(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358001
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】運行情報管理装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
B60R16/02 650J
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-187829(P2014-187829)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-60292(P2016-60292A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】岸本 義久
(72)【発明者】
【氏名】蔀 克士
(72)【発明者】
【氏名】荒木 裕行
(72)【発明者】
【氏名】南波 孝輔
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−227194(JP,A)
【文献】
特開平04−016779(JP,A)
【文献】
特開2013−032163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障発生時に当該故障に応じた故障診断コードを発行し記憶する自己診断部を備えた車両に搭載される運行情報管理装置であって、
前記自己診断部が発行した故障診断コードを、当該故障診断コードが発行された際の走行距離と共に記憶するコード記憶部と、
前記自己診断部で故障診断コードが消去されたとき、当該故障診断コードが消去されたときと同じ走行距離で発行された故障診断コードに、前記車両の整備時に発行されたことを示す整備時情報を付与して前記コード記憶部に記憶させる整備時情報付与部と、
を備えたことを特徴とする運行情報管理装置。
【請求項2】
前記コード記憶部は、前記整備時情報の有無を示すフラグを、故障診断コードと共に記憶するように構成され、
前記整備時情報付与部は、前記フラグの値を変化させることで、前記整備時情報を付与させるように構成される
請求項1記載の運行情報管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行情報管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
故障発生時に当該故障に応じた故障診断コード(Diagnostic Trouble Cord、以下DTCという)を発行し記憶する自己診断部を備えた車両が知られている。
【0003】
車両の自己診断機能はOBD(On-Board Diagnostics)と呼ばれており、一般に、故障が発生した際には、故障の箇所や内容をランプの点灯や明滅、あるいはブザー音により運転者に通知し、故障内容に応じたDTCを記録するようになっている。
【0004】
DTCは、例えば、アルファベット1文字と4桁の数字により表されるものであり、種々の故障に対応するように細かく設定されている。
【0005】
ところで、自己診断部は車両の電子制御ユニット(以下、ECUという)に搭載されるが、ECUのメモリ容量に制約があるため、故障診断コードを確実に記録するために、運行情報管理装置が用いられている。
【0006】
運行情報管理装置は、自己診断部が発行したDTCを、当該DTCが発行された際の日時や走行距離と共に不揮発性メモリに記憶し、故障の解析等で必要な場合に、内蔵された不揮発性メモリから情報を読み出せるように構成されている。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−238022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、自己診断部は、車両の整備中にも自己診断を続行するため、例えば整備のためにケーブルの接続を解除したような場合であっても、断線と診断されDTCが発行されてしまう。
【0010】
そのため、故障の解析等で運行管理装置からDTCを読み出した際に、そのDTCが整備時に発生したものであるか否かが判断できず、故障の解析等の障害となる場合があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、整備時の故障診断コードを区別することが可能な運行情報管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、故障発生時に当該故障に応じた故障診断コードを発行し記憶する自己診断部を備えた車両に搭載される運行情報管理装置であって、前記自己診断部が発行した故障診断コードを、当該故障診断コードが発行された際の走行距離と共に記憶するコード記憶部と、前記自己診断部で故障診断コードが消去されたとき、当該故障診断コードが消去されたときと同じ走行距離で発行された故障診断コードに、前記車両の整備時に発行されたことを示す整備時情報を付与して前記コード記憶部に記憶させる整備時情報付与部と、を備えた運行情報管理装置である。
【0013】
前記コード記憶部は、前記整備時情報の有無を示すフラグを、故障診断コードと共に記憶するように構成され、前記整備時情報付与部は、前記フラグの値を変化させることで、前記整備時情報を付与させるように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、整備時の故障診断コードを区別することが可能な運行情報管理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運行情報管理装置を備えた自己診断システムの概略構成図である。
【
図2】
図1の運行情報管理装置の制御フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る運行情報管理装置を備えた自己診断システムの概略構成図である。
【0018】
図1に示すように、自己診断システム100は、車両に搭載され、故障発生時に当該故障に応じた故障診断コード(以下、DTCという)を発行し記憶する自己診断部2を備えている。
【0019】
自己診断部2は、故障が発生した際には、故障の箇所や内容をランプの点灯や明滅、あるいはブザー音により運転者に通知し、故障内容に応じたDTCを記録するように構成されている。自己診断部2は、車両の電子制御ユニット(以下、ECUという)3に搭載される。
【0020】
また、自己診断システム100は、管理ツール(スキャンツール)4を備え、この管理ツール4を介して、自己診断部2に記憶されたDTCの読み出しやDTCの消去等の制御を行えるようになっている。
【0021】
さて、自己診断システム100は、本実施形態に係る運行情報管理装置1を備えている。
【0022】
運行情報管理装置1とECU3と管理ツール4とは、例えば、車載LAN(CAN)を介して通信可能に構成されている。運行情報管理装置1には、車載LANを介して、走行距離等の情報が入力されるように構成されている。
【0023】
運行情報管理装置1は、コード記憶部5と、整備時情報付与部6と、を備えている。
【0024】
コード記憶部5は、自己診断部2が発行したDTCを、当該DTCが発行された際の日時や走行距離と共に記憶するものである。
【0025】
整備時情報付与部6は、自己診断部2でDTCが消去されたとき、当該DTCが消去されたときと同じ走行距離で発行されたDTCに、車両の整備時に発行されたことを示す整備時情報を付与してコード記憶部5に記憶させるものである。
【0026】
車両の整備中を行った際には、自己診断部2において整備中に記録されたDTCを消去して出庫するのが一般的である。このとき、運行情報管理装置1のコード記憶部5に記憶されたDTCまで消去は行われないために、後の解析時等に問題が発生していた。
【0027】
本実施形態では、コード記憶部5に記憶されたDTCのうち、DTCを消去したときと同じ走行距離で発行されたDTCについては、整備中に発生したものであると判断し、整備時情報という足跡を付けて、他のDTCと区別できるようにしている。
【0028】
なお、整備中に発生したDTCであると判断する走行距離については、幅をもたせても構わない。つまり、整備時情報付与部6は、DTCを消去したときの走行距離以下で、かつ、DTCを消去したときの走行距離から所定値を減じた走行距離以上の走行距離で発行されたDTCに、車両の整備時に発行されたことを示す整備時情報を付与するように構成されても構わない。
【0029】
上述のように、自己診断部2におけるDTCの消去は、管理ツール4を介して行われる。具体的には、自己診断部2におけるDTCの消去を行う際には、管理ツール4からECU3にDTC消去命令が出力され、このDTC消去命令を受信した自己診断部2が、記憶したDTCを消去する。
【0030】
本実施形態では、管理ツール4からのDTC消去命令は、運行情報管理装置1にも送信されるように構成されている。整備時情報付与部6は、DTC消去命令を受信したときに、自己診断部2でDTCが消去されたと判断するように構成される。なお、これに限らず、自己診断部2がDTC消去命令を受信したとき、あるいはDTCを消去したときに、DTCを消去する(あるいは消去した)ことを運行情報管理装置1に通知するように自己診断部2を構成してもよい。
【0031】
整備時情報付与部6は、自己診断部2でDTCが消去されたと判断すると、その時点での走行距離の情報を取得すると共に、コード記憶部5を参照して、取得した走行距離と同じ走行距離で発行されたDTCを検索しピックアップする。その後、整備時情報付与部6は、ピックアップしたDTCに整備時情報を付与してコード記憶部5に記憶させる。
【0032】
本実施形態では、整備時情報の有無を示すフラグを、DTCと共に記憶するようにコード記憶部5を構成し、かつ、そのフラグの値を変化させることで、整備時情報を付与させるように整備時情報付与部6を構成した。なお、フラグとは、処理結果を真(True)、偽(Fales)いずれかの値で保持するレジスタまたは変数のことであり、このフラグが真であるか偽であるかによって整備時情報の有無が確認できるようになっている。
【0033】
なお、整備時情報を付与する形式はフラグに限られるものではなく、例えば、整備時情報を付与した専用のDTC(整備時用DTC)を設定しておき、コード記憶部5に記憶されているDTCを整備時用DTCに置換するようにしてもよいし、DTCに任意の文字列(例えば”.(コロン)”など)を付け足すことで、整備時情報を付与するよう構成しても構わない。
【0034】
次に、本実施形態に係る運行情報管理装置1の制御フローを説明する。運行情報管理装置1は、車両のイグニッションスイッチがオンとなっている間、
図2の制御フローを繰り返し実行するように構成されている。
【0035】
図2に示すように、運行情報管理装置1では、まず、ステップS1にて、自己診断部2でDTCが消去されたかを判断する。本実施形態では、管理ツール4からDTC消去命令を受信したときに、自己診断部2でDTCが消去されたと判断することになる。ステップS1でNOと判断された場合、そのまま処理を終了する。
【0036】
ステップS1にてYESと判断された場合、ステップS2にて、現在の走行距離を取得し、ステップS3にて、現在の走行距離で発行されたDTCに整備時情報を付与する。本実施形態では、整備時情報を示すフラグをオンにすることで、整備時情報を付与する。その後、処理を終了する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る運行情報管理装置1は、自己診断部2が発行したDTCを、当該DTCが発行された際の走行距離と共に記憶するコード記憶部5と、自己診断部2でDTCが消去されたとき、当該DTCが消去されたときと同じ走行距離で発行されたDTCに、車両の整備時に発行されたことを示す整備時情報を付与してコード記憶部5に記憶させる整備時情報付与部6と、を備えている。
【0038】
これにより、コード記憶部5からDTCを読み出した際に、整備時に発行されたDTCを区別することが可能になる。よって、例えば、故障の解析を行う際に、整備時に発行されたDTCを除外して解析を行うことが可能となり、解析作業が容易になる。
【0039】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1 運行情報管理装置
2 自己診断部
5 コード記憶部
6 整備時情報付与部