(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板の表面上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極上にゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層上に導電体と感光性有機成分とを含有する導電膜を塗布法により形成する工程と、前記基板の裏面側から前記ゲート電極をマスクとして前記導電膜を露光する工程と、露光された導電膜を現像してソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に半導体層を塗布法により形成する工程と、を含み、
前記導電膜を基板の裏面側から露光する工程において、前記露光光の波長が436nm、405nm、または365nmのいずれかであって、前記露光光の強度Ioと、前記基板、前記基板表面上に形成された電極および前記ゲート絶縁層を透過した光の強度Iが下記式(a)を満たす
電界効果型トランジスタの製造方法。
−Log10(I/I0)≧2 (a)
基板の表面上にソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に半導体層を塗布法により形成する工程と、前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記半導体層上にゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層上に導電体と感光性有機成分とを含有する導電膜を塗布法により形成する工程と、前記基板の裏面側から前記ソース電極および前記ドレイン電極をマスクとして前記導電膜を露光する工程と、露光された導電膜を現像してゲート電極を形成する工程と、を含み、
前記導電膜を基板の裏面側から露光する工程において、前記露光光の波長が436nm、405nm、または365nmのいずれかであって、前記露光光の強度Ioと、前記基板、前記基板表面上に形成された電極および前記ゲート絶縁層を透過した光の強度Iが下記式(a)を満たす
電界効果型トランジスタの製造方法。
−Log10(I/I0)≧2 (a)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタの製造方法を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。
【0017】
(電界効果型トランジスタの製造方法)
本発明の実施の形態に係る電界効果型トランジスタ(FET)の製造方法の第一の例は、以下の(a)から(f)の工程を含む。
(a)基板の表面上にゲート電極を形成する工程、
(b)ゲート電極上にゲート絶縁層を形成する工程、
(c)ゲート絶縁層上に導電体と感光性有機成分とを含有する導電膜を塗布法により形成する工程、
(d)基板の裏面側から前記ゲート電極をマスクとして露光する工程、
(e)露光された導電膜を現像してソース電極およびドレイン電極を形成する工程、
(f)ソース電極とドレイン電極の間に半導体層を塗布法により形成する工程。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係るFETの製造方法の第一の例を示す模式断面図である。
図1では、(a)基板1の表面上にゲート電極2を形成し、(b)ゲート電極2を覆うようにゲート絶縁層3を形成し、(c)ゲート絶縁層3上に導電体と感光性有機成分とを含有する導電膜4を塗布法により形成し、(d)基板1の裏面側からゲート電極2をマスクとして導電膜4を露光し、(e)露光された導電膜4を現像してソース電極5およびドレイン電極6を形成し、(f)ソース電極5とドレイン電極6の間に半導体層7を塗布法により形成している。
【0019】
この方法により、ゲート電極とソース・ドレイン電極とが、短い位置合わせ時間で、高精度に位置合わせされたFETの作製が可能となる。さらに、ソース電極とドレイン電極をパターニングした後に半導体層を形成するため、ソース電極とドレイン電極のパターニング時の露光・現像処理により半導体層は影響されず、パターニングによるFETの性能劣化が抑制できる。
【0020】
図1への記載は省略するが、さらにゲート電極用の配線、ソース電極およびドレイン電極用の配線の形成工程を含んでいても良い。
【0021】
図3に、本発明の第一の実施形態により得られるFETに配線を形成した例を示す。ゲート電極2用の配線8は、ゲート電極2と同時に形成することが、製造工程数削減の観点から好ましい。またソース電極5およびドレイン電極6用の配線9、10は、導電膜4の塗布法による形成と同時に形成することが、製造工程数削減の観点から好ましい。
【0022】
本発明の実施の形態に係るFETの製造方法の第二の例は、以下の(A)から(F)の工程を含む。
(A)基板の表面上にソース電極およびドレイン電極を形成する工程、
(B)ソース電極とドレイン電極の間に半導体層を塗布法により形成する工程、
(C)ソース電極、ドレイン電極および半導体層上にゲート絶縁層を形成する工程、
(D)ゲート絶縁層上に導電体と感光性有機成分とを含有する導電膜を塗布法により形成する工程、
(E)基板の裏面側からソース電極およびドレイン電極をマスクとして導電膜を露光する工程、
(F)露光された導電膜を現像してゲート電極を形成する工程。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係るFETの製造方法の第二の例を示す模式断面図である。
図2では、(A)基板1の表面上にソース電極5およびドレイン電極6を形成し、(B)ソース電極5とドレイン電極6の間に半導体層7を塗布法により形成し、(C)ソース電極5、ドレイン電極6および半導体層7上にゲート絶縁層3を形成し、(D)ゲート絶縁層3上に導電体と感光性有機成分とを含有する導電膜4を塗布法により形成し、(E)基板1の裏面側からソース電極5およびドレイン電極6をマスクとして導電膜4を露光し、(F)露光された導電膜4を現像してゲート電極2を形成している。
【0024】
この方法により、ソース・ドレイン電極とゲート電極とが、短い位置合わせ時間で、高精度に位置合わせされたFETの作製が可能となる。さらに、ソース電極とドレイン電極をパターニングした後に半導体層を形成するため、ソース電極とドレイン電極のパターニング時の処理により半導体層は影響されず、パターニングによるFETの性能劣化が抑制できる。
【0025】
図2への記載は省略するが、さらにゲート電極用の配線、ソース電極およびドレイン電極用の配線の形成工程を含んでいても良い。
【0026】
本発明において、ある層や膜を塗布法により形成するとは、その層や膜の原料となる液状物やペースト状物を塗布する工程を含む方法により層や膜を形成することをいう。
【0027】
工程(a)および(A)における電極の形成方法としては、インクジェット法、印刷法、イオンプレーティングコーティング法などが挙げられるが、抵抗加熱蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、メッキ法、CVD法も挙げられる。中でも、製造コスト、材料の使用効率、大面積への適合性等の観点から、塗布法を用いることが好ましい。また、電極材料としてバインダーおよび導電体を含むペーストを用いた場合は、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術を用いて、ペーストを基板上に塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いて乾燥を行う方法なども挙げられる。また電極パターンの形成方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を公知のフォトリソグラフィー法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
【0028】
工程(b)および(C)におけるゲート絶縁層の作製方法は、特に制限はないが、例えば、原料組成物を下部電極が形成された基板上に塗布し、乾燥することで得られたコーティング膜を必要に応じ熱処理する方法が挙げられる。塗布方法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。コーティング膜の熱処理の温度としては、100〜300℃の範囲にあることが好ましい。
【0029】
工程(c)、(d)、(e)、(D)、(E)、(F)の一例としては以下の通りである。上記感光性ペーストを下部電極およびゲート絶縁層が形成された基板上に、全面または部分的に塗布する。塗布方法としては、スピナーを用いた回転塗布法、スプレー塗布法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、ブレードコーター法、ダイコーター法、カレンダーコーター法、メニスカスコーター法、バーコーター法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、ディスペンサー法などの公知の方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるため、乾燥後の膜厚が所定の値になるように調整する。
【0030】
次に基板上に塗布した塗布膜から溶剤を除去する。これにより、導電膜4が形成される。溶剤を除去する方法としては、オーブン、ホットプレート、赤外線などによる加熱乾燥や真空乾燥などが挙げられる。加熱乾燥は50℃から180℃の範囲で1分から数時間行うのが好ましい。
【0031】
次に溶剤除去後の導電膜を、フォトリソグラフィによりパターン加工する。露光に用いられる光源としては、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、またはg線(436nm)を用いるのが好ましい。さらに、露光に用いられる光(露光光)の強度I
0と、基板、基板表面上に形成された電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iが、下記式(a)を満たすことが好ましい。
【0032】
−LOG
10(I/I
0)≧2 (a)
式(a)を満たす場合、導電膜4に十分な強度の光が露光されることで、導電膜4の光硬化が促進され、加工精度が向上する。なお、式(a)の左辺は吸光度を表しており、吸光度は分光光度計により測定できる。
【0033】
露光は、基板裏面側から光を入射することで行う。このような裏面露光により、下部電極がマスクとなり上部電極がパターニングされるため、アライメントすることなく、下部電極と上部電極とを高精度に位置合わせすることができる。
【0034】
露光後、現像前に、基板表面側から導電膜4を露光する工程を追加しても良い。このときの露光には、前述の露光光源を用いることができる。この工程を追加することで、導電膜4の表面側の光硬化が促進され、後述する現像工程などによる導電膜4の膜減りが低減でき、導電膜4の表面ラフネスが抑制される。導電膜の表面ラフネスが小さいことで、後述する半導体層の塗布性が向上し、均一な半導体層を形成できるため、作製したFETの特性が向上する。なお、導電膜の表面ラフネスは、接触式表面形状粗さ測定、原子間力顕微鏡、エリプソメトリ法などにより測定できる。
【0035】
次に、現像液を用いて未露光部を除去することによって、所望の上部電極パターンが得られる。
【0036】
アルカリ現像を行う場合の現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらの水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは複数種添加したものを現像液として用いてもよい。また、これらのアルカリ水溶液に界面活性剤を添加したものを現像液として使用することもできる。
【0037】
有機現像を行う場合の現像液としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの極性溶媒を単独あるいは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどと組み合わせた混合溶液が使用できる。
【0038】
現像は、基板を静置または回転させながら上記の現像液を塗布膜面にスプレーする、基板を現像液中に浸漬する、あるいは浸漬しながら超音波をかけるなどの方法によって行うことができる。
【0039】
現像後、水によるリンス処理を施してもよい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0040】
次に、導電性を発現させるために上部電極を硬化する。硬化する方法としては、オーブン、イナートオーブン、ホットプレート、赤外線などによる加熱硬化や真空硬化、キセノンフラッシュランプによる硬化などが挙げられる。加熱硬化の場合、硬化温度は100℃以上300℃以下の範囲が好ましく、100℃以上200℃以下がより好ましく、120℃℃以上180℃以下がさらに好ましい。加熱温度を120℃以上にすることで樹脂の感光性有機成分の体積収縮量を大きくでき、比抵抗率が低くなる。
【0041】
なお、本発明で用いられる感光性ペーストは180℃以下の比較的低温のキュアで高い導電性を得られるものであることが好ましい。その場合、耐熱性が低い基板上や、耐熱性の低い材料と併用して用いることができる。
【0042】
工程(f)および(B)における半導体層の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。塗布法としては、前記組成物の説明と同様の方法を用いることができ、塗布法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。中でも、インクジェット法、ディスペンサー法およびスプレー法からなる群より選ばれるいずれか一つであることが好ましい。さらに、原料の使用効率の観点から、インクジェット法がより好ましい。これらの塗布方法から、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて適切なものを選択できる。また、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。
【0043】
次にFETを構成する部材について詳細に説明する。特に断りのない限り全ての実施態様に共通する。なお、以下では基板の表面上に形成される電極を下部電極、ゲート絶縁層上に形成される電極を上部電極という。すなわち、第1の実施態様では、ゲート電極が下部電極、ソース電極およびドレイン電極が上部電極にそれぞれ該当し、第2の実施態様では、ソース電極およびドレイン電極が下部電極、ゲート電極が上部電極にそれぞれ該当する。
【0044】
<基板>
基板に用いられる材料は、特に制限はないが、少なくとも電極が配置される面が絶縁性であるものが好ましい。また、露光に用いられる光を50%以上透過する材料からなることが好ましく、80%以上透過する材料がさらに好ましい。
【0045】
例えば、ガラス、サファイア、アルミナ焼結体、シリコンウエハ等、およびそれらの表面を酸化膜で被覆したもの等の無機材料;
ポリイミド(PI)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、シクロオレフィン樹脂などの樹脂;
を含む基材が好適に用いられるが、これらに限定されない。
【0046】
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、PPS、ポリフェニレンサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミドまたはPIの中から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、低価格の観点からはPETフィルムが好ましい。
【0047】
また、基板と、下部電極や配線との密着性の観点からは、ポリサルフォン樹脂基板、PPS樹脂基板も好ましい。これは、下部電極や配線中の金属原子が、これらの樹脂に含まれる硫黄原子と強く相互作用するためと推定される。
【0048】
また、基板の厚みは200μm以下であることが好ましい。この範囲にあることで、基板裏面からの露光による導電膜の加工時において、露光光の基板中での散乱が抑制され、導電膜の加工精度がより向上する。
【0049】
<下部電極>
下部電極は、電極として使用されうる導電体を含むものであればいかなるものでもよいが、遮光性を有していることが好ましい。ここで遮光性とは、導電膜を露光する際に用いられる光の波長における透過率が10%以下であることを意味し、中でも透過率1%以下が好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。
【0050】
中でも、電極の柔軟性が増し、屈曲時にも密着性が良く電気的接続が良好となる点から、下部電極は、導電体とバインダーとを含有することが好ましい。
【0051】
導電体としては、具体的には、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化ルテニウムなどの導電性金属酸化物;
白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、タングステン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属やこれらの合金;
ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性化合物;
ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体などの導電性ポリマー;
および、カーボンなどの炭素材料、有機成分と導電体とを含有する材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。導電性ポリマーは、ヨウ素などのドーピングなどで導電率を向上させることが好ましい。
【0052】
これらの電極材料は、単独で用いてもよいし、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0053】
導電体は、導電性の観点から、金、銀、銅または白金の粒子が好ましい。中でも、コストおよび安定性の観点から銀の粒子がより好ましい。また、塗布膜の低温キュア時の抵抗率低減の観点からは、上記粒子に加えてカーボンブラックを含むことがさらに好ましい。粒子の平均粒子径は0.02μm以上10μm以下が好ましく、0.02μm以上5μm以下がより好ましく、0.02μm以上2μm以下がさらに好ましい。平均粒子径が0.02μm以上であると粒子同士の接触確率が向上し、作製される電極の比抵抗値、および断線確率を低くすることができる。また平均粒子径が10μm以下であれば電極の表面平滑度、パターン精度、寸法精度が向上する。
【0054】
なお、平均粒子径とは、下部電極の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10000倍の倍率で観察し、得られた像から無作為に選択した粒子100個の粒子径を測長し、その平均の値を求めることにより算定する。粒子径とは、粒子の形状が球形の場合は、その直径を粒子径とする。形状が球形以外の場合は、ある1個の粒子について観察される最大の幅と最小の幅の平均値をその粒子の粒子径とする。
【0055】
電極中の導電体の含有量は、電極のうち70質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。含有量の下限としては80質量%以上が好ましい。含有量の上限としては90質量%以下が好ましい。導電体の含有量がこの範囲にあることで、電極の比抵抗値、および断線確率を低くすることができる。
【0056】
バインダーとしては、特に制限はないが、モノマー、オリゴマー、ポリマー、光重合開始剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料などから選ばれる成分を含むことが好ましい。電極の折り曲げ耐性向上の観点からは、少なくともオリゴマーもしくはポリマーを含むことが好ましい。
【0057】
オリゴマーもしくはポリマーとしては、特に限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド前駆体、ポリイミドなどを好ましく用いることができる。屈曲時の耐クラック性の観点からは、アクリル樹脂が好ましい。これは、アクリル樹脂のガラス転移温度は100℃以下であり、電極の熱硬化時に軟化し、導電体間の結着が高まるためと推定される。
【0058】
アクリル樹脂とは、繰返し単位に少なくともアクリルモノマーに由来する構造を含む樹脂である。アクリルモノマーの具体例としては、特に限定されないが、好ましくは、メチルアクリレート、アクリル酸、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、i−プロパンアクリレート、グリシジルアクリレート、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートなどのアクリルモノマーおよびこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。これらアクリルモノマーは、単独あるいは2種以上用いてもよい。また、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどの他のモノマーを共重合しても良い。
【0059】
下部電極の幅、厚みは任意である。電極パターンの形成容易性の観点から、電極幅は10μm以上10mm以下、厚みは0.01μm以上100μm以下が好ましいが、これに限らない。
【0060】
下部電極の配線材料は、下部電極同様、一般的に使用されうる導電体を含むものであればいかなるものでもよい。配線の形成方法は、上記電極の形成方法と同様である。下部電極と配線は少なくとも一部で電気的に導通を取ることができればよい。下部電極と配線の接続部の幅および厚みは任意である。
【0061】
下部電極および配線材料は同一材料から構成されることが好ましい。材料種類が少なくなり、上記下部電極および配線を同一工程で作製することで製造工程数を削減しコスト低減が可能となるからである。
【0062】
下部電極および配線が同一材料から構成されるとは、下部電極および配線に含まれる元素の中で最も含有モル比率が高い元素が同一であることをいう。電極中の元素の種類と含有比率は、X線光電子分光(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)などの元素分析によって、同定することができる。
【0063】
下部電極および配線が同一工程で作製されると、下部電極と配線の接続部は連続相で形成される。下部電極と配線の密着性、製造コスト低減の観点からは、これらを連続相を成すように形成することが好ましい。下部電極と配線パターンが連続相であるとは、それらのパターンが一体化しており接続部に接続界面が存在しないことをいう。下部電極と配線の接続部が連続相であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで接続部の断面を観察することで確認することができる。
【0064】
<ゲート絶縁層>
ゲート絶縁層に用いられる材料は、特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナ等の無機材料;ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)等の有機高材料;あるいは無機材料粉末と有機材料の混合物を挙げることができる。中でも、ケイ素原子と炭素原子の結合を含む有機化合物を含むものが好ましい。また、ケイ素原子と炭素原子の結合を含む有機化合物と、金属原子および酸素原子の結合を含む金属化合物とを含むものも好ましい。
【0065】
ケイ素原子と炭素原子の結合を含む有機化合物としては、下記一般式(1)で表されるシラン化合物、下記一般式(2)で表されるエポキシ基含有シラン化合物、下記一般式(3)で表されるシラン化合物、またはこれらの縮合物、またはこれらを重合成分として含むポリシロキサン等が挙げられる。これらの中でもポリシロキサンは絶縁性が高く、低温硬化が可能であるためより好ましい。また、ゲート絶縁層は、ポリシロキサンを1種又は2種以上含んでもよい。
【0066】
R
1mSi(OR
2)
4−m (1)
ここで、R
1は水素原子、アルキル基、複素環基、アリール基またはアルケニル基を示す。R
1が複数存在する場合、それぞれのR
1は同じでも異なっていてもよい。R
2は水素原子、アルキル基、アシル基またはアリール基を示す。R
2が複数存在する場合、それぞれのR
2は同じでも異なっていてもよい。mは1〜3の整数を示す。
【0067】
R
3nR
4lSi(OR
5)
4−n−l (2)
ここで、R
3は1つ以上のエポキシ基を鎖の一部に有するアルキル基を示す。R
3が複数存在する場合、それぞれのR
3は同じでも異なっていてもよい。R
4は水素原子、アルキル基、複素環基、アリール基またはアルケニル基を示す。R
4が複数存在する場合、それぞれのR
4は同じでも異なっていてもよい。R
5は水素原子、アルキル基、アシル基またはアリール基を示す。R
5が複数存在する場合、それぞれのR
5は同じでも異なっていてもよい。lは0〜2の整数、nは1または2を示す。ただし、l+n≦3である。
【0068】
A
1R
6kSi(OR
7)
2−k (3)
ここで、R
6は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基を表す。R
7は、水素原子、アルキル基、アシル基またはアリール基を表す。kは0又は1を表す。A
1は、カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基又はそれらの誘導体を少なくとも二つ含む有機基を表す。ただし、前記誘導体が、前記カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造である場合は、A
1は当該環状縮合構造を少なくとも一つ有する有機基を表す。
【0069】
R
1〜R
7におけるアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。置換基としては、特に制限はなく、例えば、アルコキシ基、アリール基等を挙げることができ、これらはさらに置換基を有していてもよい。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、1以上20以下が好ましく、より好ましくは1以上8以下である。また上記で置換基として挙げたアルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など、エーテル結合の一方を脂肪族炭化水素基で置換した官能基を示す。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、1以上20以下の範囲が好ましい。
【0070】
R
2、R
5およびR
7におけるアシル基とは、アセチル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基など、カルボニル結合の一方を脂肪族炭化水素基または芳香族基で置換した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基または芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。アシル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上40以下の範囲が好ましい。
【0071】
R
1、R
2、R
4、R
5、R
6およびR
7におけるアリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基、およびフラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、キノリニル基などの芳香族複素環基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、3〜40の範囲が好ましい。
【0072】
R
1、R
4およびR
6における複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、アミド環などの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環から導かれる基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0073】
R
1、R
4およびR
6におけるアルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
【0074】
R
3のエポキシ基を鎖の一部に有するアルキル基とは、隣り合う2つの炭素原子が1つの酸素原子と結合して形成される3員環エーテル構造を鎖の一部に有するアルキル基を示す。これは、アルキル基において炭素が最も長く連続する部分である主鎖に含まれる隣り合う2つの炭素原子が利用される場合と、主鎖以外の部分、いわゆる側鎖に含まれる隣り合う2つの炭素原子が利用される場合のいずれも含む。
【0075】
A
1におけるカルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基の各誘導体としては、例えば、非環状の縮合構造としては、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、チオエステル、チオエーテル、フェニルエーテル、カルボン酸無水物及びカルボン酸無水物とアミン化合物との反応により生じるアミド化合物又はイミド化合物等を示す。
【0076】
カルボキシル基、スルホ基、チオール基およびフェノール性水酸基のうちの二つによる環状縮合構造としては、例えば、環状酸無水物構造、環状エステル構造、環状チオエステル構造、環状エーテル構造及び環状チオエーテル構造等を示す。有機基とは、例えば前述のアルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基又はアルケニル基を示している。
【0077】
ゲート絶縁層は、少なくとも、一般式(1)で表されるシラン化合物を重合成分とするポリシロキサンを含むことが好ましい。ポリシロキサンの重合成分として一般式(1)で表されるシラン化合物を導入することにより、可視光領域において高い透明性を保ちつつ、膜の絶縁性、耐薬品性を高め、かつ絶縁層内のトラップが少ない絶縁層を形成できる。
【0078】
また、一般式(1)におけるm個のR
1の少なくとも1つがアリール基であると、絶縁膜の柔軟性が向上し、クラック発生が防止できるため好ましい。
【0079】
一般式(1)で表されるシラン化合物としては、具体的に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α−ナフチルトリメトキシシラン、β−ナフチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリエトキシシラン、トリフルオロエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルメチルジエトキシシラン、トリフルオロエチルメチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルエチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルエチルジエトキシシラン、トリフルオロエチルエチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジイソプロポキシシラン、p−トリフルオロフェニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0080】
上記シラン化合物のうち、架橋密度を上げ、耐薬品性と絶縁特性を向上させるために、m=1であるビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α−ナフチルトリメトキシシラン、β−ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、p−トリフルオロフェニルトリエトキシシランを用いることが好ましい。また、量産性の観点から、R
2がメチル基であるビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α−ナフチルトリメトキシシラン、β−ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリメトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0081】
また、一般式(1)で表されるシラン化合物を2種以上組み合わせることが好ましい例として挙げられる。中でも、アルキル基を有するシラン化合物とアリール基を有するシラン化合物を組み合わせることにより、高い絶縁性とクラック防止のための柔軟性を両立できるため、特に好ましい。
【0082】
また、ゲート絶縁層は、絶縁性と耐薬品性の観点から少なくとも、一般式(1)で表されるシラン化合物と、一般式(2)で表されるエポキシ基含有シラン化合物とを共重合成分とするポリシロキサンを含むことが好ましい。
【0083】
一般式(2)で表されるエポキシ基含有シラン化合物としては、具体的に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0084】
これらのうち、架橋密度を上げ、耐薬品性と絶縁特性を向上させるために、n=1、l=0であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランを用いることが好ましい。また、量産性の観点から、R
5がメチル基であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0085】
また、ゲート絶縁層の耐クラック性の向上と、FETのヒステリシスの低減との観点から、上記ポリシロキサンは、さらに、一般式(3)で表されるシラン化合物を重合成分として含むことが好ましい。一般式(3)で表されるシラン化合物を重合成分とすることで、絶縁層のリソグラフィー時に、アルカリ現像液に対する優れた溶解性を示す。これにより、パターンを設計寸法通り精度良く加工することが可能になることから、解像度に優れる。
【0086】
一般式(3)におけるA
1は、半導体溶液の塗布性向上、低ヒステリシス及びゲート絶縁層の耐クラック性の観点から、カルボキシル基又はその誘導体を少なくとも二つ、若しくは環状の酸無水物基を少なくとも一つ有する有機基が好ましく、一般式(4)又は(5)で表される基がさらに好ましい。
【0088】
一般式(4)において、X
1は、単結合、炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜15のアリーレン基を表す。R
8及びR
9は、それぞれ独立して、水素原子、有機基又はシリル基を表す。一般式(5)において、X
2は、単結合、炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜15のアリーレン基を表す。
【0089】
ポリシロキサンにおいて、全シラン構造単位に占める、一般式(3)で表されるシラン化合物に由来する構造単位の含有比率は、半導体溶液の塗布性向上、低ヒステリシス及びゲート絶縁層の耐クラック性両立、及び絶縁層のリソグラフィー時における解像度向上の観点から、0.5mol%以上が好ましく、1.0mol%以上がより好ましく、1.5mol%以上がさらに好ましい。また、吸湿によるリーク電流の増加を防ぐ観点から、20mol%以下が好ましく、15mol%以下がより好ましく、10mol%以下がさらに好ましい。リーク電流とは、回路上で意図しない箇所へ流れる漏れ出しの電流であり、FETを低消費電力で駆動させるためには、リーク電流の値を小さくする必要がある。リーク電流値は、30pA以下が好ましく、20pA以下がより好ましく、10pA以下がさらに好ましい。
【0090】
一般式(3)で表されるシラン化合物としては、具体的には、カルボキシル基又はそれらの誘導体を持つものとして、ジメトキシメチルシリルメチルコハク酸、ジエトキシメチルシリルメチルコハク酸、ジメトキシフェニルシリルメチルコハク酸、ジエトキシフェニルシリルメチルコハク酸、トリメトキシシリルメチルコハク酸、トリエトキシシリルメチルコハク酸、2−ジメトキシメチルシリルエチルコハク酸、2−ジエトキシメチルシリルエチルコハク酸、2−ジメトキシフェニルシリルエチルコハク酸、2−ジエトキシフェニルシリルエチルコハク酸、2−トリメトキシシリルエチルコハク酸、2−トリエトキシシリルエチルコハク酸、3−ジメトキシメチルシリルプロピルコハク酸、3−ジエトキシメチルシリルプロピルコハク酸、3−ジメトキシフェニルシリルプロピルコハク酸、3−ジエトキシフェニルシリルプロピルコハク酸、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸、4−ジメトキシメチルシリルブチルコハク酸、4−ジエトキシメチルシリルブチルコハク酸、4−ジメトキシフェニルシリルブチルコハク酸、4−ジエトキシフェニルシリルブチルコハク酸、4−トリメトキシシリルブチルコハク酸、4−トリエトキシシリルブチルコハク酸、5−ジメトキシメチルシリルペンチルコハク酸、5−ジエトキシメチルシリルペンチルコハク酸、5−ジメトキシフェニルシリルペンチルコハク酸、5−ジエトキシフェニルシリルペンチルコハク酸、5−トリメトキシシリルペンチルコハク酸、5−トリエトキシシリルペンチルコハク酸、6−ジメトキシメチルシリルヘキシルコハク酸、6−ジエトキシメチルシリルヘキシルコハク酸、6−ジメトキシフェニルシリルヘキシルコハク酸、6−ジエトキシフェニルシリルヘキシルコハク酸、6−トリメトキシシリルヘキシルコハク酸、6−トリエメトキシシリルヘキシルコハク酸、これらコハク酸構造を有する化合物の無水物、及びこれらコハク酸がグルタル酸となった化合物由来の構造単位が挙げられる。
【0091】
スルホ基又はそれらの誘導体を持つものとして、5−ジメトキシメチルシリルペンタン−1,2−ジスルホン酸、5−ジエトキシメチルシリルペンタン−1,2−ジスルホン酸、5−ジメトキシフェニルシリルペンタン−1,2−ジスルホン酸、5−ジエトキシフェニルシリルペンタン−1,2−ジスルホン酸、5−トリメトキシシリルペンタン−1,2−ジスルホン酸、5−トリエトキシシリルペンタン−1,2−ジスルホン酸及びこれらのメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、sec−ブチルエステル加えてt−ブチルエステル由来の構造単位が挙げられる。
【0092】
チオール基又はそれらの誘導体を持つものとして、3−(3−ジメトキシメチルシリルプロピロキシ)プロパン−1,2−ジチオール、3−(3−ジエトキシメチルシリルプロピロキシ)プロパン−1,2−ジチオール、3−(3−ジメトキシフェニルシリルプロピロキシ)プロパン−1,2−ジチオール、3−(3−ジエトキシフェニルシリルプロピロキシ)プロパン−1,2−ジチオール、3−(3−トリメトキシシリルプロピロキシ)プロパン−1,2−ジチオール、3−(3−トリエトキシシリルプロピロキシ)プロパン−1,2−ジチオール及びこれらのメチルチオエーテル、エチルチオエーテル、n−プロピルチオエーテル、イソプロピルチオエーテル、n−ブチルチオエーテル、sec−ブチルチオエーテル加えてt−ブチルチオエーテル由来の構造単位が挙げられる。
【0093】
フェノール性水酸基又はそれらの誘導体を持つものとして、3−ジメトキシメチルシリルプロピル基、3−ジエトキシメチルシリルプロピル基、3−ジメトキシフェニルシリルプロピル基、3−ジエトキシフェニルシリルプロピル基、3−トリメトキシシリルプロピル基又は3−トリエトキシシリルプロピル基を有するカテコール、レソルシノール、ヒドロキノン又はフロログルシノール、及びこれらのメチルエーテル、エチルエーテル、n−プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、sec−ブチルエーテル加えてt−ブチルエーテル由来の構造単位が挙げられる。
【0094】
カルボキシル基、スルホ基、チオール基、フェノール性水酸基又はそれらの誘導体の内、異なる種類の基をそれぞれ一つずつ含むものとして、1−カルボキシル−2−スルホ−5−トリメトキシシリルペンタン、1−カルボキシル−2−メルカプト−5−トリメトキシシリルペンタン、1−スルホ−2−メルカプト−5−トリメトキシシリルペンタン、1−カルボキシル−2−ヒドロキシ−4−トリメトキシシリルベンゼン、1−スルホ−2−ヒドロキシ−4−トリメトキシシリルベンゼン、1−メルカプト−2−ヒドロキシ−4−トリメトキシシリルベンゼン及びこれら置換基の位置が異なる位置異性体、加えてこれらのメチル(チオ)エステル、エチル(チオ)エステル、n−プロピル(チオ)エステル、イソプロピル(チオ)エステル、n−ブチル(チオ)エステル、sec−ブチル(チオ)エステル、t−ブチル(チオ)エステル、メチル(チオ)エーテル、エチル(チオ)エーテル、n−プロピル(チオ)エーテル、イソプロピル(チオ)エーテル、n−ブチル(チオ)エーテル、sec−ブチル(チオ)エーテル、t−ブチル(チオ)エーテル、環状(チオ)エステル及び環状(チオ)エーテル由来の構造単位が挙げられる
中でも、半導体溶液の塗布性向上、低ヒステリシス及びゲート絶縁層の耐クラック性の観点から、カルボキシル基又はその誘導体を少なくとも二つ、若しくは環状の酸無水物基を少なくとも一つ有するシラン化合物由来の構造単位が好ましく、コハク酸、コハク酸無水物構造又はそれらの誘導体を有するシラン化合物由来の構造単位がより好ましく、コハク酸又はコハク酸無水物構造をするシラン化合物由来の構造単位がさらに好ましく、3−ジメトキシメチルシリルプロピルコハク酸、3−ジエトキシメチルシリルプロピルコハク酸、3−ジメトキシフェニルシリルプロピルコハク酸、3−ジエトキシフェニルシリルプロピルコハク酸、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸及びこれらの無水物由来の構造単位がさらに好ましく、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸及びこれらの無水物由来の構造単位が特に好ましい。
【0095】
ゲート絶縁層中のポリシロキサンは、さらに、架橋構造の導入による耐クラック性向上の観点から、一般式(6)で表されるシラン化合物を重合成分として含むことが好ましい。
【0096】
B
1R
10jSi(OR
11)
2−j (6)
一般式(6)において、R
10は、水素原子、アルキル基、複素環基、アリール基、またはアルケニル基を表す。R
11は、水素原子、アルキル基、アシル基またはアリール基を表す。jは0又は1を表す。B
1は、アクリル基及び/又はメタクリル基同士の付加反応構造を含む有機基を表す。
【0097】
R
10におけるアルキル基、複素環基、アリール基、アルケニル基、R
11におけるアルキル基、アシル基、アリール基とは、前述に記載した通りである。
【0098】
アクリル基及び/又はメタクリル基同士の付加反応構造を含む有機基とは、一般式(6)で表されるシラン化合物である、アクリル基及び/又はメタクリル基を有するシラン化合物に含まれるアクリル基及び/又はメタクリル基が、アクリル基及び/又はメタクリル基と付加反応したものである。付加反応は、光又は熱によるラジカル重合に伴う架橋反応である。
【0099】
一般式(6)で表されるシラン化合物を重合成分とするポリシロキサンにおいて、全シラン構造単位に占める、一般式(6)で表されるシラン化合物に由来する構造単位の含有比率は、耐クラック性向上の観点から、5mol%以上が好ましく、15mol%以上がより好ましく、25mol%以上がさらに好ましい。また、架橋密度が過剰に高い場合、フォトリソグラフィ工程における現像等のウェットプロセスで膜が膨潤し、パターンの解像度が低下する。これを防ぐ観点から、50mol%以下が好ましく、45mol%以下がより好ましく、40mol%以下がさらに好ましい。
【0100】
一般式(6)で表されるシラン化合物として具体的に、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシフェニルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシフェニルシラン、3−アクリロキシプロピルジエトキシフェニルシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシフェニルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、4−アクリロキシブチルジメトキシメチルシラン、4−メタクリロキシブチルジメトキシメチルシラン、4−アクリロキシブチルジエトキシメチルシラン、4−メタクリロキシブチルジエトキシメチルシラン、4−アクリロキシブチルジメトキシフェニルシラン、4−メタクリロキシブチルジメトキシフェニルシラン、4−アクリロキシブチルジエトキシフェニルシラン、4−メタクリロキシブチルジエトキシフェニルシラン、4−アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−アクリロキシブチルトリエトキシシラン、4−メタクリロキシブチルトリエトキシシラン、5−アクリロキシペンチルジメトキシメチルシラン、5−メタクリロキシペンチルジメトキシメチルシラン、5−アクリロキシペンチルジエトキシメチルシラン、5−メタクリロキシペンチルジエトキシメチルシラン、5−アクリロキシペンチルジメトキシフェニルシラン、5−メタクリロキシペンチルジメトキシフェニルシラン、5−アクリロキシペンチルジエトキシフェニルシラン、5−メタクリロキシペンチルジエトキシフェニルシラン、5−アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、5−メタクリロキシペンチルトリメトキシシラン、5−アクリロキシペンチルトリエトキシシラン、5−メタクリロキシペンチルトリエトキシシラン、6−アクリロキシヘキシルジメトキシメチルシラン、6−メタクリロキシヘキシルジメトキシメチルシラン、6−アクリロキシヘキシルジエトキシメチルシラン、6−メタクリロキシヘキシルジエトキシメチルシラン、6−アクリロキシヘキシルジメトキシフェニルシラン、6−メタクリロキシヘキシルジメトキシフェニルシラン、6−アクリロキシヘキシルジエトキシフェニルシラン、6−メタクリロキシヘキシルジエトキシフェニルシラン、6−アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、6−メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、6−アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、6−メタクリロキシヘキシルトリエトキシシラン由来の構造がアクリル基及び/又はメタクリル基同士で付加反応した構造単位が挙げられる。
【0101】
中でも、付加反応の反応性の観点から、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシフェニルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシフェニルシラン、3−アクリロキシプロピルジエトキシフェニルシラン、3−メタクリロキシプロピルジエトキシフェニルシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン由来の構造が付加反応した構造単位が好ましく、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン由来の構造が付加反応した構造単位がより好ましい。
【0102】
ゲート絶縁層中のポリシロキサンは、さらに、高い絶縁性と耐クラック性を両立させる観点から、一般式(3)及び(6)以外で表されるシラン化合物に由来する構造単位を1種以上組み合わせることが好ましい。本発明でいう絶縁性とは、電気の通しにくさの指標であり、体積抵抗率が10
8Ω・cm以上であることを指す。
【0103】
ゲート絶縁層に含まれるポリシロキサンは、例えば次の方法で得ることができる。溶媒中に全シラン化合物を溶解し、ここに酸触媒および水を1〜180分かけて添加した後、15〜80℃で1〜180分加水分解反応させる。加水分解反応時の温度は、15〜55℃がより好ましい。この反応液を、50℃以上、溶媒の沸点以下で1〜100時間加熱し、縮合反応を行うことにより、ポリシロキサンを得ることができる。
【0104】
また、加水分解における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して、例えば、酸濃度、反応温度、反応時間などを設定することによって、目的とする用途に適した物性を得ることができる。
【0105】
シラン化合物の加水分解反応に利用される酸触媒としては、蟻酸、蓚酸、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。酸触媒の含有量は、ポリシロキサンの共重合成分である全シラン化合物100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。また、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。酸触媒の含有量が、0.05質量部以上であれば加水分解反応が十分進行し、また、10質量部以下であれば、急激な反応を抑制することができる。
【0106】
加水分解反応に用いられる溶媒としては、有機溶媒が好ましく、エタノール、プロパノール、ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、エチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールアセテートなどのアセテート類、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。溶媒の量は、ポリシロキサンの共重合成分である全シラン化合物100質量部に対して、50質量部以上500質量部以下の範囲が好ましい。50質量部以上であれば、急激な反応を抑制でき、500質量部以下であれば、加水分解を十分進行させることができる。
【0107】
また、加水分解に用いられる水としては、イオン交換水が好ましい。水の量は、任意に選択可能であるが、シラン化合物中のアルコキシル基と当量モルの水に加えて、エポキシ基と当量モル以上の水を添加するのがよい。ポリシロキサンの重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行うことも可能である。
【0108】
ポリシロキサンが一般式(3)及び/又は(6)で表されるシラン化合物に由来する構造単位を含むことは、元素分析、核磁気共鳴分析、赤外分光分析等の各種有機分析手法を単独又は複数組み合わせることにより判定することができる。
【0109】
ゲート絶縁層に用いられる材料は、さらに金属原子および酸素原子の結合を含む金属化合物を含んでいても良い。金属原子および酸素原子の結合を含む金属化合物は、特に制限はなく、例えば金属酸化物、金属水酸化物、金属キレート化合物等が例示される。特に、一般式(7)で表される金属キレートが好ましい。金属化合物に含まれる金属原子は、特に限定されないが、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ルテニウム、パラジウム、インジウム、ハフニウム、白金などが挙げられる。中でも、入手容易性、コスト、金属キレートの安定性の点からアルミニウムが好ましい。
【0110】
R
12xM(OR
13)
y−x (7)
ここで、R
12は1価の2座配位子を示す。R
12が複数存在する場合、それぞれのR
12は同じでも異なっていてもよい。R
13は水素、アルキル基、アシル基またはアリール基を示す。R
13が複数存在する場合、それぞれのR
13は同じでも異なっていてもよい。Mはy価の金属原子を示す。yは1〜6である。xは1〜yの整数を示す。
【0111】
R
12で表される1価の2座配位子とは、配位の対象となる金属に対して共有結合する基と配位結合する基をそれぞれ一つずつ有する化合物を示す。共有結合する基としては、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基などの脱プロトンされることにより金属原子との共有結合が可能になる基が挙げられる。配位結合する基としては、カルボニル基、チオカルボニル基、ニトリル基、アミノ基、イミノ基、ホスフィンオキサイド基などが挙げられる。R
12の炭素数は、特に限定されないが、膜形成時の熱分解性の観点から、3以上20以下が好ましく、より好ましくは3以上12以下である。
【0112】
R
13におけるアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換基を有している場合の置換基としては特に制限はなく、例えば、アルコキシ基、アリール基等を挙げることができる。これらはさらに置換基を有していてもよい。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、1以上20以下が好ましく、より好ましくは1以上8以下である。
【0113】
R
13におけるアシル基とは、アセチル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基など、カルボニル結合の一方を脂肪族炭化水素基または芳香族基で置換した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基または芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。アシル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上40以下の範囲が好ましい。
【0114】
R
13におけるアリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基;およびフラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、キノリニル基などの芳香族複素環基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、3〜40の範囲が好ましい。
【0115】
また上記で置換基として挙げたアルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など、エーテル結合の一方を脂肪族炭化水素基で置換した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、1以上20以下の範囲が好ましい。
【0116】
y価の金属原子としては、金属キレートを形成するものであれば特に限定されないが、マグネシウム、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ルテニウム、パラジウム、インジウム、ハフニウム、白金などが挙げられる。yは1〜6であり、金属原子の種類に応じて定まる値である。中でも、入手容易性やコストの点からアルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびインジウムからなる群より選ばれた金属が好ましい。
【0117】
金属キレートの中でも安定性に優れる下記一般式(8)で表されるアルミニウムキレートが好ましい。
【0118】
R
143Al (8)
ここで、R
14は一般式(7)におけるR
12と同じであり、それぞれのR
14は同じでも異なっていてもよい。
【0119】
一般式(7)および(8)において、R
14で表される1価の2座配位子として、低コストで入手でき、安定なキレート形成を可能とすることから、βジケトン由来の基またはβケトエステル由来の基が特に好ましい。
【0120】
βジケトンとしては、具体的には2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−デカンジオン、2,4−ドデカンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−3,5−ヘプタンジオン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、1−(ピリジル−2−イル)−1,3−ブタンジオン、1−(ピリジル−2−イル)−2,5−ペンタンジオン、1−アミノ−2,4−ペンタンジオンなどが挙げられる。
【0121】
βケトエステルとしては、具体的にはメチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテート、n−ブチルアセトアセテート、フェニルアセトアセテート、エチルプロパノイルアセテート、エチルブタノイルアセテート、エチルペンタノイルアセテート、エチルヘキサノイルアセテート、エチルオクタノイルアセテート、エチルデカノイルアセテート、エチルドデカノイルアセテート、エチル−2−メチルプロパノイルアセテート、エチル−2,2−ジメチルブタノイルアセテート、エチルベンゾイルアセテート、エチル−p−アニソイルアセテート、エチル−2−ピリジロイルアセテート、エチルアクリリルアセテート、1−アミノブタノイルアセテート、エチル−α−アセチルプロパネートなどが挙げられる。
【0122】
一般式(8)で表されるアルミニウムキレートにおいて、溶媒中へのキレートの溶解性や組成物の安定性を考慮すると、3つのR
14のうち少なくとも1つが他の2つとは異なることが好ましい。同様の理由で、R
14の少なくとも一つがβケトエステルであることが好ましい。
【0123】
上記のような金属キレートとして、具体的には以下のような例が挙げられる。アルミニウムキレートとしては、ジエトキシアルミニウム(2,4−ペンタンジオナート)、ジイソプロポキシアルミニウム(2,4−ペンタンジオナート)、ジエトキシアルミニウム(2,4−ヘキサンジオナート)、ジエトキシアルミニウム(3,5−ヘキサンジオナート)、ジエトキシアルミニウム(2,4−オクタンジオナート)、ジエトキシアルミニウムベンゾイルアセトナート、ジエトキシアルミニウム(1−(ピリジル−2−イル)−1,3−ブタンジオナート)、ジエトキシアルミニウムメチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムメチルアセトアセテート、ジエトキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジエトキシアルミニウムイソプロピルアセトアセテート、ジエトキシアルミニウム−t−ブチルアセトアセテート、ジエトキシアルミニウムエチルブタノイルアセテート、ジエトキシアルミニウムエチルベンゾイルアセテート、エトキシアルミニウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、イソプロポキシアルミニウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(2,4−ヘキサンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(3,5−ヘキサンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(2,4−オクタンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(ベンゾイルアセトナート)、エトキシアルミニウムビス(1−(ピリジル−2−イル)−1,3−ブタンジオナート)、エトキシアルミニウムビス(エチルアクリリルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(メチルアセトアセテート)、イソプロポキシアルミニウムビス(メチルアセトアセテート)、エトキシアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)、エトキシアルミニウムビス(イソプロピルアセトアセテート)、エトキシアルミニウムビス(t−ブチルアセトアセテート)、エトキシアルミニウムビス(エチルブタノイルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(エチルベンゾイルアセテート)、エトキシアルミニウムビス(エチルアクリリルアセテート)、アルミニウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、アルミニウムトリス(1,1,3−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナート)、アルミニウムトリス(2,4−ヘキサンジオナート)、アルミニウムトリス(3,5−ヘキサンジオナート)、アルミニウムトリス(2,4−オクタンジオナート)、アルミニウムトリス(ベンゾイルアセトナート)、アルミニウムトリス(1−(ピリジン−2−イル)−1,3−ブタンジオナート)、アルミニウムトリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、アルミニウムトリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオナート)、アルミニウムトリス(1−アミノ−2,4−ペンタンジオナート)、アルミニウムトリス(メチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(イソプロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(t−ブチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルブタノイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルペンタノイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチル−2−メチルプロパノイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルベンゾイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチル−2−ピリジロイルアセテート)、アルミニウムトリス(1−アミノブタノイルアセテート)、アルミニウムトリス(エチル−α−アセチルプロパネート)、アルミニウムトリス(エチルアクリリルアセテート)、エトキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)モノ(イソプロピルアセトアセテート)、エトキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(イソプロピルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)、アルミニウムトリス(ジエチルマロネート)、アルミニウムトリス(ジオクチルマロネート)、アルミニウムトリス(ジエチル(メチルマロネート))、アルミニウムトリス(ジエチル(フェニルマロネート))、アルミニウムトリス(エチルチオアセトアセテート)、アルミニウムトリス(2−アセチルフェノラート)、アルミニウムトリス(2−(ピリジン−2−イル)フェノラート)などが挙げられる。
【0124】
ジルコニウムキレートとしては、トリスエトキシジルコニウム(2,4−ペンタンジオナート)、トリスイソプロポキシジルコニウム(2,4−ペンタンジオナート)、トリスエトキシジルコニウム(2,4−ヘキサンジオナート)、トリスエトキシジルコニウム(3,5−ヘキサンジオナート)、トリスエトキシジルコニウムベンゾイルアセトナート、トリスエトキシジルコニウムメチルアセトアセテート、トリスイソプロポキシジルコニウムメチルアセトアセテート、トリスエトキシジルコニウムエチルアセトアセテート、トリスエトキシジルコニウムイソプロピルアセトアセテート、トリスエトキシジルコニウム−t−ブチルアセトアセテート、トリスエトキシジルコニウムエチルブタノイルアセテート、トリスエトキシジルコニウムエチルベンゾイルアセテート、ジエトキシジルコニウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジエトキシジルコニウムビス(2,4−ヘキサンジオナート)、ジエトキシジルコニウムビス(3,5−ヘキサンジオナート)、ジエトキシジルコニウムビス(ベンゾイルアセトナート)、ジエトキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(イソプロピルアセトアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(t−ブチルアセトアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(エチルブタノイルアセテート)、ジエトキシジルコニウムビス(エチルベンゾイルアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、エトキシジルコニウムトリス(2,4−ヘキサンジオナート)、エトキシジルコニウムトリス(3,5−ヘキサンジオナート)、エトキシジルコニウムトリス(ベンゾイルアセトナート)、エトキシジルコニウムトリス(メチルアセトアセテート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(メチルアセトアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(イソプロピルアセトアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(t−ブチルアセトアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(エチルブタノイルアセテート)、エトキシジルコニウムトリス(エチルベンゾイルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(2,4−ペンタンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(2,4−ヘキサンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(3,5−ヘキサンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(ベンゾイルアセトナート)、ジルコニウムテトラキス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、ジルコニウムテトラキス(メチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(イソプロピルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(t−ブチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(エチルブタノイルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(エチル−2−メチルプロパノイルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(エチルベンゾイルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(ジエチルマロネート)、ジルコニウムテトラキス(ジエチル(メチルマロネート))、エトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(イソプロピルアセトアセテート)、エトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)、ジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)ビス(イソプロピルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)などが挙げられる。
【0125】
チタンキレートとしては、トリスエトキシチタン(2,4−ペンタンジオナート)、トリスイソプロポキシチタン(2,4−ペンタンジオナート)、トリスエトキシチタン(2,4−ヘキサンジオナート)、トリスエトキシチタン(3,5−ヘキサンジオナート)、トリスエトキシチタンベンゾイルアセトナート、トリスエトキシチタンメチルアセトアセテート、トリスイソプロポキシチタンメチルアセトアセテート、トリスエトキシチタンエチルアセトアセテート、トリスエトキシチタンイソプロピルアセトアセテート、トリスエトキシチタンt−ブチルアセトアセテート、トリスエトキシチタンエチルブタノイルアセテート、トリスエトキシチタンエチルベンゾイルアセテート、ジエトキシチタンビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジイソプロポキシチタンビス(2,4−ペンタンジオナート)、ジエトキシチタンビス(2,4−ヘキサンジオナート)、ジエトキシチタンビス(3,5−ヘキサンジオナート)、ジエトキシチタンビス(ベンゾイルアセトナート)、ジエトキシチタンビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタンビス(メチルアセトアセテート)、ジエトキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、ジエトキシチタンビス(イソプロピルアセトアセテート)、ジエトキシチタンビス(t−ブチルアセトアセテート)、ジエトキシチタンビス(エチルブタノイルアセテート)、ジエトキシチタンビス(エチルベンゾイルアセテート)、エトキシチタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、イソプロポキシチタントリス(2,4−ペンタンジオナート)、エトキシチタントリス(2,4−ヘキサンジオナート)、エトキシチタントリス(3,5−ヘキサンジオナート)、エトキシチタントリス(ベンゾイルアセトナート)、エトキシチタントリス(メチルアセトアセテート)、イソプロポキシチタントリス(メチルアセトアセテート)、エトキシチタントリス(エチルアセトアセテート)、エトキシチタントリス(イソプロピルアセトアセテート)、エトキシチタントリス(t−ブチルアセトアセテート)、エトキシチタントリス(エチルブタノイルアセテート)、エトキシチタントリス(エチルベンゾイルアセテート)、チタンテトラキス(2,4−ペンタンジオナート)、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナート)、チタンテトラキス(3,5−ヘキサンジオナート)、チタンテトラキス(ベンゾイルアセトナート)、チタンテトラキス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、チタンテトラキス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、チタンテトラキス(メチルアセトアセテート)、チタンテトラキス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラキス(イソプロピルアセトアセテート)、チタンテトラキス(t−ブチルアセトアセテート)、チタンテトラキス(エチルブタノイルアセテート)、チタンテトラキス(エチル−2−メチルプロパノイルアセテート)、チタンテトラキス(エチルベンゾイルアセテート)、チタンテトラキス(ジエチルマロネート)、チタンテトラキス(ジオクチルマロネート)、チタンテトラキス(ジエチル(メチルマロネート))、エトキシチタンビス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)、チタンビス(エチルアセトアセテート)ビス(イソプロピルアセトアセテート)、チタントリス(エチルアセトアセテート)モノ(3,5−ヘキサンジオナート)などが挙げられる。
【0126】
インジウムキレートとしては、ジエトキシインジウム(2,4−ペンタンジオナート)、ジイソプロポキシインジウム(2,4−ペンタンジオナート)、ジエトキシインジウム(2,4−ヘキサンジオナート)、ジエトキシインジウム(3,5−ヘキサンジオナート)、ジエトキシインジウムベンゾイルアセトナート、ジエトキシインジウムメチルアセトアセテート、ジイソプロポキシインジウムメチルアセトアセテート、ジエトキシインジウムエチルアセトアセテート、ジエトキシインジウムイソプロピルアセトアセテート、ジエトキシインジウムt−ブチルアセトアセテート、ジエトキシインジウムエチルブタノイルアセテート、ジエトキシインジウムエチルベンゾイルアセテート、エトキシインジウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、イソプロポキシインジウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、エトキシインジウムビス(2,4−ヘキサンジオナート)、エトキシインジウムビス(3,5−ヘキサンジオナート)、エトキシインジウムビス(ベンゾイルアセトナート)、エトキシインジウムビス(メチルアセトアセテート)、イソプロポキシインジウムビス(メチルアセトアセテート)、エトキシインジウムビス(エチルアセトアセテート)、エトキシインジウムビス(イソプロピルアセトアセテート)、エトキシインジウムビス(t−ブチルアセトアセテート)、エトキシインジウムビス(エチルブタノイルアセテート)、エトキシインジウムビス(エチルベンゾイルアセテート)、インジウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、インジウムトリス(2,4−ヘキサンジオナート)、インジウムトリス(3,5−ヘキサンジオナート)、インジウムトリス(ベンゾイルアセトナート)、インジウムトリス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、インジウムトリス(2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、インジウムトリス(メチルアセトアセテート)、インジウムトリス(エチルアセトアセテート)、インジウムトリス(イソプロピルアセトアセテート)、インジウムトリス(t−ブチルアセトアセテート)、インジウムトリス(エチルブタノイルアセテート)、インジウムトリス(エチル−2−メチルプロパノイルアセテート)、インジウムトリス(エチルベンゾイルアセテート)、インジウムトリス(ジエチルマロネート)、インジウムトリス(ジオクチルマロネート)、インジウムトリス(ジエチル(メチルマロネート))などが挙げられる。
【0127】
マグネシウムキレートとしては、マグネシウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0128】
クロムキレートとしては、クロムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、クロムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0129】
マンガンキレートとしては、マンガン(II)ビス(2,4−ペンタンジオナート)、マンガン(II)ビス(エチルアセトアセテート)、マンガン(III)トリス(2,4−ペンタンジオナート)、マンガン(III)トリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0130】
コバルトキレートとしては、コバルトトリス(2,4−ペンタンジオナート)、コバルトトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0131】
ニッケルキレートとしては、ニッケルビス(2,4−ペンタンジオナート)、ニッケルビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0132】
銅キレートとしては、銅ビス(2,4−ペンタンジオナート)、銅ビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0133】
亜鉛キレートとしては、亜鉛ビス(2,4−ペンタンジオナート)、亜鉛ビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0134】
ガリウムキレートとしては、ガリウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、ガリウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0135】
ルテニウムキレートとしては、ルテニウムトリス(2,4−ペンタンジオナート)、ルテニウムトリス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0136】
パラジウムキレートとしては、パラジウムビス(2,4−ペンタンジオナート)、パラジウムビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0137】
ハフニウムキレートとしては、ハフニウムテトラキス(2,4−ペンタンジオナート)、ハフニウムテトラキス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0138】
白金キレートとしては、白金ビス(2,4−ペンタンジオナート)、白金ビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0139】
このような金属キレートは、例えば次の方法で得ることができる。金属アルコキシド中に規定量の配位子を滴下した後、加熱還流によりアルコキシド由来のアルコール成分を留出させることで所望の金属キレートを合成できる。また、2種類以上の配位子を順番に滴下させることで、異なる配位子を有する金属キレートが得られる。
【0140】
ゲート絶縁層において、炭素原子とケイ素原子の合計100質量部に対して金属原子が10質量部以上180質量部以下含まれることが好ましい。この範囲とすることで、絶縁特性を向上させられる。絶縁層中の炭素原子とケイ素原子の合計100質量部に対する金属原子の質量比はX線光電子分光(XPS)により測定することができる。
【0141】
原料組成物として、アルミニウムキレート、ポリシロキサン、および溶媒を含有し、アルミニウムキレート100質量部に対して、ポリシロキサンが5質量部以上90質量部以下含まれるものを用いた場合、概ね、炭素原子とケイ素原子の合計100質量部に対して前記アルミニウム原子が10質量部以上180質量部以下含まれる絶縁層が形成される。
【0142】
なお、上述の組成物と絶縁層における原子の含有比率の関係は大まかな傾向であり、例えば金属原子の種類等によっては必ず上述の関係が満たされるわけではない。
【0143】
ゲート絶縁層の膜厚は0.05μm以上5μm以下が好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になる。1μm以下の膜厚にすることにより、基板裏面からの露光による導電膜の加工時において、露光光のゲート絶縁層中での散乱が抑制され、導電膜の加工精度がより向上する。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0144】
絶縁層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して複数の絶縁層を形成しても構わない。
【0145】
<上部電極>
上部電極は、主として導電体と感光性有機成分を含有した感光性ペーストを塗布し導電膜4を形成した後、パターニングすることによって得られる。
【0146】
(導電体)
上部電極に用いられる導電体としては、電極として使用されうる導電材料であればいかなるものでもよいが、具体的には、金、銀、銅、白金、鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、酸化ルテニウム、クロム、チタン、およびインジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属粒子、およびカーボンが好ましい。これらを単独で用いても、混合して用いても、これらの複数の金属からなる合金を含む金属粒子を用いても良い。
【0147】
これらの中でも導電性の観点から、金、銀、銅または白金の粒子が好ましい。中でも、コストおよび安定性の観点から銀の粒子がより好ましい。また、塗布膜の低温キュア時の抵抗率低減の観点からは、金属粒子に加えてカーボンブラックを含むことがさらに好ましい。
【0148】
金属粒子の平均粒子径は0.02μm以上10μm以下が好ましく、0.02μm以上5μm以下がより好ましく、0.02μm以上2μm以下がさらに好ましい。平均粒子径が0.02μm以上であると金属粒子同士の接触確率が向上し、作製される電極の比抵抗値、および断線確率を低くすることができる。さらに、露光時の活性光線が膜中をスムーズに透過することができるため、微細なパターニングが容易となる。また平均粒子径が10μm以下であれば電極の表面平滑度、パターン精度、寸法精度が向上する。
【0149】
なお、金属粒子の平均粒子径とは、上部電極の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10000倍の倍率で観察し、得られた像から無作為に選択した粒子100個の粒子径を測長し、その平均の値を求めることにより算定する。粒子径とは、粒子の形状が球形の場合は、その直径を粒子径とする。形状が球形以外の場合は、ある1個の粒子について観察される最大の幅と最小の幅の平均値をその粒子の粒子径とする。
【0150】
導電体の含有量は、感光性ペースト中の全固形分に対し、70質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。含有量の下限としては80質量%以上が好ましい。70重量%以上であることにより、特にキュア時の硬化収縮における金属粒子同士の接触確率が向上し、作製される電極の比抵抗値、および断線確率を低くすることができる。また、95重量%以下であることにより、特に露光時の活性光線が膜中をスムーズに透過することができ、微細なパターニングが容易となる。また、固形分とは感光性ペーストから溶剤を除いたものである。
【0151】
(感光性有機成分)
感光性有機成分は、分子内に重合性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマーを含むものが好ましい。
【0152】
分子内に重合性不飽和基を有するモノマーとしては、活性な炭素−炭素不飽和二重結合を有する化合物を用いることができる。官能基として、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基を有する単官能および多官能化合物が応用できる。
【0153】
具体的な例としては、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートまたは上記化合物のアクリル基を1部または全てメタクリル基に代えた化合物等が挙げられる。
【0154】
本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。上記モノマーの含有量は、感光性ペースト中の全固形分に対し、1質量%以上15質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲がより好ましい。
【0155】
分子内に重合性不飽和基を有するオリゴマーもしくはポリマーとしては、炭素−炭素2重結合を有する化合物から選ばれた成分の重合または共重合により得られる。このようなオリゴマーもしくはポリマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、分子内に重合性不飽和基を有するオリゴマーもしくはポリマーを得ることができる。
【0156】
好ましい重合性不飽和基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0157】
このような側鎖をオリゴマーもしくはポリマーに付加させる方法は、オリゴマーもしくはポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。
【0158】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどが挙げられる。イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどがある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、オリゴマーもしくはポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル等量付加させることが好ましい。
【0159】
上部電極とゲート絶縁層の密着性をより高める観点から、感光性有機成分はウレタン基を有する化合物を含むことが好ましい。例えば、前記オリゴマーもしくはポリマーは、水酸基を側鎖に持つオリゴマーもしくはポリマーにイソシアネート基を有する化合物を反応させたウレタン変性化合物を含むことが好ましい。
【0160】
このような分子内に重合性不飽和基を有するオリゴマーもしくはポリマーは、重量平均分子量(Mw)が2000以上200000以下の範囲内、数平均分子量(Mn)が1000以上50000以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくはMwが5000以上100000の範囲内、Mnが1000以上30000の以下範囲内である。Mw、Mnが上記範囲内であることで、取扱性が良好で、光硬化時に均一な硬化性を得ることができる。
【0161】
感光性有機成分が、分子内に重合性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーもしくはポリマーを含有する場合、これらの成分はいずれも活性光線のエネルギー吸収能力は無いため、光硬化を行わせるためには光重合開始剤を用いる必要がある。光重合開始剤は、光硬化に使用される光源によって選択され、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤等が使用できる。
【0162】
光ラジカル重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アルキル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロペンアミニウムクロリド一水塩、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2ーヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イロキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、メチルフェニルグリオキシエステル、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフルオロフォスフェイト(1−)、ジフェニルスルフィド誘導体、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−ベンゾイル−4−メチルフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,3−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジルメトキシエチルアセタール、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、N−フェニルグリシン、テトラブチルアンモニウム(+1)n−ブチルトリフェニルボレート(1−)、ナフタレンスルフォニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイルおよびエオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミン等の還元剤の組み合わせ等や近紫外に吸収を持つ陽イオン染料とボレート陰イオンとの錯体、近赤外増感色素で増感されたハロゲン化銀と還元剤を組み合わせたもの、チタノセン、鉄アレーン錯体、有機過酸化物、ヘキサアリール、ビイミダゾール、N−フェニルグリシン、ジアリールヨードニウム塩等のラジカル発生剤の少なくとも1種と更に必要に応じて、3−置換クマリン、シアニン色素、メロシアニン色素、チアゾール系色素、ピリリウム系色素等の増感色素等が挙げられる。
【0163】
光カチオン重合開始剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスフェート塩、アンチモネート塩等が挙げられる。
【0164】
本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤の含有量は、感導性ペーストに対し、0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0165】
光重合開始剤と共に増感剤を使用することで感度を向上させ、反応に有効な波長範囲を拡大することができる。
【0166】
増感剤の具体例としては、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾール等が挙げられる。
【0167】
本発明で用いられる感光性ペーストではこれらを1種または2種以上使用することができる。増感剤を本発明の感光性ペーストに添加する場合、その含有量は感光性有機成分に対して0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0168】
本発明で用いられる感光性ペーストは、有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤を用いることで、感光性ペーストの粘度調整を行うことができ、塗布膜の表面平滑性を向上できる。
【0169】
例えば、スクリーン印刷にて塗布膜を形成する場合、感光性ペーストの粘度は、10Pa・s以上100Pa・s以下が好ましく、10Pa・s以上50Pa・s以下がより好ましい。なお、粘度はブルックフィールド型の粘度計を用いて3rpm測定した値である。感光性ペーストの粘度が上記範囲内にあることで、段差ある場合にも被覆性が良好となる。 一方、インクジェットにて塗布膜を形成する場合、感光性ペーストの粘度とは、0.1mPa・s以上100mPa・s以下が好ましく、1mPa・s以上50mPa・s以下がより好ましい。感光性ペーストの粘度が上記範囲内にあることで、良好な液滴形成が可能となり均一な塗布膜が得られる。
【0170】
有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸等、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、テルピネオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、テキサノール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは、2種以上混合して用いてもよい。
【0171】
本発明で用いられる感光性ペーストは、その所望の特性を損なわない範囲であれば分子内に不飽和二重結合を有しない非感光性ポリマー、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料等の添加剤を配合することもできる。非感光性ポリマーの具体例としてはエポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド前駆体、ポリイミドなどが挙げられる。
【0172】
可塑剤の具体例としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。レベリング剤の具体例としては特殊ビニル系重合物、特殊アクリル系重合物などが挙げられる。
【0173】
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0174】
本発明で用いられる感光性ペーストは分散機、混練機などを用いて作製される。これらの具体例としては三本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
(上部電極)
上部電極の幅、厚みは任意である。電極パターンの形成容易性の観点から、電極幅は10μm以上10mm以下が好ましく、厚みは0.01μm以上100μm以下が好ましいが、これに限らない。
【0176】
上部電極用の配線の材料は、下部電極用の配線材料と同様である。
【0177】
<半導体層>
半導体層に用いられる材料は、半導体性を示す材料であれば特に限定されず、キャリア移動度の高い材料が好ましく用いられる。また、低コストで簡便な塗布プロセスが適用できるものが好ましく、有機半導体やカーボン材料が好ましい例として挙げられる。
【0178】
有機半導体としては、具体的には、
ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリ(2,5−ビス(2−チエニル)−3,6−ジペンタデシルチエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(4,8−ジヘキシル−2,6−ビス(3−ヘキシルチオフェン−2−イル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)、ポリ(4−オクチル−2−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チアゾール)、ポリ(5,5’−ビス(4−オクチルチアゾール−2−イル)−2,2’−ビチオフェン)などのチオフェンユニットを主鎖中に含む化合物;
ポリピロール類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリカルバゾール類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類;
ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香環を構成単位とするポリヘテロアリール類;
アントラセン、ピレン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ルブレンなどの縮合多環芳香族化合物;
フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの複素芳香族化合物;
4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルに代表される芳香族アミン誘導体;
ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体;
ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物;
銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類;
銅ポルフィリンなどの金属ポルフィリン類;
ジスチリルベンゼン誘導体、アミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体;
ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミドなどの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;
メロシアニン、フェノキサジン、ローダミンなどの有機色素;
などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0179】
カーボン材料としては、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)、グラフェン、フラーレンなどが挙げられるが、塗布プロセスへの適性や高移動度の点でCNTが好ましい。
【0180】
CNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTのいずれを用いてもよく、これらを2種以上用いてもよい。半導体の特性を示すという観点から単層CNTを用いることが好ましく、中でも単層CNTが半導体型単層CNTを90重量%以上含むことがより好ましい。さらに好ましくは単層CNTが半導体型単層CNTを95重量%以上含むことである。
【0181】
半導体型単層CNTの含有比率は、可視−近赤外吸収スペクトルの吸収面積比により算出できる。CNTは、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等の方法により得ることができる。
【0182】
中でも、半導体層の形成の容易性から、半導体層に用いられる材料はCNTが好ましい。さらに、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT(以下、CNT複合体という)は、溶液中での分散安定性に優れ、高移動度が得られるため、特に好ましい。ここで、共役系重合体とは、繰り返し単位が共役構造をとり、重合度が2以上の化合物を指す。
【0183】
共役系重合体がCNTの表面の少なくとも一部に付着した状態とは、CNT表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのはそれぞれの共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、被覆されたCNTの反射色が被覆されていないCNTの色から共役系重合体の色に近づくことで判別できる。定量的にはX線光電子分光法(XPS)などの元素分析によって、付着物の存在とCNTに対する付着物の質量比を同定することができる。
【0184】
CNTに付着させる共役系重合体は、分子量、分子量分布や構造に関わらず用いることができる。CNTへの付着のしやすさから、該共役系重合体は、重量平均分子量が1000以上であることが好ましい。
【0185】
CNT複合体は、CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体を付着させることにより、CNTの保有する高い電気的特性を損なうことなくCNTを溶液中に均一に分散することが可能になる。また、CNTが均一に分散した分散液を用いて塗布法により、均一に分散したCNT膜を形成することが可能になる。これにより、高い半導体特性を実現できる。
【0186】
共役系重合体をCNTに付着させる方法は、(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法、(III)CNTを溶媒中で予め超音波等で予備分散しておいた所に共役系重合体を添加し混合する方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTを入れ、この混合系に超音波を照射して混合する方法等が挙げられる。本発明では、複数の方法を組み合わせてもよい。
【0187】
本発明において、CNTの長さは、ソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いことが好ましい。CNTの平均長さは、チャネル長によるが、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがあるため、CNTをチャネル長よりも短くする工程を加えることが好ましい。例えば、硝酸、硫酸などによる酸処理、超音波処理、または凍結粉砕法などにより短繊維状にカットする方法が有効である。またフィルターによる分離を併用することは、純度を向上させる点でさらに好ましい。
【0188】
また、CNTの直径は特に限定されないが、1nm以上100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。
【0189】
本発明では、CNTを溶媒中に均一分散させ、分散液をフィルターによってろ過する工程を設けることが好ましい。フィルター孔径よりも小さいCNTを濾液から得ることで、チャネル長よりも短いCNTを効率よく得られる。この場合、フィルターとしてはメンブレンフィルターが好ましく用いられる。ろ過に用いるフィルターの孔径は、チャネル長よりも小さければよい。
【0190】
上記のCNTを被覆する共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、チオフェンユニットとヘテロアリールユニットを繰り返し単位中に有するチオフェン−ヘテロアリーレン系重合体などが挙げられ、これらを2種以上用いてもよい。上記重合体は、単一のモノマーユニットが並んだもの、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したもの、また、グラフト重合したものなどを用いることができる。
【0191】
また、半導体層は、CNT複合体と有機半導体を混合して用いてもよい。有機半導体中にCNT複合体を均一に分散させることにより、有機半導体そのものの特性を維持しつつ、高い移動度を実現することが可能となる。
【0192】
CNT複合体と有機半導体を含む半導体層中のCNT複合体の含有量は、有機半導体100重量部に対して0.01重量部以上3重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
【0193】
また半導体層は、さらに絶縁性材料を含んでもよい。ここで用いられる絶縁性材料としては、本発明の絶縁材料組成物や、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマー材料が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0194】
半導体層7は単層でも複数層でもよく、膜厚は1nm以上200nm以下が好ましく、100nm以下がさらに好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流を抑制し、FETのオンオフ比をより高くすることができる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0195】
また、ゲート絶縁層と半導体層の間に配向性層を設けることもできる。配向性層には、シラン化合物、チタン化合物、有機酸、ヘテロ有機酸など、公知の材料を用いることができ、特に有機シラン化合物が好ましい。
【0196】
有機シラン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、フェニルトリクロロシラン、ナフチルトリクロロシラン、アントリルトリクロロシラン、ピレニルトリクロロシラン、ペリレニルトリクロロシラン、コロネニルトリクロロシラン、チオフェニルトリクロロシラン、ピロリルトリクロロシラン、ピリジルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、アントラセントリメトキシシラン、アントリルトリエトキシシラン、ピレニルトリメトキシシラン、ピレニルトリエトキシシラン、チオフェニルトリメトキシシラン、チオフェニルトリエトキシシラン、フェニルメチルトリクロロシラン、フェニルエチルトリクロロシラン、フェニルプロピルトリクロロシラン、フェニルブチルトリクロロシラン、フェニルヘキシルトリクロロシラン、フェニルオクチルトリクロロシラン、ナフチルメチルトリクロロシラン、ナフチルエチルトリクロロシラン、アントリルメチルトリクロロシラン、アントリルエチルトリクロロシラン、ピレニルメチルトリクロロシラン、ピレニルエチルトリクロロシラン、チオフェニルメチルトリクロロシラン、チオフェニルエチルトリクロロシラン、アミノフェニルトリクロロシラン、ヒドロキシフェニルトリクロロシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、ジクロロフェニルトリクロロシラン、トリクロロフェニルトリクロロシラン、ブロモフェニルトリクロロシラン、フルオロフェニルトリクロロシラン、ジフルオロフェニルトリクロロシラン、トリフルオロフェニルトリクロロシラン、テトラフルオロフェニルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルトリクロロシラン、ヨードフェニルトリクロロシラン、シアノフェニルトリクロロシランなどが挙げられる。
【0197】
配向性層は、好ましくは有機シラン化合物を含む単分子層または分子の集合体で形成されるが、配向性層の抵抗を考慮すると、配向性層の膜厚は10nm以下が好ましく、さらに好ましくは単分子膜である。またシラン化合物を含む配向性層は、シラン化合物中の官能基とゲート絶縁層表面とが化学結合して形成されたものも含む。前記官能基(例えば、トリクロロシリル基)とゲート絶縁層表面が化学的に反応することで、緻密で強固な膜を形成することができる。反応後の強固な膜の上に、未反応のシラン化合物が積層している場合は、洗浄などをすることによって、未反応のシラン化合物を除去し、前記官能基とゲート絶縁層表面とが化学結合して形成された単分子膜を得ることができる。
【0198】
配向性層の形成方法としては、特に限定されないが、CVD法などの気相法や、スピンコート法や浸漬引き上げ法などの液相を用いた方法が挙げられる。
【0199】
配向性層を形成する前に、その下地となるゲート絶縁層表面をUVオゾン法や酸素プラズマ法などの方法を用いて親水化処理してもよい。これにより、前記官能基とゲート絶縁層表面の化学反応を容易にすることができる。
【0200】
本発明では、半導体層に対してゲート絶縁層と反対側に第2絶縁層を形成してもよい。これにより、半導体層を酸素や水分などの外部環境から保護することができる。
【0201】
第2絶縁層に用いられる材料としては特に限定されないが、具体的には酸化シリコン、アルミナ等の無機材料、ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等などのポリマー材料、あるいは無機材料粉末とポリマー材料の混合物や有機低分子材料とポリマー材料の混合物を挙げることができる。
【0202】
これらの中でも、インクジェット等の塗布法で作製できるポリマー材料を用いることが好ましい。特に、ポリフルオロエチレン、ポリノルボルネン、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネートまたはこれらの誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、またはこれらを含む共重合体を用いると、絶縁層の均一性の観点から好ましい。
【0203】
第2絶縁層の膜厚は、50nm以上10μm以下が好ましく、100nm以上3μm以下がより好ましい。第2絶縁層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して形成しても構わない。
【0204】
第2絶縁層の形成方法としては、特に限定されず、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。塗布法として、具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、ドロップキャスト法などを好ましく用いることができる。塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。
【0205】
塗布法を用いて第2の絶縁層を形成するに際して、第2の絶縁層に用いられる絶縁材料を溶解させる溶媒としては、特に制限されないが、
エチレングリゴールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類
が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0206】
中でも、1気圧における沸点が110℃以上200℃以下の溶剤を含有することが好ましい。沸点が110℃以上であれば、溶液塗布時に溶剤の揮発が抑制されて、塗布性が良好となる。沸点が200℃以下であれば、絶縁膜中に残存する溶剤が少なく、より良好な耐熱性や耐薬品性を有する絶縁層が得られる。また、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下でアニーリング処理を行ってもよい。
【0207】
形成されたFETは、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流をゲート電圧を変化させることによって制御することができる。FETの性能の指標となる移動度は、下記の(a)式を用いて算出することができる。
【0208】
μ=(δId/δVg)L・D/(W・εr・ε・Vsd) (a)
ただしIdはソース・ドレイン間の電流、Vsdはソース・ドレイン間の電圧、Vgはゲート電圧、Dはゲート絶縁層の厚み、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、εrはゲート絶縁層の比誘電率、εは真空の誘電率(8.85×10
−12F/m)である。
【0209】
上記の方法で形成されたFETは、移動度が高く、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極との相対位置が高精度に制御されたFETとなる。
【0210】
<無線通信装置>
次に、上記の方法で得られるFETを含有する無線通信装置の製造方法について説明する。この方法は、上記の製造方法で電界効果型トランジスタを形成する工程と、その電界効果型トランジスタが形成される、基板の表面上にアンテナパターンを形成する工程と、を含む。電界効果型トランジスタとアンテナパターンの形成順序は問わない。なお、本発明においてアンテナとは電波を送受信するための物である。
【0211】
無線通信装置は、例えばRFIDのような、外部のリーダ/ライタに搭載されたアンテナから送信される搬送波をRFIDタグが受信することで電気通信を行う装置である。
【0212】
具体的な動作は、例えばリーダ/ライタに搭載されたアンテナから送信された無線信号を、RFIDタグのアンテナが受信し、RFID内のFETが無線信号のコマンドに応じた動作を行う。その後、コマンドに応じた結果の回答を無線信号としてRFIDタグのアンテナからリーダ/ライタのアンテナへ送信する。なお、コマンドに応じた動作は、FETから構成される公知の復調回路、動作制御ロジック回路、変調回路などで行われる。
【0213】
無線通信装置は、
図4、
図5に一例を示すように、アンテナパターン101を形成した基板100上に、本発明のFETの製造方法にて製造されたFETを含む回路102と、それとアンテナとの接続配線103を形成することで、製造することができる。
【0214】
アンテナ材料および接続配線材料は、導電材料であればいかなるものでもよい。具体的には、下部電極材料と同様のものが挙げられる。中でも、柔軟性が増し、屈曲時にも密着性が良く電気的接続が良好となる点から、導電体とバインダーとを含有するペースト材料が好ましい。アンテナ材料および接続配線材料は製造コスト低減の観点から同一材料であることが好ましい。
【0215】
アンテナパターンおよび接続配線パターンを形成する方法としては、抜き刃を用いて銅箔やアルミニウム箔などの金属箔を加工して基板に転写する方法、基板に貼り付けた金属箔を、金属箔上に形成したレジスト層をマスクとしてエッチングする方法、基板に導電性ペーストのパターンを塗布法により形成し、熱や光によってそのパターンを硬化させる方法などがある。中でも、製造コスト低減の観点から、基板に導電ペーストを塗布して形成する方法が好ましい。
【0216】
塗布による形成方法としては、インクジェット法、印刷法、イオンプレーティングコーティング法、抵抗加熱蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、メッキ法、CVD法などが挙げられる。
【0217】
また、材料として導電体とバインダーを含むペーストを用いた場合は、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術を用いて、ペーストを基板上に塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いて乾燥を行う方法なども挙げられる。また、上記方法で作製した導電膜を公知のフォトリソグラフィ法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
【0218】
さらに、アンテナパターンおよび接続配線パターンはFETの下部電極および配線と同一材料から構成されることが好ましい。材料種類が少なくなり、上記アンテナパターンおよび接続配線パターンとFETの下部電極および配線を同一工程で作製することで製造工程数を削減しコスト低減が可能となるからである。
【0219】
アンテナパターンおよび接続配線パターンとFETの下部電極および配線が同一材料から構成されるとは、アンテナパターンおよび接続配線パターンとFETの下部電極および配線に含まれる元素の中で最も含有モル比率が高い元素が同一であることをいう。アンテナパターンおよび接続配線パターンとFETの下部電極および配線中の元素の種類と含有比率は、X線光電子分光(XPS)や二次イオン質量分析法(SIMS)などの元素分析によって、同定することができる。
【0220】
アンテナパターン、接続配線パターン、FETの下部電極、および配線が同一工程で作製されると、アンテナパターンと接続配線パターン、接続配線パターンとFETの下部電極用配線の接続部は連続相で形成される。アンテナパターン、接続配線パターン、FETの下部電極、および配線の密着性、製造コスト低減の観点からは、連続相を成すように形成することが好ましい。アンテナパターン、接続配線パターン、FETの下部電極、および配線パターンが連続相であるとは、それらのパターンが一体化しており接続部に接続界面が存在しないことをいう。接続部が連続相であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで接続部の断面を観察することで確認することができる。
【0221】
アンテナパターンと接続配線パターン、接続配線パターンとFETの下部電極用配線の接続部の幅および厚みは任意である。
【実施例】
【0222】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。実施例における各評価法を以下の[1]〜[3]で説明する。
【0223】
[1]密着性評価
図6を参照して説明する。FETを形成した基板21について、FETを形成した面上の中央部に直径30mmの金属円柱20を固定し、この円柱に沿って、円柱の抱き角0°(サンプルが平面の状態)の状態に置き(
図6(a)参照)、円柱への抱き角が180°(円柱で折り返した状態)となるまで(
図6(b)参照)、折り曲げ動作を行った。耐屈曲性は、曲げ動作前後のFETの下部電極、上部電極、およびアンテナパターンを光学顕微鏡で観察し、以下の基準で評価を行った。
A(良好):折り曲げ動作を500回繰り返しても下部電極、上部電極、およびアンテナパターンに剥がれ、欠けが見られない。
B(可):折り曲げ動作を100回繰り返しても下部電極、上部電極、およびアンテナパターンに剥がれ、欠けが見られない。
C(不可):折り曲げ動作の繰り返しが100回未満で、下部電極、上部電極、およびアンテナパターンの少なくとも一部に剥がれ、欠けが見られた。
【0224】
[2]ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれ評価
図7、8を参照して説明する。形成したFETについて、任意の20素子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ゲート電極2とソース電極5またはドレイン電極6との重なり部の長さXを各素子で測定した。20個の素子のXの平均値を求めた。
【0225】
[3]FETの移動度の評価
FETのゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)−ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定には半導体特性評価システム4200−SCS型(ケースレーインスツルメンツ(株)製)を用い、大気下で測定した。Vg=+20V〜−20Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から移動度を求めた。
【0226】
[4]FETのヒステリシスの評価
FETのゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)−ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定し、Vgを正から負へと印加した際のId=10
−8Aにおけるゲート電圧Vg
1と、Vgを負から正へと印加した際のId=10
−8Aにおけるゲート電圧Vg
2との差の絶対値|Vg
1−Vg
2|から、ヒステリシスを求めた。
【0227】
[5]表面粗さの測定
ソース電極およびドレイン電極の表面粗さを測定した。測定には、表面形状測定装置(サーフコム1400 東京精密(株)製)を用い、ソース電極およびドレイン電極の表面上の粗さ曲線を取得した。取得した粗さ曲線を、走査方向に1mmだけを抜き取り、この抜き取り部分の、高さ方向の平均線を基準とし、最も高い山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と、最も低い谷底から低い順に5番目までの谷底の谷深さの絶対値の平均値との和を十点平均粗さRzとした。
【0228】
合成例1;化合物P1(感光性有機成分)
共重合比率(質量基準):エチルアクリレート(以下、「EA」)/メタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2−EHMA」)/スチレン(以下、「St」)/グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)/アクリル酸(以下、「AA」)=20/40/20/5/15。
【0229】
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2−EHMA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、化合物P1を得た。
【0230】
合成例2;化合物P2(感光性有機成分)
共重合比率(質量基準):2官能エポキシアクリレートモノマー(エポキシエステル3002A;共栄社化学(株)製)/2官能エポキシアクリレートモノマー(エポキシエステル70PA;共栄社化学(株)製)/GMA/St/AA=20/40/5/20/15。
【0231】
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのエポキシエステル3002A、40gのエポキシエステル70PA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、化合物P2を得た。
【0232】
合成例3;化合物P3(感光性有機成分)
化合物P2のウレタン変性化合物
窒素雰囲気の反応容器中に、100gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、感光性成分P2を10g、3.5gのn−ヘキシルイソシアネートおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、ウレタン結合を有する化合物P3を得た。
【0233】
調製例1;感光性ペーストA
100mlクリーンボトルに、上記により得られた化合物P1を16g、化合物P3を4g、光重合開始剤OXE−01(BASFジャパン株式会社製)4g、酸発生剤SI−110(三新化学工業株式会社製)を0.6g、γ−ブチロラクトン(三菱ガス化学株式会社製)を10g入れ、自転−公転真空ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE−310;(株)シンキー製)で混合し、感光性樹脂溶液34.6g(固形分78.5質量%)を得た。得られた感光性樹脂溶液8.0gと平均粒子径2μmのAg粒子42.0gを混ぜ合わせ、3本ローラー“EXAKT M−50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練し、50gの感光性ペーストAを得た。
【0234】
調製例2;感光性ペーストB
平均粒子径0.2μmのAg粒子を用いたこと以外は、調整例1と同様の方法で、感光性ペーストBを得た。
【0235】
調製例3;感光性ペーストC
化合物P1を20g用い、化合物P3を用いないこと以外は、調整例2と同様の方法で、感光性ペーストCを得た。
【0236】
調製例4;感光性ペーストD
γ−ブチロラクトンを40g用いたこと以外は、調整例2と同様の方法で、感光性ペーストDを得た。
【0237】
【表1】
【0238】
実施例1
(1)半導体溶液の作製
ポリ−3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、レジオレギュラー、数平均分子量(Mn):13000、以下P3HTという)0.10gをクロロホルム5mlの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mlと0.1規定塩酸10mlの混合溶液の中に0.5mlずつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のメンブレンフィルター(PTFE社製:4フッ化エチレン)によって濾別捕集し、メタノールでよくすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
【0239】
次に、CNT1(CNI社製、単層CNT、純度95%)1.5mgと、上記P3HT1.5mgを15mlのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX−500)を用いて出力250Wで30分間超音波撹拌した。超音波照射を30分行った時点で一度照射を停止し、P3HTを1.5mg追加し、さらに1分間超音波照射することによって、CNT分散液A(溶媒に対するCNT複合体濃度0.1g/l)を得た。
【0240】
次に、半導体層7を形成するための半導体溶液の作製を行った。上記CNT分散液Aをメンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNT複合体を除去した。得られたろ液5mlにジクロロベンゼン45mlを加え、半導体溶液A(溶媒に対するCNT複合体濃度0.01g/l)とした。
【0241】
(2)ゲート絶縁層材料の作製
メチルトリメトキシシラン(以下、MTMSiという)61.29g(0.45モル)、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(以下、β−EpETMSiという)12.31g(0.05モル)、およびフェニルトリメトキシシラン(以下、PhTMSiという)99.15g(0.5モル)をプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)203.36gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出せしめた。次いでバス温130℃で2.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0質量%のゲート絶縁層材料Aを得た。
【0242】
得られたゲート絶縁層材料Aを50g量り取り、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃、以下PGMBという)16.6gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ゲート絶縁層材料B(固形分濃度19.5質量%)を得た。
【0243】
(3)FETの作製
図1に示すようにFETの作製を行った。PET基板(膜厚50μm)上に、感光性ペーストAをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”(商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、基板上にゲート電極を作製した。
【0244】
次に上記(2)に記載の方法で作製したゲート絶縁層材料Bを上記ゲート電極が形成されたPET基板上にスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、120℃で5分間熱処理後、再度絶縁層溶液Bをスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、窒素気流下200℃で30分間熱処理することによって、膜厚400nmのゲート絶縁層を形成した。
【0245】
次にゲート絶縁層の上に、感光性ペーストAをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”を用いて、基板裏面側から露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、ゲート絶縁層上にソース電極およびドレイン電極を作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iを、分光光度計(U−4100、HITACHI製)を用いて365nm帯で測定し、式(a)の関係を満たすかどうか調べたところ、−LOG
10(I/I
0)=2.9であり、満たしていた。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.2μmであった。
【0246】
次に上記(1)に記載の方法で作製した半導体溶液Aを、上記ソース電極およびドレイン電極の間にインクジェット装置(クラスターテクノロジー(株)製)を用いて400pl滴下し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃で30分の熱処理を行い、半導体層を形成し、FETを得た。ソース電極とドレイン電極の間隔は20μmであった。
【0247】
得られたFETについて、[1]〜[3]に記載の方法で密着性評価、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれ評価およびFETの移動度の評価を行った。
【0248】
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.5μmであった。移動度は0.6cm
2/V・sec、ヒステリシスは19.1Vであった。
【0249】
実施例2
(1)FETの作製
ゲート電極の形成に感光性ペーストB、ソース電極およびドレイン電極の形成に感光性ペーストBを使用したこと以外は実施例1と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.1であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.1μmであった。
【0250】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.2μmであった。FETの移動度は、0.6cm
2/V・sec、ヒステリシスは18.3Vであった。
【0251】
実施例3
(1)ゲート絶縁層材料の作製
ゲート絶縁層材料Aを10gはかり取り、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(2,4−ペンタンジオナート)(商品名「アルミキレートD」、川研ファインケミカル(株)製、以下アルミキレートDという)13gとプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点:146℃、アルドリッチ社製、以下、PGMEAという)42gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ゲート絶縁層材料C(固形分濃度24重量%)を得た。本溶液中の上記ポリシロキサンの含有量はアルミキレートD 100重量部に対して20重量部であった。前記ゲート絶縁層材料Cを大気中、室温で保存したところ、1ヶ月たっても析出物は観察されず安定であった。
【0252】
(2)FETの作製
ゲート絶縁層材料Bの代わりにゲート絶縁層材料Cを使用したこと以外は、実施例2と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=2.8であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.1μmであった。
【0253】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.2μmであった。FETの移動度は、0.8cm
2/V・sec、ヒステリシスは11.8Vであった。
【0254】
実施例4
(1)FETの作製
ゲート電極の形成に感光性ペーストC、ソース電極およびドレイン電極の形成に感光性ペーストCを使用したこと以外は実施例4と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=2.3であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.3μmであった。
【0255】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はB、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.5μmであった。FETの移動度は、0.7cm
2/V・sec、ヒステリシスは12.8Vであった。
【0256】
実施例5
(1)ゲート絶縁層材料の作製
MTMSi34.1g(0.25モル)、PhTMSi99.2g(0.5モル)およびジメチルジメトキシシラン(以下DMDMSiという)30.1g(0.25モル)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてゲート絶縁層材料を合成し、固形分濃度26.5重量%のゲート絶縁層材料Dを得た。
【0257】
得られたゲート絶縁層材料Dを50.0gはかり取り、PGMB16.0gを混合して、室温にて2時間攪拌し、ゲート絶縁層材料Eを得た。
【0258】
(2)FETの作製
ゲート絶縁層材料Bの代わりにゲート絶縁層材料Eを使用したこと以外は、実施例2と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.1であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.1μmであった。
【0259】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.4μmであった。FETの移動度は、0.3cm
2/V・sec、ヒステリシスは18.1Vであった。
【0260】
実施例6
(1)ゲート絶縁層材料の作製
ポリビニルフェノール(アルドリッチ社製、重量平均分子量(Mw):20000、以下PVPという)、ポリメラミンコホルムアルデヒド(アルドリッチ社製、数平均分子量(Mn):432、以下PMFという)およびPGMEAを、PVP:PMF:PGMEA=10:5:100の重量比で混合し、ゲート絶縁層材料Fとした。
【0261】
(2)FETの作製
ゲート絶縁層材料Bの代わりにゲート絶縁層材料Fを使用したこと以外は、実施例2と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=2.9であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.1μmであった。
【0262】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.4μmであった。FETの移動度は、0.2cm
2/V・sec、ヒステリシスは21.9Vであった。
【0263】
実施例7
(1)半導体溶液の作製
CNT1を1.5mgと、ドデシル硫酸ナトリウム((株)和光純薬工業製)1.5mgを30mlの水中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザーを用いて出力250Wで3時間超音波撹拌し、CNT複合体分散液B(溶媒に対するCNT複合体濃度0.05g/l)を得た。得られたCNT複合体分散液Bを遠心分離機(日立工機(株)製CT15E)を用いて、21000Gで30分間遠心分離した後、上澄みの80体積%を取り出すことにより半導体溶液Bを得た。
【0264】
(2)FETの作製
半導体溶液Aの代わりに半導体溶液Bを使用したこと以外は、実施例2と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.3であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.0μmであった。
【0265】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.1μmであった。FETの移動度は、0.1cm
2/V・sec、ヒステリシスは17.6Vであった。
【0266】
実施例8
(1)RFIDの作製
PET基板(膜厚50μm)上に、感光性ペーストBをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”(商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、基板上にアンテナパターンおよび接続配線パターン、ゲート電極、配線を作製した。その後は、実施例2と同様にFETを作製し、RFIDを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.2であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.1μmであった。得られたRFIDは、アンテナとFETから構成される回路の導通があり、RFIDとして動作することを確認した。
【0267】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.3μmであった。FETの移動度は、0.8cm
2/V・sec、ヒステリシスは10.9Vであった。また、アンテナパターンについて、[1]記載の方法で密着性を評価したところ、評価結果はAであった。
【0268】
実施例9
(1)FETの作製
図2に示すようにFETの作製を行った。PET基板(膜厚50μm)上に、感光性ペーストBをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”(商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、基板上にソース電極およびドレイン電極を作製した。
【0269】
次に半導体溶液Aを、上記ソース電極・ドレイン電極間にインクジェット装置(クラスターテクノロジー(株)製)を用いて400pl滴下し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃で30分の熱処理を行い、半導体層を形成した。
【0270】
次にゲート絶縁層材料Cを上記ソース電極およびドレイン電極と半導体層が形成されたPET基板上にスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、120℃で5分間熱処理後、再度絶縁層溶液Bをスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、窒素気流下200℃で30分間熱処理することによって、膜厚400nmのゲート絶縁層を形成した。
【0271】
次にゲート絶縁層の上に、感光性ペーストBをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”を用いて、基板裏面側から露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、ゲート絶縁層上にゲート電極を形成し、FETを得た。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたソース電極/ドレイン電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.0であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.1μm、ソース電極とドレイン電極の間隔は20μmであった。
【0272】
密着性評価では、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はAであった。ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.2μmであった。またFETの移動度は、0.7cm
2/V・sec、ヒステリシスは10.1Vであった。
【0273】
実施例10
(1)FETの作製
PET基板(膜厚50μm)上に、感光性ペーストDをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”(商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、基板上に膜厚210nmのゲート電極を作製した。それ以外は、実施例2と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=1.7であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.0μm、ソース電極とドレイン電極の間隔は16μmであった。
【0274】
密着性評価では、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はAであった。ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は1.9μmであった。またFETの移動度は、0.4cm
2/V・sec、ヒステリシスは11.7Vであった。
【0275】
実施例11
(1)FETの作製
PET基板(膜厚342μm)上に、FETを形成したこと以外は、実施例2と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.2であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.1μm、ソース電極とドレイン電極の間隔は18μmであった。
【0276】
密着性評価では、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はAであった。ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は1.5μmであった。またFETの移動度は、0.7cm
2/V・sec、ヒステリシスは10.1Vであった。
【0277】
実施例12
(1)FETの作製
PET基板(膜厚188μm)上に、FETを形成したこと以外は、実施例2と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.1であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.1μm、ソース電極とドレイン電極の間隔は19μmであった。
【0278】
密着性評価では、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はAであった。ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.9μmであった。またFETの移動度は、0.8cm
2/V・sec、ヒステリシスは10.6Vであった。
【0279】
実施例13
(1)FETの作製
ゲート絶縁層材料Cをゲート電極が形成されたPET基板上にスピンコート塗布(500rpm×20秒)し、120℃で5分間熱処理後、再度絶縁層溶液Cをスピンコート塗布(500rpm×20秒)し、窒素気流下200℃で30分間熱処理することによって、膜厚1100nmのゲート絶縁層を形成したこと以外は、実施例2と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.2であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.0μm、ソース電極とドレイン電極の間隔は17μmであった。
【0280】
密着性評価では、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はAであった。ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は1.6μmであった。またFETの移動度は、0.7cm
2/V・sec、ヒステリシスは10.2Vであった。
【0281】
実施例14
(1)FETの作製
図1に示すようにFETの作製を行った。PET基板(膜厚50μm)上に、感光性ペーストBをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”(商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、基板上にゲート電極を作製した。
【0282】
次に上記(2)に記載の方法で作製したゲート絶縁層材料Bを上記ゲート電極が形成されたPET基板上にスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、120℃で5分間熱処理後、再度絶縁層溶液Bをスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、窒素気流下200℃で30分間熱処理することによって、膜厚400nmのゲート絶縁層を形成した。
【0283】
次にゲート絶縁層の上に、感光性ペーストBをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”を用いて、基板裏面側から露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行った。次に基板表面側から露光量30mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行った。次に、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、ゲート絶縁層上にソース電極およびドレイン電極を作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.1であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、0.2μm、ソース電極とドレイン電極の間隔は20μmであった。
【0284】
次に上記(1)に記載の方法で作製した半導体溶液Aを、上記ソース電極およびドレイン電極の間にインクジェット装置(クラスターテクノロジー(株)製)を用いて400pl滴下し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃で30分の熱処理を行い、半導体層を形成し、FETを得た。ソース電極とドレイン電極の間隔は20μmであった。
【0285】
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.5μmであった。移動度は1.1cm
2/V・sec、ヒステリシスは10.1Vであった。
【0286】
実施例15
(1)ゲート絶縁層材料の作製
3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(以下、SucSiという)13.12g(0.05モル)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以下、AcrSiという)93.73g(0.40モル)およびPhTMSi109.06g(0.55モル)をPGMEA215.91gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出せしめた。次いでバス温130℃で2.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とPGMEAからなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0重量%のゲート絶縁層材料Gを得た。得られたゲート絶縁層材料Gを10gはかり取り、PGMEA0.83gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ゲート絶縁層材料H(固形分濃度24重量%)を得た。
【0287】
(2)FETの作製
ゲート絶縁層材料Bの代わりにゲート絶縁層材料Hを使用したこと以外は、実施例14と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.3であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、0.3μm、ソース電極とドレイン電極の間隔は20μmであった。
【0288】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.3μmであった。FETの移動度は、1.2cm
2/V・sec、ヒステリシスは5.8Vであった。
【0289】
実施例16
(1)FETの作製
抵抗加熱法により、マスクを通してAlを150nmの厚さで真空蒸着し、PET基板(膜厚50μm)上にゲート電極を作製したこと以外は、実施例14と同様にFETを作製した。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.6であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、0.2μm、ソース電極とドレイン電極の間隔は20μmであった。
【0290】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極の密着性評価はB、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.4μmであった。FETの移動度は、1.1cm2/V・sec、ヒステリシスは9.8Vであった。
【0291】
比較例1
(1)FETの作製
図1に示すようにFETの作製を行った。ガラス製の基板(膜厚0.7mm)上に、抵抗加熱法により、マスクを通してAlを150nmの厚さで真空蒸着し、基板上にゲート電極を作製した。
【0292】
次にゲート絶縁層材料Cを上記ゲート電極が形成された基板上にスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、120℃で5分間熱処理後、再度絶縁層溶液Cをスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、窒素気流下200℃で30分間熱処理することによって、膜厚400nmのゲート絶縁層を形成した。
次にゲート絶縁層の上に、抵抗加熱法により、金を50nmの厚さになるように真空蒸着し、その上にフォトレジスト(商品名「LC100−10cP」、ローム・アンド・ハース(株)製)をスピンコート塗布(1000rpm×20秒)し、100℃で10分間加熱乾燥した。
【0293】
作製したフォトレジスト膜をパラレルライトマスクアライナー(キヤノン(株)製PLA−501F)を用いて、マスクを介してパターン露光した後、自動現像装置(滝沢産業(株)製AD−2000)を用いて2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液であるELM−D(商品名、三菱ガス化学(株)製)を用いて70秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間洗浄した。その後、エッチング液AURUM−302(商品名、関東化学(株)製)を用いて5分間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。AZリムーバ100(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)に5分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、120℃で20分間加熱乾燥することでソース電極およびドレイン電極を形成した。ソース電極とドレイン電極の間隔は20μmであった。
【0294】
次に半導体溶液Aを、上記ソース電極・ドレイン電極間にインクジェット装置(クラスターテクノロジー(株)製)を用いて400pl滴下し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃で30分の熱処理を行い、半導体層を形成し、FETを得た。
【0295】
作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はC、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は5.3μmであった。またFETの移動度は、0.04cm
2/V・sec、ヒステリシスは11.9Vであった。
【0296】
比較例2
(1)FETの作製
図1に示すようにFETの作製を行った。PET基板(膜厚50μm)上に、感光性ペーストBをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”(商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、基板上にゲート電極を作製した。
【0297】
次にゲート絶縁層材料Cを上記ゲート電極が形成された基板上にスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、120℃で5分間熱処理後、再度絶縁層溶液Cをスピンコート塗布(800rpm×20秒)し、窒素気流下200℃で30分間熱処理することによって、膜厚400nmのゲート絶縁層を形成した。
【0298】
次に半導体溶液Aを、ゲート絶縁層上にインクジェット装置(クラスターテクノロジー(株)製)を用いて400pl滴下し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃で30分の熱処理を行い、半導体層を形成した。
【0299】
次にゲート絶縁層の上に半導体層を覆うように、感光性ペーストBをスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分プリベークを行った。その後、露光装置“PEM−8M”を用いて、基板裏面側から露光量70mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行い、0.5%Na
2CO
3溶液で30秒間浸漬現像を行い、超純水でリンス後、乾燥オーブンで140℃、30分間キュアを行い、ゲート絶縁層上にソース電極・ドレイン電極を作製し、FETを得た。その際、基板裏面側から露光する露光光の強度I
0と、基板、基板表面上に形成されたゲート電極およびゲート絶縁層を透過した光の強度Iとの関係は、−LOG
10(I/I
0)=3.1であった。また、ソース電極およびドレイン電極の十点平均粗さRzは、1.2μm、ソース電極とドレイン電極の間隔は20μmであった。
【0300】
半導体層上の感光性ペーストBの現像残渣が一部に確認できた。また、作製したFETを実施例1と同様に評価したところ、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の密着性評価結果はA、ゲート電極とソース・ドレイン電極の位置ずれXの平均値は0.3μmであった。またFETの移動度は、0.05cm
2/V・sec、ヒステリシスは13.1Vであった。
【0301】
【表2】
【0302】
【表3】
基板の表面上にゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極上にゲート絶縁層を形成する工程と、前記ゲート絶縁層上に導電体と感光性有機成分とを含有する導電膜を塗布法により形成する工程と、前記基板の裏面側から前記ゲート電極をマスクとして前記導電膜を露光する工程と、露光された導電膜を現像してソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に半導体層を塗布法により形成する工程と、を含む電界効果型トランジスタの製造方法であり、これにより、簡便なプロセスで作製することが可能で、移動度が高く、ゲート電極とソース・ドレイン電極が高精度に位置合わせされたFET、半導体装置、RFIDを提供することができる。