特許第6358601号(P6358601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358601
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】粘性のあるペースト状物質の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 15/00 20060101AFI20180709BHJP
   B01F 7/04 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   B01F15/00 Z
   B01F7/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-560648(P2015-560648)
(86)(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公表番号】特表2016-508875(P2016-508875A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】EP2014054058
(87)【国際公開番号】WO2014135489
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2017年3月1日
(31)【優先権主張番号】102013102099.2
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508291766
【氏名又は名称】リスト ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100066061
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(74)【代理人】
【識別番号】100143340
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 美良
(72)【発明者】
【氏名】アルトハウス,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ハフナー,ローガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッテ,ダーニエル
(72)【発明者】
【氏名】ギュンデマン,カルステン
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−019123(JP,A)
【文献】 特開昭59−019099(JP,A)
【文献】 米国特許第04361081(US,A)
【文献】 特表2008−528260(JP,A)
【文献】 特開昭56−093032(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第03502437(DE,A)
【文献】 西独国特許出願公開第04303852(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 13/04
B01F 15/00
B01F 3/10
B29B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練部材(2、3)を備えたハウジング(1)内において、少なくとも1つの混練部材(2、3)が監視される、粘性のあるペースト状物質の処理方法であって、
前記混練部材の少なくとも一部を貫通する溝に加圧媒体が供給され、
前記混練部材へ向けて供給される前記加圧媒体の圧力を監視することにより制御信号が生成され、その制御信号により前記混練部材の状態が一義的に分類され、
前記制御信号は、前記加圧媒体の圧力の低下により生成され、圧力低下の際には、所定の圧力を保持するように、前記加圧媒体が供給されることを特徴とする方法。
【請求項2】
加圧媒体の圧力の低下からの制御信号は、ある時間に渉って生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
制御信号は、混練部材(2、3)への配管内の加圧媒体流量の測定より得られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
監視される混練部材(2、3)が識別されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
混練部材(2、3)を備えたハウジング(1)内において、少なくとも1つの混練部材(2、3)が監視装置(8)に連結されている、粘性のあるペースト状の物質の処理装置あって、
混練部材(2)は少なくとも部分的に、加圧媒体源(15)に連結された少なくとも1つの溝(14)に貫通され、
溝(14)は弁ブロック(6)を介して加圧媒体源(15)に連結され、弁ブロック(6)は圧力センサ(16)を備え、
前記加圧媒体源への加圧媒体配管に、少なくとも1つの流量センサが挿入されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
混練部材(2、3)からの複数の加圧媒体配管は、1つの弁ブロックに統合されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練部材を備えたハウジング内において特に粘性のあるペースト状物質の処理方法であって、少なくとも1つの混練部材が監視されることを特徴とする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、混合混練機として、多目的に用いられる。第一には、溶媒を回収する為にバッチ又は連続で時には減圧下の蒸発に用いられる。例えば、蒸留残滓であるトルエンディイソシアネートを処理するが、化学品及び薬品の残渣である毒性又は高沸点の溶媒、並びに溶液重合の溶媒、接着剤及び連結剤からの洗浄剤及びワニススラッジ、樹脂溶液、エラストマー溶液も処理する。
【0003】
更に、バッチ又は連続的に時には減圧下で、水分及び/又は溶媒を含む製品からの接触脱水が行われる。特に、顔料、染料、ファインケミカル、塩、酸化物、水酸化物、抗酸化剤などの添加剤、温度に敏感な医薬及びビタミン剤、作用剤、高分子、合成ゴム、高分子懸濁液、ラテックス、ヒドロゲル、ワックス、殺虫剤及び塩、触媒、残留物、アルカリ廃液などの化学又は医薬品からの残滓に用いられる。この方法は、例えば、塊状乳、砂糖代替品、澱粉誘導体、アルギン酸塩を製造及び/又は処理する際に、産業スラッジ、オイルスラッジ、バイオスラッジ、製紙スラッジ、ラッカースラッジの処理並びにねばねばした高粘性の付着物、廃棄物及びセルロース誘導体の処理にも用いられる。
【0004】
混合混練機においては、脱気及び/又は揮発成分の除去が行われる。これを、ポリエステル又はポリアミドの縮合後の高分子溶融物、合成繊維の紡糸液並びに固体状態の高分子又はエラストマーの顆粒あるいは粉末に適用する。
【0005】
混合混練機においては、連続で溶融状態において、特に、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセテート、ポリイミド、熱可塑性高分子、エラストマー、シリコーン、尿素樹脂、フェノール樹脂、洗剤及び肥料など高分子凝縮反応が行われることも多い。
【0006】
ポリアクリレート、ヒドロゲル、ポリオール、熱可塑性高分子、エラストマー、シンディオタクティクポリステロール及びポリアクリルアマイドを連続で重合反応を行わせることも多い。
【0007】
混合混練機においては、固体、液体又は多相反応が普く行われる。すなわち、フッ化水素酸、ステアリン酸、シアネート、ポリリン酸塩、シアヌル酸、セルロース誘導体、エステル類、エーテル類、ポリアセタール樹脂、スルファニル酸、銅フタロシアニン、澱粉誘導体、リン酸アンモニウム重合体、スルホン酸塩、殺虫剤及び肥料に用いられる。
【0008】
更に、固−気反応(例えばカルボキシル化)又は液−気反応が行われる。すなわち、酢酸塩、酸、例えば、BON、サリチル酸ナトリウム塩、パラヒドロキシ安息香酸塩及び薬物などへのコルベーシュミット反応に用いられる。
【0009】
液−液反応は、中和反応及びエステル交換反応において行われる。
【0010】
混合混練機による溶解及び/又は脱気は、合成繊維、ポリアミド、ポリエステル及びセルロースの紡糸液において行われる。
【0011】
いわゆるフラッシュは、顔料の処理又は製造の際に行われる。
【0012】
固体の後凝縮は、ポリエステル、ポリカーボネート及びポリアミドの製造又は処理において行われる。例えば、セルロース繊維などの繊維を溶媒と共に処理するスラリー化、塩、精密化学品、ポリオール、アルコキシドを処理する溶融物又は溶液からの結晶化、シリコーン、連結剤、フライアッシュを重合化、混合するコンパウンド化又は混合(連続又はバッチ)、高分子懸濁液の(特に連続的)凝析処理に用いられる。
【0013】
混合混練機において、別のバッチ又は連続の操作、例えば、加熱、乾燥、溶融、結晶化、混合、脱気、反応などの多機能な操作と組み合わせてもよい。それによって、高分子、エラストマー、無機製品、残滓、薬物、食料品、印刷用インクが製造又は処理される。
【0014】
混合混練機において、減圧昇華又は凝縮もでき、例えば、アントラキノン、金属塩化物、フェロセン、ヨウ素、金属有機結合などの中間製品が精製される。更に医薬中間体の製造も可能である。
【0015】
例えばアントラキノン、精密化学製品などの有機中間製品では、担体ガスが連続的に凝縮される。
【0016】
基本的には、一軸と二軸の混合混練機は異なったものである。一軸の混合混練機は特許文献1に記載されている。多軸混合混練機は、特許文献2〜5に記載されている。この場合には、1つの軸に径方向に板状部材が備えられ、板状部材の間には、軸方向に配列された混練棒が配置されている。これらの板状部材の間に他の軸に枠状に形成された混合・混練部材が噛み合っている。これらの混合・混練部材は、第一の軸の板状部材及び混練棒を清掃する。双方の軸の混練棒は、ハウジングの内壁も清掃する。
特許文献6には、円筒状のハウジング内に回転可能に装着された押出しスクリューを備えた、合成素材を混練・押出する押出し機が記載されている。スクリューの間には、物質の流れを監視するピンが挿入されている。ここでは、このピンの変形が測定される。同様のことが、特許文献7に記載されている。
特許文献8にも、同様のピンが押出しスクリューの螺旋部に形成された凹部に伸長している押出し機が記載されている。ここでは、例えば、押出し生成物内の金属粒子により、ピンの破断が確認される。
本発明のような混練混合機は、特許文献9に示されている。この文献には、混練部材の破断又は損傷などの監視が記載されている。ここでは、例えば混練部材中に装着された細管が加圧又は減圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第91405497.1号明細書
【特許文献2】スイス特許出願公開第506322号明細書
【特許文献3】欧州特許第0517068号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19940521号明細書
【特許文献5】独国特許第10160535号明細書
【特許文献6】米国特許第4504150号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第3502437号明細書
【特許文献8】米国特許第4508454号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第4303852号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、確実且つ障害無く装置を運転する方法の開発を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の課題は、監視することにより制御信号が生成され、その制御信号により前記混練部材の状態が一義的に分類され、前記制御信号は、1つの加圧媒体の圧力の低下により生成され、圧力低下の際には、所定の圧力を保持するように、加圧媒体が供給されることにより解決される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】粘性のあるペースト状物質を処理する装置の平面模式図
図2】監視装置を備えた混練部材の斜視図
図3】監視装置の操作例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここでは、混練部材の概念は広く解するべきである。ハウジングに固定されることの多い、いわゆる対向止め具、軸と共に回転する混練部材並びに混練棒が固定された板状部材がこの概念に属する。これらの全ての部材は監視されるべきで、しかも好ましくは個々を監視し、損傷したら交換することができる。更に、監視領域を限定することが好ましい。監視装置を有線又は無線を介して監視すべき混練部材と連結すれば、個々の混練部材からの発信する信号により、監視装置が混練部材を認識する。
【0022】
監視には、限界を設定してはならない。本発明では、特に混練部材の割れを監視すべきであ。割れが生成したら、近々混練部材が破損することが想定でき
【0023】
割れの生成を見出すためには、対象の混練部材の少なくとも1部を、加圧媒体を備えた少なくとも1つの溝を貫通させる必要がある。溝は混練部材に備えられているので、副次的な意義がある。溝の全体が加圧されると問題である。割れが形成されると,加圧媒体が割れを通って漏出し、割れが形成されたことが示される。このため、溝は加圧媒体源に連結されている。加圧媒体としては、気体、ここでは特に窒素が考慮の対象となる。しかし、液状媒体でもよく、本発明に含まれる。
【0024】
本発明では、混練部材へ向かう加圧媒体が監視され、通常の漏出と、例えば混練部材の破損など制御処置が必要な、混合混練機の停止につながる事故とが区別される。この実施態様では、加圧媒体の配管に流体センサが挿入され、所定の時間に渉る加圧媒体の量が測定される。通常の漏出による圧力降下は加圧媒体を供給することにより、補償される。所定の時間におけるこの供給量が所定に流量を越えると、混練部材の破損又は少なくとも割れの生じた可能性を示す。この場合、アラームが作動するか、又はそれに対応する制御装置が手配され、混合混練機を停止するか、他の方法により操作する。処置としては、混練室へ投入又は排出される添加剤又は生成物の投入又は排出機構の停止、始動又は操作が考えられる。又は混合混練機の加熱部材の加熱の始動、停止又は操作も考えられる。
【0027】
本発明は、混練部材を監視する方法ばかりでなく、混練部材と共に作動する装置にも関連する。これらは、特に混合混練機に関連している。
【0028】
以下、本発明の利点、特徴及び詳細について、図面を用いて説明する。
【実施例】
【0029】
例えば独国特許出願公開第4303852号明細書に示す、混練機Mのハウジング1を図1に示す。ハウジング1内には、C字状に形成された混練部材2が備えられている。混練部材2は、軸4に配列された別の板状の混練部材3と共に作動する。この軸4には、駆動装置5が装着されている。
【0030】
配管7を介して監視装置8と連結された弁体6が、一連の混練部材2のそれぞれに対して示されている。監視装置8は、矢印9で示すように、中央管理装置に連結されている。
【0031】
混練体10内には、テンショナ13を通って弁ブロック6と連結している破線で示す少なくとも1つの溝14が存在する。この溝14に、気体シリンダー15からの加圧媒体が衝突する。溝14内の圧力は圧力測定器16、特にマノメータにより監視される。
【0032】
本発明の作用は次の通りである。
【0033】
ハウジング1内には、図2に示す多数の混練部材2が備えられている。混練体10は、ハウジング1内に突出しており、ハウジングを貫通してフランジ11により、ハウジングの外側のトルクセンサ12、テンショナ13、弁ブロック6及び気体シリンダー、場合によってはマノメータと連結している。気体シリンダー15を介して、溝14内の圧力が保持される。混練体10が破損した場合には、ハウジング内の気体が割れを通って漏れるので、溝14内の圧力が低下する。この圧力低下は、マノメータ16により測定され、監視装置8へ信号が伝送される。当然のことながら、圧力スイッチが作動する所定の値を設定してもよい。その他の点においては、迅速で高感度の監視ができるように、監視する容積はできるだけ少なく設定する。
【0034】
対応する配管7を介して、破損が在るかもしれない混練部材2を識別できる。破損した混練部材は、除去されて停止するが、設備は動き続ける。混合混練機は、全く通常通り動き続け、停止することは無い。
【0035】
混練体を温度センサに連結すると、特に処理中の物質の温度が測定できる。この温度は、目標とする温度管理に供される。
【0036】
混練部材には、割れでは無く望ましくない変形が生ずることもある。本発明では、ストレンゲージ又はトルクセンサ12により、変形を測定し、場合によっては損傷した混練部材を交換する。
【0037】
更に、本発明では、ハウジング1内に供給された粘性がありペースト状物質を処理に使用するように準備された混練部材に関する保護も考えている。
【0038】
本発明による監視装置8を、図3に詳細に示す。この図では、それぞれの混練部材2は、共通の弁ブロック17に連結されている。それぞれの混練部材は、加圧媒体用の配管18を備えている。弁ブロック17には、加圧媒体配管19が連結され、この配管には、加圧源15に向かって流量センサ20及び圧力調整器21が挿入されている。流量センサ20は、中央制御装置22と連結されている。同様に、圧力調整器21及び流量センサ20の間に配されて、加圧媒体配管19中に加圧媒体が在るか否かをチェックする圧力センサ23が中央制御装置22と連結されている。
【0039】
詳細には図示していないが、前記制御装置は、加圧源15及び弁ブロック17、並びに混練部材2の近傍に在り得る制御弁又はセンサとも連結されることは当然である。
【0040】
次に、監視装置の操作について述べる。
【0041】
加圧源15の供給点を介して、圧力調整器21に約4バールの窒素ガスが適用される。圧力調整器21により例えば約1バールに圧力が低下する。窒素は流量センサ20及び加圧媒体配管19を通って弁ブロック17に入り、そこでそれぞれの混練部材2に分配される。
【0042】
圧力が低下した場合、通常の漏出とするか、又は混練部材の破損が原因と考えられる。2つの事象の分離及び誤った警報を避けるために、加圧媒体配管19内は、常に予め設定した、好ましくは一定の圧力に保つが、流量、特に貫流時間が監視される。通常の漏出の場合には、所定の時間内の流量は極めて少ない。流量が例えば、急激又は強力に高まる場合には、先ずアラームが作動する。このことは、混練部材において破損又は割れ目の形成の徴候なので、アラームが発せられる。
【0043】
それに対応する制御信号が、例えば混練混合機の軸の駆動を停止するか、又は混練空間への原料の投入器又は混練空間からの生成物の排出器を停止、始動又は操作するか、又は混練空間あるいは混練部材の加熱の停止又は操作するのに用いられる。
【符号の説明】
【0044】
1 ハウジング
2 混練部材
3 混練部材
4 軸
5 駆動装置
6 弁ブロック
7 配管
8 監視装置
9 矢印
10 混練体
11 フランジ
12 トルクセンサ
13 テンショナ
14 溝
15 加圧源
16 マノメータ
17 弁ブロック
18 配管
19 加圧媒体配管
20 流量センサ
21 圧力調整器
22 制御装置
23 圧力センサ
M 混合混練装置
図1
図2
図3