【実施例】
【0028】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、本実施例において、各原料及び素材の配合比率、含有比率、濃度は断りのない限り全て重量部基準である。
【0029】
[調製1]
Rhodiola roseaの根茎乾燥粉末10gに、60%エタノール水溶液990gを加えて、40℃で2時間抽出処理した後、PTFEメンブレンフィルター(0.5μm)を用いて固液分離を行った。固液分離によって得られた液部をエバポレーターを用いて減圧濃縮することで、イワベンケイ属植物抽出物150g(pH4.5、固形分:0.9%)(調製1)を得た。
【0030】
[実施例1]
調製1で得られたイワベンケイ属植物抽出物50gを、20%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6.0に調整した後、タンナーゼ製剤であるタンナーゼ(三菱化学フーズ株式会社製)を0.1g添加して、40℃で2時間酵素処理を行い、さらに90℃で10分間酵素失活処理することで、本発明によるイワベンケイ属植物エキス45g(固形分:1.0%)(実施例1)を得た。
【0031】
[評価試験1]
実施例1で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキス及び調製1で得られたイワベンケイ属植物抽出物を検体として、収斂作用の評価及びチロソール含量の測定を実施した。収斂作用の評価は、0.1%ゼラチン(和光純薬工業株式会社製)水溶液99gに、各エキス1gをそれぞれ添加混合して30℃で1時間静置した後、吸光度(OD660)を、分光光度計(UV−1200:株式会社島津製作所製)を用いて、光路長1cm、波長660nmの条件で測定し、その濁りを判定することで行った。また、各検体について、そのチロソール含量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、下記の条件で測定した。結果を表1に示す。
【0032】
<HPLCの測定条件>
検出器:UV検出器(紫外波長225nm)
カラム:InertSustain C18(内径4.6mm、長さ250mm)
移動相:7容量%アセトニトリル水溶液(0.03容量%ギ酸含有)
流速:1.0ml/分
カラム温度:40℃
標品:チロソール(SIGMA−ALDRICH社製)を70%エタノール水溶液に溶解して標品を調製し、検量線を作成した。
検体:各試料を70%エタノール水溶液で、適宜希釈したもの。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すとおり、タンナーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理した実施例1で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキスを検体とした場合では、収斂作用によって起こるタンパク質の凝集が少なく、濁りの指標となるOD660の値が0.1未満であり、可視的濁りが認められなかった。一方、酵素処理していない調製1で得られたイワベンケイ属植物抽出物を検体とした場合では、濁りの指標となるOD660の値が0.1以上であり、可視的濁りが認められた。よって、実施例1で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキスは、酵素処理していない調製1で得られたイワベンケイ属植物抽出物と比較して、顕著に収斂作用が抑制されていることが分かった。また、実施例1で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキス、調製1で得られたイワベンケイ属植物抽出物の固形物あたりのチロソール含量が同等であった。即ち、実施例1で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキスは、収斂作用が低いことにより、酵素処理していない調製1で得られたイワベンケイ属植物抽出物と比較して、効果的にチロソールを摂取できることが明らかとなった。
【0035】
[調製2]
Rhodiola crenulataの根茎乾燥粉末800gに、70%エタノール水溶液3200gを加えて、50℃で1時間抽出処理した後、ポリプロピレンメンブレンフィルター(30μm)を用いて固液分離を行った。固液分離によって得られた液部をエバポレーターを用いて減圧濃縮することで、イワベンケイ属植物抽出物1400g(pH4.7、固形分:10.2%)(調製2)を得た。
【0036】
[実施例2]
調製2で得られたイワベンケイ属植物抽出物200gを、20%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6.0に調整した後、タンナーゼ製剤であるタンナーゼ(三菱化学フーズ株式会社製)を2g添加して、40℃で19時間酵素処理を行った。次いで、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGA(新日本化学工業株式会社製)を2g添加して、65℃で6時間酵素処理を行った後、90℃で10分間酵素失活処理することで、本発明によるイワベンケイ属植物エキス180g(固形分:11.4%)(実施例2)を得た。
【0037】
[比較例1]
調製2で得られたイワベンケイ属植物抽出物200gに、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGA(新日本化学工業株式会社製)を2g添加して、65℃で6時間酵素処理を行った後、90℃で10分間酵素失活処理することで、β−グルコシダーゼ処理イワベンケイ属植物エキス180g(固形分:10.5%)(比較例1)を得た。
【0038】
[評価試験2]
実施例2で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキス、比較例1で得られたβ−グルコシダーゼ処理イワベンケイ属植物エキス及び調製2で得られたイワベンケイ属植物抽出物を検体として、収斂作用の評価及びチロソール含量の測定を実施した。収斂作用の評価は、0.2%カゼイン(和光純薬工業株式会社製)水溶液98gに、各エキス2gをそれぞれ添加混合して30℃で1時間静置した後、吸光度(OD660)を、分光光度計(UV−1200:株式会社島津製作所製)を用いて、光路長1cm、波長660nmの条件で測定することで行った。また、各検体について、評価試験1と同様にして、チロソール含量を測定した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2に示すとおり、タンナーゼ活性を有する酵素及びβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理した実施例2で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキスを検体とした場合では、収斂作用によって起こるタンパク質の凝集が少なく、濁りの指標となるOD660の値が0.1未満であり、可視的濁りが認められなかった。一方、タンナーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理を行わずβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理のみを行った比較例1で得られたβ−グルコシダーゼ処理イワベンケイ属植物エキス及び酵素処理していない調製2で得られたイワベンケイ属植物抽出物を検体とした場合では、濁りの指標となるOD660の値が0.1以上であり、可視的濁りが認められた。また、実施例2で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキスは、タンナーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理を行わずβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理のみを行った比較例1で得られたβ−グルコシダーゼ処理イワベンケイ属植物エキス及び酵素処理していない調製2で得られたイワベンケイ属植物抽出物と比較して、固形物あたりのチロソール含量が3.5倍以上であったことから、実施例2で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキスは、収斂作用が低く、またチロソール含量が顕著に高いため、効果的にチロソールを摂取できることが明らかとなった。
【0041】
[実施例3]
Rhodiola crenulataの根茎乾燥粉末50gに、15%エタノール水溶液450gを加え(pH4.9)、さらに、タンナーゼ製剤であるタンナーゼ(三菱化学フーズ株式会社製)を1g、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGA(新日本化学工業株式会社製)を1g添加して、50℃で3時間抽出処理を行った。次いで、90℃で10分間酵素失活処理を行った後、95%エタノールを330g加えて混合し、ろ紙(NO.2)を用いて固液分離を行った。固液分離によって得られた液部をエバポレーターを用いて減圧濃縮し、さらにフリーズドライヤーを用いて乾燥・粉末化することで、本発明によるイワベンケイ属植物エキス粉末16g(実施例3)を得た。
【0042】
[比較例2]
Rhodiola crenulataの根茎乾燥粉末50gに、15%エタノール水溶液450gを加え、50℃で3時間抽出処理を行った(pH4.9)後、95%エタノールを330g加えて混合し、ろ紙(NO.2)を用いて固液分離を行った。固液分離によって得られた液部をエバポレーターを用いて減圧濃縮し、さらにフリーズドライヤーを用いて乾燥・粉末化することで、イワベンケイ属植物抽出物粉末15g(比較例2)を得た。
【0043】
[評価試験3]
実施例3で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキス粉末及び比較例2で得られたイワベンケイ属植物抽出物粉末を検体として、収斂味の評価及びチロソール含量の測定を実施した。収斂味の評価は、各検体を水道水で100倍希釈したものについて、パネラー10人による官能評価によって行った。また、各検体について、評価試験1と同様にして、チロソール含量を測定した。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
表3に示すとおり、官能評価において、タンナーゼ活性を有する酵素及びβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理した実施例3で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキス粉末は、酵素処理していない比較例2で得られたイワベンケイ属植物抽出物粉末と比較して、収斂味が穏やかであり、摂取しやすいものであった。また、実施例3で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキス粉末は、比較例2で得られたイワベンケイ属植物抽出物粉末と比較して、チロソール含量が2倍以上であったことから、実施例3で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキスは、収斂作用が低く、またチロソール含量が顕著に高いため、効果的にチロソールを摂取できることが明らかとなった。
【0046】
[実施例4]
Rhodiola crenulataの根茎乾燥粉末10gに、水道水190gを加え(pH4.9)、さらに、タンナーゼ製剤であるタンナーゼ(三菱化学フーズ株式会社製)を0.2g添加して、50℃で3時間抽出処理を行った。次いで、80℃で10分間加熱処理を行った後、ろ紙(NO.2)を用いて固液分離を行い、液部を回収することで、本発明によるイワベンケイ属植物エキス140g(固形分:1.7%)(実施例4)を得た。
【0047】
[実施例5]
Rhodiola crenulataの根茎乾燥粉末10gに、水道水190gを加え(pH4.9)、さらに、タンナーゼ製剤であるタンナーゼ(三菱化学フーズ株式会社製)を0.2g、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGA(新日本化学工業株式会社製)を0.2g添加して、50℃で3時間抽出処理を行った。次いで、80℃で10分間酵素失活処理を行った後、ろ紙(NO.2)を用いて固液分離を行い、液部を回収することで、本発明によるイワベンケイ属植物エキス150g(固形分2.0%)(実施例5)を得た。
【0048】
[比較例3]
Rhodiola crenulataの根茎乾燥粉末10gに、水道水190gを加えて、50℃で3時間抽出処理を行った。次いで、80℃で10分間加熱処理を行った後、ろ紙(NO.2)を用いて固液分離を行い、液部を回収することで、イワベンケイ属植物抽出物140g(pH4.9、固形分1.5%)(比較例3)を得た。
【0049】
[評価試験4]
実施例4及び実施例5で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキス及び比較例3で得られたイワベンケイ属植物抽出物を検体として、メチルメルカプタン消去率及びチロソール含量の測定を実施した。メチルメルカプタン消去率の測定は、30ml容量のバイアル瓶に、200mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で各検体を固形分が0.005%となるように調整した液5ml及び10ppmメチルメルカプタン水溶液150μlを封入し、30℃で30分間攪拌した後、ヘッドスペースガス500μlをガスクロマトグラフィー(GC)を用いてメチルメルカプタンのピーク面積を測定することで行った。また、各検体について、評価試験1と同様にして、チロソール含量を測定した。結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
表4に示すとおり、タンナーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理した実施例4で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキス及びタンナーゼ活性を有する酵素及びβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理した実施例5で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキスは、酵素処理していない比較例3で得られたイワベンケイ属植物抽出物と比較して、およそ1.3倍もメチルメルカプタン消去率が向上しており、本発明による製造方法を用いることで、消臭作用、特にメチルメルカプタンに対する消臭作用を顕著に向上させることが明らかであった。また、中でも、実施例5で得られた本発明によるイワベンケイ属植物エキスは、他の検体と比較して、チロソール含量が2倍以上であった。