(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
略真空条件下で前記透明樹脂層の片面側に対して大気圧又は圧縮空気を適用することによって前記積層が行われることを特徴とする請求項1に記載の表面微細凹凸構造体。
前記透明樹脂層の積層前の拡散角度C’に対する前記透明樹脂層の積層後の拡散角度の比(C/C’)が0.6〜1.4であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面微細凹凸構造体。
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層後の凹凸パターンの最頻ピッチAが1μmを超え20μm以下であり、前記透明樹脂層の積層後の最頻ピッチAに対する凹凸の平均深さBの比(B/A)が0.1〜3.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
前記凹凸パターンが微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層前の凹凸の平均高さh’に対する前記透明樹脂層の積層後の凹凸の平均高さhの比(h/h’)が0.8〜1.2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
前記透明樹脂層が、易成形ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを有する活性エネルギー線硬化性樹脂層が積層された積層体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インサートモールド法は、被着体が平面等の単純な形状を有している場合のみ、被着体にシートを好適に積層することができる。被着体が球面形状や凹凸形状等のような非平面形状を有する場合には、シートに皺や割れが発生してしまうため、インサートモールド法では、被着体にシートを積層できないという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものである。本発明は、球面形状や凹凸形状等のような非平面形状を有する被着体の表面にシートを積層させた表面微細凹凸構造体であって、シートに皺や割れがないものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、非平面形状を有する被着体にシートを積層する場合に、減圧条件下でシートの片面側を非接触方式で加圧する方法等によって、シートに皺や割れを生じさせることなくシートを被着体に積層できることを見出した。また、特に、微細な凹凸を有するシートを被着体に積層させる場合には、上記方法により、積層時にシートに皺や割れを生じさせないのみでなく、シート表面の波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸が損なわれずにシートや積層体が得られることを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]
波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを少なくとも一部に有する透明樹脂層と、
非平面形状の被着体と、
を有する表面微細凹凸構造体であって、
前記透明樹脂層は、減圧条件下で前記透明樹脂層の片面側を非接触方式で加圧することによって前記被着体に積層されたことを特徴とする表面微細凹凸構造体。
[2]
略真空条件下で前記透明樹脂層の片面側に対して大気圧又は圧縮空気を適用することによって前記積層が行われることを特徴とする[1]に記載の表面微細凹凸構造体。
[3]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層前の拡散角度C’に対する前記透明樹脂層の積層後の拡散角度の比(C/C’)が0.6〜1.4であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の表面微細凹凸構造体。
[4]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層前の凹凸の平均深さB’に対する前記透明樹脂層の積層後の凹凸の平均深さBの比(B/B’)が0.6〜1.4であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[5]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層後の凹凸パターンの最頻ピッチAが1μmを超え20μm以下であり、前記透明樹脂層の積層後の最頻ピッチAに対する凹凸の平均深さBの比(B/A)が0.1〜3.0であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[6]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層が異方性拡散性能を持つことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[7]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層が無延伸のポリカーボネートシートであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[8]
前記凹凸パターンが微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層前の微小粒子の突出部の平均高さh’に対する前記透明樹脂層の積層後の微小粒子の突出部の平均高さhの比(h/h’)が0.8〜1.2であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[9]
前記透明樹脂層が、易成形ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを有する活性エネルギー線硬化性樹脂層が積層された積層シートであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[10]
前記被着体が略球面形状であるかまたは凹凸を有する形状であることを特徴とする請求項[1]〜[10]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[11]
前記透明樹脂層が粘着剤層又は接着剤層を介して前記被着体に積層されたことを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[12]
波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを少なくとも一部に有する透明樹脂層を有し、かつ、非平面形状に成形されたシートであって、
前記透明樹脂層は、減圧条件下で前記透明樹脂層の片面側を非接触方式で加圧することによって成形されたものであることを特徴とするシート。
【0008】
さらに、本発明は、下記の他の態様を有していてもよい。
[A1]
波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを少なくとも一部に有する透明樹脂層と、
非平面形状の被着体と、
を有する表面微細凹凸構造体であって、
前記透明樹脂層の積層前の拡散角度C’に対する前記透明樹脂層の積層後の拡散角度の比(C/C’)が0.6〜1.4であることを特徴とする表面微細凹凸構造体。
[A2]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層前の凹凸の平均深さB’に対する前記透明樹脂層の積層後の凹凸の平均深さBの比(B/B’)が0.6〜1.4であることを特徴とする[A1]に記載の表面微細凹凸構造体。
[A3]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層後の凹凸パターンの最頻ピッチAが1μmを超え20μm以下であり、前記透明樹脂層の積層後の最頻ピッチAに対する凹凸の平均深さBの比(B/A)が0.1〜3.0であることを特徴とする[A1]又は[A2]に記載の表面微細凹凸構造体。
[A4]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層が異方性拡散性能を持つことを特徴とする[A1]〜[A3]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[A5]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層が無延伸のポリカーボネートシートであることを特徴とする[A1]〜[A4]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[A6]
前記透明樹脂層が、易成形ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを有する活性エネルギー線硬化性樹脂層が積層された積層シートであることを特徴とする[A1]〜[A4]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[A7]
前記凹凸パターンが微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層前の凹凸の平均高さh’に対する前記透明樹脂層の積層後の凹凸の平均高さhの比(h/h’)が0.8〜1.2であることを特徴とする[A1]または[A6]に記載の表面微細凹凸構造体。
[A8]
前記被着体が略球面形状であるか又は凹凸を有する形状であることを特徴とする請求項[A1]〜[A7]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[A9]
前記透明樹脂層が粘着剤層又は接着剤層を介して前記被着体に積層されたことを特徴とする[A1]〜[A8]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[A10]
前記透明樹脂層は、減圧条件下で前記透明樹脂層の片面側を非接触方式で加圧することによって前記被着体に積層されることを特徴とする[A1]〜[A9]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[A11]
略真空条件下で前記透明樹脂層の片面側に対して大気圧又は圧縮空気を適用することによって前記積層が行われることを特徴とする[A10]に記載の表面微細凹凸構造体。
[A12]
波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを少なくとも一部に有する透明樹脂層を有し、かつ、非平面形状に成形されたシートであって、
前記透明樹脂層の成形前の拡散角度C’に対する前記透明樹脂層の成形後の拡散角度の比(C/C’)が0.6〜1.4であることを特徴とするシート。
【0009】
さらに、本発明は、下記の他の態様を有していてもよい。
[B1]
波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを少なくとも一部に有する透明樹脂層と、
非平面形状の被着体と、
を有する表面微細凹凸構造体であって、
波状の凹凸パターンを有する前記透明樹脂層である場合は、その積層前の凹凸の平均深さB’に対する前記透明樹脂層の積層後の凹凸の平均深さBの比(B/B’)が0.6〜1.4であることを特徴とする表面微細凹凸構造体、または
微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを有する前記透明樹脂層で有る場合は、前記透明樹脂層の積層前の凹凸の平均高さh’に対する前記透明樹脂層の積層後の凹凸の平均高さhの比(h/h’)が0.8〜1.2であることを特徴とする表面微細凹凸構造体。
[B2]
前記透明樹脂層の積層前の拡散角度C’に対する前記透明樹脂層の積層後の拡散角度の比(C/C’)が0.6〜1.4であることを特徴とする[B1]に記載の表面微細凹凸構造体。
[B3]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層の積層後の凹凸パターンの最頻ピッチAが1μmを超え20μm以下であり、前記透明樹脂層の積層後の最頻ピッチAに対する凹凸の平均深さBの比(B/A)が0.1〜3.0であることを特徴とする[B1]又は[B2]に記載の表面微細凹凸構造体。
[B4]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層が異方性拡散性能を持つことを特徴とする[B1]〜[B3]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[B5]
前記凹凸パターンが波状の凹凸パターンであって、前記透明樹脂層が無延伸のポリカーボネートシートであることを特徴とする請求項[B1]〜[B4]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[B6]
前記透明樹脂層が、易成形ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、凹凸パターンを有する活性エネルギー線硬化性樹脂層が積層された積層シートであることを特徴とする請求項[B1]〜[B4]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[B7]
前記被着体が略球面形状であるか又は凹凸を有する形状であることを特徴とする請求項[B1]〜[B6]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[B8]
前記透明樹脂層が粘着剤層又は接着剤層を介して前記被着体に積層されたことを特徴とする請求項[B1]〜[B7]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[B9]
前記透明樹脂層は、減圧条件下で前記透明樹脂層の片面側を非接触方式で加圧することによって前記被着体に積層されることを特徴とする[B1]〜[B8]のいずれかに記載の表面微細凹凸構造体。
[B10]
略真空条件下で前記透明樹脂層の片面側に対して大気圧又は圧縮空気を適用することによって前記積層が行われることを特徴とする[B9]に記載の表面微細凹凸構造体。
[B11]
波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを少なくとも一部に有する透明樹脂層を有し、かつ、非平面形状に成形されたシートであって、
波状の凹凸パターンを有する前記透明樹脂層である場合は、その
成形前の凹凸の平均深さB’に対する前記透明樹脂層の
成形後の凹凸の平均深さBの比(B/B’)が0.6〜1.4であることを特徴とするシート、または
微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを有する前記透明樹脂層で有る場合は、前記透明樹脂層の
成形前の凹凸の平均高さh’に対する前記透明樹脂層の
成形後の凹凸の平均高さhの比(h/h’)が0.8〜1.2であることを特徴とするシート。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、球面形状や凹凸形状等のような非平面形状を有する被着体の表面にシートを積層させた表面微細凹凸構造体であって、シートに皺や割れがなく、かつ、優れた光拡散性を有する表面微細凹凸構造体を提供する。また、本発明は、球面形状や凹凸形状等のような非平面形状のシートであって、シートに皺や割れがなく、かつ、優れた光拡散性を有するものを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、添付の図面を参照し、実施形態例を示して説明する。
【0013】
図1の透明樹脂層を有するシート10は、波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを片面(
図1の上側)に有する透明樹脂層1と、粘着剤層2とを有する。波状または微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンは、シート10を通過する光を拡散させるための形状である。本明細書において、波状とは所謂比較的長い波状もあるが、短く断片的になった波状の凹凸パターンも含まれる。波状または微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンは、拡散させる光が通過する領域の少なくとも片面、あるいは少なくとも片面の一部に設けられていることが好ましい。シート10は、必要に応じて、粘着剤層2を保護するための剥離層3をさらに有していてもよい。上記透明樹脂層1は特定の軸方向に光を散乱させる性質(異方性拡散性能)や逆に特定の方向に関らず光を散乱させる性質(等方性拡散性能)を持つことも好ましい。
【0014】
異方性拡散性能を持つフィルムとしては、いわゆるナノバックリング形状を有するフィルムが好ましい。等方性拡散性能を持つフィルムとしては、多数の、いわゆる微小粒子(一般には微小球体)を含む塗布液を透明フィルム基材に塗布し、その少なくとも一部の微小粒子の一部が形成された塗膜の表面から突出して表面微細凹凸構造を形成した拡散フィルムがある。このフィルムが微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを有する透明樹脂層に相当する。このようなフィルムを以降「粒子入り表面微細凹凸構造フィルム」と呼ぶ。なお、このようなフィルムとなる透明樹脂層は正確には、透明フィルム基材上に微小粒子を含むバインダー層が塗布形成されて構成される。なお、ナノバックリング形状を有するフィルムは異方性拡散性能を持たせることが多いが、特別の設計、製法等により等方性拡散性能を持たせることも可能である。
【0015】
従って、透明樹脂層1は、ナノバックリング形状を有するフィルムであることが好ましい。また、比較的安価に等方性拡散性能を持つことが要求されるような場合は、透明樹脂層1は、粒子入り表面微細凹凸構造フィルムであることが好ましい。
ナノバックリング形状を有するフィルムは、例えば、特開2008−302591号公報に記載されているように、いわゆるナノバックリング形状を有する金属製成形物を金型として、そのナノバックリング形状に対応する表面形状を有する樹脂層を形成することによって得られるフィルムであることが好ましい。
【0016】
粒子入り表面微細凹凸構造フィルムは、バインダー層を構成する樹脂及び微小粒子を溶剤に分散又は溶解させた光拡散層用樹脂塗布液を調製し、当該光拡散用樹脂溶液を透明フィルム上に従来公知の塗布方法によって塗布、乾燥、硬化などして積層することにより得ることができる。
また、バインダー層に含まれる微小粒子、バインダー層を構成する樹脂との関係上、以下のように選択されることが好ましい。樹脂と微小粒子との屈折率の差は、0.05〜0.50であり、0.08〜0.48であることが好ましく、0.10〜0.45であることがより好ましい。
屈折率の差が所定の値以上であることにより、樹脂と微小粒子との界面において、光散乱効果が得られる。また、屈折率の差が所定の値以下であることにより、公知の材料から、樹脂と微小粒子とを選択しやすい。なお、本発明における屈折率とは、波長589.3nmにおける屈折率である。
【0017】
透明樹脂層1を構成する樹脂は、例えば、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET−G、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、テレフタル酸とエチレングリコールとエチレングリコール以外の多価アルコールとの共重合体であって、易成形性を付与した易成形PET共重合体(以下、「易成形PET」とする。)であってもよい。これらの中でも、成形加工の観点からは、ABS、PET、MS、PMMA、PS、COP、PC、易成形PETが好ましく、易成形PETフィルムが特に好ましい。
【0018】
透明樹脂層1が、ナノバックリング形状を有するフィルムであるときは、前記の透明樹脂層1を構成する樹脂で構成されるフィルム表面にナノバックリング形状を有していてもよい。また、透明樹脂層1は前記の樹脂からなる表面が平滑なフィルムに、表面にナノバックリング形状を有する活性エネルギー線硬化樹脂が積層されたものであってもよい。活性エネルギー線硬化樹脂は延性に富むものであることが好ましい。
【0019】
活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線、電子線、可視光線、X線、又は、イオン線等の活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられる。活性エネルギー線硬化樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が好ましく、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂がより好ましい。
【0020】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、特開2014-196430号公報、特開2014-126776号公報、特開2013-139549号公報、特開2010-222568号公報、特開2009-109582号公報、特開2007-284613号公報、特開2007-030479号公報、特開2004-217809号公報、特開2003-246826号公報、特開2001-181359号公報、特開平10-120745号公報、特開平09-151223号公報、又は、特開平08-188743号公報に記載されているものを使用することができる。
【0021】
活性エネルギー線硬化性樹脂が延性に富むこととは、より具体的には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から下記条件で作製した試験片が下記ヤング率および破断伸びの数値範囲を満たすことを意味する。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、下記条件で作製した試験片をJIS K7127(1989年制定、1999年改正、2013年確認)に準拠した測定により得られる抗張力から算出されるヤング率(MPa)が、23℃において、100〜10,000MPaであることが好ましく、200〜5,000MPaであることがより好ましく、500〜2,000MPaであることがさらに好ましい。また、上記のヤング率(MPa)は、120℃で測定した場合は、5〜1,000MPaであることが好ましく、10〜500MPaであることがより好ましく、20〜200MPaであることがさらに好ましい。
ヤング率が下限値以上であると、成形時の加熱(積層時の加熱)による活性エネルギー線硬化性樹脂の変形が小さくなり、従って、表面凹凸形状の変形が小さくなる。ヤング率が上限値以下であることにより、活性エネルギー線硬化性樹脂が、成形時の加熱による透明フィルム基材の変形に追従しやすくなり、ひび割れ等が発生しにくくなる。
【0022】
ヤング率の測定用の試験片の作製条件およびヤング率の測定条件は下記の通りである。
シリコーンが塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、膜厚が200μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布する。次に、塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に対して窒素雰囲気下でメタルハライドランプを用いて1J/cm
2の紫外線を照射することによって、該組成物を硬化させる。次に、硬化した活性エネルギー線硬化性樹脂をポリエチレンテレフタレート(追記)フィルムから剥離させることにより、硬化膜を得る。得られた硬化膜をカットし、幅6mm、長さ25mmの短冊状サンプルを作製する。
次に、この短冊状サンプルについて、湿度50%、温度23℃又は温度120℃の条件で、引張り試験機を用いて、JIS K7127(1989年制定、1999年改正、2013年確認)に準拠して引張り試験を行った。引張速度は1mm/分とし、2.5%歪みでの抗張力からヤング率(MPa)を求める。
【0023】
上記試験片は、23℃で測定した破断伸び(%)が1〜40%であることが好ましく、2〜20%であることがより好ましく、2〜10%であることがさらに好ましい。120℃測定した破断伸びが10〜300%であることが好ましく、20〜200%であることがより好ましく、50〜200%であることがさらに好ましい。
破断伸びが下限値以上であると、活性エネルギー線硬化性樹脂が、成形時の加熱による透明フィルム基材の変形に追従しやすくなり、ひび割れ等が発生しにくくなる。破断伸びが上限値以下であると、成形時の加熱による温度での変形が小さくなり、表面凹凸形状の変形が小さくなる。
上記破断伸びの測定条件は下記の通りである。
上記ヤング率の測定用の試験片の作製と同様に硬化膜を作製し、得られた硬化膜をカットし、幅6ミリメートル、長さ25ミリメートルの短冊状サンプルを作製する。湿度50%、温度23℃又は温度120℃の条件下で、引張り試験機を用いてその短冊状サンプルの破断伸び(%)を測定する。引張り速度は50mm/分とする。
【0024】
透明樹脂層1が、粒子入り表面微細凹凸構造フィルムであるときは、前記の透明樹脂層1を構成する樹脂で構成されるフィルム表面に微小粒子とバインダー樹脂で構成されるバインダー層が塗布形成されて全体として透明樹脂層となっていても良い。
【0025】
本発明のシートは、被着体及び粘着剤層を有せず、波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンを少なくとも一部に有する透明樹脂層(上記透明樹脂層1と同様)を少なくとも有するシートであってもよい。粘着剤層を有しないシートは、例えば、非平面形状の光拡散シートとして単独で用いるためや、非平面形状を有する被着体に積層して用いるための非平面形状の光拡散シートを作製するための材料として用いることができる。非平面形状の光拡散シートは、例えば、透明樹脂層のみからなる平面形状のシートを、後述するTOM成形等の成形法により非平面形状の被着体と同じ形状を有するように成形し、該被着体から該シートを剥離することによって得ることができる。なお、被着体から剥離しやすくするために、透明樹脂層にシリコーン系等の離型剤が塗布されていてもよい。あらかじめ非平面形状に成形した光拡散シートを被着体に積層させることにより、生産現場において平面形状の光拡散シートの成形を行うことなく、非平面形状の被着体の光拡散性を変化させることが可能になる。従って、非平面形状の光拡散シートは、該シートを使用した表面微細凹凸構造体の生産において、歩留まりを向上させると共に、生産性を向上させることができる。本発明は、このような非平面形状のシートも提供する。
【0026】
易成形PETフィルムは、例えば、特許第5191997号に記載の組成及び生産方法等に従って調製することができる。また、必要に応じて、特許第3483369号、特許第4346131号、特許第4495912号、特許第4563758号、特許第4610271号、特許第5127295号、特許第5127296号、特許第4955480号、特許第5450941号、特許第4162159号、特許第4655409号、特許第4661073号、特許第5105459号、特許第5223191号をさらに参照して易成形PETフィルムを調製してもよい。また、易成形PETとして、一般に販売されている市販品を用いることもできる。市販品としては、ソフトシャインTA009(東洋紡株式会社製)又はソフトシャインA1597(東洋紡株式会社製)を用いることができる。あるいは、市販品として、例えば、ナノアロイ(登録商標)技術により作成された2軸延伸PETフィルムであるルミラー(登録商標)SF−20(易成型タイプ、東レ株式会社製)を用いることもできる。透明樹脂層1として易成形PETフィルムを用いることにより、被着体に対する透明樹脂層1の追従性を高めることができ、さらに、ナノバックリング形状の設計や微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンの設計の自由度を高めることができる。
【0027】
前記易成形PETフィルムを構成する共重合ポリエステルは、テレフタル酸及びエチレングリコールに加えて、エチレングリコール以外の多価アルコールを含んでおり、融点が200〜250℃である。エチレングリコール以外の多価アルコールとしては、ネオペンチルグリコール及び/または1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。前記多価アルコールの量は、共重合体を構成する全単量体成分を100モル%としたとき、1〜40モル%であることが好ましい。前記易成形PETフィルムの融点は200〜245℃であることが好ましい。前記易成形PETフィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、いずれも25℃において10〜1000MPa及び100℃において1〜100MPaであることが好ましい。前記易成形PETフィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)は、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaであることが好ましい。前記易成形PETフィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)は、175℃において−3%〜+3%であることが好ましい。
【0028】
前記易成形PETフィルムは、前記共重合ポリエステルとホモポリエステルをブレンドしてなるものであってもよく、その場合は、前記ホモポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、又は、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。また、前記易成形PETフィルムは、該フィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率が6.0%以下であることが好ましい。また、前記易成形PETフィルムは、逐次二軸延伸法により得られるものであることが好ましい。前記易成形PETフィルムは、例えば、縦延伸後に行う横延伸において、横延伸の後半部では延伸温度を横延伸の前半部の延伸温度に対して−5〜−40℃の範囲で行なうことによって得られるものであることが好ましい。
【0029】
また、前記易成形PETフィルムは、120〜245℃で熱処理されたものであってもよく、(a)クリップ部分に熱遮蔽壁を設ける方法、(b)クリップ冷却機構をテンターに付加する方法、(c)熱固定後の冷却区間を長く設定し、フィルム全体の冷却を十分行う方法、(d)冷却区間の長さ、区画数を増やして、冷却効率を増加させる方法、または(e)クリップの戻り部分が炉の外側を走行するタイプを用いてクリップの冷却を強化する方法、を用いてクリップの近傍を冷却してから、テンター出口でクリップからフィルムを開放して得られるものであることが好ましい。
【0030】
透明樹脂層1の積層前の主拡散方向の拡散角度C’に対する透明樹脂層の積層後の主拡散方向の拡散角度の比(C/C’)が0.6〜1.4であることが好ましい。上記比(C/C’)は、より好ましくは0.8〜1.2であり、更に好ましくは0.9〜1.1である。
ここで、主拡散方向とは、透明樹脂層1が等方性拡散性能を有する場合は、透明樹脂層1の平面内の任意の方向のことであり、透明樹脂層1が異方性拡散性能を有する場合は、透明樹脂層1の平面内で拡散角度が最大になる方向のことである。
本明細書における拡散角度(一般に、「FWHM」と呼称される場合がある。)は、配光特性測定装置(例えば、GENESIA GonioFar Field Profiler(ジェネシア社製))を用いて以下の方法により測定できる。
【0031】
まず、透明樹脂層1に対して、後述する粘着剤層2を貼り合せる面と反対側の面、すなわち微細凹凸形成面の反対側の平滑面側から光を照射、入射させる。その際に、入射面とは反対面側から垂直に出光する出射光(出光角度=0°)の照度を基準値とし、Y方向に沿う出光角度−90°〜+90°の範囲内の出射光の照度を、上記基準値に対する相対値として、1°おきに測定する。そして、各Y方向の出光角度に対する照度の値をプロットして照度曲線を得る。
前記照度曲線における半値幅(全半値幅)を主拡散方向(Y方向)の拡散角度とする。
同様に、X方向に沿う出光角度−90°〜+90°の範囲内の出射光の照度を上記基準値に対する相対値として、1°おきに測定する。そして、各X方向の出光角度に対する照度の値をプロットして照度曲線を得る。前記照度曲線における半値幅(全半値幅)を主拡散方向に直交する方向(X方向)の拡散角度とする。
【0032】
透明樹脂層1が、ナノバックリング形状を有するフィルムの場合の該フィルムについて、その構造、製造方法など以下に説明する。
透明樹脂層1の片面に存在する凹凸パターンの最頻ピッチAは1μmを超え50μm以下であることが好ましい。最頻ピッチAは好ましくは1μmを超え35μm以下である。最頻ピッチAが1μmを超えていることにより、可視光が凹凸パターンにて屈折せずに光が透過してしまうことを防止できる。また、最頻ピッチAが35μm以下であると輝線として視認されることを防止できる。
【0033】
最頻ピッチAに対する凹凸の平均深さBの比(B/A、以下、アスペクト比という。)が0.1〜3.0である。アスペクト比が0.1以上であると、拡散性の低下及び輝度のむらを防止できる。アスペクト比が3.0以下であると、凹凸パターンを形成し易くなる。
ここで、平均深さBとは、凹凸パターンの底部の平均深さのことである。また、底部とは、凹凸パターンの凹部の極小値であり、平均深さBは、透明樹脂層1を長さ方向に沿って切断した断面(
図7参照)を見た際の、透明樹脂層1全体の面方向と平行な基準線L
1から各凸部の頂部までの長さB
1,B
2,B
3・・・の平均値(B
AV)と、基準線L
1から各凹部の底部までの長さb
1,b
2,b
3・・・の平均値(b
AV)との差(b
AV−B
AV)のことである。
平均深さBを測定する方法として、原子間力顕微鏡により撮影した凹凸パターンの断面の画像にて各底部の深さを測定し、それらの平均値を求める方法を本発明では採った。
【0034】
透明樹脂層1は無延伸のポリカーボネートシートまたは成形性に優れた易成形ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。透明樹脂層1が無延伸のポリカーボネートシートまたは易成形ポリエチレンテレフタレートフィルムであることにより、後述するTOM成形が容易になる。透明樹脂層1は、例えば、下記の凹凸パターン形成シート210を用いて作製することができる。
【0035】
(凹凸パターン形成シート)
凹凸パターン形成シート210は、基材211と、基材211の片面に設けられた硬質層212とを備え、硬質層212が凹凸パターン212aを有する。
【0036】
凹凸パターン形成シート210の凹凸パターン212aは、略一方向に沿った波状の凹凸を有し、その波状の凹凸が蛇行しているものである。また、本実施形態の凹凸パターン212aの凸部の先端は丸みを帯びている。
【0037】
硬質層212を構成する樹脂(以下、第2の樹脂という。)のガラス転移温度Tg2と、基材211を構成する樹脂(以下、第1の樹脂という。)のガラス転移温度Tg1との差(Tg2−Tg1)は10℃以上であり、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。(Tg2−Tg1)の差が10℃以上であることにより、Tg2とTg1の間の温度で容易に加工できる。Tg2とTg1の間の温度を加工温度とすると、基材211のヤング率が硬質層212のヤング率より高くなる条件で加工でき、その結果、硬質層212に凹凸パターン212aを容易に形成できる。
【0038】
凹凸パターン形成シート210を製造する際の加工温度における第1の樹脂のヤング率は0.01〜100MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましい。第1の樹脂のヤング率が0.01MPa以上であれば、基材211として使用可能な硬さであり、100MPa以下であれば、硬質層212が変形する際に同時に追従して変形可能な軟らかさである。
【0039】
第1の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィンなどの樹脂が挙げられる。
【0040】
凹凸パターン形成シート210を製造する際の加工温度における第2の樹脂のヤング率は0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。第2の樹脂のヤング率が0.01GPa以上であれば、第1の樹脂の加工温度におけるヤング率より充分な硬さが得られ、凹凸パターン212aが形成された後、凹凸パターンを維持するのに充分な硬さであり、ヤング率が300GPaを超えるような樹脂を第2の樹脂として使用することは経済性の面から必要性に乏しいためである。
【0041】
第1の樹脂の種類にもよるが、第2の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などを使用することができる。
【0042】
基材211の厚みは0.3〜500μmであることが好ましい。基材211の厚みが
0.3μm以上であれば、凹凸パターン形成シート210が破れにくくなり、500μm以下であれば、凹凸パターン形成シート210を容易に薄型化できる。
【0043】
硬質層212の厚みは、0.05μmを超え5μm以下であることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。硬質層の厚みが0.05μmを超え5μm以下であれば、後述のように凹凸パターン形成シートを容易に製造できる。
【0044】
凹凸パターン形成シート210の凹凸パターン212aの最頻ピッチAは1μmを超え
50μm以下、好ましくは1μmを超え35μm以下である。最頻ピッチAが1μm未満であると、光が透過してしまい、50μmを超えると、光拡散性が低くなる。
【0045】
凹凸パターン212aの底部212bの平均深さBは最頻ピッチAを100%とした際の10%以上(すなわち、アスペクト比0.1以上)であり、30%以上(すなわち、アスペクト比0.3以上)であることが好ましい。平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の10%未満であると、凹凸パターン形成シート210を透明樹脂層1製造用工程シート原版として用いても、光拡散性の高い透明樹脂層1を得ることが困難になる。
また、平均深さBは、凹凸パターン212aを容易に形成できる点から、好ましくは最頻ピッチAを100%とした際の300%以下(すなわち、アスペクト比3.0以下)であり、より好ましくは200%以下(すなわち、アスペクト比2.0以下)である。
【0046】
光拡散の異方性の高い透明樹脂層1が得られるようになる点では、凹凸パターン212aがある程度蛇行して、隣り合った凸部同士のピッチが凹凸パターン212aの方向に沿ってばらついていることが好ましい。ここで、凹凸パターン212aの配向のばらつきのことを配向度という。配向度が大きいほど、配向がばらついている。この配向度は、以下の方法で求められる。
まず、表面光学顕微鏡により凹凸パターンの上面を撮影し、その画像をグレースケールのファイル(例えば、tiff形式等)に変換する。グレースケールのファイルの画像では、白度が低いところ程、凹部の底部が深い(白度が高いところ程、凸部の頂部が高い)ことを表す。次いで、グレースケールのファイルの画像をフーリエ変換し、凹凸パターンの最頻ピッチおよび配向度を求めることができる(詳細は、特開2008−302591号公報参照)。
【0047】
上記配向度は0.3〜1.0であることが好ましい。配向度が0.3以上であれば、
凹凸パターン212aのピッチのばらつきが大きいため、該凹凸パターン形成シートおよび該凹凸パターン形成シートを工程シート原版として用いて得た透明樹脂層1の光拡散性がより高くなる。配向度が1.0を超えると、凹凸パターンの方向がある程度ランダムになるため、光拡散性は高くなるが、異方性が低くなる傾向にある。配向度を0.3〜1.0にするためには、凹凸パターン形成シート製造の際に必要な圧縮応力の作用のさせ方を適宜選択すればよい。
【0048】
(凹凸パターン形成シートの製造方法)
本発明の凹凸パターン形成シートの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の凹凸パターン形成シートの製造方法は、
図8に示すように、樹脂製の基材である加熱収縮性フィルム211aの片面に、表面が平滑な樹脂製の硬質層213(以下、表面平滑硬質層213という。)を設けて積層シート210aを形成する工程(以下、第1の工程という。)と、加熱収縮性フィルム211aを加熱収縮させて、積層シート210aの少なくとも表面平滑硬質層213を折り畳むように変形させる工程(以下、第2の工程という。)とを有する方法である。
【0049】
[第1の工程]
第1の工程にて、加熱収縮性フィルム211aの片面に表面平滑硬質層213を設けて積層シート210aを形成する方法としては、例えば、加熱収縮性フィルム211aの片面に、第2の樹脂の溶液または分散液をスピンコーターやバーコーター等により塗工し、溶媒を乾燥させる方法、加熱収縮性フィルム211aの片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層213を積層する方法などが挙げられる。
【0050】
加熱収縮性フィルム211aとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルムなどを用いることができる。
シュリンクフィルムの中でも、20〜70%収縮するものが好ましい。20〜70%収縮するシュリンクフィルムを用いれば、変形率を30%以上にでき、凹凸パターン212aの最頻ピッチAが1μmを超え50μm以下、凹凸パターン212aの底部212bの平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の10%以上の凹凸パターン形成シート210を容易に製造できる。さらには、凹凸パターン212aの底部212bの平均深さBが最頻ピッチAを100%とした際の100%以上の凹凸パターン形成シート210も容易に製造できる。
【0051】
本発明では、表面平滑硬質層213の厚さを、0.05μmを超え5.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μmとする。表面平滑硬質層213の厚さを前記範囲にすることにより、凹凸パターン212aの最頻ピッチAを、確実に1μmを超え50μm以下にできる。しかし、表面平滑硬質層213の厚さが0.05μm以下であると最頻ピッチAが1μm以下になることがあり、5.0μmを超えると、最頻ピッチAが50μmを超えることがある。
また、表面平滑硬質層213を、加熱収縮性フィルムを構成する樹脂(第1の樹脂)よりガラス転移温度が10℃以上高い樹脂(第2の樹脂)で構成する。第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度が前記関係にあることにより、凹凸パターン212aの最頻ピッチAを、確実に1μmを超え50μm以下にできる。表面平滑硬質層213の厚さは連続的に変化していても構わない。表面平滑硬質層213の厚さが連続的に変化している場合には、圧縮後に形成される凹凸パターン212aのピッチおよび深さが連続的に変化するようになる。
【0052】
この製造方法では、より容易に凹凸パターン212aを形成できることから、表面平滑硬質層213のヤング率を0.01〜300GPaにすることが好ましく、0.1〜10GPaにすることがより好ましい。
【0053】
[第2の工程]
第2の工程にて、加熱収縮性フィルム211aを熱収縮させることにより、表面平滑硬質層213に、収縮方向に対して垂直方向に波状の凹凸パターン212aを形成させて、硬質層212を得る。波状のパターン212aは、蛇行した波状のパターンを有していてもよい。加熱収縮性フィルム211aを加熱収縮させる際の加熱方法としては、熱風、蒸気または熱水中に通す方法等が挙げられる。
【0054】
以上説明した凹凸パターン形成シートの製造方法では、表面平滑硬質層213を構成する第2の樹脂が加熱収縮性フィルム211aを構成する第1の樹脂よりガラス転移温度が10℃以上高いため、第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度の間の温度では、表面平滑硬質層213のヤング率が加熱収縮性フィルム211aより高くなる。その上、表面平滑硬質層213の厚さを0.05μmを超え5.0μm以下としているため、第1の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度の間の温度で加工した際には、表面平滑硬質層213は厚みを増すよりも、折り畳まれるようになる。さらに、表面平滑硬質層213は加熱収縮性フィルム211aに積層されているため、加熱収縮性フィルム211aの収縮による応力が全体に均一にかかる。したがって、本発明によれば、表面平滑硬質層213を折り畳むように変形させて、光拡散の性能に優れた凹凸パターン形成シート210を簡便に、かつ、大面積で製造できる。
しかも、この製造方法によれば、容易に、凹凸パターン212aの最頻ピッチAを、1μmを超え20μm以下、凹凸パターン212aの底部212bの平均深さBを、最頻ピッチAを100%とした際の10%以上にできる。
【0055】
また、上記以外のナノバックリング形状の構造・製造方法として、下記(i)〜(iv)も挙げられる。
(i)特開2008−279597号公報、特開2008−201029号公報、特開2014−238429号公報に記載されている、加熱収縮フィルムとして、二軸方向加熱収縮フィルムを用いて特定の方向に沿わない波状の凹凸パターン構造を有するもの。
(ii)特開2012−252149号公報に記載されている、一軸方向に加熱収縮する加熱収縮性樹脂フィルムの片面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工して塗工膜を形成する工程と、稜線の方向が一方向に沿った第一の凹凸パターンのみが表面に形成された転写成形用スタンパを、前記凹凸パターンの稜線の方向と、前記加熱収縮性樹脂フィルムの加熱収縮の方向とが一致するように前記塗工膜に密着させ、その状態のまま、活性エネルギー線を照射することにより前記塗工膜を硬化させて硬化膜からなる硬質層を形成する工程と、前記硬質層を転写成形用スタンパから剥離することにより、前記加熱収縮性樹脂フィルムの片面に第一の凹凸パターンを転写した硬質層が設けられた積層シートを得る工程と、前記積層シートを加熱して、前記加熱収縮性樹脂フィルムを、その加熱収縮の方向に収縮させることで、前記硬質層を折り畳むように変形させて、前記第一の凹凸パターンと略直交状態で重畳する第二の凹凸パターンを形成する工程とを有する、凹凸パターン形成シートの製造方法により、一方向に沿った第一の凹凸パターンと、第一の凹凸パターンに略直交する方向に沿った第二の凹凸パターンとが形成された凹凸パターン構造を有するもの。
(iii)国際公開第2014/002850号に記載されている、ガラス転移温度Tgの異なる2種類の樹脂を含む硬質層を設けた加熱収縮フィルムを熱収縮させることにより、一方向に沿って波状の凹凸が繰り返されることによって形成された第一凹凸パターン表面に、前記方向に沿って波状の凹凸が繰り返されることによって形成された第二凹凸パターンを有する二重構造を有するもの。
(iv)国際公開第2014/148492号に記載されている、粒子を含む硬質層を設けた加熱収縮フィルムを熱収縮させることにより、波状凹凸パターン上に形成された凸部または凹部を有するもの。
【0056】
(透明樹脂層1製造用工程シート原版)
上記透明樹脂層1を形成するための工程シート原版(以下、工程シート原版という。)は、上述した凹凸パターン形成シート210を備える。凹凸パターン212aを、以下に示すような方法で他の素材に転写させることにより、該工程シート原版と同等の最頻ピッチおよび平均深さの凹凸パターンが表面に形成された透明樹脂層1として使用可能な凹凸パターン形成シートを大面積で大量に製造するための型として用いられるものである。
工程シート原版には、凹凸パターン形成シート10を支持するための樹脂製または金属
製の支持体をさらに備えてもよい。
【0057】
工程シート原版を用いて光拡散体を製造する具体的な方法としては、例えば、下記(a
)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の電離放射線硬化性樹脂
を塗工する工程と、電離放射線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜
を工程シート原版から剥離する工程とを有する方法。ここで、電離放射線とは、通常、紫
外線または電子線のことであるが、本発明では、可視光線、X線、イオン線等も含む。
(b)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗
工する工程と、加熱して前記液状熱硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を工程シー
ト原版から剥離する工程とを有する方法。
(c)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触
させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版に押圧しながら加熱して軟化
させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を工程シート原版から
剥離する工程とを有する方法。
【0058】
また、工程シート原版を用いて2次工程用成形物を作製し、その2次工程用成形物を用いて透明樹脂層1を製造することもできる。2次工程用成形物を用いる具体的な方法としては、下記(d)〜(f)の方法が挙げられる。
【0059】
(d)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、ニッケル等の金属めっきを行って、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を工程シート原版から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、次いで、2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工する工程と、前記未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂の2次工程用成形物側と反対側の面に、易成形性を有するポリエチレンテレフタレート等からなる樹脂製フィルムを重ねる工程と、前記樹脂製フィルム側から、活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜と樹脂製フィルムが一体化した積層フィルムを2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(e)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を工程シート原版から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱により該樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(f)工程シート原版の凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を工程シート原版から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
【0060】
なお、(d)〜(f)では工程シート原版の凹凸パターンを金属に転写させて2次工程用成形物を得たが、樹脂に転写させて2次工程用成形物を得てもよい。その場合に使用できる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、(d)の方法で使用する活性エネルギー線硬化性樹脂などが挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂を用いる場合には、(d)の方法と同様に、活性エネルギー線硬化性樹脂の塗工、硬化、剥離を順次行って、2次工程用成形物を得る。
活性エネルギー線硬化性樹脂として、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性型樹脂が挙げられ、活性エネルギー線としては紫外線または電子線および可視光線、X線、イオン線等も含む。活性エネルギー線硬化樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が好ましく、成形性に優れるため、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂がより好ましい。
【0061】
2.透明樹脂層1が、粒子入り表面微細凹凸構造フィルムである場合の該フィルムについて、その構造、製造方法など以下に説明する。
【0062】
〔粒子入り表面微細凹凸構造フィルムの構成〕
図2に、透明樹脂層が粒子入り表面微細凹凸構造フィルムである場合の透明樹脂層の概略の断面を示す。
図2において、可撓性を有する柔軟な透明樹脂からなる透明フィルム基材1aの片面に、光拡散層として機能するバインダー層1bが形成されて、全体として2層構造の透明樹脂層1が構成されている。
【0063】
バインダー層1bは、透明フィルム基材1aの側から入射された光を、散乱させて外部に放射させるためのものである。このバインダー層1bは、分散配置された多数の透明な微小粒子1cと、その多数の微小粒子1cを透明フィルム基材1aの片面上において固着保持するための透明なバインダー1dとから構成される。また超深度形状測定顕微鏡を用いて、一定領域内の厚み方向のプロファイルを計測し、それらのデータから
図2中にHで表した粒子突出部のバインダー層表面からの高さHの平均値hを得た。また、成形機加工前(積層前)に測定した平均高さh‘と成形機加工後(積層後)に測定した平均高さhの比をh/h‘とすると、h/h‘は好ましくは0.8以上1.0以下がよい。図中微小粒子の直径が異なっているように見えるが平均直径の異なる微小粒子を1種以上、数種類使用してもよい。
【0064】
なお、本明細書において、“透明”とは、光拡散シートとしての使用を妨げない程度の
光透過性を備えていることを意味し、また光拡散シートの用途や使用態様によっては、着
色透明であることも許容される。光拡散シート全体の光透過性は、可視光(380nm〜
800nm)の透過率で、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以
上がさらに好ましい。
【0065】
〔実施形態の好ましい条件・材料〕
透明フィルム基材は、光拡散層を支持すると同時に光を透過させるものであり、種々の形状の面に沿わせ得る程度の可撓性を有していればよい。先に説明した透明樹脂層1を構成する樹脂に列記されるものが使用される。また透明フィルム基材の厚みも特に限定されないが、12〜250μmが望ましい。
【0066】
バインダー層の微小粒子は、透明フィルム基材の側からバインダー層に入射された光を拡散させるための主体となるものであって、その粒子体の形状は、通常は球体(真球あるいはそれに近い楕円球体など)が好ましいが、それに限られるものではなく、一般的な光拡散シートに用いられる粒子形状を任意に適用することができる。具体的な微小粒体の材料としては、特に限定されないが、例えばポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ナイロン、 尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂及びこれらの共縮合樹脂など、またアルミナ、ホワイトアルミナ、シリカ等の無機系顔料などを使用することができる。
これらの材料は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。併用する場合は、2種類以上の材料を混合した材料で粒子を形成してもよいし、一の材料を他の材料でコーティングするなど、一の材料に対して他の材料が偏在するようにして粒子を形成してもよい。
【0067】
特にバインダー樹脂との屈折率差をより少なくする観点からは、バインダー樹脂がアクリルポリウレタン2液硬化タイプである場合にはポリメチルメタクリレート樹脂粒子などである。通常はポリスチレン樹脂が用いられる。微小粒子の平均粒径も、特に限定されるものではなく、1μm〜30μmであればよい。なお微小粒子としては、必ずしも均一な粒径のものを用いる必要は無く、粒径がばらついていてもよく、また異なる平均粒径を有する複数種の微小粒子を混合して使用しても差し支えない。
なお本明細書において、平均粒径とは、粒子の分散液をレーザー回折式粒度分布測定装
置により測定して得られる累積中位径を意味する。すなわち、サンプル粒子群の全体積を
100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが、50%となる点の粒子径で
ある。
【0068】
バインダー層のバインダーとして使用される樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の光学的透明性を有する樹脂が使用される。中でも硬化型樹脂を主成分とすることが好ましく、電離放射線硬化型樹脂を主成分とすることがより好ましく、紫外線硬化型樹脂を主成分とすることがさらに好ましい。成形性に優れるため、紫外線硬化型ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂がより好ましい。
さらにバインダー層のバインダーの樹脂としては、透明な樹脂であってかつ微小粒子との密着性が良好な樹脂であればよく、特に限定されないが、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂およびこれらの共重合樹脂などを使用することができる。
【0069】
(粘着剤層及び接着剤層)
粘着剤層2を構成する粘着剤としては、公知の粘着剤を利用することができる。粘着剤としては、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。粘着剤は、溶剤系、無溶剤系、エマルジョン系、水系のいずれを用いることもできる。これらのなかでも、透明度、耐候性、耐久性、コスト等の観点から、溶剤系アクリル系粘着剤又は無溶剤系アクリル粘着剤が好ましい。
粘着剤には、必要に応じて他の助剤が添加されていてもよい。他の助剤としては、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤、酸化防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、増粘剤、pH調整剤、バインダ、架橋剤、粘着性粒子、消泡剤、防腐防黴剤、顔料、無機充填剤、安定剤、濡れ剤、湿潤剤を用いることができる。
【0070】
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族(C5)系石油樹脂、芳香族(C9)系石油樹脂、共重合(C5/C9)系石油樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン、ロジンエステル樹脂、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、およびこれらの水添型樹脂等を用いることができる。
粘着剤中の粘着付与剤の含有量は、粘着剤100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。
粘着剤層2の厚みは、10〜100μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましい。粘着剤層2の厚みが上記範囲内であると、充分な粘着性と経済性とをさらに好ましいものとすることができる。
粘着剤層2は、接着剤層であってもよい。接着剤層は、公知のものを利用でき、上記粘着剤と同様のものを用いることができる。
【0071】
(剥離層)
剥離層3は、上記シート10を被着体に積層するまで粘着剤層2を一時的に保護する層である。剥離層3は、例えば、クラフト紙若しくはグラシン紙等の剥離紙、又は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルムであってもよい。なお、本明細書において、剥離層3はセパレータ又はセパレートフィルムと称することもある。
【0072】
(被着体)
本発明において、被着体の形状、すなわち、微細な凹凸を有する透明樹脂層を有するシートを積層させる対象物の形状は、非平面である。この形状は、例えば、
図3に示されている凸形状、
図4及び
図5に示されている凹形状等のような略球面形状又は凹凸形状であってもよいし、又は、
図6示されているような樋状の二分割チューブの内表面等のような円柱形状であってもよい。
【0073】
図3は、凸形状の被着体20の表面にシート10を積層することによって作製した本発明の表面微細凹凸構造体100を示す。シート10が剥離層3を有する場合には、シート10を積層する直前に剥離層3は除去される。
被着体20の凸形状は、例えば、特定の1点を中心として被着体の全体が凸である形状、複数の点を中心として被着体の全体が凸である形状、特定の1線を中心として被着体の全体が凸である形状等が挙げられる。被着体20は、特定の1点を中心として被着体の全体が凸である形状を有することが好ましい。特定の1点を中心として被着体の全体が凸である形状は、従来のインサートモールド法により好適に成形することが特に困難な形状である。従って、被着体がそのような形状を有する場合、本発明の効果がより有効になる。
【0074】
図4は、凹形状の被着体30の表面にシート10を積層することによって作製した本発明の表面微細凹凸構造体110を示す。
凹形状の被着体30は、例えば、特定の1点を中心として被着体の全体が凹である形状、複数の点を中心として被着体の全体が凹である形状、特定の1線を中心として被着体の全体が凹である形状等が挙げられる。被着体30は、特定の1点を中心として被着体の全体が凹である形状を有することが好ましい。特定の1点を中心として被着体の全体が凹である形状は、従来のインサートモールド法により好適に成形することが特に困難な形状である。従って、被着体がそのような形状を有する場合、本発明の効果がより有効になる。
【0075】
図5は、凹形状のガラス体40の表面にシート10を積層することによって作製した本発明の表面微細凹凸構造体120を示す。
図5において、シートが積層される被着体がガラス体40である。凹形状のガラス体40は、凹形状の被着体30と同様の形状を有することが好ましい。
【0076】
図6は、樋状の二分割チューブ50の内表面にシート10を積層することによって作製した本発明の表面微細凹凸構造体130の構成を示す略断面図。
チューブ50の直径は、上記構造体130の用途に合わせて適切に設定すればよい。チューブ50の直径は、例えば、好ましくは10〜80mmであり、より好ましくは20〜70mmであり、更に好ましくは30〜60mmである。
前記の被着体の材質は、光を透過するものが好ましい。被着体の材質は、実質的に透明な材料であることがより好ましい。被着体の材質は、例えば、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ノルボルネン、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ABS、アクリル、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、これらの樹脂のアロイ、又は、ガラスが好ましい。被着体には、必要に応じて、拡散子が配合されていてもよい。拡散子としては、有機微粒子、無機微粒子など公知のものが使用できる。光が透過する観点から、拡散子の使用量は、実質的に透明な材料100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
前記の被着体は、必要に応じて、すりガラス状になっていてもよい。また、必要に応じて染料により着色されていてもよい。染料としては、耐光性の観点から顔料系が好ましい。また必要に応じて意匠性を得る為、被着体が印刷されたものであってもよい。また必要に応じて金属蒸着層、金属メッキ層が設けられていてもよい。
【0077】
(成形方法)
シート10は、減圧条件下で、透明樹脂層1の片面側(波状の凹凸パターンを有する側)を非接触方式で加圧することによって被着体に積層されることが好ましい。非接触方式で加圧するとは、透明樹脂層1等に対して、金型等を物理的に接触させることなく、空気やガス等の気体による圧力を加えることを意味する。また、略真空条件下で透明樹脂層1の片面側(波状の凹凸パターンを有する側)に対して大気圧又は圧縮空気を適用することがより好ましい。
すなわち、本発明において、シート10は、真空成形、真空圧空等の気圧差を利用した成形方法により積層することができる。そのような成形方法の中でも、いわゆるTOM成形法によりシート10を被着体に積層(より好ましくは、圧着)させることが好ましい。TOM成形法は、本明細書において異なるように記載されていない限り、特開第2002−079573号公報「真空成型装置」(布施真空株式会社)、特開第2002−067137号公報「真空成型装置」(布施真空株式会社)、特開第2012−116094号公報「真空成型方法」(布施真空株式会社)、及び、特開第2012−096416号公報「真空成型機、真空成型機用基板及び真空成型方法」(布施真空株式会社)に記載の方法に従って行うことが好ましい。
また、TOM成型法に用いる装置は、例えば、NGF成形機(布施真空株式会社製)が好ましい。
【0078】
本発明において、TOM成形法によりシートを被着体に積層させる際の温度(TOM成型機の成型室の温度)は、70〜130℃であることが好ましい。上記温度は、より好ましくは80〜120℃であり、更に好ましくは90〜110℃である。上記温度範囲内で成型を行うことにより、透明樹脂層の表面に存在する波状の凹凸パターンまたは微小粒子の一部の突出に拠る凹凸パターンの劣化の抑制、及び、シートと被着体との密着性(又は被着体に対するシートの追従性)を両立することができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0080】
(作製例1)
ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂をトルエンで希釈することによって、硬質層形成用塗料(固形分濃度8質量%)を得た。
この塗料を、一軸方向に収縮する加熱収縮性樹脂フィルム(ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、製品名:LX−18S、三菱樹脂製、厚さ30μm)の片面に、バーコーターにより、乾燥後の厚さが2.0μmになるように塗工した。次いで、この塗料を乾燥させることにより、表面平滑硬質層を形成して積層体を得た。
次いで、前記積層体の1軸収縮方向に張力が掛かるように前記積層体の両端をクランプで固定した。前記積層体を110℃で1分間加熱すると共に、加熱後の積層体の1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層体の1軸収縮方向の長さの48%(すなわち、収縮率48%)となるように積層体の1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
これにより、表面平滑硬質層の表面に、複数の突条が収縮方向に沿って配列することにより形成された凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートを得た。
次いで、凹凸パターン形成シートのパターン形成面に、ニッケル電鋳めっきを行い、電鋳品を凹凸パターン形成シートから剥離し、凹凸パターン形成シートの凹凸パターンが反転したパターンを有する厚さ300μmのニッケル電鋳シートを得た。
次いで、無延伸の透明ポリカーボネートシート(厚さ140μm)を250℃に加熱し、ポリカーボネートシートに対して、ニッケル電鋳シートの反転凹凸パターンが形成された面を押し当てた。その後、ポリカーボネートシートを冷却した。次いで、ニッケル電鋳シートからポリカーボネートシートを剥離することにより、凹凸パターン形成シートと同じ凹凸パターンを有する2次転写品を得た。このようにして得た2次転写品フィルムは蛇波状の凹凸パターン(ナノバックリング形状)を表面に有する無延伸のポリカーボネートナノバックリングシートであった。このシートを、実施例1〜6及び参考例1〜4において被着体に積層するためのシート又は非平面形状を有するシートを作成するための材料として用いた。さらに、GENESIA GonioFar Field Profiler(ジェネシア社製)を用いて、シートの中央部の拡散角度を測定した。また、前述の方法でシートの凹凸の平均深さを測定した。また前述の方法により、シートの凹凸パターンの最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0081】
(作製例2)
ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂をトルエンで希釈することによって、硬質層形成用塗料(固形分濃度8質量%)を得た。
この塗料を、一軸方向に収縮する加熱収縮性樹脂フィルム(ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、製品名:SC−807、東洋紡績製、厚さ30μm)の片面に、バーコーターにより、乾燥後の厚さが2.0μmになるように塗工した。次いで、この塗料を乾燥させることにより、表面平滑硬質層を形成して積層体を得た。
次いで、前記積層体の1軸収縮方向に張力が掛かるように前記積層体の両端をクランプで固定した。前記積層体を110℃で1分間加熱すると共に、加熱後の積層体の1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層体の1軸収縮方向の長さの48%(すなわち、収縮率48%)となるように積層体の1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。次にその積層体を長方形状に切り取り、収縮方向と直交方向となる非収縮方向に両端をクランプで固定し、130%(すなわち、延伸倍率1.3倍)となるように非収縮方向に張力を掛けて延伸した積層体を得た。
これにより、表面平滑硬質層の表面に、複数の突条が収縮方向に沿って配列することにより形成された凹凸パターンを有する凹凸パターン形成シートを得た。
次いで、凹凸パターン形成シートのパターン形成面に、ニッケル電鋳めっきを行い、電鋳品を凹凸パターン形成シートから剥離し、凹凸パターン形成シートの凹凸パターンが反転したパターンを有する厚さ300μmのニッケル電鋳シートを得た。
次いで、ニッケル電鋳シートの反転凹凸パターンが形成された面に未硬化のウレタン(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂[(ナノインプリント用)を塗工した。次いで、ニッケル電鋳シートと接する側と反対側において、紫外線硬化型樹脂に易成形ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ188μm)を重ねた。次いで、易成形ポリエチレンテレフタレートフィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させた。次いで、硬化した塗膜と易成形ポリエチレンテレフタレートフィルムとが一体化した積層体をニッケル電鋳シートから剥離することにより、凹凸パターン形成シートと同じ凹凸パターンを有する2次転写品を得た。このようにして得た透明樹脂層となる2次転写品フィルムは、蛇行した波状の凹凸パターン(ナノバックリング形状)を表面に有する易成形ポリエチレンテレフタレートナノバックリングシート(すなわち、凹凸パターン付き易成形PETシート)であった。このシートを、実施例7〜14において被着体に積層(貼着)するためのシート又は非平面形状を有するシートを作成するための材料として用いた。また、作製例1と同様の測定を行った。
【0082】
(ヤング率および破断伸びの測定試験)
作製例2で用いたのと同じ紫外線硬化型樹脂組成物を用いて、下記のように、試験片を作製し、ヤング率と破断伸びの測定を行った。
シリコーンが塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、膜厚が200μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。次に、塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に対して窒素雰囲気下でメタルハライドランプを用いて1J/cm
2の紫外線を照射することによって、該組成物を硬化させた。次に、硬化した活性エネルギー線硬化性樹脂をポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離させることにより、硬化膜を得た。得られた硬化膜をカットし、幅6mm、長さ25mmの短冊状サンプルを作製した。
次に、この短冊状サンプルについて、引張り試験機を用いて、湿度50%、温度23℃又は温度120℃の条件で、JIS K7127に準拠して引張り試験を行った。引張速度は1mm/分とし、2.5%歪みでの抗張力からヤング率(MPa)を求めた。
その結果、試験片のヤング率は、23℃で測定したときは5000MPaであり、120℃で測定したときは100MPaであった。
引張り試験機を用い、湿度50%、温度23℃又は温度120℃の条件下で、引張り速度を50mm/分として、短冊状サンプルの破断伸び(%)を測定した。その結果、試験片の破断伸びは、23℃で測定したときは5%であり、120℃で測定したときは100%であった。
【0083】
(作製例3)
図2に示した実施形態の透明樹脂層1、すなわち透明フィルム基材上にバインダー層を形成した2層構造の粒子入り表面微細構造フィルムを以下のように作成した。
作製例2で使用したと同じ易成形ポリエチレンテレフタレートフィルムを透明フィルム基材として使用し、その片面に、乾燥後の塗工量が8.0g/m
2となるようにバインダー層形成用の下記塗工液A1を、バーコーターにより塗布した。
ここで、乾燥後のバインダー層の厚みは6.5μmである。また、乾燥後のバインダー層におけるポリスチレン粒子(第1の微小粒子)の全体の平均粒径は8.3μmである。なお各層の厚みは、顕微鏡でシート断面を拡大し、バインダー層の厚さ(粒子の存在しない部分の厚さ)を10点実測して、平均値とした。また、作製例1と同様にして拡散角度を測定した。また、前述の方法により、粒子突出部のバインダー層表面からの高さの平均値を測定した。結果を表1に示す。
(塗工液A1)
アクリル樹脂A(ガラス転移温度Tg=105℃)・・・8.0質量部
架橋ポリスチレン粒子(積水化成品工業株式会社製テクポリマーSBX−6;平均粒径6.4μm、ガラス転移温度なし)・・・13.0質量部
架橋ポリスチレン粒子(積水化成品工業株式会社製テクポリマーSBX−12;平均粒径11.7μm、ガラス転移温度なし)・・・10.0質量部
トルエン・・・69.0質量部
【0084】
(作製例4)
図2に示した実施形態の透明樹脂層1、すなわち透明フィルム基材上にバインダー層を形成した2層構成の粒子入り表面微細構造フィルムを以下のように作成した。
作製例2で使用したと同じ易成形ポリエチレンテレフタレートフィルムを透明フィルム基材として使用し、その片面に、乾燥後の塗工量が8.0g/m
2、となるようにバインダー層形成用の下記塗工液A2を、バーコーターにより塗布した。
ここで、乾燥後のバインダー層の厚みは6.4μmである。また、乾燥後のバインダー層におけるポリスチレン粒子(第1の微小粒子)の全体の平均粒径は8.3μmである。なお各層の厚みは、顕微鏡でシート断面を拡大し、バインダー層の厚さ(粒子の存在しない部分の厚さ)を10点実測して、平均値とした。
また、作製例3と同様の測定を行い、結果を表1に示す。
(塗工液A2)
アクリル樹脂B(ガラス転移温度Tg=112℃・・・8.0質量部
架橋ポリスチレン粒子(積水化成品工業株式会社製テクポリマーSBX−4;平均粒径4.0μm、ガラス転移温度なし)・・・10.0質量部
架橋ポリスチレン粒子(積水化成品工業株式会社製テクポリマーSBX−6;平均粒径6.4μm、ガラス転移温度なし)・・・12.0質量部
架橋ポリスチレン粒子(積水化成品工業株式会社製テクノポリマーSBX−12;平均粒径11.7μm、ガラス転移温度なし)・・・9.0質量部
トルエン・・・69.0質量部
【0085】
実施例1
セパレートフィルムに粘着剤を塗布して乾燥した。作製例1で得たシート(厚さ140μm、主拡散方向の拡散角度29.9度のポリカーボネートナノバックリングシート)の裏面が粘着剤の層に接するように、該シートを該粘着剤の層に積層することにより、ナノバックリング粘着シートを作成した。次いで、その粘着シートからセパレーターを取り外した。次いで、直径50mmのガラス製時計皿の凸面上と、粘着シートの粘着剤層とが向き合うように、その粘着シートをTOM成形機(商品名:NGF成形機、布施真空株式会社製)にセットした。TOM成形機を用いて100℃で粘着シートを上記被着体に積層させることによって、表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは、被着体の凸面側の形状に沿うように良好に一体化できた。GENESIA GonioFar Field Profiler(ジェネシア社製)を用いて、被着体の中央部の拡散角度を測定した。さらに、前述の方法で透明樹脂層の積層前、後の凹凸の平均深さを測定した。また前述の方法により、凹凸パターンの最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0086】
実施例2
実施例1のガラス製時計皿の凹面に実施例1と同様にして得た粘着シートをTOM成形により120℃で積層した以外は、実施例1と同様にして表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは被着体の凹面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法でその表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0087】
実施例3
実施例1のガラス製時計皿と同形状のポリアリレート製の被着体の凹面に粘着シートを積層した以外、実施例1と同様に粘着シートをガラス製時計皿に積層することによって表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは被着体の凹面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法で表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0088】
実施例4
上記ガラス製時計皿の代わりに、直径3cm、長さ15cmの透明ポリカーボネートチューブを軸方向に正二分割に、縦割りし、樋状の二分割チューブを得た。その一方を被着体として用いた。TOM成形を110℃で行った以外、実施例1と同様の条件で、該チューブの内表面に粘着シートを積層した。粘着シートは被着体の凹面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法で、樋状の二分割チューブ(表面微細凹凸構造体)の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0089】
実施例5
実施例2で用いたものと同じガラス製時計皿の凹面と、作製例1で得たシートの裏面(粘着剤加工を行わずに)とが向き合うように、該シートをTOM成形機(商品名:NGF成形機、布施真空株式会社製)にセットした。TOM成形は120℃でおこなった。該シートはガラス製時計皿の凹面側の形状に沿うように良好に成形できた。次いで、ガラス製時計皿からシートを取り外した。実施例1と同様の方法で、このシートの拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0090】
実施例6
実施例5のガラス製時計皿に代えて、防雨入線カバー(品番:WP9171[パナソニック株式会社社製])を被着体として用いた。この防雨入線カバーの外面(凸面)と、作製例1で得たシートの裏面(粘着剤加工を行わずに)とが向き合うように、防雨入線カバーとシートをTOM成形機(商品名:NGF成形機、布施真空株式会社製)にセットした。TOM成形は110℃でおこなった。シートは防雨入線カバーの形状に沿うように良好に成形できた。次いで、防雨入線カバーからそのシートを取り外した。実施例1と同様の方法で、このシートの拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0091】
実施例7
セパレートフィルム上に粘着剤を塗布して乾燥した。次いで、この粘着剤の層と、作製例2で得たシート(主拡散方向の拡散角度39.6度の易成形ポリエチレンテレフタレートナノバックリングシート)の裏面(凹凸パターンが形成された面と反対面)とが接するように、該シートを積層することにより、粘着シートを作成した。次いで、粘着シートからセパレーターを取り外した。直径70mmのガラス製時計皿の凸面と、粘着シートの粘着剤層とが向き合うように、粘着シートをTOM成形機(商品名:NGF成形機、布施真空株式会社製)の専用治具架台の上にセットした。TOM成形機を用いて120℃で粘着シートを被着体に積層させた。このようにして表面微細凹凸構造体を得た。作製例2で得たシートは、被着体の凸面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法で、この表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0092】
実施例8
実施例7で用いたものと同じガラス製時計皿の凸面に、実施例7と同様にして得た粘着シートをTOM成形機により100℃で積層した以外は、実施例7と同様にすることによって表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは被着体の凸面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法で、この表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0093】
実施例9
実施例7で用いたものと同じガラス製時計皿の凸面に、実施例7と同様にして得た粘着シートをTOM成形機により150℃で積層した以外は、実施例7と同様にすることによって表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは、被着体の凸面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法で、この表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0094】
実施例10
実施例7で用いたものと同じガラス製時計皿の凹面に、実施例7と同様にして得た粘着シートを積層した以外は実施例7と同様の条件で表面微細凹凸構造体を得た(実施例7ではガラス製時計皿の凸面に対して粘着シートを積層した。)。粘着シートは被着体の凹面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法で、この表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0095】
実施例11
実施例7で用いたガラス製時計皿の代わりに、直径10cmの透明アクリル半球を被着体として用いた以外は実施例7と同様の条件で表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは被着体の透明アクリル半球の凸面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法で、この表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0096】
実施例12
実施例7で用いたものと同じのガラス製時計皿の凹面と、作製例2で得たシートの裏面(凹凸パターンが形成された面と反対面。裏面に粘着加工を行わない。)とが向き合うように、ガラス製時計皿及びシートをTOM成形機(商品名:NGF成形機、布施真空株式会社製)にセットした。TOM成形を120℃でおこなった。シートはガラス製時計皿の凹面側の形状に沿うように良好に成形できた。次いで、ガラス製時計皿からシートを取り外した。実施例1と同様の方法で、このシートの拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0097】
実施例13
実施例12で用いたものと同じガラス製時計皿の凹面に、実施例7と同様にして得た粘着シートをTOM成形機により150℃で積層した以外は、実施例12と同様にすることによって表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは被着体の凹面側の形状に沿うように良好に一体化できた。次いで、ガラス製時計皿からシートを取り外した。実施例1と同様の方法で、このシートの拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0098】
実施例14
実施例11のガラス製時計皿の代わりに、防雨入線カバー(品番:WP9171[パナソニック株式会社社製])を被着体として用いた。この防雨入線カバーの外面(凸面)と、作製例2で得たシートの裏面(凹凸パターンが形成された面と反対面。裏面に粘着加工を行わない。)とが向き合うように、防雨入線カバー及びシートをTOM成形機(商品名:NGF成形機、布施真空株式会社製)にセットした。TOM成形を110℃でおこなった。シートは防雨入線カバーの形状に沿うように良好に成形できた。防雨入線カバーからシートを取り外した。実施例1と同様の方法で、このシートの拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0099】
実施例15
実施例12において、使用された作製例2で得たシートの代わりに作製例3で得たシートを使用したこと、およびガラス製時計皿の代わりに直径100mmのアクリル半球を使用し、その凸面がシートの裏面とが向き合うようにして成形を行ったこと以外は、実施例12と同様にしてシートを得た。シートはアクリル半球の凸面側の形状に沿うように良好に成形できた。作製例3と同様の方法でそのシートの拡散角度、粒子突出部の高さの平均値を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
実施例16
実施例15と同様に作製例3で得たシートの代わりに作製例4で得たシートを使用してシートを得た。実施例15と同様の方法でそのシートの拡散角度や粒子突出部の高さの平均値を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
参考例1
140℃で成形を行った以外は、実施例1と同様の条件でTOM成形機を用いて実施例1と同様にして得た粘着シートを積層させることによって、表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは被着体の凹面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法で、この表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0102】
参考例2
160℃で成形を行った以外は、実施例1と同様の条件でTOM成形機を用いて実施例1と同様にして得た粘着シートを被着体に積層させることによって、表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは被着体の凹面側の形状に沿うように良好に一体化できた。実施例1と同様の方法で、この表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。。結果を表1に示す。
【0103】
参考例3
TOM成形を160℃で行った以外、実施例5と同様に行った。結果を表1に示す。
【0104】
参考例4
TOM成形を140℃で行った以外、実施例6と同様に行った。結果を表1に示す。
【0105】
参考例5
作製例2において使用した加熱収縮性樹脂フィルムを通常のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名 コスモシャインA4300 東洋紡績製 厚さ188μm)に変更した以外は、実施例7と同様に表面微細凹凸構造体を得た。粘着シートは被着体の凸面側の形状に沿うように一体化できなかった。実施例1と同様の方法で、この表面微細凹凸構造体の拡散角度や凹凸の平均深さ、最頻ピッチを測定した。結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
表中のB/B`比は凹凸構造の成形機加工前(積層前)に測定した平均深さB‘と加工後(積層後)に測定した平均深さBの比を表している。ただし、表中、作製例3,4実施例15,16については
図2中にHで表した粒子突出部のバインダー層表面からの高さの平均値hについての前記の平均深さBと同様の比である。すなわち、成形機加工前(積層前)に測定した微小粒子の突出部の平均高さh’に対する前記透明樹脂層の成形機加工後(積層後)の微小粒子の突出部の平均高さhの比を表している。表中の最右欄の平均高さも同様にhを示している。