(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステータコアのスロットにステータコイルが挿入される際に前記ステータコアに対して軸方向に隣接して配置され、前記スロットに装着される、軸方向端部において折り曲げられたカフス部を有するスロット紙を保護するサポータ治具を備えるステータ組立装置であって、
前記サポータ治具は、前記ステータコア側の軸方向端部に前記スロットの壁面と面を同じくする端面が設けられる下段部と、前記ステータコア側とは反対側の軸方向端部に前記スロットに前記ステータコイルが挿入される際に該ステータコイルを周方向でガイドする上段部と、を有し、
前記下段部は前記上段部に対して周方向に突出しており、該上段部と該下段部とにより前記カフス部が収容される収容部が設けられるように段差が形成されていることを特徴とするステータ組立装置。
前記サポータ治具は、前記ステータコアのティースごとに前記ティースに対して軸方向に隣接して配置される、外径側から内径側にかけて先細り状に形成される棒状部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のステータ組立装置。
前記サポータ治具は、内径側端部に設けられた軸方向に向けて空いた開口と、周方向において前記開口を挟んで二股に分かれた脚部と、を有することを特徴とする請求項1又は2記載のステータ組立装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明に係るステータ組立装置及びステータ組立方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例であるステータ組立装置及びステータ組立方法を用いて組み立てが完了したステータの斜視図を示す。
図2は、本実施例においてステータコイルをステータコアのスロットに挿入する状況を表した図を示す。尚、
図2(A)にはステータを軸方向側から見た図を、また、
図2(B)にはステータの斜視図を、それぞれ示す。また、
図2(A)及び
図2(B)には、説明の便宜や理解の容易さの観点から、ステータコアを一部分カットした状況を示し、かつ、ステータコイルを構成する一つのカセットコイルをスロットに挿入する状況を示す。更に、
図3は、本実施例においてステータコアのスロットに挿入されるスロット紙の構成図を示す。尚、
図3(A)には斜視図を、
図3(B)には軸方向側から見た図を、
図3(C)には軸中心側から見た図を、また、
図3(D)には周方向側から見た図を、それぞれ示す。
【0013】
本実施例のステータ組立装置10は、例えば三相交流モータなどの回転電機に用いられる固定子であるステータ12を組み立てる装置である。ステータ12は、回転子であるロータに対して径方向外側に所定のエアギャップを介して配置され、通電によってロータを回転させる磁界を発生する部材である。ステータ12は、ステータコア14と、ステータコイル16と、を備えている。
【0014】
ステータコア14は、中空円筒状に形成された部材である。ステータコア14の内径側には、ロータを収容するための空間(内径側空間)18が形成されている。尚、ステータコア14は、絶縁コーティングされた複数の電磁鋼板を軸方向に積層して形成されていてもよい。また、ステータコア14の径方向外側端面には、絶縁コーティングされた軟磁性体粉末を圧縮成型した材料で形成された円筒状のヨークが取り付けられていてもよい。
【0015】
ステータコア14は、円環状に形成されるバックヨーク20と、バックヨーク20の径方向内側端面から径方向内側(軸中心側)へ向けて延びるティース22と、を有している。ティース22は、バックヨーク20に対して周方向に複数(例えば、48個)設けられており、周方向に沿って等間隔で設けられている。周方向に隣接する2つのティース22の間には、ステータコイル16が保持されるスロット24が形成されている。
【0016】
ステータコア14には、ステータ12をモータケースに取り付け固定するための耳部26が設けられている。耳部26は、ステータコア14本体(具体的には、バックヨーク20)の径方向外側端面(外周面)から径方向外側へ向けて突出した山型形状に形成されている。耳部26は、周方向に離れて複数箇所(例えば3箇所)設けられている。尚、耳部26は、ステータ12の組み付け時に治具を用いてステータコア14を固定するために用いられてもよい。各耳部26には、軸方向に貫通する貫通穴28が設けられている。ステータ12は、耳部26の貫通穴28を貫通するボルトがモータケースを介してナット締結されることによりモータケースに固定される。
【0017】
また、ステータコイル16は、断面が矩形状(具体的には、長方形)に形成された平角導線により構成されている。この平角導線は、導電性の高い例えば銅やアルミニウム等の金属により構成されている。尚、この平角導線の断面角部は、R加工されていてもよい。また、ステータコイル16は、平角導線に代えて、断面が円形状に形成された導線により構成されることとしてもよい。ステータコイル16は、ステータコア14に対して周方向に複数(例えば、48個)配設される。
【0018】
各ステータコイル16はそれぞれ、所定複数周(例えば5周)巻回された平角導線が曲げ加工されることにより成形される同芯巻きコイル(カセットコイル)である。以下、各ステータコイル16を同芯巻きコイル16と称す。各同芯巻きコイル16はそれぞれ、一本の直線状の平角導線が巻線形成装置により楕円形状に形成されつつ所定複数周巻回された後に成形装置により略六角形状又は略八角形状に曲げ加工されることにより成形される。
【0019】
各同芯巻きコイル16は、スロット収容部30,32と、コイルエンド部34,36と、を有している。スロット収容部30,32はそれぞれ、ステータコア14のスロット24内に収容される、そのスロット24を軸方向に貫くように略直線状に延びる部位である。スロット収容部30とスロット収容部32とは、ステータコア14の周方向に所定距離離れた互いに異なるスロット24に収容される。コイルエンド部34,36はそれぞれ、ステータコア14の軸方向端部から軸方向外側に飛び出た、周方向に離れた2つのスロット収容部30,32同士を繋ぐように湾曲する部位である。
【0020】
同芯巻きコイル16は、平角導線の断面短辺方向に複数本の平角導線が積層されるように構成されていると共に、積層方向に隣り合う平角導線間に所定の隙間が形成されるように構成されている。同芯巻きコイル16は、2つのスロット収容部30,32の離間距離(間隔)が積層方向位置に応じて変化するように断面台形状に形成されている。この断面台形状の形成は、同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32をそれぞれ適切にスロット24に収容するために行われるものである。同芯巻きコイル16は、平角導線の積層方向がステータコア14の軸方向に直交する径方向に一致するようにステータコア14に組み付けられる。
【0021】
尚、同芯巻きコイル16のコイルエンド部34,36はそれぞれ、複数の相異なる非直線形状に形成されてもよい。具体的には、コイルエンド部34,36はそれぞれ、3種類の非直線形状に形成されるものであって、ステータコア14の径方向に向けて階段状に屈曲するクランク状にクランク成形され、円環状のステータコア14の円弧に合わせて湾曲する円弧状に円弧成形されると共に、平角導線の断面長手方向に屈曲する屈曲状にエッジワイズ成形されてもよい。クランク成形は、平角導線の積層方向への導線間のレーンチェンジのために行われる曲げ加工である。円弧成形は、同芯巻きコイル16をスロット24内に効率的に収容するために行われる曲げ加工である。また、エッジワイズ成形は、複数の同芯巻きコイル16を効率的に配置するために行われる曲げ加工である。
【0022】
同芯巻きコイル16は、周方向に複数配置されることにより円環籠状のコイルアッセンブリ40を構成する。コイルアッセンブリ40は、複数の同芯巻きコイル16が周方向に並んで円環状に配置されることにより円環籠状に形成される。このコイルアッセンブリ40の形成は、以下の(A)〜(C)に示す内容が実現されるように行われる。
【0023】
(A)複数の同芯巻きコイル16は、収容されるスロット24を周方向に一つずつずらしながら配置される。(B)互いに周方向に隣接して配置される2つの同芯巻きコイル16同士は、各段の平角導線が積層方向(すなわち、径方向)に交互に重なるように組み付けられる。(C)互いに周方向に所定距離離れて配置される同相の2つの同芯巻きコイル16同士は、スロット収容部30,32の各段の平角導線が同じスロット24において積層方向(すなわち径方向)に交互に並ぶように組み付けられる。上記(B)に示す組み付けが行われると、コイルアッセンブリ40の、互いに周方向に隣接して配置される2つの同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32の間に、ステータコア14のティース22が挿入配置されるティース穴が形成される。
【0024】
尚、各同芯巻きコイル16はそれぞれ、ステータ12が例えば三相交流モータに適用される場合は、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルの何れかを構成する。例えば、コイルアッセンブリ40は、同芯巻きコイル16であるU相コイル、V相コイル、及びW相コイルの同相のコイルが2個ずつ周方向に並んで配置されることにより、周方向に並んだ6つの同芯巻きコイル16で一極が形成されるように構成される。
【0025】
ステータ12は、また、ステータコア14と各同芯巻きコイル16との電気的絶縁性を確保するためのスロット紙44を備えている。スロット紙44は、ステータコア14のスロット24の形状に合致した形状を有し、スロット24ごとに装着可能に断面コの字状に形成されている。スロット紙44は、紙により構成された薄膜状に形成される部材である。スロット紙44は、スロット24ごとに装着され、ステータコア14と同芯巻きコイル16との間に介在される。
【0026】
スロット紙44は、ステータコア14の軸方向端面から軸方向外部へ突出するように形成されている。すなわち、スロット紙44は、スロット24の大きさに比して大きな軸方向長さを有するように形成されている。スロット紙44は、ステータコア14のスロット24に、ステータコア14の内径側空間18側から外径側へ向けて挿入されることにより装着される。尚、スロット紙44は、ステータコア14のスロット24に、軸方向に挿入されることにより装着されることとしてもよい。
【0027】
スロット紙44は、軸方向両側それぞれの端部において外側に折り曲げられたカフス部46を有している。カフス部46は、ステータコア14の軸方向端面から軸方向外側に突出した位置に配置される。カフス部46は、スロット紙44がスロット24から軸方向にずれるのを防止する機能を有する。スロット紙44は、軸方向両側に存在するカフス部46の軸方向内側の先端同士を結ぶ線分の軸方向距離がステータコア14の軸方向端面間の長さに比して大きくなるように形成されている。
【0028】
次に、
図4〜
図7を参照して、本実施例のステータ組立装置10及びステータ組立方法によるステータ12の組み立て手順について説明する。
【0029】
図4は、本実施例のステータ組立装置10が備えるサポータ治具の構成図を示す。
図5は、本実施例のステータ組立装置10が備えるサポータ治具を用いて同芯巻きコイル16をステータコア14のスロット24に挿入した状況を表した図を示す。尚、
図5(A)にはステータの斜視図を、
図5(B)にはステータを軸方向側から見た図を、
図5(C)にはステータを軸中心側から見た図を、また、
図5(D)には
図5(C)に示す破線で囲んだ部分のステータの要部拡大図を、それぞれ示す。また、
図5(A)〜
図5(D)には、説明の便宜や理解の容易さの観点から、ステータコアを一部分カットした状況を示し、かつ、ステータコイルを構成する一つのカセットコイルをスロットに挿入する状況を示す。
図6は、本実施例のステータ組立装置10が備えるサポータ治具とステータコア14と同芯巻きコイル16との位置関係を表した断面図を示す。尚、
図6(A)にはステータを軸に直交する方向に沿って切断した際の図を、
図6(B)にはステータを軸に平行な方向に沿って切断した際の図を、また、
図6(C)には
図6(B)に示すステータの要部拡大図を、それぞれ示す。また、
図7は、本実施例のステータ組立装置10及びステータ組立方法を用いてステータ12を組み立てる際の工程を表した図を示す。
【0030】
本実施例において、ステータ組立装置10は、サポータ治具50を備えている。サポータ治具50は、ステータ12の組み立て(具体的には、ステータコア14のスロット24への同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32の挿入)に必要なガイド治具であって、その組み立て時に同芯巻きコイル16とスロット紙44とを保護する。サポータ治具50は、ステータコア14のティース22ごとすなわちコイルアッセンブリ40のティース穴ごとに対応して設けられ、ステータコア14に対してすなわち一コイルアッセンブリ40に対して複数取り付けられる。サポータ治具50は、スロット24にスロット収容部30,32が挿入される際にステータコア14に対して軸方向外側に隣接して配置される。サポータ治具50は、軸方向両側それぞれに設けられる。
【0031】
尚、コイルアッセンブリ40は、各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がステータコア14の各スロット24へ挿入される前は、挿入された後に比べて、各同芯巻きコイル16の2つのスロット収容部30,32の離間距離(周方向における間隔)が小さいことにより、軸方向長さ(具体的には、コイルエンド部34の軸方向先端からコイルエンド部36の軸方向先端までの距離)が大きくかつ外径が小さくなる(具体的には、外径がステータコア14のティース22の内径に比して僅かに小さくなる)ように構成される。以下、便宜的に、スロット収容部30,32がスロット24へ挿入される前のコイルアッセンブリ40を初期コイルアッセンブリ40と称す。
【0032】
サポータ治具50は、径方向に向けて延び、内径側先端が尖った楔状に形成されている。すなわち、サポータ治具50は、外径側から内径側にかけて周方向幅が小さくなるように先細り状に形成されている。サポータ治具50は、ステータコア14のバックヨーク20に対して軸方向外側に隣接して対向する本体部52と、ステータコア14のティース22に対して軸方向外側に隣接して対向する棒状部54と、を有している。サポータ治具50は、径方向内側においてステータコア14のスロット24に対応して切り欠かれた切欠部56,58を有している。
【0033】
棒状部54は、各径方向位置それぞれにおける幅(すなわち、周方向幅)がティース22の同じ径方向位置における幅と略一致するように形成されている。棒状部54は、本体部52の内径側端部に接続されている。棒状部54は、断面山型に形成されている。尚、本体部52は、バックヨーク20の径方向幅に比して大きな径方向幅を有するものとしてもよい。切欠部56と切欠部58とは、棒状部54に対して周方向にその棒状部54を挟んで設けられる。また、各サポータ治具50の切欠部56,58は、同芯巻きコイル16がスロット24へ挿入される時に周方向に隣接する他のサポータ治具50の切欠部58,56に連通すると共に、ステータコア14のスロット24に連通する。
【0034】
互いに周方向に隣接して配置される2つのサポータ治具50が周方向に並ぶと、一方のサポータ治具50の切欠部56と他方のサポータ治具50の切欠部58とは、同芯巻きコイル16のスロット24への挿入時にその同芯巻きコイル16をガイドする穴を形成する。サポータ治具50は、同芯巻きコイル16のスロット24への挿入時において、その同芯巻きコイル16を周方向でガイドしかつその同芯巻きコイル16がその挿入に合わせて変形するのを補助する機能を有すると共に、上記のスロット紙44がティース22に対して軸方向に抜けるのを防止する機能を有する。
【0035】
サポータ治具50は、切欠部56,58に臨む部位において段差60を有している。すなわち、サポータ治具50において、本体部52の内径側端部の、棒状部54と接続する部位を挟んだ周方向両側、及び、棒状部54の周方向端部には、段差60が形成されている。段差60は、各部位における軸方向厚さが同じになるように形成されている。段差60は、スロット紙44のカフス部46を収容する収容部として機能する。
【0036】
段差60は、本体部52の内径側端部を構成する段差60aと、棒状部54を構成する段差60bと、からなる。段差60aは、上段部52aと、その上段部52aに対して内径側に突出する下段部52bと、により形成される。また、段差60bは、上段部54aと、その上段部54aに対して周方向両側の外側それぞれに突出する下段部54bと、により形成される。上段部54aと下段部54bとは、周方向幅が互いに異なるように形成される。
【0037】
棒状部54の上段部54aは、断面山型に形成されており、具体的には、下段部54b側(すなわち、ステータコア14側)において周方向幅が比較的大きく、下段部54b側から反対側(すなわち、軸方向外側)にかけて周方向幅が徐々に小さくなるように形成されている。棒状部54の下段部54bの上端角部は、面取りされており、ステータコア14の端面角部よりも滑らかな形状を有するように形成されている。
【0038】
本体部52の段差60aにおいて、下段部52bが上段部52aに対して内径側に突出する長さ(幅)は、少なくともスロット紙44の紙厚に設定されており、その紙厚以上に設定されている。本体部52の下段部52bは、サポータ治具50がステータコア14に対して軸方向外側に隣接して対向配置された際に、ステータコア14のスロット24の底壁として形成される軸中心に向いた軸方向端面と面を同じくする軸方向端面を有する。すなわち、サポータ治具50の本体部52は、下段部52bの軸方向端面がスロット24の底壁としての軸方向端面と共通の面を形成するように構成されている。
【0039】
また、棒状部54の段差60bにおいて、下段部54bが上段部54aに対して周方向外側に突出する長さ(幅)は、少なくともスロット紙44の紙厚に設定されており、その紙厚以上に設定されている。棒状部54の下段部54bは、ステータコア14のティース22の周方向幅と同じ周方向幅を有している。すなわち、下段部54bは、サポータ治具50がステータコア14に対して軸方向外側に隣接して対向配置された際に、ステータコア14のティース22の側面(すなわち、スロット24の側壁)として形成される周方向に向いた周方向端面と面を同じくする周方向端面を有する。すなわち、サポータ治具50の棒状部54は、下段部54bの周方向端面がスロット24の側壁としての周方向端面と共通の面を形成するように構成されている。
【0040】
ステータコア14とスロット紙44とサポータ治具50とは、ステータコア14の軸方向端面間の長さt1と、一サポータ治具50当たりの下段部52b,54bの軸方向厚さt2と、スロット紙44の軸方向両側のカフス部46の軸方向内側の先端同士を結ぶ線分の軸方向距離t3と、が次式(1)又は(2)の関係を満たすように形成されている。
【0041】
t1+2・t2<t3 ・・・(1)
t1+2・t2=t3 ・・・(2)
【0042】
尚、ステータコア14とスロット紙44とサポータ治具50とは、スロット紙44の軸方向両側にあるカフス部46の折り曲げ位置同士の軸方向距離(すなわち、カフス部46が形成された後のスロット紙44の軸方向端間の長さ)が、ステータコア14に対して軸方向両側に取り付けられたサポータ治具50の軸方向外側の頂点間の軸方向距離以下となるように形成されている。また、スロット紙44は、スロット24への同芯巻きコイル16の挿入後に同芯巻きコイル16とステータコア14との間に絶縁に必要な沿面距離が確保される形状を有する。更に、サポータ治具50は、上段部52a,54aの軸方向長さがカフス部46の軸方向長さよりも大きくなるように形成されている。
【0043】
本実施例のステータ組立装置10においては、中空円筒状のステータコア14に同芯巻きコイル16を挿入するうえで、まず、ステータコア14の各スロット24にスロット紙44を装着する(
図7(A)及び(B))。このスロット紙44のスロット24への装着は、スロット紙44がスロット24にステータコア14の内径側空間18側から外径側へ向けて挿入されることにより行われる。
【0044】
次に、スロット紙44が装着されたステータコア14にサポータ治具50を取り付ける(
図7(C)及び(D))。このサポータ治具50のステータコア14への取り付けは、複数のサポータ治具50がそれぞれステータコア14に対して外径側から内径側へ向けて挿入されることにより行われ、かつ、各サポータ治具50の棒状部54がステータコア14の軸方向両側において対応のティース22に対して軸方向外側に隣接して対向するように行われる。
【0045】
そして次に、スロット紙44が装着されかつサポータ治具50が取り付けられたステータコア14の内径側空間18に、複数の同芯巻きコイル16が円環状に配置された円環籠状の初期コイルアッセンブリ40を配置する。尚、上記の如く、初期コイルアッセンブリ40は、その外径がステータコア14のティース22の内径に対して小さくなるように構成されているため、ステータコア14の内径側空間18への挿入は可能である。
【0046】
上記の如く初期コイルアッセンブリ40の、ステータコア14の内径側空間への配置が行われると、それらの初期コイルアッセンブリ40とステータコア14とは、互いに周方向で位置決めされる。この位置決めは、各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がステータコア14のスロット24及びサポータ治具50の切欠部56,58に対してその内径側に隣接して対向するように行われる。
【0047】
次に、初期コイルアッセンブリ40の各同芯巻きコイル16を外径側へ押圧して、各同芯巻きコイル16をサポータ治具50でガイドしつつスロット収容部30,32をスロット24及び切欠部56,58に挿入して、同芯巻きコイル16をステータコア14に組み付ける(
図7(F))。この挿入・組み付けの過程において、各同芯巻きコイル16は、コイルエンド部34の軸方向先端とコイルエンド部36の軸方向先端との軸方向距離が徐々に小さくなり、かつ、スロット収容部30とスロット収容部32との離間距離(周方向における間隔)が徐々に拡大されるように変形する(
図2や
図5参照)。
【0048】
尚、上記の挿入・組み付けは、ステータコア14の各スロット24への同芯巻きコイル16の挿入に必要な押圧力を発生する押出装置を用いて行われるものとすればよく、例えば、保持台に保持されているサポータ治具50付きのステータコア14とコイルアッセンブリ40とを軸回りに回転させつつ、押出装置が備えるローラを径方向外側へ移動させてコイルアッセンブリ40の同芯巻きコイル16のコイルエンド部34,36を内径側から外径側へ放射状に押し出すことにより実現されるものとしてもよい。また、コイルエンド部34,36を内径側から外径側へ押し出すことに代えて、スロット収容部30,32を直接に内径側から外径側へ放射状に押圧することで、そのスロット収容部30,32をステータコア14のスロット24に挿入することとしてもよい。
【0049】
コイルアッセンブリ40のすべての同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32がスロット24に挿入されてすべての同芯巻きコイル16の組み付けが完了すると、その後、サポータ治具50がステータコア14から取り外される(
図7(G))と共に、同芯巻きコイル16に対してワニスが滴下されて同芯巻きコイル16が固化される。
【0050】
かかるステータ組立手法によれば、周方向に所定距離離れて配置される2つの同芯巻きコイル16同士の組み付けがスロット収容部30,32の平角導線が同じスロット24において径方向に交互に並ぶように行われると共に、所定複数の同芯巻きコイル16が円環状に配置されるコイルアッセンブリ40を形成した後、そのコイルアッセンブリ40を構成する各同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32を、各スロット24にサポータ治具50が装着された円環状のステータコア14のスロット24へ挿入することにより、コイルアッセンブリ40をステータコア14に組み付けることができる。
【0051】
また、本実施例のステータ組立装置10によるステータ組立手法においては、円環籠状のコイルアッセンブリ40が円環状のステータコア14に組み付けられる際、各同芯巻きコイル16がサポータ治具50により支持されながら変形する。このため、サポータ治具50の存在により、ステータコア14のスロット24に同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32が挿入される際に、その同芯巻きコイル16とステータコア14のティース22とが接触して傷が付き或いは破損が生じるのを防止することができると共に、また、ステータコア14のスロット24に装着されたスロット紙44が破れるのを防止することができる。従って、サポータ治具50を用いて同芯巻きコイル16、ステータコア14、及びスロット紙44を保護することができる。
【0052】
サポータ治具50は、ステータコア14への対向配置時、本体部52の下段部52bがステータコア14のスロット24の底部に形成される軸中心に向いた軸方向端面と面を同じくする軸方向端面を有すると共に、棒状部54の下段部54bがステータコア14のティース22の側面に形成される周方向に向いた周方向端面と面を同じくする周方向端面を有するように構成される。かかるサポータ治具50の構造では、サポータ治具50がステータコア14に取り付けられた場合、ステータコア14の軸方向端面やティース22のエッジが完全にそのサポータ治具50により覆われる。このため、サポータ治具50を用いてそのティース22のエッジからの同芯巻きコイル16及びスロット紙44の保護を確実に図ることができる。
【0053】
また、本実施例において、サポータ治具50は、スロット紙44のカフス部46を収容する収容部としての段差60を有する。すなわち、サポータ治具50は、下段部52bの軸方向端面がスロット24の底部の軸方向端面と共通の面を形成しかつ上段部52aがその下段部52bに対して外径側にスロット紙44の紙厚程度だけ引っ込んだ本体部52を有すると共に、下段部54bの周方向端面がティース22の周方向端面と共通の面を形成しかつ上段部54aがその下段部54bに対して周方向内側にスロット紙44の紙厚程度だけ引っ込んだ棒状部54を有する。
【0054】
スロット紙44は、式(1)又は式(2)に示す如く、軸方向両側のカフス部46の軸方向内側の先端同士を結ぶ線分の軸方向距離t3が、ステータコア14の軸方向端面間の長さt1と、一サポータ治具50当たりの段差60の軸方向厚さt2を2倍した値と、を足し合わせた値又はその値以上となるように形成されている。スロット紙44は、スロット24への同芯巻きコイル16の挿入後に同芯巻きコイル16とステータコア14との間に絶縁に必要な沿面距離が確保される形状を有する。
【0055】
かかるサポータ治具50及びスロット紙44の構造によれば、ステータコア14への同芯巻きコイル16の組み付け後、スロット紙44のカフス部46が、サポータ治具50の下段部52b,54bに対して上段部52a,54aが引っ込んだ段差60の収容部に収容される。このため、そのカフス部46がスロット紙44の厚さ分だけステータコア14のスロット24側にはみ出すのを回避することができるので、スロット24における同芯巻きコイル16の占積率が低下するのを防止することができる。また、スロット紙44のカフス部46がサポータ治具50の段差60の収容部で移動できる量を制限することができ、そのスロット紙44がその収容部から軸方向に抜けるのを防止することができる。
【0056】
また、上記の構造によれば、スロット紙44により同芯巻きコイル16とステータコア14との間に絶縁に必要な沿面距離を確保することができる。更に、サポータ治具50において、スロット紙44のカフス部46を収容するために、ステータコア14側とは反対側の軸方向端部に庇などの大幅の部位を形成することすなわちステータコア14側の軸方向端部にスロット紙44のカフス部46を収容するための収容部を設けることは不要であるので、庇などの存在に起因してサポータ治具50の軸方向寸法が大きくなるのを回避することができる。このため、ステータコア14への組み付け後の同芯巻きコイル16の軸方向寸法を低く抑えることができる。
【0057】
従って、本実施例のステータ組立装置10によるステータ組立手法によれば、スロット24における同芯巻きコイル16の占積率の低下及び同芯巻きコイル16の軸方向寸法の増大を招くことなく、同芯巻きコイル16とステータコア14との間に絶縁に必要な沿面距離を確保しつつ、サポータ治具50を用いて同芯巻きコイル16及びスロット紙44を保護することができる。
【0058】
ところで、上記の実施例においては、
図7(A)及び(B)に示す如くステータコア14の各スロット24にスロット紙44を装着することが特許請求の範囲に記載した「スロット紙装着工程」に、
図7(C)及び(D)に示す如くサポータ治具50をステータコア14に対して軸方向に隣接して配置することが特許請求の範囲に記載した「治具取付工程」に、
図7(E)及び(F)に示す如く同芯巻きコイル16のスロット収容部30,32をスロット24に挿入することが特許請求の範囲に記載した「コイル挿入工程」に、それぞれ相当している。
【0059】
また、上記の実施例においては、ステータ12の同芯巻きコイル16を、断面が矩形状に形成された平角導線により構成するものとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ステータ12の同芯巻きコイル16を、断面が円形状に形成された導線により構成したものに適用することとしてもよく、かかる変形例においても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、上記の実施例においては、スロット紙44をステータコア14のスロット24に配置した後に、複数の同芯巻きコイル16が円環状に配置された初期コイルアッセンブリ40のスロット収容部30,32を、スロット紙44が配置されたステータコア14のスロット24に挿入することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、初期コイルアッセンブリ40のスロット収容部30,32にスロット紙44を装着した後に、そのスロット紙44が装着された初期コイルアッセンブリ40のスロット収容部30,32をステータコア14のスロット24に挿入することとしてもよい。
【0061】
また、上記の実施例においては、同芯巻きコイル16とスロット紙44とを保護するサポータ治具50が有する段差60を、
図4に示す如く、各部位における軸方向厚さが同じになるように形成することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、その段差60(具体的には、棒状部54の段差60b)を、
図8に示す如く、各部位における軸方向厚さが変化するように(具体的には、外径側から内径側にかけて軸方向厚さが小さくなるように)傾斜して形成することとしてもよい。すなわち、段差60bは、外径側から内径側にかけて軸方向厚さが小さくなるように傾斜して形成されている。棒状部54の下段部54bの軸方向厚さt2は、外径側から内径側にかけて徐々に小さくなる。
【0062】
かかる変形例の構造においては、スロット紙44が装着されたステータコア14にサポータ治具50を取り付ける際、具体的には、サポータ治具50をその棒状部54がステータコア14のティース22に対して軸方向外側に隣接して対向するようにそのステータコア14に対して外径側から内径側へ向けて挿入する際に、そのサポータ治具50の棒状部54(具体的には、その段差60b)を、ティース22とスロット紙44のカフス部46の軸方向内側の先端との間に入れ込み易くすることができる。このため、サポータ治具50をステータコア14に対して外径側から内径側へ向けて挿入するうえでの組み付け性を向上させることができる。
【0063】
また、上記の実施例においては、同芯巻きコイル16とスロット紙44とを保護するサポータ治具50を、ステータコア14のティース22ごとに設け、
図4に示す如く、外径側から内径側にかけて周方向幅が小さくなるように先細り状に形成すると共に、ステータコア14のバックヨーク20に対して軸方向外側に隣接して対向する本体部52と、ステータコア14のティース22に対して軸方向外側に隣接して対向する棒状部54と、を有するように形成することとしている。
【0064】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、同芯巻きコイル16とスロット紙44とを保護するサポータ治具50を、ステータコア14のスロット24ごとに設け、
図9に示す如く、外径側から内径側にかけて周方向幅が小さくなるように先細り状に形成すると共に、ステータコア14のバックヨーク20に対して軸方向外側に隣接して対向する本体部100と、内径側端部に設けられた軸方向に向けて空いた開口102と、周方向においてその開口を挟んで二股に分かれた脚部104,106と、を有するように形成したものに適用することとしてもよい。
【0065】
かかる変形例の構造において、サポータ治具50の開口102は、ステータコア14のスロット24に対応するものであり、サポータ治具50の脚部104,106は、ステータコア14のティース22に対して軸方向外側に隣接して対向するものであって、互いに周方向に隣接するティース22に対向する。そして、このサポータ治具50は、開口102に臨む部位において段差108を有するものとすればよい。
【0066】
段差108は、開口102の底部に設けられて本体部100の内径側端部を構成する段差108aと、開口102の側部に設けられて脚部104を構成する段差108bと、開口102の側部に設けられて脚部106を構成する段差108cと、からなる。段差108aは、上段部100aと、その上段部100aに対して内径側に突出する下段部100bと、により形成される。段差108bは、上段部104aと、その上段部104aに対して周方向の開口102側に突出する下段部104bと、により形成される。段差108cは、上段部106aと、その上段部106aに対して周方向の開口102側に突出する下段部106bと、により形成される。脚部104の上段部104aと下段部104bとは、周方向幅が互いに異なるように形成される。また、脚部106の上段部106aと下段部106bとは、周方向幅が互いに異なるように形成される。
【0067】
本体部100の段差108aにおける下段部100bが上段部100aに対して内径側に突出する長さ(幅)、脚部104の段差108bにおける下段部104bが上段部104aに対して周方向に突出する長さ(幅)、脚部106の段差108cにおける下段部106bが上段部106aに対して周方向に突出する長さ(幅)はそれぞれ、少なくともスロット紙44の紙厚に設定されており、その紙厚以上に設定されている。
【0068】
本体部100の下段部100bは、サポータ治具50がステータコア14に対して軸方向外側に隣接して対向配置された際に、ステータコア14のスロット24の底壁として形成される軸中心に向いた軸方向端面と面を同じくする軸方向端面を有する。脚部104,106の下段部104b,106bはそれぞれ、ステータコア14のティース22の周方向幅に対して半分以下である周方向幅を有している。下段部104b,106bはそれぞれ、サポータ治具50がステータコア14に対して軸方向外側に隣接して対向配置された際に、ステータコア14のティース22の側面(すなわち、スロット24の側壁)として形成される周方向に向いた周方向端面と面を同じくする周方向端面を有する。
【0069】
かかる変形例の構造においても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0070】
尚、以上の実施例に関し、更に以下を開示する。
【0071】
[1]ステータコア(14)のスロット(24)にステータコイル(16)が挿入される際に前記ステータコア(14)に対して軸方向に隣接して配置され、前記スロット(24)に装着される、軸方向端部において折り曲げられたカフス部(46)を有するスロット紙(44)を保護するサポータ治具(50)を備えるステータ組立装置(10)であって、前記サポータ治具(50)は、前記ステータコア(14)側の軸方向端部に前記スロット(24)の壁面と面を同じくする端面が設けられる下段部(52b,54b)と、前記ステータコア(14)側とは反対側の軸方向端部に前記スロット(24)に前記ステータコイル(16)が挿入される際に該ステータコイル(16)を周方向でガイドする上段部(52a,54a)と、を有し、前記下段部(52b,54b)は前記上段部(52a,54a)に対して周方向に突出しており、該上段部(52a,54a)と該下段部(52b,54b)とにより前記カフス部(46)が収容される収容部が設けられるように段差(60)を有するステータ組立装置(10)。
【0072】
上記[1]記載の構成によれば、サポータ治具(50)がステータコア(14)に取り付けられた場合にステータコア(14)の軸方向端面及びティース(22)のエッジが完全にサポータ治具(50)により覆われるので、スロット(24)へのステータコイル(16)の挿入時にサポータ治具(50)を用いてティース(22)とステータコイル(16)との間でスロット紙(44)を保護することができる。また、スロット紙(44)のカフス部(46)がサポータ治具(50)の段差(60)の収容部に収容されるので、スロット(24)におけるステータコイル(16)の占積率が低下するのを防止することができる。更に、サポータ治具(50)に、スロット紙(44)のカフス部(46)を収容するために、ステータコア(14)側とは反対側の軸方向端部に庇などの大幅の部位を形成することは不要であるので、サポータ治具(50)の軸方向寸法が大きくなるのを回避することができ、ステータコア(14)への組み付け後のステータコイル(16)の軸方向寸法を低く抑えることができる。
【0073】
[2]上記[1]記載のステータ組立装置(10)において、前記段差(60)は、外径側から内径側にかけて軸方向厚さが小さくなるように傾斜して形成されているステータ組立装置(10)。
【0074】
上記[2]記載の構成によれば、サポータ治具(50)をステータコア(14)に対して外径側から内径側へ向けて挿入するうえでの組み付け性を向上させることができる。
【0075】
[3]上記[1]又は[2]記載のステータ組立装置(10)において、前記サポータ治具(50)は、前記ステータコア(14)のティース(22)ごとに前記ティース(22)に対して軸方向に隣接して配置される、外径側から内径側にかけて先細り状に形成される棒状部(54)を有するステータ組立装置(10)。
【0076】
[4]上記[1]又は[2]記載のステータ組立装置(10)において、前記サポータ治具(50)は、内径側端部に設けられた軸方向に向けて空いた開口(102)と、周方向において前記開口(102)を挟んで二股に分かれた脚部(104,106)と、を有するステータ組立装置(10)。
【0077】
[5]ステータコア(14)のスロット(24)に、軸方向端部において折り曲げられたカフス部(46)を有するスロット紙(44)を装着するスロット紙装着工程と、上記[1]乃至[4]の何れか一項記載のステータ組立装置(10)が備える前記サポータ治具(50)を、前記ステータコア(14)に対して軸方向に隣接して配置する治具取付工程と、前記スロット紙(44)が前記スロット(24)に装着されかつ前記サポータ治具(50)が前記ステータコア(14)に対して軸方向に隣接して配置された状態で、前記ステータコイル(16)を前記スロット(24)に挿入するコイル挿入工程と、を備えるステータ組立方法。