特許第6358047号(P6358047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358047
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】電池モジュール及び電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20180709BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   H01M2/10 M
   H01M2/10 S
   H01M2/20 A
   H01M2/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-224439(P2014-224439)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-91780(P2016-91780A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】前田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−160347(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/125605(WO,A1)
【文献】 特開2009−154824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の電池セルを含む本体部と、
前記本体部を前記複数の電池セルの並設方向の両側で把持する第1プレート及び第2プレートと、
前記本体部と前記第1プレートとの間に設けられた弾性部材と、
前記並設方向に沿って延びるケーブルと、
前記本体部に設けられ、前記ケーブルを拘束する拘束部と、を備え、
前記ケーブルは、前記拘束部に対して、前記弾性部材とは反対の方向に設けられた固定部により固定される固定部分を有し、
前記拘束部から前記固定部までの前記ケーブルの長さは、前記ケーブルを前記拘束部から前記固定部まで最短で配置した場合の長さと、前記弾性部材の前記並設方向での長さとの和よりも長い、電池モジュール。
【請求項2】
前記ケーブルは、前記第2プレートに沿って配置される部分において、変位可能に配置される、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記拘束部は、第1拘束部材及び第2拘束部材を有し、
前記弾性部材、前記第1拘束部材、前記第2拘束部材及び前記固定部は、前記ケーブルに沿って、その順に配置され、
前記ケーブルは、前記第1拘束部材に係止する係止部材を有する、請求項1または請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電池モジュールと、
前記固定部を有する端子台と、を備える電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
並設された複数の電池セルと、複数の電池セルを並設方向の両側で把持する2つのプレートと、を備える電池モジュールが知られている。一般に電池セルの使用に伴い、電池セルの電極には被膜が形成されていき、電池セルの使用期間が長くなるにつれて電池セルが膨張する。特許文献1〜特許文献3に記載の電池モジュールでは、一方のプレートと当該プレートに隣り合う電池セルとの間、または隣り合う2つの電池セルの間に弾性部材が設けられることによって、電池セルの膨張を吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−244894号公報
【特許文献2】特開2012−142288号公報
【特許文献3】特開2009−81056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池モジュールでは、ケーブルが電池セルに設けられたクランプにより拘束される場合がある。この場合、特許文献1〜特許文献3に記載の電池モジュールでは、電池セルの膨張に伴ってクランプが移動するので、ケーブルがクランプにより拘束された状態で引っ張られ、損傷するおそれがある。
【0005】
本発明は、ケーブルの損傷を抑制可能な電池モジュール及び電池パックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電池モジュールは、並設された複数の電池セルを含む本体部と、本体部を複数の電池セルの並設方向の両側で把持する第1プレート及び第2プレートと、本体部と第1プレートとの間に設けられた弾性部材と、並設方向に沿って延びるケーブルと、本体部に設けられ、ケーブルを拘束する拘束部と、を備え、ケーブルは、拘束部に対して、弾性部材とは反対の方向に設けられた固定部により固定される固定部分を有し、拘束部から固定部までのケーブルの長さは、ケーブルを拘束部から固定部まで最短で配置した場合の長さと、弾性部材の並設方向での長さとの和よりも長い。
【0007】
この電池モジュールでは、本体部には拘束部が設けられており、ケーブルが拘束部により拘束されている。本体部と第1プレートとの間には、弾性部材が設けられており、弾性部材は、電池セルの膨張により、圧縮されて弾性変形する。本体部に含まれる複数の電池セルがそれぞれ膨張すると、弾性部材により電池セルの膨張が吸収されるので、これに合せて拘束部が並設方向に沿って第1プレート側に移動する。ケーブルは、拘束部に対して、弾性部材とは反対の方向に設けられた固定部により固定される固定部分を有している。つまり、固定部、拘束部及び弾性部材は、ケーブルに沿って、その順に配置されているので、拘束部は、電池セルの膨張に伴い、固定部から並設方向に遠ざかるように移動し、拘束部から固定部までのケーブルを並設方向に沿って第1プレート側に引っ張る。ここで、拘束部から固定部までのケーブルの長さは、ケーブルを拘束部から固定部まで最短で配置した場合の長さと、弾性部材の並設方向での長さとの和よりも長くされている。拘束部は弾性部材の並設方向での長さよりも短い距離しか移動しないので、ケーブルは並設方向に沿って第1プレート側に最大限引っ張られてもなお長さの余裕部分を有している。このため、ケーブルに加わる引張応力を低減することができ、ケーブルの損傷を抑制することが可能となる。
【0008】
上記ケーブルは、第2プレートに沿って配置される部分において、変位可能に配置されていてもよい。この場合、ケーブルは、第2プレートに沿って配置される部分では拘束部により拘束されないので、ケーブルの配置の自由度を高めることができる。
【0009】
上記拘束部は、第1拘束部材及び第2拘束部材を有し、弾性部材、第1拘束部材、第2拘束部材及び固定部は、ケーブルに沿って、その順に配置され、ケーブルは、第1拘束部材に係止する係止部材を有してもよい。この場合、電池セルの膨張により、拘束部が並設方向に沿って第1プレート側に移動するのに伴い、第1拘束部材が確実にケーブルを引っ張る。拘束部材の移動量は、第2プレートと拘束部材との間における複数の電池セルの並設方向での膨張量を積算したものとなる。第1拘束部材は、第2拘束部材よりも弾性部材側に配置されているので、第1拘束部材の移動量は、第2拘束部材の移動量よりも大きい。したがって、第1拘束部材によって、ケーブルが並設方向に沿って第1プレート側に引っ張られることにより、ケーブルの有する長さの余裕部分を有効利用できる。このとき、第2拘束部材では、ケーブルが拘束部の拘束力を超えて引っ張られるので、ケーブルは第2拘束部材を通って移動する。そして、ケーブルの有する長さの余裕部分は、第1拘束部材の移動量よりも長いので、ケーブルが損傷する可能性を低減することができる。
【0010】
本発明の別の態様に係る電池パックは、上記電池モジュールと、固定部を有する端子台と、を備える。
【0011】
この電池パックでは、上記電池モジュールを備えるので、端子台の固定部により固定されるケーブルの損傷を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケーブルの損傷を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る電池パックを搭載するフォークリフトを示す概略側面図である。
図2図1の電池パックの内部構成を示す側面図である。
図3図2の第1電池列に含まれる電池モジュールの平面図である。
図4図3の電池モジュールの斜視図である。
図5図3の電池モジュールの斜視図である。
図6図3の電池モジュールの分解斜視図である。
図7】変形例に係る電池モジュールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して一実施形態に係る電池モジュール及び電池パックについて説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
図1は、一実施形態に係る電池パックを搭載するフォークリフトを示す概略側面図である。図1に示されるように、フォークリフト1の車体2の前下部には駆動輪3が設けられている。フォークリフト1の車体2の後下部には操舵輪4が設けられている。フォークリフト1の車体2の前部には、荷役装置が設けられている。荷役装置を構成するマスト5は、車体2の前部に立設されている。マスト5には、リフトブラケット6を介して左右一対のフォーク7が設けられている。フォーク7には、積荷Wが搭載される。車体2には、駆動輪3の駆動源となる走行用モータM1と、フォーク7の駆動源となる荷役用モータM2とが搭載されている。フォークリフト1の車体2の下部には、電池パック10が搭載されている。
【0016】
図2図6を参照して、フォークリフト1に搭載される電池パック10について詳細に説明を行う。図2は、図1の電池パックの内部構成を示す側面図である。図3は、図2の第1電池列に含まれる電池モジュールの平面図である。図4は、図3の電池モジュールの斜視図である。図5は、図3の電池モジュールの斜視図である。図6は、図3の電池モジュールの分解斜視図である。
【0017】
図2に示されるように、電池パック10は、筐体11と、ジャンクションボックス12と、複数の電池モジュール20と、を備えている。
【0018】
筐体11は、箱型形状を呈し、ジャンクションボックス12及び複数の電池モジュール20を収容するための収容空間Sを有する。筐体11は、四角板状の底板11aと、底板11aと対向して設けられる天板11bと、底板11aの周縁から立設される四角板状の前板11c、後板11d及び一対の側板11eと、を有している。筐体11は、フォークリフト1に搭載された際に、底板11aが鉛直方向下方に位置し、天板11bが鉛直方向上方に位置するように配置される。図2には、一方の側板11eを除いた状態が図示されている。以下、筐体11において、天板11bが設けられる方向を「上」、底板11aが設けられる方向を「下」、前板11cが設けられる方向を「前」、後板11dが設けられる方向を「後」として説明を行う。
【0019】
ジャンクションボックス12は、収容空間Sにおいて、天板11bと前板11cとの成す角部に設けられている。ジャンクションボックス12には、複数の端子台(不図示)及びリレー(不図示)等が収容されている。端子台は、ケーブルの端子等が接続される複数の接続部(不図示)(以下、「端子接続部」と称する。)を含んでいる。
【0020】
複数の電池モジュール20の一部は、収容空間Sの後方において上下方向に配置され、第1電池列L1を成している。複数の電池モジュール20の一部は、収容空間Sの前方において上下方向に配置され、第2電池列L2を成している。本実施形態では、電池モジュール20の数は5つであり、第1電池列L1に含まれる電池モジュール20の数は3つであり、第2電池列L2に含まれる電池モジュール20の数は2つである。
【0021】
図2図6に示されるように、電池モジュール20は、本体部21と、第1ブラケット31(第1プレート)と、第2ブラケット32(第2プレート)と、弾性部材24と、拘束部27と、第1ケーブルC1と、第2ケーブルC2と、を備えている。なお、図3図6では、第1ケーブルC1及び第2ケーブルC2の図示が適宜省略されている。
【0022】
本体部21は、並設された複数の電池セル22を含んでいる。本実施形態では、本体部21は7つの電池セル22を含んでいる。電池セル22は、例えば、リチウムイオン電池またはニッケル水素蓄電池などの二次電池である。複数の電池セル22のそれぞれは、セルホルダ23に保持されている。
【0023】
セルホルダ23は、並設方向Dから見てU字状の枠体であり、当該U字の一端側を成す第1側部23aと、当該U字の他端側を成す第2側部23bと、第1側部23aと第2側部23bとを接続する底部(不図示)と、を有している。筐体11内において、第1側部23a及び第2側部23bは、一対の側板11eとそれぞれ対向し、底部は、底板11aと対向している。複数の第1側部23aは、全体で本体部21の第1側部21aを構成している。複数の第2側部23bは、全体で本体部21の第2側部21bを構成している。
【0024】
本体部21は、複数のセルホルダ23の上端開口を塞ぐように、複数のセルホルダ23に保持されるカバー29を含んでいる。カバー29は、複数の電池モジュール20が積層される場合において、下側に位置する電池モジュール20と、上側に位置する電池モジュール20との電気的絶縁を図る役割、及び異常時に電池セル22から吐出されるガスが上方に吹き出すことを阻止する機能を有している。カバー29には、電池モジュール20に関する各種制御を行う制御装置Eが載置されている。
【0025】
複数の電池セル22には、カバー29と対向する面において、第1側部21a側と第2側部21b側のそれぞれに一対の端子Tが突出して設けられている。一対の端子Tは、一方が正極端子であり、他方が負極端子である。複数の電池セル22は、隣り合う電池セル22同士で正極端子と負極端子とが隣り合うように配置されている。隣り合う正極端子と負極端子とは、バスバー(不図示)により接続されている。これにより、複数の電池セル22は、直列接続された状態とされている。
【0026】
本体部21は、第1モジュール端子MT1及び第2モジュール端子MT2を含んでいる。第1モジュール端子MT1は、カバー29に設けられ、第1ブラケット31側且つ本体部21の第1側部21a側に位置している。第2モジュール端子MT2は、カバー29に設けられ、第2ブラケット32側且つ本体部21の第1側部21a側に位置している。第1モジュール端子MT1は、複数の電池セル22における直列接続の両端部に相当する端子Tの一方と電気的に接続されている。第2モジュール端子MT2は、複数の電池セル22における直列接続の両端部に相当する端子Tの他方と電気的に接続されている。これにより、第1モジュール端子MT1及び第2モジュール端子MT2は、一方が電池モジュール20の正極端子として機能し、他方が電池モジュール20の負極端子として機能する。
【0027】
第1ブラケット31及び第2ブラケット32は、剛性の高い材料で構成され、例えば、鉄等の金属で構成されている。第1ブラケット31及び第2ブラケット32のそれぞれは、把持部33と、取付部37と、を有している。
【0028】
把持部33は、略矩形の平板である。把持部33には、並設方向Dに沿って延びる複数のボルト34が挿通されている。複数のボルト34のそれぞれは、第1ブラケット31の把持部33から、本体部21を経由して第2ブラケット32の把持部33まで延びている。複数のボルト34のそれぞれは、第2ブラケット32の把持部33側でナット35に螺合されて固定されている。
【0029】
これにより、第1ブラケット31及び第2ブラケット32は、本体部21を並設方向Dの両側で把持する。本実施形態では、4本のボルト34及び4つのナット35が用いられている。なお、複数のボルト34のそれぞれは、第2ブラケット32の把持部33から第1ブラケット31の把持部33まで延び、各ナット35は第1ブラケット31の把持部33側に設けられていてもよい。
【0030】
第1ブラケット31には、ブラケットクランプ39が設けられている。ブラケットクランプ39は、第1ケーブルC1または第2ケーブルC2を第1ブラケット31に固定する。ブラケットクランプ39は、第1ケーブルC1または第2ケーブルC2が振動により金属部品と干渉し、ケーブル被覆が剥がれる等するのを抑制するために設けられている。
【0031】
取付部37は、矩形状を呈する把持部33の一辺に立設する平板である。取付部37は、ボルト38により、筐体11に取り付けられている。これにより、第1ブラケット31及び第2ブラケット32は、筐体11に固定されている。本実施形態では、取付部37のそれぞれは、4つのボルト38により、筐体11の他方の側板11eに取り付けられている。なお、図4図6では、ボルト38の図示が省略されている。
【0032】
弾性部材24は、本体部21と第1ブラケット31との間に設けられている。弾性部材24は、ゴム及び樹脂系のスポンジなどの弾性変形可能な材料からなる。弾性部材24は、厚さ方向が並設方向Dと同一方向となるように設けられている。弾性部材24の厚さ、即ち並設方向Dでの長さtは、実験データから想定される電池セル22一つあたりの並設方向Dでの膨張量の最大値に、電池セル22の数を掛けた量として設定すればよく、例えば12〜25mm程度である。弾性部材24と本体部21との間には、固定プレート25が設けられている。一般に電池セル22は、電池セル22の使用期間が長くなるにつれて膨張するので、弾性部材24は、電池モジュール20において電池セル22の膨張を吸収する。
【0033】
拘束部27は、本体部21に設けられ、第1ケーブルC1または第2ケーブルC2を拘束する。拘束部27は、ブラケットクランプ39と同様に、第1ケーブルC1または第2ケーブルC2が振動により金属部品と干渉し、ケーブル被覆が剥がれる等するのを抑制するために設けられている。拘束部27は、複数のセルホルダクランプ26を有している。本実施形態では、拘束部27は、3つのセルホルダクランプ26を有している。複数のセルホルダクランプ26は、例えば、並設方向Dの一つおきの複数のセルホルダ23において第1側部23aに設けられている。
【0034】
セルホルダクランプ26は、並設方向Dから見てL字状の部材である。当該L字の一端は第1側部23aに接続し、且つ他端は上方を向いている。本実施形態では、セルホルダクランプ26は、第1側部23aと一体的に形成されている。セルホルダクランプ26は、本体部21の第1側部21aとの間に、第1ケーブルC1または第2ケーブルC2のケーブル径と略同一サイズの空間を有している。セルホルダクランプ26は、この空間内に配置される第1ケーブルC1または第2ケーブルC2を所定の拘束力により拘束し、第1ケーブルC1または第2ケーブルC2の拘束部材として機能する。なお、当該所定の拘束力は、各セルホルダクランプ26によりばらつく場合がある。
【0035】
第1ケーブルC1及び第2ケーブルC2のそれぞれは、例えば、フォークリフト1における各種機器に電力を供給するパワーラインとしての電力用のケーブル(ハーネス)、フォークリフト1における各種機器との通信をやり取りする通信ライン(例えば、CAN(Controller Area Network))としての通信用のケーブル、及びその他の用途のケーブル等である。本実施形態では、第1ケーブルC1及び第2ケーブルC2のそれぞれは、電力用のケーブルである。第1ケーブルC1は、第1モジュール端子MT1とジャンクションボックス12内の端子接続部とを接続している。第2ケーブルC2は、第2モジュール端子MT2とジャンクションボックス12内の端子接続部とを接続している。
【0036】
第1電池列L1に含まれる電池モジュール20において、第1ケーブルC1は、並設方向Dに沿って延び、第1側部21a上で拘束部27により拘束されている。第1ケーブルC1は、ブラケットクランプ39により第1ブラケット31に固定されている。第1ケーブルC1は、第2ブラケット32に沿って配置される部分C11において、変位可能に配置されている。即ち、当該部分C11において、第1ケーブルC1は、ブラケットクランプにより第2ブラケット32に固定されていない。このため、当該部分C11において、第1ケーブルC1の軸方向に直交する方向に変位可能な状態とされている。第1ケーブルC1において、端子接続部に接続される部分は、固定部分(不図示)に相当し、端子接続部が固定部に相当する。本実施形態では、当該固定部分は、第1ケーブルC1の端部である。
【0037】
拘束部27から端子接続部までの第1ケーブルC1の長さは、第1ケーブルC1を拘束部27から端子接続部まで最短で配置した場合の長さと、弾性部材24の並設方向Dでの長さtとの和よりも長い。第1ケーブルC1を拘束部27から端子接続部まで最短で配置した場合の長さは、第1ケーブルC1の剛性及び曲率により変化する。
【0038】
第2電池列L2に含まれる電池モジュール20において、第2ケーブルC2は、並設方向Dに沿って延び、第1側部21a上で拘束部27により拘束されている。図示されていないが、第2ケーブルC2は、ブラケットクランプにより第2ブラケット32に固定されている。第2ケーブルC2は、第2ブラケット32に沿って配置される部分C21において、変位可能に配置されている。即ち、当該部分C21において、第2ケーブルC2は、ブラケットクランプにより第1ブラケット31に固定されていない。このため、当該部分C21において、第2ケーブルC2の軸方向に直交する方向に変位可能な状態とされている。第2ケーブルC2において、第2モジュール端子MT2により接続される部分は、固定部分に相当し、第2モジュール端子MT2が固定部に相当する。本実施形態では、当該固定部分は、第2ケーブルC2の端部である。
【0039】
拘束部27から第2モジュール端子MT2までの第2ケーブルC2の長さは、第2ケーブルC2を拘束部27から第2モジュール端子MT2まで最短で配置した場合の長さと、弾性部材24の並設方向Dでの長さtとの和よりも長い。第2ケーブルC2を拘束部27から第2モジュール端子MT2まで最短で配置した場合の長さは、第2ケーブルC2の剛性及び曲率により変化する。
【0040】
以上のように構成された電池モジュール20では、本体部21は、並設方向Dの一端が第2ブラケット32に当接し、他端が弾性部材24を挟んで並設方向Dで第1ブラケット31と対向している。複数の電池セル22がそれぞれ並設方向Dに膨張すると、他端が並設方向Dに沿って第1ブラケット31に近づくように膨張する。これにより、本体部21が弾性部材24を圧縮して、拘束部27が並設方向Dに沿って第1ブラケット31側に移動する。
【0041】
第1電池列L1に含まれる電池モジュール20では、端子接続部、拘束部27及び弾性部材24は、第1ケーブルC1に沿って、その順に配置されている。したがって、拘束部27は、端子接続部から並設方向Dに遠ざかるように移動する。これにより、拘束部27は、第1ケーブルC1の拘束部27から端子接続部までの部分を、並設方向Dに沿って第1ブラケット31側に引っ張る。
【0042】
ここで、拘束部27から端子接続部までの第1ケーブルC1の長さは、第1ケーブルC1を拘束部27から端子接続部まで最短で配置した場合の長さと、弾性部材24の並設方向Dでの長さtとの和よりも長い。拘束部27は長さtよりも短い距離しか移動しないので、第1ケーブルC1は並設方向Dに沿って第1ブラケット31側に最大限引っ張られてもなお長さの余裕部分を有している。このため、第1電池列L1に含まれる電池モジュール20では、第1ケーブルC1に加わる引張応力を低減することができ、第1ケーブルC1の損傷を抑制することが可能となる。
【0043】
第2電池列L2に含まれる電池モジュール20では、第2モジュール端子MT2、拘束部27及び弾性部材24は、第2ケーブルC2に沿って、その順に配置されている。したがって、拘束部27は、第2モジュール端子MT2から並設方向Dに遠ざかるように移動する。これにより、拘束部27は、第2ケーブルC2の拘束部27から第2モジュール端子MT2までの部分を、並設方向Dに沿って第1ブラケット31側に引っ張る。
【0044】
ここで、拘束部27から第2モジュール端子MT2までの第2ケーブルC2の長さは、第2ケーブルC2を拘束部27から第2モジュール端子MT2まで最短で配置した場合の長さと、弾性部材24の並設方向Dでの長さtとの和よりも長い。拘束部27は長さtよりも短い距離しか移動しないので、第2ケーブルC2は並設方向Dに沿って第1ブラケット31側に最大限引っ張られてもなお長さの余裕部分を有している。このため、第2電池列L2に含まれる電池モジュール20では、第2ケーブルC2に加わる引張応力を低減することができ、第2ケーブルC2の損傷を抑制することが可能となる。
【0045】
第1電池列L1に含まれる電池モジュール20では、第1ケーブルC1は、第2ブラケット32に沿って配置される部分C11において、ブラケットクランプにより拘束されておらず、変位可能に配置されている。例えば、第1ケーブルC1がブラケットクランプにより第2ブラケット32に拘束されている場合、拘束部27と当該ブラケットクランプとの間に、上述のような長さの余裕部分を持たせる必要があるため、ケーブル配置の自由度が低くなる。これに対して、本実施形態によれば、上述のような長さの余裕部分を持たせる位置の自由度が高い。よって、ケーブル配置の自由度を高めることができる。
【0046】
第2電池列L2に含まれる電池モジュール20では、第2ケーブルC2は、第2ブラケット32に沿って配置される部分C21において、ブラケットクランプにより拘束されておらず、変位可能に配置されている。例えば、第2ケーブルC2がブラケットクランプにより第2ブラケット32に拘束されている場合、拘束部27と当該ブラケットクランプとの間に、上述のような長さの余裕部分を持たせる必要があるため、ケーブル配置の自由度が低くなる。これに対して、本実施形態によれば、上述のような長さの余裕部分を持たせる位置の自由度が高い。よって、ケーブル配置の自由度を高めることができる。
【0047】
電池パック10は、複数の電池モジュール20と、固定部として複数の端子接続部を有する端子台と、を備えている。この電池パック10では、複数の共通の電池モジュール20を備えるので、部品の共通化を図ることが可能となる。また、上述のように第1ケーブルC1及び第2ケーブルC2の損傷を抑制することが可能となる。更に、複数の端子接続部が一つの端子台にまとめられているので、使用性の向上が可能となる。
【0048】
なお、本発明に係る電池モジュール及び電池パックは上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態の電池パック10では、電池モジュール20の数が5つである例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、電池モジュール20の数が5つ以外であってもよい。また、第1電池列L1及び第2電池列L2にはそれぞれ1つ以上の電池モジュール20が含まれるが、いずれかの一方の電池列のみに電池モジュール20が含まれていてもよいし、更に異なる電池列に電池モジュール20が含まれていてもよい。
【0049】
電池パック10では、フォークリフト1を機台の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、自動車などに、本発明の電池パックを適用してもよい。
【0050】
拘束部27は、3つのセルホルダクランプ26により構成されるが、セルホルダクランプ26は1つ以上であればよい。また、拘束部27は、セルホルダ23の第1側部21aに限らず、例えば第2側部21b等に設けられてもよい。
【0051】
第1電池列L1に含まれる電池モジュール20では、第1ケーブルC1の固定部分は、拘束部27に対して、弾性部材24とは反対の方向に設けられた固定部によって固定されればよく、例えば、固定部分は、第1ケーブルC1の端部以外であってもよい。また、第2電池列L2に含まれる電池モジュール20では、第2ケーブルC2の固定部分は、拘束部27に対して、弾性部材24とは反対の方向に設けられた固定部によって固定されていればよく、例えば、固定部分は、第2ケーブルC2の端部以外であってもよい。
【0052】
端子台は、少なくとも1つの端子接続部を有していればよい。即ち、複数の第1ケーブルC1及び複数の第2ケーブルC2は、それぞれ異なる端子台において、端子接続部に接続されてもよい。
【0053】
図7は、変形例に係る電池モジュールの平面図である。図7では、図3と同様に第1電池列L1(図2参照)に含まれる電池モジュール20Aが例示されている。複数のセルホルダクランプ26のうち、第1ブラケット31側に配置されたセルホルダクランプを第1セルホルダクランプ261(第1拘束部材)と便宜上称し、第2ブラケット32側に配置されたセルホルダクランプを第2セルホルダクランプ262(第2拘束部材)と便宜上称する。本変形例は、第1電池列L1に含まれる電池モジュール20Aにおいて、第1ケーブルC1が第1セルホルダクランプ261に係止する係止部材28を有し、且つ第2電池列L2(図2参照)に含まれる電池モジュール20Aにおいて、第2ケーブルC2(図2参照)が第1セルホルダクランプ261に係止する係止部材28を有する点で、上記実施形態と相違し、その他の点で一致している。
【0054】
係止部材28は、第1セルホルダクランプ261を通り抜けできない形状を有し、第1セルホルダクランプ261に係止するように構成されている。係止部材28は、例えば、外径がケーブル径よりも大きいリング状の部材である。係止部材28は、例えば、第1ケーブルC1において、第1セルホルダクランプ261と弾性部材24との間であって、第1セルホルダクランプ261近傍に位置する部分に設けられている。
【0055】
第1電池列L1に含まれる電池モジュール20Aでは、電池セル22の膨張により、拘束部27が並設方向Dに沿って第1ブラケット31側に移動するのに伴い、第1セルホルダクランプ261が確実に第1ケーブルC1を並設方向Dに沿って第1ブラケット31側に引っ張る。ここで、セルホルダクランプ26の移動量は、第2ブラケット32とセルホルダクランプ26との間における複数の電池セル22の並設方向Dでの膨張量を積算したものとなる。
【0056】
第1セルホルダクランプ261は、その他のセルホルダクランプ26よりも弾性部材24側に配置されているので、第1セルホルダクランプ261の移動量は、その他のセルホルダクランプ26の移動量よりも大きい。したがって、第1セルホルダクランプ261によって、第1ケーブルC1が引っ張られることにより、第1ケーブルC1の有する長さの余裕部分を有効利用できる。このとき、第1セルホルダクランプ261以外のセルホルダクランプ26では、第1ケーブルC1が拘束力を超えて引っ張られるので、第1ケーブルC1はセルホルダクランプ26を通って移動する。この場合でも、第1ケーブルC1の有する長さの余裕部分は、第1セルホルダクランプ261の移動量よりも長いので、第1ケーブルC1が損傷する可能性を低減することができる。
【0057】
第2電池列L2に含まれる電池モジュール20Aでも同様に、第1セルホルダクランプ261が確実に第2ケーブルC2(図2参照)を並設方向Dに沿って第1ブラケット31側に引っ張るので、第2ケーブルC2が損傷する可能性を低減することができる。
【0058】
なお、係止部材28は、第1セルホルダクランプ261よりも弾性部材24側に設けられ、第1セルホルダクランプ261の弾性部材24側に係止するように構成されていればよく、例えば、突起状の部材であってもよい。また、係止部材28は、第1セルホルダクランプ261と第1モジュール端子MT1との間において、第1ケーブルC1または第2ケーブルC2の外周面に設けられた保護材であってもよい。保護材は、第1ケーブルC1または第2ケーブルC2が振動により金属部材と干渉し、ケーブル被覆が剥がれる等して損傷するのを抑制するために設けられる。第1セルホルダクランプ261及び第2セルホルダクランプ262間の第1ケーブルC1または第2ケーブルC2は、既に拘束部27により拘束され振動の影響を受け難い状態であるため、コスト面からも保護材は設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…電池パック、20…電池モジュール、21…本体部、22…電池セル、24…弾性部材、261…第1セルホルダクランプ(第1拘束部材)、262…第2セルホルダクランプ(第2拘束部材)、27…拘束部、28…係止部材、31…第1ブラケット(第1プレート)、32…第2ブラケット(第2プレート)、C1…第1ケーブル、C11…第1ブラケットに沿って配置される部分、C2…第2ケーブル、C21…第2ブラケットに沿って配置される部分、D…並設方向、MT2…第2モジュール端子(固定部)、t…弾性部材の並設方向での長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7