(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被覆層は、前記電磁波シールド層の端部を越えて突出する第1突出部を備え、前記基板の一方の面側から前記電子部品搭載基板を封止する際に、前記第1突出部は、前記基板の他方の面側に折り込まれることにより、前記基板の他方の面側を被覆するよう構成されている請求項6に記載の封止用フィルム。
前記絶縁層は、前記電磁波シールド層の端部を越えて突出し、前記第1突出部に接触して積層された第3突出部を備え、前記基板の一方の面側から前記電子部品搭載基板を封止する際に、前記第1突出部と前記第3突出部とは、前記基板の他方の面側に折り込まれることにより、前記基板の他方の面側を前記第3突出部が接触して被覆するよう構成されている請求項7に記載の封止用フィルム。
前記突出部は、前記基板の一方の面側から前記電子部品搭載基板を封止する際に、前記基板の他方の面側に折り込まれることにより、前記基板の他方の面側を被覆するよう構成されている請求項12または13に記載の封止用フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の封止用フィルム、電子部品搭載基板の封止方法および封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて、詳細に説明する。
【0042】
本発明の封止用フィルムは、基板と、該基板の一方の面側に搭載された電子部品とを備える電子部品搭載基板を封止するのに用いられる封止用フィルムであって、絶縁層と、該絶縁層の一方の面側に積層された電磁波シールド層とを有し、、絶縁層および電磁波シールド層は、ともに、樹脂材料を含有し、この封止用フィルムは、JIS K 6251に準拠して求められる軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であることを特徴とする。
【0043】
また、本発明の電子部品搭載基板の封止方法は、上記の封止用フィルムを用いて、電子部品搭載基板が備える基板と電子部品とを被覆する電子部品搭載基板の封止方法であり、基板と電子部品とを覆うように、絶縁層を電子部品搭載基板側にして封止用フィルムを電子部品搭載基板上に配置する工程(配置工程)と、封止用フィルムを加熱し軟化させるとともに、減圧する工程(加熱・減圧工程)と、封止用フィルムを冷却させるとともに、加圧することで、基板と電子部品とを封止用フィルムで封止する工程(冷却・加圧工程)とを有することを特徴とする。
【0044】
このような封止用フィルムを、基板上に電子部品が搭載されることにより形成された凹凸の被覆に適用すると、前記冷却・加圧工程において、軟化された状態の封止用フィルムが、加圧された状態で冷却されることから、凹凸に対して優れた追従性をもって封止した状態で、基板と電子部品とを被覆することができる。そのため、この封止用フィルムを被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板において、電子部品が湿気や埃等の外部因子と接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を備える電子機器の信頼性の向上を図ることができる。
【0045】
また、封止用フィルムにより、基板と電子部品とを被覆する際に、電子部品は、絶縁層を介して電磁波シールド層で封止される。そのため、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板は、電子部品への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとなる。
【0046】
なお、電子部品が搭載された基板の一方の面側に、電子部品に電気的に接続される電極が設けられている場合には、封止用フィルムが、基板上に電子部品および電極が搭載されることにより形成される凹凸に対する優れた追従性をもって、基板、電子部品および電極を封止(被覆)することができる。この場合にも、上述した効果が得られる。
【0047】
<第1実施形態>
[封止用フィルム]
まず、本発明の封止用フィルム100の第1実施形態について説明する。
【0048】
図1は、本発明の封止用フィルムの第1実施形態を示す縦断面図、
図2(a)〜(c)は、本発明の封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図1、
図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0049】
封止用フィルム100は、絶縁層12と、この絶縁層12の一方の面側(上面側)に積層された電磁波シールド層13とを備え、絶縁層12および電磁波シールド層13が、ともに、樹脂材料を含有し、JIS K 6251に準拠して求められる軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。
【0050】
このような絶縁層12と電磁波シールド層13とを備える積層体で構成される封止用フィルム100は、前記伸び率が前記範囲内を満足し得るものであれば、これら絶縁層12と電磁波シールド層13とに含まれる樹脂材料は、如何なるもので構成されていてもよい。かかる樹脂材料は、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン共重合体、延伸ポリプロピレン、未延伸ポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン−6T、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸とからなるナイロン−6I、ノナンジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン−9T、メチルペンタジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン−M5T、カプロラクタムとラウリルラクタムとからなるナイロン−6,12、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とカプロラクタムとからなるナイロン−6、ナイロン−6,6のようなポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニルおよびポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、絶縁層12および電磁波シールド層13のそれぞれに含まれる樹脂材料は、同一であってもよいし、異なっても良い。
【0051】
さらに、絶縁層12と電磁波シールド層13とに含まれる樹脂材料は、上述した熱可塑性樹脂材料の他に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂のような熱硬化性樹脂やアクリル樹脂やウレタン樹脂のようなUV硬化性樹脂が含まれていてもよい。
【0052】
このような樹脂材料を含有する絶縁層12および電磁波シールド層13のうち、絶縁層12は、前記樹脂材料を主材料として含有する層で構成され、電磁波シールド層13は、前記樹脂材料と、導電性を備える導電性粒子とを含有する層で構成される。絶縁層12および電磁波シールド層13をかかる構成とすることで、絶縁層12が、絶縁性を有し、電磁波シールド層13が、導電性および電磁波シールド性の双方を有する。
【0053】
上記のような樹脂材料を含有する絶縁層12と電磁波シールド層13とを備える封止用フィルム100は、ポリオレフィン系樹脂を前記樹脂材料として含有する層を、絶縁層12および電磁波シールド層13のうちの少なくとも1層として備えることが好ましい。これにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を容易に150%以上3500%以下に設定することができる。
【0054】
そこで、以下では、前記樹脂材料を主材料として含有する絶縁層12と、前記樹脂材料と導電性粒子とを含有する電磁波シールド層13とを備え、絶縁層12に含まれる樹脂材料がポリオレフィン系樹脂である封止用フィルム100を、一例として説明する。
【0055】
図1、2に示すように、本実施形態において、封止用フィルム100は、電磁波シールド層13と、絶縁層12とを備え、これらが、被覆すべき電子部品搭載基板45の反対側(上面側)から、この順で積層されている積層体で構成されている。そして、電磁波シールド層13は、絶縁層12よりも大きく形成され、その端部が絶縁層12の端部(縁部)から露出している。換言すれば、電磁波シールド層13は、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部15を備えている。
【0056】
なお、封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、基板5と、基板5の上面(一方の面)の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の上面の端部に形成された電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4および電極3の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成され、この凹凸6が、封止用フィルム100を用いて被覆される。なお、基板5としては、例えば、プリント配線基板が挙げられ、基板5上に搭載する電子部品4としては、例えば、半導体素子、コンデンサー、コイル、コネクターおよび抵抗等が挙げられ、電極3としては、例えば、外部から電気を供給するための電源と接続するための電極、他の電子部品と電気的に接続するための電極、および、電子部品4を接地するためのグランド電極等が挙げられる。
【0057】
絶縁層12は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定して、凹凸6への優れた密着性および優れた形状追従性を持たせることを目的に、本実施形態では、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有する層である。
【0058】
また、絶縁層12は、樹脂材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有することで、絶縁性を備える層である。この絶縁層12は、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆する際に、電子部品4と導電性を有する電磁波シールド層13との間に介在することで、電子部品4同士、さらには電子部品4と電極3との間で短絡が生じるのを防止するための層として機能する。
【0059】
このエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、共重合されるVA含有量が5重量%以上30重量%以下であることが好ましく、10重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。前記下限値未満であると、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を前記範囲内に設定することが困難となるおそれがある。これに対して、前記上限値を超えると、絶縁層12を構成する樹脂の結晶部が減少し、非結晶部が増加する傾向を示すことに起因して、絶縁層12に残存する酸化防止剤等の添加剤が溶出するおそれがある。そのため、電子部品搭載基板45側に移行し、その結果、電子部品4の特性に不都合が生じるおそれがある。
【0060】
また、絶縁層12の平均厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上120μm以下であることがより好ましい。絶縁層12の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定することができる。また、電磁波シールド層13の電子部品4に対する絶縁性をより確実に確保することができる。
【0061】
なお、絶縁層12に含まれる樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体の他、後述する電磁波シールド層13に含まれるアイオノマー樹脂であってもよいし、エチレン−酢酸ビニル共重合体以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0062】
電磁波シールド層13は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定して、凹凸6への密着性および形状追従性に優れたものとすること、さらには、封止用フィルム100を強靱性に優れたものとすることを目的に、本実施形態では、樹脂材料としてアイオノマー樹脂を含有する。また、樹脂材料(アイオノマー)は、下記の導電性材料を層中に保持するバインダーとしても機能する。
【0063】
また、電磁波シールド層13は、樹脂材料としてアイオノマー樹脂の他に、さらに、導電性を有する導電性粒子を含有することで、導電性および電磁波シールド性を備える層である。そして、この電磁波シールド層13は、絶縁層12よりも大きく形成され、その中央部において絶縁層12が積層されるが、端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部15を備えている。
【0064】
このような電磁波シールド層13により、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆する際に、その中央部では、絶縁層12を介して、電子部品4が被覆される。そのため、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとすることができる。さらに、電磁波シールド層13の端部では、絶縁層12が介在することなく、導電性を有する突出部15が電極3を直接被覆することで、電極3が突出部15(電磁波シールド層13)に電気的に接続される。そのため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部15を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0065】
ここで、本明細書中において、樹脂材料としてのアイオノマー樹脂とは、エチレンおよび(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体や、エチレン、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルを重合体の構成成分とする3元共重合体を、金属イオンで架橋した樹脂のことを言い、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0066】
また、金属イオンとしては、例えば、カリウムイオン(K
+)、ナトリウムイオン(Na
+)、リチウムイオン(Li
+)、マグネシウムイオン(Mg
++)、亜鉛イオン(Zn
++)等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウムイオン(Na
+)または亜鉛イオン(Zn
++)であることが好ましい。これにより、アイオノマー樹脂における架橋構造が安定化されるため、前述した電磁波シールド層13としての機能をより顕著に発揮させることができる。
【0067】
さらに、エチレンおよび(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体、もしくは、エチレン、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルを重合体の構成成分とする3元共重合体のカルボキシル基における陽イオン(金属イオン)による中和度は、好ましくは40mol%以上75mol%以下である。
【0068】
また、導電性粒子は、電磁波シールド層13に導電性および電磁波シールド性の双方を付与し得るものであれば、特に限定されず、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケルおよびアルミニウム、またはこれらを含む合金のような金属、および、AFe
2O
4(式中、Aは、Mn、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるフェライト、ITO、ATO、FTOのような金属酸化物等を含むものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、導電性粒子は、このような金属および/または金属酸化物を含むものの他、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレンのような導電性高分子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンブラックのような炭素系材料を含有するものであってもよい。
【0069】
導電性粒子の平均粒径は、1.0μm以上10.0μm以下であるのが好ましく、3.0μm以上8.0μm以下であるのがより好ましい。これにより、導電性粒子を電磁波シールド層13中に均一に分散させることができる。そのため、電磁波シールド層13は、その特性を均質に発揮することができる。
【0070】
また、電磁波シールド層13中における導電性粒子の含有量は、10重量%以上95重量%以下であることが好ましく、50重量%以上90重量%以下であることがより好ましい。導電性粒子の含有量をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド層13に導電性および電磁波シールド性の双方を確実に付与しつつ、軟化点における伸び率が150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定された封止用フィルム100を得ることができる。
【0071】
また、電磁波シールド層13の平均厚さは、1μm以上400μm以下であることが好ましく、5μm以上200μm以下であることがより好ましい。電磁波シールド層13の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100を強靱性に優れ、かつ、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定することができる。さらに、電磁波シールド層13に、導電性および電磁波シールド性の双方を確実に付与することができる。
【0072】
なお、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料としては、アイオノマー樹脂の他、絶縁層12に含まれるエチレン−酢酸ビニル共重合体や、それ以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0073】
また、封止用フィルム100では、絶縁層12と電磁波シールド層13との間には、接着性を付与したり、あるいは接着性を高めるために必要に応じて接着層を設けるようにすることもできる。また、絶縁層12と電子部品搭載基板45との間の接着性を高めるために、必要に応じて絶縁層12の内側に接着層を設けることもできる。
【0074】
接着層に含まれる接着性樹脂としては、例えば、EVA、エチレン−無水マレイン酸共重合体、EAA、EEA、エチレン−メタクリレート−グリシジルアクリレート三元共重合体、あるいは、各種ポリオレフィンに、アクリル酸、メタクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの二塩基性不飽和脂肪酸またはこれらの無水物をグラフトさせたもの、例えば、マレイン酸グラフト化EVA、マレイン酸グラフト化エチレン−α−オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、アクリル樹脂等、公知の粘着性樹脂や接着性樹脂を適宜、使用することができる。
【0075】
さらに、電磁波シールド層13と絶縁層12とが積層された封止用フィルム100を製造する製造方法については、特に限定されず、例えば、公知の共押出法、ドライラミネート法、押出ラミ法、塗工積層等を用いて、成膜および積層を行うことにより得ることができる。
【0076】
ここで、封止用フィルム100を、上記のような構成の電磁波シールド層13と絶縁層12とを備える多層体とすることにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を比較的容易に150%以上3500%以下に設定することができるが、この伸び率は、150%以上3500%以下であればよいが、150%以上2000%以下であることが好ましく、1000%以上2000%以下であることがより好ましい。これにより、封止用フィルム100を用いて、電子部品搭載基板45が備える凹凸6の被覆に適用した際に、凹凸6の形状に対して優れた追従性をもって封止した状態で被覆することができ、かつ、封止用フィルム100の途中で破断されるのを的確に抑制または防止することができる。
【0077】
また、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を前記範囲内とすることにより、基板5に設けられた凹凸6における段差が10mm以上のように大きい段差であったとしても、封止用フィルム100を凹凸6の形状に対応して追従させることができる。
【0078】
なお、破断伸び(軟化点における伸び率)の測定は、オートグラフ装置(例えば、島津製作所製、AUTOGRAPH AGS−X等)を用いて、JIS K 6251に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0079】
また、封止用フィルム100の軟化点は、動的粘弾性測定装置(例えば、セイコーインスツル社製、EXSTAR6000等)を用いて、チャック間距離20mm、昇温速度5℃/分および角周波数10Hzの条件で測定し得る。
【0080】
さらに、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましく、5ppm/K以上50ppm/K以下であることがより好ましい。封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率がこのような範囲の値であると、封止用フィルム100の加熱時において、封止用フィルム100は、優れた伸縮性を有するため、封止用フィルム100の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。さらに、封止用フィルム100と、基板5、電子部品4と、さらには電極3との間で、優れた密着性を維持することができるため、電子部品搭載基板45の駆動を繰り返すことで生じる発熱に起因する封止用フィルム100の電子部品搭載基板45からの剥離をより的確に抑制または防止することができる。なお、封止用フィルム100の線膨張率は、例えば、動的粘弾性測定装置(例えば、セイコーインスツル社製、EXSTAR6000等)を用いて算出し得る。
【0081】
封止用フィルム100の全体としての平均厚さは、10μm以上700μm以下であることが好ましく、20μm以上400μm以下であることがより好ましい。封止用フィルム100の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100の途中において、封止用フィルム100が破断するのを的確に抑制または防止し得るとともに、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定することができる。
【0082】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第1実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0083】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4と電極3とを覆うように封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する工程(配置工程)と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する工程(加熱・減圧工程)と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、基板5と電子部品4と電極3を封止用フィルム100で被覆する工程(冷却・加圧工程)とを有する。
【0084】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図2(a)に示すように、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13および絶縁層12のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4と電極3とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0085】
(加熱・減圧工程)
次に、
図2(b)に示すように、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0086】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち電磁波シールド層13および絶縁層12が軟化し、その結果、基板5上に電子部品4および電極3を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0087】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の上側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0088】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4および電極3の形状に若干追従した状態となる。
【0089】
本工程により、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0090】
なお、封止用フィルム100の加熱と、雰囲気の減圧とは、加熱の後に減圧してもよく、減圧の後に加熱してもよいが、加熱と減圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、軟化した封止用フィルム100を、凹凸6の形状に確実に若干追従した状態とすることができる。
【0091】
(冷却・加圧工程)
次に、
図2(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0092】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなり、その結果、凹凸6の形状(電子部品4および電極3の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。なお、前記加熱減圧工程において、凹凸6の形状に対応して封止用フィルム100が十分追従していれば、加圧工程を省略することができる。
【0093】
この際、本発明では、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。そのため、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを優れた密着性をもって被覆することができる。
【0094】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0095】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0096】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12と電磁波シールド層13との積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、絶縁層12よりも大きく形成され、その中央部において絶縁層12が積層されるが、端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部15を備えている。
【0097】
そのため、本工程において、電磁波シールド層13の中央部では、絶縁層12を介して、電子部品4が被覆される。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50では、電子部品4への電磁波によるノイズの影響を的確に抑制または防止することができる。
【0098】
さらに、電磁波シールド層13の端部では、絶縁層12が介在することなく、導電性を有する突出部15が電極3を直接被覆することで、電極3が突出部15(電磁波シールド層13)に電気的に接続される。そのため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部15を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0099】
なお、封止用フィルム100の冷却と、雰囲気の加圧とは、加圧の後に冷却してもよいが、冷却と加圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、凹凸6の形状に対応して、封止用フィルム100をより優れた密着性をもって被覆させることができる。
【0100】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
<第2実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第2実施形態について説明する。
【0101】
図3は、本発明の封止用フィルムの第2実施形態を示す縦断面図、
図4(a)〜(c)は、
図3に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図3、
図4(a)〜(c)中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0102】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0103】
第2実施形態では、封止用フィルム100が、
図3、
図4に示すように、電磁波シールド層13の絶縁層12と反対側に積層された被覆層14をさらに備えており、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。すなわち、本実施形態の封止用フィルム100では、絶縁層12と、電磁波シールド層13と、被覆層14とが、被覆すべき電子部品搭載基板45側から、この順で、積層されている。また、本実施形態の封止用フィルム100は、
図4に示すように、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が、それぞれ、略同じ大きさを有している。
【0104】
ここで、封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、本実施形態では、
図4に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。なお、基板5としては、例えば、プリント配線基板が挙げられ、基板5上に搭載する電子部品4としては、例えば、半導体素子、コンデンサー、コイル、コネクターおよび抵抗等が挙げられる。
【0105】
このように電子部品4が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。そのため、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50は、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとなる。
【0106】
また、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13により封止されていることから、電磁波シールド層13は、この電子部品4に対する絶縁性が確保されたものとなる。さらに、電磁波シールド層13は、電子部品4の反対側の面において、被覆層14により被覆されている。そのため、電磁波シールド層13は、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50の外側に位置する他の電子部品に対しても、絶縁性が確保されたものとなる。
【0107】
また、このような封止用フィルム100の被覆層14は、前述した絶縁層12および電磁波シールド層13と同様に、樹脂材料を含有している。また、前述した第1実施形態と同様に、封止用フィルム100のJIS K 6251に準拠して求められる軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であるが、150%以上2000%以下であることが好ましく、1000%以上2000%以下であることがより好ましい。
【0108】
封止用フィルム100の軟化点がかかる範囲内であることにより、封止用フィルム100を用いて、電子部品搭載基板45が備える凹凸6の被覆に適用した際に、凹凸6の形状に対して優れた追従性をもって封止した状態で被覆することができる。そのため、この封止用フィルム100を被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0109】
また、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を前記範囲内とすることにより、基板5に設けられた凹凸6における段差が具体的な大きさとして、10mm以上のように大きいものであったとしても、封止用フィルム100を凹凸6の形状に対応して追従させることができる。
【0110】
前記軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている封止用フィルム100が備える被覆層14は、前述した絶縁層12および電磁波シールド層13と同様に、樹脂材料を含有している。かかる樹脂材料としては、前述した絶縁層12および電磁波シールド層13と同様の樹脂材料を用いることができる。なお、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14に、それぞれ含まれる樹脂材料は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定し得るものであれば、同一であってもよいし、異なっても良い。
【0111】
また、封止用フィルム100の前記軟化点における伸び率を前記範囲内とするために、上述のような樹脂材料を含有する絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち、絶縁層12および被覆層14は、前記樹脂材料を主材料として含有する層で構成され、電磁波シールド層13は、前記樹脂材料と、前記導電性を備える導電性粒子とを含有する層で構成される。絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14をかかる構成とすることで、絶縁層12および被覆層14が、絶縁性を有し、電磁波シールド層13が、導電性および電磁波シールド性の双方を有する。
【0112】
上記のような構成をなす、何れも樹脂材料を含有する絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14を備える封止用フィルム100は、前述した樹脂材料のうちポリオレフィン系樹脂を前記樹脂材料として含有する層を、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうちの少なくとも1層として備えることが好ましい。これにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率をより確実に150%以上3500%以下に設定することができる。
【0113】
そこで、以下では、絶縁層12および被覆層14に含まれる樹脂材料がともにポリオレフィン系樹脂である封止用フィルム100を、一例として説明する。
【0114】
被覆層14は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定して、凹凸6への密着性および形状追従性に優れたものとすることを目的に、本実施形態では、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有する層である。
【0115】
また、被覆層14は、樹脂材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有することで、絶縁性を備える層であり、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆する際に、導電性を有する電磁波シールド層13の電子部品4と反対の面側を被覆することで、電子部品搭載基板45の外側に位置する他の電子部品に対する絶縁性を確保するための層として機能する。
【0116】
このエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、共重合されるVA含有量は、前述した絶縁層12で示した共重合されるVA含有量と同様の範囲内に設定される
【0117】
また、被覆層14の平均厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上120μm以下であることがより好ましい。被覆層14の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内により確実に設定することができる。また、封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50の外側に位置する電子部品に対する電磁波シールド層13の絶縁性をより確実に確保することができる。
【0118】
なお、被覆層14に含まれる樹脂材料としては、絶縁層12と同様に、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体の他、前述した電磁波シールド層13に含まれるアイオノマー樹脂であってもよいし、エチレン−酢酸ビニル共重合体以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0119】
また、封止用フィルム100では、絶縁層12と電磁波シールド層13との間、および、電磁波シールド層13と被覆層14との間には、接着性を付与したり、あるいは接着性を高めるために必要に応じて接着層を設けるようにすることもできる。また、絶縁層12と電子部品搭載基板45との間の接着性を高めるために、必要に応じて絶縁層12の内側、すなわち絶縁層12と基板5との間に、前述した第1実施形態と同様の接着層を設けることもできる。
【0120】
さらに、絶縁層12と電磁波シールド層13と被覆層14とが積層された封止用フィルム100を製造する製造方法については、特に限定されず、例えば、公知の共押出法、ドライラミネート法、押出ラミ法、塗工積層等を用いて、成膜および積層を行うことにより得ることができる。
【0121】
ここで、封止用フィルム100を、上記のような構成の絶縁層12と電磁波シールド層13と被覆層14とを備える多層体とすることにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を比較的容易に150%以上3500%以下に設定することができる。
【0122】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、封止用フィルム100の加熱時において、封止用フィルム100は、優れた伸縮性を有するものとなるため、封止用フィルム100の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。さらに、封止用フィルム100と、基板5さらには電子部品4との間で、優れた密着性を維持することができるため、電子部品搭載基板45の駆動を繰り返すことで生じる発熱に起因する封止用フィルム100の電子部品搭載基板45からの剥離をより的確に抑制または防止することができる。
【0123】
封止用フィルム100の全体としての平均厚さは、10μm以上700μm以下であることが好ましく、20μm以上400μm以下であることがより好ましい。封止用フィルム100の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100の途中において、封止用フィルム100が破断するのを的確に抑制または防止し得るとともに、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定することができる。
【0124】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第2実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0125】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0126】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図4(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する(
図4(b))。
【0127】
(加熱・減圧工程)
次に、
図4(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0128】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0129】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0130】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となる。
【0131】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0132】
なお、封止用フィルム100の加熱と、雰囲気の減圧とは、加熱の後に減圧してもよく、減圧の後に加熱してもよいが、加熱と減圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、軟化した封止用フィルム100を、凹凸6の形状に確実に若干追従した状態とすることができる。
【0133】
(冷却・加圧工程)
次に、
図4(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0134】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0135】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
【0136】
なお、前記加熱減圧工程において、凹凸6の形状に対応して封止用フィルム100が十分追従していれば、加圧工程を省略することができる。
【0137】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。そのため、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができる。そのため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを優れた密着性をもって被覆することができる。
【0138】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0139】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0140】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12と電磁波シールド層13と被覆層14との積層体で構成される。
【0141】
そのため、本工程において、絶縁層12を介して、電子部品4が電磁波シールド層13により被覆される。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとすることができる。
【0142】
さらに、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13により封止されることから、電磁波シールド層13は、この電子部品4に対する絶縁性を確保した状態で、電子部品4を被覆することができる。また、電磁波シールド層13は、電子部品4の反対側の面において、被覆層14により被覆されていることから、電磁波シールド層13は、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50の外側に位置する他の電子部品に対しても、絶縁性が確保された状態で電子部品搭載基板45を被覆することができる。
【0143】
なお、封止用フィルム100の冷却と、雰囲気の加圧とは、加圧の後に冷却してもよいが、冷却と加圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、凹凸6の形状に対応して、封止用フィルム100をより優れた密着性をもって被覆させることができる。
【0144】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0145】
<第3実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第3実施形態について説明する。
【0146】
図5は、本発明の封止用フィルムの第3実施形態を示す縦断面図、
図6(a)〜(c)は、
図5に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図5、
図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0147】
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1および第2実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0148】
第3実施形態では、封止用フィルム100が備える被覆層14の構成が異なり、それ以外は、前記第2実施形態と同様である。
【0149】
第3実施形態の封止用フィルム100において、被覆層14は、
図5、
図6に示すように、電磁波シールド層13よりも大きく形成され、その端部が電磁波シールド層13の端部(縁部)から露出している。換言すれば、被覆層14が、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部15(第1突出部)を備えている。
【0150】
このような封止用フィルム100を用いて、電子部品4が上面(一方の面)側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし被覆層14を上側にして被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0151】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、被覆層14が備える突出部15は、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51を、この突出部15により被覆することができる。したがって、本実施形態の封止用フィルム100により、基板5の上面側ばかりでなく、基板5の下面における端部51まで被覆層14により被覆することができ、より優れた気密性をもって、電子部品搭載基板45を被覆することができる。そのため、封止用フィルム100により被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0152】
また、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面側から下面側へ突出部15を折りこませることで、端部51を被覆する際に、突出部15が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0153】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への突出部15の折り込みを、突出部15を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0154】
また、封止用フィルム100における、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する被覆層14の突出部15の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部15の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部15を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51にまで到達させることができるため、突出部15による端部51の被覆を確実に実現させることができる。
【0155】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第3実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0156】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部15を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより基板5の下面における端部51に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部15が基板5の下面における端部51に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0157】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図6(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0158】
そして、この際、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する被覆層14の突出部15を、基板5の下面側に折り込み、これにより、突出部15を端部51に接触させる(
図6(b))。
【0159】
(加熱・減圧工程)
次に、
図6(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0160】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、端部51を、被覆し得る状態となる。
【0161】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0162】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下側では、端部51を若干被覆した状態となる。
【0163】
本工程により、封止用フィルム100を、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に追従し得る状態とし、さらに、突出部15が基板5の下面側に折り込まれて、端部51を被覆し得る状態とすることができる。
【0164】
(冷却・加圧工程)
次に、
図6(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0165】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0166】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4の形状)に対して優れた密着度(気密度)で追従し、さらに、端部51に対して優れた密着度で被覆した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
【0167】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができる。そのため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ突出部15を折りこませることで端部51に接触させる際に、突出部15が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0168】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0169】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆され、基板5の下側において、折り込まれた被覆層14の突出部15が端部51を被覆した状態で封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0170】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0171】
<第4実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第4実施形態について説明する。
【0172】
図7は、本発明の封止用フィルムの第4実施形態を示す縦断面図、
図8(a)〜(c)は、
図7に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図7、
図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0173】
以下、第4実施形態について説明するが、前記第1〜第3実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0174】
第4実施形態では、封止用フィルム100が備える絶縁層12および被覆層14の構成が異なり、それ以外は、前記第2実施形態と同様である。
【0175】
第4実施形態の封止用フィルム100において、絶縁層12および被覆層14は、
図7、
図8に示すように、それぞれ、電磁波シールド層13よりも大きく形成され、それらの端部が電磁波シールド層13の端部(縁部)から露出している。換言すれば、絶縁層12および被覆層14が、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部15(第1突出部)および突出部16(第3突出部)を備えている。そして、これら突出部15と突出部16とは、電磁波シールド層13の端部を越えた位置で積層することで設けられた積層突出部65を形成する。
【0176】
このような封止用フィルム100を用いて、電子部品4が上面(一方の面)側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0177】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、突出部15と突出部16とを積層することで形成された積層突出部65は、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51を、この積層突出部65が備える突出部15により被覆することができる。したがって、本実施形態の封止用フィルム100により、基板5の上面側ばかりでなく、基板5の下面における端部51まで積層突出部65により被覆することができ、より優れた気密性をもって、電子部品搭載基板45を被覆することができる。そのため、封止用フィルム100により被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0178】
また、積層突出部65は、これら突出部15と突出部16とが、電磁波シールド層13の端部を越えた位置で積層することで形成され、電磁波シールド層13の端部をも絶縁層12および被覆層14により被覆されることで、電子部品4および電子部品搭載基板45の外側に位置する電子部品に対する電磁波シールド層13の絶縁性をより確実に確保することができる。
【0179】
さらに、前記第1実施形態と同様に、前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面側から下面側へ積層突出部65を折りこませることで、端部51を被覆する際に、積層突出部65が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0180】
また、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への積層突出部65の折り込みを、積層突出部65を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0181】
さらに、封止用フィルム100における、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する積層突出部65の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。積層突出部65の長さをかかる範囲内に設定することにより、積層突出部65を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51にまで到達させることができるため、積層突出部65による端部51の被覆を確実に実現させることができる。
【0182】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第4実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0183】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、積層突出部65を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより基板5の下面における端部51に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、積層突出部65が基板5の下面における端部51に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0184】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図8(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0185】
そして、この際、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する積層突出部65を、基板5の下面側に折り込み、これにより、積層突出部65を端部51に接触させる(
図8(b))。
【0186】
(加熱・減圧工程)
次に、
図8(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0187】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、端部51を、被覆し得る状態となる。
【0188】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0189】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下側では、端部51を若干被覆した状態となる。
【0190】
本工程により、封止用フィルム100を、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に追従し得る状態とし、さらに、積層突出部65が基板5の下面側に折り込まれて、端部51を被覆し得る状態とすることができる。
【0191】
(冷却・加圧工程)
次に、
図8(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0192】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0193】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4の形状)に対して優れた密着度(気密度)で追従し、さらに、端部51に対して優れた密着度で被覆した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
【0194】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができる。そのため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ積層突出部65を折りこませることで端部51に接触させる際に、積層突出部65が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0195】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0196】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆され、基板5の下側において、折り込まれた積層突出部65が端部51を被覆した状態で封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0197】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0198】
<第5実施形態>
次に、本発明の封止用フィルム100の第5実施形態について説明する。
【0199】
図9は、本発明の封止用フィルムの第5実施形態を示す縦断面図、
図10(a)〜(c)は、
図9に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図9、
図10中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0200】
以下、第5実施形態について説明するが、前記第1〜第4実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0201】
第5実施形態では、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13および被覆層14の構成が異なり、さらに、この封止用フィルム100を用いて被覆する電子部品搭載基板45の構成が異なること以外は、前記第2実施形態と同様である。
【0202】
第5実施形態の封止用フィルム100において、電磁波シールド層13および被覆層14は、
図9、
図10に示すように、絶縁層12よりも大きく形成されている。これにより、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12側に位置する電磁波シールド層13の端部が絶縁層12の端部(縁部)から露出している。換言すれば、電磁波シールド層13が、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17(第2突出部)を備えている。
【0203】
また、第5実施形態の封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、
図10に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の上面(一方の面)側の端部52に形成された電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4および電極3の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。なお、電極3としては、例えば、外部から電気を供給するための電源と接続するための電極、電子部品搭載基板45の外側に位置する、他の電子部品と電気的に接続するための電極、および、電子部品4を接地するためのグランド電極等が挙げられる。
【0204】
このように電子部品4および電極3が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0205】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、電磁波シールド層13は、電磁波シールド層13が備える突出部17において、絶縁層12から露出している。そのため、基板5の上面の端部52に形成された電極3に、この突出部17を接触させた状態とすることができる。したがって、この突出部17は、電磁波シールド層13で構成され導電性を有することから、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50おいて、この電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することができる。なお、本実施形態では、電磁波シールド層13の上面のほぼ全面には被覆層14が形成されていることから、電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保する場合には、被覆層14の一部を除去して電磁波シールド層13が露出する露出部を形成し、この露出部において、電磁波シールド層13と外部とを電気的に接続することで、この接続が実現される。
【0206】
また、封止用フィルム100における、絶縁層12の端部を越えて突出する電磁波シールド層13の突出部17の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部17の長さをかかる範囲内に設定することで、この突出部17により、基板5の上側に位置する電極3を被覆して、突出部17と電極3との電気的な接続を実現することができる。
【0207】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第5実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0208】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部17を、基板5の上面(一方の面)側の電極3に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部17が電極3に接触した状態で、基板5と電子部品4と電極3とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0209】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図10(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4と電極3とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0210】
この際、封止用フィルム100の中央部に位置する絶縁層12により電子部品4を被覆させ、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17により電極3を被覆させる(
図10(b))。
【0211】
(加熱・減圧工程)
次に、
図10(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0212】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4および電極3を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0213】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0214】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4および電極3の形状に若干追従した状態となる。
【0215】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0216】
(冷却・加圧工程)
次に、
図10(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0217】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0218】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4および電極3の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。
【0219】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4と電極3とを優れた密着性をもって被覆することができる。
【0220】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とを優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0221】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆され、さらに、電磁波シールド層13が接触した状態で電極3が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0222】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14の積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、その端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17を備えている。そして、本実施形態では、この突出部17が、絶縁層12を介することなく、電極3を直接被覆する。これにより、導電性を有する突出部17(電磁波シールド層13)に電極3が電気的に接続されるため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部17を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0223】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0224】
<第6実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第6実施形態について説明する。
【0225】
図11は、本発明の封止用フィルムの第6実施形態を示す縦断面図、
図12(a)〜(c)は、
図11に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図11、
図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0226】
以下、第6実施形態について説明するが、前記第1〜第5実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0227】
第6実施形態では、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13および被覆層14の構成が異なり、さらに、この封止用フィルム100を用いて被覆する電子部品搭載基板45の構成が異なること以外は、前記第2実施形態と同様である。
【0228】
第6実施形態の封止用フィルム100において、
図11、
図12に示すように、電磁波シールド層13は、絶縁層12よりも大きく形成され、その端部が絶縁層12の端部(縁部)から露出している。換言すれば、電磁波シールド層13が、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17(第2突出部)を備えている。さらに、被覆層14は、電磁波シールド層13よりも大きく形成され、その端部が電磁波シールド層13の端部(縁部)から露出している。換言すれば、被覆層14が、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部15(第1突出部)を備えている。
【0229】
また、第6実施形態の封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、
図12に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の上面(一方の面)側の端部に形成された電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4および電極3の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。
【0230】
このように電子部品4および電極3が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0231】
また、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、電磁波シールド層13は、電磁波シールド層13が備える突出部17において、絶縁層12から露出している。そのため、基板5の上面の端部52に形成された電極3に、この突出部17を接触させた状態とすることができる。したがって、この突出部17は、電磁波シールド層13で構成され導電性を有することから、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50おいて、この電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することができる。なお、本実施形態では、電磁波シールド層13の上面のほぼ全面には被覆層14が形成されていることから、電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保する場合には、被覆層14の一部を除去して電磁波シールド層13が露出する露出部を形成し、この露出部において、電磁波シールド層13と外部とを電気的に接続することで、この接続が実現される。
【0232】
さらに、本実施形態では、被覆層14が備える突出部15は、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51を、この突出部15により被覆することができる。したがって、本実施形態の封止用フィルム100により、基板5の上面側ばかりでなく、基板5の下面における端部51まで被覆層14により被覆することができ、より優れた気密性をもって、電子部品搭載基板45を被覆することができる。そのため、封止用フィルム100により被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0233】
また、前記第1実施形態と同様に、前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面側から下面側へ突出部15を折りこませることで、端部51を被覆する際に、突出部15が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0234】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への突出部15の折り込みを、突出部15を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0235】
また、封止用フィルム100における、絶縁層12の端部を越えて突出する電磁波シールド層13の突出部17の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部17の長さをかかる範囲内に設定することで、この突出部17により、基板5の上側に位置する電極3を被覆して、突出部17と電極3との電気的な接続を実現することができる。
【0236】
また、封止用フィルム100における、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する被覆層14の突出部15の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部15の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部15を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51にまで到達させることができるため、突出部15による端部51の被覆を確実に実現させることができる。
【0237】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第6実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0238】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部17を、基板5の上面(一方の面)側の電極3に接触させるとともに、突出部15を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより基板5の下面における端部51に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部17が電極3に接触し、かつ、突出部15が基板5の下面における端部51に接触した状態で、基板5と電子部品4と電極3とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0239】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図12(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4と電極3とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0240】
この際、封止用フィルム100の中央部に位置する絶縁層12により電子部品4を被覆させ、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17により電極3を被覆させる。さらに、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する被覆層14の突出部15を、基板5の下面側に折り込み、これにより、突出部15を端部51に接触させる(
図12(b))。
【0241】
(加熱・減圧工程)
次に、
図12(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0242】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4および電極3を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。さらに、基板5の下面側では、端部51を、被覆し得る状態となる。
【0243】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0244】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4および電極3の形状に若干追従した状態となり、基板5の下側では、端部51を若干被覆した状態となる。
【0245】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とし、さらに、突出部15が基板5の下面側に折り込まれて、端部51を被覆し得る状態とすることができる。
【0246】
(冷却・加圧工程)
次に、
図12(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0247】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0248】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4および電極3の形状)に優れた密着度(気密度)で追従し、さらに、端部51に対して優れた密着度で被覆した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。
【0249】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができる。そのため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4と電極3とを、さらには基板5の下側における端部51を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ突出部15を折りこませることで端部51に接触させる際に、突出部15が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0250】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とを優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0251】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆され、また、電磁波シールド層13が接触した状態で電極3が被覆され、さらに、基板5の下側において、折り込まれた被覆層14の突出部15が端部51を被覆した状態で封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0252】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14の積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、その端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17を備えている。そして、本実施形態では、この突出部17が、絶縁層12を介することなく、電極3を直接被覆する。これにより、導電性を有する突出部17(電磁波シールド層13)に電極3が電気的に接続されるため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部17を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0253】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0254】
<第7実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第7実施形態について説明する。
【0255】
図13は、本発明の封止用フィルムの第7実施形態を示す縦断面図、
図14(a)〜(c)は、
図13に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図13、
図14中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0256】
以下、第7実施形態について説明するが、前記第1〜第6実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0257】
第7実施形態では、封止用フィルム100が備える絶縁層12および電磁波シールド層13の構成が異なり、さらに、この封止用フィルム100を用いて被覆する電子部品搭載基板45の構成が異なること以外は、前記第2実施形態と同様である。
【0258】
第7実施形態の封止用フィルム100において、絶縁層12および電磁波シールド層13は、
図13、
図14に示すように、被覆層14よりも大きく形成されている。これにより、絶縁層12および電磁波シールド層13のうち被覆層14側に位置する電磁波シールド層13の端部が被覆層14の端部(縁部)から露出している。換言すれば、電磁波シールド層13が、被覆層14の端部を越えて突出することで形成された突出部18(第4突出部)を備えている。
【0259】
また、第7実施形態の封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、
図14に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の上面(一方の面)側の端部52に形成された電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4および電極3の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。
【0260】
このように電子部品4および電極3が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0261】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、電磁波シールド層13は、電磁波シールド層13が備える突出部18において、被覆層14から露出し、さらに、この突出部18は、突出部18と電極3とが対向し得るように、基板5の上面(一方の面)側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の上面の端部52に形成された電極3に、この突出部18を接触させた状態とすることができる。したがって、この突出部18は、電磁波シールド層13で構成され導電性を有することから、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50おいて、この電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することができる。なお、本実施形態では、電磁波シールド層13の上面の突出部18を除くほぼ全面には被覆層14が形成されていることから、電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保する場合には、被覆層14の一部を除去して電磁波シールド層13が露出する露出部を形成し、この露出部において、電磁波シールド層13と外部とを電気的に接続することで、この接続が実現される。
【0262】
また、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面の電極3と突出部18とを対向させるために突出部18を折りこませる際に、突出部18が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0263】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面の電極3と突出部18とを対向させるための突出部18の折り込みを、突出部18を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0264】
また、封止用フィルム100における、被覆層14の端部を越えて突出する電磁波シールド層13の突出部18の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部18の長さをかかる範囲内に設定することで、この突出部18により、基板5の上側に位置する電極3を被覆して、突出部18と電極3との電気的な接続を実現することができる。
【0265】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第7実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0266】
本発明の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部18を折り込むことにより、基板5の上面(一方の面)の電極3に対向させた後に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部18が電極3に接触した状態で、基板5と電子部品4と電極3とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0267】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図14(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4と電極3とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0268】
この際、封止用フィルム100の絶縁層12により電子部品4を被覆させ、被覆層14の端部を越えて突出する突出部18を折り込むことで、この突出部18により電極3を被覆させる(
図14(b))。
【0269】
(加熱・減圧工程)
次に、
図14(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0270】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4および電極3を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0271】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0272】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、電極3と突出部18とが接触したまま、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4および電極3の形状に若干追従した状態となる。
【0273】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0274】
(冷却・加圧工程)
次に、
図14(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0275】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0276】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4および電極3の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。
【0277】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができる。そのため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4と電極3とを優れた密着性をもって被覆することができる。また、突出部18を折りこませることで電極3に対向させた後、接触させる際に、突出部18が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0278】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とを優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0279】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆され、さらに、電磁波シールド層13が接触した状態で電極3が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0280】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14の積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、その端部において、被覆層14の端部を越えて突出することで形成された突出部18を備えている。そして、本実施形態では、この突出部18が、被覆層14を介することなく、電極3を直接被覆する。これにより、導電性を有する突出部18(電磁波シールド層13)に電極3が電気的に接続されるため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部18を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0281】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0282】
<第8実施形態>
次に、本発明の封止用フィルム100の第8実施形態について説明する。
【0283】
図15は、本発明の封止用フィルムの第8実施形態を示す縦断面図、
図16(a)〜(c)は、
図15に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図15、
図16中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0284】
以下、第8実施形態について説明するが、前記第1〜第7実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0285】
第8実施形態では、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13および被覆層14の構成が異なり、さらに、この封止用フィルム100を用いて被覆する電子部品搭載基板45の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0286】
第8実施形態の封止用フィルム100において、電磁波シールド層13および被覆層14は、
図15、
図16に示すように、絶縁層12よりも大きく形成されている。これにより、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12側に位置する電磁波シールド層13の端部が絶縁層12の端部(縁部)から露出している。換言すれば、電磁波シールド層13、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17(第2突出部)を備えている。
【0287】
また、第8実施形態の封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、
図16に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の下面(他方の面)側の端部51に形成された電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。
【0288】
このように電子部品4および電極3が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0289】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、電磁波シールド層13が備える突出部17は、基板5の下面側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51に形成された電極3に、この突出部17を接触させた状態とすることができる。したがって、この突出部17は、電磁波シールド層13で構成され導電性を有することから、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することができる。なお、本実施形態では、電磁波シールド層13の上面のほぼ全面には被覆層14が形成されていることから、電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保する場合には、被覆層14の一部を除去して電磁波シールド層13が露出する露出部を形成し、この露出部において、電磁波シールド層13と外部とを電気的に接続することで、この接続が実現される。
【0290】
また、前記第1実施形態と同様に、前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面側から下面側へ突出部17を折りこませることで、端部51に設けられた電極3を被覆する際に、突出部17が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0291】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への突出部17の折り込みを、突出部17を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0292】
また、封止用フィルム100における、絶縁層12の端部を越えて突出する電磁波シールド層13の突出部17の長さは、特に限定されず、0.5cm以上8.0cm以下であることが好ましく、1.0cm以上5.0cm以下であることがより好ましい。突出部17の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部17を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51に形成された電極3にまで到達させることができるため、突出部17による電極3の電気的な接続を確実に実現させることができる。
【0293】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、本実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0294】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部17を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより電極3に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部17が電極3に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0295】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図16(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0296】
そして、この際、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17を、基板5の下面側に折り込み、これにより、突出部17を電極3に接触させる(
図16(b))。
【0297】
(加熱・減圧工程)
次に、
図16(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0298】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、基板5の下面の端部51に設けられた電極3の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0299】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0300】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下側では、電極3の形状に若干追従した状態となる。
【0301】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状、および、下面側に形成された電極3の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0302】
(冷却・加圧工程)
次に、
図16(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0303】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0304】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4の形状)、さらに、基板5の下側では電極3の形状に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。
【0305】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6および電極3に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを、さらには基板5の下側においては電極3を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ突出部17を折りこませることで電極3に接触させる際に、突出部17が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0306】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには電極3を優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0307】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆され、基板5の下側において電磁波シールド層13が接触した状態で基板5が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0308】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14の積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、絶縁層12よりも大きく形成され、その中央部において絶縁層12が積層されるが、端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17を備えている。そして、この突出部17が、基板5の下側に折り込まれることで電極3を直接被覆する。これにより、電極3が突出部17(電磁波シールド層13)に電気的に接続されるため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部17を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0309】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0310】
<第9実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第9実施形態について説明する。
【0311】
図17は、本発明の封止用フィルムの第9実施形態を示す縦断面図、
図18(a)〜(c)は、
図17に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図17、
図18中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0312】
以下、第9実施形態について説明するが、前記第1〜第8実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0313】
第9実施形態では、
図17、
図18に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12が、電磁波シールド層13よりも大きく形成されている以外は、前記第1実施形態と同様である。
封止用フィルム100は、
図17、
図18に示すように、絶縁層12と、この絶縁層12の一方の面側(上面側)に積層された電磁波シールド層13とを備える積層体で構成されている。そして、絶縁層12は、電磁波シールド層13よりも大きく形成され、その端部が電磁波シールド層13の端部(縁部)から露出している。換言すれば、絶縁層が、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部16を備えている。
【0314】
ここで、封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、本実施形態では、
図18に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。なお、基板5としては、例えば、プリント配線基板が挙げられ、基板5上に搭載する電子部品4としては、例えば、半導体素子、コンデンサー、コイル、コネクターおよび抵抗等が挙げられる。
【0315】
このように電子部品4が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、電磁波シールド層13を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。そのため、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50は、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとなる。
【0316】
また、電子部品4は、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する突出部16を備える絶縁層12を介して電磁波シールド層13により封止され、電子部品4と電磁波シールド層13との間で短絡が生じるのを的確に防止し得ることから、電磁波シールド層13は、この電子部品4に対する絶縁性が確保される。
【0317】
さらに、この封止用フィルム100は、JIS K 6251に準拠して求められる軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。
【0318】
封止用フィルム100の軟化点がかかる範囲内であることにより、封止用フィルム100による電子部品搭載基板45の被覆の際に、電子部品搭載基板45が備える、凸部61と凹部62とからなる凹凸6に対して、優れた追従性をもって封止した状態で、被覆することができる。そのため、この封止用フィルム100を被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0319】
また、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を前記範囲内とすることにより、基板5に設けられた凹凸6における段差が具体的な大きさとして、10mm以上のように大きいものであったとしても、封止用フィルム100を凹凸6の形状に対応して追従させることができる。
【0320】
ここで、本実施形態の封止用フィルム100を、上記のような構成の電磁波シールド層13と絶縁層12とを備える多層体とすることにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を比較的容易に150%以上3500%以下に設定することができる。かかる伸び率は、150%以上3500%以下であればよいが、1000%以上3500%以下であることが好ましく、1000%以上2000%以下であることがより好ましい。これにより、封止用フィルム100を用いて、電子部品搭載基板45が備える凹凸6の被覆に適用した際に、凹凸6の形状に対して優れた追従性をもって封止した状態で被覆することができ、かつ、封止用フィルム100の途中で破断されるのを的確に抑制または防止することができる。
【0321】
さらに、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましく、5ppm/K以上50ppm/K以下であることがより好ましい。封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率がこのような範囲の値であると、封止用フィルム100の加熱時において、封止用フィルム100は、優れた伸縮性を有するものとなるため、封止用フィルム100の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。さらに、封止用フィルム100と、基板5、電子部品4との間で、優れた密着性を維持することができるため、電子部品搭載基板45の駆動を繰り返すことで生じる発熱に起因する封止用フィルム100の電子部品搭載基板45からの剥離をより的確に抑制または防止することができる。
【0322】
また、封止用フィルム100における、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する絶縁層12の突出部16の長さは、特に限定されず、0.5cm以上2.5cm以下であることが好ましく、0.2cm以上1.5cm以下であることがより好ましい。突出部16の長さをかかる範囲内に設定することにより、電子部品4と電磁波シールド層13とが不本意に接触して、これら同士の間で短絡が生じるのをより的確に防止することができる。
【0323】
封止用フィルム100の全体としての平均厚さは、10μm以上700μm以下であることが好ましく、20μm以上400μm以下であることがより好ましい。封止用フィルム100の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100の途中において、封止用フィルム100が破断するのを的確に抑制または防止し得るとともに、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定することができる。
【0324】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した本発明の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法(本発明の電子部品搭載基板の封止方法)について説明する。
【0325】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、絶縁層12を介して電磁波シールド層13により電子部品4を被覆した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0326】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図18(a)に示すように、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13および絶縁層12のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0327】
(加熱・減圧工程)
次に、
図18(b)に示すように、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0328】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち電磁波シールド層13および絶縁層12が軟化し、その結果、基板5上に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0329】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の上側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0330】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となる。
【0331】
本工程により、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0332】
なお、封止用フィルム100の加熱と、雰囲気の減圧とは、加熱の後に減圧してもよく、減圧の後に加熱してもよいが、加熱と減圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、軟化した封止用フィルム100を、凹凸6の形状に確実に若干追従した状態とすることができる。
【0333】
(冷却・加圧工程)
次に、
図18(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0334】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなり、その結果、凹凸6の形状(電子部品4の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。なお、前記加熱減圧工程において、凹凸6の形状に対応して封止用フィルム100が十分追従していれば、加圧工程を省略することができる。
【0335】
この際、本発明では、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。そのため、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを優れた密着性をもって被覆することができる。
【0336】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0337】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0338】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12と電磁波シールド層13との積層体で構成されるが、絶縁層12は、電磁波シールド層13よりも大きく形成され、その中央部において電磁波シールド層13が積層されるが、端部において、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部16を備えている。
【0339】
そのため、本工程において、電磁波シールド層13は、絶縁層12の中央部を介して電子部品4を被覆し、絶縁層12の端部である突出部16には存在しない状態で被覆する。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を、電子部品4に対する絶縁性が確実に確保された状態で、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとすることができる。
【0340】
なお、封止用フィルム100の冷却と、雰囲気の加圧とは、加圧の後に冷却してもよいが、冷却と加圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、凹凸6の形状に対応して、封止用フィルム100をより優れた密着性をもって被覆させることができる。
【0341】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0342】
<第10実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第10実施形態について説明する。
【0343】
図19は、本発明の封止用フィルムの第10実施形態を示す縦断面図、
図20(a)〜(c)は、
図19に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図19、
図20中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0344】
以下、第10実施形態について説明するが、前記第1〜第9実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0345】
第10実施形態では、封止用フィルム100が備える絶縁層12の構成が異なり、それ以外は、前記第9実施形態と同様である。
【0346】
第10実施形態の封止用フィルム100において、電磁波シールド層13よりも大きく形成される絶縁層12は、
図19、
図20に示すように、前記第9実施形態の絶縁層12と比較して、より大きく(面方向に沿って長く)形成されている。これにより、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部16(第1突出部)は、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことが可能となる。そのため、基板5の下面の端部51を、この突出部16により被覆することができる。したがって、本実施形態の封止用フィルム100により、基板5の上面側ばかりでなく、基板5の下面における端部51まで絶縁層12により被覆することができ、より優れた気密性をもって、電子部品搭載基板45を被覆することができる。そのため、封止用フィルム100により被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0347】
また、封止用フィルム100の前記軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっていることにより、基板5の上面側から下面側へ突出部16を折り込ませることで、端部51を被覆する際に、突出部16が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0348】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への突出部16の折り込みを、突出部16を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0349】
また、封止用フィルム100における、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する絶縁層12の突出部16の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部16の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部16を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51にまで到達させることができるため、突出部16による端部51の被覆を確実に実現させることができる。
【0350】
{電子部品搭載基板の封止方法}
次に、上述した第10実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0351】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部16を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより基板5の下面における端部51に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、絶縁層12を介して電磁波シールド層13により電子部品4を被覆し、かつ、突出部16が基板5の下面における端部51に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0352】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図20(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12および電磁波シールド層13のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0353】
そして、この際、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する絶縁層12の突出部16を、基板5の下面側に折り込み、これにより、突出部16を端部51に接触させる(
図20(b))。
【0354】
(加熱・減圧工程)
次に、
図20(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0355】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12および電磁波シールド層13が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、端部51を、被覆し得る状態となる。
【0356】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0357】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下側では、端部51を若干被覆した状態となる。
【0358】
本工程により、封止用フィルム100を、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に追従し得る状態とし、さらに、突出部16が基板5の下面側に折り込まれて、端部51を被覆し得る状態とすることができる。
【0359】
(冷却・加圧工程)
次に、
図20(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0360】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0361】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4の形状)に対して優れた密着度(気密度)で追従し、さらに、端部51に対して優れた密着度で被覆した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
【0362】
この際、本実施形態では、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ突出部16を折り込ませることで端部51に接触させる際に、突出部16が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0363】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0364】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆され、基板5の下側において、折り込まれた絶縁層12の突出部16が端部51を被覆した状態で封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0365】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0366】
<第11実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第11実施形態について説明する。
【0367】
図21は、本発明の封止用フィルムの第11実施形態を示す縦断面図、
図22(a)〜(c)は、
図21に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図21、
図22中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0368】
以下、第11実施形態について説明するが、前記第1〜第10実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0369】
第11実施形態では、封止用フィルム100が、電磁波シールド層13の絶縁層12との反対側(上面側)に積層された被覆層14を備えており、それ以外は、前記第10実施形態と同様である。
【0370】
第11実施形態の封止用フィルム100において、被覆層14は、
図21、
図22に示すように、絶縁層12と同様に、電磁波シールド層13よりも大きく形成され、その端部が電磁波シールド層13の端部(縁部)から露出している。換言すれば、被覆層14が、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部15(第2突出部)を備えている。そして、これら突出部15と突出部16とは、電磁波シールド層13の端部を越えた位置で積層することで設けられた積層突出部65を形成する。
【0371】
このような封止用フィルム100を用いて、電子部品4が上面(一方の面)側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。この封止の際に、本実施形態では、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する突出部15および突出部16が積層された積層突出部65により、電磁波シールド層13が被覆されているため、電子部品4と電磁波シールド層13との間で短絡が生じるのをより的確に防止し得ることから、電磁波シールド層13は、この電子部品4に対する絶縁性がより確実に確保されたものとなる。また、電磁波シールド層13の上面を被覆する被覆層14を備えるため、電子部品搭載基板45の外側に位置する他の電子部品に対する絶縁性を確保することができる。
【0372】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、突出部15と突出部16とが積層することで形成された積層突出部65は、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51を、この積層突出部65が備える突出部16により被覆することができる。したがって、本実施形態の封止用フィルム100により、基板5の上面側ばかりでなく、基板5の下面における端部51まで積層突出部65により被覆することができ、より優れた気密性をもって、電子部品搭載基板45を被覆することができる。そのため、封止用フィルム100により被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0373】
なお、この被覆層14は、樹脂材料を主材料として構成され、前述した第2実施形態の被覆層12と同様の材料を用いることができる。
【0374】
さらに、本実施形態では、前記軟化点における伸び率が、150%以上3500%以下となっている。これにより、基板5の上面側から下面側へ積層突出部65を折り込ませることで、端部51を被覆する際に、積層突出部65が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0375】
また、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への積層突出部65の折り込みを、積層突出部65を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0376】
さらに、封止用フィルム100における、積層突出部65の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。積層突出部65の長さをかかる範囲内に設定することにより、積層突出部65を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51にまで到達させることができるため、突出部16による端部51の被覆を確実に実現させることができる。
【0377】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第11実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0378】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、積層突出部65を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより基板5の下面における端部51に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、絶縁層12を介して電磁波シールド層13により電子部品4を被覆し、かつ、積層突出部65が基板5の下面における端部51に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0379】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図22(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12および電磁波シールド層13のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0380】
そして、この際、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する積層突出部65を、基板5の下面側に折り込み、これにより、積層突出部65を端部51に接触させる(
図22(b))。
【0381】
(加熱・減圧工程)
次に、
図22(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0382】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、端部51を、被覆し得る状態となる。
【0383】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0384】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下側では、端部51を若干被覆した状態となる。
【0385】
本工程により、封止用フィルム100を、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に追従し得る状態とし、さらに、積層突出部65が基板5の下面側に折り込まれて、端部51を被覆し得る状態とすることができる。
【0386】
(冷却・加圧工程)
次に、
図22(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0387】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0388】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4の形状)に対して優れた密着度(気密度)で追従し、さらに、端部51に対して優れた密着度で被覆した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
【0389】
この際、本実施形態では、電磁波シールド層13の上面を被覆する被覆層14を備えるため、電子部品搭載基板45の外側に位置する他の電子部品に対する絶縁性を確保することができる。また、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する突出部15および突出部16が積層された積層突出部65により、電磁波シールド層13が被覆されているため、電子部品4と電磁波シールド層13との間で短絡が生じるのをより的確に防止し得ることから、電磁波シールド層13は、この電子部品4に対する絶縁性がより確実に確保されたものとなる。
【0390】
また、本発明では、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ積層突出部65を折り込ませることで端部51に接触させる際に、積層突出部65が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0391】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0392】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆され、基板5の下側において、折り込まれた積層突出部65が端部51を被覆した状態で封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0393】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0394】
<第1参考形態>
[封止用フィルム]
次に、封止用フィルム100の第1参考形態について説明する。
【0395】
図23は、封止用フィルムの第1参考形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図24(a)〜(c)は、
図23に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図23、
図24中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0396】
以下、第1参考形態について説明するが、本発明の前記第1〜第11実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0397】
本実施形態の封止用フィルム100は、
図23、
図24に示すように、最内層12と、この最内層12の一方の面側(上面側)に積層された中間層19と、中間層19の一方の面側に積層された最外層14とを備える積層体で構成されている。すなわち、最内層12と、中間層19と、最外層14とは、被覆すべき電子部品搭載基板45側から、この順で、積層されている。
【0398】
ここで、封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、本実施形態では、
図24に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、電子部品4に電気的に接続され、基板5の上面(一方の面)側の端部に搭載された、開放端面を有する接続部材7とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。なお、基板5としては、例えば、プリント配線基板が挙げられ、基板5上に搭載する電子部品4としては、例えば、半導体素子、コンデンサー、コイルおよび抵抗等が挙げられる。また、接続部材7としては、電子部品4と他の電子部品とのデータの受け渡しや、電子部品4への電源からの電気の供給等に用いられる接続端子を開放端面として備えるコネクター等が挙げられる。
【0399】
このように電子部品4および接続部材7が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、最内層12を下側とし、最外層14を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆することにより、電子部品4は、この封止用フィルム100、すなわち、最内層12を電子部品4側とした最内層12と中間層19と最外層14とがこの順で積層された積層体により封止される。これにより、この封止用フィルム100を被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのを的確に抑制または防止することができる。一方、本参考形態の封止用フィルム100は、電子部品搭載基板45を封止する際に、接続部材7に対応する位置に逃げ部27を有しているため、接続部材7が封止用フィルム100により封止されることなく、露出させることができる。したがって、封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現しつつ、電子部品4の封止用フィルム100による封止を行うことができる。
【0400】
なお、
図24に示すように、電子部品搭載基板45において、接続部材7は、基板5の上面における端部に形成され、これに対応して、逃げ部27は、平面視において、封止用フィルム100の端部がU字状に切り取りまたは欠損した切り欠きまたは欠損部で構成される。例えば、電子部品搭載基板45において、接続部材7が基板5の上面における中央部に形成される場合には、これに対応して、逃げ部27は、平面視において、封止用フィルム100の中央部が四角形状に開口した開口部(孔部)で構成される。
【0401】
また、このような封止用フィルム100は、最内層12、中間層19および最外層14が、何れも、樹脂材料を含有し、JIS K 6251に準拠して求められる軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であるのが好ましく、1000%以上3500%以下であるのがより好ましく、1000%以上2000%以下であるのがさらに好ましい。
【0402】
封止用フィルム100の軟化点における伸び率がかかる範囲内であることにより、封止用フィルム100による電子部品搭載基板45の被覆の際に、電子部品搭載基板45が備える、凸部61と凹部62とからなる凹凸6に対して、優れた追従性をもって封止した状態で、電子部品4を被覆することができる。そのため、この封止用フィルム100を被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0403】
また、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を前記範囲内とすることにより、基板5に設けられた凹凸6における段差が具体的な大きさとして、10mm以上のように大きいものであったとしても、封止用フィルム100を凹凸6の形状に対応して追従させることができる。
【0404】
このように、凹凸6に対する追従性等の観点から、前記軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であるのが好ましいため、以下では、かかる伸び率を満足し得る封止用フィルム100が備える最内層12、中間層19および最外層14の層構成について説明する。
【0405】
前記軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている封止用フィルム100が備える最内層12、中間層19および最外層14は、それぞれが樹脂材料を含有し、この樹脂材料の種類を適宜選択することで、前記軟化点における伸び率を前記範囲内に設定することができる。かかる樹脂材料としては、前述した絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14と同様の樹脂材料を用いることができる。
【0406】
また、最内層12、中間層19および最外層14に含まれる樹脂材料は、上述した熱可塑性樹脂材料の他に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂のような熱硬化性樹脂やアクリル樹脂やウレタン樹脂のようなUV硬化性樹脂が含まれていてもよい。
【0407】
また、封止用フィルム100の前記軟化点における伸び率を前記範囲内とするために、上述のような樹脂材料を含有する最内層12、中間層19および最外層14の各層は、前記樹脂材料(熱可塑性樹脂材料)を主材料として含有する層で構成され、これにより、絶縁性を有する絶縁層として機能する。
【0408】
上記のような構成をなす、何れも樹脂材料を含有する最内層12、中間層19および最外層14を備える封止用フィルム100は、前述した樹脂材料のうちポリオレフィン系樹脂を前記樹脂材料として含有する層を、最内層12、中間層19および最外層14のうちの少なくとも1層として備えることが好ましい。これにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率をより確実に150%以上3500%以下に設定することができる。
【0409】
そこで、以下では、前記樹脂材料を主材料として含有する最内層12と、中間層19と、最外層14とを備え、最内層12および最外層14に含まれる樹脂材料がともにポリオレフィン系樹脂である封止用フィルム100を、一例として説明する。
【0410】
最内層12は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定して、凹凸6への密着性および形状追従性に優れたものとすることを目的に、本実施形態では、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有する層である。なお、最内層12は、前述した各実施形態の絶縁層12と同様の構成を有している。
【0411】
また、この最内層12は、樹脂材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有することで、絶縁性を備える層であり、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆する際に、電子部品4同士との間で短絡が生じるのを防止するための層として機能する。
【0412】
このエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、共重合されるVA含有量が5重量%以上30重量%以下であることが好ましく、10重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。前記下限値未満であると、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を前記範囲内に設定することが困難となるおそれがある。これに対して、前記上限値を超えると、最内層12を構成する樹脂の結晶部が減少し、非結晶部が増加する傾向を示すことに起因して、最内層12に残存する酸化防止剤等の添加剤が溶出するおそれがある。そのため、電子部品搭載基板45側に移行し、その結果、電子部品4の特性に不都合が生じるおそれがある。
【0413】
また、最内層12の平均厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上120μm以下であることがより好ましい。最内層12の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内により確実に設定することができる。また、中間層19の電子部品4に対する絶縁性をより確実に確保することができる。
【0414】
なお、最内層12に含まれる樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体の他、後述する中間層19に含まれるアイオノマー樹脂であってもよいし、エチレン−酢酸ビニル共重合体以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0415】
中間層19は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定して、凹凸6への密着性および形状追従性に優れたものとすること、さらには、封止用フィルム100を強靱性に優れたものとすることを目的に、本実施形態では、樹脂材料としてアイオノマー樹脂を含有する。
【0416】
このような中間層19により、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆する際に、最内層12を介して、基板5の上側に配置された電子部品4が被覆される。
【0417】
ここで、本明細書中において、樹脂材料としてのアイオノマー樹脂とは、エチレンおよび(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体や、エチレン、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルを重合体の構成成分とする3元共重合体を、金属イオンで架橋した樹脂のことを言い、これらのうちの1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0418】
また、金属イオンとしては、例えば、カリウムイオン(K
+)、ナトリウムイオン(Na
+)、リチウムイオン(Li
+)、マグネシウムイオン(Mg
++)、亜鉛イオン(Zn
++)等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウムイオン(Na
+)または亜鉛イオン(Zn
++)であることが好ましい。これにより、アイオノマー樹脂における架橋構造が安定化されるため、前述した中間層19としての機能をより顕著に発揮させることができる。
【0419】
さらに、エチレンおよび(メタ)アクリル酸を重合体の構成成分とする2元共重合体、もしくは、エチレン、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルを重合体の構成成分とする3元共重合体のカルボキシル基における陽イオン(金属イオン)による中和度は、好ましくは40mol%以上75mol%以下である。
【0420】
また、中間層19の平均厚さは、1μm以上400μm以下であることが好ましく、5μm以上200μm以下であることがより好ましい。中間層19の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100を強靱性に優れ、かつ、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定されているものとし得る。
【0421】
なお、中間層19に含まれる樹脂材料としては、アイオノマー樹脂の他、最内層12および最外層14に含まれるエチレン−酢酸ビニル共重合体や、それ以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0422】
最外層14は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定して、凹凸6への密着性および形状追従性に優れたものとすることを目的に、本実施形態では、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有する層である。なお、最外層14は、前述した各実施形態の被覆層14と同様の構成を有している。
【0423】
また、最外層14は、樹脂材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有することで、絶縁性を備える層であり、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆する際に、電子部品搭載基板45の外側に位置する他の電子部品に対する絶縁性を確保するための層として機能する。
【0424】
このエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、共重合されるVA含有量は、前述した最内層12で示した共重合されるVA含有量と同様の範囲内に設定される。
【0425】
また、最外層14の平均厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上120μm以下であることがより好ましい。最外層14の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内により確実に設定することができる。また、封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50の外側に位置する電子部品に対する中間層19の絶縁性をより確実に確保することができる。
【0426】
なお、最外層14に含まれる樹脂材料としては、最内層12と同様に、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体の他、前述した中間層19に含まれるアイオノマー樹脂であってもよいし、エチレン−酢酸ビニル共重合体以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0427】
また、封止用フィルム100では、最内層12と中間層19との間、および、中間層19と最外層14との間には、接着性を付与したり、あるいは接着性を高めるために必要に応じて接着層を設けるようにすることもできる。また、最内層12と電子部品搭載基板45との間の接着性を高めるために、必要に応じて最内層12の内側、すなわち最内層12と基板5との間に接着層を設けることもできる。
【0428】
接着層に含まれる接着性樹脂としては、例えば、EVA、エチレン−無水マレイン酸共重合体、EAA、EEA、エチレン−メタクリレート−グリシジルアクリレート三元共重合体、あるいは、各種ポリオレフィンに、アクリル酸、メタクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの二塩基性不飽和脂肪酸またはこれらの無水物をグラフトさせたもの、例えば、マレイン酸グラフト化EVA、マレイン酸グラフト化エチレン−α−オレフィン共重合体、スチレン系エラストマー、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等、公知の粘着性樹脂や接着性樹脂を適宜、使用することができる。
【0429】
さらに、最内層12と中間層19と最外層14とが積層された逃げ部27を備える封止用フィルム100を製造する製造方法については、特に限定されず、例えば、公知の共押出法、ドライラミネート法、押出ラミ法、塗工積層等を用いて、成膜および積層を行った後に、接続部材7に対応する位置を切り抜くことで逃げ部27を形成することで得ることができる。
【0430】
ここで、封止用フィルム100を、上記のような構成の最内層12と中間層19と最外層14とを備える多層体とすることにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を比較的容易に150%以上3500%以下に設定することができる。
【0431】
なお、このように軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定し得るのであれば、封止用フィルム100は、最外層14が省略された2層構成のものであってもよいし、最外層14および中間層19が省略された1層構成のものであってもよい。すなわち、封止用フィルム100は、ポリオレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂を主材料とする層を1層以上有しているものであればよい。
【0432】
また、破断伸び(軟化点における伸び率)の測定は、オートグラフ装置(例えば、島津製作所製、AUTOGRAPH AGS−X等)を用いて、JIS K 6251に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0433】
また、封止用フィルム100の軟化点は、動的粘弾性測定装置(例えば、セイコーインスツル社製、EXSTAR6000等)を用いて、チャック間距離20mm、昇温速度5℃/分および角周波数10Hzの条件で測定し得る。
【0434】
さらに、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましく、5ppm/K以上50ppm/K以下であることがより好ましい。封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率がこのような範囲の値であると、封止用フィルム100の加熱時において、封止用フィルム100は、優れた伸縮性を有するものとなるため、封止用フィルム100の凹凸6に対する形状追従性をより確実に向上させることができる。さらに、封止用フィルム100と、基板5さらには電子部品4との間で、優れた密着性を維持することができるため、電子部品搭載基板45の駆動を繰り返すことで生じる発熱に起因する封止用フィルム100の電子部品搭載基板45からの剥離をより的確に抑制または防止することができる。なお、封止用フィルム100の線膨張率は、例えば、動的粘弾性測定装置(例えば、セイコーインスツル社製、EXSTAR6000等)を用いて算出し得る。
【0435】
封止用フィルム100の全体としての平均厚さは、10μm以上700μm以下であることが好ましく、20μm以上400μm以下であることがより好ましい。封止用フィルム100の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100の途中において、封止用フィルム100が破断するのを的確に抑制または防止し得るとともに、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定することができる。
【0436】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第1参考形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0437】
本参考形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、最内層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、接続部材7が封止されることなく、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0438】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図24(a)に示すように、封止用フィルム100が備える最内層12、中間層19および最外層14のうち最内層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する(
図24(b))。
【0439】
(加熱・減圧工程)
次に、
図24(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0440】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち最内層12、中間層19および最外層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0441】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0442】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となる。
【0443】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0444】
なお、封止用フィルム100の加熱と、雰囲気の減圧とは、加熱の後に減圧してもよく、減圧の後に加熱してもよいが、加熱と減圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、軟化した封止用フィルム100を、凹凸6の形状に確実に若干追従した状態とすることができる。
【0445】
(冷却・加圧工程)
次に、
図24(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0446】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0447】
その結果、基板5の上側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
なお、前記加熱減圧工程において、凹凸6の形状に対応して封止用フィルム100が十分追従していれば、加圧工程を省略することができる。
【0448】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっているのが好ましい。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができる。そのため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを優れた密着性をもって被覆することができる。
【0449】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0450】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において最内層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0451】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0452】
なお、封止用フィルム100の冷却と、雰囲気の加圧とは、加圧の後に冷却してもよいが、冷却と加圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、凹凸6の形状に対応して、封止用フィルム100をより優れた密着性をもって被覆させることができる。
【0453】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0454】
<第12実施形態>
次に、本発明の封止用フィルム100の第12実施形態について説明する。
【0455】
図25は、本発明の封止用フィルムの第12実施形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図26(a)〜(c)は、
図25に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図25、
図26中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0456】
以下、第12実施形態について説明するが、前記第1〜第11実施形態および第1参考形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0457】
第12実施形態では、封止用フィルム100が、中間層19に代えて、電磁波シールド性を有する電磁波シールド層13を備える積層体で構成され、それ以外は、前記第1参考形態と同様である。
【0458】
封止用フィルム100は、本実施形態では、
図25、
図26に示すように、絶縁層(最内層)12と、この絶縁層12の一方の面側(上面側)に積層された電磁波シールド層13と、電磁波シールド層13の一方の面側に積層された被覆層(最外層)14とを備える積層体で構成されている。すなわち、絶縁層12と、電磁波シールド層13と、被覆層14とは、被覆すべき電子部品搭載基板45側から、この順で、積層されている。
【0459】
このように電子部品4が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。そのため、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50は、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとなる。
【0460】
また、電子部品4は、絶縁性を有する絶縁層12を介して電磁波シールド層13により封止されていることから、電磁波シールド層13は、この電子部品4に対する絶縁性が確保されたものとなる。さらに、電磁波シールド層13は、電子部品4と反対側の面において、絶縁性を有する被覆層14により被覆されている。そのため、電磁波シールド層13は、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50の外側に位置する他の電子部品に対しても、絶縁性が確保されたものとなる。
【0461】
また、このような封止用フィルム100は、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が、何れも、樹脂材料を含有し、前記第1実施形態と同様に、JIS K 6251に準拠して求められる軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であるが、1000%以上3500%以下であるのが好ましい。
【0462】
そのため、本実施形態においても、以下では、かかる伸び率を満足する封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14の層構成について説明する。
【0463】
前記軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14は、それぞれが前記第1実施形態で説明したのと同様の樹脂材料を含有する。
【0464】
また、封止用フィルム100の前記軟化点における伸び率を前記範囲内とするために、樹脂材料を含有する絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち、絶縁層12および被覆層14は、前記樹脂材料(熱可塑性樹脂)を主材料として含有する層で構成され、電磁波シールド層13は、前記樹脂材料(熱可塑性樹脂)と、導電性を備える導電性粒子とを含有する層で構成される。絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14をかかる構成のものとすることで、絶縁層12および被覆層14は、それぞれ、絶縁性を有する絶縁層および被覆層として機能し、電磁波シールド層13は、電磁波シールド性さらには導電性を有する電磁波シールド層として機能する。
【0465】
上記のような構成をなす、何れも樹脂材料を含有する絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14を備える封止用フィルム100は、前記第1実施形態と同様に、前述した樹脂材料のうちポリオレフィン系樹脂を前記樹脂材料として含有する層を、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうちの少なくとも1層として備えることが好ましい。これにより、封止用フィルム100の軟化点における伸び率をより確実に150%以上3500%以下に設定することができる。
【0466】
そこで、以下では、前記樹脂材料を主材料として含有する絶縁層12および被覆層14と、前記樹脂材料と導電性粒子とを含有する電磁波シールド層13とを備え、絶縁層12および被覆層14に含まれる樹脂材料がともにポリオレフィン系樹脂である封止用フィルム100を、一例として説明する。
【0467】
絶縁層12は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定して、凹凸6への密着性および形状追従性に優れたものとすることを目的に、本実施形態では、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有する層である。
【0468】
また、この絶縁層12は、樹脂材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有することで、絶縁性を備える層であり、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆する際に、電子部品4と導電性を有する電磁波シールド層13との間に介在することで、電子部品4同士、さらには電子部品4と電極3との間で短絡が生じるのを防止するための絶縁層として機能する。
【0469】
このエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、前記第1実施形態と同様に、共重合されるVA含有量が5重量%以上30重量%以下であることが好ましく、10重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。
【0470】
また、絶縁層12の平均厚さは、前記第1実施形態と同様に、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上120μm以下であることがより好ましい。これにより、電磁波シールド層13の電子部品4に対する絶縁性をより確実に確保することができる。
【0471】
電磁波シールド層13は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定して、凹凸6への密着性および形状追従性に優れたものとすること、さらには、封止用フィルム100を強靱性に優れたものとすることを目的に、本実施形態では、樹脂材料としてアイオノマー樹脂を含有する。また、樹脂材料(アイオノマー)は、下記の導電性材料を層中に保持するバインダーとしても機能する。
【0472】
また、電磁波シールド層13は、樹脂材料としてアイオノマー樹脂の他に、さらに、導電性を有する導電性粒子を含有することで、電磁波シールド性さらには導電性を備える層である。
【0473】
このような電磁波シールド層13により、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆する際に、絶縁層12を介して、基板5の上側に配置された電子部品4が被覆される。そのため、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとすることができる。
【0474】
樹脂材料としてのアイオノマー樹脂としては、前記第1実施形態で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0475】
また、導電性粒子としても、前記第1実施形態で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0476】
また、電磁波シールド層13中における導電性粒子の含有量は、10重量%以上95重量%以下であることが好ましく、50重量%以上90重量%以下であることがより好ましい。導電性粒子の含有量をかかる範囲内に設定することにより、電磁波シールド層13に電磁波シールド性さらには導電性を確実に付与しつつ、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定することができる。
【0477】
また、電磁波シールド層13の平均厚さは、1μm以上400μm以下であることが好ましく、5μm以上200μm以下であることがより好ましい。電磁波シールド層13の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100を強靱性に優れ、かつ、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定することができる。さらに、電磁波シールド層13に、電磁波シールド性さらには導電性を確実に付与することができる。
【0478】
なお、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料としては、アイオノマー樹脂の他、絶縁層12および被覆層14に含まれるエチレン−酢酸ビニル共重合体や、それ以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0479】
被覆層14は、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下に設定して、凹凸6への密着性および形状追従性に優れたものとすることを目的に、本実施形態では、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有する層である。
【0480】
また、被覆層14は、樹脂材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を主材料として含有することで、絶縁性を備える層であり、電子部品搭載基板45を封止用フィルム100で被覆する際に、導電性を有する電磁波シールド層13の電子部品4と反対の面側を被覆することで、電子部品搭載基板45の外側に位置する他の電子部品に対する絶縁性を確保するための被覆層として機能する。
【0481】
このエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、共重合されるVA含有量は、前記第1実施形態の絶縁層12で示した共重合されるVA含有量と同様の範囲内に設定される。
【0482】
また、被覆層14の平均厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上120μm以下であることがより好ましい。これにより、封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50の外側に位置する電子部品に対する電磁波シールド層13の絶縁性をより確実に確保することができる。
【0483】
なお、被覆層14に含まれる樹脂材料としては、絶縁層12と同様に、ポリオレフィン系樹脂(エチレン共重合体)としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体の他、前述した電磁波シールド層13に含まれるアイオノマー樹脂であってもよいし、エチレン−酢酸ビニル共重合体以外のポリオレフィン系樹脂であってもよい。
【0484】
また、封止用フィルム100では、絶縁層12と電磁波シールド層13との間、および、電磁波シールド層13と被覆層14との間には、接着性を付与したり、あるいは接着性を高めるために必要に応じて接着層を設けるようにすることもできる。また、絶縁層12と電子部品搭載基板45との間の接着性を高めるために、必要に応じて絶縁層12の内側、すなわち絶縁層12と基板5との間に接着層を設けることもできる。
【0485】
さらに、接着層に含まれる接着性樹脂としては、前記第1実施形態で説明したのと同様の樹脂を用いることができる。
【0486】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第12実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0487】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0488】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図26(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する(
図26(b))。
【0489】
(加熱・減圧工程)
次に、
図26(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0490】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0491】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0492】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となる。
【0493】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0494】
なお、封止用フィルム100の加熱と、雰囲気の減圧とは、加熱の後に減圧してもよく、減圧の後に加熱してもよいが、加熱と減圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、軟化した封止用フィルム100を、凹凸6の形状に確実に若干追従した状態とすることができる。
【0495】
(冷却・加圧工程)
次に、
図26(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0496】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0497】
その結果、基板5の上側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
なお、前記加熱減圧工程において、凹凸6の形状に対応して封止用フィルム100が十分追従していれば、加圧工程を省略することができる。
【0498】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっているのが好ましい。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを優れた密着性をもって被覆することができる。
【0499】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0500】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において絶縁層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0501】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0502】
さらに、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12と電磁波シールド層13と被覆層14との積層体で構成される。
【0503】
そのため、本工程において、絶縁層12を介して、電子部品4が電磁波シールド層13により被覆される。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとすることができる。
【0504】
また、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13により封止されることから、電磁波シールド層13は、この電子部品4に対する絶縁性を確保した状態で、電子部品4を被覆することができる。また、電磁波シールド層13は、電子部品4と反対側の面において、被覆層14により被覆されていることから、電磁波シールド層13は、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50の外側に位置する他の電子部品に対しても、絶縁性が確保された状態で電子部品搭載基板45を被覆することができる。
【0505】
なお、封止用フィルム100の冷却と、雰囲気の加圧とは、加圧の後に冷却してもよいが、冷却と加圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、凹凸6の形状に対応して、封止用フィルム100をより優れた密着性をもって被覆させることができる。
【0506】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0507】
<第13実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第13実施形態について説明する。
【0508】
図27は、本発明の封止用フィルムの第13実施形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図28は、
図27に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図27、
図28中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0509】
以下、第13実施形態について説明するが、前記第12実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0510】
第13実施形態では、封止用フィルム100が備える被覆層14の構成が異なり、それ以外は、前記第12実施形態と同様である。
【0511】
第13実施形態の封止用フィルム100において、被覆層14は、
図27、
図28に示すように、電磁波シールド層13よりも大きく形成され、その端部が電磁波シールド層13の端部(縁部)から露出すること、換言すれば、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部15(第1突出部)を備えている。
【0512】
このような封止用フィルム100を用いて、電子部品4および接続部材7が上面(一方の面)側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし被覆層14を上側にして被覆すると、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0513】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、被覆層14が備える突出部15は、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51を、この突出部15により被覆することができる。したがって、本実施形態の封止用フィルム100により、基板5の上面側ばかりでなく、基板5の下面における端部51まで被覆層14により被覆することができ、より優れた気密性をもって、電子部品搭載基板45を被覆することができる。そのため、封止用フィルム100により被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0514】
また、前記第1実施形態と同様に、前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面側から下面側へ突出部15を折りこませることで、端部51を被覆する際に、突出部15が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0515】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への突出部15の折り込みを、突出部15を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0516】
また、封止用フィルム100における、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する被覆層14の突出部15の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部15の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部15を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51にまで到達させることができるため、突出部15による端部51の被覆を確実に実現させることができる。
【0517】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第13実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0518】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部15を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより基板5の下面における端部51に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部15が基板5の下面における端部51に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0519】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図28(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0520】
そして、この際、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する被覆層14の突出部15を、基板5の下面側に折り込み、これにより、突出部15を端部51に接触させる(
図28(b))。
【0521】
(加熱・減圧工程)
次に、
図28(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0522】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100、すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、端部51を、被覆し得る状態となる。
【0523】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0524】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上面側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下面側では、端部51を若干被覆した状態となる。
【0525】
本工程により、封止用フィルム100を、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に追従し得る状態とし、さらに、突出部15が基板5の下面側に折り込まれて、端部51を被覆し得る状態とすることができる。
【0526】
(冷却・加圧工程)
次に、
図6(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0527】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0528】
その結果、基板5の上側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4の形状)に対して優れた密着度(気密度)で追従し、さらに、端部51に対して優れた密着度で被覆した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
【0529】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ突出部15を折り込ませることで端部51に接触させる際に、突出部15が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0530】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0531】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出し、さらに、基板5の下面側において、折り込まれた被覆層14の突出部15により端部51が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0532】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0533】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0534】
<第14実施形態>
次に、本発明の封止用フィルム100の第14実施形態について説明する。
【0535】
図29は、本発明の封止用フィルムの第4実施形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図30(a)〜(c)は、
図29に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図29、
図30中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0536】
以下、第14実施形態について説明するが、前記第12実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0537】
第14実施形態では、封止用フィルム100が備える絶縁層12および被覆層14の構成が異なり、それ以外は、前記第12実施形態と同様である。
【0538】
第14実施形態の封止用フィルム100において、絶縁層12および被覆層14は、
図29、
図30に示すように、それぞれ、電磁波シールド層13よりも大きく形成され、それらの端部が電磁波シールド層13の端部(縁部)から露出すること、換言すれば、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部15(第1突出部)および突出部16(第3突出部)を備えている。そして、これら突出部15と突出部16とは、電磁波シールド層13の端部を越えた位置で積層することで設けられた積層突出部65を形成する。
【0539】
このような封止用フィルム100を用いて、電子部品4および接続部材7が上面(一方の面)側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし被覆層14を上側にして被覆すると、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0540】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、突出部15と突出部16とを積層することで形成された積層突出部65は、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51を、この積層突出部65が備える突出部15により被覆することができる。したがって、本実施形態の封止用フィルム100により、基板5の上面側ばかりでなく、基板5の下面における端部51まで積層突出部65により被覆することができ、より優れた気密性をもって、電子部品搭載基板45を被覆することができる。そのため、封止用フィルム100により被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0541】
また、積層突出部65は、これら突出部15と突出部16とが、電磁波シールド層13の端部を越えた位置で積層することで形成され、電磁波シールド層13の端部をも絶縁層12および被覆層14により被覆されることで、電子部品4および電子部品搭載基板45の外側に位置する電子部品に対する電磁波シールド層13の絶縁性をより確実に確保することができる。
【0542】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面側から下面側へ積層突出部65を折りこませることで、端部51を被覆する際に、積層突出部65が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0543】
また、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への突出部15の折り込みを、突出部15を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0544】
さらに、封止用フィルム100における、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する被覆層14の突出部15の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部15の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部15を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51にまで到達させることができるため、突出部15による端部51の被覆を確実に実現させることができる。
【0545】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第14実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0546】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、積層突出部65を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより基板5の下面における端部51に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、積層突出部65が基板5の下面における端部51に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0547】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図30(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0548】
そして、この際、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する積層突出部65を、基板5の下面側に折り込み、これにより、積層突出部65を端部51に接触させる(
図30(b))。
【0549】
(加熱・減圧工程)
次に、
図30(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0550】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、端部51を、被覆し得る状態となる。
【0551】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0552】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上面側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下面側では、端部51を若干被覆した状態となる。
【0553】
本工程により、封止用フィルム100を、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に追従し得る状態とし、さらに、突出部15が基板5の下面側に折り込まれて、端部51を被覆し得る状態とすることができる。
【0554】
(冷却・加圧工程)
次に、
図30(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0555】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0556】
その結果、基板5の上側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4の形状)に対して優れた密着度(気密度)で追従し、さらに、端部51に対して優れた密着度で被覆した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
【0557】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ積層突出部65を折りこませることで端部51に接触させる際に、積層突出部65が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0558】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0559】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上面側において、絶縁層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出し、さらに、基板5の下面側において、折り込まれた積層突出部65により端部51が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0560】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0561】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0562】
<第15実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第15実施形態について説明する。
【0563】
図31は、本発明の封止用フィルムの第15実施形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図32(a)〜(c)は、
図31に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図31、
図32中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0564】
以下、第15実施形態について説明するが、前記第12実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0565】
第15実施形態では、封止用フィルム100において、被覆層14の形成が省略され、それ以外は、前記第12実施形態と同様である。
【0566】
第15実施形態の封止用フィルム100において、
図31、
図32に示すように、被覆層14の形成が省略され、絶縁層12と、この絶縁層12の一方の面側(上面側)に積層された電磁波シールド層13とを備える積層体で構成されている。すなわち、絶縁層12と、電磁波シールド層13とは、被覆すべき電子部品搭載基板45側から、この順で、積層されている。
【0567】
このような封止用フィルム100を用いて、電子部品4および接続部材7が上面(一方の面)側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし電磁波シールド層13を上側にして被覆すると、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0568】
また、前記第1実施形態と同様に、前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、電子部品搭載基板45が備える、凸部61と凹部62とからなる凹凸6に対して、優れた追従性をもって封止した状態で、電子部品4を被覆することができる。
【0569】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、電子部品搭載基板45が備える、凸部61と凹部62とからなる凹凸6に対して、優れた追従性をもって封止した状態で、電子部品4を被覆することができる。
【0570】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第15実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法(本発明の電子部品搭載基板の封止方法)について説明する。
【0571】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0572】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図34(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12および電磁波シールド層13のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する(
図34(b))。
【0573】
(加熱・減圧工程)
次に、
図34(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0574】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12および電磁波シールド層13が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0575】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0576】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となる。
【0577】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0578】
なお、封止用フィルム100の加熱と、雰囲気の減圧とは、加熱の後に減圧してもよく、減圧の後に加熱してもよいが、加熱と減圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、軟化した封止用フィルム100を、凹凸6の形状に確実に若干追従した状態とすることができる。
【0579】
(冷却・加圧工程)
次に、
図34(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0580】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0581】
その結果、基板5の上側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
なお、前記加熱減圧工程において、凹凸6の形状に対応して封止用フィルム100が十分追従していれば、加圧工程を省略することができる。
【0582】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっているのが好ましい。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを優れた密着性をもって被覆することができる。
【0583】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0584】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において絶縁層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0585】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0586】
さらに、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12と電磁波シールド層13との積層体で構成される。
【0587】
そのため、本工程において、絶縁層12を介して、電子部品4が電磁波シールド層13により被覆される。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとすることができる。
【0588】
また、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13により封止されることから、電磁波シールド層13は、この電子部品4に対する絶縁性を確保した状態で、電子部品4を被覆することができる。
【0589】
なお、封止用フィルム100の冷却と、雰囲気の加圧とは、加圧の後に冷却してもよいが、冷却と加圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、凹凸6の形状に対応して、封止用フィルム100をより優れた密着性をもって被覆させることができる。
【0590】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0591】
<第16実施形態>
次に、本発明の封止用フィルム100の第16実施形態について説明する。
【0592】
図33は、本発明の封止用フィルムの第16実施形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図34(a)〜(c)は、
図33に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図33、
図34中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0593】
以下、第16実施形態について説明するが、前記第12実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0594】
第16実施形態では、封止用フィルム100が備える絶縁層12の構成が異なり、さらに被覆層14の形成が省略されていること以外は、前記第12実施形態と同様である。
【0595】
第16実施形態の封止用フィルム100において、絶縁層12は、
図33、
図34に示すように、電磁波シールド層13よりも大きく形成され、その端部が電磁波シールド層13の端部(縁部)から露出すること、換言すれば、電磁波シールド層13の端部を越えて突出することで形成された突出部16(第3突出部)を備えている。
【0596】
このような封止用フィルム100を用いて、電子部品4および接続部材7が上面(一方の面)側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし電磁波シールド層13を上側にして被覆すると、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0597】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、突出部16は、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51を、この突出部16により被覆することができる。したがって、本実施形態の封止用フィルム100により、基板5の上面側ばかりでなく、基板5の下面における端部51まで突出部16により被覆することができ、より優れた気密性をもって、電子部品搭載基板45を被覆することができる。そのため、封止用フィルム100により被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0598】
さらに、前記第1実施形態と同様に、前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面側から下面側へ突出部16を折りこませることで、端部51を被覆する際に、突出部16が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0599】
また、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への突出部16の折り込みを、突出部16を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0600】
さらに、封止用フィルム100における、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する突出部16の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部16の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部16を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51にまで到達させることができるため、突出部16による端部51の被覆を確実に実現させることができる。
【0601】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第16実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0602】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部16を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより基板5の下面における端部51に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部16が基板5の下面における端部51に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0603】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図34(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12および電磁波シールド層13のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
そして、この際、電磁波シールド層13の端部を越えて突出する突出部16を、基板5の下面側に折り込み、これにより、突出部16を端部51に接触させる(
図34(b))。
【0604】
(加熱・減圧工程)
次に、
図34(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0605】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12および電磁波シールド層13が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、端部51を、被覆し得る状態となる。
【0606】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0607】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上面側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下面側では、端部51を若干被覆した状態となる。
【0608】
本工程により、封止用フィルム100を、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に追従し得る状態とし、さらに、突出部15が基板5の下面側に折り込まれて、端部51を被覆し得る状態とすることができる。
【0609】
(冷却・加圧工程)
次に、
図36(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0610】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0611】
その結果、基板5の上側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4の形状)に対して優れた密着度(気密度)で追従し、さらに、端部51に対して優れた密着度で被覆した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆される。
【0612】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ突出部16を折りこませることで端部51に接触させる際に、突出部16が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0613】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには端部51を優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0614】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上面側において、絶縁層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出し、さらに、基板5の下面側において、折り込まれた突出部16により端部51が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0615】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0616】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0617】
<第17実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第17実施形態について説明する。
【0618】
図35は、本発明の封止用フィルムの第17実施形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図36(a)〜(c)は、
図35に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図35、
図36中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0619】
以下、第17実施形態について説明するが、前記第12実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0620】
第17実施形態では、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13および被覆層14の構成が異なり、さらに、この封止用フィルム100を用いて被覆する電子部品搭載基板45の構成が異なること以外は、前記第12実施形態と同様である。
【0621】
第17実施形態の封止用フィルム100において、電磁波シールド層13および被覆層14は、
図35、
図36に示すように、絶縁層12よりも大きく形成されている。これにより、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12側に位置する電磁波シールド層13の端部が絶縁層12の端部(縁部)から露出している。換言すれば、電磁波シールド層13が、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17(第2突出部)を備えている。
【0622】
また、第17実施形態の封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、
図35に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の上面(一方の面)側の端部52に形成された接続部材7および電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4および電極3の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。なお、電極3としては、例えば、外部から電気を供給するための電源と接続するための電極、電子部品搭載基板45の外側に位置する、他の電子部品と電気的に接続するための電極、および、電子部品4を接地するためのグランド電極等が挙げられる。
【0623】
このように電子部品4、電極3および接続部材7が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0624】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、電磁波シールド層13は、このものが備える突出部17において、絶縁層12から露出している。そのため、基板5の上面の端部52に形成された電極3に、この突出部17を接触させた状態とすることができる。したがって、この突出部17は、電磁波シールド層13で構成され導電性を有することから、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50おいて、この電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することができる。なお、本実施形態では、電磁波シールド層13の上面のほぼ全面には被覆層14が形成されていることから、電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保する場合には、被覆層14の一部を除去して電磁波シールド層13が露出する露出部を形成し、この露出部において、電磁波シールド層13と外部とを電気的に接続することで、この接続が実現される。
【0625】
また、封止用フィルム100における、絶縁層12の端部を越えて突出する電磁波シールド層13の突出部17の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部17の長さをかかる範囲内に設定することで、この突出部17により、基板5の上面側に位置する電極3を被覆して、突出部17と電極3との電気的な接続を実現することができる。
【0626】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第17実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0627】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部17を、基板5の上面(一方の面)側の電極3に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部17が電極3に接触した状態で、基板5と電子部品4と電極3とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0628】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図36(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4と電極3とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0629】
この際、封止用フィルム100の中央部に位置する絶縁層12により電子部品4を被覆させ、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17により電極3を被覆させる(
図36(b))。
【0630】
(加熱・減圧工程)
次に、
図36(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0631】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4および電極3を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0632】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0633】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4および電極3の形状に若干追従した状態となる。
【0634】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0635】
(冷却・加圧工程)
次に、
図36(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0636】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0637】
その結果、基板5の上側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4および電極3の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。
【0638】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4と電極3とを優れた密着性をもって被覆することができる。
【0639】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とを優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0640】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出し、さらに、電磁波シールド層13が接触して電極3が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0641】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0642】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14の積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、その端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17を備えている。そして、本実施形態では、この突出部17が、絶縁層12を介することなく、電極3を直接被覆する。これにより、導電性を有する突出部17(電磁波シールド層13)に電極3が電気的に接続されるため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部17を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0643】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0644】
<第18実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第18実施形態について説明する。
【0645】
図37は、本発明の封止用フィルムの第18実施形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図38(a)〜(c)は、
図37に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図37、
図38中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0646】
以下、第18実施形態について説明するが、前記第12実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0647】
第18実施形態では、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13の構成が異なり、さらに、被覆層14の形成が省略されているとともに、この封止用フィルム100を用いて被覆する電子部品搭載基板45の構成が異なること以外は、前記第12実施形態と同様である。
【0648】
第18実施形態の封止用フィルム100において、電磁波シールド層13は、
図37、
図38に示すように、絶縁層12よりも大きく形成されている。これにより、電磁波シールド層13の端部が絶縁層12の端部(縁部)から露出すること、換言すれば、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17(第2突出部)を備えている。
【0649】
また、第18実施形態の封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、
図38に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の上面(一方の面)側の端部52に形成された接続部材7および電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4および電極3の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。なお、電極3としては、例えば、外部から電気を供給するための電源と接続するための電極、電子部品搭載基板45の外側に位置する、他の電子部品と電気的に接続するための電極、および、電子部品4を接地するためのグランド電極等が挙げられる。
【0650】
このように電子部品4、電極3および接続部材7が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、電磁波シールド層13を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0651】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、電磁波シールド層13は、このものが備える突出部17において、絶縁層12から露出している。そのため、基板5の上面の端部52に形成された電極3に、この突出部17を接触させた状態とすることができる。したがって、この突出部17は、電磁波シールド層13で構成され導電性を有することから、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50おいて、この電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することができる。
【0652】
また、封止用フィルム100における、絶縁層12の端部を越えて突出する電磁波シールド層13の突出部17の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部17の長さをかかる範囲内に設定することで、この突出部17により、基板5の上側に位置する電極3を被覆して、突出部17と電極3との電気的な接続を実現することができる。
【0653】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した第18実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0654】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部17を、基板5の上面(一方の面)側の電極3に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部17が電極3に接触した状態で、基板5と電子部品4と電極3とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0655】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図38(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12および電磁波シールド層13のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4と電極3とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0656】
この際、封止用フィルム100の中央部に位置する絶縁層12により電子部品4を被覆させ、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17により電極3を被覆させる(
図38(b))。
【0657】
(加熱・減圧工程)
次に、
図38(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0658】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12および電磁波シールド層13が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4および電極3を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0659】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0660】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4および電極3の形状に若干追従した状態となる。
【0661】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0662】
(冷却・加圧工程)
次に、
図38(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0663】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0664】
その結果、基板5の上側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4および電極3の形状)に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。
【0665】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4と電極3とを優れた密着性をもって被覆することができる。
【0666】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とを優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0667】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において、絶縁層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出し、さらに、電磁波シールド層13が接触して電極3が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0668】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0669】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12および電磁波シールド層13の積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、その端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17を備えている。そして、本実施形態では、この突出部17が、絶縁層12を介することなく、電極3を直接被覆する。これにより、導電性を有する突出部17(電磁波シールド層13)に電極3が電気的に接続されるため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部17を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0670】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0671】
<第19実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第19実施形態について説明する。
【0672】
図39は、本発明の封止用フィルムの第19実施形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図40(a)〜(c)は、
図39に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図39、
図40中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0673】
以下、第19実施形態について説明するが、前記第12実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0674】
第19実施形態では、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13および被覆層14の構成が異なり、さらに、この封止用フィルム100を用いて被覆する電子部品搭載基板45の構成が異なること以外は、前記第12実施形態と同様である。
【0675】
第19実施形態の封止用フィルム100において、電磁波シールド層13および被覆層14は、
図39、
図40に示すように、絶縁層12よりも大きく形成されている。これにより、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12側に位置する電磁波シールド層13の端部が絶縁層12の端部(縁部)から露出している。換言すれば、電磁波シールド層13が、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17(第2突出部)を備えている。
【0676】
また、第19実施形態の封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、
図40に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の上面(一方の面)側の端部52に形成された接続部材7、および、基板5の下面(他方の面)側の端部51に形成された電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。
【0677】
このように電子部品4および接続部材7が上面側に搭載され、電極3が下面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、被覆層14を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0678】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、電磁波シールド層13が備える突出部17は、基板5の下面側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51に形成された電極3に、この突出部17を接触させた状態とすることができる。したがって、この突出部17は、電磁波シールド層13で構成され導電性を有することから、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50おいて、この電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することができる。なお、本実施形態では、電磁波シールド層13の上面のほぼ全面には被覆層14が形成されていることから、電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保する場合には、被覆層14の一部を除去して電磁波シールド層13が露出する露出部を形成し、この露出部において、電磁波シールド層13と外部とを電気的に接続することで、この接続が実現される。
【0679】
また、前記第1実施形態と同様に、前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面側から下面側へ突出部17を折りこませることで、端部51に設けられた電極3を被覆する際に、突出部17が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0680】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への突出部17の折り込みを、突出部17を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0681】
また、封止用フィルム100における、絶縁層12の端部を越えて突出する電磁波シールド層13の突出部17の長さは、特に限定されず、0.5cm以上8.0cm以下であることが好ましく、1.0cm以上5.0cm以下であることがより好ましい。突出部17の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部17を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51に形成された電極3にまで到達させることができるため、突出部17による電極3の電気的な接続を確実に実現させることができる。
【0682】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、本実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0683】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部17を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより電極3に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部17が電極3に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0684】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図40(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0685】
そして、この際、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17を、基板5の下面側に折り込み、これにより、突出部17を電極3に接触させる(
図40(b))。
【0686】
(加熱・減圧工程)
次に、
図40(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0687】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、基板5の下面の端部51に設けられた電極3の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0688】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0689】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上面側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下面側では、電極3の形状に若干追従した状態となる。
【0690】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状、および、下面側に形成された電極3の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0691】
(冷却・加圧工程)
次に、
図40(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0692】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0693】
その結果、基板5の上面側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4の形状)、さらに、基板5の下面側では電極3の形状に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。
【0694】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6および電極3に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上面側において基板5と電子部品4とを、さらには基板5の下面側においては電極3を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ突出部17を折りこませることで電極3に接触させる際に、突出部17が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0695】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには電極3を優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0696】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上面側において絶縁層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出し、さらに、基板5の下面側において電磁波シールド層13が接触して電極3が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0697】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0698】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14の積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、絶縁層12よりも大きく形成され、その中央部において絶縁層12が積層されるが、端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17を備えている。そして、この突出部17が、基板5の下面側に折り込まれることで電極3を直接被覆する。これにより、電極3が突出部17(電磁波シールド層13)に電気的に接続されるため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部17を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0699】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0700】
<<第20実施形態>>
次に、本発明の封止用フィルム100の第20実施形態について説明する。
【0701】
図41は、本発明の封止用フィルムの第20実施形態を示す図((a)縦断面図、(b)平面図)、
図42(a)〜(c)は、
図41に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図41、
図42中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0702】
以下、第20実施形態について説明するが、前記第12実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0703】
第20実施形態では、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13の構成が異なり、さらに、被覆層14の形成が省略されているとともに、この封止用フィルム100を用いて被覆する電子部品搭載基板45の構成が異なること以外は、前記第12実施形態と同様である。
【0704】
第20実施形態の封止用フィルム100において、電磁波シールド層13は、
図41、
図42に示すように、絶縁層12よりも大きく形成されている。これにより、電磁波シールド層13の端部が絶縁層12の端部(縁部)から露出すること、換言すれば、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17(第2突出部)を備えている。
【0705】
また、第20実施形態の封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、
図42に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の上面(一方の面)側の端部52に形成された接続部材7、および、基板5の下面(他方の面)側の端部51に形成された電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4の搭載により、基板5上に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。
【0706】
このように電子部品4および接続部材7が上面側に搭載され、電極3が下面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、絶縁層12を下側とし、電磁波シールド層13を上側にして、封止用フィルム100を用いて被覆すると、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。
【0707】
さらに、本実施形態では、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、電磁波シールド層13が備える突出部17は、基板5の下面側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面の端部51に形成された電極3に、この突出部17を接触させた状態とすることができる。したがって、この突出部17は、電磁波シールド層13で構成され導電性を有することから、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50おいて、この電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することができる。
【0708】
また、前記第1実施形態と同様に、前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下である。これにより、基板5の上面側から下面側へ突出部17を折りこませることで、端部51に設けられた電極3を被覆する際に、突出部17が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0709】
さらに、前記第1実施形態と同様に、封止用フィルム100の25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率は、100ppm/K以下であることが好ましい。このように、封止用フィルム100の線膨張率を規定することによっても、基板5の上面側から下面側への突出部17の折り込みを、突出部17を屈曲させる屈曲部において破断を生じさせることなく確実に実施させることができる。
【0710】
また、封止用フィルム100における、絶縁層12の端部を越えて突出する電磁波シールド層13の突出部17の長さは、特に限定されず、0.5cm以上8.0cm以下であることが好ましく、1.0cm以上5.0cm以下であることがより好ましい。突出部17の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部17を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面における端部51に形成された電極3にまで到達させることができるため、突出部17による電極3の電気的な接続を確実に実現させることができる。
【0711】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、本実施形態の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法について説明する。
【0712】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置しつつ、突出部17を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより電極3に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部17が電極3に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0713】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図42(a)に示すように、封止用フィルム100が備える絶縁層12および電磁波シールド層13のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆い、かつ、接続部材7に逃げ部27が対応するように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
そして、この際、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17を、基板5の下面側に折り込み、これにより、突出部17を電極3に接触させる(
図42(b))。
【0714】
(加熱・減圧工程)
次に、
図42(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0715】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち絶縁層12および電磁波シールド層13が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、基板5の下面の端部51に設けられた電極3の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0716】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0717】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上面側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下面側では、電極3の形状に若干追従した状態となる。
【0718】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状、および、下面側に形成された電極3の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0719】
(冷却・加圧工程)
次に、
図42(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0720】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0721】
その結果、基板5の上面側では、接続部材7が逃げ部27から露出して封止されることなく、凹凸6の形状(電子部品4の形状)、さらに、基板5の下面側では電極3の形状に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。
【0722】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6および電極3に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができるため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上面側において基板5と電子部品4とを、さらには基板5の下面側においては電極3を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ突出部17を折りこませることで電極3に接触させる際に、突出部17が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0723】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには電極3を優れた密着性(気密性)をもって被覆し、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0724】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上面側において絶縁層12が接触して基板5と電子部品4とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出し、さらに、基板5の下面側において電磁波シールド層13が接触して電極3が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのをより的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器のより信頼性の向上が図られる。
【0725】
また、上記のように、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、接続部材7が逃げ部27から露出しているため、電子部品搭載基板45と他の電子部品や電源との電気的な接続を実現することができる。
【0726】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12および電磁波シールド層13の積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、絶縁層12よりも大きく形成され、その中央部において絶縁層12が積層されるが、端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部17を備えている。そして、この突出部17が、基板5の下側に折り込まれることで電極3を直接被覆する。これにより、電極3が突出部17(電磁波シールド層13)に電気的に接続されるため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部17を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0727】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆され、かつ、接続部材7が逃げ部27から露出した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0728】
<第21実施形態>
[封止用フィルム]
次に、本発明の封止用フィルム100の第21実施形態について説明する。
【0729】
図43は、本発明の封止用フィルムの第21実施形態を示す縦断面図、
図44(a)〜(c)は、
図43に示す封止用フィルムを用いて電子部品搭載基板の封止方法を説明するための縦断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図43、
図44中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0730】
以下、第21実施形態について説明するが、前記第1〜第20実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0731】
第21実施形態では、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13および被覆層14の構成が異なり、さらに、この封止用フィルム100を用いて被覆する電子部品搭載基板45の構成が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0732】
封止用フィルム100は、
図43、
図44に示すように、絶縁層12と、この絶縁層12の一方の面側(上面側)に積層された電磁波シールド層13とを備える積層体で構成されている。すなわち、電磁波シールド層13は、被覆すべき電子部品搭載基板45の反対側(上面側)において、絶縁層12に積層されている。そして、この電磁波シールド層13は、絶縁層12よりも大きく形成され、その端部が絶縁層12の端部(縁部)から露出している。換言すれば、電磁波シールド層13が、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部15を備えている。
【0733】
ここで、封止用フィルム100により被覆される電子部品搭載基板45は、
図44に示すように、基板5と、基板5の上面(一方の面)側の中央部に搭載(載置)された電子部品4と、この電子部品4に電気的に接続され、基板5の下面(他方の面)側の端部に形成された電極3とを備えている。このような電子部品搭載基板45において、基板5の上面への電子部品4の搭載および基板5の下面への電極3の形成により、基板5の上面および下面に凸部61と凹部62とからなる凹凸6が形成される。なお、基板5としては、例えば、プリント配線基板が挙げられ、基板5上に搭載する電子部品4としては、例えば、半導体素子、コンデンサー、コイル、コネクターおよび抵抗等が挙げられ、電極3としては、例えば、外部から電気を供給するための電源と接続するための電極、他の電子部品と電気的に接続するための電極、および、電子部品4を接地するためのグランド電極等が挙げられる。
【0734】
このように電子部品4が上面側に搭載された電子部品搭載基板45に対して、電磁波シールド層13を上側にして、封止用フィルム100を用いて封止すると、電子部品4は、絶縁層12を介して電磁波シールド層13で封止される。そのため、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50は、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止されたものとなる。
【0735】
さらに、この封止用フィルム100を用いた被覆の際に、電磁波シールド層13が備える突出部15は、基板5の下面側に折り込むことが可能なように構成されている。そのため、基板5の下面側の端部に形成された電極3に、この突出部15を接触させた状態とすることができる。したがって、この突出部15は、電磁波シールド層13で構成され導電性を有することから、得られた封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50おいて、この電磁波シールド層13を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することができる。
【0736】
また、前記第1実施形態と同様に、前記軟化点における伸び率は、150%以上3500%以下であるが、150%以上2000%以下であることがより好ましく、1000%以上2000%以下であることがさらに好ましい。
【0737】
この軟化点における伸び率がかかる範囲内であることにより、封止用フィルム100による電子部品搭載基板45の被覆の際に、電子部品搭載基板45が備える、凸部61と凹部62とからなる凹凸6に対して、優れた追従性をもって封止した状態で、被覆することができる。そのため、この封止用フィルム100を被覆することで得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、基板5上の電子部品4が湿気や埃等の外部因子と接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。さらに、基板5の上面側から下面側へ突出部15を折り込ませることで電極3に接触させる際に、突出部15が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0738】
また、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を前記範囲内とすることにより、基板5に設けられた凹凸6における段差が具体的な大きさとして、10mm以上のように大きいものであったとしても、封止用フィルム100を凹凸6の形状に対応して追従させることができる。
【0739】
封止用フィルム100の全体としての平均厚さは、10μm以上700μm以下であることが好ましく、20μm以上400μm以下であることがより好ましい。封止用フィルム100の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、封止用フィルム100の途中において、封止用フィルム100が破断するのを的確に抑制または防止し得るとともに、封止用フィルム100の軟化点における伸び率を150%以上3500%以下の範囲内に確実に設定することができる。
【0740】
また、封止用フィルム100における、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部15の長さは、特に限定されず、0.1cm以上5.0cm以下であることが好ましく、0.5cm以上2.5cm以下であることがより好ましい。突出部15の長さをかかる範囲内に設定することにより、突出部15を、基板5の上面側から下面側に折り込みつつ、基板5の下面側に位置する電極3に到達させることができるため、突出部15と電極3との電気的な接続を実現することができる。
【0741】
[電子部品搭載基板の封止方法]
次に、上述した本発明の封止用フィルムを用いた電子部品搭載基板の封止方法(本発明の電子部品搭載基板の封止方法)について説明する。
【0742】
本実施形態の電子部品搭載基板の封止方法は、基板5と電子部品4とを覆うように、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置させつつ、突出部15を、基板5の下面(他方の面)側に折り込むことにより電極3に接触させる配置工程と、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する加熱・減圧工程と、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧することで、突出部15が電極3に接触した状態で、基板5と電子部品4とを封止用フィルム100で封止する冷却・加圧工程とを有する。
【0743】
以下、電子部品搭載基板の封止方法の各工程について、順次説明する。
(配置工程)
まず、
図44(a)に示すように、封止用フィルム100が備える電磁波シールド層13および絶縁層12のうち絶縁層12を、電子部品搭載基板45に対向させた状態で、電子部品搭載基板45が備える基板5と電子部品4とを覆うように、封止用フィルム100を電子部品搭載基板45上に配置する。
【0744】
そして、この際、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部15を、基板5の下面側に折り込み、これにより、突出部15を電極3に接触させる(
図44(b))。
【0745】
(加熱・減圧工程)
次に、
図44(b)に示す状態を維持したまま、封止用フィルム100を加熱し軟化させるとともに、減圧する。
【0746】
このように、封止用フィルム100を加熱することにより、封止用フィルム100すなわち電磁波シールド層13および絶縁層12が軟化し、その結果、基板5の上面側では、基板5に電子部品4を搭載することにより形成された凹凸6の形状に対して、追従し得る状態となり、さらに、基板5の下面側では、基板5に設けられた電極3の形状に対して、追従し得る状態となる。
【0747】
また、この際、電子部品搭載基板45および封止用フィルム100を、減圧雰囲気下に配置することで、封止用フィルム100の外側ばかりでなく、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間の気体(空気)が脱気される。
【0748】
これにより、封止用フィルム100が伸展しながら、基板5の上側では、凹凸6の形状、すなわち、基板5上の電子部品4の形状に若干追従した状態となり、基板5の下側では、基板5上の電極3の形状に若干追従した状態となる。
【0749】
本工程により、電子部品搭載基板45の上面側に形成された凹凸6の形状、および、下面側に形成された電極3の形状に対して、封止用フィルム100を、追従し得る状態とすることができる。
【0750】
なお、封止用フィルム100の加熱と、雰囲気の減圧とは、加熱の後に減圧してもよく、減圧の後に加熱してもよいが、加熱と減圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、軟化した封止用フィルム100を、凹凸6の形状および電極3の形状に確実に若干追従した状態とすることができる。
【0751】
(冷却・加圧工程)
次に、
図44(c)に示すように、封止用フィルム100を冷却させるとともに、加圧する。
【0752】
このように、減圧された雰囲気から加圧することで、前記加熱・減圧工程において、電子部品搭載基板45と封止用フィルム100との間が脱気され、減圧状態が維持されていることから、封止用フィルム100がさらに伸展することとなる。
【0753】
その結果、基板5の上側では凹凸6の形状(電子部品4の形状)、さらに、基板5の下側では電極3の形状に優れた密着度(気密度)で追従した状態で、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆される。
【0754】
なお、前記加熱減圧工程において、凹凸6の形状に対応して封止用フィルム100が十分追従していれば、加圧工程を省略することができる。
【0755】
この際、封止用フィルム100の軟化点における伸び率が150%以上3500%以下となっている。これにより、封止用フィルム100は、この加圧時に、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6および電極3に対してより優れた形状追従性をもって伸展させることができる。そのため、軟化した状態の封止用フィルム100により、基板5の上側において基板5と電子部品4とを、さらには基板5の下側においては電極3を優れた密着性をもって被覆することができる。また、基板5の上面側から下面側へ突出部15を折り込ませることで電極3に接触させる際に、突出部15が屈曲した屈曲部において破断してしまうのを的確に抑制または防止することができる。
【0756】
そして、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4とを、さらには電極3を優れた密着性(気密性)をもって被覆した状態で、封止用フィルム100を冷却することで、この状態を維持したまま、封止用フィルム100が固化する。
【0757】
これにより、電子部品搭載基板45に形成された凹凸6の形状に追従した状態で、封止用フィルム100により、基板5の上側において絶縁層12が接触した状態で基板5と電子部品4とが被覆され、基板5の下側において電磁波シールド層13が接触した状態で基板5と電極3が被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50が得られることとなる。そのため、この封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、湿気や埃等の外部因子と電子部品4および電極3が接触するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50ひいてはこの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を備える電子機器の信頼性の向上が図られる。
【0758】
また、上記のような電子部品搭載基板45の被覆に用いられる封止用フィルム100は、絶縁層12と電磁波シールド層13の積層体で構成されるが、電磁波シールド層13は、絶縁層12よりも大きく形成され、その中央部において絶縁層12が積層されるが、端部において、絶縁層12の端部を越えて突出することで形成された突出部15を備えている。
【0759】
そのため、本工程において、電磁波シールド層13の中央部では、絶縁層12を介して、電子部品4が被覆される。したがって、電子部品4への電磁波によるノイズの影響が的確に抑制または防止された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0760】
さらに、電磁波シールド層13の端部では、絶縁層12が介在することなく、導電性を有する突出部15が、基板5の下側に折り込まれることで電極3を直接被覆する。これにより、電極3が突出部15(電磁波シールド層13)に電気的に接続されるため、得られる封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50において、この突出部15を介した電極3と外部との電気的な接続を確保することが可能となる。
【0761】
なお、封止用フィルム100の冷却と、雰囲気の加圧とは、加圧の後に冷却してもよいが、冷却と加圧とをほぼ同時に行うことが好ましい。これにより、凹凸6および電極3の形状に対応して、封止用フィルム100をより優れた密着性をもって被覆させることができる。
【0762】
上記の工程を経ることで、封止用フィルム100により、基板5と電子部品4と電極3とが被覆された封止用フィルム被覆電子部品搭載基板50を得ることができる。
【0763】
以上、本発明の封止用フィルム、電子部品搭載基板の封止方法および封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0764】
例えば、本発明の封止用フィルムには、同様の機能を発揮し得る、任意の層が追加されていてもよい。また、本発明の封止用フィルムの各実施例を適宜組み合わせてもよい。
【0765】
さらに、本発明の電子部品搭載基板の封止方法には、1または2以上の任意の工程が追加されていてもよい。
【実施例】
【0766】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0767】
(実施例1A)
<封止用フィルムの製造>
封止用フィルムを得るために、形成すべき封止用フィルムの各層を構成する樹脂として、それぞれ、以下に示すものを用意した。
【0768】
まず、絶縁層12を構成する樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0769】
また、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0770】
さらに、電磁波シールド層13に含まれる導電性粒子として、銀からなる球状粒子(福田金属箔粉工業製、「Ag−XF301」、50%粒子径4〜7μm)を用意した。
【0771】
次に、絶縁層12を構成する樹脂を用いて押出成形法により絶縁層12を成膜し、また、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を45重量部と導電性粒子を55重量部との溶剤混合物を用いてコンマコーターにより電磁波シールド層13を塗工成膜した。次に、上記絶縁膜12および上記電磁波シールド層13をラミネーターにより貼り合わせることによって、電磁波シールド層13/絶縁層12の順に積層された積層体を形成した。その後、絶縁層12の縁部を、エッチング法を用いて除去した。これにより、
図1に示すような、突出部15を備える電磁波シールド層13と絶縁層12とで構成される積層体からなる実施例1Aの封止用フィルムを得た。
【0772】
なお、得られた実施例1Aの封止用フィルムの各層の平均厚さ(μm)は、それぞれ、電磁波シールド層13/絶縁層12で100/100μmであり、合計厚さは、200μmであった。
【0773】
また、実施例1Aの封止用フィルムの軟化点における伸び率を測定したところ880%であった。
【0774】
さらに、実施例1Aの封止用フィルムにおける、25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率を測定したところ、51ppm/Kであった。
【0775】
<封止用フィルム被覆電子部品搭載基板の製造>
まず、任意の電子部品搭載基板を用意し、その後、スキンパック包装機(ハイパック社製、「HI−750シリーズ」)が備えるチャンバー内において、電子部品搭載基板が有する基板と電子部品とを覆うように得られた実施例1Aの封止用フィルム100を、絶縁層2を電子部品搭載基板45側にして、配置した。
【0776】
次に、封止用フィルムを加熱し軟化させるとともに、チャンバー内を減圧した。なお、封止用フィルムを加熱した温度は125℃であり、チャンバーの圧力は0.4kPaであり、かかる加熱・減圧の条件を1分間保持した。
【0777】
次に、チャンバー内を常温・常圧に戻すことで、封止用フィルムを冷却するとともに、チャンバー内を加圧した。これにより、基板と電子部品とが封止用フィルムで被覆された実施例1Aの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0778】
(実施例2A)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmにしたこと以外は、前記実施例1Aと同様にして実施例2Aの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0779】
(実施例3A)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmにしたこと以外は、前記実施例1Aと同様にして実施例3Aの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0780】
(実施例4A)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を20重量部にし導電性粒子を80重量部にし、さらに、電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmにしたこと以外は、前記実施例1Aと同様にして実施例4Aの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0781】
(実施例5A)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmにしたこと以外は、前記実施例4Aと同様にして実施例5Aの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0782】
(実施例6A)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Aと同様にして実施例6Aの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0783】
(実施例7A)
絶縁層12を構成する樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Aと同様にして実施例7Aの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0784】
(実施例8A)
絶縁層12を構成する樹脂材料として、ポリオレフィン樹脂(「ノーブレンFS2011DG2」、密度0.900g/cm
3、メルトインデックス2.0g/10min(230℃測定)、融点160℃)を用意し、形成する絶縁層12の平均厚さ(μm)を50μmとしたこと以外は前記実施例1Aと同様にして実施例8Aの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0785】
(比較例1A)
比較例1Aとして、市販の二軸延伸PETフィルム(東洋紡社製、銘柄:E5107)を用意した。
【0786】
<評価試験>
各実施例(実施例1A〜8A)および比較例(比較例1A)で作製した封止用フィルムまたは封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、形状追従性、シワの発生の有無、電磁波シールド性および導電性の評価を行った。以下に、これらの評価方法について説明する。
【0787】
<<形状追従性>>
形状追従性は、以下のようにして評価した。
【0788】
すなわち、各実施例および比較例で作製した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、被覆した凹凸における空隙の有無により、以下の評価基準に基づいて判断した。なお、空隙の有無は、顕微鏡を用いて観察した。
【0789】
各符号は以下のとおりであり、AおよびBを合格とし、Cを不合格とした。
A:段差の底部にまで、充填された状態で被覆されている
B:段差の底部において若干の空隙が形成されているものの、ほぼ全体に亘って充填された状態で被覆されている
C:段差の底部において明らかな空隙が形成された状態で被覆されている
【0790】
<<シワの有無>>
シワの有無は、以下のようにして評価した。
【0791】
すなわち、各実施例および比較例で作製した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、被覆した上面におけるシワの有無により、以下の評価基準に基づいて判断した。なお、シワの有無は、マイクロスコープを用いて観察した。
【0792】
各符号は以下のとおりであり、Aを合格とし、Bを不合格とした。
A:封止用フィルムの上面の全体にシワが認められない
B:封止用フィルムの上面の凸部に対応する位置に明らかなシワが認められる
【0793】
<<電磁波シールド性>>
電磁波シールド性は、以下のようにして評価した。
【0794】
すなわち、各実施例および比較例で作製した封止用フィルムについて、KEC法(電界)を用いて、周波数0.001〜1GHzの範囲内における電磁波シールド効果の値を測定し、周波数0.01GHz以上1GHz以下の範囲内における電磁波シールド効果の最小値を求めた。そして、求められた最小値を、以下の評価基準に基づいて判断した。
【0795】
各符号は以下のとおりであり、Aを合格とし、Bを不合格とした。
A:電磁波シールド効果の最小値が20dB以上である
B:電磁波シールド効果の最小値が20dB未満である
【0796】
なお、KEC法は、近傍界で発生する電磁波のシールド効果を電界と磁界に分けて評価する方法であり、この方法を用いた測定は、送信アンテナ(送信用の治具)から送信された電磁波を、シート状をなす封止用フィルムを介して、受信アンテナ(受信用の治具)で受信することで実施することができ、かかるKEC法では、受信アンテナにおいて、封止用フィルムを通過(透過)した電磁波が測定されるすなわち、送信された電磁波(信号)が電磁波シールド層により受信アンテナ側でどれだけ減衰したかが測定される。
【0797】
<<導電性>>
電磁波シールド層における導電性の有無は、以下のようにして評価した。
【0798】
すなわち、各実施例および比較例で作製した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、電磁波シールド層が備える突出部において、電源と接続し、電子部品の駆動の有無により、以下の評価基準に基づいて判断した。
【0799】
各符号は以下のとおりであり、Aを合格とし、Bを不合格とした。
A:電子部品の駆動が認められる
B:電子部品の駆動が認められない
以上の各実施例および比較例の評価試験の結果を表1に示す。
【0800】
【表1】
【0801】
表1から明らかなように、実施例1A〜8Aの封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であることにより、凹部の底部における空隙、さらには封止用フィルムの上面におけるシワの発生を抑制または防止して、電子部品搭載基板に対して被覆することが可能であった。また、電磁波シールド層が備える突出部を介した、外部電源と電極間の導通を確認することができた。
【0802】
これに対して、比較例1Aの封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%未満であり、これに起因して、封止用フィルムによる電子部品搭載基板に対する被覆の際に、凹部の底部における空隙および封止用フィルムの上面におけるシワが明らかに発生する結果となった。
【0803】
(実施例1B)
<封止用フィルムの製造>
封止用フィルムを得るために、形成すべき封止用フィルムの各層を構成する樹脂として、それぞれ、以下に示すものを用意した。
【0804】
まず、絶縁層12および被覆層14を構成する樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0805】
また、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0806】
さらに、電磁波シールド層13に含まれる導電性粒子として、銀からなる球状粒子(福田金属箔粉工業製、「Ag−XF301」、50%粒子径4〜7μm)を用意した。
【0807】
次に、絶縁層12を構成する樹脂を用いて押出成形法により絶縁層12を成膜した。その後、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料45重量部と導電性粒子55重量部との溶剤混合物を用いてコンマコーターにより絶縁層12上に電磁波シールド層13を塗工成膜した。次に、被覆層14を構成する樹脂を用いてコンマコーターにより被覆層14を電磁波シールド層13上に塗工成膜し、上記絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14をラミネーターにより貼り合わせることによって、被覆層14/電磁波シールド層13/絶縁層12の順に積層された積層体を形成した後、絶縁層12の縁部を、エッチング法を用いて除去した。これにより、
図9に示すような、突出部17を備える絶縁層12と電磁波シールド層13と被覆層14とで構成される積層体からなる実施例1Bの封止用フィルムを得た。
【0808】
なお、得られた実施例1Bの封止用フィルムの各層の平均厚さ(μm)は、それぞれ、被覆層14/電磁波シールド層13/絶縁層12で50/100/50μmであり、合計厚さは、200μmであり、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17の長さは、2.0cmであった。
【0809】
また、実施例1Bの封止用フィルムの軟化点における伸び率を測定したところ890%であった。
【0810】
さらに、実施例1Bの封止用フィルムにおける、25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率を測定したところ、53ppm/Kであった。
【0811】
<封止用フィルム被覆電子部品搭載基板の製造>
まず、基板上に電子部品が搭載され、さらに、基板の下面の縁部に電極が形成された任意の電子部品搭載基板を用意し、その後、スキンパック包装機(ハイパック社製、「HI−750シリーズ」)が備えるチャンバー内において、電子部品搭載基板が有する基板と電子部品とを覆うように得られた実施例1Bの封止用フィルム100を、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして配置し、さらに、突出部17を、基板5の下面側に折り込むことで電極3に接触させた。
【0812】
次に、封止用フィルムを加熱し軟化させるとともに、チャンバー内を減圧した。なお、封止用フィルムを加熱した温度は125℃であり、チャンバー内の圧力は0.4kPaであり、かかる加熱・減圧の条件を1分間保持した。
【0813】
次に、チャンバー内を常温・常圧に戻すことで、封止用フィルムを冷却するとともに、チャンバー内を加圧した。これにより、基板と電子部品とが封止用フィルムが備える絶縁層で被覆され、封止用フィルムが備える電磁波シールド層で電極が被覆された実施例1Bの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0814】
(実施例2B)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmとしたこと以外は、前記実施例1Bと同様にして実施例2Bの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0815】
(実施例3B)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmとしたこと以外は、前記実施例1Bと同様にして実施例3Bの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0816】
(実施例4B)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を20重量部とし導電性粒子を80重量部とし、さらに、電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmとしたこと以外は、前記実施例1Bと同様にして実施例4Bの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0817】
(実施例5B)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmとしたこと以外は、前記実施例4Bと同様にして実施例5Bの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0818】
(実施例6B)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Bと同様にして実施例6Bの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0819】
(実施例7B)
絶縁層12および被覆層14を構成する樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Bと同様にして実施例7Bの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0820】
(実施例8B)
絶縁層12および被覆層14を構成する樹脂材料として、ポリオレフィン樹脂(「ノーブレンFS2011DG2」、密度0.900g/cm
3、メルトインデックス2.0g/10min(230℃測定)、融点160℃)を用意し、形成する絶縁層12および被覆層14の平均厚さ(μm)を25μmとしたこと以外は前記実施例1Bと同様にして実施例8Bの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0821】
(参考例1B)
参考例1Bとして、市販の二軸延伸PETフィルム(東洋紡社製、銘柄:E5107)を用意した。
【0822】
<評価試験>
各実施例(1B〜8B)および参考例(参考例1B)で作製した封止用フィルムまたは封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、前述した実施例1A〜8Aに対して行った評価方法を用いて、形状追従性、シワの発生の有無、電磁波シールド性および導電性の評価を行った。
各実施例および参考例の評価試験の結果を表2に示す。
【0823】
【表2】
【0824】
表2から明らかなように、実施例1B〜8Bの封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であることにより、凹部の底部における空隙、さらには封止用フィルムの上面におけるシワの発生を抑制または防止して、電子部品搭載基板に対して被覆することが可能であった。また、電磁波シールド層が備える突出部を介した、外部電源と電極間の導通を確認することができた。
【0825】
これに対して、参考例1Bの封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%未満であり、これに起因して、封止用フィルムによる電子部品搭載基板に対する被覆の際に、凹部の底部における空隙および封止用フィルムの上面におけるシワが明らかに発生する結果となった。
【0826】
(実施例1C)
<封止用フィルムの製造>
封止用フィルムを得るために、形成すべき封止用フィルムの各層を構成する樹脂として、それぞれ、以下に示すものを用意した。
【0827】
まず、絶縁層12を構成する樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0828】
また、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0829】
さらに、電磁波シールド層13に含まれる導電性粒子として、銀からなる球状粒子(福田金属箔粉工業製、「Ag−XF301」、50%粒子径4〜7μm)を用意した。
【0830】
次に、絶縁層12を構成する樹脂を用いて押出成形法により絶縁層12を成膜した。その後、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料45重量部と導電性粒子55重量部との溶剤混合物を用いてコンマコーターにより絶縁層12上に、突出部16が形成されるように、電磁波シールド層13を塗工成膜した。その後、上記絶縁層12および上記電磁波シールド層13をラミネーターにより貼り合わせた。これにより、
図17に示すような、電磁波シールド層13/絶縁層12の順に積層された積層体で構成され、縁部に突出部16を備える実施例1Cの封止用フィルムを得た。
【0831】
なお、得られた実施例1Cの封止用フィルムの各層の平均厚さ(μm)は、それぞれ、電磁波シールド層13/絶縁層12で100/100μmであり、合計厚さは、200μmであり、突出部16の長さは、2.0cmであった。
【0832】
また、実施例1Cの封止用フィルムの軟化点における伸び率を測定したところ880%であった。
【0833】
さらに、実施例1Cの封止用フィルムにおける、25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率を測定したところ、51ppm/Kであった。
【0834】
<封止用フィルム被覆電子部品搭載基板の製造>
まず、基板上に電子部品が搭載された任意の電子部品搭載基板を用意し、その後、スキンパック包装機(ハイパック社製、「HI−750シリーズ」)が備えるチャンバー内において、電子部品搭載基板が有する基板と電子部品とを覆うように得られた実施例1Cの封止用フィルム100を、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして配置し、さらに、突出部16を、基板5の下面側に折り込むことで端部51に接触させた。
【0835】
次に、封止用フィルムを加熱し軟化させるとともに、チャンバー内を減圧した。なお、封止用フィルムを加熱した温度は125℃であり、チャンバー内の圧力は0.4kPaであり、かかる加熱・減圧の条件を1分間保持した。
【0836】
次に、チャンバー内を常温・常圧に戻すことで、封止用フィルムを冷却するとともに、チャンバー内を加圧した。これにより、基板と電子部品とが封止用フィルムが備える絶縁層12で被覆され、折り込まれた突出部16で基板の下面側の端部51が被覆された実施例1Cの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0837】
(実施例2C)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmとしたこと以外は、前記実施例1Cと同様にして実施例2Cの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0838】
(実施例3C)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmとしたこと以外は、前記実施例1Cと同様にして実施例3Cの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0839】
(実施例4C)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を20重量部とし導電性粒子を80重量部とし、さらに、電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmとしたこと以外は、前記実施例1Cと同様にして実施例4Cの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0840】
(実施例5C)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmとしたこと以外は、前記実施例4Cと同様にして実施例5Cの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0841】
(実施例6C)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Cと同様にして実施例6Cの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0842】
(実施例7C)
絶縁層12を構成する樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Cと同様にして実施例7Cの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0843】
(実施例8C)
絶縁層12を構成する樹脂材料として、ポリオレフィン樹脂(「ノーブレンFS2011DG2」、密度0.900g/cm
3、メルトインデックス2.0g/10min(230℃測定)、融点160℃)を用意し、形成する絶縁層12の平均厚さ(μm)を50μmとしたこと以外は前記実施例1Cと同様にして実施例8Cの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0844】
(実施例9C)
封止用フィルムを以下のようにして製造したこと以外は、前記実施例1Cと同様にして、基板と電子部品とが封止用フィルムが備える絶縁層12で被覆され、折り込まれた積層突出部65で基板の下面側の端部51が被覆された実施例9Cの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0845】
<封止用フィルムの製造>
封止用フィルムを得るために、形成すべき封止用フィルムの各層を構成する樹脂として、それぞれ、以下に示すものを用意した。
【0846】
まず、絶縁層12および被覆層14を構成する樹脂材料として、ポリオレフィン樹脂(「ノーブレンFS2011DG2」、密度0.900g/cm
3、メルトインデックス2.0g/10min(230℃測定)、融点160℃)を用意した。
【0847】
また、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0848】
さらに、電磁波シールド層13に含まれる導電性粒子として、銀からなる球状粒子(福田金属箔粉工業製、「Ag−XF301」、50%粒子径4〜7μm)を用意した。
【0849】
次に、絶縁層12を構成する樹脂を用いて押出成形法により絶縁層12を成膜した。その後、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を45重量部と導電性粒子を55重量部との溶剤混合物を用いてコンマコーターにより絶縁層12上に、突出部16が形成されるように、電磁波シールド層13を塗工成膜した。さらに、被覆層14を構成する樹脂を用いてコンマコーターにより電磁波シールド層13上に、突出部15が形成されるように、被覆層14を塗工成膜し、上記絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14をラミネーターにより貼り合わせた。これにより、
図21に示すような、被覆層14/電磁波シールド層13/絶縁層12の順に積層された積層体で構成され、縁部に積層突出部65を備える実施例9Cの封止用フィルムを得た。
【0850】
なお、得られた実施例9Cの封止用フィルムの各層の平均厚さ(μm)は、それぞれ、被覆層14/電磁波シールド層13/絶縁層12で50/100/50μmであり、合計厚さは、200μmであり、積層突出部65の長さは、2.0cmであった。
【0851】
また、実施例9Cの封止用フィルムの軟化点における伸び率を測定したところ3400%であった。
【0852】
さらに、実施例9Cの封止用フィルムにおける、25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率を測定したところ、6ppm/Kであった。
【0853】
(比較例1C)
比較例1Cとして、市販の二軸延伸PETフィルム(東洋紡社製、銘柄:E5107)を用意した。
【0854】
<評価試験>
各実施例(実施例1C〜9C)および比較例(比較例1C)で作製した封止用フィルムまたは封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、前述した実施例1A〜8Aに対して行った評価方法を用いて、形状追従性、シワの発生の有無および電磁波シールド性の評価を行った。また、各実施例および比較例で作製した封止用フィルムまたは封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、端部被覆性を以下の評価方法を用いて評価した。
【0855】
<<端部被覆性>>
端部被覆性(形状追従性)は、以下のようにして評価した。
【0856】
すなわち、各実施例および比較例で作製した封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、積層突出部による基板の下面の端部における被覆での剥離の有無により、以下の評価基準に基づいて判断した。なお、剥離の有無は、顕微鏡を用いて観察した。
【0857】
各符号は以下のとおりであり、Aを合格とし、Bを不合格とした。
A:下面の端部において積層突出部の剥離が認められない
B:下面の端部において積層突出部の剥離が認められる
各実施例および参考例の評価試験の結果を表3に示す。
【0858】
【表3】
【0859】
表3から明らかなように、実施例1C〜9Cの封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であることにより、凹部の底部における空隙、さらには封止用フィルムの上面におけるシワの発生を抑制または防止して、電子部品搭載基板に対して被覆することが可能であった。また、積層突出部を折り込むことで、積層突出部による基板の下面における端部の被覆が可能であった。
【0860】
これに対して、比較例1Cの封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%未満であり、これに起因して、封止用フィルムによる電子部品搭載基板に対する被覆の際に、凹部の底部における空隙、封止用フィルムの上面におけるシワ、さらには、積層突出部と基板下面の端部との間における剥離が明らかに発生する結果となった。
【0861】
(実施例1D)
<封止用フィルムの製造>
封止用フィルムを得るために、形成すべき封止用フィルムの各層を構成する樹脂として、それぞれ、以下に示すものを用意した。
【0862】
まず、絶縁層(最内層)12を構成する樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0863】
また、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0864】
さらに、電磁波シールド層13に含まれる導電性粒子として、銀からなる球状粒子(福田金属箔粉工業製、「Ag−XF301」、50%粒子径4〜7μm)を用意した。
【0865】
次に、絶縁層12を構成する樹脂を用いて押出成形法により絶縁層12を成膜した。その後、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を45重量部と導電性粒子を55重量部との溶剤混合物を用いてコンマコーターにより絶縁層12上に電磁波シールド層13を塗工成膜した。次に、上記絶縁層12および上記電磁波シールド層13をラミネーターにより貼り合わせることによって、絶縁層12/電磁波シールド層13の順に積層された積層体を形成した後、この積層体の端部を切り取ることで逃げ部27を形成し、その後、絶縁層12の縁部を、エッチング法を用いて除去した。これにより、
図41に示すような、突出部17を備える絶縁層12と電磁波シールド層13とで構成され、逃げ部27を有する積層体からなる実施例1Dの封止用フィルムを得た。
【0866】
なお、得られた実施例1Dの封止用フィルムの各層の平均厚さ(μm)は、それぞれ、電磁波シールド層13/絶縁層12で100/100μmであり、合計厚さは、200μmであり、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17の長さは、2.0cmであった。
【0867】
また、実施例1Dの封止用フィルムの軟化点における伸び率を測定したところ880%であった。
【0868】
さらに、実施例1Dの封止用フィルムにおける、25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率を測定したところ、51ppm/Kであった。
【0869】
<封止用フィルム被覆電子部品搭載基板の製造>
まず、基板上の中央部に電子部品が搭載されるとともに、その縁部に接続部材が搭載され、さらに、基板の下面の縁部に電極が形成された任意の電子部品搭載基板を用意し、その後、スキンパック包装機(ハイパック社製、「HI−750シリーズ」)が備えるチャンバー内において、電子部品搭載基板が有する基板と電子部品とを覆い、かつ、接続部材が逃げ部から露出するように形成された実施例1Dの封止用フィルム100を、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして配置し、さらに、突出部17を、基板5の下面側に折り込むことで電極3に接触させた。
【0870】
次に、封止用フィルムを加熱し軟化させるとともに、チャンバー内を減圧した。なお、封止用フィルムを加熱した温度は125℃であり、チャンバーの圧力は0.4kPaであり、かかる加熱・減圧の条件を1分間保持した。
【0871】
次に、チャンバー内を常温・常圧に戻すことで、封止用フィルムを冷却するとともに、チャンバー内を加圧した。これにより、接続部材が逃げ部から露出した状態で、基板と電子部品とが封止用フィルムが備える絶縁層で被覆され、さらに、封止用フィルムが備える電磁波シールド層で電極が被覆された実施例1Dの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0872】
(実施例2D)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmとしたこと以外は、前記実施例1Dと同様にして実施例2Dの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0873】
(実施例3D)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmとしたこと以外は、前記実施例1Dと同様にして実施例3Dの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0874】
(実施例4D)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を20重量部とし導電性粒子を80重量部とし、さらに、電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmとしたこと以外は、前記実施例1Dと同様にして実施例4Dの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0875】
(実施例5D)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmとしたこと以外は、前記実施例4Dと同様にして実施例5Dの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0876】
(実施例6D)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Dと同様にして実施例6Dの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0877】
(実施例7)
絶縁層12を構成する樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Dと同様にして実施例7Dの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0878】
(実施例8)
絶縁層12を構成する樹脂材料として、ポリオレフィン樹脂(「ノーブレンFS2011DG2」、密度0.900g/cm
3、メルトインデックス2.0g/10min(230℃測定)、融点160℃)を用意し、形成する絶縁層12の平均厚さ(μm)を50μmとしたこと以外は前記実施例1Dと同様にして実施例8Dの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0879】
(実施例9D)
封止用フィルムを以下のようにして製造したこと以外は、前記実施例1Dと同様にして、接続部材が逃げ部から露出した状態で、基板と電子部品とが封止用フィルムが備える絶縁層で被覆され、さらに、封止用フィルムが備える電磁波シールド層で電極が被覆された実施例9Dの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0880】
<封止用フィルムの製造>
封止用フィルムを得るために、形成すべき封止用フィルムの各層を構成する樹脂として、それぞれ、以下に示すものを用意した。
【0881】
まず、絶縁層12および被覆層(最外層)14を構成する樹脂材料として、ポリオレフィン樹脂(「ノーブレンFS2011DG2」、密度0.900g/cm
3、メルトインデックス2.0g/10min(230℃測定)、融点160℃)を用意した。
【0882】
また、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0883】
さらに、電磁波シールド層13に含まれる導電性粒子として、銀からなる球状粒子(福田金属箔粉工業製、「Ag−XF301」、50%粒子径4〜7μm)を用意した。
【0884】
次に、絶縁層12を構成する樹脂を用いて押出成形法により絶縁層12を成膜した。その後、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を45重量部と導電性粒子を55重量部との溶剤混合物を用いてコンマコーターにより絶縁層12上に電磁波シールド層13を塗工成膜した。さらに、被覆層14を構成する樹脂を用いてコンマコーターにより被覆層14を電磁波シールド層13上に塗工成膜した。その後、上記絶縁層12、電磁波シールド層13および被覆層14をラミネーターにより貼り合わせることによって、被覆層14/電磁波シールド層13/絶縁層12の順に積層された積層体を形成した後、この積層体の端部を切り取ることで逃げ部27を形成し、その後、絶縁層12の縁部を、エッチング法を用いて除去した。これにより、
図39に示すような、突出部17を備える絶縁層12と電磁波シールド層13と被覆層14とで構成され、逃げ部27を有する積層体からなる実施例9Dの封止用フィルムを得た。
【0885】
なお、得られた実施例9Dの封止用フィルムの各層の平均厚さ(μm)は、それぞれ、絶縁層12/電磁波シールド層13/被覆層14で50/100/50μmであり、合計厚さは、200μmであり、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部17の長さは、2.0cmであった。
【0886】
また、実施例9Dの封止用フィルムの軟化点における伸び率を測定したところ3400%であった。
【0887】
さらに、実施例9Dの封止用フィルムにおける、25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率を測定したところ、6ppm/Kであった。
【0888】
(参考例1D)
参考例1Dとして、市販の二軸延伸PETフィルム(東洋紡社製、銘柄:E5107)を用意した。
【0889】
<評価試験>
各実施例(実施例1D〜9D)および参考例(参考例1D)で作製した封止用フィルムまたは封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、前述した実施例1A〜8Aに対して行った評価方法を用いて、形状追従性、シワの発生の有無、電磁波シールド性および導電性の評価を行った。
各実施例および参考例の評価試験の結果を表4に示す。
【0890】
【表4】
【0891】
表4から明らかなように、実施例1D〜9Dの封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であることにより、凹部の底部における空隙、さらには封止用フィルムの上面におけるシワの発生を抑制または防止して、電子部品搭載基板に対して被覆することが可能であった。また、電磁波シールド層が備える突出部を介した、外部電源と電極間の導通を確認することができた。
【0892】
これに対して、参考例1Dの封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%未満であり、これに起因して、封止用フィルムによる電子部品搭載基板に対する被覆の際に、凹部の底部における空隙および封止用フィルムの上面におけるシワが明らかに発生する結果となった。
【0893】
(実施例1E)
<封止用フィルムの製造>
封止用フィルムを得るために、形成すべき封止用フィルムの各層を構成する樹脂として、それぞれ、以下に示すものを用意した。
【0894】
まず、絶縁層12を構成する樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0895】
また、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、アイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製、「ハイミラン1855」、密度0.940kg/m
3、MFR1.3g/10min(190℃測定)、融点97℃)を用意した。
【0896】
さらに、電磁波シールド層13に含まれる導電性粒子として、銀からなる球状粒子(福田金属箔粉工業製、「Ag−XF301」、50%粒子径4〜7μm)を用意した。
【0897】
次に、絶縁層12を構成する樹脂を用いて押出成形法により絶縁層12を成膜した。また、電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を45重量部と導電性粒子を55重量部との溶剤混合物を用いてコンマコーターにより電磁波シールド層13を塗工成膜した。その後、上記絶縁層12および上記電磁波シールド層13をラミネーターにより貼り合わせることによって、電磁波シールド層13/絶縁層12の順に積層された積層体を形成した。その後、絶縁層12の縁部を、エッチング法を用いて除去した。これにより、
図43に示すような、突出部15を備える電磁波シールド層13と絶縁層12とで構成される積層体からなる実施例1Eの封止用フィルムを得た。
【0898】
なお、得られた実施例1Eの封止用フィルムの各層の平均厚さ(μm)は、それぞれ、電磁波シールド層13/絶縁層12で100/100μmであり、合計厚さは、200μmであり、絶縁層12の端部を越えて突出する突出部15の長さは、2.0cmであった。
【0899】
また、実施例1Eの封止用フィルムの軟化点における伸び率を測定したところ880%であった。
【0900】
さらに、実施例1Eの封止用フィルムにおける、25℃以上80℃以下の温度範囲での線膨張率を測定したところ、51ppm/Kであった。
【0901】
<封止用フィルム被覆電子部品搭載基板の製造>
まず、基板上に電子部品が搭載され、さらに、基板の下面の縁部に電極が形成された任意の電子部品搭載基板を用意し、その後、スキンパック包装機(ハイパック社製、「HI−750シリーズ」)が備えるチャンバー内において、電子部品搭載基板が有する基板と電子部品とを覆うように得られた実施例1Eの封止用フィルム100を、絶縁層12を電子部品搭載基板45側にして配置し、さらに、突出部15を、基板5の下面側に折り込むことで電極3に接触させた。
【0902】
次に、封止用フィルムを加熱し軟化させるとともに、チャンバー内を減圧した。なお、封止用フィルムを加熱した温度は125℃であり、チャンバー内の圧力は0.4kPaであり、かかる加熱・減圧の条件を1分間保持した。
【0903】
次に、チャンバー内を常温・常圧に戻すことで、封止用フィルムを冷却するとともに、チャンバー内を加圧した。これにより、基板と電子部品とが封止用フィルムが備える絶縁層で被覆され、電極が、封止用フィルムが備える電磁波シールド層で被覆された実施例1Eの封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0904】
(実施例2E)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmとしたこと以外は、前記実施例1Eと同様にして実施例2Eの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0905】
(実施例3E)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmとしたこと以外は、前記実施例1Eと同様にして実施例3Eの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0906】
(実施例4E)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料を20重量部とし導電性粒子を80重量部とし、さらに、電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を10μmとしたこと以外は、前記実施例1Eと同様にして実施例4Eの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0907】
(実施例5E)
電磁波シールド層13の平均厚さ(μm)を400μmとしたこと以外は、前記実施例4Eと同様にして実施例5Eの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0908】
(実施例6E)
電磁波シールド層13に含まれる樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Eと同様にして実施例6Eの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0909】
(実施例7E)
絶縁層12を構成する樹脂材料として、接着樹脂(三井化学製、「アドマーNF536」)を用意したこと以外は前記実施例1Eと同様にして実施例7Eの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0910】
(実施例8E)
絶縁層12を構成する樹脂材料として、ポリオレフィン樹脂(「ノーブレンFS2011DG2」、密度0.900g/cm
3、メルトインデックス2.0g/10min(230℃測定)、融点160℃)を用意し、形成する絶縁層12の平均厚さ(μm)を50μmとしたこと以外は前記実施例1Eと同様にして実施例8Eの封止用フィルムおよび封止用フィルム被覆電子部品搭載基板を得た。
【0911】
(参考例1E)
参考例1Eとして、市販の二軸延伸PETフィルム(東洋紡社製、銘柄:E5107)を用意した。
【0912】
<評価試験>
各実施例(実施例1E〜8E)および参考例(参考例1E)で作製した封止用フィルムまたは封止用フィルム被覆電子部品搭載基板について、前述した実施例1A〜8Aに対して行った評価方法を用いて、形状追従性、シワの発生の有無、電磁波シールド性および導電性の評価を行った。
各実施例および参考例の評価試験の結果を表5に示す。
【0913】
【表5】
【0914】
表5から明らかなように、実施例1E〜8Eの封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%以上3500%以下であることにより、凹部の底部における空隙、さらには封止用フィルムの上面におけるシワの発生を抑制または防止して、電子部品搭載基板に対して被覆することが可能であった。また、電磁波シールド層が備える突出部を介した、外部電源と電極間の導通を確認することができた。
【0915】
これに対して、参考例の封止用フィルムでは、軟化点における伸び率が150%未満であり、これに起因して、封止用フィルムによる電子部品搭載基板に対する被覆の際に、凹部の底部における空隙および封止用フィルムの上面におけるシワが明らかに発生する結果となった。