(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明、及び、実質的に同一の構成に対する重複説明などを省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0014】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0015】
(実施の形態)
[1.有機EL表示装置]
まず、本実施の形態に係る有機EL表示装置10の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る有機EL表示装置10の一部切り欠き斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る有機EL表示装置10のピクセルバンクの一例を示す斜視図である。
【0016】
[1−1.構成]
図1に示すように、有機EL表示装置10は、複数個の薄膜トランジスタが配置されたTFT基板(TFTアレイ基板)20と、下部電極である陽極41、有機材料からなる発光層であるEL層42及び透明な上部電極である陰極43からなる有機EL素子(発光部)40との積層構造により構成される。
【0017】
TFT基板20には複数の画素30がマトリクス状に配置されており、各画素30には画素回路31が設けられている。
【0018】
有機EL素子40は、複数の画素30のそれぞれに対応して形成されており、各画素30に設けられた画素回路31によって各有機EL素子40の発光の制御が行われる。有機EL素子40は、複数の薄膜トランジスタを覆うように形成された層間絶縁膜(平坦化層)の上に形成される。
【0019】
また、有機EL素子40は、陽極41と陰極43との間にEL層42が配置された構成となっている。陽極41とEL層42との間にはさらに正孔輸送層が積層形成され、EL層42と陰極43との間にはさらに電子輸送層が積層形成されている。なお、陽極41と陰極43との間には、その他の有機機能層が設けられていてもよい。
【0020】
各画素30は、それぞれの画素回路31によって駆動制御される。また、TFT基板20には、画素30の行方向に沿って配置される複数のゲート配線(走査線)50と、ゲート配線50と交差するように画素30の列方向に沿って配置される複数のソース配線(信号配線)60と、ソース配線60と平行に配置される複数の電源配線(
図1では省略)とが形成されている。各画素30は、例えば、直交するゲート配線50とソース配線60とによって区画されている。
【0021】
ゲート配線50は、各画素回路31に含まれるスイッチング素子として動作する薄膜トランジスタのゲート電極と行毎に接続されている。ソース配線60は、各画素回路31に含まれるスイッチング素子として動作する薄膜トランジスタのソース電極と列毎に接続されている。電源配線は、各画素回路31に含まれる駆動素子として動作する薄膜トランジスタのドレイン電極と列毎に接続されている。
【0022】
図2に示すように、有機EL表示装置10の各画素30は、3色(赤色、緑色、青色)のサブ画素30R、30G、30Bによって構成されており、これらのサブ画素30R、30G、30Bは、表示面上に複数個マトリクス状に配列されるように形成されている。各サブ画素30R、30G、30Bは、バンク21によって互いに分離されている。
【0023】
バンク21は、ゲート配線50に平行に延びる突条と、ソース配線60に平行に延びる突条とが互いに交差するように、格子状に形成されている。そして、この突条で囲まれる部分(すなわち、バンク21の開口部)の各々とサブ画素30R、30G、30Bの各々とが一対一で対応している。なお、本実施の形態において、バンク21はピクセルバンクとしたが、ラインバンクとしても構わない。
【0024】
陽極41は、TFT基板20上の層間絶縁膜(平坦化層)上でかつバンク21の開口部内に、サブ画素30R、30G、30B毎に形成されている。同様に、EL層42は、陽極41上でかつバンク21の開口部内に、サブ画素30R、30G、30B毎に形成されている。透明な陰極43は、複数のバンク21上で、かつ、全てのEL層42(全てのサブ画素30R、30G、30B)を覆うように、連続的に形成されている。
【0025】
さらに、画素回路31は、各サブ画素30R、30G、30B毎に設けられており、各サブ画素30R、30G、30Bと、対応する画素回路31とは、コンタクトホール及び中継電極によって電気的に接続されている。なお、サブ画素30R、30G、30Bは、EL層42の発光色が異なることを除いて同一の構成である。
【0026】
[1−2.画素回路]
ここで、画素30における画素回路31の回路構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態に係る有機EL表示装置10における画素回路31の構成を示す電気回路図である。
【0027】
図3に示すように、画素回路31は、駆動素子として動作する薄膜トランジスタ32と、スイッチング素子として動作する薄膜トランジスタ33と、対応する画素30に表示するためのデータを記憶するキャパシタ34とで構成される。本実施の形態において、薄膜トランジスタ32は、有機EL素子40を駆動するための駆動トランジスタであり、薄膜トランジスタ33は、画素30を選択するためのスイッチングトランジスタである。
【0028】
薄膜トランジスタ32は、薄膜トランジスタ33のドレイン電極33d及びキャパシタ34の一端に接続されるゲート電極32gと、電源配線70に接続されるドレイン電極32dと、キャパシタ34の他端と有機EL素子40の陽極41とに接続されるソース電極32sと、半導体膜(図示せず)とを備える。この薄膜トランジスタ32は、キャパシタ34が保持しているデータ電圧に対応する電流を電源配線70からソース電極32sを通じて有機EL素子40の陽極41に供給する。これにより、有機EL素子40では、陽極41から陰極43へと駆動電流が流れてEL層42が発光する。
【0029】
薄膜トランジスタ33は、ゲート配線50に接続されるゲート電極33gと、ソース配線60に接続されるソース電極33sと、キャパシタ34の一端及び薄膜トランジスタ32のゲート電極32gに接続されるドレイン電極33dと、半導体膜(図示せず)とを備える。この薄膜トランジスタ33は、接続されたゲート配線50及びソース配線60に所定の電圧が印加されると、当該ソース配線60に印加された電圧がデータ電圧としてキャパシタ34に保存される。
【0030】
なお、上記構成の有機EL表示装置10では、ゲート配線50とソース配線60との交点に位置する画素30毎に表示制御を行うアクティブマトリクス方式が採用されている。これにより、各画素30(各サブ画素30R、30G、30B)の薄膜トランジスタ32及び33によって、対応する有機EL素子40が選択的に発光し、所望の画像が表示される。
【0031】
[2.TFT基板]
以下では、本実施の形態に係るTFT基板20について、
図4を用いて説明する。なお、本実施の形態に係るTFT基板20に形成される薄膜トランジスタは、ボトムゲート型、かつ、チャネル保護型の薄膜トランジスタである。
【0032】
図4は、本実施の形態に係るTFT基板20の概略断面図である。TFT基板20には、例えば、複数の薄膜トランジスタ100が形成されている。
【0033】
図4に示すように、本実施の形態に係るTFT基板20は、基板110と、ゲート電極120と、ゲート絶縁層130と、酸化物半導体層140と、チャネル保護層150と、ドレイン電極160dと、ソース電極160sと、層間絶縁層170と、上部電極180とを備える。なお、TFT基板20において、薄膜トランジスタ100は、ゲート電極120と、ゲート絶縁層130と、酸化物半導体層140と、チャネル保護層150と、ドレイン電極160dと、ソース電極160sとから構成される。
【0034】
薄膜トランジスタ100は、例えば、
図3に示す薄膜トランジスタ32である。すなわち、薄膜トランジスタ100は、駆動トランジスタとして利用できる。具体的には、薄膜トランジスタ100が薄膜トランジスタ32である場合、ゲート電極120がゲート電極32gに、ソース電極160sがソース電極32sに、ドレイン電極160dがドレイン電極32dに、それぞれ相当する。
【0035】
なお、薄膜トランジスタ100は、例えば、
図3に示す薄膜トランジスタ33でもよい。すなわち、薄膜トランジスタ100は、スイッチングトランジスタとして利用されてもよい。
【0036】
[2−1.基板]
基板110は、電気絶縁性を有する材料から構成される基板である。例えば、基板110は、無アルカリガラス、石英ガラス、高耐熱性ガラスなどのガラス材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドなどの樹脂材料、シリコン、ガリウムヒ素などの半導体材料、又は、絶縁層をコーティングしたステンレスなどの金属材料からなる基板である。
【0037】
なお、基板110は、樹脂基板などのフレキシブル基板でもよい。この場合、薄膜トランジスタ100をフレキシブルディスプレイなどに利用することができる。
【0038】
[2−2.ゲート電極]
ゲート電極120は、基板110上に所定形状で形成される。ゲート電極120の膜厚は、例えば、30nm〜400nmである。なお、ゲート電極120は、基板110の上方に、例えば、バッファ層などを介して形成されてもよい。
【0039】
ゲート電極120は、導電性を有する材料からなる電極である。例えば、ゲート電極120の材料として、モリブデン、アルミニウム、銅、タングステン、チタン、マンガン、クロム、タンタル、ニオブ、銀、金、プラチナ、パラジウム、インジウム、ニッケル、ネオジムなどの金属、金属の合金、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)などの導電性金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの導電性高分子などを用いることができる。また、ゲート電極120は、これらの材料を積層した多層構造であってもよい。
【0040】
[2−3.ゲート絶縁層]
ゲート絶縁層130は、ゲート電極120と酸化物半導体層140との間に形成される。具体的には、ゲート絶縁層130は、ゲート電極120を覆うようにゲート電極120上及び基板110上に形成される。ゲート絶縁層130の膜厚は、例えば、210nm〜500nmである。
【0041】
ゲート絶縁層130は、電気絶縁性を有する材料から構成される。例えば、ゲート絶縁層130は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル膜、酸化ハフニウム膜などの単層膜、又は、これらの積層膜である。
【0042】
本実施の形態では、ゲート絶縁層130は、複数の層を含んでいる。具体的には、
図4に示すように、ゲート絶縁層130は、2層構造であり、順に積層された第1絶縁膜131及び第2絶縁膜132を含んでいる。
【0043】
[2−3−1.第1絶縁膜]
第1絶縁膜131は、ゲート電極120上に設けられた絶縁膜である。第1絶縁膜131は、ゲート電極120との密着層である。第1絶縁膜131は、ゲート電極120と密着させるために、膜応力として圧縮応力が必要とされる。当該圧縮応力は、−400MPa以上、−200MPa以下が好ましい。例えば、第1絶縁膜131は、シリコン窒化膜から構成される。第1絶縁膜131の膜厚は、例えば、200nm〜400nmである。
【0044】
[2−3−2.第2絶縁膜]
第2絶縁膜132は、第1絶縁膜131上に設けられた絶縁膜である。第2絶縁膜132は、酸化物半導体層140と接する層である。第2絶縁膜132は、シリコン酸化膜から構成されることが好ましい。第2絶縁膜132の膜厚は、例えば、10nm〜100nmであり、より好ましくは、30nm〜50nmである。
【0045】
第2絶縁膜132がシリコン酸化膜から構成されることにより、シリコン窒化膜などから構成される場合より、膜内の水素量(すなわち、水素含有量)を低減することができる。これにより、第2絶縁膜132と接する酸化物半導体層140が取り込む水素量を低減することができるため、酸化物半導体層140の低抵抗化を抑制することができる。なお、ゲート絶縁層130全体をシリコン酸化物で形成することは以下の理由から好ましくない。すなわち、シリコン酸化膜の応力を成膜条件によって制御することは困難であるため、薄膜トランジスタ100に適用できる程度に緻密なシリコン酸化膜を形成する場合には、シリコン酸化膜の圧縮応力が大きくことを避けられない。このため、シリコン酸化膜だけでゲート絶縁層130全体を形成すると、圧縮応力が大きく、かつ、膜厚も大きいゲート絶縁層130が形成されることにより、基板110が反ってしまう。
【0046】
[2−4.酸化物半導体層]
酸化物半導体層140は、ゲート電極120に対向するように基板110の上方に形成される。具体的には、酸化物半導体層140は、ゲート電極120に対向する位置に、かつ、ゲート絶縁層130上に形成される。例えば、酸化物半導体層140は、ゲート電極120の上方において、ゲート絶縁層130上に島状に形成される。酸化物半導体層140の膜厚は、例えば、30nm〜150nmである。
【0047】
酸化物半導体層140の材料としては、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)のうち、少なくとも1種を含む酸化物半導体材料を用いる。例えば、酸化物半導体層140は、アモルファス酸化インジウムガリウム亜鉛(InGaZnO:IGZO)などの透明アモルファス酸化物半導体(TAOS:Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)から構成される。
【0048】
In:Ga:Znの比率は、例えば、約1:1:1である。また、In:Ga:Znの比率は、0.8〜1.2:0.8〜1.2:0.8〜1.2の範囲でもよいが、この範囲には限られない。
【0049】
酸化物半導体層140は、薄膜トランジスタ100のチャネル層である。チャネル層が透明アモルファス酸化物半導体で構成される薄膜トランジスタは、キャリア移動度が高く、大画面及び高精細の表示装置に適している。また、透明アモルファス酸化物半導体は、低温成膜が可能であるため、プラスチック又はフィルムなどのフレキシブル基板上に容易に形成することができる。
【0050】
[2−5.チャネル保護層]
チャネル保護層150は、酸化物半導体層140上に形成される。例えば、チャネル保護層150は、酸化物半導体層140を覆うように、酸化物半導体層140上及びゲート絶縁層130上に形成される。チャネル保護層150は、酸化物半導体層140を保護するために設けられた絶縁層である。チャネル保護層150の膜厚は、例えば、100nm〜300nmである。
【0051】
チャネル保護層150は、複数の層を含んでいる。具体的には、
図4に示すように、チャネル保護層150は、2層構造であり、順に積層された第1酸化膜151及び第2酸化膜152を含んでいる。
【0052】
[2−5−1.第1酸化膜]
第1酸化膜151は、酸化物半導体層140上に設けられた絶縁膜である。例えば、第1酸化膜151は、シリコン酸化膜である。あるいは、第1酸化膜151は、酸化アルミニウム膜でもよい。第1酸化膜151の膜厚は、例えば、5nm〜40nmである。
【0053】
[2−5−2.第2酸化膜]
第2酸化膜152は、第1酸化膜151上に設けられた絶縁膜である。例えば、第2酸化膜152は、シリコン酸化膜である。あるいは、第2酸化膜152は、酸化アルミニウム膜でもよい。第2酸化膜152の膜厚は、例えば、チャネル保護層150としての膜厚が300nm以下となるような厚さである。つまり、第2酸化膜152の膜厚は、第1酸化膜151の膜厚と合わせて300nm以下となるような厚さである。
【0054】
なお、第1酸化膜151と第2酸化膜152とは、同じ材料から構成されてもよく、異なる材料から構成されてもよい。
【0055】
また、第1酸化膜151及び第2酸化膜152には、ドレイン電極160d及びソース電極160sのそれぞれを酸化物半導体層140に接続するためのコンタクトホールが設けられている。ドレイン電極160d及びソース電極160sを構成する材料がそれぞれ、コンタクトホールの壁面に沿って酸化物半導体層140まで達している。あるいは、コンタクトホールには、ドレイン電極160d及びソース電極160sを構成する材料がそれぞれ充填されていてもよい。
【0056】
[2−6.ドレイン電極及びソース電極]
ドレイン電極160d及びソース電極160sは、チャネル保護層150上に所定形状で形成される。例えば、ドレイン電極160d及びソース電極160sは、チャネル保護層150上に、基板水平方向に離間して対向配置されている。具体的には、ドレイン電極160d及びソース電極160sはそれぞれ、コンタクトホールを介して酸化物半導体層140に接続されるように、チャネル保護層150上に形成される。ドレイン電極160d及びソース電極160sの膜厚は、例えば、30nm〜300nmである。
【0057】
ドレイン電極160d及びソース電極160sは、導電性を有する材料からなる電極である。ドレイン電極160d及びソース電極160sは、例えば、銅の単層膜(Cu膜)、銅膜及びタングステン膜の積層構造(Cu/W)、銅膜及び窒化チタン膜の積層構造(Cu/TiN)、又は、銅及びマンガンの合金膜、銅膜並びにモリブデン膜の積層構造(CuMn/Cu/Mo)などで構成される。あるいは、ドレイン電極160d及びソース電極160sの材料としては、例えば、ゲート電極120の材料と同一の材料を用いることができる。
【0058】
[2−7.層間絶縁層]
層間絶縁層170は、チャネル保護層150の上方に形成される。層間絶縁層170は、チャネル保護層150、ドレイン電極160d及びソース電極160s上に形成される。例えば、層間絶縁層170は、ドレイン電極160d及びソース電極160sを覆うように、チャネル保護層150上、ドレイン電極160d及びソース電極160s上に形成される。
【0059】
層間絶縁層170は、薄膜トランジスタ100のパッシベーション膜である。層間絶縁層170の膜厚は、例えば、200nm〜500nmである。
【0060】
また、層間絶縁層170の一部は、貫通するように開口されている。つまり、層間絶縁層170には、ソース電極160sの一部を露出させるためのコンタクトホールが形成されている。
【0061】
コンタクトホールは、上部電極180とソース電極160sとを電気的に接続するために形成されたコンタクトホールである。上部電極180を構成する材料が、例えば、コンタクトホールの壁面に沿って、ソース電極160sまで達している。あるいは、コンタクトホールには、上部電極180を構成する材料が充填されていてもよい。
【0062】
層間絶縁層170は、複数の層を含んでいる。具体的には、
図4に示すように、層間絶縁層170は、3層構造であり、順に積層された、下部層間絶縁層171と、バリア層172と、上部層間絶縁層173とを含んでいる。
【0063】
[2−7−1.下部層間絶縁層]
下部層間絶縁層171は、ドレイン電極160d及びソース電極160s上に設けられた絶縁膜である。下部層間絶縁層171の膜厚は、層間絶縁層170としての膜厚が500nm以下となるような膜厚である。
【0064】
下部層間絶縁層171は、電気絶縁性を有する材料から構成される。例えば、下部層間絶縁層171は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、酸化アルミニウム膜などの無機材料から構成される膜、又は、シリコン、酸素及びカーボンを含む無機材料から構成される膜などの単層膜、又は、これらの積層膜である。
【0065】
[2−7−2.バリア層]
バリア層172は、下部層間絶縁層171上に設けられた絶縁膜である。バリア層172は、空気中の水分などが外部から酸化物半導体層140に浸入するのを抑制するための層である。
【0066】
バリア層172は、例えば、アルミナ膜である。バリア層172の膜厚は、例えば、30nm〜100nmである。
【0067】
[2−7−3.上部層間絶縁層]
上部層間絶縁層173は、バリア層172上に設けられた絶縁膜である。上部層間絶縁層173の膜厚は、層間絶縁層170としての膜厚が500nm以下となるような膜厚である。
【0068】
上部層間絶縁層173は、電気絶縁性を有する材料から構成される。例えば、上部層間絶縁層173は、下部層間絶縁層171と同じ材料から構成される。
【0069】
[2−8.上部電極]
上部電極180は、ドレイン電極160d及びソース電極160sの上方に所定形状で形成される。具体的には、上部電極180は、層間絶縁層170上に形成される。上部電極180の膜厚は、例えば、200nm〜500nmである。
【0070】
上部電極180は、ドレイン電極160d及びソース電極160sの一方に接続される。具体的には、上部電極180は、コンタクトホールを介してソース電極160sに電気的に接続されている。
【0071】
上部電極180は、例えば、ドレイン電極160d及びソース電極160sと同じ材料から構成される。なお、層間の密着性を向上させるために、ITO膜と金属膜とをこの順で積層してもよい。
【0072】
[3.TFT基板の製造方法]
続いて、本実施の形態に係るTFT基板20の製造方法について
図5A及び
図5Bを用いて説明する。
図5A及び
図5Bは、本実施の形態に係るTFT基板20の製造工程を示す概略断面図である。
【0073】
[3−1.ゲート電極の形成]
まず、
図5Aの(a)に示すように、基板110を準備し、基板110の上方に所定形状のゲート電極120を形成する。例えば、基板110上に金属膜をスパッタリングによって成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチングによって金属膜を加工することにより、所定形状のゲート電極120を形成する。
【0074】
具体的には、まず、基板110としてガラス基板を準備し、基板110上に、20nmのMo膜と200nmのCu膜とをスパッタリングによって順に成膜する。そして、フォトリソグラフィでレジストパターンを形成した後、ウェットエッチングによってMo膜及びCu膜を加工することにより、ゲート電極120を形成する。
【0075】
なお、Mo膜及びCu膜のウェットエッチングは、例えば、PAN(Phosphoric−Acetic−Nitric−acid)液を用いて、室温で行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。また、基板110は、例えば、G8.5のガラス基板(厚さ:0.5mm、X:2500mm×Y:2200mm)である。
【0076】
[3−2.ゲート絶縁層の形成]
次に、
図5Aの(b)に示すように、基板110の上方にゲート絶縁層130を形成する。例えば、ゲート電極120を覆うようにゲート絶縁層130をプラズマCVD又はスパッタリングによって成膜する。ゲート絶縁層130は、第1絶縁膜131及び第2絶縁膜132から構成される。
【0077】
具体的には、ゲート電極120を覆うように基板110上に、350nmのシリコン窒化膜から構成される第1絶縁膜131と50nmのシリコン酸化膜から構成される第2絶縁膜132とをプラズマCVDによって順に成膜することで、ゲート絶縁層130を形成する。このときの成膜温度は、例えば、350℃〜400℃である。成膜温度が350℃より低い場合には、シリコン窒化膜中の水素含有量が増加するため好ましくない。シリコン窒化膜中の水素の結合量は、N−H結合が3.3×10
22cm
−3以下、Si−H結合が、2.3×10
21cm
−3であることが好ましい。
【0078】
シリコン窒化膜から構成される第1絶縁膜131は、例えば、窒素ガス(N
2)、アンモニアガス(NH
3)及びシランガス(SiH
4)を導入ガスに用いることで成膜することができる。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が380℃、パワー密度が0.16W/cm
2、プロセス距離(電極間距離)が650mil(0.65インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、N
2ガス流量が63000sccm、NH
3ガス流量が25000sccm、SiH
4ガス流量が2200sccmである。
【0079】
シリコン酸化膜から構成される第2絶縁膜132は、例えば、亜酸化窒素ガス(N
2O)、アルゴンガス(Ar)及びシランガス(SiH
4)を導入ガスに用いることで成膜することができる。なお、Arガスは、N
2Oガスの希釈ガスとして用いられる。これにより、効率的にガスが分解され、良質な酸化膜が形成され、かつ、N
2Oの使用量を抑制することができる。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が380℃、パワー密度が0.145W/cm
2、プロセス距離(電極間距離)が650mil(0.65インチ)、プロセス圧力が126.65Pa、N
2Oガス流量が83000sccm、Arガス流量が47000sccm、SiH
4ガス流量が1100sccmである。なお、第2絶縁膜132の成膜は、第1絶縁膜131の成膜に連続して行われる。つまり、プラズマCVD装置を用いて第1絶縁膜131を成膜した後、プラズマCVD装置のチャンバー内の真空を破ることなく、第2絶縁膜132の成膜を行う。これにより、不純物が混入する可能性を低減することができる。
【0080】
[3−3.プラズマ処理]
次に、
図5Aの(c)に示すように、ゲート絶縁層130の第2絶縁膜132に対する窒化処理の一例であるプラズマ処理を行う。つまり、第2絶縁膜132を形成した後、酸化物半導体層140を形成する前に、プラズマ処理を行う。
【0081】
具体的には、第2絶縁膜132の成膜に用いたチャンバー内に、アンモニアガス(NH
3)、窒素ガス(N
2)などを用いてプラズマ190を発生させる。プラズマ処理に用いるガスには、水素原子が含まれてもよい。水素原子がプラズマ処理に用いるガス中に含まれることにより、シリコン層の表面のダングリングボンドを終端でき、酸化物半導体層140との界面の欠陥準位を低減できる。なお、第2絶縁膜132に結合される水素原子は、酸化物半導体層140との界面の欠陥準位を低減するためにのみ利用されるため、当該水素原子の量は第1絶縁膜131から離脱する水素原子の量に比べて圧倒的に少ない。したがって、第2絶縁膜132に結合される水素原子による酸化物半導体層140の低抵抗化への影響は無視できる。
【0082】
プラズマ190を発生させる時間、すなわち、プラズマ処理時間は、例えば、30秒〜60秒である。また、プラズマ処理温度、すなわち、基板温度は、350℃〜400℃である。例えば、基板温度は、第1絶縁膜131の成膜時の成膜温度と同一の温度である。具体的なプラズマ処理条件は、例えば、パワー密度が0.1W/cm
2、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が160Pa、NH
3ガス流量が15000sccmである。なお、プラズマ処理は、第2絶縁膜132の成膜に連続して行われる。つまり、プラズマCVD装置を用いて第2絶縁膜132を成膜した後、プラズマCVD装置のチャンバー内の真空を破ることなく、プラズマ処理を行う。これにより、不純物が混入する可能性を低減することができる。
【0083】
[3−4.酸化物半導体層の形成]
次に、
図5Aの(d)に示すように、基板110の上方に、かつ、ゲート電極120に対向する位置に所定形状の酸化物半導体層140を形成する。例えば、ゲート絶縁層130上に酸化物半導体膜をスパッタリングによって成膜する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングによって酸化物半導体膜を加工することにより、所定形状の酸化物半導体層140を形成する。
【0084】
具体的には、組成比In:Ga:Zn=1:1:1のターゲット材を用いた、酸素(O
2)とアルゴン(Ar)との混合ガス雰囲気でのスパッタリングによって、ゲート絶縁層130上に90nmのアモルファスInGaZnO膜を成膜する。より具体的な成膜条件は、例えば、DCマグネトロンスパッタ法において、パワーが12kW、成膜ガスの酸素分圧が4.5%、成膜レートが100nm/minである。
【0085】
そして、ゲート絶縁層130上に成膜されたアモルファスInGaZnOをウェットエッチングすることで、酸化物半導体層140を形成する。InGaZnOのウェットエッチングは、例えば、リン酸(H
3PO
4)、硝酸(HNO
3)及び界面活性剤を混合した薬液を用いて行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
【0086】
[3−5.第1酸化膜の形成]
次に、
図5Aの(e)に示すように、酸化物半導体層140上に第1酸化膜151を形成する。例えば、酸化物半導体層140を覆うように第1酸化膜151をプラズマCVDによって成膜する。
【0087】
具体的には、酸化物半導体層140を覆うようにゲート絶縁層130上に、5nm〜40nmのシリコン酸化膜を成膜することで、第1酸化膜151を形成する。この時の成膜温度は、例えば、220℃〜260℃である。シリコン酸化膜は、例えば、シランガス(SiH
4)と亜酸化窒素ガス(N
2O)とを導入ガスに用いることで成膜することができる。なお、成膜ガスとして、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)及び酸素(O
2)を用いることも可能であるが、TEOS及び酸素を用いる場合には、第1酸化膜151と酸化物半導体層140との界面に未分解炭素が残留することによって、当該界面の準位及び固定電荷が増加される。したがって、成膜ガスとしては、SiH
4ガス及びN
2Oガスを用いることが好ましい。
【0088】
SiH
4ガスとN
2Oガスとの流量比について、SiH
4ガスの割合が増加するにしたがって、成膜レートが大きく(すなわち、成膜が速く)なり、生産性が向上するが、成膜時における水素ラジカルの発生量及びシリコン酸化膜における水素量が増大することにより、酸化物半導体層140が低抵抗化する。したがって、SiH
4ガスの割合は、小さい方が好ましく、例えば、SiH
4ガスの流量の、SiH
4ガス及びN
2Oガスの合計流量に対する比は、1.1%以下であればよい。なお、希釈ガスとして、アルゴンガス、窒素ガスなどを添加することにより、SiH
4ガスの分解が促進されるため、成膜レートを大きくすることができる。しかし、希釈ガスとしてアルゴンガス、窒素ガスなどを添加することにより、成膜時におけるイオンボンバードメントにより酸化物半導体層140がダメージを受ける。このため、酸化物半導体層140の酸素が欠損してキャリアが増加することにより、酸化物半導体層140が低抵抗化する。したがって、希釈ガスとしてアルゴンガス、窒素ガスなどを添加しないことが好ましい。
【0089】
具体的な成膜条件は、例えば、パワー密度が0.238W/cm
2、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、N
2Oガス流量が88500sccm、SiH
4ガス流量が980sccmである。
【0090】
[3−6.プラズマ処理]
次に、
図5Aの(f)に示すように、酸化物半導体層140に対する酸化性処理の一例であるプラズマ処理を行う。つまり、第1酸化膜151を形成した後、第2酸化膜152を形成する前に、プラズマ処理を行う。これにより、酸化物半導体層140と第1酸化膜151との界面の酸素欠陥を効率的に修復することができる。本実施の形態では、当該酸素欠陥の修復量を酸化性処理のパラメータによって調整することで、薄膜トランジスタ100の閾値を調整する。当該閾値の調整については、後で詳述する。
【0091】
プラズマ処理において、具体的には、第1酸化膜151の成膜に用いたチャンバー内に、亜酸化窒素ガス(N
2O)を用いてプラズマ191を発生させる。プラズマ191を発生させる時間、すなわち、プラズマ処理時間は、例えば、5秒〜30秒である。また、プラズマ処理温度、すなわち、基板温度は、220℃〜260℃である。例えば、基板温度は、第1酸化膜151の成膜時の基板温度と同一の温度である。具体的なプラズマ処理条件は、例えば、パワー密度が0.05〜0.3W/cm
2、プロセス距離(電極間距離)が750mil(0.75インチ)、プロセス圧力が93.32Pa、N
2Oガス流量が30000sccmである。
【0092】
なお、プラズマ処理は、第1酸化膜151の成膜に連続して行われる。つまり、プラズマCVD装置を用いて第1酸化膜151を成膜した後、プラズマCVD装置のチャンバー内の真空を破ることなく、プラズマ処理を行う。これにより、不純物が混入する可能性を低減することができる。
【0093】
[3−7.第2酸化膜の形成]
次に、
図5Aの(g)に示すように、第1酸化膜151上に第2酸化膜152を形成する。例えば、第1酸化膜151上に、200nm程度のシリコン酸化膜を成膜することで、第2酸化膜152を形成する。この時の成膜温度は、例えば、220℃〜260℃である。例えば、成膜温度、及び、導入ガスなどは、第1酸化膜151の場合と同一である。
【0094】
このように、第1酸化膜151の形成、プラズマ処理、及び、第2酸化膜152の形成を同一のチャンバー内で行うことができる。また、基板温度も全て同じでもよい。このため、プロセス工程が容易になり、コストを低減することができる。
【0095】
なお、第1酸化膜151の成膜工程、プラズマ処理工程、第2酸化膜152の成膜工程のそれぞれのプロセス条件の詳細については、後で説明する。また、第2酸化膜152を形成した後、所定の温度の加熱処理(アニール処理)を行ってもよい。例えば、ドライエア、又は、酸素雰囲気中において、成膜温度以上の温度でアニール処理してもよい。例えば、アニール温度は350℃としてよい。また、アニール時間は、7分程度の基板温度安定時間が経過した後、1時間としてもよい。これにより、酸化物半導体層140中の酸素欠陥が修復され、半導体性を維持することができる。また、上記ドライエアは、大気圧下露点が−70℃以下としてよい。
【0096】
[3−8.ドレイン電極及びソース電極の形成]
次に、
図5Bの(a)に示すように、第2酸化膜152(チャネル保護層150)上にドレイン電極160d及びソース電極160sを形成する。具体的には、まず、チャネル保護層150の一部をフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって除去することで、コンタクトホールを形成する。つまり、酸化物半導体層140の一部を露出させるためのコンタクトホールをチャネル保護層150に形成する。
【0097】
例えば、第1酸化膜151及び第2酸化膜152がシリコン酸化膜である場合、ドライエッチングとして反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。このとき、エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)及び酸素ガス(O
2)を用いることができる。ガス流量、圧力、印加電力及び周波数などのパラメータは、基板サイズ、エッチングの膜厚などによって適宜設定される。例えば、パワー密度を0.255W/cm
2、プロセス圧力を50Pa、O
2ガス流量を1300sccm、CF
4ガス流量を3800sccmとしてよい。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
【0098】
そして、形成したコンタクトホールを埋めるようにして、チャネル保護層150上に金属膜をスパッタリングによって成膜する。例えば、20nmのMo膜、300nmのCu膜、及び、50nmの銅及びマンガンの合金膜(CuMn膜)を順にチャネル保護層150上に積層する。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、積層した金属膜を加工することで、所定形状のドレイン電極160d及びソース電極160sを形成する。Mo膜、Cu膜、及び、CuMn膜のウェットエッチングは、例えば、PAN液を用いて、室温にて行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
【0099】
[3−9.層間絶縁層の形成]
次に、
図5Bの(b)に示すように、層間絶縁層170を形成する。具体的には、まず、ドレイン電極160d及びソース電極160sを覆うように、下部層間絶縁層171をプラズマCVD又はスパッタリングによって形成する。例えば、ドレイン電極160d及びソース電極160sを覆うようにチャネル保護層150上に、200nmのシリコン酸化膜をプラズマCVDによって成膜する。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が230℃、パワー密度が0.238W/cm
2、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、N
2Oガス流量が88500sccm、SiH
4ガス流量が980sccmである。
【0100】
次に、プラズマCVD、ALD(Atomic Layer Deposition)又はスパッタリングなどによって、下部層間絶縁層171上にバリア層172を形成する。例えば、スパッタリングによって30nmの酸化アルミニウム膜を下部層間絶縁層171上に成膜することで、バリア層172を形成する。具体的には、アルミニウムをターゲットに用い、酸素(O
2)とアルゴン(Ar)との混合ガス雰囲気でのRFマグネトロンスパッタ法によって酸化アルミニウム膜を成膜する。成膜条件は、例えば、パワーが30kW、アルミニウムターゲットの純度が99.99%、成膜ガスであるArとO
2との流量比が1対1、成膜レートが6.0nm/minである。
【0101】
次に、プラズマCVD又はスパッタリングによって、バリア層172上に上部層間絶縁層173を形成する。具体的には、プラズマCVDによって、400nmのシリコン窒化膜をバリア層172上に成膜することで、上部層間絶縁層173を形成する。具体的な成膜条件は、例えば、成膜温度が290℃、パワー密度が0.238W/cm
2、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、N
2Oガス流量が88500sccm、SiH
4ガス流量が980sccmである。
【0102】
なお、層間絶縁層170の成膜中に基板は真空下に置かれるので、酸化物半導体層140の酸素が欠損し、低抵抗化する。このため、成膜後にドライエア、又は、酸素雰囲気中でのアニール処理を行うことで、酸素欠陥の修復を行う。例えば、アニール温度は300℃としてよい。また、アニール時間は、7分程度の基板温度安定時間が経過した後、1時間としてもよい。また、上記ドライエアは、大気圧下露点が−70℃以下としてよい。
【0103】
[3−10.上部電極の形成]
次に、
図5Bの(c)に示すように、層間絶縁層170(上部層間絶縁層173)上に上部電極180を形成する。具体的には、まず、層間絶縁層170の一部をフォトリソグラフィ及びドライエッチングによって除去することで、コンタクトホールを形成する。つまり、ドレイン電極160d又はソース電極160sの一部を露出させるためのコンタクトホールを層間絶縁層170に形成する。
【0104】
例えば、RIEなどのドライエッチングによって、層間絶縁層170の一部を除去する。エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)及び酸素ガス(O
2)を用いることができる。パワー密度、圧力、ガス流量などのパラメータは、基板サイズ、エッチングの膜厚などによって適宜設定される。例えば、パワー密度を0.255W/cm
2、プロセス圧力を50Pa、O
2ガス流量を1300sccm、CF
4ガス流量を3800sccmとしてよい。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
【0105】
続いて、形成したコンタクトホールを埋めるようにして、層間絶縁層170上に導電膜をスパッタリングによって成膜する。例えば、20nmのMo膜、300nmのCu膜、50nmのCuMn膜を順に層間絶縁層170上に積層する。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、積層した導電膜を加工することで、所定形状の上部電極180を形成する。Mo膜、Cu膜、及び、CuMn膜のウェットエッチングは、例えば、PAN液を用いて、室温にて行うことができる。また、レジストの剥離には、アルカリ添加物を含む剥離液を用いてよい。
【0106】
以上の工程を経て、
図4に示すTFT基板20が製造される。なお、以降の工程において、有機EL素子40などがさらに積層される。
【0107】
[4.酸化性処理条件と薄膜トランジスタの閾値との関係]
続いて、本実施の形態に係るTFT基板20の酸化性処理条件と薄膜トランジスタ100の閾値Vthとの関係について説明する。具体的には、上述したようにTFT基板20を製造する際の第1酸化膜151に施すプラズマ処理条件を変化させて、薄膜トランジスタ100の閾値Vthを測定した結果について説明する。
【0108】
測定対象の薄膜トランジスタ100は、G8.5のガラス基板(厚さ:0.5mm、X:2500mm×Y:2200mm)にマトリクス状に形成される。ここで、薄膜トランジスタ100のチャネル幅W及びチャネル長Lはそれぞれ12μm及び13μmである。また、薄膜トランジスタ100の第1酸化膜151の膜厚は、20nmであり、成膜条件は、パワー密度が0.238W/cm
2、プロセス距離(電極間距離)が600mil(0.6インチ)、プロセス圧力が133.32Pa、N
2Oガス流量が88500sccm、SiH
4ガス流量が980sccmである。また、測定対象の薄膜トランジスタ100の第2酸化膜152の膜厚は、180nmであり、成膜条件は、第1酸化膜151と同じである。以上のように形成された第1酸化膜151に対して施されるプラズマ処理条件を
図6に示す。
図6は、本実施の形態に係るプラズマ処理条件と薄膜トランジスタ100の閾値との関係を示す表である。
【0109】
図6に示すように10通りのN
2Oプラズマ処理条件を用いて薄膜トランジスタのサンプルA〜Jを製造した。本実施の形態では、N
2Oプラズマ処理条件のうち、処理時間及びパワー密度を変化させた。なお、
図6に示されないプラズマ処理条件は、全サンプルに対して共通であり、プロセス距離(電極間距離)が750mil(0.75インチ)、プロセス圧力が93.32Pa、N
2Oガス流量が30000sccmである。また、サンプルA及びJは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ100の比較例である。サンプルAには、N
2Oプラズマ処理が施されていない。また、サンプルJにおいては、第1酸化膜151を成膜する前に、N
2Oプラズマ処理が施されている。すなわち、サンプルJにおいては、酸化物半導体層140及び第2絶縁膜132の表面にN
2Oプラズマ処理が施されている。その他のサンプルB〜Jは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ100であり、第1酸化膜151にN
2Oプラズマ処理が施された後に、第2酸化膜152が成膜されている。
【0110】
以上のように製造されたサンプルに対して、閾値Vthを測定するために電気特性が測定された。ここでは、電気特性として、各サンプルの薄膜トランジスタに印加されるゲート−ソース間電圧Vgsと、ドレイン−ソース間に流れる電流Idsとの関係が測定された。測定された電気特性の例を
図7A、
図7B及び
図7Cに示す。
図7A、
図7B及び
図7Cは、
図6に示すサンプルA、D及びGの電気特性の測定結果を示すグラフである。
図7A、
図7B及び
図7Cにおいて、TFT基板20のエッジから200mmを除く領域の、長辺方向6点及び短辺方向6点の合計36点において電気特性を求めて、Ids−Vgs曲線を描いた。そして、当該曲線から、Idsが、W/L×10
−9(W:チャネル幅、L:チャネル長)となるときのVdsを閾値Vthとして、各曲線に対する閾値Vthを求め、それらの平均値(Ave)とばらつき(3σ)を算出した。同様に、全サンプルに対して閾値Vthの平均値(Ave)とばらつき(3σ)とを求めた結果を
図6に示す。
【0111】
図6に示す結果から、本発明者は、N
2Oプラズマ処理条件と薄膜トランジスタ100の閾値Vthの平均値との間の関係を見出した。すなわち、発明者は、薄膜トランジスタ100の閾値Vthの平均値と、N
2Oプラズマ処理の時間及びパワー密度の累乗の積とに線形関係があることを見出した。当該関係を
図8に示す。
図8は、本実施の形態に係るN
2Oプラズマ処理の時間、及び、パワー密度の二乗の積と、薄膜トランジスタ100の閾値Vthの平均値との関係を示すグラフである。
図8に示すように、サンプルB〜Hについて、N
2Oプラズマ処理の時間、及び、パワー密度の二乗の積と、薄膜トランジスタ100の閾値Vthの平均値との関係は、最小二乗法などを用いることにより、傾きが0.91、切片が0.44の直線で近似できる。
【0112】
なお、
図8においてサンプルIの測定結果は、サンプルB〜Hから得られる直線より、下方に位置する。これは、N
2Oプラズマ処理による閾値Vthの増加が飽和した状態であると推測される。また、サンプルIでは、閾値Vthのばらつき(3σ)も比較的大きい。サンプルIの閾値Vthのばらつき(3σ)の増加のメカニズムは明らかではないが、酸化物半導体層140中に過剰に注入された酸素原子が、閾値特性の変動要因になっていると推測される。以上のように、本実施の形態における例では、プラズマ処理の時間を15秒以下、パワー密度を0.2W/cm
−3以下の範囲で制御することが好ましい。なお、上述したプラズマ処理の時間及びパワー密度の範囲は、一例であり、好ましい範囲は、薄膜トランジスタ100の構成、プラズマ処理の他の条件などによって適宜定められる。
【0113】
また、サンプルJは、上述のとおり、第1酸化膜151の形成前にN
2Oプラズマ処理を施した例である。
図8に示すように、サンプルJにおいても、閾値Vthは、プラス側にシフトするが、
図6に示すように、閾値Vthのばらつき(3σ)は、他のサンプルA〜Iの3倍以上の大きさである。これは、酸化物半導体層140の表面に直接N
2Oプラズマ処理を施すと、酸化物半導体層140にプラズマダメージを与え、酸化物半導体層140の表面又はバルクの酸素原子を脱離させ、電気的特性を悪化させるためであると推測される。よって、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ100のように、N
2Oプラズマ処理の前に、薄い第1酸化膜151を酸化物半導体層140の表面に形成することが好ましい。
【0114】
上記直線の傾きは、第1酸化膜151の膜厚などに応じて変化する。例えば、当該膜厚をより大きくすることにより、N
2Oプラズマによる酸素原子の透過量が減少するため、上記傾きは小さくなる。すなわち、酸化物半導体層140まで酸素原子を到達させるために、より長時間で、より高いパワー密度のN
2Oプラズマ処理が必要となるが、傾きが減少するため閾値Vthの制御性を向上させることができるという利点がある。一方、当該膜厚をより小さくすることにより、N
2Oプラズマによる酸素原子の透過量が増加するため、上記傾きは増加する。すなわち、酸化物半導体層140まで酸素原子を到達させるために、より短時間で、より低いパワー密度のN
2Oプラズマ処理で十分になる。ただし、酸化物半導体層140において補完され得る酸素欠陥量には限度があり、長時間、高パワーでN
2Oプラズマ処理を施しても閾値Vthのプラスシフト量は限度以上に増加しない(条件I)。しかしながら、酸化物半導体層140の膜厚を増大させた場合には、補完され得る酸素欠陥量も増加するため、そのような場合は第1酸化膜151の膜厚をより小さくすることにより、所望の閾値Vthに到達させるために必要なN
2Oプラズマ処理量を低減させることが可能になる。以上に述べたように、本実施の形態に係るTFT基板20の製造方法では、酸化物半導体層140の膜厚に応じて適切に第1酸化膜151の膜厚を選択することにより、閾値Vthの制御性を柔軟に調整することも可能になる。
【0115】
次に、具体的な薄膜トランジスタ100の閾値Vthの調整手順について説明する。まず、TFT基板20の製造前に、
図8に示すようなN
2Oプラズマ処理の時間、及び、パワー密度の累乗の積と、薄膜トランジスタ100の閾値Vthとの関係を求める。そして、当該関係を用いて、薄膜トランジスタ100の閾値Vthが所定の値となるように、N
2Oプラズマ処理の時間、及び、パワー密度を定めることによって、所定の閾値Vthを有する薄膜トランジスタ100が形成されたTFT基板20を製造することができる。また、本実施の形態では、N
2Oプラズマ処理の時間、及び、パワー密度の累乗の積と閾値Vthとの関係が線形関係であるため、調整が容易である。
【0116】
なお、上述のような線形関係をもたらす詳細なメカニズムは明らかではない。しかしながら、プラズマ処理時間に対して酸化物半導体層140への酸素原子の注入量は線形に増加すると想定でき、酸素原子の注入量に応じて閾値Vthも線形に増加していると推測される。一方、プラズマ処理のパワー密度を増加させると、単位時間当たりに第1酸化膜151に照射される酸素原子の量は、指数関数的に増加すると想定できる。ここで、照射された酸素原子が酸化物半導体層140に到達するには、酸化物半導体層140上の第1酸化膜151を透過する必要がある。第1酸化膜151に照射された酸素原子は、第1酸化膜151により酸化物半導体層140への注入が抑制されるため、照射される酸素原子量の増加が指数関数的でも、最終的に、酸化物半導体層140に注入される酸素原子の量は、プラズマ処理のパワー密度の累乗(本実施の形態では二乗)に比例して増加すると推測される。また、この関係は、第1酸化膜151の膜厚及びプラズマ処理条件により変化すると考えられるため、閾値Vthを調整する場合には、閾値Vthの制御性がよい(すなわち、プロセスマージンが大きくなる)第1酸化膜151の膜厚及び材質、プラズマ処理条件などを採用することが好ましい。
【0117】
[5.まとめ]
以上のように、本実施の形態に係るTFT基板20の製造方法は、基板110上に薄膜トランジスタ100が形成されたTFT基板20の製造方法であって、前記基板110の上方に酸化物半導体層140を形成する工程と、酸化物半導体層140上に第1酸化膜151を形成する工程と、第1酸化膜151を形成した後に、酸化物半導体層140に対する酸化性処理を行う工程と、酸化性処理を行った後に、第1酸化膜151の上方に第2酸化膜152を形成する工程とを含み、酸化性処理を行う工程において、酸化性処理のパラメータと薄膜トランジスタ100の閾値との予め求められた関係に基づいて、閾値が所定の値となるように、パラメータが定められる。
【0118】
このように、本実施の形態に係るTFT基板20の製造方法では、酸化物半導体層140上に、酸化膜を二度に分けて成膜することにより、酸化物半導体層140の酸素欠陥の修復、すなわち、閾値の調整を、第1酸化膜151を介して行うことができる。また、酸化性処理のパラメータと薄膜トランジスタ100の閾値との関係を予め求めて、当該関係に基づいて、所望の閾値を得られるように酸化性処理のパラメータを定めるため、所望の閾値を有する薄膜トランジスタ100を備えるTFT基板20を製造することができる。また、本実施の形態では、酸化物半導体層140上に第1酸化膜151を形成した後に酸化性処理を行うので、酸化物半導体層140に与えるダメージを抑制しながら、酸化物半導体層140と第1酸化膜151との界面の酸素欠陥を効率的に修復することができる。また、本実施の形態に係るTFT基板20の製造方法は、プロセス負荷を格別増大させないため、生産性に優れている。
【0119】
また、例えば、酸化性処理は、プラズマ処理であってもよい。
【0120】
これにより、酸化物半導体層140と第1酸化膜151との界面、及び、酸化物半導体層140内の酸素欠陥を適切に修復することができるため、薄膜トランジスタ100の閾値を所望の値に調整することができる。また、第1酸化膜151及び第2酸化膜152の少なくとも一方がプラズマCVDにより成膜される場合には、第1酸化膜151及び第2酸化膜152の少なくとも一方の成膜に連続してプラズマ処理を行うことができる。これにより、プラズマCVD装置のチャンバー内の真空を破ることなく、成膜及びプラズマ処理を連続して行うことができるため、チャンバー内に不純物が混入する可能性を低減することができる。
【0121】
また、例えば、酸化性処理のパラメータは、プラズマ処理の処理時間を含んでもよい。
【0122】
このように、酸化性処理のパラメータとしてプラズマ処理の処理時間を用いる場合には、当該処理時間と、当該閾値とが線形関係を有するため、薄膜トランジスタ100の閾値を、容易に所望の値に調整することができる。
【0123】
また、例えば、酸化性処理のパラメータは、プラズマ処理のパワー密度を含んでもよい。
【0124】
このように、酸化性処理のパラメータとしてプラズマ処理のパワー密度を用いる場合には、当該パワー密度の累乗と、当該閾値とが線形関係を有するため、薄膜トランジスタ100の閾値を、容易に所望の値に調整することができる。
【0125】
また、例えば、酸化性処理のパラメータは、プラズマ処理の処理時間及びプラズマ処理のパワー密度を含み、上記関係は、当該パワー密度の累乗及び当該処理時間の積と、前記閾値と、の線形関係であってもよい。
【0126】
これにより、当該パワー密度の累乗及び当該処理時間の積と、前記閾値と、が線形関係を有するため、薄膜トランジスタ100の閾値を、容易に所望の値に調整することができる。また、パワー密度及び処理時間の二つのパラメータを調整することができるため、パラメータ設定の自由度を高めることができる。また、例えば、上記関係は、当該パワー密度の二乗及び当該処理時間の積と、前記閾値と、の線形関係であってもよい。
【0127】
また、例えば、プラズマ処理において、亜酸化窒素ガスを用いてもよい。
【0128】
これにより、酸化物半導体層140の酸素欠陥を適切に修復することができる。
【0129】
また、例えば、プラズマ処理の処理時間は5秒以上、15秒以下であってもよい。
【0130】
これにより、プラズマ処理による酸化物半導体層140における酸素欠陥の修復量が飽和することなく、上記関係を維持することができる。
【0131】
また、例えば、第1酸化膜151の膜厚は、5nm以上、40nm以下であってもよい。
【0132】
これにより、酸化性処理に第1酸化膜151に注入される酸素原子が、第1酸化膜151を透過して、酸化物半導体層140に注入される。したがって、酸化物半導体層140の酸素欠陥を適切に修復することができる。
【0133】
また、例えば、第1酸化膜151は、シリコン酸化膜から構成されてもよい。
【0134】
また、例えば、酸化物半導体層140は、透明アモルファス酸化物半導体から構成されてもよい。
【0135】
また、例えば、酸化物半導体層140は、InGaZnOから構成されてもよい。
【0136】
(変形例)
上記の実施の形態では、薄膜トランジスタがボトムゲート型である例について示したが、トップゲート型でもよい。本変形例では、トップゲート型の薄膜トランジスタ400の製造方法について、
図9A及び
図9Bを用いて説明する。
図9A及び
図9Bは、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ400の製造方法を示す概略断面図である。
【0137】
[バッファ層の形成]
まず、
図9Aの(a)に示すように、基板410を準備し、基板410上にバッファ層415を形成する。例えば、基板410上に絶縁膜をプラズマCVDによって成膜する。
【0138】
具体的には、まず、基板410としてガラス基板を準備し、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜若しくはシリコン酸窒化膜又はこれらの積層膜を基板410上にバッファ層415として成膜する。バッファ層415の膜厚は、約100nm〜300nmである。この時の成膜温度は、例えば、350℃〜400℃である。
【0139】
なお、バッファ層415を設けることで、酸化物半導体層440と基板410との密着性を向上させることができる。また、基板410を構成する元素が酸化物半導体層440に拡散するのを抑制することができる。
【0140】
[酸化物半導体層の形成]
さらに、基板110の上方、すなわち、バッファ層415上に所定形状の酸化物半導体層440を形成する。例えば、バッファ層415上に酸化物半導体膜をスパッタリングによって成膜する。そして、フォトリソグラフィ及びエッチングによって酸化物半導体膜を加工することにより、所定形状の酸化物半導体層440を形成する。具体的な成膜条件及び加工条件は、実施の形態1に係る酸化物半導体層140の成膜条件及び加工条件と同一である。
【0141】
[第1酸化膜の形成]
次に、
図9Aの(b)に示すように、酸化物半導体層440上に第1酸化膜431を形成する。例えば、酸化物半導体層440を覆うように第1酸化膜431をプラズマCVDによって成膜する。
【0142】
具体的には、酸化物半導体層440を覆うようにバッファ層415上に、5nm〜40nmのシリコン酸化膜を成膜することで、第1酸化膜431を形成する。この時の成膜温度は、例えば、220℃〜260℃である。シリコン酸化膜は、例えば、シランガス(SiH
4)と亜酸化窒素ガス(N
2O)とを導入ガスに用いることで成膜することができる。
【0143】
[プラズマ処理]
次に、
図9Aの(c)に示すように、酸化性処理の一例であるプラズマ処理を行う。つまり、第1酸化膜431を形成した後、第2酸化膜432を形成する前に、プラズマ処理を行う。
【0144】
具体的には、第1酸化膜431の成膜に用いたチャンバー内に、亜酸化窒素ガス(N
2O)を用いてプラズマ490を発生させる。プラズマ490を発生させる時間、すなわち、プラズマ処理時間は、例えば、5秒〜30秒である。また、プラズマ処理温度、すなわち、基板温度は、220℃〜260℃である。
【0145】
[第2酸化膜の形成]
次に、
図9Aの(d)に示すように、第1酸化膜431上に第2酸化膜432を形成する。例えば、第1酸化膜431上に、200nmのシリコン酸化膜を成膜することで、第2酸化膜432を形成する。この時の成膜温度は、例えば、220℃〜260℃である。例えば、導入ガスなどは、第1酸化膜431の成膜と同一である。また、成膜温度は、例えば、プラズマ処理における基板温度と同一である。
【0146】
なお、第1酸化膜431と第2酸化膜432とが薄膜トランジスタ400のゲート絶縁層である。第2酸化膜432を形成した後、所定の温度の加熱処理(アニール処理)を行ってもよい。
【0147】
[ゲート電極の形成]
次に、
図9Bの(a)に示すように、基板410の上方に所定形状のゲート電極420を形成する。例えば、ゲート絶縁層430上に30nm〜400nmの金属膜をスパッタリングによって成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチングによって金属膜を加工することにより、所定形状のゲート電極420を形成する。具体的な成膜条件及び加工条件は、実施の形態1に係るゲート電極120の成膜条件及び加工条件と同一である。
【0148】
[層間絶縁層の形成]
次に、
図9Bの(b)に示すように、層間絶縁層470を形成する。層間絶縁層470は、例えば、実施の形態1に係る層間絶縁層170と同じ3層構造を有する。具体的な成膜条件は、実施の形態1に係る層間絶縁層170の成膜条件と同一である。
【0149】
[上部電極、ドレイン電極及びソース電極の形成]
次に、
図9Bの(b)に示すように、層間絶縁層470上に上部電極421、ドレイン電極460d及びソース電極460sを形成する。具体的には、まず、層間絶縁層470の一部をエッチング除去することで、コンタクトホールを形成する。つまり、ゲート電極420の一部及び酸化物半導体層440の一部を露出させるためのコンタクトホールを層間絶縁層470に形成する。具体的な加工条件は、実施の形態1に係る層間絶縁層470の加工条件と同一である。
【0150】
そして、形成したコンタクトホールを埋めるようにして、層間絶縁層470上に金属膜をスパッタリングによって成膜する。例えば、20nmのMo膜、300nmのCu膜、及び、50nmの銅及びマンガンの合金膜(CuMn膜)を順にチャネル保護層150上に積層する。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングによって、積層した金属膜を加工することで、所定形状の上部電極421、ドレイン電極460d及びソース電極460sを形成する。Mo膜、Cu膜、及び、CuMn膜のウェットエッチングは、例えば、PAN液を用いることができる。
【0151】
以上の工程を経て、トップゲート型の薄膜トランジスタ400が製造される。なお、以降の工程において、有機EL素子40などがさらに積層される。
【0152】
トップゲート型の薄膜トランジスタ400の場合も、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ100の場合と同様に、酸化性処理(本変形例ではN
2Oプラズマ処理)によって閾値Vthを調整することができる。
【0153】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0154】
そこで、以下では、他の実施の形態を例示する。
【0155】
例えば、上記の実施の形態では、酸化性処理としてN
2Oプラズマ処理を例に上げて説明したが、これに限らない。N
2Oの代わりに酸素ガス(O
2)を用いた酸素プラズマ処理でもよい。これにより、例えば、シリコン酸化膜の成膜ガスとして、シランガスと酸素ガスとを用いる場合は、酸素ガスを用いた酸素プラズマ処理を行うことで、成膜とプラズマ処理とを同一チャンバー内で連続的に実施することができる。したがって、装置の簡略化及び低コスト化などの生産上の利便性を高めることができる。
【0156】
また、プラズマ処理ではなく、酸化性のガスを用いたガス処理、あるいは、所定の温度で加熱を行う加熱処理(アニール処理)を酸化性処理として実施してもよい。また、酸化性処理のパラメータと薄膜トランジスタ100の閾値Vthとの関係は、線形関係以外の関係であってもよい。
【0157】
また、例えば、上記の実施の形態では、第1酸化膜151と第2酸化膜152とがともにシリコン酸化膜から構成される例について示したが、これに限らない。例えば、第1酸化膜151と第2酸化膜152とは、異なる酸化膜から構成されてもよい。例えば、第1酸化膜151が酸化アルミニウム膜から構成され、第2酸化膜152がシリコン酸化膜から構成されてもよい。
【0158】
また、例えば、上記の実施の形態では、チャネル保護層150が第1酸化膜151と第2酸化膜152とを含む2層構造である例について示したが、これに限らない。チャネル保護層150は、3層以上の酸化膜を含んでもよい。具体的には、第2酸化膜152上に第3酸化膜が積層されてもよい。
【0159】
また、例えば、上記の実施の形態では、薄膜トランジスタ100を用いた表示装置として有機EL表示装置10について説明したが、上記実施の形態における薄膜トランジスタ100は、液晶表示装置など、アクティブマトリクス基板が用いられる他の表示装置にも適用することができる。
【0160】
また、上述した有機EL表示装置10などの表示装置(表示パネル)については、フラットパネルディスプレイとして利用することができ、テレビジョンセット、パーソナルコンピュータ、携帯電話など、表示パネルを有するあらゆる電子機器に適用することができる。特に、大画面及び高精細の表示装置に適している。
【0161】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。
【0162】
したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0163】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。