(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゲート電極と、チャネル層として用いられる酸化物半導体層と、前記ゲート電極と前記酸化物半導体層との間に配置されるゲート絶縁層と、ソース電極及びドレイン電極とを備える薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記酸化物半導体層は、主成分として酸窒化亜鉛を含み、
前記製造方法は、
第1の領域と、前記第1の領域よりバンドギャップが大きい第2の領域を備える前記酸化物半導体層を形成する第1の工程と、
前記ゲート絶縁層を挟んで前記第1の領域と対向するゲート電極を形成する第2の工程と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極のうち、少なくとも前記ドレイン電極が前記第2の領域に接続されるように前記ソース電極及び前記ドレイン電極を形成する第3の工程と、
前記酸化物半導体層の上方、かつ、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の少なくとも一部の下方に絶縁層を形成する工程とを含む
薄膜トランジスタの製造方法。
前記第1の工程において、前記第1の領域のバンドギャップが1.6eV以下となり、前記第2の領域のバンドギャップが1.6eVより大きくなるように前記酸化物半導体層を形成する
請求項8〜15のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【
図2】
図2は、バンドギャップ及びキャリア移動度と、ZnONの窒素濃度との関係を示すグラフである。
【
図3A】
図3Aは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法におけるゲート電極形成工程の断面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法におけるゲート絶縁層形成工程の断面図である。
【
図3C】
図3Cは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法における酸化物半導体膜形成工程の断面図である。
【
図3D】
図3Dは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法における酸化物半導体膜形成工程の断面図である。
【
図3E】
図3Eは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法における酸化物半導体層形成工程の断面図である。
【
図3F】
図3Fは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法における絶縁層形成工程の断面図である。
【
図3G】
図3Gは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法におけるコンタクトホール形成工程の断面図である。
【
図3H】
図3Hは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法におけるソース電極及びドレイン電極形成工程の断面図である。
【
図3I】
図3Iは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの製造方法における保護層形成工程の断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの酸化物半導体層におけるキャリアパスを示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタのドレイン−ソース間電流とゲート−ソース間電圧との関係を示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタのドレイン−ソース間電流とドレイン−ソース間電圧との関係を示すグラフである。
【
図5C】
図5Cは、実施の形態1に係る薄膜トランジスタの閾値電圧シフトとストレス印加時間との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施の形態2に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【
図7A】
図7Aは、実施の形態2に係る薄膜トランジスタの製造方法における酸化物半導体層形成工程の断面図である。
【
図7B】
図7Bは、実施の形態2に係る薄膜トランジスタの製造方法におけるソース電極及びドレイン電極形成工程の断面図である。
【
図7C】
図7Cは、実施の形態2に係る薄膜トランジスタの製造方法における保護層形成工程の断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る薄膜トランジスタの酸化物半導体層におけるキャリアパスを示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【
図10A】
図10Aは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法における酸化物半導体膜形成工程の断面図である。
【
図10B】
図10Bは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法における窒素ドーピング工程の断面図である。
【
図10C】
図10Cは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法における酸化物半導体層形成工程の断面図である。
【
図10D】
図10Dは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法におけるゲート絶縁膜形成工程の断面図である。
【
図10E】
図10Eは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法におけるゲート電極形成工程の断面図である。
【
図10F】
図10Fは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法におけるゲート絶縁層形成工程の断面図である。
【
図10G】
図10Gは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法における絶縁層形成工程の断面図である。
【
図10H】
図10Hは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法におけるコンタクトホール形成工程の断面図である。
【
図10I】
図10Iは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法におけるソース電極及びドレイン電極形成工程の断面図である。
【
図10J】
図10Jは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法における保護層形成工程の断面図である。
【
図11A】
図11Aは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法における酸化物半導体層の第1の領域形成工程の断面図である。
【
図11B】
図11Bは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法におけるゲート絶縁膜形成工程の断面図である。
【
図11C】
図11Cは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法におけるゲート電極形成工程の断面図である。
【
図11D】
図11Dは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法におけるゲート絶縁層形成工程の断面図である。
【
図11E】
図11Eは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法におけるアニール工程の断面図である。
【
図11F】
図11Fは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法における絶縁層形成工程の断面図である。
【
図11G】
図11Gは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法におけるコンタクトホール形成工程の断面図である。
【
図11H】
図11Hは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法におけるソース電極及びドレイン電極形成工程の断面図である。
【
図11I】
図11Iは、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法における保護層形成工程の断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態3に係る薄膜トランジスタの酸化物半導体層におけるキャリアパスを示す断面図である。
【
図13】
図13は、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【
図14A】
図14Aは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法におけるゲート電極形成工程の断面図である。
【
図14B】
図14Bは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法におけるゲート絶縁層形成工程の断面図である。
【
図14C】
図14Cは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法における酸化物半導体層の第1の領域形成工程の断面図である。
【
図14D】
図14Dは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法における絶縁層形成工程の断面図である。
【
図14E】
図14Eは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法におけるアニール工程の断面図である。
【
図14F】
図14Fは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法におけるソース電極及びドレイン電極形成工程の断面図である。
【
図14G】
図14Gは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第1の製造方法における保護層形成工程の断面図である。
【
図15A】
図15Aは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法におけるゲート絶縁層形成工程の断面図である。
【
図15B】
図15Bは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法における酸化物半導体膜形成工程の断面図である。
【
図15C】
図15Cは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法における窒素ドーピング工程の断面図である。
【
図15D】
図15Dは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法における酸化物半導体層形成工程の断面図である。
【
図15E】
図15Eは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法における絶縁層形成工程の断面図である。
【
図15F】
図15Fは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法におけるソース電極及びドレイン電極形成工程の断面図である。
【
図15G】
図15Gは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第2の製造方法における保護層形成工程の断面図である。
【
図16A】
図16Aは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第3の製造方法における酸化物半導体層の第1の領域形成工程の断面図である。
【
図16B】
図16Bは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第3の製造方法における絶縁膜形成工程の断面図である。
【
図16C】
図16Cは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第3の製造方法における絶縁層形成工程の断面図である。
【
図16D】
図16Dは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第3の製造方法における酸素ドーピング工程の断面図である。
【
図16E】
図16Eは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第3の製造方法におけるソース電極及びドレイン電極形成工程の断面図である。
【
図16F】
図16Fは、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの第3の製造方法における保護層形成工程の断面図である。
【
図17】
図17は、実施の形態4に係る薄膜トランジスタの酸化物半導体層におけるキャリアパスを示す断面図である。
【
図18】
図18は、実施の形態5に係る薄膜トランジスタの断面図である。
【
図19A】
図19Aは、実施の形態5に係る薄膜トランジスタの製造方法におけるゲート絶縁層形成工程の断面図である。
【
図19B】
図19Bは、実施の形態5に係る薄膜トランジスタの製造方法における酸化物半導体層の第2の領域形成工程の断面図である。
【
図19C】
図19Cは、実施の形態5に係る薄膜トランジスタの製造方法における導電膜形成工程の断面図である。
【
図19D】
図19Dは、実施の形態5に係る薄膜トランジスタの製造方法におけるソース電極及びドレイン電極形成工程の断面図である。
【
図19E】
図19Eは、実施の形態5に係る薄膜トランジスタの製造方法における窒素ドーピング工程の断面図である。
【
図19F】
図19Fは、実施の形態5に係る薄膜トランジスタの製造方法における保護層形成工程の断面図である。
【
図20】
図20は、実施の形態5に係る薄膜トランジスタの酸化物半導体層におけるキャリアパスを示す断面図である。
【
図21】
図21は、実施の形態に係る有機EL表示装置の一部切り欠き斜視図である。
【
図22】
図22は、実施の形態に係る有機EL表示装置における画素回路の一例の構成を示す電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程(ステップ)、工程の順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0018】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0019】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0020】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1及びその製造方法について、図面を用いて説明する。
【0021】
[1−1.薄膜トランジスタの構成]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の断面図である。
【0022】
薄膜トランジスタ1は、チャネル層として用いられる酸化物半導体層であって、主成分としてZnONを含む酸化物半導体層を備えた酸化物半導体TFTである。
図1に示すように、薄膜トランジスタ1は、基板10と、ゲート電極20と、ゲート絶縁層30と、酸化物半導体層40と、絶縁層50と、ソース電極60S及びドレイン電極60Dと、保護層70とを備える。本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1は、チャネル保護型でボトムゲート型のTFTであり、また、トップコンタクト構造が採用されている。
【0023】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の各構成要素について詳述する。
【0024】
基板10は、絶縁材料からなる絶縁基板であり、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス又は高耐熱性ガラス等のガラス材料で構成されるガラス基板である。
【0025】
なお、基板10は、ガラス基板に限らず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の樹脂材料からなる樹脂基板等であってもよい。また、基板10は、リジッド基板ではなく、フレキシブルガラス基板又はフレキシブル樹脂基板等のシート状又はフィルム状の可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。フレキシブル樹脂基板としては、例えば、ポリイミドやポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム材料の単層又は積層で構成された基板を用いることができる。なお、基板10の表面にアンダーコート層を形成してもよい。
【0026】
ゲート電極20は、金属等の導電性材料又はその合金等からなる導電膜の単層構造又は多層構造の電極であり、基板10の上方に所定形状で形成される。ゲート電極20の膜厚は、例えば、20nm〜500nmである。
【0027】
ゲート電極20の材料としては、例えば、モリブデン、アルミニウム、銅、タングステン、チタン、マンガン、クロム、タンタル、ニオブ、銀、金、プラチナ、パラジウム、インジウム、ニッケル、ネオジム等の金属、又は、これらの中から選ばれる金属の合金(モリブデンタングステン等)が用いられる。
【0028】
なお、ゲート電極20の材料は、これらに限るものではなく、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等の導電性金属酸化物、又は、ポリチオフェンやポリアセチレン等の導電性高分子材料等を用いることもできる。
【0029】
ゲート絶縁層30は、ゲート電極20と酸化物半導体層40との間に配置される。本実施の形態において、ゲート絶縁層30は、ゲート電極20の上方に位置するように配置される。例えば、ゲート絶縁層30は、ゲート電極20が形成された基板10上の全面にゲート電極20を覆うように成膜される。ゲート絶縁層30の膜厚は、例えば、50nm〜500nmである。
【0030】
ゲート絶縁層30は、電気絶縁性を有する材料から構成され、一例として、シリコン酸化膜、窒化シリコン膜、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル膜又は酸化ハフニウム膜等の単層膜、あるいは、これらの膜を複数積層した積層膜である。
【0031】
酸化物半導体層40は、ゲート電極20の上方において、ゲート絶縁層30上に所定形状で形成される。例えば、酸化物半導体層40は、ゲート絶縁層30上に島状に形成される。本実施の形態において、酸化物半導体層40は、薄膜トランジスタ1のチャネル層である。つまり、酸化物半導体層40は、ゲート絶縁層30を挟んでゲート電極20と対向するチャネル領域を含む半導体層である。また、酸化物半導体層40は、
図1に示すように、第1の領域41と、第1の領域41よりバンドギャップが大きい第2の領域42とを備える。本実施の形態では、第1の領域41は、酸化物半導体層40の厚さ方向において、第2の領域42と異なる位置に設けられる。すなわち、第2の領域42は、第1の領域41の上方に設けられる。第1の領域41及び第2の領域42の膜厚は、例えば、それぞれ、30nm〜300nm及び30nm〜300nmである。
【0032】
酸化物半導体層40の第1の領域41及び第2の領域42は、ともにZnONを主成分として含む層である。第1の領域41及び第2の領域42のバンドギャップは、ZnONの窒素濃度によって調整される。第1の領域41のバンドギャップは特に限定されないが、例えば、一般的なチャネル層材料であるアモルファスシリコンのバンドギャップ(1.6eV)以下となるように調整されてもよい。また、第2の領域42のバンドギャップも特に限定されないが、1.6eVより大きくなるように調整されてもよい。酸化物半導体層40の第1の領域41及び第2の領域42の詳細については後述する。
【0033】
絶縁層50は、酸化物半導体層40上に配置される。具体的には、絶縁層50は、酸化物半導体層40を覆うようにゲート絶縁層30上に成膜される。絶縁層50の膜厚は、例えば、50nm〜500nmである。
【0034】
本実施の形態において、絶縁層50は、酸化物半導体層40のチャネル領域を保護する保護膜(チャネル保護層)として機能する。具体的には、絶縁層50は、酸化物半導体層40の上方に形成するソース電極60S及びドレイン電極60Dをエッチングによってパターニングする際に、酸化物半導体層40がエッチングされることを防止するエッチストッパ層として機能する。これにより、ボトムゲート型TFTにおいて、酸化物半導体層40のバックチャネル側のプロセスダメージを低減することができる。また、本実施の形態において、絶縁層50は、基板10上の全面に形成された層間絶縁層である。
【0035】
絶縁層50は、電気絶縁性を有する材料から構成され、一例として、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜又は酸化アルミニウム膜等の単層膜、あるいは、これらの積層膜である。
【0036】
シリコン酸化膜は、シリコン窒化膜と比べて成膜時における水素の発生が少ない。したがって、絶縁層50としてシリコン酸化膜を用いることによって、水素還元による酸化物半導体層40の性能劣化を抑制できる。さらに、絶縁層50として酸化アルミニウム膜を形成することによって、上層で発生する水素や酸素を酸化アルミニウム膜によってブロックすることができる。これらのことから、絶縁層50としては、例えば、シリコン酸化膜、酸化アルミニウム膜及びシリコン酸化膜の3層構造の積層膜を用いるとよい。
【0037】
なお、絶縁層50の材料としては、上記のような無機物に限るものではなく、有機物を主成分とする材料を用いてもよい。
【0038】
また、絶縁層50には、当該絶縁層50の一部を貫通するように開口部(コンタクトホール)が形成されている。この絶縁層50の開口部を介して、酸化物半導体層40とソース電極60S及びドレイン電極60Dとが接続されている。
【0039】
ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、絶縁層50の上方に少なくとも一部が位置し、かつ、酸化物半導体層40の第2の領域42と接続されるように所定形状で形成される。具体的には、ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、絶縁層50上においては基板10に水平な方向(基板水平方向)に離間して互いに対向して配置されており、かつ、絶縁層50に形成された開口部を介して酸化物半導体層40の第2の領域42に接続されている。絶縁層50上におけるソース電極60S及びドレイン電極60Dの膜厚は、例えば、100nm〜500nmである。
【0040】
ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、導電性材料又はその合金等からなる導電膜の単層構造又は多層構造の電極である。ソース電極60S及びドレイン電極60Dの材料には、例えば、アルミニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、銀、銅、チタン又はクロム等が用いられる。一例として、ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、モリブデンタングステン膜(MoW膜)で形成される単層構造の電極である。
【0041】
保護層70は、ソース電極60S及びドレイン電極60D上に配置される絶縁膜である。具体的には、保護層70は、ソース電極60S及びドレイン電極60Dを覆うように絶縁層50上に成膜される。保護層70の膜厚は、例えば、50nm〜500nmである。
【0042】
保護層70は、電気絶縁性を有する材料から構成され、一例として、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜又は酸化アルミニウム膜等の単層膜、あるいは、これらの積層膜である。
【0043】
[1−2.酸化物半導体層の構成]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の酸化物半導体層の構成について、図面を用いて詳細に説明する。
【0044】
上述のとおり、酸化物半導体層40は、第1の領域41と、第1の領域41よりバンドギャップの大きい第2の領域42を備える。ここで、当該各領域の特性について、
図2を用いて説明する。
図2は、バンドギャップ及びキャリア移動度と、ZnONの窒素濃度との関係を示すグラフである。ここで、ZnONの窒素濃度は、窒素の原子濃度を意味し、ZnONに含まれる窒素の原子数を、亜鉛、酸素及び窒素の原子数の和で除算した値の百分率で定義される。
【0045】
図2に示すように、ZnONにおいて、窒素濃度が大きいほど、キャリア移動度は高く、バンドギャップは小さくなる。本実施の形態では、酸化物半導体層40の形成においてZnONの当該特性を利用して、第1の領域41として、窒素濃度の大きい領域を形成し、第2の領域42として、第1の領域41より窒素濃度の小さい領域を形成する。例えば、第1の領域41のバンドギャップを、薄膜トランジスタにおいて一般的に使用されているアモルファスシリコンのバンドギャップ(1.6eV)以下とするためには、第1の領域41の窒素濃度を20at%以上とすればよい。また、第2の領域42のバンドギャップを1.6eVより大きくするためには、第2の領域42の窒素濃度を20at%より小さくすればよい。
【0046】
[1−3.薄膜トランジスタの製造方法]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の製造方法について、
図3A〜3Iを用いて説明する。
図3A〜3Iは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の製造方法における各工程の断面図である。
【0047】
まず、
図3Aに示すように基板10を準備し、基板10の上方に所定形状のゲート電極20を形成する。例えば、基板10上に金属膜をスパッタ法によって成膜し、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて金属膜を加工することにより、所定形状のゲート電極20を形成する。なお、ゲート電極20を形成する前に、基板10の表面にシリコン酸化膜等のアンダーコート層を形成してもよい。
【0048】
次に、
図3Bに示すように、ゲート電極20上にゲート絶縁層30を形成する。本実施の形態では、ゲート電極20を覆うように基板10上の全面にゲート絶縁層30を成膜する。なお、基板10の表面にアンダーコート層が形成されている場合には、アンダーコート層上にゲート絶縁膜30を成膜する。
【0049】
ゲート絶縁層30は、例えば、シリコン酸化膜である。この場合、シランガス(SiH
4)及び亜酸化窒素ガス(N
2O)を導入ガスに用いて、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってシリコン酸化膜を成膜することができる。なお、亜酸化窒素ガスの希釈ガスとしてアルゴン(Ar)を添加してもよい。これにより効率的にガスが分解され、良質なシリコン酸化膜が形成され、かつ、亜酸化窒素ガスの使用量を抑えることができる。
【0050】
ゲート絶縁層30は、単層膜でもよいが、積層膜としてもよい。例えば、ゲート絶縁層30として、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜とを順に成膜した積層膜を用いることができる。シリコン窒化膜は、例えば、シランガス(SiH
4)、アンモニアガス(NH
3)及び窒素ガス(N
2)を導入ガスに用いて、プラズマCVD法によって成膜することができる。
【0051】
次に、
図3Cに示すように、基板10の上方に酸化物半導体膜41aを成膜する。具体的には、ゲート絶縁層30上に、ZnONを主成分として含む酸化物半導体から構成される酸化物半導体膜41a(ZnON膜)をスパッタリングによって成膜する。
【0052】
より具体的には、スパッタリングターゲットとして、亜鉛(Zn、純度:99.99%以上)を用いて、真空チャンバー内に不活性ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを流入するとともに反応性ガスとして窒素(N
2)、酸素(O
2)を含むガスを流入する。なお、反応性ガスに亜酸化窒素(N
2O)がふくまれてもよい。そして、パワー密度が1〜5W/cm
2となるように、電圧をターゲット材に印加する。これにより、ゲート絶縁層30上にZnON膜からなる酸化物半導体膜41aを成膜することができる。なお、スパッタリングターゲットは、純粋な亜鉛に限られない。例えば、スパッタリングターゲットは、1%以下のアルミニウム(Al)又は錫(Sn)を含む亜鉛でもよい。
【0053】
また、酸化物半導体膜41aの成膜条件としては、反応性ガスとして酸素(O
2)及び窒素(N
2)を用いる場合、酸素と窒素との流量比は、1:100〜3:100にすればよい。この流量比を調整することによって、酸化物半導体膜41a(ZnON膜)の窒素濃度、バンドギャップ等を変更することができ、上記流量比によって、窒素濃度が20at%以上のZnON膜から構成される酸化物半導体膜41aが得られる。また、基板温度は、例えば、室温に設定すればよい。
【0054】
次に、
図3Dに示すように、基板10の上方に酸化物半導体膜42aを成膜する。具体的には、酸化物半導体膜41a上に、ZnONを主成分として含む酸化物半導体から構成される酸化物半導体膜42a(ZnON膜)をスパッタリングによって成膜する。
【0055】
具体的な成膜方法は、成膜条件を除いて上述の酸化物半導体膜41aと同様である。酸化物半導体膜42aの成膜条件としては、反応性ガスとして酸素(O
2)及び窒素(N
2)を用いる場合、酸素と窒素との流量比は、3:100〜10:100にすればよい。この流量比によって、窒素濃度が20at%未満のZnON膜から構成される酸化物半導体膜42aが得られる。
【0056】
次に、
図3Eに示すように、酸化物半導体膜41a及び42aを所定の形状に加工することによって、所定形状の酸化物半導体層40を形成する。
【0057】
例えば、酸化物半導体膜41a及び42aは、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて所定形状の第1の領域41及び第2の領域42から構成される酸化物半導体層40に加工することができる。具体的には、まず、酸化物半導体膜41a及び42a上にレジストを形成して、少なくともゲート電極20に対向する位置にレジストを残すように当該レジストを加工する。そして、レジストが形成されていない領域の酸化物半導体膜41a及び42aをエッチングによって除去する。これにより、ゲート電極20に対向する位置を含むように島状の酸化物半導体層40を形成することができる。
【0058】
なお、ウェットエッチングを行う場合、エッチング液としては、例えば、シュウ酸を用いればよく、エッチング時の温度は40℃でよい。
【0059】
次に、
図3Fに示すように、酸化物半導体層40上に絶縁層50を形成する。本実施の形態では、酸化物半導体層40を覆うようにしてゲート絶縁層30上の全面に絶縁層50を成膜する。
【0060】
絶縁層50は、例えば、シリコン酸化膜である。この場合、シランガス(SiH
4)及び亜酸化窒素ガス(N
2O)を導入ガスに用いて、プラズマCVD法によってシリコン酸化膜を成膜することができる。
【0061】
次に、
図3Gに示すように、酸化物半導体層40の第2の領域42の一部を露出させるように、絶縁層50にコンタクトホールを形成する。具体的には、フォトリソグラフィ法及びエッチング法によって絶縁層50の一部をエッチング除去することによって、第2の領域42のソースコンタクト領域及びドレインコンタクト領域となる領域上にコンタクトホール(開口部)を形成する。
【0062】
例えば、絶縁層50がシリコン酸化膜である場合、反応性イオンエッチング(RIE)法によるドライエッチング法によってシリコン酸化膜にコンタクトホールを形成することができる。この場合、エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)及び酸素ガス(O
2)を用いることができる。
【0063】
次に、
図3Hに示すように、酸化物半導体層40の第2の領域42に接続されたソース電極60S及びドレイン電極60Dを形成する。例えば、絶縁層50に形成したコンタクトホールを埋めるようにして、絶縁層50上に所定形状のソース電極60S及びドレイン電極60Dを形成する。
【0064】
本実施の形態では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dとして、MoW膜の単層構造の電極を形成する。この場合、まず、絶縁層50のコンタクトホールを埋めるようにして絶縁層50上に、MoW膜をスパッタリング法によって成膜する。その後、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法によって、MoW膜をパターニングする。これにより、所定形状のソース電極60S及びドレイン電極60Dを形成することができる。
【0065】
なお、MoW膜のエッチング液としては、例えば、過酸化水素水(H
2O
2)及び有機酸を混合した薬液を用いることができる。
【0066】
次に
図3Iに示すように、ソース電極60S及びドレイン電極60Dの上に保護層70を形成する。本実施の形態では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dを覆うようにして絶縁層50上の全面に保護層70を成膜する。
【0067】
保護層70は、例えば、シリコン酸化膜である。この場合、シランガス(SiH
4)及び亜酸化窒素ガス(N
2O)を導入ガスに用いて、プラズマCVD法によってシリコン酸化膜を成膜することができる。
【0068】
以上のようにして、
図1に示す構成の薄膜トランジスタ1を製造することができる。
【0069】
[1−4.薄膜トランジスタの作用効果]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の作用効果について図面を用いて説明する。
【0070】
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の特性について説明するために、薄膜トランジスタ1のキャリアパスについて、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の酸化物半導体層40におけるキャリアパスを示す断面図である。
図4において、点線によってキャリアパスが示されている。
【0071】
図4に示すように、ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、バンドギャップの大きい第2の領域42に接続される。そのため、ソース電極60S及びドレイン電極60Dと第2の領域42とが接続される部分がキャリアパスの一部を構成する。ここで、ゲート電極20は、ゲート絶縁層30を挟んで第1の領域41と対向する。これにより、第1の領域41にチャネルが形成されるため、キャリアパスは、ソース電極60S及びドレイン電極60D付近を除いて、大部分が第1の領域41内に形成される。
【0072】
したがって、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1では、そのキャリアパスの大部分が、バンドギャップが小さくキャリア移動度の高いい第1の領域41内に形成されるため、大きいオン電流が得られる。一方、薄膜トランジスタ1では、キャリアパスの両端部は、バンドギャップが大きい第2の領域42に形成されるため、ゲート誘起ドレインリーク電流が抑制されることにより、オフ電流が低減される。また、薄膜トランジスタ1の第1の領域41に形成されるキャリアパス内において、キャリアの格子衝突によってキャリア対が生成されても、キャリアパスの両端がバンドギャップの大きい第2の領域42内に形成されているため、キャリア対が雪崩的に生成されることが抑制される。これにより、薄膜トランジスタ1では、バンドギャップの小さいZnONだけによってチャネル層が形成される場合より、飽和特性及び閾値電圧シフトが改善される。
【0073】
以上のように改善された特性を、
図5A、
図5B及び
図5Cを用いて説明する。
図5Aは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1のドレイン−ソース間電流とゲート−ソース間電圧との関係を示すグラフである。
図5Bは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1のドレイン−ソース間電流とドレイン−ソース間電圧との関係を示すグラフである。
図5Cは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の閾値電圧シフトとストレス印加時間との関係を示すグラフである。なお、
図5A、
図5B及び
図5Cにおいて、点線によって、バンドギャップが約1.3eVであるZnONだけによってチャネル層が形成される比較例の薄膜トランジスタの各特性も併せて示している。
【0074】
図5Aに示すように、薄膜トランジスタ1では、比較例より、オフ電流が低減される。また、
図5Bに示すように、薄膜トランジスタ1では、ドレイン−ソース間電圧が高い領域において、ドレイン−ソース間電流が飽和しており、比較例より、飽和特性が改善されている。また、
図5Cに示すように、薄膜トランジスタ1では、比較例より、閾値シフトが低減されている。
【0075】
以上のように、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1によれば、ZnONのバンドギャップが小さいことに起因する問題を軽減することができる。
【0076】
また、薄膜トランジスタ1は、酸化物半導体層40とソース電極60S及びドレイン電極60Dとの間の少なくとも一部に配置された絶縁層50を備える。すなわち、薄膜トランジスタ1は、チャネル保護型の構造を有する。これにより、薄膜トランジスタ1では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dをエッチングなどによって形成(パターニング)する際に、エッチング液に溶けやすいZnONを主成分として含む酸化物半導体層40のプロセスダメージを低減することができる。
【0077】
また、薄膜トランジスタ1では、酸化物半導体層40の第1の領域41は、酸化物半導体層40の厚さ方向において第2の領域42と異なる位置に設けられる。
【0078】
これにより、酸化物半導体層40の第1の領域41及び第2の領域42を、スパッタリング時の条件を調整することなどにより、容易に形成できる。
【0079】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る薄膜トランジスタ2及びその製造方法について、図面を用いて説明する。
【0080】
上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1では、トップコンタクト構造が採用されたが、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2では、サイドコンタクト構造が採用される。
【0081】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2及びその製造方法について、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1及びその製造方法との相違点を中心に説明し、共通する構成及び製造工程については、説明を省略する。
【0082】
[2−1.薄膜トランジスタの構成]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2の構成について、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2の断面図である。
【0083】
薄膜トランジスタ2は、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1と同様に、チャネル層として用いられる酸化物半導体層であって、主成分としてZnONを含む酸化物半導体層を備えた酸化物半導体TFTである。
図6に示すように、薄膜トランジスタ2は、基板10と、ゲート電極20と、ゲート絶縁層30と、酸化物半導体層40と、ソース電極60S及びドレイン電極60Dと、保護層70とを備える。本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2は、チャネルエッチ型でボトムゲート型のTFTであり、また、
図6に示すように、サイドコンタクト構造が採用されている。
【0084】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2の各構成要素について詳述する。なお、特記しない限り、各構成要素を構成する材料等は、上記実施の形態1の各構成要素と同様である。
【0085】
薄膜トランジスタ2の構成要素のうち、基板10、ゲート電極20、ゲート絶縁層30及び酸化物半導体層40(第1の領域41及び第2の領域42)は、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1のそれらと同様である。
【0086】
ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、ゲート絶縁層30の上方に少なくとも一部が位置し、かつ、酸化物半導体層40の主に第2の領域42と接続されるように所定形状で形成される。本実施の形態に係るソース電極60S及びドレイン電極60Dは、上記実施の形態1に係るそれらと同様に、酸化物半導体層40の第2の領域42上において互いに対向して配置されている。ソース電極60S及びドレイン電極60Dの膜厚は、例えば、100nm〜500nmである。
【0087】
保護層70は、ソース電極60S及びドレイン電極60D上に配置される絶縁膜である。具体的には、保護層70は、ソース電極60S及びドレイン電極60Dを覆うように絶縁層50上に成膜される。保護層70の膜厚は、例えば、50nm〜500nmである。
【0088】
[2−2.薄膜トランジスタの製造方法]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2の製造方法について、
図7A〜7Cを用いて説明する。
図7A〜7Cは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2の製造方法における各工程の断面図である。
【0089】
以下、各層の形成方法が、上記実施の形態1と同様であるものについては、詳細な形成方法の説明を省略する。
【0090】
まず、
図7Aに示すように、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1と同様に、基板10の上方に、ゲート電極20及びゲート絶縁層30を形成し、ゲート絶縁層30上に所定形状の酸化物半導体層40(すなわち、第1の領域41及び第2の領域42)を形成する。
【0091】
次に、
図7Bに示すように、酸化物半導体層40の第2の領域42に接続されたソース電極60S及びドレイン電極60Dを形成する。例えば、ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、それぞれ、ゲート絶縁層30の上方に少なくとも一部が位置し、かつ、酸化物半導体層40の主に第2の領域42と接続されるように所定形状で形成される。
【0092】
本実施の形態では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dとして、MoW膜の単層構造の電極を形成する。この場合、まず、酸化物半導体層40を覆うようにゲート絶縁層30に、MoW膜をスパッタリング法によって成膜する。その後、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法によって、MoW膜をパターニングする。これにより、所定形状のソース電極60S及びドレイン電極60Dを形成することができる。
【0093】
なお、MoW膜のエッチング液としては、例えば、過酸化水素水(H
2O
2)及び有機酸を混合した薬液を用いることができる。
【0094】
次に
図7Cに示すように、ソース電極60S及びドレイン電極60Dの上に保護層70を形成する。本実施の形態では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dを覆うようにして、ソース電極60S、ドレイン電極60D及び酸化物半導体層40の第2の領域42上の全面に保護層70を成膜する。
【0095】
以上のようにして、
図6に示す構成の薄膜トランジスタ2を製造することができる。
【0096】
[2−3.薄膜トランジスタの作用効果]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2の作用効果について図面を用いて説明する。
【0097】
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2の特性について説明するために、薄膜トランジスタ2のキャリアパスについて、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2の酸化物半導体層40におけるキャリアパスを示す断面図である。
図8において、点線によってキャリアパスが示されている。
【0098】
図8に示すように、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2でも、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1と同様に、キャリアパスは、ソース電極60S及びドレイン電極60D付近においては第2の領域42内に形成されるが、大部分が第1の領域41内に形成される。
【0099】
これにより、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ2においても、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1と同様に、ZnONのバンドギャップが小さいことに起因する問題を軽減することができる。
【0100】
また、薄膜トランジスタ2では、酸化物半導体層40の第1の領域41は、酸化物半導体層40の厚さ方向において第2の領域42と異なる位置に設けられる。
【0101】
これにより、酸化物半導体層40の第1の領域41及び第2の領域42を、スパッタリング時の条件を調整することなどにより、容易に形成できる。
【0102】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る薄膜トランジスタ3及びその製造方法について、図面を用いて説明する。
【0103】
上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタは、ボトムゲート型のTFTであったが、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3は、トップゲート型のTFTである。
【0104】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3及びその製造方法について、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1及びその製造方法との相違点を中心に説明し、共通する構成及び製造工程については、説明を省略する。
【0105】
[3−1.薄膜トランジスタの構成]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の構成について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の断面図である。
【0106】
薄膜トランジスタ3は、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタと同様に、チャネル層として用いられる酸化物半導体層であって、主成分としてZnONを含む酸化物半導体層を備えた酸化物半導体TFTである。
図9に示すように、薄膜トランジスタ3は、基板10と、ゲート電極20と、ゲート絶縁層30と、酸化物半導体層40(第1の領域41及び第2の領域42)と、絶縁層50と、ソース電極60S及びドレイン電極60Dと、保護層70とを備える。
図9に示すように、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3は、トップゲート型のTFTである。
【0107】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の各構成要素について詳述する。なお、特記しない限り、各構成要素を構成する材料等は、上記実施の形態1の各構成要素と同様である。
【0108】
薄膜トランジスタ3の構成要素のうち、基板10及び保護層70は、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1のそれらと同様である。
【0109】
酸化物半導体層40は、基板10の上方に所定形状で形成される。例えば、酸化物半導体層40は、基板10上に島状に形成される。本実施の形態においても、酸化物半導体層40は、薄膜トランジスタ3のチャネル層である。つまり、酸化物半導体層40は、ゲート絶縁層30を挟んでゲート電極20と対向するチャネル領域を含む半導体層である。また、酸化物半導体層40は、
図9に示すように、第1の領域41と、第1の領域41よりバンドギャップが大きい第2の領域42と、を備える。本実施の形態では、第1の領域41は、酸化物半導体層40のチャネルの長さ方向において、第2の領域42と異なる位置に設けられる。すなわち、第2の領域42は、第1の領域41と水平方向に異なる位置に設けられる。なお、本実施の形態では、第1の領域41及び第2の領域42とは、同一の酸化物半導体層内に形成される。また第1の領域41は、ゲート絶縁層30を挟んでゲート電極20と対向する位置に設けられる。第1の領域41及び第2の領域42の膜厚は、例えば、30nm〜300nmである。
【0110】
ゲート絶縁層30は、ゲート電極20と酸化物半導体層40との間に配置される。本実施の形態において、ゲート絶縁層30は、酸化物半導体層40の上方に位置するように配置される。例えば、ゲート絶縁層30は、酸化物半導体層40の第1の領域41の上方に形成される。ゲート絶縁層30の膜厚は、例えば、50nm〜500nmである。
【0111】
ゲート電極20は、ゲート絶縁層30の上方に所定形状で形成される。ゲート電極20の膜厚は、例えば、20nm〜500nmである。
【0112】
絶縁層50は、ゲート電極20上に配置される。具体的には、絶縁層50は、ゲート電極20を覆うように基板10及び酸化物半導体層40上に成膜される。絶縁層50の膜厚は、例えば、50nm〜500nmである。
【0113】
また、絶縁層50には、当該絶縁層50の一部を貫通するように開口部(コンタクトホール)が形成されている。この絶縁層50の開口部を介して、酸化物半導体層40の第2の領域42とソース電極60S及びドレイン電極60Dとが接続されている。
【0114】
ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、絶縁層50の上方に少なくとも一部が位置し、かつ、酸化物半導体層40の第2の領域42と接続されるように所定形状で形成される。具体的には、ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、絶縁層50上においては基板10に水平な方向(基板水平方向)に離間して互いに対向して配置されており、かつ、絶縁層50に形成された開口部を介して酸化物半導体層40の第2の領域42に接続されている。絶縁層50上におけるソース電極60S及びドレイン電極60Dの膜厚は、例えば、100nm〜500nmである。
【0115】
[3−2.薄膜トランジスタの製造方法]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の三通りの製造方法について図面を用いて説明する。上記三通りの製造方法は、酸化物半導体層40の窒素濃度分布の形成において、それぞれ異なる方法を用いる。
【0116】
以下、各製造方法について説明するが、各層の形成方法が、上記実施の形態1と同様であるものについては、詳細な形成方法の説明を省略する。
【0117】
[3−2−1.第1の製造方法]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の第1の製造方法について、
図10A〜10Jを用いて説明する。
図10A〜10Jは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の第1の製造方法における各工程の断面図である。
【0118】
まず、
図10Aに示すように、基板10の上方に、酸化物半導体膜42aを成膜する。
【0119】
次に、
図10Bに示すように、酸化物半導体膜42a上にレジスト80を形成し、窒素ドーピングを行う。ここで、レジスト80は、酸化物半導体膜42aの上方の一部を覆うように所定形状で形成される。そして、窒素ドーピングを行うことにより、酸化物半導体膜42aのうち、レジスト80で覆われていない部分に窒素がドーピングされる。これにより、当該レジスト80で覆われていない部分の酸化物半導体膜42aの窒素濃度が増大し、酸化物半導体膜42aより窒素濃度の大きい酸化物半導体膜41aが形成される。なお、窒素ドーピングとしては、例えば、窒素プラズマドーピング、窒素イオンドーピングなどを用いることができる。
【0120】
次に、
図10Cに示すように、レジスト80を除去したのち、酸化物半導体膜41a及び42aをそれぞれ所定の形状に加工することによって、第1の領域41及び第2の領域42を形成する。第1の領域41及び第2の領域42が酸化物半導体層40を構成する。酸化物半導体膜41a及び42aの加工方法は、上記実施の形態1のそれと同様である。
【0121】
次に、
図10Dに示すように、酸化物半導体層40上にゲート絶縁膜30aを形成する。本実施の形態では、酸化物半導体層40を覆うように基板10上の全面にゲート絶縁膜30aを成膜する。
【0122】
次に、
図10Eに示すように、ゲート絶縁膜30aの上方に所定形状のゲート電極20を形成する。ゲート電極20は、例えば、酸化物半導体層40の第1の領域41に、ゲート絶縁膜30aを挟んで対向する位置に、第1の領域41に対応する形状となるように形成される。
【0123】
次に、
図10Fに示すように、ゲート絶縁膜30aのゲート電極20に覆われていない部分を除去し、ゲート絶縁層30を形成する。具体的には、フォトリソグラフィ法及びエッチング法によってゲート絶縁膜30aのうちゲート電極20に覆われていない部分をエッチング除去することによって、ゲート絶縁層30を形成する。
【0124】
例えば、ゲート絶縁膜30aがシリコン酸化膜である場合、反応性イオンエッチング(RIE)法によるドライエッチング法によって、シリコン酸化膜のうちゲート電極20に覆われていない部分を除去することができる。この場合、エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)及び酸素ガス(O
2)を用いることができる。
【0125】
次に、
図10Gに示すように、基板10の上方に、絶縁層50を形成する。本実施の形態では、ゲート電極20及び酸化物半導体層40を覆うようにして、基板10上の全面に絶縁層50を成膜する。
【0126】
次に、
図10Hに示すように、酸化物半導体層40の第2の領域42の一部を露出させるように、絶縁層50にコンタクトホールを形成する。具体的には、フォトリソグラフィ法及びエッチング法によって絶縁層50の一部をエッチング除去することによって、第2の領域42のソースコンタクト領域及びドレインコンタクト領域となる領域上にコンタクトホール(開口部)を形成する。
【0127】
次に、
図10Iに示すように、酸化物半導体層40の第2の領域42に接続されたソース電極60S及びドレイン電極60Dを形成する。例えば、絶縁層50に形成したコンタクトホールを埋めるようにして、絶縁層50上に所定形状のソース電極60S及びドレイン電極60Dを形成する。
【0128】
次に、
図10Jに示すように、ソース電極60S及びドレイン電極60Dの上に保護層70を形成する。本実施の形態では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dを覆うようにして絶縁層50上の全面に保護層70を成膜する。
【0129】
以上のようにして、
図9に示す構成の薄膜トランジスタ3を製造することができる。
【0130】
[3−2−2.第2の製造方法]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の第2の製造方法について、
図11A〜1Iを用いて説明する。
図11A〜11Iは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の第2の製造方法における各工程の断面図である。
【0131】
まず、
図11Aに示すように、基板10の上方に、所定形状の酸化物半導体層の第1の領域41を形成する。例えば、基板10上に上記実施の形態1の酸化物半導体膜41aと同様の酸化物半導体膜を成膜し、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて加工することにより、所定形状の酸化物半導体層の第1の領域41を形成する。
【0132】
次に、
図11Bに示すように、第1の領域41上にゲート絶縁膜30aを形成する。本実施の形態では、第1の領域41を覆うように基板10上の全面にゲート絶縁膜30aを成膜する。
【0133】
ゲート絶縁膜30aの形成方法は、上記実施の形態1に係るゲート絶縁層30のそれと同様である。
【0134】
次に、
図11Cに示すように、ゲート絶縁膜30aの上方に所定形状のゲート電極20を形成する。ゲート電極20は、第1の領域41に、ゲート絶縁膜30aを挟んで対向する位置に形成される。
【0135】
次に、
図11Dに示すように、上記第1の製造方法と同様に、ゲート絶縁膜30aのゲート電極20に覆われていない部分を除去し、ゲート絶縁層30を形成する。
【0136】
次に、
図11Eに示すように、以上で形成した素子を酸素雰囲気下でアニールし、第1の領域41のうち、ゲート電極20で覆われていない部分の窒素原子を第1の領域41から放出させる。これにより、第1の領域41のうち、ゲート電極20で覆われていない部分は、窒素濃度が減少する。そして、第1の領域41のうち、窒素濃度が減少した領域が、第2の領域42となる。アニールにおける温度などの条件は、第1の領域41及び第2の領域42の窒素濃度などに基づいて適宜設定される。
【0137】
以下、
図11F〜11Iに示すように、上記第1の製造方法と同様に、絶縁層50、ソース電極60S、ドレイン電極60D及び保護層70が形成される。
【0138】
以上のようにして、
図9に示す構成の薄膜トランジスタ3を製造することができる。
【0139】
[3−2−3.第3の製造方法]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の第3の製造方法について説明する。
【0140】
薄膜トランジスタ3の第3の製造方法は、第2の領域42の形成工程において第2の製造方法と相違し、その他の工程は同一であるため、第2の領域42の形成工程について説明する。
【0141】
薄膜トランジスタ3の第3の製造方法においては、
図11Dに示すような素子の上方から酸素ドーピングを行うことにより、第1の領域41のゲート電極に覆われていない部分の酸素濃度を増大させる。これにより、第1の領域41のゲート電極に覆われていない部分の窒素濃度は減少する。そして、第1の領域41のうち、窒素濃度が減少した領域が、第2の領域42となる。なお、酸素ドーピングとしては、例えば、酸素プラズマドーピング、酸素イオンドーピングなどを用いることができる。
【0142】
その他の層を上述の薄膜トランジスタ3の第2の製造方法と同様に形成することにより、
図9に示す構成の薄膜トランジスタ3を製造することができる。
【0143】
[3−3.薄膜トランジスタの作用効果]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の作用効果について図面を用いて説明する。
【0144】
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ1の特性について説明するために、薄膜トランジスタ1のキャリアパスについて、
図12を用いて説明する。
図12は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3の酸化物半導体層40におけるキャリアパスを示す断面図である。
図12において、点線によってキャリアパスが示されている。
【0145】
図12に示すように、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3でも、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタと同様に、キャリアパスは、ソース電極60S及びドレイン電極60D付近においては第2の領域42内に形成されるが、大部分が第1の領域41内に形成される。
【0146】
これにより、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ3においても、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタと同様に、ZnONのバンドギャップが小さいことに起因する問題を軽減することができる。
【0147】
また、薄膜トランジスタ3は、酸化物半導体層40とソース電極60S及びドレイン電極60Dとの間の少なくとも一部に配置された絶縁層50を備える。すなわち、薄膜トランジスタ3は、チャネル保護型の構造を有する。これにより、薄膜トランジスタ3では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dをエッチングなどによって形成(パターニング)する際に、エッチング液に溶けやすいZnONを主成分として含む酸化物半導体層40のプロセスダメージを低減することができる。
【0148】
また、薄膜トランジスタ3では、酸化物半導体層40の第1の領域41は、チャネルの長さ方向において第2の領域42と異なる位置に設けられる。すなわち、第1の領域41と第2の領域42とが、同一層内に設けられる。これにより、薄膜トランジスタ3は、酸化物半導体層40を薄く形成することができる。
【0149】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る薄膜トランジスタ4及びその製造方法について、図面を用いて説明する。
【0150】
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4では、チャネル保護型でボトムゲート型のTFTである。また、薄膜トランジスタ4は、サイドコンタクト構造が採用されており、酸化物半導体層のバンドギャップがチャネルの長さ方向に分布を有する。
【0151】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4及びその製造方法について、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1及びその製造方法との相違点を中心に説明し、共通する構成及び製造工程については、説明を省略する。
【0152】
[4−1.薄膜トランジスタの構成]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の構成について、
図13を用いて説明する。
図13は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の断面図である。
【0153】
薄膜トランジスタ4は、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1と同様に、チャネル層として用いられる酸化物半導体層であって、主成分としてZnONを含む酸化物半導体層を備えた酸化物半導体TFTである。
図13に示すように、薄膜トランジスタ4は、基板10と、ゲート電極20と、ゲート絶縁層30と、酸化物半導体層40と、絶縁層50と、ソース電極60S及びドレイン電極60Dと、保護層70とを備える。本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4は、チャネル保護型でボトムゲート型のTFTであり、また、
図13に示すように、サイドコンタクト構造が採用されている。
【0154】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の各構成要素について詳述する。なお、特記しない限り、各構成要素を構成する材料等は、上記実施の形態1の各構成要素と同様である。
【0155】
薄膜トランジスタ4の構成要素のうち、基板10、ゲート電極20及びゲート絶縁層30は、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1のそれらと同様である。
【0156】
酸化物半導体層40は、ゲート絶縁層30の上方に所定形状で形成される。例えば、酸化物半導体層40は、ゲート絶縁層30に島状に形成される。本実施の形態においても、酸化物半導体層40は、薄膜トランジスタ4のチャネル層である。つまり、酸化物半導体層40は、ゲート絶縁層30を挟んでゲート電極20と対向するチャネル領域を含む半導体層である。また、酸化物半導体層40は、
図13に示すように、第1の領域41と、第1の領域41よりバンドギャップが大きい第2の領域42と、を備える。本実施の形態では、第1の領域41は、酸化物半導体層40のチャネルの長さ方向において、第2の領域42と異なる位置に設けられる。すなわち、第2の領域42は、第1の領域41と水平方向に異なる位置に設けられる。なお、本実施の形態では、第1の領域41及び第2の領域42とは、同一の酸化物半導体層内に形成される。また第1の領域41は、ゲート絶縁層30を挟んでゲート電極20と対向する位置に設けられる。第1の領域41及び第2の領域42の膜厚は、例えば、30nm〜300nmである。
【0157】
絶縁層50は、酸化物半導体層40上に配置される。具体的には、絶縁層50は、酸化物半導体層40上に島状に形成される。絶縁層50の膜厚は、例えば、50nm〜500nmである。
【0158】
ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、ゲート絶縁層30の上方に少なくとも一部が位置し、かつ、酸化物半導体層40の主に第2の領域42と接続されるように所定形状で形成される。本実施の形態に係るソース電極60S及びドレイン電極60Dは、上記実施の形態1に係るそれらと同様に、酸化物半導体層40の第2の領域42上において互いに対向して配置されている。ソース電極60S及びドレイン電極60Dの膜厚は、例えば、100nm〜500nmである。
【0159】
保護層70は、ソース電極60S及びドレイン電極60D上に配置される絶縁膜である。具体的には、保護層70は、絶縁層50、ソース電極60S及びドレイン電極60Dを覆うようにゲート絶縁層30上に成膜される。保護層70の膜厚は、例えば、50nm〜500nmである。
【0160】
[4−2.薄膜トランジスタの製造方法]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の三通りの製造方法について図面を用いて説明する。上記三通りの製造方法は、酸化物半導体層40の窒素濃度分布の形成において、それぞれ異なる方法を用いる。
【0161】
以下、各製造方法について説明するが、各層の形成方法が、上記実施の形態1と同様であるものについては、詳細な形成方法の説明を省略する。
【0162】
[4−2−1.第1の製造方法]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の第1の製造方法について、
図14A〜14Gを用いて説明する。
図14A〜14Gは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の第1の製造方法における各工程の断面図である。
【0163】
まず、
図14Aに示すように基板10を準備し、基板10の上方に所定形状のゲート電極20を形成する。
【0164】
次に、
図14Bに示すように、ゲート電極20上にゲート絶縁層30を形成する。本実施の形態では、ゲート電極20を覆うように基板10上の全面にゲート絶縁層30を成膜する。
【0165】
次に、
図14Cに示すように、ゲート絶縁層30及びゲート電極20の上方に、所定形状の酸化物半導体層の第1の領域41を形成する。例えば、ゲート絶縁層30上に上記実施の形態1の酸化物半導体膜41aと同様の酸化物半導体膜を成膜し、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて加工することにより、所定形状の酸化物半導体層の第1の領域41を形成する。
【0166】
次に、
図14Dに示すように、酸化物半導体層の第1の領域41上に所定形状の絶縁層50を形成する。例えば、第1の領域41上に上記実施の形態1の絶縁層50と同様の絶縁膜を成膜し、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて加工することにより、所定形状の絶縁層50を形成する。
【0167】
次に、
図14Eに示すように、以上で形成した素子を酸素雰囲気下でアニールし、第1の領域41のうち、絶縁層50で覆われていない部分の窒素原子を第1の領域41から放出させる。これにより、第1の領域41のうち、絶縁層50で覆われていない部分は、窒素濃度が減少する。そして、第1の領域41のうち、窒素濃度が減少した領域が、第2の領域42となる。アニールにおける温度などの条件は、第1の領域41及び第2の領域42の窒素濃度などに基づいて適宜設定される。
【0168】
次に、
図14Fに示すように、酸化物半導体層40の第2の領域42に接続されたソース電極60S及びドレイン電極60Dを形成する。
【0169】
次に、
図14Gに示すように、絶縁層50、ソース電極60S及びドレイン電極60Dの上に保護層70を形成する。本実施の形態では、絶縁層50、ソース電極60S及びドレイン電極60Dを覆うようにして、絶縁層50、ソース電極60S及びドレイン電極60D上の全面に保護層70を成膜する。
【0170】
以上のようにして、
図13に示す構成の薄膜トランジスタ4を製造することができる。
【0171】
[4−2−2.第2の製造方法]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の第2の製造方法について、
図15A〜15Gを用いて説明する。
図15A〜15Gは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の第2の製造方法における各工程の断面図である。
【0172】
まず、
図15Aに示すように、上記第1の製造方法と同様に、基板10の上方に、ゲート電極20及びゲート絶縁層30を形成する。
【0173】
次に、
図15Bに示すように、ゲート絶縁層30の上方に、酸化物半導体膜42aを成膜する。酸化物半導体膜42aは、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1の酸化物半導体膜42aと同様に成膜される。
【0174】
次に、
図15Cに示すように、酸化物半導体膜42aにレジスト80を形成し、窒素ドーピングを行う。ここで、レジスト80は、酸化物半導体膜42aの上方の一部を覆うように所定形状で形成される。そして、窒素ドーピングを行うことにより、酸化物半導体膜42aのうち、レジスト80で覆われていない部分に窒素がドーピングされる。これにより、当該レジスト80で覆われていない部分の酸化物半導体膜42aの窒素濃度が増大し、酸化物半導体膜42aより窒素濃度の大きい酸化物半導体膜41aが形成される。なお、窒素ドーピングとしては、例えば、窒素プラズマドーピング、窒素イオンドーピングなどを用いることができる。
【0175】
次に、
図15Dに示すように、レジスト80を除去したのち、酸化物半導体膜41a及び42aをそれぞれ所定の形状に加工することによって、第1の領域41及び第2の領域42を形成する。第1の領域41及び第2の領域42が酸化物半導体層40を構成する。
【0176】
次に、
図15Eに示すように、上記第1の製造方法と同様に、酸化物半導体層40の第1の領域41上に所定形状の絶縁層50を形成する。
【0177】
次に、
図15F及び
図15Gに示すように、上記第1の製造方法と同様に、ソース電極60S及びドレイン電極60D、並びに、保護層70を形成する。
【0178】
以上のようにして、
図13に示す構成の薄膜トランジスタ4を製造することができる。
【0179】
[4−2−3.第3の製造方法]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の第3の製造方法について、
図16A〜16Fを用いて説明する。
図16A〜16Fは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の第3の製造方法における各工程の断面図である。
【0180】
まず、
図16Aに示すように、上記第1の製造方法と同様に、基板10の上方にゲート電極20、ゲート絶縁層30、及び、酸化物半導体層の第1の領域41を形成する。
【0181】
次に、
図16Bに示すように、酸化物半導体層の第1の領域41上に絶縁膜50aを成膜する。本実施の形態では、第1の領域41を覆うようにゲート絶縁層30上の全面に絶縁膜50aを成膜する。
【0182】
次に、
図16Cに示すように、絶縁膜50a上の、酸化物半導体層の第1の領域41の上方の領域にレジスト80を形成する。本実施の形態では、レジスト80を第1の領域41の上方に島状に設ける。そして、ウェットエッチング法などを用いて、絶縁膜50aのうち、レジスト80で覆われていない部分を除去して、絶縁層50を形成する。
【0183】
次に、
図16Dに示すように、以上で形成した素子の上方から酸素ドーピングを行うことにより、酸化物半導体層の第1の領域41のレジスト80で覆われていない部分の酸素濃度を増大させる。これにより、第1の領域41のゲート電極20に覆われていない部分の窒素濃度は減少する。そして、第1の領域41のうち、窒素濃度が減少した領域が、第2の領域42となる。なお、酸素ドーピングとしては、例えば、酸素プラズマドーピング、酸素イオンドーピングなどを用いることができる。
【0184】
次に、
図16E及び
図16Fに示すように、上記第1及び第2の製造方法と同様に、ソース電極60S及びドレイン電極60D、並びに、保護層70を形成する。
【0185】
以上のようにして、
図13に示す構成の薄膜トランジスタ4を製造することができる。
【0186】
[4−3.薄膜トランジスタの作用効果]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の作用効果について図面を用いて説明する。
【0187】
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の特性について説明するために、薄膜トランジスタ4のキャリアパスについて、
図17を用いて説明する。
図17は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4の酸化物半導体層40におけるキャリアパスを示す断面図である。
図17において、点線によってキャリアパスが示されている。
【0188】
図17に示すように、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4でも、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタと同様に、キャリアパスは、ソース電極60S及びドレイン電極60D付近においては第2の領域42内に形成されるが、大部分が第1の領域41内に形成される。
【0189】
これにより、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ4においても、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタと同様に、ZnONのバンドギャップが小さいことに起因する問題を軽減することができる。
【0190】
また、薄膜トランジスタ4は、酸化物半導体層40とソース電極60S及びドレイン電極60Dとの間の少なくとも一部に配置された絶縁層50を備える。すなわち、薄膜トランジスタ4は、チャネル保護型の構造を有する。これにより、薄膜トランジスタ4では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dをエッチングなどによって形成(パターニング)する際に、エッチング液に溶けやすいZnONを主成分として含む酸化物半導体層40のプロセスダメージを低減することができる。
【0191】
また、薄膜トランジスタ4では、酸化物半導体層40の第1の領域41は、チャネルの長さ方向において第2の領域42と異なる位置に設けられる。すなわち、第1の領域41と第2の領域42とが、同一層内に設けられる。これにより、薄膜トランジスタ4は、酸化物半導体層40を薄く形成することができる。
【0192】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5に係る薄膜トランジスタ5及びその製造方法について、図面を用いて説明する。
【0193】
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5では、チャネルエッチ型でボトムゲート型のTFTである。また、薄膜トランジスタ5は、サイドコンタクト構造が採用されており、酸化物半導体層のバンドギャップがチャネルの長さ方向に分布を有する。
【0194】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5及びその製造方法について、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1及びその製造方法との相違点を中心に説明し、共通する構成及び製造工程については、説明を省略する。
【0195】
[5−1.薄膜トランジスタの構成]
まず、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5の構成について、
図18を用いて説明する。
図18は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5の断面図である。
【0196】
薄膜トランジスタ5は、上記実施の形態1に係る薄膜トランジスタ1と同様に、チャネル層として用いられる酸化物半導体層であって、主成分としてZnONを含む酸化物半導体層を備えた酸化物半導体TFTである。
図18に示すように、薄膜トランジスタ5は、基板10と、ゲート電極20と、ゲート絶縁層30と、酸化物半導体層40と、ソース電極60S及びドレイン電極60Dと、保護層70とを備える。本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5は、チャネルエッチ型でボトムゲート型のTFTである。また、
図18に示すように、薄膜トランジスタ5は、サイドコンタクト構造が採用されており、酸化物半導体層のバンドギャップがチャネルの長さ方向に分布を有する。
【0197】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5の各構成要素について詳述する。なお、特記しない限り、各構成要素を構成する材料等は、上記実施の形態1の各構成要素と同様である。
【0198】
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5の構成要素のうち、基板10、ゲート電極20、ゲート絶縁層30及び酸化物半導体層40(第1の領域41及び第2の領域42)は、上記実施の形態4に係る薄膜トランジスタ4のそれらと同様である。
【0199】
ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、ゲート絶縁層30の上方に少なくとも一部が位置し、かつ、酸化物半導体層40の主に第2の領域42と接続されるように所定形状で形成される。本実施の形態に係るソース電極60S及びドレイン電極60Dは、上記実施の形態1に係るそれらと同様に、酸化物半導体層40の第2の領域42上において互いに対向して配置されている。ソース電極60S及びドレイン電極60Dの膜厚は、例えば、100nm〜500nmである。
【0200】
保護層70は、ソース電極60S及びドレイン電極60D上に配置される絶縁膜である。具体的には、保護層70は、絶縁層50、ソース電極60S及びドレイン電極60Dを覆うようにゲート絶縁層30上に成膜される。保護層70の膜厚は、例えば、50nm〜500nmである。
【0201】
[5−2.薄膜トランジスタの製造方法]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5の製造方法について
図19A〜19Fを用いて説明する。
図19A〜19Fは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5の製造方法における各工程の断面図である。
【0202】
以下、各製造方法について説明するが、各層の形成方法が、上記実施の形態1と同様であるものについては、詳細な形成方法の説明を省略する。
【0203】
まず、
図19Aに示すように、上記実施の形態1と同様に、基板10の上方に、ゲート電極20及びゲート絶縁層30を形成する。
【0204】
次に、
図19Bに示すように、ゲート絶縁層30及びゲート電極20の上方に、所定形状の酸化物半導体層の第2の領域42を形成する。例えば、ゲート絶縁層30上に上記実施の形態1の酸化物半導体膜42aと同様の酸化物半導体膜を成膜し、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて加工することにより、所定形状の酸化物半導体層の第2の領域42を形成する。
【0205】
次に、
図19Cに示すように、酸化物半導体層の第2の領域42上に導電膜60aを成膜する。本実施の形態では、第2の領域42を覆うように、ゲート絶縁層30上の全面に導電膜60aを成膜する。導電膜60aは、後に続く工程によって、ソース電極及びドレイン電極となる膜であり、上記各実施の形態に係るソース電極60S及びドレイン電極60Dと同様に、MoW膜の単層構造から構成される。
【0206】
次に、
図19Dに示すように、導電膜60a上に所定形状のレジスト80を形成する。そして、導電膜60aのうち、酸化物半導体層の第2の領域42の上方の領域の一部を、ウェットエッチング法などを用いて除去することにより、ソース電極60S及びドレイン電極60Dを形成する。
【0207】
次に、
図19Eに示すように、以上で形成した素子の上方から窒素ドーピングを行うことにより、酸化物半導体層の第2の領域42のレジスト80で覆われていない部分の窒素濃度を増大させる。これにより、第2の領域42のうち、窒素濃度が増大した領域が、第1の領域41となる。なお、窒素ドーピングとしては、例えば、窒素プラズマドーピング、窒素イオンドーピングなどを用いることができる。
【0208】
次に、
図19Fに示すように、レジスト80を除去し、ソース電極60S、ドレイン電極60D及び酸化物半導体層40の上に保護層70を形成する。
【0209】
以上のようにして、
図18に示す構成の薄膜トランジスタ5を製造することができる。
【0210】
[5−3.薄膜トランジスタの作用効果]
次に、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5の作用効果について図面を用いて説明する。
【0211】
本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5の特性について説明するために、薄膜トランジスタ5のキャリアパスについて、
図20を用いて説明する。
図20は、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5の酸化物半導体層40におけるキャリアパスを示す断面図である。
図20において、点線によってキャリアパスが示されている。
【0212】
図20に示すように、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5でも、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタと同様に、キャリアパスは、ソース電極60S及びドレイン電極60D付近においては第2の領域42内に形成されるが、大部分が第1の領域41内に形成される。
【0213】
これにより、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ5においても、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタと同様に、ZnONのバンドギャップが小さいことに起因する問題を軽減することができる。
【0214】
また、薄膜トランジスタ5では、酸化物半導体層40の第1の領域41は、チャネルの長さ方向において第2の領域42と異なる位置に設けられる。すなわち、第1の領域41と第2の領域42とが、同一層内に設けられる。これにより、薄膜トランジスタ5は、酸化物半導体層40を薄く形成することができる。
【0215】
(表示装置)
次に、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタを表示装置に適用した例について、
図21を用いて説明する。なお、本実施の形態では、有機EL表示装置への適用例について説明する。
【0216】
図21は、実施の形態に係る有機EL表示装置の一部切り欠き斜視図である。上述の薄膜トランジスタは、有機EL表示装置におけるアクティブマトリクス基板のスイッチング素子又は駆動素子として用いることができる。
【0217】
図21に示すように、有機EL表示装置100は、複数個の薄膜トランジスタが配置されたTFT基板(TFTアレイ基板)110と、下部電極(反射電極)である陽極131、EL層(発光層)132及び上部電極(透明電極)である陰極133からなる有機EL素子(発光部)130との積層構造により構成される。
【0218】
本実施の形態に係るTFT基板110には、上記各実施の形態に係る薄膜トランジスタを用いている。TFT基板110には複数の画素120がマトリクス状に配置されており、各画素120には画素回路が設けられている。
【0219】
有機EL素子130は、複数の画素120のそれぞれに対応して形成されており、各画素120に設けられた画素回路によって各有機EL素子130の発光の制御が行われる。有機EL素子130は、複数の薄膜トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層(平坦化膜)上に形成される。
【0220】
また、有機EL素子130は、陽極131と陰極133との間にEL層132が配置された構成となっている。陽極131とEL層132との間にはさらに正孔輸送層が積層形成され、EL層132と陰極133との間にはさらに電子輸送層が積層形成されている。なお、陽極131と陰極133との間には、その他の機能層が設けられていてもよい。EL層132をはじめ陽極131と陰極133との間に形成される機能層は、有機材料によって構成された有機層である。
【0221】
各画素120は、それぞれの画素回路によって駆動制御される。また、TFT基板110には、画素120の行方向に沿って配置される複数のゲート配線(走査線)140と、ゲート配線140と交差するように画素120の列方向に沿って配置される複数のソース配線(信号配線)150と、ソース配線150と平行に配置される複数の電源配線(
図21では省略)とが形成されている。各画素120は、例えば直交するゲート配線140とソース配線150とによって区画されている。
【0222】
ゲート配線140は、各画素回路に含まれるスイッチング素子として動作する第1薄膜トランジスタのゲート電極と行毎に接続されている。ソース配線150は、第1薄膜トランジスタのソース電極と列毎に接続されている。電源配線は、各画素回路に含まれる駆動素子として動作する第2薄膜トランジスタのドレイン電極と列毎に接続されている。
【0223】
ここで、画素120における画素回路の一例について、
図22を用いて説明する。
図22は、実施の形態に係る有機EL表示装置における画素回路の一例の構成を示す電気回路図である。なお、画素回路は、
図22に示す構成に限定されるものではない。
【0224】
図22に示すように、画素回路は、スイッチング素子として動作する第1薄膜トランジスタSwTrと、駆動素子として動作する第2薄膜トランジスタDrTrと、対応する画素120に表示するためのデータを記憶するキャパシタCとで構成される。本実施の形態において、第1薄膜トランジスタSwTrは、画素120を選択するためのスイッチングトランジスタであり、第2薄膜トランジスタDrTrは、有機EL素子130を駆動するための駆動トランジスタである。
【0225】
第1薄膜トランジスタSwTrは、ゲート配線140に接続されるゲート電極G1と、ソース配線150に接続されるソース電極S1と、キャパシタC及び第2薄膜トランジスタDrTrのゲート電極G2に接続されるドレイン電極D1と、酸化物半導体層(図示せず)とを備える。第1薄膜トランジスタSwTrは、接続されたゲート配線140及びソース配線150に所定の電圧が印加されると、当該ソース配線150に印加された電圧がデータ電圧としてキャパシタCに保存される。
【0226】
第2薄膜トランジスタDrTrは、第1薄膜トランジスタSwTrのドレイン電極D1及びキャパシタCに接続されるゲート電極G2と、電源配線160及びキャパシタCに接続されるドレイン電極D2と、有機EL素子130の陽極131に接続されるソース電極S2と、酸化物半導体層(図示せず)とを備える。第2薄膜トランジスタDrTrは、キャパシタCが保持しているデータ電圧に対応する電流を電源配線160からソース電極S2を通じて有機EL素子130の陽極131に供給する。これにより、有機EL素子130では、陽極131から陰極133へと駆動電流が流れてEL層132が発光する。
【0227】
なお、上記構成の有機EL表示装置100では、ゲート配線140とソース配線150との交点に位置する画素120毎に表示制御を行うアクティブマトリクス方式が採用されている。これにより、各画素120における第1薄膜トランジスタSwTr及び第2薄膜トランジスタDrTrによって、対応する有機EL素子130が選択的に発光し、所望の画像が表示される。
【0228】
以上、本実施の形態に係るTFT基板110には、上記実施の形態に係る薄膜トランジスタ1が用いられているので、表示性能に優れた有機EL表示装置を実現できる。
【0229】
(その他変形例等)
以上、薄膜トランジスタ及びその製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【0230】
例えば、上記各実施の形態では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dが、酸化物半導体層40の第2の領域42と直接的に接続される構成を示したが、ソース電極60S及びドレイン電極60Dと、第2の領域42との接続は、直接的でも間接的でもよい。例えば、ソース電極60S及びドレイン電極60Dと第2の領域42とは、コンタクト層などの導電性の層を介して、電気的に接続されてもよい。
【0231】
また、上記各実施の形態では、ソース電極60S及びドレイン電極60Dは、ともに、酸化物半導体層40の第2の領域42と接続されたが、少なくともドレイン電極60Dが接続される構成であればよい。
【0232】
また、上記各実施の形態では、酸化物半導体層40は、第1の領域41及び第2の領域42の二つの領域を備えたが、第1の領域41と第2の領域42との間に、さらに、ZnONを主成分として含む酸化物半導体から構成される領域を備えてもよい。また、酸化物半導体層40は、第1の領域41と第2の領域42との間において、バンドギャップが徐々に変化する構成を備えてもよい。
【0233】
また、上記実施の形態に係る薄膜トランジスタは、有機EL表示装置に適用する例について説明したが、上記実施の形態及び変形例における薄膜トランジスタは、液晶表示装置等の他の表示装置にも適用することもできる。
【0234】
この場合、有機EL表示装置(有機ELパネル)や液晶表示装置等の表示装置は、フラットパネルディスプレイとして利用することができる。例えば、有機EL表示装置は、テレビジョンセット、パーソナルコンピュータ又は携帯電話等、あらゆる電子機器の表示パネルとして利用することができる。
【0235】
その他、各実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。