特許第6357997号(P6357997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357997
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】噴射試験用装置
(51)【国際特許分類】
   F02K 9/96 20060101AFI20180709BHJP
   G01M 15/14 20060101ALI20180709BHJP
   G01M 15/02 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   F02K9/96
   G01M15/14
   G01M15/02
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-186598(P2014-186598)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-56796(P2016-56796A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、防衛省、試作研究請負事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】小菅 裕一
(72)【発明者】
【氏名】中村 則之
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−019737(JP,A)
【文献】 特開平10−047162(JP,A)
【文献】 特開2000−073864(JP,A)
【文献】 実開昭63−147394(JP,U)
【文献】 実公平04−053360(JP,Y2)
【文献】 特開2012−112821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/00−97
B64F 5/00
B64F 1/26
G01M 15/02、14
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロケットモータから噴射された燃焼ガスの噴射対象物に対する噴射状態を制御する噴射試験用装置であって、
前記燃焼ガスの噴射経路途中に配置されると共に前記燃焼ガスを通過させる通過領域を一部に有する遮蔽部材と、
前記通過領域が前記燃焼ガスの噴射経路を通る経路で前記遮蔽部材を移動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御することによって前記遮蔽部材の前記通過領域が前記燃焼ガスの噴射経路を通るタイミングを調節する制御手段と
を備えることを特徴とする噴射試験用装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記噴射経路に沿った回転軸を中心として回転駆動されると共に前記通過領域となる開口を有する回転板であることを特徴とする請求項1記載の噴射試験用装置。
【請求項3】
前記回転板からなる前記遮蔽部材を2枚備え、
前記制御手段は、2枚の前記回転板の回転方向を逆方向とすると共に2枚の前記回転板の前記開口を前記噴射経路にて重ね合わせることを特徴とする請求項2記載の噴射試験用装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材と別体で設けられ、前記燃焼ガスの噴射経路を塞ぐ経路閉塞部材を備えることを特徴とする請求項2または3記載の噴射試験用装置。
【請求項5】
前記経路閉塞部材は、前記燃焼ガスの流れ方向において前記遮蔽部材の下流側に配置されていることを特徴とする請求項4記載の噴射試験用装置。
【請求項6】
前記燃焼ガスの噴射経路を除いて少なくとも前記遮蔽部材及びロケットモータを囲うチャンバと、当該チャンバ内に充満した前記燃焼ガスを前記燃焼ガスの噴射経路を避けてチャンバの外部に排気する排気流路とを備えることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の噴射試験用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射試験用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空機から発射されるロケットモータを備えた飛しょう体から噴射される燃焼ガスを吸い込むことになるエンジンや、ロケットからの燃焼ガスを受ける発射台等のロケットモータからの燃焼ガスに晒される装置は、高温の燃焼ガスに晒されることによって特性が変化する場合がある。
そして、燃焼ガスに晒される装置の特性変化を求めるために、地上にて当該装置をロケットモータの燃焼ガスに晒す実験を行う場合がある(非特許文献1参照)。
このような実験は、例えば、ロケットモータを移動しないように固定し、後段に特性変化を求めるための装置を配置した状態でロケットモータに点火することで行われる。
【0003】
ただし、上述の例から分かるように、実際にはロケットモータが点火されると、ロケットモータは自らの推進力によって燃焼ガスが噴射される対象から遠ざかる。地上で行う実験では、ロケットモータが固定されているため、上記対象からロケットモータが遠ざかることがない。このため、試験対象である装置が実際よりも長時間燃焼ガスに晒されることとなり、正確な特性変化を求めることが難しい。
ロケットモータは、一度点火すると、燃料を使い切るまで燃焼し続けるという特性を有している。このため、燃焼が燃え尽きるまでの間に燃焼ガスの発生を止めることはできない。
【0004】
このため、従来の地上における噴射試験では、落下式のシャッタを備える噴射試験用装置を用い、ロケットモータの燃焼開始から一定時間の経過後に、シャッタを落下させて燃焼ガスの噴射経路を塞ぐことによって試験対象への燃焼ガスの噴射を強制的に停止する方法が採られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Thomas Breuer, Oliver Mertschat, Dr.Andreas Zeisberger, MTU Aero Engines GmbH, Dachauer Str.665, D-80995 Munchen, Germany,「Missile Firing simulation - hot gas ingestion experiments in engine bench testing」, ISABE-2005-1133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、航空機から発射される飛しょう体に搭載されたロケットモータの燃焼ガスに晒されるエンジンを考えると、一般的にロケットモータは飛しょう体が発射されてから、エンジンの吸込口よりも後流側で着火する。このため、エンジンは、着火直後の燃焼ガスに晒されるのではなく、着火から一定時間経過した後の燃焼ガスに晒される。
【0007】
上述の噴射試験用装置では、着火直後の燃焼ガスが試験対象の装置に到達することを防ぐことができず、さらには任意のタイミングでかつ任意の期間のみ燃焼ガスを試験対象に噴射することができない。
このため、従来の地上でおける噴射試験では、十分に実際の噴射環境を模擬することができない場合があった。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ロケットモータからの燃焼ガスを試験対象に対して噴射する噴射試験に用いられる噴射試験用装置であって、噴射対象物に噴射される燃焼ガスの噴射状態をより自由度を高く調節可能とし、より実際の噴射環境を再現可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、ロケットモータから噴射された燃焼ガスの噴射対象物に対する噴射状態を制御する噴射試験用装置であって、上記燃焼ガスの噴射経路途中に配置されると共に上記燃焼ガスを通過させる通過領域を一部に有する遮蔽部材と、上記通過領域が上記燃焼ガスの噴射経路を通る経路で上記遮蔽部材を移動する駆動手段と、上記駆動手段を制御することによって上記遮蔽部材の上記通過領域が上記燃焼ガスの噴射経路を通るタイミングを調節する制御手段とを備えるという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記遮蔽部材が、上記噴射経路に沿った回転軸を中心として回転駆動されると共に上記通過領域となる開口を有する回転板であるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記回転板からなる上記遮蔽部材を2枚備え、
上記制御手段が、2枚の上記回転板の回転方向を逆方向とすると共に2枚の上記回転板の上記開口を上記噴射経路にて重ね合わせるという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第2または第3の発明において、上記遮蔽部材と別体で設けられ、上記燃焼ガスの噴射経路を塞ぐ経路閉塞部材を備えるという構成を採用する。
【0014】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記経路閉塞部材が、上記燃焼ガスの流れ方向において上記遮蔽部材の下流側に配置されているという構成を採用する。
【0015】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記燃焼ガスの噴射経路を除いて少なくとも上記遮蔽部材及びロケットモータを囲うチャンバと、当該チャンバ内に充満した上記燃焼ガスを上記燃焼ガスの噴射経路を避けてチャンバの外部に排気する排気流路とを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一部に燃焼ガスの通過領域が設けられた遮蔽部材が駆動手段によって移動され、さらに当該駆動手段が制御手段によって制御されている。
このため、遮蔽部材の移動(例えば、移動速度や移動タイミング)を制御することが可能となり、遮蔽部材の通過領域が燃焼ガスの噴射経路に重なるタイミングや期間を任意に設定することができる。
したがって、本発明によれば、ロケットモータからの燃焼ガスを試験対象に対して噴射する噴射試験に用いられる噴射試験用装置であって、噴射対象物に噴射される燃焼ガスの噴射状態をより自由度を高く調節可能とし、より実際の噴射環境を再現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態における噴射試験用装置の概略構成を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態における噴射試験用装置が備える第1回転板及び第2回転板を回転軸方向から見た矢視図である。
図3】本発明の一実施形態における噴射試験用装置の一部を模式的に示した斜視図である。
図4図3に示す本発明の一実施形態における噴射試験用装置の分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態における噴射試験用装置の電気的な接続を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態における噴射試験用装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図7】本発明の一実施形態における噴射試験用装置の動作を説明するための第1回転板及び第2回転板と噴射用開口との関係を示す動作図である。
図8】本発明の一実施形態における噴射試験用装置が備える開口の回転方向における両端及び噴射用開口の形状についての様々なケースについて例示する模式図である。
図9図8の各ケースにおける第1回転板と第2回転板との移動量と噴射用開口の開度との関係を示す図である。
図10】本発明の一実施形態における噴射試験用装置が備えるチャンバの変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る噴射試験用装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
図1は、本実施形態の噴射試験用装置S1の概略構成を示す断面図である。この図に示すように、本実施形態の噴射試験用装置S1は、第1回転板1(遮蔽部材)と、第2回転板2(遮蔽部材)と、第1シャフト3と、第2シャフト4と、第1軸受5と、第2軸受6と、第1サーボモータ7(駆動手段)と、第2サーボモータ8(駆動手段)と、第1回転板用センサ9と、第2回転板用センサ10と、ゲートシャッタ装置11と、ゲートシャッタ開放検知センサ12と、ゲートシャッタ閉鎖検知センサ13と、チャンバ14と、固定装置15とを備えている。
なお、図2は、第1回転板1と第2回転板2とを回転軸方向から見た矢視図である。また、図3は、本実施形態の噴射試験用装置S1の一部を模式的に示した斜視図である。また、図4は、図3に示す本実施形態の噴射試験用装置S1の分解斜視図である。
【0020】
本実施形態の噴射試験用装置S1は、ロケットモータMから噴射される燃焼ガスを不図示の試験対象物(噴射対象物)に対して噴射する噴射試験を行う際に、燃焼ガスの噴射対象物に対する噴射状態を制御するためのものである。
具体的には、本実施形態の噴射試験用装置S1は、噴射対象物に対する燃焼ガスの噴射タイミングや、噴射時間を制御する。
【0021】
第1回転板1は、図1図3及び図4に示すようにロケットモータMから噴射される燃焼ガスの噴射経路Xの途中に配置されており、図2図4に示すように燃焼ガスを通過させる開口1a(通過領域)を一部に備えるものである。
より詳細には、第1回転板1は、噴射経路Xよりも下方において当該噴射経路Xに対して平行に沿った回転軸Lを回転中心として回転駆動される円板であり、ロケットモータM側に向く面において燃焼ガスを受けることによって燃焼ガスを遮蔽する遮蔽部材として機能するものである。
この第1回転板1には、図2に示すように、第1回転板1の回転によって噴射経路Xと重なる位置に、回転軸Lを中心とする円弧状に形状設定された開口1aが形成されている。そして、第1回転板1は、当該開口1aが噴射経路Xと重なった際には、燃焼ガスを試験対象側(図1における右側)に通過させる。
【0022】
また、図2に示すように、開口1aは、円弧状の長孔とされており、回転方向における両端が外側に向けて湾曲されている。そして、第1回転板1は、開口1aと回転軸Lを挟んだ反対側に周縁領域に配置されるセンサ検出板1bを備えている。
このセンサ検出板1bは、第1回転板用センサ9によって検出されるものであり、両端が開口1aの端部と回転軸Lとを結んだ直線上に配置されている。そして、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、このセンサ検出板1bを検出することによって、開口1aの位置検出が可能とされている。
また、第1回転板1は、センサ検出板1bとの対称位置に第1回転板1の重心を回転軸Lに合わせるための調芯用錘1cを備えている。
【0023】
第2回転板2は、図1図3及び図4に示すようにロケットモータMから噴射される燃焼ガスの噴射経路Xの途中に配置されており、図2図4に示すように燃焼ガスを通過させる開口2a(通過領域)を一部に備えるものである。
より詳細には、第2回転板2は、第1回転板1と同様に、回転軸Lを回転中心として回転駆動される円板である。なお、第2回転板2は、第1回転板1よりも小径の円板とされている。ただし、第2回転板2を第1回転板1と同じ径の円板、あるいは、第1回転板1を第2回転板2よりも小径の円板としても良い。
この第2回転板2には、図2に示すように、第2回転板2の回転によって噴射経路Xと重なる位置に、回転軸Lを中心とする円弧状に形状設定された開口2aが形成されている。そして、第2回転板2は、当該開口2aが噴射経路Xと重なった際には、燃焼ガスを試験対象側(図1における右側)に通過させる。
ただし、第2回転板2は、図1に示すように、燃焼ガスの噴射方向において第1回転板1の下流側に配置されている。このため、開口2aが噴射経路Xと重なった場合であっても、第1回転板1の開口1aが噴射経路Xと重なっていない場合には、燃焼ガスは、第2回転板2を通過することはない。
【0024】
また、図2に示すように、開口2aは、円弧状の長孔とされており、回転方向における両端が外側に向けて湾曲されている。そして、第2回転板2は、開口2aと回転軸Lを挟んだ反対側に周縁領域に配置されるセンサ検出板2bを備えている。
このセンサ検出板2bは、第2回転板用センサ10によって検出されるものであり、両端が開口2aの端部と回転軸Lとを結んだ直線上に配置されている。そして、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、このセンサ検出板2bを検出することによって、開口2aの位置検出が可能とされている。
また、第2回転板2は、センサ検出板2bとの対称位置に第2回転板2の重心を回転軸Lに合わせるための調芯用錘2cを備えている。
【0025】
図1に戻り、第1シャフト3は、第1回転板1を回転駆動するためのシャフトであり、第1回転板1の中央に固定されている。
第2シャフト4は、第2回転板2を回転駆動するためのシャフトであり、第2回転板2の中央に固定されている。
第1軸受5は、第1シャフト3を軸支するための軸受である。また、第2軸受6は、第2シャフト4を軸支するための軸受である。
【0026】
第1サーボモータ7は、第1回転板1を回転駆動するための動力源であり、第1回転板1を開口1aが噴射経路Xを通る経路で回転駆動する。なお、第1サーボモータ7は、第1シャフト3の端部と接続されており、第1シャフト3を介して第1回転板1に回転動力を伝達する。
【0027】
第2サーボモータ8は、第2回転板2を回転駆動するための動力源であり、第2回転板2を開口2aが噴射経路Xを通る経路で回転駆動する。なお、第2サーボモータ8は、第2シャフト4の端部と接続されており、第2シャフト4を介して第2回転板2に回転動力を伝達する。
【0028】
第1回転板用センサ9は、第1回転板用センサ検出板1bの有無を検出するものであり、第1回転板1の下部に配置されている。
第2回転板用センサ10は、第2回転板用センサ検出板2bの有無を検出するものであり、第2回転板2の下部に配置されている。
これらの第1回転板用センサ9及び第2回転板用センサ10は、回転軸Lを中心として噴射経路Xから180°ずれた位置に配置されている。
【0029】
ゲートシャッタ装置11は、第1回転板1及び第2回転板2とは別に燃焼ガスを遮蔽するためのものであり、噴射経路Xを塞ぐゲートシャッタ11a(経路閉塞部材)と、ゲートシャッタ11aを噴射経路Xの上方から落下させるためのアクチュエータ11bとを備えている。
なお、ゲートシャッタ11aは、燃焼ガスの噴射方向において第1回転板1及び第2回転板2の下流側において噴射経路Xを塞ぐように配置されている。
【0030】
ゲートシャッタ開放検知センサ12は、ゲートシャッタ11aが開放していることを検知するためのセンサであり、ゲートシャッタ11aが噴射経路Xの上方に位置していることを検知するために噴射経路Xの上方に配置されている。
ゲートシャッタ閉鎖検知センサ13は、ゲートシャッタ11aが閉鎖していることを検知するためのセンサであり、ゲートシャッタ11aが噴射経路Xを塞いでいることを検知するために噴射経路Xの下方に配置されている。
【0031】
チャンバ14は、噴射経路Xを除いて第1回転板1、第2回転板2及びロケットモータMを囲んで設けられており、噴射経路Xに対応した噴射用開口14aを備えている。このチャンバ14は、ロケットモータMから噴射された燃焼ガスの一部であって、本来の噴射経路Xと通らずに第1回転板1及び第2回転板2を回り込んで試験対象に到達しようとするガスを閉じ込めるためのものである。
噴射用開口14aは、噴射経路Xを中心とする円形状の開口であり、第1回転板用センサ9及び第2回転板用センサ10に対して、回転軸Lを中心として180°ずれた位置に配置されている。
【0032】
なお、図3及び図4に示すように、チャンバ14に対して、チャンバ14の内部に充満した燃焼ガスを、噴射経路Xを避けてチャンバ14の外部に排気するためのダクト16(排気流路)が接続されている。そして、ダクト16は、排気された燃焼ガスが試験対象に対して影響を与えない位置(例えば、燃焼ガスの噴射方向において試験対象の下流側の位置)まで延在されており、排気された燃焼ガスが試験対象に対して影響を与えない位置にチャンバ14内に充満した燃焼ガスを排気する。
【0033】
図1に戻り、固定装置15は、ロケットモータMを固定するためのものであり、チャンバ14内部に配置されている。そして、固定装置15は、ロケットモータMを噴射経路Xに向けて姿勢設定して固定する。
【0034】
図5は、本実施形態の噴射試験用装置S1の電気的な接続を示すためのブロック図である。この図に示すように、本実施形態の噴射試験用装置S1は、上述した構成に加えて、制御装置17(制御手段)と、操作スイッチ表示パネル18とを備えている。
【0035】
制御装置17は、本実施形態の噴射試験用装置S1の動作全体を制御するものであり、第1サーボモータ7、第2サーボモータ8、第1回転板用センサ9、第2回転板用センサ10、ゲートシャッタ装置11のアクチュエータ11b、ゲートシャッタ開放検知センサ12、ゲートシャッタ閉鎖検知センサ13、操作スイッチ表示パネル18と電気的に接続されている。
より詳細には、制御装置17は、PLC(Programmable Logic Controller)17aと、第1サーボアンプ17bと、第2サーボアンプ17cとを有している。そして、PLCが第1回転板用センサ9、第2回転板用センサ10、ゲートシャッタ装置11のアクチュエータ11b、ゲートシャッタ開放検知センサ12、ゲートシャッタ閉鎖検知センサ13、操作スイッチ表示パネル18と電気的に接続されている。また、第1サーボアンプ17bが第1サーボモータ7に対する制御を行い、第2サーボアンプ17cが第2サーボモータ8に対する制御を行う。
【0036】
そして、本実施形態の噴射試験用装置S1において、制御装置17は、第1サーボモータ7及び第2サーボモータ8を制御することによって、第1回転板1の開口1aと第2回転板2の開口2aとが噴射経路Xを通るタイミングや通過速度を調節する。
より詳細には、本実施形態の噴射試験用装置S1は、第1回転板1と第2回転板2との回転方向を逆回転とし、開口1aと開口2aとが噴射経路Xにおいて重なり合うように第1回転板1の回転と第2回転板2の回転とを制御する。
【0037】
なお、図5に示すように、制御装置17は、電源Dと接続されており、電源Dから電力を供給されている。
また、制御装置17のPLC17aは、ロケットモータMの点火装置Maと電気的に接続されており、点火装置Maを制御することによってロケットモータMへの点火が可能とされている。なお、点火装置Maは、ロケットモータMの点火部に電流を流して点火するものであり、制御装置17と共にチャンバ14の外部に配置されている。
【0038】
操作スイッチ表示パネル18は、操作スイッチを表示及び操作可能なマンマシンインターフェイスであり、例えば、入力装置と出力装置とを兼ね備えたタッチパネルによって構成されている。なお、操作スイッチ表示パネル18に換えて、入力装置と表示装置とを別々に設けても良い。
【0039】
次に、このように構成された本実施形態の噴射試験用装置S1の動作について、図6のタイミングチャートを参照しながら説明する。
なお、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、図6のタイミングチャートに示す動作を行うよりも前に、第1回転板1及び第2回転板2が予め設定された回転速度でかつ開口1aと開口2aとが噴射経路Xにて重なるように、第1回転板1及び第2回転板2を同期させて回転させる動作を行う。なお、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、噴射用開口14aにおける全閉と全開との間の必要時間が0.1秒で、噴射用開口14aの全開時間が0.1秒となるように第1回転板1及び第2回転板2の回転を制御する。
【0040】
具体的には、PLC17aが第1回転板用センサ9から検出信号を受け、第1サーボアンプ17bが第1サーボモータ7の回転を制御することによって第1回転板1の制御を行う。また、PLC17aが第2回転板用センサ10から検出信号を受け、第2サーボアンプ17cが第2サーボモータ8の回転を制御することによって第2回転板2の制御を行う。
ここで、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、回転軸Lを中心として開口1aとセンサ検出板1bが180°ずれて配置され、さらに回転軸Lを中心として噴射用開口14aと第1回転板用センサ9とが180°ずれて配置されている。このため、第1サーボアンプ17bは、第1回転板用センサ9にてセンサ検出板1bを検出したタイミングが開口1aの回転方向先端が噴射用開口14aの中心(噴射経路X)に掛かったタイミングであると認識し、例えば、当該タイミングが第1サーボモータ7の回転角度が0°となるように制御を行うことによって第1サーボモータ7(すなわち第1回転板1)をフィードバック制御する。
また、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、回転軸Lを中心として開口2aとセンサ検出板2bが180°ずれて配置され、さらに回転軸Lを中心として噴射用開口14aと第2回転板用センサ10とが180°ずれて配置されている。このため、第2サーボアンプ17cは、第2回転板用センサ10にてセンサ検出板2bを検出したタイミングが開口2aの回転方向先端が噴射用開口14aの中心(噴射経路X)に掛かったタイミングであると認識し、例えば、当該タイミングが第2サーボモータ8の回転角度が0°となるように制御を行うことによって第2サーボモータ8(すなわち第2回転板2)をフィードバック制御する。
【0041】
このようにして第1回転板1及び第2回転板2が同期して回転されると、図7(a)〜(j)に示すように、噴射用開口14aは、開口1a,2aの移動に伴って中心から開口された後、中心に向けて閉鎖される。
【0042】
そして、第1回転板1及び第2回転板2が同期して回転された後、操作スイッチ表示パネル18から噴射試験の開始信号が入力されると、PLC17aは、図6に示すように、予め設定されたカウントダウンタイムTのカウントを開始する。
そして、PLC17aは、カウントダウンタイムTが0となる直前における第1回転板用センサ9からの検出波形A1と第2回転板用センサ10からの検出波形B1とを比較して第1回転板1及び第2回転板2との同期が正確に取れているかの最終確認を行う。なお、ここで、同期が取れていないと判断した場合には、PLC17aは、噴射試験を中止する。例えばPLC17aは、検出波形A1と検出波形B1との立上がりタイミングを比較し、その差が0.01秒以内である場合には同期が取れていると判定する。
【0043】
第1回転板1及び第2回転板2との同期が正確に取れている場合には、PLC17aは、検出波形A1に続く検出波形A2の立下りのタイミング(検出波形B1に続く検出波形B2の立下りのタイミング)にて点火装置Maに入力している点火信号の出力電圧を上げて点火装置を作動させ、これによってロケットモータMの点火部に電流を流すことによってロケットモータMに点火する。
【0044】
そして、ロケットモータMの点火後の次の検出波形A3と検出波形B3とが検出されている間(すなわち開口1aと開口2aとが噴射経路Xにおいて重なっている間)の約0.2秒間、ロケットモータMからの燃焼ガスが噴射用開口14aから試験対象に向けて噴射される。
つまり、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、ロケットモータMが点火されてから一定時間が経過した後の燃焼ガスが試験対象に噴きつけられる。
【0045】
またPLC17aは、検出波形A3の立下りのタイミングに合わせてゲートシャッタ装置11のアクチュエータ11bに入力している指令信号の出力電圧を上げ、これによってアクチュエータ11bを稼動させてゲートシャッタ11aにて噴射経路Xを塞ぐ。
そして、PLC17aは、ゲートシャッタ開放検知センサ12からの検出信号及びゲートシャッタ閉鎖検知センサ13からの検出信号に基づいてゲートシャッタ11aの動作を確認した後、動作を完了する。
【0046】
このように本実施形態の噴射試験用装置S1によれば、ロケットモータMに点火されて以降においては、検出波形A3と検出波形B3が出力されている間を除いた期間(図6のαで示す領域)では、噴射経路Xが閉じられて燃焼ガスが遮蔽された状態となる。
そして、検出波形A3と検出波形B3が出力されている間のみ、燃焼ガスが試験対象に噴きつけられる。
【0047】
以上のような本実施形態の噴射試験用装置S1によれば、一部に燃焼ガスの通過領域である開口1a,2aが設けられた第1回転板1及び第2回転板2が第1サーボモータ7及び第2サーボモータ8によって移動され、さらに第1サーボモータ7及び第2サーボモータ8が制御装置17によって制御されている。
このため、第1回転板1及び第2回転板2の回転移動を制御することが可能となり、第1回転板1及び第2回転板2の開口1a,2aが燃焼ガスの噴射経路Xに重なるタイミングや期間を任意に設定することができる。
したがって、本実施形態の噴射試験用装置S1によれば、噴射対象物である試験対象に噴射される燃焼ガスの噴射状態をより自由度を高く調節可能とし、より実際の噴射環境を再現することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、本発明における遮蔽部材が回転板である構成を採用している。
このため、燃焼ガスを噴射されるまでの間に十分な時間を掛けて遮蔽部材の速度を速めることができ、出力の小さな第1サーボモータ7及び第2サーボモータ8を用いることができる。さらに、燃焼ガスを遮蔽する際に、燃焼ガスに晒される領域が常に変化するため、第1回転板1と第2回転板2の表面温度上昇が抑えられ、第1回転板1と第2回転板2の寿命を長く確保することができ、また第1回転板1と第2回転板2を特殊な耐熱材料で形成する必要がなくなる。
【0049】
また、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、第1回転板1と第2回転板2とを逆方向に回転させて、開口1a,2aを噴射経路Xにて重ね合わせる構成を採用している。このため、噴射用開口14aの全閉から全開までの時間を短縮することができる。さらには中央から開口させることが可能となり、噴射用開口14aから噴射される燃焼ガスが偏ることを抑止することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、第1回転板1と第2回転板2と別体で、噴射経路Xを塞ぐゲートシャッタ11aを備えている。
このため、噴射用開口14aから燃焼ガスを噴射させた後は、第1回転板1と第2回転板2とを回転させ続けた場合であっても、噴射用開口14aから燃焼ガスが噴射されることを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、ゲートシャッタ11aが燃焼ガスの流れ方向において第1回転板1と第2回転板2の下流側に配置されている。
このため、ゲートシャッタ11aに直接燃焼ガスが噴射されるタイミングは、開口1aと開口2aとが重なり合うタイミングのみであり、限定的である。このため、ゲートシャッタ11aの表面温度上昇が抑えられ、寿命を長く確保することができる。またゲートシャッタ11aを特殊な耐熱材料で形成する必要がなくなる。
【0052】
また、本実施形態の噴射試験用装置S1においては、第1回転板1、第2回転板2及びロケットモータMを囲うチャンバ14を備え、当該チャンバ14内に充満した燃焼ガスを噴射経路Xを避けて排気するダクト16を備えている。
このため、燃焼ガスが第1回転板1及び第2回転板2を回り込んで試験対象に噴射されることを抑止することが可能となる。
【0053】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態においては、遮蔽部材が第1回転板1及び第2回転板2である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、遮蔽部材が回転板である必要はない。例えば、遮蔽部材として開口を有すると共に上下方向あるいは水平方向にスライドされるスライド板を用いることも可能である。
さらには、遮蔽部材が、燃焼ガスの流路を試験対象に向かう流路と試験対象から外れる流路とに切替ることができる切替機構である構成を採用することもできる。また、遮蔽部材が燃料ガスを通過可能な貫通孔を有する球体部材によって構成することもできる。また、遮蔽部材を扉体とすることも可能である。また、遮蔽部材をロケットモータMを囲うと共にスリットが形成された円筒部材とすることも可能である。
このように遮蔽部材を他の構成とする場合には、駆動手段も遮蔽部材に合わせて変更されることとなる。例えば、スライド板を遮蔽部材として用いる場合には駆動手段はスライド装置とされる。
【0055】
また、上記実施形態においては、開口1aの回転方向における両端及び開口2aの回転方向における両端が外側に向けて湾曲された円弧状であり、噴射用開口14aが円形である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、開口1aの回転方向における両端、開口2aの回転方向における両端及び噴射用開口14aの形状を変更しても良い。
【0056】
図8及び図9は、開口の回転方向における両端及び噴射用開口の形状についての様々なケースの検証について説明するための図である。
図8は、開口の回転方向における両端及び噴射用開口の形状についての様々なケースについて例示する模式図である。また、図9は、図8の各ケースにおける第1回転板と第2回転板との移動量と噴射用開口の開度との関係を示す図である。
本検証においては、図8に示すように、噴射用開口が円形のケース、正方形のケース、45度回転させた正方形のケース、及び、第1回転板と第2回転板の開口の両端が円弧のケース、一直線のケース、直角に屈曲したケースを組み合わせて行った。
この結果、いずれのケースであっても噴射用開口の中央から開口することが確認され、CASE4(上記実施形態のケース)が図9に示す最も理想状態に近いことが確認された。
【0057】
また、上記実施形態においては、単一のチャンバ14にてロケットモータM、第1回転板1及び第2回転板2を囲う構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図10に示すように、チャンバ14の内部に、噴射経路Xを避けて、ロケットモータMの燃焼ガスの噴射領域を囲うサブチャンバ14Aと、第1回転板1及び第2回転板2を囲うサブチャンバ14Bとをさらに設置しても良い。このような場合には、図10(b)に示すように、各サブチャンバ14A,14Bに対してダクト16Aを接続する。
このような構成を採用することによって、第1回転板1及び第2回転板2によって遮蔽された燃焼ガスが他の機器等(第1サーボモータ7、第2サーボモータ8、及びロケットモータM)に触れることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0058】
1……第1回転板(遮蔽部材)、1a……開口(通過領域)、2……第2回転板(遮蔽部材)、2a……開口(通過領域)、7……第1サーボモータ(駆動手段)、8……第2サーボモータ(駆動手段)、11b……ゲートシャッタ(経路閉塞部材)、14……チャンバ、14a……噴射用開口、16……ダクト(排気流路)、17……制御装置(制御手段)、L……回転軸、X……噴射経路、M……ロケットモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10