処理後の信号に応じた音響を放音する第1放音部と、
利用者の耳に装着され、前記入力部が受信した音響信号のうち少なくとも前記再生信号に応じた音響を放音する第2放音部と
を具備するヘッドホン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、利用者がヘッドホンを利用して再生する場合がある。しかしながら、ヘッドホンで音響を再生する場合には変調信号に応じた音響が外部に放音されないから、音響通信の相手先の機器に音響が到達せず、音響通信を実行できない。以上の事情を考慮して、本発明は、ヘッドホンを装着した状態での再生音の聴取と、利用者が保有する機器における音響通信とを並列的に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る放音装置は、収音機器で収音した音響から抽出される指示情報に応じて動作可能な外部機器に提供される指示情報を含む変調信号と、再生対象音を表す再生信号とを含有する音響信号を再生装置から受信する入力部と、前記入力部が受信した音響信号のうち少なくとも前記変調信号に応じた音響を放音する放音部と、前記入力部が受信した音響信号のうち少なくとも前記再生信号をヘッドホンに出力する出力部とを具備する。以上の構成では、入力部によって受信された音響信号のうち少なくとも変調信号に応じた音響は放音部によって放音される一方、音響信号のうち少なくとも再生信号は出力部によってヘッドホンに出力される。したがって、利用者はヘッドホンを耳に装着して、ヘッドホンから放音された再生音を聴取する一方で、指示情報に応じて動作する機器では変調信号に応じた音響を収音することが可能である。すなわち、以上の構成によれば、ヘッドホンを装着した状態での再生音の聴取と、利用者が保有する機器における音響通信とを並列的に実行することが可能になる。
【0006】
本発明の好適な態様において、前記変調信号の周波数帯域は、前記再生信号の周波数帯域を上回る。例えば、再生対象音(例えば音楽や動画等)を表す再生信号の周波数帯域は、ヘッドホンによる放音が可能な周波数帯域であり、かつ、利用者が通常の環境で聴取する音響(音声や楽音)の周波数帯域(例えば可聴域内の約16kHz以下)の範囲内に包含され、変調信号の周波数帯域は、再生信号の周波数帯域(例えば可聴域)を上回る高域側の周波数帯域(例えば非可聴域内の約18kHz以上かつ20kHz以下)に包含される。以上の構成によれば、再生信号と変調信号とを含む音響信号がヘッドホンに出力されても、変調信号の周波数帯域は、再生信号の周波数帯域を上回る高域の周波数帯域に包含されるから、利用者は違和感や不快感を知覚することなくヘッドホンを装着して再生信号を聴取することが可能である。
【0007】
本発明の好適な態様において、前記入力部が受信した音響信号のうち前記再生信号の周波数帯域を包含する第1周波数帯域を通過させる第1フィルタを具備し、前記出力部は、前記第1フィルタによる処理後の音響信号を前記ヘッドホンに出力する。以上の構成では、再生信号の周波数帯域を包含する第1周波数帯域の音響成分が選択的に第1フィルタを通過するから、変調信号に応じた音響の聴取による違和感や不快感を知覚することなく、利用者が再生対象音を聴取できるという利点がある。
【0008】
本発明の好適な態様において、前記入力部が受信した音響信号のうち前記変調信号の周波数帯域を包含する第2周波数帯域を通過させる第2フィルタを具備し、前記放音部は、前記第2フィルタによる処理後の信号に応じた音響を放音する。以上の構成では、変調信号の周波数帯域を包含する第2周波数帯域の音響成分が選択的に第2フィルタを通過するから、再生信号に応じた音響による騒音の発生を抑制することが可能になる。
【0009】
本発明の好適な態様に係るヘッドホンは、収音機器で収音した音響から抽出される指示情報に応じて動作可能な外部機器に提供される指示情報を含む変調信号と、再生対象音を表す再生信号とを含有する音響信号を再生装置から受信する入力部と、前記入力部が受信した音響信号のうち少なくとも前記変調信号に応じた音響を放音する第1放音部と、利用者の耳に装着され、前記入力部が受信した音響信号のうち少なくとも前記再生信号に応じた音響を放音する第2放音部とを具備する。以上の構成では、入力部によって受信された音響信号のうち、少なくとも変調信号に応じた音響は第1放音部によって放音され、少なくとも再生信号に応じた音響は第2放音部によって放音される。以上の構成によっても、ヘッドホンを装着した状態での再生音の聴取と、利用者が保有する機器における音響通信とを並列的に実行することが可能になるという上述した効果を奏することが可能である。また、変調信号に応じた音響を放音する第2放音部がヘッドホンに搭載されるから、放音装置とヘッドホンとを個別に設けた構成と比較して装置構成を簡略化することが可能になる。また、ヘッドホンと放音装置とが一体に構成されるから、放音装置とヘッドホンとを利用者が個別に取扱う煩雑さが低減される。
【0010】
以上の各態様に係る音響処理装置は、専用の電子回路で実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)等の汎用の演算処理装置とプログラムとの協働によっても実現される。本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体や磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、例えば、本発明のプログラムは、通信網を介した配信の形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。また、以上の各態様に係る音響処理装置の動作方法(音響処理方法)としても本発明は特定される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の再生システム1の構成図である。再生システム1は、再生装置100と放音装置200と端末装置300とヘッドホン400とを含んで構成される。再生装置100と放音装置200とはケーブル10を介して相互に電気的に接続される。他方、放音装置200とヘッドホン400とはケーブル20を介して相互に電気的に接続される。再生システム1は、音楽や動画等のコンテンツを再生するとともに当該コンテンツに関連する情報(以下「関連情報」という)Gを端末装置300の利用者Uに提示するシステムである。関連情報Gの具体例としては、例えば、コンテンツに関連する特典を示す文字列や画像(例えば、クーポンや割引チケット)等がある。
【0013】
再生装置100は、音響の時間波形を表す音響信号Sを出力する。第1実施形態の再生装置100は、音楽や動画等のコンテンツを示すファイルAをコンテンツサーバー600から通信網を介して受信し、ファイルAに包含される音響信号Sを順次に出力する。なお、可搬型の記録媒体に格納されたファイルAに包含される音響信号Sを再生装置100が順次に出力することも可能である。
【0014】
音響信号Sは、
図2に例示される通り、音楽や動画の音声等の利用者Uによる聴取の目的となる音響(再生対象音)を表す周波数帯域B1の再生信号SAと、指示情報Dを含む周波数帯域B2の音響信号(以下「変調信号」という)ADとを包含する。指示情報Dは、端末装置300に提供される関連情報Gに固有に付与された識別符号である。具体的には、相異なる関連情報Gの間で相互に重複しないように公知の方法で生成された乱数の系列が指示情報Dとして関連情報G毎に設定される。
【0015】
図3は、音響信号Sの生成処理の説明図である。音響信号Sは、例えば、変調処理部810と混合処理部820とを包含する信号合成装置800によって生成される。変調処理部810は、拡散符号を利用した指示情報Dの拡散変調と所定の周波数の搬送波を利用した周波数変換とを順次に実行することで、指示情報Dを特定の周波数帯域B2の音響成分として含有する変調信号ADを生成する。変調信号ADの周波数帯域B2は、放音装置200による放音と端末装置300による収音とが可能な周波数帯域であり、かつ、利用者Uが通常の環境で聴取する音声や楽音等の音響の周波数帯域(例えば可聴域内の約16kHz以下)を上回る周波数帯域(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)の範囲内に包含される。
【0016】
混合処理部820は、再生対象音を表す再生信号SAと、変調処理部810によって生成された変調信号ADとを混合(典型的には加算)することで音響信号Sを生成する。再生信号SAの周波数帯域B1は、利用者Uが聴取可能な周波数帯域(例えば16kHz以下)である。以上の手順で生成された音響信号Sを包含するファイルAがコンテンツサーバー600に事前に格納されて再生装置100からの要求に応じて提供される。なお、再生信号SAに対する指示情報Dの重畳(音響透かし)については、例えば国際公開第2010/016589号にも詳細に開示されている。
【0017】
図1の再生装置100から出力された音響信号Sは放音装置200に供給される。放音装置200は、再生装置100から供給される音響信号Sのうち、変調信号ADに応じた音響を放音するとともに、再生信号SAを含む音響信号をヘッドホン400に出力する。
【0018】
<放音装置200>
図4は、放音装置200の構成を示すブロック図である。放音装置200は、
図4に例示される通り、入力部202とフィルタ204と増幅部206と放音部208と出力部210とフィルタ212とを含んで構成される。ケーブル10の一端側の端子10Aは再生装置100に接続され、ケーブル10の他端側の端子10Bは放音装置200に接続される。
【0019】
入力部202は、再生対象音を表す再生信号SAと、指示情報Dを含む変調信号ADとを含有する音響信号Sを再生装置100から受信する。入力部202は、例えば、ケーブル10の端子10Bが接続される入力端子である。入力部202が受信した音響信号Sは、フィルタ204およびフィルタ212の双方に供給される。フィルタ204およびフィルタ212は、入力部202から供給される音響信号Sのうち特定の周波数帯域の成分を抽出する帯域通過フィルタである。フィルタ204とフィルタ212とで通過帯域は相違する。
【0020】
図5は、第1実施形態のフィルタ204およびフィルタ212の特性図である。フィルタ204(第2フィルタ)は、入力部202が受信した音響信号Sのうち高域側の周波数帯域Q2(第2周波数帯域)の周波数成分を維持するとともに、周波数帯域Q1の低域側の周波数帯域の周波数成分を抑圧することで音響信号S1を生成する高域通過フィルタ(HPF)である。
図5に例示される通り、周波数帯域Q2は、変調信号ADの周波数帯域B2を包含する。したがって、フィルタ204による処理後の音響信号S1には、周波数帯域B2の変調信号ADが優勢に含有され、周波数帯域B1の再生信号SAは充分に抑圧されている。フィルタ204による処理後の音響信号S1は、増幅部206によって所定の利得で増幅されて音響信号S2として放音部208に供給される。放音部208は、増幅部206から出力された音響信号S2に応じた音響を放音する。以上の説明から理解される通り、空気振動としての音響を伝送媒体とした音響通信で、変調信号ADに含まれた指示情報Dが放音装置200から端末装置300に通知される。
【0021】
他方、フィルタ212(第1フィルタ)は、入力部202が受信した音響信号Sのうち低域側の周波数帯域Q1(第1周波数帯域)の周波数成分を維持するとともに、周波数帯域Q1の高域側の周波数帯域の周波数成分を抑圧することで音響信号S3を生成する低域通過フィルタ(LPF)である。
図5に例示される通り、周波数帯域Q1は、再生信号SAの周波数帯域B1を包含する。したがって、フィルタ212による処理後の音響信号S3には、周波数帯域B1の再生信号SAが優勢に含有され、周波数帯域B2の変調信号ADは充分に抑圧されている。
【0022】
フィルタ212による処理後の音響信号S3は出力部210に供給される。出力部210は、例えば、ケーブル20の端子20Aが接続される出力端子である。音響信号S3は、出力部210からケーブル20の端子20Bを介してヘッドホン400に出力される。ヘッドホン400は、放音装置200から供給される音響信号S3に応じた音響を放音する。ヘッドホン400は、
図1に例示される通り、放音部404Lおよび放音部404Rにより利用者Uの両耳に装着されるから、音響信号S3に応じた音響(再生信号SA)は外部に殆ど放射されない。
【0023】
<端末装置300>
図1の端末装置300は、利用者Uが携行する可搬型の通信端末(例えば携帯電話機やスマートフォン)であり、放音装置200(放音部208)によって放音された音響から指示情報Dを抽出し、当該指示情報Dに応じて動作する。本実施形態では、指示情報Dに対応する関連情報Gを情報提供サーバー500から通信網(例えば移動通信網やインターネット)700を介して受信するとともに、受信された関連情報Gを再生(放音または表示)する。
【0024】
図6は、端末装置300の構成を示すブロック図である。
図6に例示される通り、端末装置300は、収音装置302と特定部304と取得部306と提示部308とを具備する。収音装置302は、周囲の音響を収音する音響機器(マイクロホン)であり、放音装置200の放音部208から放音された音響を収音し、当該音響の時間波形を表す音響信号(以下「収音信号」という)Xを生成する。収音信号Xは、指示情報Dの音響成分を含有する。なお、収音装置302が生成した収音信号Xをアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略されている。
【0025】
特定部304は、収音装置302が生成した収音信号Xの復調で指示情報Dを抽出する。具体的には、特定部304は、収音信号Xのうち指示情報Dを含む周波数帯域B2の帯域成分を例えば高域通過フィルタで選択し、指示情報Dの拡散変調に利用された拡散符号を係数とする整合フィルタを通過させることで指示情報Dを抽出する。
【0026】
取得部306は、移動通信網やインターネット等の通信網700(
図1参照)を介して情報提供サーバー500と通信する通信機器である。取得部306は、特定部304が収音信号Xから抽出した指示情報Dを含む情報要求Rを情報提供サーバー500に送信する一方、情報要求Rに応じて情報提供サーバー500から送信された関連情報Gを受信する。
【0027】
情報提供サーバー500は、
図7の関連情報テーブルTB1を保持する。関連情報テーブルTB1は、指示情報D(D1,D2,……)と関連情報G(G1,G2,……)とを対応付ける。情報提供サーバー500は、指示情報Dを含む情報要求Rを端末装置300から受信すると、関連情報テーブルTB1のうち情報要求R内の指示情報Dに対応付けられた関連情報Gを読み出すとともに情報要求Rの送信元の端末装置300に当該関連情報Gを送信する。
図6の提示部308は、取得部306によって取得された関連情報Gを例えば表示装置に表示させて利用者Uに提示する。
【0028】
図8は、提示部308による関連情報Gの表示例の説明図である。
図8では、端末装置300の提示部308によって提示された関連情報Gを示す文字列(図の例示ではクーポン)が例示される。利用者Uは、ヘッドホン400から放音された音響(再生音)を聴取する一方で、提示された関連情報Gを視覚的に確認することが可能である。
【0029】
以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、変調信号ADを包含する音響信号S2に応じた音響が放音部208から放音される一方、再生信号SAを包含する音響信号S3が出力部210からヘッドホン400に出力される。したがって、ヘッドホン400を装着した利用者Uは、放音された再生音を聴取しながら、自身が携行する端末装置300で指示情報Dを受信することが可能である。すなわち、第1実施形態によれば、ヘッドホン400を装着した状態での再生音の聴取と、利用者Uが携行する端末装置300における音響通信とを並列的に実行することが可能である。
【0030】
また、再生装置100が出力する音響信号Sのうち再生対象音を示す再生信号SAの周波数帯域B1はフィルタ204で抑圧されるから、放音部208によって放音される音響には再生対象音(音楽や動画等)が包含されない。したがって、再生対象音の放音による騒音の発生を抑制することが可能である。
【0031】
なお、変調信号ADの周波数帯域B2は、利用者Uが通常の環境で聴取する音声や楽音等の音響の周波数帯域を上回り殆ど知覚されない周波数帯域ではあるが、実際には周波数帯域B2の音響を聴取できる利用者Uも存在する。第1実施形態では、音響信号Sのうち変調信号ADの周波数帯域B2はフィルタ212で抑圧されるから、ヘッドホン400によって放音される音響に変調信号ADの音響は包含されない。したがって、周波数帯域B2の音響を聴取できる利用者Uでも、当該音響の聴取による違和感や不快感を知覚することなく、再生対象音を聴取できるという利点がある。
【0032】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。第1実施形態では、ヘッドホン400とは別体の放音装置200を例示した。第2実施形態は、放音装置200がヘッドホン400に組み込まれる点で第1実施形態と相違する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0033】
図9は、第2実施形態の再生システム1の構成図である。第2実施形態の再生システム1は、再生装置100と端末装置300とヘッドホン400とを含んで構成される。再生装置100とヘッドホン400とはケーブル10を介して相互に電気的に接続される。第2実施形態のヘッドホン400は放音装置200を包含する。
【0034】
図10は、第2実施形態のヘッドホン400のブロック図である。
図10に例示される通り、ヘッドホン400は、入力部406と放音装置200と信号供給部408と放音部404(第2放音部)とを含んで構成される。ケーブル10の一端側の端子10Aは再生装置100に接続され、ケーブル10の他端側の端子10Bはヘッドホン400に接続される。放音部404は利用者Uによって耳に装着される。放音部404は、ステレオの右チャンネルに対応した放音部404Rと、左チャンネルに対応した放音部404Lとを包含する。以降の説明では、放音部404Rと放音部404Lとを特に区別する必要がない場合は「放音部404」と称する。
【0035】
入力部406は、再生対象音を示す再生信号SAと指示情報Dを含む変調信号ADとを含有する音響信号Sを再生装置100から受信する。入力部406が受信した音響信号Sは、放音装置200(フィルタ204およびフィルタ212)に供給される。
【0036】
図10に例示される通り、第2実施形態の放音装置200はフィルタ204と増幅部206と放音部208(第1放音部)とフィルタ212とを含んで構成される。第2実施形態の放音装置200では、第1実施形態の放音装置200の構成要素のうち入力部202と出力部210とが省略される。放音部208は、音響信号Sのうち、変調信号ADの周波数帯域B2を包含する周波数帯域Q2の音響信号S2に応じた音響を放音する。フィルタ204と増幅部206と放音部208とフィルタ212の各要素については第1実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0037】
信号供給部408は、フィルタ212による処理後の信号、すなわち、再生信号SAの周波数帯域B1を包含する周波数帯域Q1の音響信号S3(S3R,S3L)を、放音部404(404R,404L)にそれぞれ供給する。放音部404は、音響信号S3に応じた音響を放音する。
【0038】
以上の説明から理解される通り、第2実施形態の構成では、変調信号ADの周波数帯域B2を包含する周波数帯域Q2の音響信号S2が放音部208(第1放音部)から外部空間に放音される一方で、再生信号SAの周波数帯域B1を包含する周波数帯域Q1の音響信号S3が放音部404(第2放音部)から利用者Uに対して放音される。したがって、第2実施形態の構成によっても、ヘッドホン400を装着した状態での再生音の聴取と、端末装置300における音響通信とが並列的に実現されるという上述した効果を奏することが可能である。また、第2実施形態では、放音装置200がヘッドホン400に包含されるから、第1実施形態における再生システム1の構成要素のうち、ケーブル20、入力部202、出力部210を省略することが可能になる。したがって、放音装置200とヘッドホン400とを個別に設ける構成と比較して、装置構成を簡略化することができるという利点がある。また、ヘッドホン400と放音装置200とが一体に構成されるから、放音装置200とヘッドホン400とを利用者が個別に取扱う煩雑さが低減される。
【0039】
<変形例>
以上に例示した各態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2個以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0040】
(1)前述の各形態では、変調信号ADの周波数帯域B2を含む周波数帯域Q2の成分を抑圧するフィルタ212(LPF)を放音装置200に設けた構成を例示したが、周波数帯域B2の周波数成分は利用者Uに殆ど知覚されないという事情を考慮すると、
図11に例示される通り、フィルタ212を省略することも可能である。
図11の構成では、指示情報Dを含む周波数帯域B2の変調信号ADと、周波数帯域B1の再生信号SAとを包含する音響信号Sがヘッドホン400に出力される。
【0041】
(2)前述の各形態では、再生信号SAの周波数帯域B1を含む周波数帯域Q1の成分を抑圧するフィルタ204を放音装置200に設けた構成を例示したが、放音部208の再生帯域が周波数帯域B1を包含しない場合(例えば放音部208であるスピーカの口径が小さいために周波数帯域B1の音響を再生できない場合)や、放音部208による再生信号SAの再生が特段の問題(典型的には騒音)にならない場合には、フィルタ204を省略することも可能である。
【0042】
(3)フィルタ204およびフィルタ212は、受動素子を利用したパッシブフィルタ(Passive filter)、および、能動素子を利用したアクティブフィルタ(Active Filter)のうちいずれを利用した構成であってもよい。パッシブフィルタを用いた構成は、電源の供給が不要となるから装置構成の小型化および簡素化を図ることができる。他方、アクティブフィルタを用いた構成は、電力を要する信号処理に好適である。
【0043】
(4)前述の各形態では、指示情報Dに応じて動作する機器として、収音装置302を具備する端末装置300を例示したが、指示情報Dの内容および送信先の機器は以上の例示に限定されない。例えば、照明機器の動作を指示する指示情報Dを放音装置200から音響通信で照明機器に送信することも可能である。例えば、利用者がヘッドホン400を装着して動画を聴取する一方で、照明装置の点灯/消灯や点灯時の明度等を指示する指示情報Dを含む音響信号S2が放音装置200から放音される。照明機器は、収音信号Xから抽出した指示情報Dに対応する制御情報Gを取得し、制御情報Gで指定される制御を実行する。以上の構成では、利用者が聴取する動画のシーンに応じて、照明をオンオフさせたり、室内の明るさを変化させたりすることが可能である。したがって、利用者による再生音の聴取に臨場感を付与することが可能になる。以上の例示から理解される通り、指示情報Dは、外部機器(端末装置300や照明機器)の動作を指示する情報として包括的に表現される。
【0044】
(5)前述の各形態ではコンテンツに関連する特典を示す文字列や画像(例えば、クーポンや割引チケット)等を関連情報Gの具体例として例示したが、関連情報Gの内容は以上の例示に限定されない。例えば、コンテンツを他言語に翻訳した音声や文字列、変形例(3)に例示される機器の制御情報や機器の動作モードを規定するモード情報や状態情報等が包含される。
【0045】
(6)前述の各形態では、端末装置300の取得部306が、指示情報Dを含む情報要求Rを情報提供サーバー500に送信する一方、情報要求Rに応じて情報提供サーバー500から送信された関連情報Gを受信する構成を例示したが、端末装置300における関連情報Gの取得の方法は以上の例示に限定されない。例えば、端末装置300の記憶装置に関連情報テーブルTB1を格納し、指示情報Dに対応する関連情報Gを取得部306が記憶装置から取得してもよい。
【0046】
(7)第1実施形態では、ヘッドホン400の接続方法の一例としてケーブルによる接続を例示したが、ワイヤレス(コードレス)形式のヘッドホン400を用いた構成も好適に採用され得る。例えば、放音装置200(再生装置100)とヘッドホン400との間で、赤外線や電波を含む電磁波を利用した無線通信(例えば近距離無線通信)によりヘッドホン400に音響信号を供給する構成としてもよい。以上の構成によれば、ケーブル10およびケーブル20が不要であるから、装置構成が簡略化される。
【0047】
(8)前述の各形態では、ヘッドホンの駆動方式としては、コイルに取り付けた振動板を振動させるダイナミック型、磁石に取り付けた固定コイルに電流を流して磁石の吸引力を変化させて振動板を兼ねる鉄片を振動させるマグネチック型等、任意の形式が採用され得る。また、利用者Uの頭部に装着されて各放音部404が利用者Uの両耳を覆う構成のヘッドホン400のほか、各放音部404が利用者Uの両耳に挿入される構成(インナーイヤー型ないしカナル型)のイヤホンも、本発明のヘッドホンの概念に包含される。
【0048】
1……再生システム、10……ケーブル、10A……入力端子、10B……入力端子、20……ケーブル、20A……入力端子、20B……入力端子、100……再生装置、200……放音装置、202……入力部、204……フィルタ(HPF)、206……増幅部、208……放音部、210……出力部、212……フィルタ(LPF)、300……端末装置、302……収音装置、304……特定部、306……取得部、308……提示部、400……ヘッドホン、404L……放音部、404R……放音部、406……入力部、408……信号供給部、500……情報提供サーバー、600……コンテンツサーバー、700……通信網、800……信号合成装置、810……変調処理部、820……混合処理部。