特許第6358565号(P6358565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6358565リアクトル、およびリアクトルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358565
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】リアクトル、およびリアクトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20180709BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   H01F37/00 J
   H01F37/00 M
   H01F27/32 140
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-146551(P2015-146551)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-28142(P2017-28142A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】舌間 誠二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】三崎 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平林 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】大石 明典
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−098209(JP,A)
【文献】 特開2014−027087(JP,A)
【文献】 特開2014−143332(JP,A)
【文献】 特開2015−122484(JP,A)
【文献】 特開2013−239599(JP,A)
【文献】 特開2015−103628(JP,A)
【文献】 特開2013−004531(JP,A)
【文献】 実開昭52−138243(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を巻回してなる巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内部に配置される内側コア部と前記巻回部の外部に配置される外側コア部とで閉磁路を形成する磁性コアと、前記巻回部の軸方向端面と前記外側コア部との間に介在される端面介在部材と、を備えるリアクトルであって、
前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に充填される内側樹脂部と、
前記外側コア部を前記端面介在部材に一体化する外側樹脂部と、を備え、
前記端面介在部材は、前記巻回部の軸方向端部のターンの少なくとも一部を収納するターン収納部と、前記外側コア部を嵌め込む貫通孔と、を備え
前記貫通孔とその貫通孔に嵌め込まれた前記外側コア部との隙間によって、前記内側樹脂部を構成する樹脂を前記巻回部の内部へ充填する樹脂充填孔が形成されており、
前記内側樹脂部と前記外側樹脂部とは前記樹脂充填孔を通じて繋がり、かつ前記貫通孔の内部に入り込んだ前記内側樹脂部によって前記外側コア部と前記内側コア部との間にギャップが形成されているリアクトル。
【請求項2】
前記コイルは、前記内側樹脂部とは別に設けられ、前記巻回部の各ターンを一体化する一体化樹脂を備える請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記内側コア部は、複数の分割コアと、各分割コアの間に入り込んだ前記内側樹脂部と、で構成される請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記内側コア部は、複数の分割コアを備えており、
前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に介在される内側介在部材を備え、
前記内側介在部材は、各分割コアを離隔させた状態で収納する収納部を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に介在される内側介在部材を備え、
前記内側樹脂部は、前記端面介在部材および前記内側介在部材の少なくとも一方と同じ材料で構成されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に介在される内側介在部材と、
前記端面介在部材の近傍における前記巻回部の内周面と前記内側介在部材の外周面との間に介在される封止部材と、を備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
コイルと、前記コイルの内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアと、を備えるリアクトルを製造するリアクトルの製造方法であって、
前記リアクトルは、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリアクトルであり、
前記内側コア部を前記巻回部の内部に配置し、前記巻回部の軸方向端部を前記端面介在部材の前記ターン収納部に収納する組付工程と、
前記樹脂充填孔を介して前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に樹脂を充填する充填工程と、を備えるリアクトルの製造方法。
【請求項8】
表面に熱融着樹脂を有する巻線を用いて前記コイルを作製し、熱処理によって前記熱融着樹脂を溶融させて前記巻回部の各ターンを一体化させた後、前記充填工程を行う請求項7に記載のリアクトルの製造方法。
【請求項9】
前記充填工程では、射出成形によって前記樹脂の充填を行う請求項7または請求項8に記載のリアクトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車などの電動車両に搭載される車載用DC−DCコンバータや電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトルと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車のコンバータの構成部品の一つにリアクトルがある。リアクトルは、巻回部を有するコイル、閉磁路を形成する磁性コアと、コイルと磁性コアとの間の絶縁を確保する絶縁介在部材と、を備える。磁性コアは、巻回部の内部に配置される内側コア部と、巻回部の外部に配置される外側コア部と、を備える。例えば特許文献1のリアクトルでは、一対のボビンを組み合わせることで絶縁介在部材を構成している。当該ボビンは、巻回部の内周面と内側コア部との間に介在される内側介在部材と、巻回部の軸方向端面と外側コア部との間に介在される端面介在部材と、に分けることができる。
【0003】
上記特許文献1には、コイルと磁性コアと絶縁介在部材とを組み合わせた後、コイルの巻回部の内部に樹脂を充填したリアクトルが開示されている。このような構成とすることで、磁性コアを構成する複数の分割コアを樹脂で被覆し、その被覆分割コアをコイルと組み合わせるよりも、リアクトルの製造工程を簡素化できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−003125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、巻回部の内部に充填された樹脂が、巻回部の軸方向端面と端面介在部材との隙間から巻回部の外部に漏れ出し易く、巻回部に十分な樹脂を充填できない場合がある。巻回部の内部に充填される樹脂が巻回部の内周面と内側コア部の外周面との間を埋めることで、内側コア部を巻回部内に保持することができる。しかし、巻回部への樹脂の充填が不十分であると、巻回部の内部で内側コア部ががたつき易く、騒音が発生したり、巻回部の内周面に内側コア部が接触したりする虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、端面介在部材とコイルの軸方向端面との間からの樹脂漏れが抑制されたリアクトル、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るリアクトルは、巻線を巻回してなる巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内部に配置される内側コア部と前記巻回部の外部に配置される外側コア部とで閉磁路を形成する磁性コアと、前記巻回部の軸方向端面と前記外側コア部との間に介在される端面介在部材と、を備えるリアクトルである。このリアクトルは、前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に充填される内側樹脂部を備え、リアクトルに備わる前記端面介在部材は、前記巻回部の軸方向端部のターンの少なくとも一部を収納するターン収納部を備える。
【0008】
本発明の一態様に係るリアクトルの製造方法は、コイルと、前記コイルの内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアと、を備えるリアクトルを製造するリアクトルの製造方法であって、前記リアクトルは、本発明の一形態に係るリアクトルである。このリアクトルの製造方法は、前記内側コア部を前記巻回部の内部に配置し、前記巻回部の軸方向端部を前記端面介在部材の前記ターン収納部に収納する組付工程と、前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に樹脂を充填する充填工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係るリアクトルは、端面介在部材と巻回部との間からの樹脂漏れが抑制されたリアクトルである。
【0010】
本発明の一態様に係るリアクトルの製造方法は、本発明の一態様に係るリアクトルを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係るリアクトルの斜視図である。
図2】リアクトルに備わる組合体の縦断面図である。
図3】樹脂部を除く組合体の分解斜視図である。
図4】リアクトルに備わる端面介在部材の概略図である。
図5】リアクトルに備わる内側介在部材と分割コアの概略斜視図である。
図6】樹脂部を形成する前の組合体の概略正面図である。
図7】組合体の端面介在部材近傍における部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
・本発明の実施形態の説明
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0013】
<1>実施形態のリアクトルは、巻線を巻回してなる巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内部に配置される内側コア部と前記巻回部の外部に配置される外側コア部とで閉磁路を形成する磁性コアと、前記巻回部の軸方向端面と前記外側コア部との間に介在される端面介在部材と、を備えるリアクトルである。このリアクトルは、前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に充填される内側樹脂部を備え、リアクトルに備わる前記端面介在部材は、前記巻回部の軸方向端部のターンの少なくとも一部を収納するターン収納部を備える。
【0014】
端面介在部材にターン収納部が形成されていることで、端面介在部材と巻回部の軸方向端面とを面接触させることができ、リアクトルの製造過程で巻回部の内部に樹脂を充填する際、端面介在部材と巻回部との接触部から樹脂が漏れることを抑制できる。また、巻回部の軸方向端部のターンの少なくとも一部がターン収納部に収納される、つまり軸方向端部のターンの厚み方向の少なくとも一部がターン収納部の内壁で覆われることで、単に端面介在部材と巻回部の軸方向端面とを面接触させるよりも、接触部からの樹脂漏れを抑制することができる。上述したように、ターン収納部を有する端面介在部材を用いることで、端面介在部材と巻回部との間からの樹脂漏れが抑制されたリアクトルとすることができる。端面介在部材と巻回部との間からの樹脂漏れが抑制されたリアクトルでは、その製造時に巻回部の内部に十分な樹脂が充填されることで形成された内側樹脂部が備わっている。このような内側樹脂部であれば、内側コア部を巻回部の内部に保持することができる。
【0015】
<2>実施形態のリアクトルとして、前記コイルは、前記内側樹脂部とは別に設けられ、前記巻回部の各ターンを一体化する一体化樹脂を備える形態を挙げることができる。
【0016】
上記リアクトルは、その作製が容易である。上記リアクトルでは、各ターンが一体化されることで巻回部が屈曲し難く、リアクトルの製造の際に巻回部の内部に磁性コアを配置し易い。また、巻回部の各ターンが一体化されていることで、各ターン間に大きな隙間ができ難く、リアクトルの製造の際に巻回部の内部に充填された樹脂がターン間から漏れ難くすることができる。その結果、巻回部の内部に大きな空隙が形成され難い。一体化樹脂によってターン間の空隙を無くすこともできる。
【0017】
<3>実施形態のリアクトルとして、前記端面介在部材は、前記内側樹脂部を構成する樹脂を前記巻回部の内部へ充填する樹脂充填孔を有する形態を挙げることができる。
【0018】
端面介在部材に樹脂充填孔を形成することで、リアクトルを製造する際、巻回部の内部への樹脂の充填を容易にすることができる。また、この樹脂充填孔から巻回部の内部に樹脂を充填する際、一体化樹脂で固めた巻回部を利用することで、巻回部の内部から外部への樹脂漏れを効果的に抑制できる。
【0019】
<4>前記端面介在部材に前記樹脂充填孔を備える実施形態のリアクトルとして、前記外側コア部を前記端面介在部材に一体化する外側樹脂部を備え、前記外側樹脂部と前記内側樹脂部とは、前記樹脂充填孔を通じて繋がっている形態を挙げることができる。
【0020】
外側樹脂部と内側樹脂部とが樹脂充填孔を通じて繋がっているため、両樹脂部を1回の成形によって形成することができる。つまり、この構成を備えるリアクトルは、内側樹脂部に加えて外側樹脂部を備えるにも拘らず、1回の樹脂成形にて得ることができるため、生産性に優れる。
【0021】
<5>樹脂充填孔を有する実施形態のリアクトルとして、前記端面介在部材は、前記外側コア部を嵌め込む貫通孔を有し、前記貫通孔とその貫通孔に嵌め込まれた前記外側コア部との隙間によって前記樹脂充填孔が形成されており、前記貫通孔の内部に入り込んだ前記内側樹脂部によって、前記外側コア部と前記内側コア部との間にギャップが形成されている形態を挙げることができる。
【0022】
上記リアクトルは、外側コア部と内側コア部との間にギャップを形成するにあたり、アルミナなどのギャップ材を別途用意することなく製造することができ、生産性に優れる。
【0023】
<6>実施形態のリアクトルとして、前記内側コア部は、複数の分割コアと、各分割コアの間に入り込んだ前記内側樹脂部と、で構成される形態を挙げることができる。
【0024】
各分割コアの間に入り込んだ内側樹脂部は、磁性コアの磁気特性を調整するギャップとして機能する。つまり、この構成を備えるリアクトルは、アルミナなどの別材料でできたギャップ材を必要とせず、ギャップ材が不要な分だけ生産性に優れる。
【0025】
<7>実施形態のリアクトルとして、前記内側コア部は、複数の分割コアを備えており、前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に介在される内側介在部材を備え、前記内側介在部材は、各分割コアを離隔させた状態で収納する収納部を備える形態を挙げることができる。
【0026】
内側介在部材を用いることで、リアクトルの製造過程で巻回部に樹脂を充填する際、巻回部と、内側コア部を構成する分割コアと、を確実に離隔させておくことができ、巻回部と内側コア部との間の絶縁を確実に確保することができる。また、内側介在部材に収納部を設けることで、内側コア部を構成する分割コアを、巻回部の内部の所定の位置に容易に配置することができる。その結果、安定した磁気特性を備えるリアクトルを生産性良く製造することができる。加えて、各分割コア間の間隙に内側樹脂部を充填させることで、容易に分割コア間に樹脂ギャップを形成することができる。
【0027】
<8>実施形態のリアクトルとして、前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に介在される内側介在部材を備え、前記内側樹脂部は、前記端面介在部材および前記内側介在部材の少なくとも一方と同じ材料で構成されている形態を挙げることができる。
【0028】
上記構成によれば、内側樹脂部と内側介在部材(端面介在部材)の線膨張係数を同じにすることができる。その結果、リアクトルの使用時に、内側樹脂部と内側介在部材(端面介在部材)が熱膨張・収縮しても、内側樹脂部にクラックなどが生じ難い。この効果に鑑み、内側樹脂部、内側介在部材、および端面介在部材を同じ材料で構成することが好ましい。
【0029】
<9>施形態のリアクトルとして、前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に介在される内側介在部材と、前記端面介在部材の近傍における前記巻回部の内周面と前記内側介在部材の外周面との間に介在される封止部材と、を備える形態を挙げることができる。
【0030】
封止部材を設けることで、リアクトルを製造する際、端面介在部材と巻回部の軸方向端面との間から樹脂が漏れることを、より効果的に抑制することができる。
【0031】
<10>実施形態のリアクトルの製造方法は、コイルと、前記コイルの内外に配置されて閉磁路を形成する磁性コアと、を備えるリアクトルを製造するリアクトルの製造方法であって、前記リアクトルは、前記実施形態に係るリアクトルである。この実施形態のリアクトルの製造方法は、前記内側コア部を前記巻回部の内部に配置し、前記巻回部の軸方向端部を前記端面介在部材の前記ターン収納部に収納する組付工程と、前記巻回部の内周面と前記内側コア部の外周面との間に樹脂を充填する充填工程と、を備える。
【0032】
上記リアクトルの製造方法によれば、巻回部の内周面と内側コア部の外周面との間に樹脂を充填したときに、端面介在部材と巻回部の軸方向端面との間から樹脂が漏れることを抑制することができる。樹脂の漏れが抑制できるのは、端面介在部材に、巻回部の軸方向端部を収納するターン収納部が形成されているからである。巻回部の内部に充填された樹脂は、巻回部の内周面と内側コア部の外周面とを接合する内側樹脂部となる。その結果、実施形態のリアクトルが得られる。
【0033】
<11>実施形態のリアクトルの製造方法として、表面に熱融着樹脂を有する巻線を用いて前記コイルを作製し、熱処理によって前記熱融着樹脂を溶融させて前記巻回部の各ターンを一体化させた後、前記充填工程を行う形態を挙げることができる。
【0034】
熱融着樹脂を有する巻線を用いてコイルを作製することで、そのコイルを熱処理するだけで、巻回部を構成する各ターンを一体化する一体化樹脂を形成することができる。また、一体化樹脂で固められた巻回部の内部に樹脂を充填することで、巻回部の各ターン間からの樹脂漏れを抑制することができ、巻回部の内部に大きな空隙が形成されることを抑制できる。
【0035】
<12>実施形態のリアクトルの製造方法として、前記端面介在部材は、前記巻回部の内部へ前記樹脂を充填するための樹脂充填孔を有し、前記充填工程では、前記樹脂充填孔を介して前記巻回部の内部に前記樹脂を充填する形態を挙げることができる。
【0036】
端面介在部材に形成した樹脂充填孔を介して巻回部の内部に樹脂を充填することで、巻回部の内周面と内側コア部の外周面との間に十分に樹脂を充填することができる。
【0037】
<13>前記樹脂充填孔を有する前記端面介在部材を用いた実施形態のリアクトルの製造方法として、前記充填工程では、射出成形によって前記樹脂の充填を行う形態を挙げることができる。
【0038】
射出成形によって圧力をかけながら巻回部内に樹脂を充填することで、巻回部と内側コア部との間の狭い隙間に十分に樹脂を行き渡らせることができる。また、外側コア部の外周側から樹脂の充填を行なうことで、1回の射出成形で、外側樹脂部と内側樹脂部の両方を形成することができる。外側コア部の外周を覆う樹脂が、樹脂充填孔を介して巻回部の内部にも充填されるからである。
【0039】
・本発明の実施形態の詳細
以下、本発明のリアクトルの実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0040】
<実施形態1>
実施形態1では、図1図6に基づいてリアクトル1の構成を説明する。図1に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3と絶縁介在部材4とを組み合わせた組合体10と、組合体10を載置する載置板9と、を備える。組合体10はさらに、コイル2の巻回部2A,2Bの内部に配置される内側樹脂部5(図2参照)と、磁性コア3の一部を構成する外側コア部32を覆う外側樹脂部6と、を備える。以下、リアクトル1に備わる各構成を詳細に説明する。
【0041】
≪組合体≫
[コイル]
図3に示すように、本実施形態のコイル2は、一本の巻線2wで構成されており、一対の巻回部2A,2Bと、両巻回部2A,2Bを連結する連結部2Rと、を備える。各巻回部2A,2Bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行になるように並列されている。別々の巻線により作製した巻回部2A,2Bを連結することでコイル2を製造しても良い。
【0042】
本実施形態の各巻回部2A,2Bは角筒状に形成されている。角筒状の巻回部2A,2Bとは、その端面形状が四角形状(正方形状を含む)の角を丸めた形状の巻回部のことである。もちろん、巻回部2A,2Bは円筒状に形成しても構わない。円筒状の巻回部とは、その端面形状が閉曲面形状(楕円形状や真円形状、レーストラック形状など)の巻回部のことである。
【0043】
巻回部2A,2Bを含むコイル2は、銅やアルミニウム、マグネシウム、あるいはその合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線によって構成することができる。本実施形態では、導体が銅製の平角線(巻線2w)からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにすることで、各巻回部2A,2Bを形成している。
【0044】
コイル2の両端部2a,2bは、巻回部2A,2Bから引き延ばされて、図示しない端子部材に接続される。両端部2a,2bではエナメルなどの絶縁被覆は剥がされている。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置が接続される。
【0045】
上記構成を備えるコイル2は、樹脂によって一体化されていることが好ましい。本例の場合、コイル2の巻回部2A,2Bはそれぞれ、一体化樹脂20(図2参照)によって個別に一体化されている。本例の一体化樹脂20は、巻線2wの外周(エナメルなどの絶縁被覆のさらに外周)に形成される熱融着樹脂の被覆層を融着させることで構成されており、非常に薄い。そのため、巻回部2A,2Bが一体化樹脂20で一体化されていても、巻回部2A,2Bのターンの形状や、ターンの境界が外観上から分かる状態になっている。一体化樹脂20の材質としては、熱によって融着する樹脂、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0046】
図2では一体化樹脂20を誇張して示しているが、実際には非常に薄く形成されている。一体化樹脂20は、巻回部2B(巻回部2Aでも同様)を構成する各ターンを一体化し、巻回部2Bの軸方向の伸縮を抑制する。本例では、巻線2wに形成される熱融着樹脂を融着させて一体化樹脂20を形成しているため、各ターン間の隙間にも均一的に一体化樹脂20が入り込んでいる。ターン間における一体化樹脂20の厚さt1は、巻回前の巻線2wの表面に形成される熱融着樹脂の厚さの約二倍であり、具体的には20μm以上2mm以下とすることが挙げられる。厚さt1を厚くすることで、各ターンを強固に一体化させることができ、厚さt1を薄くすることで巻回部2Bの軸方向長さが長くなり過ぎることを抑制できる。
【0047】
巻回部2Bの外周面および内周面における一体化樹脂20の厚さt2は、巻回前の巻線2wの表面に形成される熱融着樹脂の厚さとほぼ同じであり、10μm以上1mm以下とすることが挙げられる。巻回部2Bの内周面および外周面における一体化樹脂20の厚さt2を10μm以上とすることで、巻回部2A,2Bの各ターンがばらけないように各ターンを強固に一体化させることができる。また上記厚さを1mm以下とすることで、一体化樹脂20による巻回部2Bの放熱性の低下を抑制することができる。
【0048】
ここで、角筒状のコイル2の巻回部2A,2Bは、巻線2wが曲げられることで形成される四つの角部と、巻線2wが曲げられていない平坦部と、に分けられる。図1,2では巻回部2A,2Bの角部においても平坦部においても各ターン同士を一体化樹脂20で一体化した構成である。これに対して、巻回部2A,2Bの一部、例えば角部においてのみ各ターン同士が一体化樹脂20で一体化されている構成としても良い。
【0049】
巻線2wをエッジワイズ巻きすることで形成される巻回部2A,2Bの角部では、曲げの内側(紙面上側)が曲げの外側(紙面下側)よりも太くなり易い。このような曲げの内側が太くなった巻回部2A,2Bを熱処理し、巻線2w表面の熱融着樹脂を溶融させると、曲げの内側では各ターンを一体化樹脂20で一体化させることができ、曲げの外側では各ターンを離隔させることができる。この場合、巻回部2A,2Bの平坦部では、巻線2wの外周に熱融着樹脂があるが、各ターン間は一体化されずに離隔する。この平坦部における隙間が十分に小さければ、巻回部2A,2Bの内部に樹脂を充填してもその樹脂は表面張力によって平坦部の隙間を通過できない。
【0050】
[磁性コア]
磁性コア3は、複数の分割コア31m,32mを組み合わせて構成されており、便宜上、内側コア部31,31と、外側コア部32,32と、に分けることができる(図1,2を合わせて参照)。
【0051】
内側コア部31は、図2に示すようにコイル2の巻回部2B(巻回部2Aでも同様)の内部に配置される部分である。ここで、内側コア部31とは、磁性コア3のうち、コイル2の巻回部2A,2Bの軸方向に沿った部分を意味する。例えば、図2では、巻回部2A,2Bの軸方向に沿った部分の端部が巻回部2A,2Bの端面よりも巻回部2A,2Bの外側に突出しているものの、その突出する部分も内側コア部31の一部である。
【0052】
本例の内側コア部31は、三つの分割コア31mと、各分割コア31mの間に形成されるギャップ31gと、分割コア31mと後述する分割コア32mとの間に形成されるギャップ32gと、で構成されている。本例のギャップ31g,32gは、後述する内側樹脂部5によって形成されている。この内側コア部31の形状は、巻回部2A(2B)の内部形状に沿った形状であって、本例の場合、略直方体状である。
【0053】
一方、外側コア部32は、巻回部2A,2Bの外部に配置される部分であって、一対の内側コア部31,31の端部を繋ぐ形状を備える(図1参照)。本例の外側コア部32は、上面と下面が略ドーム形状の柱状の分割コア32mで構成されている。この外側コア部32の下面(分割コア32mの下面)は、コイル2の巻回部2A,2Bの下面とほぼ面一になっている(図2参照)。
【0054】
分割コア31m,32mは、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形してなる圧粉成形体である。軟磁性粉末は、鉄などの鉄族金属やその合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)などで構成される磁性粒子の集合体である。原料粉末には潤滑剤が含有されていても良い。本例とは異なり、分割コア31m,32mは、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体で構成することもできる。複合材料の軟磁性粉末と樹脂には、圧粉成形体に使用できる軟磁性粉末と樹脂と同じものを利用することができる。磁性粒子の表面には、リン酸塩などで構成される絶縁被覆が形成されていても良い。その他、分割コア31m,32mを積層鋼板で構成することもできる。
【0055】
[絶縁介在部材]
絶縁介在部材4は、図2,3に示すように、コイル2と磁性コア3との間の絶縁を確保する部材であって、端面介在部材4A,4Bと、内側介在部材4C,4Dと、で構成されている。絶縁介在部材4は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂で構成することができる。その他、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂などで絶縁介在部材4を形成することができる。上記樹脂にセラミックスフィラーを含有させて、絶縁介在部材4の放熱性を向上させても良い。セラミックスフィラーとしては、例えば、アルミナやシリカなどの非磁性粉末を利用することができる。
【0056】
[[端面介在部材]]
端面介在部材4A,4Bの説明には主として図3,4を用いる。図4の上段図は、図3の紙面左側の端面介在部材4Aをコイル2側から見た概略斜視図であり、下段図は、その端面介在部材4Aを分割コア32m側から見た概略斜視図である。ここで、図3の紙面右側の端面介在部材4Bは、図4の端面介在部材4Aとは、後述するターン収納部41の構成のみが相違する。従って、ここでは端面介在部材4Aを主に説明する。
【0057】
端面介在部材4Aのコイル側の面には、巻回部2A,2Bの軸方向端部の少なくとも一部を収納する二つのターン収納部41が形成されている。ターン収納部41は、巻回部2A,2Bの軸方向端面全体を、端面介在部材4Aに面接触させるために形成されている。より具体的には、ターン収納部41は、後述する貫通孔42の周囲を取り囲む四角環状に形成されており、紙面右上側の角部の位置(太矢印を参照)から反時計回りに徐々に深さが深くなっている。各ターン収納部41における右辺部分は、端面介在部材4Aの上端にまで達しており、図3に示すコイル2の端部2a,2bを、端面介在部材4Aの上方側に引き出せるようになっている。ここで、図3の紙面右側の端面介在部材4Bに備わるターン収納部41は、連結部2Rを含む巻回部2A,2Bの端面を収納できる『8』の字形状となっている。
【0058】
ターン収納部41によって巻回部2A,2Bの軸方向端面と端面介在部材4Aとを面接触させることで、接触部分からの樹脂漏れを抑制することができる。上記面接触に加えて、ターン収納部41では、巻回部2A,2Bの軸方向端部のターンの厚み方向の少なくとも一部が端面介在部材4Aで覆われた状態になっている。具体的には、紙面左側のターン収納部41における上辺部分、右辺部分、および下辺部分では、ターン収納部41に嵌り込んだ巻回部2Bのターンの周面部分が端面介在部材4Aに覆われている(図2を合わせて参照)。紙面右側のターン収納部41における上辺部分、左辺部分、および下辺部分では、ターン収納部41に嵌り込んだ巻回部2Aのターンの周面部分が端面介在部材4Aに覆われている。この端面介在部材4A,4Bで覆われる部分では、他の部分よりも更に樹脂が漏れ難い。巻回部2A,2Bと端面介在部材4Aとの接触部分からの樹脂漏れを抑制する観点からすれば、巻回部2A,2Bの軸方向端部のターンを全周に亘って収納するターン収納部41とすることが好ましい。
【0059】
端面介在部材4Aは、上述したターン収納部41の他に、一対の貫通孔42,42と、嵌合部43(下段図参照)と、を備える。貫通孔42は、図3に示す内側介在部材4C,4Dと分割コア31mとの組物を嵌め込むための孔である。一方、嵌合部43は、外側コア部32となる分割コア32mを嵌め込むための凹部である。
【0060】
上記貫通孔42の中央寄りの下部と外側寄りの上方には、上記組物を当て止めするための当て止め部44が形成されている。この当て止め部44によって、組物と分割コア32mとが直接接触することなく離隔される(図3を合わせて参照)。
【0061】
上記貫通孔42の外側寄りの部分、および上方寄りの部分には、外方に向って凹んでいる。この凹んでいる部分は、図6に示すように、端面介在部材4Aの嵌合部に分割コア32mを嵌め込んだときに、分割コア32mの側縁および上縁の位置に樹脂充填孔45を形成する。樹脂充填孔45は、紙面手前の外側コア部32(分割コア32m)側から紙面奥側の巻回部2A,2Bの軸方向端面側に向って端面介在部材4Aの厚み方向に貫通する孔であり、紙面奥側で巻回部2A,2Bの内周面と内側コア部31(分割コア31m)の外周面との間の空間に連通している(図2を合わせて参照)。
【0062】
[[内側介在部材]]
内側介在部材4C,4Dの説明には図5を用いる。内側介在部材4Cと内側介在部材4Dとは同一形状を備え、内側介在部材4Cを180°水平方向に回転させれば内側介在部材4Dとなる。これら内側介在部材4C,4Dは、その両端が開口する籠状の部材である。より具体的には、内側介在部材4C,4Dは、角筒状に形成された一対の筒部46,46と、両筒部46,46を連結する複数のブリッジ部47と、で構成されている。内側介在部材4C,4Dの上方側における他の内側介在部材4C,4Dに対向する側にはブリッジ部47が設けられておらず、大きな開口部が形成されている。ブリッジ部47には、内側介在部材4C,4Dの内方側に突出する複数の仕切り部48が形成されており、この仕切り部48によって内側介在部材4C,4Dの内部が、その軸方向に3つに区画されている。区画された部分は、分割コア31mを収納する収納部49として機能する。本例では、図5の太矢印で示すように、内側介在部材4C,4Dの軸方向の両端の開口部、および内側介在部材4C,4Dの上方の開口部を介して、各収納部49に分割コア31mを挿入できるようになっている。各分割コア31mは、仕切り部48によって互いに離隔される。
【0063】
[内側樹脂部]
内側樹脂部5は、図2に示すように、巻回部2B(図示しない巻回部2Aでも同様)の内部に配置され、巻回部2Bの内周面と分割コア31m(内側コア部31)の外周面とを接合する。
【0064】
内側樹脂部5は、巻回部2Bが一体化樹脂20によって一体化されているため、巻回部2Bの各ターンの内周面と外周面との間に跨がることなく、巻回部2Bの内部に留まっている。また、この内側樹脂部5の一部は、分割コア31mと分割コア31mとの間、および分割コア31mと分割コア32mとの間に入り込み、ギャップ31g,32gを形成している。
【0065】
内側樹脂部5は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、PA樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、あるいは低温硬化性樹脂を利用することができる。これらの樹脂にアルミナやシリカなどのセラミックスフィラーを含有させて、内側樹脂部5の放熱性を向上させても良い。内側樹脂部5は、端面介在部材4A,4Bおよび内側介在部材4C,4Dと同じ材料で構成することが好ましい。三つの部材を同じ材料で構成することで、三つの部材の線膨張係数を同じにすることができ、熱膨張・収縮に伴う各部材の損傷を抑制することができる。
【0066】
[外側樹脂部]
外側樹脂部6は、図1,2に示すように、分割コア32m(外側コア部32)の外周全体を覆うように配置され、分割コア32mを端面介在部材4A,4Bに固定すると共に、分割コア32mを外部環境から保護する。ここで、分割コア32mの下面は、外側樹脂部6から露出していても構わない。その場合、分割コア32mの下方部分を、端面介在部材4A,4Bの下面とほぼ面一となるように延設することが好ましい。後述する載置板9に分割コア32mの下面を直接接触させる、あるいは載置板9と分割コア32mの下面との間に接着剤や絶縁シートを介在させることで、分割コア32mを含む磁性コア3の放熱性を高めることができる。
【0067】
本例の外側樹脂部6は、端面介在部材4A,4Bにおける分割コア32mが配置される側に設けられ、巻回部2A,2Bの外周面に及んでいない。分割コア32mの固定と保護を行なうという外側樹脂部6の機能に鑑みれば、外側樹脂部6の形成範囲は図示する程度で十分であり、樹脂の使用量を低減できる点で好ましいと言える。もちろん、図示する例とは異なり、外側樹脂部6が巻回部2A,2B側に及んでいても構わない。
【0068】
本例の外側樹脂部6は、図2に示すように、端面介在部材4A,4Bの樹脂充填孔45を介して内側樹脂部5と繋がっている。つまり、外側樹脂部6と内側樹脂部5とは同じ樹脂で一度に形成されたものである。本例と異なり、外側樹脂部6と内側樹脂部5とを個別に形成することも可能である。
【0069】
外側樹脂部6は、内側樹脂部5の形成に利用できる樹脂と同様の樹脂で構成することができる。本例のように外側樹脂部6と内側樹脂部5とが繋がっている場合、両樹脂部6,5は同じ樹脂で構成される。
【0070】
その他、外側樹脂部6には、組合体10を載置板9などに固定するための固定部60(図1参照)が形成されている。例えば、高剛性の金属や樹脂で構成されるカラーを外側樹脂部6に埋設することで、組合体10を載置板9にボルトで固定するための固定部60を形成することができる。
【0071】
[封止部材]
図7の部分拡大縦断面図に示すように、端面介在部材4Aの近傍における巻回部2B(2A)の内周面と、内側介在部材4Dの外周面と、の間に封止部材7を設けても良い。封止部材7を設けることで、樹脂充填孔45を介して巻回部2Bの内部に樹脂を充填したときに、その樹脂が、巻回部2Bの軸方向端面と端面介在部材4Aとの接触部分に行き難くなる。そのため、巻回部2Bの軸方向端面と端面介在部材4Aとの間からの樹脂漏れをより効果的に抑制することができる。
【0072】
封止部材7には、環状パッキンを利用することができる。その場合、内側介在部材4Dの筒部46(図5参照)の外周に環状パッキンを取り付けてから、内側介在部材4Dと分割コア31mとの組物を巻回部2Bの内部に挿入すると良い。
【0073】
≪載置板≫
図1に示すように、本実施形態のリアクトル1はさらに、組合体10を載置する載置板9を備える。載置板9と組合体10との間には、両者9,10を接合させる接合層8が形成されている。載置板9は、機械的強度と熱伝導性に優れる材料で構成することが好ましく、例えばアルミニウムやその合金で構成することができる。接合層8は、絶縁性に優れる材料で構成することが好ましく、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、LCPなどの熱可塑性樹脂で構成することができる。これら絶縁性樹脂に、セラミックスフィラーなどを含有させることで、接合層8の放熱性を向上させても良い。
【0074】
上記組合体10は、ケースに収納しても構わない。その場合、ケースの底面が載置板9として機能する。
【0075】
組合体10は、液体冷媒に浸漬された状態で使用することができる。液体冷媒は特に限定されないが、ハイブリッド自動車でリアクトル1を利用する場合、ATF(Automatic Transmission Fluid)などを液体冷媒として利用できる。その他、フロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体、HCFC−123やHFC−134aなどのフロン系冷媒、メタノールやアルコールなどのアルコール系冷媒、アセトンなどのケトン系冷媒などを液体冷媒として利用することもできる。
【0076】
≪効果≫
本例のリアクトル1では、端面介在部材4A,4Bに形成されるターン収納部41によって、端面介在部材4A,4Bと巻回部2A,2Bとの間からの樹脂漏れが抑制されている。そのため、当該部分からの樹脂漏れが抑制されたリアクトル1では、その製造時に巻回部の内部に十分な樹脂が充填されることで形成された内側樹脂部5が備わっている。このような内側樹脂部5であれば、巻回部2A,2Bの内部に内側コア部31,31をしっかりと保持することができる。その結果、巻回部2A,2Bの内部で内側コア部31,31ががたつくことを抑制でき、騒音の発生や、巻回部2A,2Bと内側コア部31,31との接触を抑制できる。
【0077】
また、本例のリアクトル1では、コイル2の巻回部2A,2Bの外周が樹脂でモールドされておらず、外部環境に直接曝された状態となっているため、本例のリアクトル1は放熱性に優れたリアクトル1となる。リアクトル1の組合体10を液体冷媒に浸漬された状態とすれば、リアクトル1の放熱性をより向上させることができる。
【0078】
≪リアクトルの製造方法≫
次に、実施形態1に係るリアクトル1を製造するためのリアクトルの製造方法の一例を説明する。リアクトルの製造方法は、大略、次の工程を備える。リアクトルの製造方法の説明にあたっては主として図3を参照し、必要に応じて図4,5を参照する。
・コイル作製工程
・一体化工程
・組付工程
・充填工程
・硬化工程
【0079】
[コイル作製工程]
この工程では、巻線2wを用意し、巻線2wの一部を巻回することでコイル2を作製する。巻線2wの巻回には、公知の巻線機を利用することができる。巻線2wの外周には、図2を参照して説明した一体化樹脂20となる熱融着樹脂の被覆層を形成することができる。被覆層の厚さは適宜選択することができる。
【0080】
[一体化工程]
この工程では、コイル作製工程で作製したコイル2のうち、巻回部2A,2Bを一体化樹脂20(図2参照)で一体化する。巻線2wの外周に熱融着樹脂の被覆層を形成している場合、コイル2を熱処理することで、一体化樹脂20を形成することができる。これに対して、巻線2wの外周に被覆層を形成していない場合、コイル2の巻回部2A,2Bの外周や内周に樹脂を塗布し、樹脂を硬化させることで一体化樹脂20を形成すると良い。
【0081】
この一体化工程は、次に説明する組付工程の後で、かつ充填工程の前に行なうこともできる。
【0082】
[組付工程]
この工程では、コイル2と、磁性コア3を構成する分割コア31m,32mと、絶縁介在部材4と、を組み合わる。例えば、図5に示すように、内側介在部材4C,4Dの各収納部49に分割コア31mを配置した第一組物を作製し、その第一組物を巻回部2A,2Bの内部に配置する(図3を合わせて参照)。そして、端面介在部材4A,4Bを巻回部2A,2Bの軸方向の一端側端面と他端側端面に当接させ、一対の分割コア32mで挟み込んで、コイル2と分割コア31m,32mと絶縁介在部材4とを組み合わせた第二組物を作製する。
【0083】
ここで、図6に示すように、分割コア32mの巻回部2A,2Bの軸方向から第二組物を見たときに、分割コア32m(外側コア部32)の側縁と上縁には、巻回部2A,2Bの内部に樹脂を充填するための樹脂充填孔45が形成されている。樹脂充填孔45は、端面介在部材4A,4Bの貫通孔42(図3参照)と、貫通孔42に嵌め込まれた外側コア部32と、の隙間によって形成される。
【0084】
[充填工程]
充填工程では、第二組物における巻回部2A,2Bの内部に樹脂を充填する。本例では、第二組物を金型内に配置し、金型内に樹脂を注入する射出成形を行なう。樹脂の注入は、いずれかの一方の分割コア32mの端面側(コイル2の反対側)から行なう。金型内に充填された樹脂は、分割コア32mの外周を覆い、樹脂充填孔45(図2,6)を介して巻回部2A,2Bの内部に流入する。その際、巻回部2A,2B内の空気は、他方の分割コア32m側の樹脂充填孔45から外部に排気される。
【0085】
巻回部2A,2Bの内部に充填された樹脂は、図2に示すように、巻回部2Bの内周面と分割コア31mの外周面との間に入り込むだけでなく、隣接する二つの分割コア31m,31mの間、および分割コア31mと外側コア部32(分割コア32m)との間にも入り込み、ギャップ31g,32gを形成する。射出成形によって圧力をかけて樹脂充填孔45から巻回部2A,2B内に充填された樹脂は、巻回部2A,2Bと内側コア部31との狭い隙間に十分に行き渡るが、巻回部2A,2Bの外部に漏れることは殆どない。図2に示すように、巻回部2Bの軸方向端面と端面介在部材4A,4Bとが面接触すると共に、巻回部2Bが一体化樹脂20で一体化されているからである。
【0086】
ここで、巻回部2A,2Bの説明の際に述べたように、角筒状の巻回部2A,2Bの曲げの角部において各ターンを一体化し、平坦部に微小な隙間が形成されるようにしたコイル2を利用する場合、一方の分割コア32mの外側と他方の分割コア32mの外側の両方から樹脂を充填することができる。その場合、平坦部に形成される微小な隙間から巻回部2A,2Bの外に排気される。樹脂は、その粘度と表面張力によって、平坦部の微小な隙間から巻回部2A,2Bの外側に漏れることは殆どない。
【0087】
[硬化工程]
硬化工程では、熱処理などで樹脂を硬化させる。硬化した樹脂のうち、巻回部2A,2Bの内部にあるものは図2に示すように内側樹脂部5となり、分割コア32mを覆うものは外側樹脂部6となる。
【0088】
以上説明したリアクトルの製造方法によれば、図1に示すリアクトル1の組合体10を製造することができる。また、内側樹脂部5と外側樹脂部6とを一体に形成することで、充填工程と硬化工程が1回ずつで済むので、生産性良く組合体10を製造することができる。完成した組合体10は、接合層8を介して載置板9上に固定すれば良い。
【0089】
<実施形態2>
実施形態1の組合体10をケースに収納し、ポッティング樹脂でケース内に埋設しても構わない。例えば、実施形態1のリアクトルの製造方法に係る組付工程で作製した第二組物をケース内に収納し、ケース内にポッティング樹脂を充填する。その場合、分割コア32m(外側コア部32)の外周を覆うポッティング樹脂が外側樹脂部6となる。また、樹脂充填孔45(図2,6参照)を介して巻回部2A,2B内に浸入したポッティング樹脂が内側樹脂部5となる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のリアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった電動車両に搭載される双方向DC−DCコンバータなどの電力変換装置の構成部材に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 リアクトル
10 組合体
2 コイル 2w 巻線
2A,2B 巻回部 2R 連結部 2a,2b 端部
20 一体化樹脂
3 磁性コア
31 内側コア部 32 外側コア部
31m,32m 分割コア 31g,32g ギャップ
4 絶縁介在部材
4A,4B 端面介在部材
41 ターン収納部 42 貫通孔 43 嵌合部 44 当て止め部
45 樹脂充填孔
4C,4D 内側介在部材
46 筒部 47 ブリッジ部 48 仕切り部 49 収納部
5 内側樹脂部
6 外側樹脂部 60 固定部
7 封止部材
8 接合層
9 載置板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7