(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
歯磨剤組成物が、更に(F)カラギーナンを含有し、(E)成分と(F)成分との合計含有量が0.5〜4質量%、かつ(D)成分/((E)成分+(F)成分)が質量比として22〜58である請求項1乃至3のいずれか1項記載の歯磨製品。
更に、(F)カラギーナンを含有し、(E)成分と(F)成分との合計含有量が0.5〜4質量%、かつ(D)成分/((E)成分+(F)成分)が質量比として22〜58である請求項7乃至9のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用の電動歯ブラシの売れ行きが好調であり、外出先でもオーラルケアを行う人が増加している。
しかし、併せて使用する歯磨剤としては、従来型の容量が130g入りの通常サイズの歯磨剤を使用している人が多く、このような容量のものは持ち運びや置き場所に困るオフィスには適していなかった。一方、携帯用として小サイズ容器に収容した容量30g入りの歯磨剤があるが、こちらは収容量が少ないため使用回数が限られ、継続使用には向いていなかった。
【0003】
こういった状況を考慮すると、携帯用に優れた少量入りの小サイズ容器でも、通常サイズと同じ回数使用できる歯磨剤の開発が望まれる。しかし、少量入りの歯磨剤を、通常サイズと同じ回数使用するためには、一回の使用量を少なくする必要があるが、既存製品で歯磨剤の一回の使用量(通常は1g程度)を減らすと、泡立ちが少なく使用時に物足りないという問題があった。
また、歯磨剤組成物の泡立ち確保のためには、アニオン界面活性剤の増量が有効であるが、製剤を少量使用しても十分な泡立ちを確保できる量のアニオン界面活性剤を配合すると刺激が出たり、液分離が発生してしまうなどの問題があった。
従って、少量使用でも泡立ち、泡持ちに優れ、刺激感がなく、液分離などが発生しない歯磨剤組成物はなく、開発が望まれていた。
【0004】
特許文献1;特開2006−347987号公報には、泡立ち性が適度で、更に刺激を低減した口腔用組成物として1.7質量%以上のアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を併用させる技術が提案されている。しかし、これは上記界面活性剤をキサンタンガム及びアルギン酸塩と併用することで泡立ち性を改善したもので、界面活性剤の併用によるものではない。また、少量使用時の泡立ち、泡持ちについては言及されていない。
特許文献2;特開平10−72342号公報には、水性組成物で界面活性剤の刺激を除去する手段としてアニオン界面活性剤に対する非イオン界面活性剤の比率が規定されているが、歯磨剤組成物の泡立ち、泡持ちの改善については言及されていない。
【0005】
一方、少量使用する製剤を充填する容器としては、1回の使用量がコントロールできないチューブ容器よりも、ワンプッシュで収容物を必要量吐出可能なポンプ容器、例えばポンプディスペンサーを有する容器等が好適である。
しかしながら、このようなポンプ容器に歯磨剤組成物を充填すると、吐出時に歯磨剤組成物がその曳糸性によって吐出口口元に残存したり固化し、繰り返し使用すると一定量吐出させることができなくなるという問題があった。吐出量が少量である場合、特に、定量性は重要な課題である。
【0006】
特許文献3;特開2009−215176号公報には、グリセリン、粘稠剤、シリカ系研磨剤、雲母チタンを含有する歯磨組成物が、ポンプディスペンサーを備えた容器からの排出性、使用性に優れることが提案されているが、これは雲母チタン配合による排出性、使用性の改善であり、歯磨剤組成物の少量使用についても言及がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、歯磨剤組成物においては、少量使用でも泡立ち、泡持ちに優れ、刺激感がなく、液分離などが発生せず、かつ、ポンプディスペンサー容器使用の場合に曳糸性やポンプ内での詰りなどによる吐出定量性が損なわれない組成物の開発が課題となっていた。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、少量使用で適度に泡立ち、泡持ちも良く泡性能に優れ、かつ、ポンプディスペンサーを有する容器に充填し定量吐出させて使用することができる、ポンプディスペンサーを有する容器充填用歯磨剤組成物及びこれを用いた歯磨製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)アニオン界面活性剤と、(B)ノニオン界面活性剤と、(C)両性界面活性剤とを含有し、かつ(A)、(B)及び(C)成分の合計量が3〜10質量%、(B)/(A)が質量比として0.3〜2であり、かつ(D)糖アルコール及び/又は多価アルコール、(E)キサンタンガム及び/又はポリアクリル酸ナトリウムを含有する歯磨剤組成物が、少量使用で適度な泡立ち、泡持ちを確保できる優れた泡性能を有し、また、刺激、苦味がなく良好な使用感を与え、液分離が発生せず、かつポンプディスペンサーを有する容器に充填して繰り返し使用しても定量吐出させることができ、ポンプディスペンサーを有する容器に充填し歯磨製品として好適であることを知見した。
【0010】
即ち、歯磨剤組成物の泡立ち改善にアニオン界面活性剤の増量は有効であるが、増量すると歯磨き時に刺激が生じてしまう。また、従来の歯磨剤組成物においてアニオン界面活性剤を増量しただけでは、少量使用した場合に製剤の口腔内での消失が早く、また、適度な泡量が確保できないという課題が生じた。更に、アニオン界面活性剤を増量することで味低下の問題も生じた。なお、1回の製剤使用量が少ない場合、刺激、味低下はある程度低減するが、上記したように歯磨き時の泡立ち、泡持ちが技術課題となっていた。
これに対して、本発明者は、(A)、(B)及び(C)成分を組み合わせこれら成分の合計量を特定範囲とし、かつ(D)成分を適切量配合することで、意外にも、上記課題が解消し、アニオン界面活性剤を増量しただけでは得られなかった歯磨き時の泡立ち、泡持ちを十分に確保でき、また味、刺激の問題も同時に解消できること、これにより、一回の製剤使用量が通常より少なく0.5g以下であっても歯磨き時に適度に泡立ち、泡持ちも良く十分な泡量が確保されることを見出した。加えて、(A)〜(D)成分と共に(E)成分を組み合わせて配合することで、経時における液分離を抑制し、かつポンプディスペンサーを有する容器からの定量吐出性が優れることを見出した。この場合、本発明者は、(A)〜(D)成分を組み合わせ、特にアニオン界面活性剤を増量すると、高温保存時に液分離が生じるという新たな課題が生じることを見出し、更に検討を進めた結果、(A)〜(D)成分と共に(E)成分を組み合わせ、更に好ましくは(F)カラギーナンを配合することで、上記液分離の課題も解消し、上記格別な作用効果を付与することができたものである。
【0011】
なお、特許文献3は、歯磨剤組成物がポンプディスペンサーを備えた容器に収容され、排出性が優れ口元固化を抑制し得るものであるが、これは雲母チタン配合による排出性、口元固化の改善であり、また両性界面活性剤の配合を必須要件とするものではなく、少量使用が目的でもない。組成物中に雲母チタンを含まなくてもポンプ容器からの排出性が優れ、定量排出し得る本発明とは技術的に相違する。
【0012】
従って、本発明は下記の歯磨剤組成物及び歯磨製品を提供する。
〔1〕
(A)アニオン界面活性剤を1.5〜5質量%と、
(B)ノニオン界面活性剤を0.6〜6質量%と、
(C)両性界面活性剤を0.5〜3質量%と
を含有し、(A)、(B)及び(C)成分の合計量が3〜10質量%、(B)成分/(A)成分が質量比として0.3〜2であり、かつ
(D)糖アルコール及び/又は多価アルコールを40〜60質量%と、
(E)キサンタンガム及び/又はポリアクリル酸ナトリウムを0.5〜4質量%と
を含有し、(D)成分/(E)成分が質量比として28〜43であり、25℃における粘度が50〜300ポアズである歯磨剤組成物が、1回当たりの取り出し量が0.1〜0.5gであるポンプディスペンサーを有する容器に充填されてなることを特徴とする歯磨製品。
〔2〕
(A)成分が
アルキル基の炭素数が8〜18であるアルキル硫酸塩、(B)成分がエチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜60モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)成分がヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインである〔1〕に記載の歯磨製品。
〔3〕
(B)成分/(A)成分の質量比が0.5〜1.3である〔1〕又は〔2〕に記載の歯磨製品。
〔4〕
歯磨剤組成物が、更に(F)カラギーナンを含有し、(E)成分と(F)成分との合計含有量が0.5〜4質量%、かつ(D)成分/((E)成分+(F)成分)が質量比として22〜58である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の歯磨製品。
〔5〕
歯磨剤組成物が、更にシリカ系研磨剤を8〜16質量%含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の歯磨製品。
〔6〕
歯磨剤組成物が、ペースト状又は
ジェル状である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の歯磨製品。
〔7〕
(A)アニオン界面活性剤を1.5〜5質量%と、
(B)ノニオン界面活性剤を0.6〜6質量%と、
(C)両性界面活性剤を0.5〜3質量%と
を含有し、(A)、(B)及び(C)成分の合計量が3〜10質量%、(B)成分/(A)成分が質量比として0.3〜2であり、かつ
(D)糖アルコール及び/又は多価アルコールを40〜60質量%と、
(E)キサンタンガム及び/又はポリアクリル酸ナトリウムを0.5〜4質量%と
を含有し、(D)成分/(E)成分が質量比として28〜43であり、25℃における粘度が50〜300ポアズである、1回当たりの取り出し量が0.1〜0.5gであるポンプディスペンサーを有する容器充填用歯磨剤組成物。
〔8〕
(A)成分が
アルキル基の炭素数が8〜18であるアルキル硫酸塩、(B)成分がエチレンオキサイドの平均付加モル数が5〜60モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)成分がヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインである〔7〕に記載の歯磨剤組成物。
〔9〕
(B)成分/(A)成分が質量比として0.5〜1.3である〔7〕又は〔8〕に記載の歯磨剤組成物。
〔10〕
更に、(F)カラギーナンを含有し、(E)成分と(F)成分との合計含有量が0.5〜4質量%、かつ(D)成分/((E)成分+(F)成分)が質量比として22〜58である〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
〔11〕
更に、シリカ系研磨剤を8〜16質量%含有する〔7〕〜〔10〕のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
〔12〕
ペースト状又は
ジェル状である〔7〕〜〔11〕のいずれかに記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少量使用で適度に泡立ち、泡持ちも良く泡性能に優れ、かつ、ポンプディスペンサーを有する容器に充填し定量吐出させて使用することができる、ポンプディスペンサーを有する容器充填用歯磨剤組成物及びこれを用いた歯磨製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の歯磨剤組成物は、(A)アニオン界面活性剤、(B)ノニオン界面活性剤及び(C)両性界面活性剤をこれらの合計配合量、(B)成分/(A)成分比が適切となる範囲で含有し、かつ(D)糖アルコール及び/又は多価アルコール、(E)キサンタンガム及び/又はポリアクリル酸ナトリウムを含有するものであり、この歯磨剤組成物は、ポンプディスペンサーを有する容器に充填し歯磨製品として調製される。
【0016】
(A)成分:アニオン界面活性剤
アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル基の炭素数が8〜18、特に10〜16のアルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム等のN−アシルアミノ酸塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。これらの塩としては、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。中でも、アルキル硫酸塩、とりわけラウリル硫酸ナトリウムが、優れた泡性能を確保できることから、より好適である。アルキル硫酸塩は、東邦化学工業株式会社製などの市販のものを使用できる。
【0017】
(A)成分のアニオン界面活性剤の配合量は、少量使用における泡立ち及び泡量確保の点から、組成物全体の1.5〜5%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは2〜4%である。1.5%以上配合すると、少量使用で十分な泡立ちを確保し、かつ泡量を確保して十分な泡持ちを得ることができる。5%以下であると、刺激や苦味、液分離が生じることがなく、また、低温保存時の練り肌が悪くなることがない。
【0018】
(B)成分:ノニオン界面活性剤
ノニオン界面活性剤としては、歯磨剤組成物に通常配合されるものを使用できるが、酸化エチレンが付加されたタイプが好ましく、特にエチレンオキサイドの平均付加モル数(以下、E.O.付加モル数と略記する。)が2〜20モルでアルキル基の炭素数が14〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はE.O.付加モル数が5〜60モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0019】
この場合、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は14〜18、特に16(セチル)〜18(ステアリル)が好ましく、E.O.付加モル数は2〜20モル、特に5〜10モルが好ましい。アルキル基の炭素数が14〜18であり、かつE.O.付加モル数が2〜20モルであるものを用いると、泡持ちが悪くなったり味が劣ることがなく、より好適である。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のE.O.付加モル数は5〜60モル、特に5〜30モル、とりわけ5〜20モルが好ましい。E.O.付加モル数が5〜60モルのものを用いると、泡持ちが悪くなったり味が劣ることがなく、より好適である。
これらの中で、(B)成分としてはとりわけE.O.付加モル数が上記範囲内のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好適である。
【0020】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えばEMALEX105、107、605、608(日本エマルジョン(株)製)、BLAUNON SR−705、707(青木油脂産業(株)製)等が挙げられる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、NIKKOL HCO−5、HCO−10、HCO−20、HCO−30、HCO−60(日光ケミカルズ(株)製)、BLAUNON CW−3、10、PCW−20(青木油脂産業(株)製)などが挙げられる。
【0021】
(B)成分の配合量は、刺激を抑えた泡持ち確保、泡持ち向上、アニオン界面活性剤配合時の液分離抑制の点から組成物全体の0.6〜6%が好ましく、より好ましくは1.0〜4.5%である。0.6%以上であると、刺激を抑えて泡量を確保し十分な泡持ちを得ることができ、また、アニオン界面活性剤配合時の刺激、液分離を十分に抑制できる。6%以下であると、泡立ち、味が劣ることもない。
【0022】
また、(A)成分に対する(B)成分の配合割合は、泡立ち、泡持ち、刺激低減の点から、(B)/(A)が質量比として0.3〜2であり、好ましくは0.5〜1.3である。0.3未満では刺激、苦味を抑えて泡量を確保することができず、泡持ちに劣ったり、液分離が生じる。2を超えると泡立ち、泡持ちに劣り、また、苦味が生じる。
【0023】
(C)成分:両性界面活性剤
両性界面活性剤としては、ベタイン系のものが好ましく、例えばアルキルベタイン系、脂肪酸アミドプロピルベタイン系、アルキルイミダゾリニウムベタイン系の両性界面活性剤を使用できる。
具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合できるが、中でもヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、とりわけヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが、効果発現の点からより好ましい。
【0024】
両性界面活性剤として具体的には、商品名NIKKOL AM−301として日光ケミカルズ(株)より販売されているラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液、商品名エナジコールC−40Hとしてライオン(株)より、またレボン105として三洋化成工業(株)より販売されている2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、商品名NIKKOL AM−3130Nとして日光ケミカルズ(株)より販売されているヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液、商品名TEGO BetainCKやTEGO BetainF50、TEGO BetainZFとしてEVONIC社より、また、レボン2000として三洋化成工業(株)より販売されているヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0025】
(C)成分の配合量は、泡立ちや泡持ち向上、味の点から組成全体の0.5〜3%が好ましく、より好ましくは0.5〜1%である。0.5%以上であると泡立ちを満足に得ることができ、3%以下であると味が悪くなることがなく、好適である。
【0026】
本発明では、(A)、(B)及び(C)成分を併用し、かつこれら成分の合計量が適切であることが、効果発現、特に泡性能改善に重要である。(A)、(B)及び(C)成分の合計量は、組成物全体の3〜10%であり、好ましくは3.6〜8%、より好ましくは3.6〜5.6%である。3%に満たないと泡立ちに劣り、10%を超えると味が悪く使用感に劣り、また液分離が生じ、本発明の目的が達成されない。
【0027】
(D)成分:糖アルコール及び/又は多価アルコール
ここで、多価アルコールとは、脂肪族炭化水素の水素原子の2個以上が水酸基(ヒドロキシル基)で置換されたアルコールである。また、糖アルコールとは、糖分子のカルボニル基が還元された鎖状のアルコールである。
糖アルコール、多価アルコールとしては、ソルビット、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール400〜4000等の多価アルコールが挙げられる。なお、ポリエチレングリコール、その平均分子量は医薬部外品原料規格2006記載のものである。中でも、ソルビット、キシリトール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール400、特にソルビット、プロピレングリコール、グリセリンが好ましい。(D)成分としては、これらから選ばれる1種を単独で、又は効果発現の点から2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらは市販品を使用することができる。グリセリンとしては、例えば阪本薬品工業(株)製の市販品、ソルビット、キシリトールは、例えばロケット社製の市販品、プロピレングリコールは、例えば旭硝子(株)製の市販品を使用できる。ポリエチレングリコールは、三洋化成工業(株)製の市販品を用いることができる。
【0028】
(D)成分の配合量は、特にポンプディスペンサーを有する容器からの定量吐出性の点から、組成物全体の40〜60%であり、好ましくは42〜54%である。40%未満では、容器口元で固化が生じ定量吐出性が劣ったり、少量使用時の泡持ちが劣る。60%を超えると、組成物の曳糸性が悪化したり容器口元に残存し定量吐出性が劣り、また、少量使用時の泡立ちが劣ったり、味が低下する。更に、液分離を抑制することができない。
【0029】
(E)成分:キサンタンガム及び/又はポリアクリル酸ナトリウム
(E)成分は、粘結剤であり、水溶性高分子物質のキサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウムである。(E)成分としては、キサンタンガム又はポリアクリル酸ナトリウムを用いても、効果発現の点でキサンタンガム及びポリアクリル酸ナトリウムを用いてもよい。
これらは、歯磨剤組成物に通常使用されるものでよく、市販品を用いることができる。キサンタンガムとしては、例えばケルデント(CPケルコ社製)やラボールガムCG−SFT(CPケルコ社製)、ポリアクリル酸ナトリウムとしては、例えばレオジック(東亞合成(株)製)などが挙げられる。
【0030】
(E)成分の配合量は、特にポンプディスペンサーを有する容器からの定量吐出性、液分離抑制の点から、組成物全体の0.5〜4%であり、好ましくは0.5〜2%、より好ましくは1.0〜1.5%である。(E)成分量が多いほど液分離を抑制でき、0.5%未満であると、組成物が液分離したり不均一になり容器からの定量吐出性が劣る。4%を超えると、組成物の曳糸性が悪化したり粘度上昇により容器口元に残存し定量吐出性が劣る。
【0031】
また、(E)成分に対する(D)成分の配合割合は特に限定されないが、(D)/(E)が質量比として22〜58であることが好ましく、より好ましくは25〜54、さらに好ましくは28〜43である。上記範囲内であると、容器からの定量吐出性がより優れ、また、液分離をより抑制できる。なお、22以上であると、組成物の粘度が上昇し容器からの定量吐出性が悪化することがなく、58以下であると、粘度が低下して容器吐出口に組成物が残ることで容器からの定量吐出性が悪化することを防止でき、また液分離を抑制できる。
【0032】
本発明では、更に(F)カラギーナンを配合することが好ましい。粘結剤として(E)成分と共に水溶性高分子物質の(F)カラギーナンを配合すると、ポンプディスペンサー容器から
の定量吐出性がより改善する。
カラギーナンは、歯磨剤組成物に通常使用されるものでよく、市販品を用いることができ、例えばCPケルコ社製の市販品を使用することができる。
(F)カラギーナンを配合する場合は、(E)及び(F)成分の合計配合量が、組成物全体の0.5〜4%、特に0.5〜2%、とりわけ1.0〜1.5%となる範囲内で添加することが好ましい。
また、(F)成分を配合する場合は、(D)成分と(E)及び(F)成分との合計量との配合割合を示す(D)/((E)+(F))が質量比として22〜58、特に25〜54、とりわけ28〜43となる範囲内で添加することが好ましい。
【0033】
本発明組成物には、歯磨剤組成物に通常用いられるシリカ系研磨剤等の研磨剤を配合することができ、その配合量は、8〜16%、特に10〜14%が好ましい。なお、シリカ系研磨剤の平均粒径は、好ましくは10〜20μmである。
【0034】
本発明の歯磨剤組成物は、液体、液状、ペースト状、ジェル状などの形態に調製可能であり、常法を採用して調製できる。この場合、必要に応じて、上述した成分以外にも適宜な公知成分を配合できる。例えば、無水ケイ酸などの無機粘結剤、メチルパラベン等の防腐剤、サッカリンナトリウム等の甘味剤、着色料、香料、フッ化物等の有効成分などを配合し、これら成分と水とを混合し製造できる。なお、これら任意成分は必要に応じ通常量で配合すればよい。
【0035】
本発明の歯磨剤組成物の粘度は、25℃での粘度を50〜300ポアズ、特に50〜200ポアズに設定することが望ましい。粘度が50ポアズ以上であると、歯ブラシに載せ易く、歯ブラシから垂れ難く、また、容器吐出口に練が残らず容器からの定量吐出性が特に良好である。300ポアズ以下であると、ポンプディスペンサー容器からの吐出性が特に良好であり、より好適である。なお、粘度は、東機産業(株)(形式:VISCOMETER TVB−10)、ローターNo.6を使用、回転数20rpm、測定時間3分間、25℃における測定値である。
【0036】
本発明の歯磨剤組成物は、ポンプディスペンサーを備えた容器に充填、収容されるものであるが、特に持ち運び易く置き場所にも困らないような少容量の容器に収容し、携帯用として好適に使用できる。この場合、一般的な歯磨製剤の収容量(100〜150g程度)よりも少ない収容量、例えば50g以下、特に10〜30gの少容量用の容器が好適である。
【0037】
また、本発明組成物は、1回の使用量として、好ましくは0.1〜0.5g、より好ましくは0.1〜0.4g、更に好ましくは0.1〜0.3gの歯磨剤組成物を取り出し可能に容器に収容する。
本発明組成物は、1回の使用量が上記のような少量でも泡立ち、泡持ちに優れ、かつ刺激、苦味がなく使用感が良好である。
【0038】
本発明の歯磨剤組成物は、1回の取り出し量が上記使用量の範囲内であるポンプディスペンサーを備えた容器に充填、収容されて歯磨製品として調製される。この場合、収容容器は、容器本体とポンプディスペンサーとを備え、容器本体の上部開口部に装着されたポンプディスペンサーの押圧部を押圧することで、そのポンプ機構によって、容器本体内に収容された内容物がポンプディスペンサーの内容物排出口から排出されるものである。このような収容容器は、ポンプディスペンサーを備え、歯磨剤組成物を充填可能であれば特に制限はなく、使用目的に応じたものを採用できる。
【0039】
図1は、本発明に使用し得るポンプディスペンサー容器の一実施例を示す概略断面図であり、このような容器が、収容された歯磨剤組成物の定量吐出性の点から好適である。
容器本体1とその上部開口部に装着されたポンプディスペンサー2とを備え、容器本体1は、外観形状を形成する外層3の内部の内容物(組成物)充填部5に内容物が充填され、内容物充填部5はポンプディスペンサー2の底部に密着している。更に、容器本体1の底部には、摺動可能かつ気密に可動底面部4が設置され、この可動底面部4は容器本体1の内部の減圧に応じて容器本体1内を上昇する。この容器においては、ポンプディスペンサー2の押圧部7を下方に押圧することにより、ポンプディスペンサー2内のポンプ機構(図示していない)により、内容物充填部5に充填された歯磨剤組成物の一定量が、ポンプディスペンサー内部から内容物吐出口6に通じる内容物流入路(図示していない)を通じて、内容物吐出口6から排出されると共に、これに伴って容器本体1の内部が減圧し、可動底面部4が上昇するものである。なお、図中8はオーバーキャップである。
【0040】
容器本体、特に外層3の材質は、内容物を排出できる程度の硬度を有するもの、例えばポリプロピレン、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等が使用できるが、特に高密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
ポンプディスペンサー2の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン樹脂等が使用できるが、特にポリプロピレンが好ましい。なお、ポンプディスペンサー2の形状、機構等に特に制限はなく、使用条件に応じたものを採用できる。
オーバーキャップ8の材質としては、スチレン系樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等が使用できるが、特にスチレン系樹脂が好ましい。
【0041】
なお、内容物を流出させる機構は、上記のように可動底面部が内容物の排出に伴って上昇する機構に限られず、容器本体内に減容変形自在な内袋をポンプディスペンサーに装着し、内容物の排出に伴って該内袋が減容していく機構によってもよい。
【0042】
上記ポンプディスペンサー容器としては、1回当たりの取り出し量が上記した使用量の範囲内であるものを使用でき、その内容物排出口の口径は、1回で上記使用量範囲の歯磨剤組成物を取り出し可能であれば特に制限されないが、1〜5mmが好ましく、特に定量吐出の点から1〜3mm、とりわけ1〜2mmであるものが好ましい。このような細い口径のものを使用することで、容器の内容物排出口の口元への歯磨剤組成物の固化等が抑えられ定量吐出性がより優れ、繰り返し使用しても所要量を取り出すことができる。また、歯磨剤組成物を歯ブラシ上へより載せ易くなる。
なお、本発明に使用し得る容器としては、例えば国際公開第2012/035660号、特公平6−27057号公報、特開2009−215176号公報、特許第3062631号、特開2005−41514号公報、特開2005−153901号公報、特開2006−232380号公報等に記載のものを使用し得るもので、容器としては、市販品を使用可能である。具体的には、株式会社吉野工業所や株式会社三谷バルブなどから発売されている市販ポンプ容器を用いることができる。
図1に示す容器の容器本体の高さ(D)、幅(L)は特に限定されないが、高さは50〜150mm、特に80〜120mm、幅は15〜50mm、特に20〜40mmが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。また、POEはポリオキシエチレンの略記であり、POEの後の( )内の数字はPOEの平均付加モル数である。
【0044】
[実施例、比較例]
表1〜5に示す組成の歯磨剤組成物を常法により調製した。なお、各歯磨剤組成物の25℃での粘度(東機産業(株)製、形式:VISCOMETER TVB−10、ローターNo.6、回転数20rpm、測定時間3分間による値)は、いずれも50〜300ポアズの範囲内であった。
得られた歯磨剤組成物を試験製剤として、下記方法で各評価を行った。結果を表に併記した。
【0045】
(1)泡性能、刺激及び苦味の評価
歯磨剤組成物の泡性能、刺激のなさ及び苦味のなさについて、下記方法で評価した。
<少量使用時の泡立ちの評価方法>
歯磨き専門家の評価者10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤組成物約0.25gを歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中の口腔内での歯磨剤組成物の泡立ちについて、以下の基準で評価した。
4点:泡立ちが十分である
3点:泡立ちが適度である
2点:泡立ちが少ない
1点:泡立ちがほとんどない
10名の評価結果を平均し、以下の基準で◎及び○の泡立ちが確保されるものを歯磨き時に良好な泡立ちが得られる歯磨剤組成物であると判断した。
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0046】
<少量使用時の泡持ちの評価方法>
歯磨き専門家の評価者10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤組成物約0.25gを歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中の口腔内での歯磨剤組成物の泡持ちについて、以下の基準で評価した。
4点:泡持ちが十分である
3点:泡持ちが適度である
2点:泡持ちが少ない
1点:泡持ちがほとんどない
10名の評価結果を平均し、以下の基準で◎及び○の泡持ちが確保されるものを歯磨き時に良好な泡持ちが得られる歯磨剤組成物であると判断した。
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0047】
<歯磨き時の刺激のなさの評価方法>
歯磨き専門家の評価者10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤組成物約0.25gを歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた刺激について以下の基準で評価した。
4点:刺激が全くない
3点:刺激がほとんどない
2点:刺激がややある
1点:刺激がある
10名の評価結果を平均し、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを刺激のない歯磨剤組成物であると判断した。
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0048】
<歯磨き時の苦味のなさの評価方法>
歯磨き専門家の評価者10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤組成物約0.25gを歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた苦味について以下の基準で評価した。
4点:苦味が全くない
3点:苦味がほとんどない
2点:苦味がややある
1点:苦味がある
10名の評価結果を平均し、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを苦味のない歯磨剤組成物であると判断した。
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0049】
(2)液分離の評価
歯磨剤組成物の経時での液分離のなさについて、下記方法で評価した。
<液分離のなさの評価方法>
歯磨剤組成物をスクリュー管(株式会社マルエム製、型番:No.7)に30ml充填し、50℃で1ヶ月間保存した。保存後にスクリュー管の外側から内容物を観察し、液分離を次の基準に従い評価した。
4点:内容物の上層に液分離が全くなかった
(液分離層の厚さ:0mm)
3点:内容物の上層に液分離がわずかに認められたが問題ないレベル
(液分離層の厚さ:0mm超0.5mm未満)
2点:内容物の上層に液分離が認められた
(液分離層の厚さ:0.5mm以上1.0mm未満)
1点:内容物の上層に液分離が激しく認められた
(液分離層の厚さ:1.0mm以上)
各歯磨剤組成物につき、スクリュー管3本の液分離の点数の平均値を算出して、以下の基準で◎及び○の評価が液分離のない歯磨剤組成物であると判断した。
◎:4.0点
○:3.0点以上4.0点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0050】
(3)ポンプディスペンサー容器からの吐出性の評価
歯磨剤組成物を、ポンプディスペンサーを有する容器に充填し歯磨製品として使用する際の、一定期間使用後の容器からの定量吐出性を下記方法で評価した。
<ポンプディスペンサーを有する容器からの定量吐出性の評価方法>
図1に示すポンプディスペンサーを有する容器(内容物吐出口の口径1.3mm、内容物の規定吐出量0.1ml、(株)三谷バルブ製)に、歯磨剤組成物を12g充填し、25℃、20RH%恒温槽内にて1日につき5プッシュ吐出する操作を10日間連続して行った後、1プッシュあたりの吐出量を測定した。1プッシュの吐出量は10回測定し平均値を求めた。なお、吐出量は質量(g)を測定した後、比重換算をして容量(ml)として算出し、容器の規定吐出量(0.1ml)との比較を行った。吐出量の平均値、最高値、最低値を表に示す。
容器の規定吐出量(0.1ml)に対する歯磨剤組成物の吐出量の割合を求め、以下の基準で定量吐出性の評価を行った。
◎:吐出量が容器の規定吐出量の±10%未満
○:吐出量が容器の規定吐出量の±10%以上15%未満
×:吐出量が容器の規定吐出量の±15%以上
【0051】
使用原料の詳細は下記の通りである。
(A)ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製)
(A)ラウロイルサルコシンナトリウム
(ソイポンSLP、川研ファインケミカル(株)製)
(A)N−ラウロイル−グルタミン酸ナトリウム
(アミノサーファクトALMS−P1、旭化成ケミカルズ(株)製)
(B)POE(20)硬化ヒマシ油
(BLAUNON PCW−20、青木油脂産業(株)製)
(B)POE(60)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株)製)
(B)POE(5)ステアリルエーテル
(BLAUNON SR−705、青木油脂産業(株)製)
(C)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン
(30%水溶液、レボン2000、三洋化成工業(株)製)
(C)2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダ
ゾリニウムベタイン(30%水溶液、エナジコールC−40H、一方社
油脂工業(株)製)
(D)プロピレングリコール(旭硝子(株)製)
(D)ソルビット(70%水溶液、ロケット社製)
(D)グリセリン(濃グリセリン、阪本薬品工業(株)製)
(D)キシリトール(ロケット社製)
(D)ポリエチレングリコール400(三洋化成工業(株)製)
(E)キサンタンガム(CPケルコ社製)
(E)ポリアクリル酸ナトリウム(東亜合成(株)製)
(F)カラギーナン(CPケルコ社製)
研磨性シリカ(Huber社、平均粒径:約10μm)
また、その他の成分については医薬部外品原料規格2006に適合したものを用いた。
なお、表中の実施例及び比較例において、各成分の配合量は純分換算した値である。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】