(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の考察および添付の図面は、少なくとも1つのニット構成要素を含むアッパーを有する履物製品を開示する。ウォーキングまたはランニングに適した全体的構成を有する履物製品を開示する。アッパーを含む、履物に関連する概念は、たとえば、ベースボールシューズ、バスケットボールシューズ、クロストレーニングシューズ、サイクリングシューズ、フットボールシューズ、サッカーシューズ、スプリントシューズ、テニスシューズ、およびハイキングブーツを含め、多様な他の運動用履物の種類にも適用することができる。この概念は、ドレスシューズ、ローファー、サンダルおよび作業靴を含め、一般に非運動用と考えられる履物の種類にも適用することができる。したがって、本明細書で開示される概念は、多様な履物の種類に適用することができる。
【0013】
履物の構成
図1から
図3は、単純に履物100とも呼ぶ、履物製品100の例示的実施形態を示す。いくつかの実施形態では、履物製品100は、一般にソール構造110とアッパー120とを含んでもよい。
【0014】
参考のために、履物100は大略的に長手軸Xに沿って、足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103の3つの領域に分割してもよい。足先領域101は、大略的に、つま先、および中足骨と指骨とを接続する関節に対応する履物100の部分を含んでいる。中足領域102は、大略的に、足のアーチ区域に対応する履物100の部分を含んでいる。かかと領域103は、大略的に、踵骨を含む足の後部に対応している。履物100は外側側部104および内側側部105も含んでおり、足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103のそれぞれを通って延びており、履物100の対向する両側に対応する。より具体的には、外側側部104は足の外側区域に対応し(つまり、反対の足から遠ざかる方を向く面)、内側側部105は足の内側区域に対応する(つまり、反対の足の方を向く面)。足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103、ならびに外側側部104、内側側部105は履物100の厳密な区域を区切ることを意図していない。むしろ、足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103、ならびに外側側部104、内側側部105は、以下の説明における一助となるように、履物100の大略的な区域を表すことを目的としている。履物100にくわえて、足先領域101、中足領域102、およびかかと領域103、ならびに外側側部104、内側側部105は、独立して、ソール構造110、アッパー120およびそれらの個々の要素を指すこともできる。
【0015】
ソール構造110はアッパー120に固定することができ、履物100を履いたときに足と地面との間に延びることができる。いくつかの実施形態では、ソール構造110は一般にミッドソール111とアウトソール112とを含むことができる。
【0016】
ミッドソール111はアッパー120の下面に固定することができ、歩いているとき、走っているとき、または他の歩行活動中に足と地面との間で圧縮されると、地面の反力を弱める(つまり、クッション材となる)圧縮可能なポリマー発泡体要素(たとえば、ポリウレタンまたはエチルビニルアセテート発泡体)から形成してもよい。追加の実施形態では、ミッドソール111は、さらに力を弱め、安定性を高め、または足の動きに影響を与えるプレート、モデレータ、流体充填チャンバ、ラスティング要素、またはモーションコントロール部材を組み込んでもよい。ミッドソール111は主に流体充填チャンバから形成することもできる。
【0017】
アウトソール112はミッドソール111の下面に固定することができる。アウトソール112は牽引力を付与するように凹凸を付けた耐摩耗性のゴム材料から形成することもできる。
【0018】
いくつかの実施形態では、ソール構造110は中敷き113をさらに含むことができる。
図3に中敷き113が一部示されている。中敷き113はアッパー120内に配置することができ、足の下面の下に延びて履物100の快適性を高めるように位置付けることができる。
【0019】
ソール構造110のこの構成はアッパー120と接続して使用してもよいソール構造110の一実施例を提供しているが、ソール構造110のさまざまな他の従来の構成または従来にない構成も利用してもよい。したがって、その他の実施形態では、ソール構造110またはアッパー120とともに利用される任意のソール構造の特徴は変わってもよい。
【0020】
ここで、アッパー120を一般的に説明する。アッパー120は、ソール構造110に対して足を収容し固定するための空洞117を履物100内に画定する。空洞117は足を収容するような形状にされており、足の外側側部に沿い、足の内側側部に沿い、足およびつま先の上、かかとの周り、さらに足の下に延びている。
【0021】
アッパー120は、開口部121を画定する上縁部132とともにカラー130を画定することができる。開口部121は着用者の足のための空洞117へのアクセスを提供することができ、少なくともかかと領域103に配置することができる。
【0022】
カラー130の前方にベロ140を含むことができ、ベロ140は長手方向に足先領域101に向かって、外側側部104と内側側部105との間に延びることができる。図示する実施形態に示すように、ベロ140は足先領域101、外側側部104および内側側部105に一体的に装着することができる。その他の実施形態では、ベロ140は外側側部104および内側側部105から切り離すことができる。このように、ベロ140は、外側側部104と内側側部105との間のアッパー120の開放したスロート区域内に可動に収容することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、着用者の足にアッパー120を選択的に固定するために使用されるクロージャ要素122も含むことができる。クロージャ要素122は、図示する実施形態に示すような締めひもなど、任意の適した種類とすることができる。その他の実施形態では、クロージャ要素122は着用者の足にアッパー120を固定するために1つ以上の留め金、ストラップまたは他の適した用具も含んでもよい。
【0024】
例示的な一実施形態では、クロージャ要素122は着用者の足にアッパー120を固定するのを助けるため、伸張性ストランド141と相互作用するように構成されていてもよい。図示する実施形態では、アッパー120は、ソール構造110からアッパー120に沿って上方に延びてから、引き返して下方に延びて、クロージャ要素122を収容する開口143を提供する輪状端部を形成する複数の伸張性ストランド141を含む。アッパー120とともに使用するのに適した伸張性ストランド141は、2008年12月18日に出願され、2010年6月24日に特許文献1として公開された、「Article of Footwear Having An Upper Incorporating A Knitted Component」と題する、発明者Duaらの共同所有米国特許出願第12/338,726号、および2011年3月15日に出願され、2012年9月20日に特許文献2として公開された、「Article Of Footwear Incorporating A Knitted Component」と題する、発明者Huffaらの米国特許出願第13/048,514号のうちの1つ以上に開示される伸張性ストランドおよび/または伸張性要素を含んでもよく、これら出願はともに参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0025】
この実施形態では、ストランド141によって提供される開口143はX軸に沿って、外側側部104と内側側部105との間で離間している。したがって、クロージャ要素122はX軸に沿って延びて、外側側部104と内側側部105とを行き来する。クロージャ要素122に張力を加えることにより、着用者はアッパー120の寸法を調整してさまざまな大きさの足を収容できる。より具体的には、クロージャ要素122は着用者が足の周りにアッパー120を締め付けることができるようにし、クロージャ要素122は開口部121を通して空洞117からの足の出し入れを容易にするために、着用者がアッパー120を緩めることができるようにする。
【0026】
いくつかの構成では、アッパー120は着用者の足の下に少なくとも部分的に延びることもできる。たとえば、
図4ではソール構造110が取り除かれており、図示するようにアッパー120は外周に沿って下縁部160に装着されているストロベル125を含むことができる。ストロベル125は図示する実施形態に示すような縫製162により、留め具、接着剤または別の装着具により装着することができる。したがって、ストロベル125は着用者の足の下に延びる。前述したように、ソール構造110は中敷き113とミッドソール111とを含むことができる。これらの実施形態では、中敷き113は空洞117内でストロベル125の上面の上に重ねることができ、ミッドソール111はストロベル125の下面に接合することができる。
【0027】
別の構成では、アッパー120は追加の要素を含んでもよい。たとえば、アッパー120は足先領域101に、耐摩耗性材料から形成されているつま先ガードを含むことができる。アッパー120はさらに、ロゴ、商標、記号、ならびに注意書きおよび材料情報を記載した札を含むことができる。アッパー120は本開示の範囲を逸脱することなくさらに別の要素を含むことができることは、当業者には認識されるであろう。
【0028】
従来の履物のアッパーの多くは、たとえば縫製または接着により互いに接合されている複数の材料要素(たとえば、ポリマー発泡体、ポリマーシート、革、合成皮革)から形成されている。しかし、本明細書で述べるさまざまな実施形態では、アッパー120は少なくとも部分的にニット構成要素130から形成することができる。ニット構成要素130は足先領域101、中足領域102、および/またはかかと領域103に少なくとも部分的に延びることができる。ニット構成要素130は外側側部104、内側側部105に沿い、足先領域101の上、および/またはかかと領域103の周りに延びることもできる。くわえて、ニット構成要素130はアッパー120の外面119および反対側の内面115を少なくとも部分的に画定することができる。内面115はアッパー120内の空洞117の少なくとも一部を画定することができ、外面119は内面115と反対方向に向くことができる。
【0029】
これから説明するように、ニット構成要素130は従来の他のアッパーと比べて、軽量化したアッパー120を提供することができる。さらに、いくつかの実施形態では、ニット構成要素130は異なる特性を有する異なるゾーンを設けて構成することができる。たとえば、1つ以上の所定のゾーンは他のゾーンよりも高い耐伸縮性を有することができる。また、ニット構成要素130はアッパー120に美的に美しい特徴および質感を与えることができる。さらに、ニット構成要素130は履物100の製造において利点を提供することができる。ニット構成要素130による他の利点を以下詳細に探っていく。
【0030】
ニット構成要素の構成
いくつかの実施形態では、ニット構成要素130はそれぞれ一体ニット構造を有するように独立して形成される複数のニットサブ構成要素を含むことができる。これらの一体ニット構造のニット構成要素は、いったん形成されると、互いに接合してアッパー120の少なくとも一部を画定することができる。
【0031】
たとえば、図示する実施形態に示すように、ニット構成要素130は第1ニット構成要素または前方ニット構成要素150と、第2ニット構成要素またはかかとニット構成要素152とを含むことができ、これらを互いに接合して協働でニット構成要素130を画定する。一実施形態では、
図4に図示するように、前方ニット構成要素150、かかとニット構成要素152およびストロベル125を互いに接合して、協働でアッパー120を画定することができる。
【0032】
明確にするために、例示的な実施形態による
図6では、前方ニット構成要素150およびかかとニット構成要素152を分離して、実質的に平らに置いている状態を示している。図示するように、前方ニット構成要素150は一体ニット構造で形成されており、かかとニット構成要素152も一体ニット構造で形成されている。
【0033】
本明細書で使用する「一体ニット構造」という用語は、それぞれの構成要素が編みプロセスによってワンピース要素として形成されることを意味する。すなわち、編みプロセスは、大幅な追加の製造ステップまたはプロセスを必要とすることなく、一体ニット構造のさまざまな特徴および構造を実質的に形成する。一体ニット構造を使用して、ヤーンの1つ以上のコースを含む構造もしくは要素を有するニット構成要素、または、構造もしくは要素が少なくとも1つの共通のコースを含むように(すなわち、共通のヤーンを共有する)、および/もしくは構造もしくは要素のそれぞれの間で実質的に連続しているコースを含むように接合されている他のニット材料を形成してもよい。この構成により、一体ニット構造のワンピース要素が提供される。
【0034】
図6に図示するように、前方ニット構成要素150は内側部202、外側部204および前方部200を含むことができる。前方ニット構成要素150の境界は、第1のU字形周縁部208、より小さな第2のU字形周縁部209、縁部208と縁部209との間に横方向に延びている第1後縁部210、および縁部208と縁部209との間に横方向に延びている第2後縁部212によって画定することができる。
【0035】
さらに、かかとニット構成要素152は上周縁部220、下周縁部222、上周縁部220と下周縁部222との間に横方向に延びている第1側縁部224、および上周縁部220と下周縁部222との間に横方向に延びている第2側縁部226を含むことができる。いくつかの実施形態では、縁部224,226は、縁部224,226が上周縁部220から下周縁部222まで延びているため、少なくとも部分的に互いから遠ざかるように角度を成していてもよい。
【0036】
前方ニット構成要素150はかかとニット構成要素152に連結して、
図1〜
図4に図示するアッパー120を画定することができる。たとえば、前方ニット構成要素150の第1後縁部210はかかとニット構成要素152の第1側縁部224に連結して、アッパー120の第1の縫い目
164を画定することができる。また、前方ニット構成要素150の第2後縁部212はかかとニット構成要素152の第2側縁部226に連結して、アッパー120の第2の縫い目
166を画定することができる。
【0037】
前方ニット構成要素150は、縫い目
164および縫い目
166に沿って任意の適したやり方でかかとニット構成要素152に連結することができる。たとえば、ニット構成要素150,152は縫製、接着剤、留め具、または任意の他の適した装着機構によって縫い目
164および縫い目
166で連結することができる。
【0038】
アッパー120に組み付けられると、前方ニット構成要素150の内側部202はアッパー120の内側側部105の大半を画定することができる。また、前方部200はアッパー120の足先領域101の大半を画定することができる。さらに、外側部204はアッパー120の外側側部104の大半を画定することができる。かかとニット構成要素152はアッパー120のかかと領域103の大半を画定することができる。また、
図1〜
図3に図示するように、第2周縁部209および上周縁部220は協働して、アッパー120の上縁部132を画定することができる。さらに、
図4に図示するように、第1周縁部208および下周縁部222は協働して、アッパー120の下縁部160を画定することができる。また、
図2、
図3および
図4に図示するように、第1の縫い目
164がアッパー120の内側側部105で上縁部132から下縁部160まで延びることができる。さらに、
図1、
図3および
図4に図示するように、第2の縫い目
166がアッパー120の外側側部104で上縁部132から下縁部160まで延びることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、前方ニット構成要素150は1つ以上の異なる物理特性を有する複数のゾーンを含んでもよい。図示する実施形態では、これらのゾーンの境界を破線で示している。たとえば、
図3および
図6にもっとも明確に示されるように、前方ニット構成要素150は第1ゾーン214、第2ゾーン216および第3ゾーン218を含むことができる。図示する実施形態に示されるように、第3ゾーン218はU字形で、第2周縁部209に隣接して内側部202と外側部204との実質的に中央に置くことができる。したがって、第3ゾーン218の内部境界163は、
図6の平面図に図示するように、第2周縁部209と実質的に同心になるように、第2周縁部209からほぼ均一な距離離間して配置することができる。また、第2ゾーン216は第3ゾーン218から前方長手方向に前方部200に向かって延びることができ、第2ゾーン216は前方部200と内側部202との間に延びている内側枝部219を含むことができる。第1ゾーン214の第1の部分221は、第3ゾーン218、第1後縁部210、周縁部208および第2ゾーン216の間に延びている。第1ゾーン214の第2の部分223は、第3ゾーン218、第2後縁部212、周縁部208および第2ゾーン216の間に延びている。
【0040】
第1ゾーン214、第2ゾーン216および第3ゾーン218は、1つ以上の異なる物理特性を有することができる。たとえば、第1ゾーン214は第2ゾーン216よりも大きい程度または大きい量の耐伸縮性を有することができ、第2ゾーン216は第3ゾーン218よりも大きい程度または大きい量の耐伸縮性を有することができる。言い換えると、第1ゾーン214は第2ゾーン216よりも剛くすることができ、第2ゾーン216は第3ゾーン218よりも剛くすることができる。したがって、第3ゾーン218は着用者の足をアッパー120のカラー123に通過させるように容易に伸縮することができるのに対し、第1ゾーン214は第1ゾーン214が着用者の足を支持するようにより耐伸縮性にすることができる。また、第2ゾーン216はアッパー120を着用者の足に快適に適合させるのに十分に伸縮可能にすることができる。
【0041】
同様に、いくつかの実施形態では、かかとニット構成要素152は1つ以上の異なる物理特性を有する複数のゾーンを含むことができる。図示する実施形態では、これらのゾーンの境界を破線で示している。たとえば、
図6でもっとも明確に示されるように、かかとニット構成要素152は第1ゾーン228、第2ゾーン230および第3ゾーン232を含むことができる。
【0042】
例示的な一実施形態では、異なるゾーン228,230,232のうちの1つ以上をかかとニット構成要素152の異なる部分に関連付けてもよい。かかとニット構成要素152の異なる部分に物理特性の異なるゾーンを設けることにより、かかとニット構成要素がアッパー120に提供する履き具合、快適性および/または支持を所望のとおりに変えてもよい。
【0043】
一実施形態において、第3ゾーン232は、カラー132に関連付けられているニット構成要素152の周縁部に沿って、アッパー120の開口部121に隣接して設けてもよい。
図6では第3ゾーン232の内部境界161は破線で示しており、第3ゾーン232を第1ゾーン228から部分的に区切り、第3ゾーン232を第2ゾーン230から部分的に区切る。
図6に図示するように、第3ゾーン232は実質的に一定の幅を有することができ、上周縁部220に沿って延びることができる。したがって、第3ゾーン232の内部境界161は、
図6の平面図に図示するように上周縁部220と実質的に同心になるように、上周縁部220からほぼ均一な距離離間して配置することができる。
【0044】
例示的な一実施形態では、第2ゾーン230は、着用者の足のかかとおよび/またはアキレス腱に対応するニット構成要素152の部分に沿った位置に設けてもよい。この実施形態では、第2ゾーン230は横方向に沿ってニット構成要素152のほぼ中央に配置してもよい。さまざまな物理特性を付与する構成で第2ゾーン230を提供することにより、着用者の足のかかとおよび/またはアキレス腱に対応するニット構成要素152の部分は所望の履き具合、快適性および/または支持を有してもよい。
【0045】
さまざまな実施形態において、第2ゾーン230は任意の適した形状を有してもよい。一実施形態では、第2ゾーン230は実質的に対称形の幾何学形状を有してもよい。たとえば、この実施形態では、第2ゾーン230は多角形にすることができる。
図6に図示するように、第2ゾーン230は、端同士を突き合わせて並べ、第3ゾーン232から下周縁部222に向かって延びている逆三角形部231および菱形部233を含むことができる。第2ゾーン230も、アッパー120のX軸に対して実質的に対称で、中心に置くことができる。また、第1ゾーン228は第3ゾーン232、第1側縁部224、下周縁部222、第2側縁部226および第2ゾーン230の間に延びることができる。
【0046】
第1ゾーン228、第2ゾーン230および第3ゾーン232は1つ以上の異なる物理特性を有することができる。たとえば、第1ゾーン228は第2ゾーン230よりも大きい程度または大きい量の耐伸縮性を有することができ、第2ゾーン230は第3ゾーン232よりも大きい程度または大きい量の耐伸縮性を有することができる。言い換えると、第1ゾーン228は第2ゾーン230よりも剛くすることができ、第2ゾーン230は第3ゾーン232よりも剛くすることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、かかとニット構成要素152の第1ゾーン228は、前方ニット構成要素150の第1ゾーン214と同様な物理特性を有することができる。また、かかとニット構成要素152の第2ゾーン230は、前方ニット構成要素150の第2ゾーン216と同様な物理特性を有することができる。さらに、かかとニット構成要素152の第3ゾーン232は、前方ニット構成要素150の第3ゾーン218と同様な物理特性を有することができる。したがって、たとえば、第1ゾーン228,214は実質的に同じ耐伸縮性または剛性を有することができ、第2ゾーン230,216は実質的に同じ耐伸縮性または剛性を有することができ、第3ゾーン232,218は実質的に同じ耐伸縮性または剛性を有することができる。
【0048】
各ゾーン214,216,218,228,230,232の一様ではない耐伸縮性は、さまざまな方法で達成することができる。たとえば、ある場合には、各ゾーン214,216,218,228,230,232は異なるステッチパターンを有することができる。さらに、各ゾーン214,216,218,228,230,232は異なる種類のヤーンまたはストランドを含んでもよい。より具体的には、一実施形態において、第3ゾーン218,232は畝模様の外観を呈するようにハーフゲージニットを使用して形成することができ、第3ゾーン218,232はスパンデックスなどの1本以上の弾性ヤーンを少なくとも部分的に使用して形成することができる。第2ゾーン216,230はフルゲージニットを使用して形成することができ、スパンデックスなどの1本以上の弾性ヤーンを使用して形成することができる。追加の実施形態では、第2ゾーン216,230は通気性を高めるために、メッシュタイプの外観を有することができる。また、第1ゾーン214,228はフルゲージニットを使用して形成することができ、熱可塑性高分子材料から作られるヤーンを含むことができる。これらのヤーンは第2および第3のゾーン216,230,218,232に含まれるヤーンよりも低い弾性にすることができ、これらのヤーンは、アッパー120に熱を加えた後に、各ゾーン214,228に追加の剛性を付与するために部分的に溶融して融着させることができる。これらの熱可塑性ヤーンは第2および第3のゾーン216,230,218,232に存在しないようにすることが可能なことは認識されるであろう。各ゾーン214,216,218,228,230,232のヤーンは周知のインターシャ編みプロセスにより組み込まれて、制御することができることも認識されるであろう。また、ゾーン214,216,218,228,230,232は、2012年11月30日に出願され、「Article of Footwear Incorporating a Knitted Component」と題する、発明者Podhajnyらの共同所有米国特許出願第13/691,316号、特許文献3の教示により形成して組み込むことができ、同出願は参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0049】
アッパー120のニット構成要素130は履物製品100の軽量化をもたらすことができることは認識されるであろう。また、ニット構成要素130は、アッパー120が履き心地のよいものになることができ、着用者の足を局部的に支持することができ、着脱しやすくできるように、異なるゾーン214,216,218,228,230,232に異なる物理特性を与えることができる。さらに、ニット構成要素130を製作するために使用される編みプロセスは、廃棄物を削減することができ、製造時間を短縮することができ、および/または他の製造上の利点を提供することができる。
【0050】
また、上で述べたように、ニット構成要素130は複数のサブ構成要素、すなわち、前方ニット構成要素150とかかとニット構成要素152とから形成することができる。したがって、ニット構成要素130の特性は製造中に高度に制御することができる。たとえば、アッパー120のかかと領域103は、着用者の皮膚に不快に滑ったり擦れたりせずに、着用者のかかとを支持するために重要であることは認識されるであろう。したがって、かかとニット構成要素152は適切な支持を与えるために比較的剛性のある第1ゾーン228を含むことができる。かかとニット構成要素152は、かかとニット構成要素152の実質的に中心に置くことのできる、より弾性のある第2ゾーン230も含むことができ、第2ゾーン230が伸縮して、着用者のかかとに快適に適合できるようにする。第2ゾーン230は、歩くとき、走るとき、およびその他動いているときに着用者のかかとが屈曲するときも伸縮して、適合することができる。したがって、かかとニット構成要素152は剛い支持と撓みとの重要なバランスを提供できるので、履物製品100に個別のヒールカウンタを必要としない。
【0051】
さらに、前方ニット構成要素150およびかかとニット構成要素152は別々で独立しており、それぞれが一体ニット構造であるため、アッパー120の部分を特定の用途、特定の着用者、または他の目的に合わせて仕立て、微調整することができる。たとえば、アッパー120のかかと領域103に異なる所望の物理特性を持たせる、たとえばより剛くしようとする場合、前方ニット構成要素150を、第2ゾーン230よりも小さい第2ゾーンを備える異なるかかとニット構成要素に接合することができるであろう。または、かかと領域103をより撓みやすくしようとする場合、前方ニット構成要素150は第2ゾーン230よりも大きい第2ゾーンを備える別の異なるかかとニット構成要素に接合することができるであろう。
【0052】
ここで、ニット構成要素150,152およびアッパー120の製造を説明する。前述したように、ニット構成要素150,152はワンピース一体ニット構造を有するように形成することができる。たとえば、ニット構成要素150,152は平編み機で編むことができる。また、いくつかの実施形態では、かかとニット構成要素152は、まず上周縁部220が形成されてから、下周縁部222が形成されるまで追加のコースを追加することができるように編むことができる。このように、上周縁部220は整然とした仕上がり外観を有することができ、縁かがりされていない下周縁部222は最終的にソール構造110で覆って、縁取りすることができる。同様に、前方ニット構成要素150は、まず第2周縁部209が形成されてから、第1周縁部208が形成されるまでコースを追加できるように形成することができる。
【0053】
次いで、ニット構成要素150,152は上で述べたように縫い目
164,
166で接合することができる。この組み立てプロセスを容易にするために、かかとニット構成要素152は
図8に示す「X」など、かかとニット構成要素152の内面250とかかとニット構成要素152の外面252とを区別する目印254を含むことができる。
図7に図示するかかとニット構成要素152の外面252には、目印254が含まれていないことに留意する。したがって、かかとニット構成要素152が実質的に対称形であっても、製造者は内面250と外面252とを区別することができるので、前方ニット構成要素150に装着するためにかかとニット構成要素152を配向するのを助ける。
【0054】
内面250はアッパー120の空洞117を部分的に画定することができ、外面252は外向きにすることができることにも留意する。したがって、
図8に図示する目印254は、アッパー120を完全に組み立てたときに、着用者または他者から見えないようにすることができる。しかし、内面250の代わりに、外面252が目印254を含むことができることは認識されるであろう。また、目印254はかかとニット構成要素152の一体ニット構造に含まれるヤーンもしくはストランドによって形成することができ、または目印254はかかとニット構成要素152の一体ニット構造とは別に記すことができる。さらに、目印254はかかとニット構成要素152の任意の適した位置に配置することができる。たとえば、
図8に図示するように、目印254はかかとニット構成要素15の実質的に中央に配置することができ、下周縁部222に隣接していてもよい。
【0055】
ニット構成要素150,152が縫い目
164,
166で接合されたら、
図4に図示するようにストロベル125を下縁部160に装着することができる。次いで、上で述べたようにソール構造110を装着することができる。
【0056】
ここで
図9を参照すると、本開示の追加の教示によるかかとニット構成要素352の代替実施形態が示されている。かかとニット構成要素352は、上で述べた実施形態と実質的に同様にすることができる。たとえば、かかとニット構成要素352は、上で述べた実施形態と同様な第1ゾーン328、第2ゾーン330および第3ゾーン332を含むことができる。しかし、かかとニット構成要素352は第1ゾーン328および第2ゾーン330から第3ゾーン332を区切る内部境界361を画定することができ、これは
図7の実施形態とは異なる。より具体的には、
図6〜
図8の実施形態では内部境界161は上周縁部220からほぼ均一な距離に配置されているが、内部境界361の部分が上周縁部320からさまざまな距離で離間するように、境界361の湾曲を上周縁部320に対して反対にすることができる。たとえば、第2ゾーン330に近づけて配置された内部境界361の部分は、他の部分よりも大きい距離で上周縁部320から離間する。したがって、
図9の平面図では、上周縁部320と内部境界361との間の第3ゾーン332の幅は第3ゾーン332にわたって変えることができる。これにより快適性および支持力を高めるために、かかとニット構成要素352を着用者のかかとにぴったり適合させることができる。
【0057】
まとめると、履物100はいくつかの利点を提供することができる。履物100は履き心地をよくすることができる。履物100は着用者の足を支持することができる。履物100は着用者の足とともに屈曲することもでき、着用者の足に柔軟に適合することができる。履物100の異なる領域にわたって物理特性を変えて、性能を一層高めることができる。
【0058】
本開示の各種実施形態について説明したが、説明は限定的なものではなく例示的なものであることを意図しており、本開示の範囲内でさらに多くの実施形態および実施態様が可能であることが当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の請求項およびその等価物に鑑みる以外で制限されるべきではない。さらに、本明細書で説明する特徴のさまざまな改変、組合せおよび変更が添付の特許請求の範囲内でなされてもよい。