特許第6358061号(P6358061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358061
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】作物収穫作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 33/00 20060101AFI20180709BHJP
   A01D 27/00 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   A01D33/00
   A01D27/00
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-241622(P2014-241622)
(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2016-101130(P2016-101130A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】弓達 武志
(72)【発明者】
【氏名】松家 伸一
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−034247(JP,A)
【文献】 実開昭58−182636(JP,U)
【文献】 実開昭62−053628(JP,U)
【文献】 特許第3995035(JP,B2)
【文献】 特開平07−123829(JP,A)
【文献】 特開2001−161142(JP,A)
【文献】 特開2001−010711(JP,A)
【文献】 特開平06−303814(JP,A)
【文献】 特開平06−169620(JP,A)
【文献】 特開2012−205566(JP,A)
【文献】 米国特許第4360308(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00 − 33/14
A01D 45/00 − 45/30
B65G 21/00 − 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右側枠(8a,8b)で囲んだ荷台(5)を有する運搬車(1)の側部に、引抜搬送装置(13)を設けた引抜作業車(3)を並設し、引抜作業車(3)の引抜搬送装置(13)で引き抜いた根菜を引抜作業車(3)の後部から横送りする横搬送装置(4)を運搬車(1)と引抜作業車(3)に着脱可能に連結して、運搬車(1)と共に引抜作業車(3)を走行させる作物収穫作業機。
【請求項2】
横搬送装置(4)の横送り途中に茎葉切断刃(19)を設けた請求項1に記載の作物収穫作業機。
【請求項3】
横搬送装置(4)の運搬車(1)側の水平フレーム(15)と引抜作業車(3)側の傾斜フレーム(16)を枢支軸(17)で屈曲可能に連結すると共に、傾斜フレーム(16)を固定側傾斜フレーム(16b)と固定側傾斜フレーム(16b)に対して伸縮する可動側傾斜フレーム(16a)としたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の作物収穫作業機。
【請求項4】
横搬送装置(4)の水平フレーム(15)を昇降可能に運搬車(1)側へ支持したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作物収穫作業機。
【請求項5】
傾斜フレーム(16)の固定側傾斜フレーム(16b)と可動側傾斜フレーム(16a)をダンパ(22)で伸縮可能に連結したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作物収穫作業機。
【請求項6】
引抜作業車(3)の引抜搬送装置(13)の終端下部に横搬送装置(4)の始端を位置し、根菜類を引抜搬送装置(13)から引き継いで横搬送装置(4)に移載する軟質の引継ガイド(23)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作物収穫作業機。
【請求項7】
横搬送装置(4)の始端側で引抜作業車(3)に補助椅子(14)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の作物収穫作業機。
【請求項8】
横搬送装置(4)の搬送ベルト(18)に根菜類を挟み込む突条(18c)を設け、引継ガイド(23)で根菜類を各突条(18c)間に誘導することを特徴とする請求項6に記載の作物収穫作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大根や株や生姜や金時ニンジン等の根菜類を収穫する作物収穫作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場に植生する根菜類を収穫する作物収穫作業機が下記の特許文献1と特許文献2に記載されている。
特許文献1には、収穫した大根を搬送する搬送コンベアと、搬送途中に大根の茎葉部を切断除去する茎葉除去装置を備えた自走式の収穫補助作業機が開示されている。
【0003】
これにより、作業者は圃場から掘り取った大根を搬送コンベアに載置すれば、大根は搬送途中で茎葉部を除去されて、収穫補助作業機に設ける収容コンテナに投入されるので、大根の収穫作業が容易になり、作業者が大根の茎葉部を手作業で除去する必要がなくなって、省力化が図られる。
【0004】
特許文献2には、圃場に植生する大根の茎葉部を挟持して引き抜き、その大根を圃場の引き抜き跡に落下放置することで、作業者が力を要する引き抜き作業を行わなくてよい引抜補助作業機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−56057号公報
【特許文献2】特許第5045530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の自走式収穫補助作業機は、自走式の走行車体上に設置され、伝動機構や油圧回路が接続された一体構成であるので、大根等根菜類作物の収穫作業のみに使用され、他の農作業では使用できない。
【0007】
特許文献2の引抜補助作業機では、作業者が圃場から大根を引き抜く重作業が不要になるが、引抜作業後に前記特許文献1に記載の収穫補助作業機を走行させて搬送コンベアに手作業で大根を積み込む必要があり、十分な省力化に繋がらない問題がある。
【0008】
また、大根の引抜作業と収穫補助作業機への移動を同時に行うときは、最低でも両方の作業機を操作する人員と大根を回収して運ぶ人員が必要になると共に、引抜作業機と収穫補助作業機の移動速度を調節する必要があり、作業が煩雑になる問題がある。
【0009】
本発明は、根菜類の引き抜きと収穫運搬作業を少人数で行えると共に、根菜類の運搬だけでなく一般的な農作業における運搬作業にも使える作物収穫作業機とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、左右側枠(8a,8b)で囲んだ荷台(5)を有する運搬車(1)の側部に、引抜搬送装置(13)を設けた引抜作業車(3)を並設し、引抜作業車(3)の引抜搬送装置(13)で引き抜いた根菜を引抜作業車(3)の後部から横送りする横搬送装置(4)を運搬車(1)と引抜作業車(3)に着脱可能に連結して、運搬車(1)と共に引抜作業車(3)を走行させる作物収穫作業機とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、横搬送装置(4)の横送り途中に茎葉切断刃(19)を設けた請求項1に記載の作物収穫作業機とする。
請求項3に記載の発明は、横搬送装置(4)の運搬車(1)側の水平フレーム(15)と引抜作業車(3)側の傾斜フレーム(16)を枢支軸(17)で屈曲可能に連結すると共に、傾斜フレーム(16)を固定側傾斜フレーム(16b)と固定側傾斜フレーム(16b)に対して伸縮する可動側傾斜フレーム(16a)としたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の作物収穫作業機とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、横搬送装置(4)の水平フレーム(15)を昇降可能に運搬車(1)側へ支持したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作物収穫作業機とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、傾斜フレーム(16)の固定側傾斜フレーム(16b)と可動側傾斜フレーム(16a)をダンパ(22)で伸縮可能に連結したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作物収穫作業機とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、引抜作業車(3)の引抜搬送装置(13)の終端下部に横搬送装置(4)の始端を位置し、根菜類を引抜搬送装置(13)から引き継いで横搬送装置(4)に移載する軟質の引継ガイド(23)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作物収穫作業機とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、横搬送装置(4)の始端側で引抜作業車(3)に補助椅子(14)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の作物収穫作業機とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、横搬送装置(4)の搬送ベルト(18)に根菜類を挟み込む突条(18c)を設け、引継ガイド(23)で根菜類を各突条(18c)間に誘導することを特徴とする請求項6に記載の作物収穫作業機とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明で、広い圃場での根菜類の収穫時には、引抜作業車(3)の引抜搬送装置(13)で引き抜いた根菜類を横搬送装置(4)で運搬車(1)の荷台(5)に積み込み、掘り取りと運搬の作業を同時に行えて効率的収穫作業が行える。
【0018】
また、狭い圃場では、引抜作業車(3)を単独で使用することで、根菜の掘り取りを人手に頼らずに行え、収穫作業を行わない場合は、運搬車(1)を単独で使用して農産物の運搬作業に使える。
【0019】
これにより、作物収穫作業機を広い圃場や狭い圃場で幅広く使え、作物収穫作業機を構成する運搬車(1)が運搬用としてオールシーズン使用出来る。
請求項2に記載の発明で、請求項1の効果に加えて、根菜類が横搬送装置(4)で送られる途中に茎葉切断刃(19)で不要の茎葉が切り落とされるために、運搬車(1)に乗せられる根菜類が多くなって、効率的な収穫作業となる。
【0020】
請求項3に記載の発明で、請求項1または請求項2の効果に加えて、横搬送装置(4)で引抜作業車(3)側から送られる根菜類が運搬車(1)側の水平フレーム(15)で高く持ち上げられず、水平搬送される間に補助作業者が根菜類を選別することも可能で、運搬車(1)と引抜作業車(3)の間隔が変動しても傾斜フレーム(16)の可動側傾斜フレーム(16a)が固定側傾斜フレーム(16b)に対して伸縮して横搬送装置(4)に無理な捩りや引張り力が加わって破損することが防止される。
【0021】
請求項4に記載の発明で、請求項1から請求項3のいずれか1項の効果に加えて、運搬車(1)に対して引抜作業車(3)が大きく昇降しても水平フレーム(15)が運搬車(1)に対して昇降することで横搬送装置(4)に加わる負荷を逃がして破損することが防止される。
【0022】
請求項5に記載の発明で、請求項1から請求項4の効果に加えて、運搬車(1)と引抜作業車(3)の位置変動に伴う振動をダンパ(22)で少なくして、搬送中の根菜類が跳ねて圃場に落下することを防止できる。
【0023】
請求項6に記載の発明で、請求項1から請求項5のいずれか1項の効果に加えて、引抜搬送装置(13)から横搬送装置(4)へ軟質の引継ガイド(23)で根菜類が損傷しないように移載される。
【0024】
請求項7に記載の発明で、請求項1から請求項6のいずれか1項の効果に加えて、補助椅子(14)に座る補助作業者が引抜搬送装置(13)から横搬送装置(4)への根菜類の引継状況の監視と姿勢修正や根菜そのもののでき具合を観察して選別する等の作業を行える。
【0025】
請求項8に記載の発明で、請求項6の効果に加えて、横搬送装置(4)で搬送される根菜類が突条(18c)で挟まれて滑り落ちることなく、整然と運搬車(1)側へ搬送される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】作物収穫作業機の平面図である。
図2】作物収穫作業機の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の作物収穫作業機の実施形態として、図面に示す大根収穫機の実施例を説明する。なお、本明細書において大根収穫機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後という。
【0028】
大根収穫機は、前輪(図示省略)と後輪2の四輪で走行する運搬車1とこの運搬車1の側部に設ける引抜作業車3と、引抜作業車3後部から運搬車1の荷台5に亘って取り外し可能に取り付ける横搬送装置4で構成している。
【0029】
運搬車1は、機体の前部に座席6と操縦ハンドル7を設け、作業車が座って操縦操作を行うようにしている。機体後部の荷台5は、平坦な積載面9を有し、積載面9の左右に左右側枠8a,8bを後側に後枠8cを立設している。
【0030】
引抜作業車3は、左右後輪11,11を設けた機体後部の機台10から前方に延設した引抜搬送装置13を設け、引抜搬送装置13の前端側部で前記後輪11の前方位置にゲージ輪12を弾性的に設けている。このゲージ輪12は、使用しない場合には引抜搬送装置13の下部に折り畳み収納するようにする。
【0031】
引抜搬送装置13は、前後方向に張設した左右挟持搬送ベルト13a,13bで大根の茎葉を挟持して後方へ送り揚げながら大根を圃場から引き抜く作用をする。なお、図示を省略するが、引抜搬送装置13の前側には、大根の茎葉を挟持位置に誘導するために軟質材で茎葉ガイドを設ける。
【0032】
また、機台10には、補助椅子14を水平回動可能に設け、補助作業者が座って引抜搬送装置13から横搬送装置4に移される大根を調整する作業を行えるようにしている。
横搬送装置4は、荷台5の左側枠8aに上下伸縮する支持脚21で着脱可能に取り付ける水平フレーム15と、この水平フレーム15に枢支軸17で枢支して引抜作業車3の機台10上で引抜搬送装置13の終端下部に上下動可能に取り付けた傾斜フレーム16で構成し、前後方向の突条18cを等間隔で設ける搬送ベルト18を運搬車1側の駆動ローラ18bと引抜作業車3側の従動ローラ18aに巻き掛けて、水平フレーム15側に設けるモータ20で搬送ベルト18の上側が荷台5に向けて移動するように駆動するようにしている。
【0033】
傾斜フレーム16は、固定側傾斜フレーム16bと可動側傾斜フレーム16aをダンパ22で伸縮するようにして、運搬車1と引抜作業車3の間隔変動に伴って可動側傾斜フレーム16aが伸縮するようにしている。
【0034】
また、引抜搬送装置13の終端下部には、大根を受けて搬送ベルト18の突条18c間に横たえる軟質の引継ガイド23を設けている。
また、横搬送装置4の後側で左右中間部には、上下で対抗して回転する円盤回転刃19を設けて、搬送ベルト18で横送りされる大根の茎葉を圃場へ切り落とすようにしている。
【0035】
大根の収穫作業時には、運搬車1と引抜作業車3と横搬送装置4を一体的に組み付けて、引抜搬送装置13を大根の植付条に合わせて運搬車1を走行する。すると、引抜搬送装置13で大根の茎葉が挟持されて走行に伴って引き抜かれて引抜搬送装置13から引継ガイド23で搬送ベルト18上に横たえられて搬送ベルト18の送り作用で運搬車1側に送られ、途中の円盤回転刃19で茎葉が切り落とされる。横搬送装置4の終端部に送られた大根は、積載面9に搭乗する補助作業員が受け取って、荷台5の積載面9に並べて積載する。
【0036】
圃場が狭い場合には、引抜作業車3を横搬送装置4から取り外して、引抜作業車3に操縦ハンドルを取り付け、大根の引き抜き作業に使用する。
また、運搬車1は、横搬送装置4と引抜作業車3を取り外すことで、通常の運搬作業に使用出来るようになる。
【符号の説明】
【0037】
1 運搬車
3 引抜作業車
4 横搬送装置
5 荷台
8a 左側枠
8b 右側枠
13 引抜搬送装置
15 水平フレーム
16a 可動側傾斜フレーム
16b 固定側傾斜フレーム
18 搬送ベルト
18c 突条
19 茎葉切断刃
22 ダンパ
23 引継ガイド
図1
図2