(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358614
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】車両用ギヤトレーンの潤滑構造
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20180709BHJP
F16H 57/021 20120101ALI20180709BHJP
F16H 1/20 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
F16H57/04 N
F16H57/04 Q
F16H57/021
F16H57/04 J
F16H1/20
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-128761(P2014-128761)
(22)【出願日】2014年6月24日
(65)【公開番号】特開2016-8646(P2016-8646A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 敏明
【審査官】
高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−189176(JP,A)
【文献】
特開2007−057093(JP,A)
【文献】
特開平04−181055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16H 1/20
F16H 57/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車ケース(21)と、前記歯車ケース(21)にベアリング(17a,17b)を介して軸支され動力発生源(14)からの動力が伝達される入力歯車軸(11)と、前記入力歯車軸(11)と平行な軸線を有し前記入力歯車軸(11)からの回転動力を伝達するように前記歯車ケース(21)にベアリング(18a,18b,19a,19b)を介して軸支された中間歯車軸(12)及び出力歯車軸(13)と、前記入力歯車軸(11)に設けられた入力歯車(11a)の下部及び前記出力歯車軸(13)に設けられた出力歯車(13a)の下部が浸漬可能に前記歯車ケース(21)に貯留されたオイル(31)と、前記入力歯車軸(11)及び前記出力歯車軸(13)よりも上方の前記歯車ケース(21)に形成され回転する前記歯車(11a,13a)が跳ね上げる前記オイル(31)を受けるオイル受け部(32)と、前記オイル受け部(32)のオイル(31)を潤滑必要箇所に導く給油手段とを備えた車両用ギヤトレーンの潤滑構造において、
前記中間歯車軸(12)に設けられた中間歯車(12a)の下部が前記オイル(31)に浸漬するように前記入力歯車軸(11)の軸線と前記中間歯車軸(12)の軸線と前記出力歯車軸(13)の軸線が水平方向に並んで設けられ、
前記オイル受け部(32)が前記中間歯車軸(12)と前記出力歯車軸(13)の間に形成されて回転する前記中間歯車軸(12)及び前記出力歯車(13a)が跳ね上げる前記オイル(31)を貯留可能に構成された第1受け部(33)を備えた
ことを特徴とする車両用ギヤトレーンの潤滑構造。
【請求項2】
入力歯車軸(11)の軸線と中間歯車軸(12)の軸線と出力歯車軸(13)の軸線が車両の前後方向に延びて設けられ、
給油手段が前記中間歯車軸(12)と前記出力歯車軸(13)の前後方向の両側を軸支するそれぞれのベアリング(18a,18b,19a,19b)と第1受け部(33)とを連通させる油道(36〜38)を備える
請求項1記載の車両用ギヤトレーンの潤滑構造。
【請求項3】
動力発生源がモータ(14)であって、入力歯車軸(11)を支持するベアリング(17a,17b)と前記モータ(14)との間の歯車ケース(21)にオイルシール(29)が設けられ、
オイル受け部(32)が前記入力歯車軸(11)の上方に形成されて回転する入力歯車(11a)が跳ね上げるオイル(31)を貯留可能に構成された第2受け部(34)を備え、
前記給油手段が前記入力歯車軸(11)の前後方向の両側を軸支するそれぞれの前記ベアリング(17a,17b)と前記第2受け部(32)とを連通させる油道(41,42)を備え、
前記油道(41,42)は前記油道(41,42)を介して供給される前記オイル(31)を前記オイルシール(29)にまで導くように構成された
請求項1又は2記載の車両用ギヤトレーンの潤滑構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の連結された複数の歯車から成るギヤトレーンを潤滑する車両用ギヤトレーンの潤滑構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられるギヤトレーンの潤滑構造として、動力発生源であるエンジンのクランクシャフトからの動力が伝達される入力歯車軸と、その入力歯車軸と平行な軸線を有する中間歯車軸及び出力歯車軸とが回転自在に支承される歯車ケースにオイルを貯留させたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この潤滑構造は自動二輪車に搭載されるものであって、それぞれの歯車軸が車両の幅方向に延びて設けられ、その側面視で中間歯車軸を入力歯車軸及び出力歯車軸間に配置し、ギヤトレーンを構成する複数の歯車のうち中間歯車軸に設けられる中間歯車の下端が、オイルを跳ね上げるように残余の歯車の下端よりも側面視で低位になるように配置している。
【0004】
そして、この潤滑構造では、中間歯車で跳ね上げられたオイルを受けるオイル受け部と、そのオイル受け部からのオイルを入力歯車軸、中間歯車軸及び出力歯車軸のうち特定の歯車軸以外の歯車軸側に導く給油手段とが設けられるとしており、中間歯車がオイルを跳ね上げるようにしたので、側面視で中間歯車軸の両側に配置される入力歯車軸及び出力歯車軸周りにオイルを行き届かせ易くすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−194906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、中間歯車軸に設けられる中間歯車の下端を残余の歯車の下端よりも低位に配置すると、それら歯車を収容する歯車ケースの鉛直方向における高さが増加する不具合がある。
【0007】
また、後輪駆動の四輪車にあっては、動力発生源の動力を駆動輪である後輪に伝達するドライブシャフトは、車両の前後方向に延びて設けられる。従って、このようなドライブシャフトが連結されるギヤトレーンでは、それぞれの歯車軸をドライブシャフトと平行にして、車両の進行方向に延びて設けることも考えられる。すると、それらの歯車軸の両端部は一般的にベアリングを介して支持されているけれども、例えば、登坂途中の車両では、歯車軸が傾くことになる。そして歯車軸が傾くと、歯車が跳ね上げて歯車軸に付着したオイルは、傾斜により下位に位置する側の端部に設けられたベアリングには達するけれども、その上位に位置する側の端部に設けられたベアリングに達することは少ない。このため、歯車軸の両端に設けられたベアリングを均一に潤滑することが困難になることも考えられる。
【0008】
更に近年では、電力で駆動するモータを走行用動力発生源とする、いわゆる電気自動車も普及し始めている。このような電気自動車では、その動力発生源であるモータの回転速度が一般的に高いために、高回転に基づく温度上昇を抑制する必要もある。
【0009】
本発明の目的は、歯車ケースの鉛直方向における高さを抑制し得る車両用ギヤトレーンの潤滑構造を提供するところにある。
【0010】
本発明の別の目的は、歯車軸の両端に設けられたベアリングを均一に潤滑し得る車両用ギヤトレーンの潤滑構造を提供するところにある。
【0011】
本発明の更に別の目的は、動力発生源がモータであっても、高回転に基づく温度上昇を抑制し得る車両用ギヤトレーンの潤滑構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、歯車ケースと、歯車ケースにベアリングを介して軸支され動力発生源からの動力が伝達される入力歯車軸と、該入力歯車軸と平行な軸線を有し入力歯車軸からの回転動力を伝達するように歯車ケースにベアリングを介して軸支された中間歯車軸及び出力歯車軸と、入力歯車軸に設けられた入力歯車の下部及び出力歯車軸に設けられた出力歯車の下部が浸漬可能に歯車ケースに貯留されたオイルと、入力歯車軸及び出力歯車軸よりも上方の歯車ケースに形成され回転する歯車が跳ね上げるオイルを受けるオイル受け部と、オイル受け部のオイルを潤滑必要箇所に導く給油手段とを備えた車両用ギヤトレーンの潤滑構造の改良である。
【0013】
その特徴ある構成は、
中間歯車軸に設けられた中間歯車の下部がオイルに浸漬するように入力歯車軸の軸線と中間歯車軸の軸線と出力歯車軸の軸線が水平方向に
並んで設けられ、オイル受け部が中間歯車軸と出力歯車軸の間に形成されて回転する
中間歯車軸及び出力歯車が跳ね上げるオイルを貯留可能に構成された第1受け部を備えたところにある。
【0014】
この場合、入力歯車軸の軸線と中間歯車軸の軸線と出力歯車軸の軸線が車両の前後方向に延びて設けられ、給油手段が中間歯車軸と出力歯車軸の前後方向の両側を軸支するそれぞれのベアリングと第1受け部とを連通させる油道を備えることが好ましい。
【0015】
動力発生源がモータであって、入力歯車軸を支持するベアリングとモータとの間の歯車ケースにオイルシールが設けられる場合には、オイル受け部が入力歯車軸の上方に形成されて回転する入力歯車が跳ね上げるオイルを貯留可能に構成された第2受け部を備え、給油手段が入力歯車軸の前後方向の両側を軸支するそれぞれのベアリングと第2受け部とを連通させる油道を備え、油道はその油道を介して供給されるオイルをオイルシールにまで導くように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用ギヤトレーンの潤滑構造では、入力歯車軸の軸線と中間歯車軸の軸線と出力歯車軸の軸線が水平方向に並ぶように設けたので、それら歯車を収容する歯車ケースの鉛直方向における高さが、各歯車の外径よりも著しく高くなることはなく、中間歯車の下端を残余の歯車の下端よりも低位に配置する従来のものに比較して、歯車ケースの鉛直方向における高さを抑制することができる。
【0017】
また、それぞれの歯車軸が車両の進行方向に延びて設けられていても、出力歯車が跳ね上げるオイルを貯留可能に構成された第1受け部と、中間歯車軸と出力歯車軸の前後方向の両側を軸支するそれぞれのベアリングとを連通させる油道を備えるようにすれば、例えば、登坂途中に歯車軸が傾いたとしても、その両端に設けられたベアリングへの給油を可能にして、それらを均一に潤滑させることができる。
【0018】
更に、動力発生源がモータであったとしても、オイル受け部のオイルをオイルシールにまで導くことにより、その動力発生源であるモータの回転速度が一般的に高いことに起因するオイルシールの温度上昇を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明実施形態の車両用ギヤトレーンの潤滑構造を示す
図4のA−A線断面図である。
【
図5】その歯車ケースの裏側を示す分解斜視図である。
【
図6】その歯車ケースの表側を示す分解斜視図である。
【
図7】そのギヤトレーンを有する車両の動力発生部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
本発明は車両用ギヤトレーンの潤滑構造に関するものであって、
図1に示すように、ギヤトレーンは連結された複数の歯車11a,12a,13aから成る。この実施の形態におけるギヤトレーンは、車両における走行用の動力発生部に設けられるものであって、
図7に示すように、その動力発生源はモータ14である。即ち、この実施の形態における車両はモータ14の駆動力により走行する電気自動車であって、
図4に示すように、モータ14の回転軸14aの回転を複数の歯車11a,12a,13aから成るギヤトレーンにより減速して、ドライブシャフト16に伝達し、それにより走行するように構成される。
【0022】
図4に示すように、複数の歯車11a,12a,13aは歯車ケース21に収容され、その歯車ケース21には、動力発生源であるモータ14が接続される。モータ14の回転軸14aには入力歯車軸11が連結され、その入力歯車軸11の両端は歯車ケース21にベアリング17a,17bを介して軸支される。そして、この入力歯車軸11には動力発生源であるモータ14からの動力が伝達されるように構成される。
【0023】
また、歯車ケース21には、入力歯車軸11と平行な軸線を有する中間歯車軸12及び出力歯車軸13がベアリング18a,18b,19a,19bを介して軸支される。入力歯車軸11には入力歯車11aが同軸に設けられ、中間歯車軸12には入力歯車11aに歯合する中間歯車12aが同軸に設けられ、出力歯車軸13には中間歯車12aに歯合する出力歯車13aが同軸に設けられる。
【0024】
図1に示すように、入力歯車11aに対して中間歯車12aは大径に形成され、中間歯車12aと出力歯車13aは略同一に形成される。この入力歯車11a,中間歯車12a及び出力歯車13aによりギヤトレーンが形成され、このギヤトレーンにより入力歯車軸11からの回転動力を順次伝達し、入力歯車軸11の回転を減速させて出力歯車軸13に伝達するように構成される。
【0025】
図4に示すように、歯車ケース21は、入力歯車11a,中間歯車12a及び出力歯車13aを包囲するケース本体22と、そのケース本体22の表面側を封止するカバー体23と、そのケース本体22の裏面側に設けられた第1及び第2アダプタ24,25を備える。
【0026】
図4〜
図6に示すように、ケース本体22の裏面側には側壁22aが形成され、その側壁22aには入力歯車軸11が挿通される入力軸孔22bと、中間歯車軸12を支持するベアリング18aが嵌挿される中間軸孔22cと、出力歯車軸13を支持するベアリング19aが嵌挿される出力軸孔22dが形成される。
【0027】
図2〜
図6に示すように、第1アダプタ24は、入力軸孔22bと中間軸孔22cとを覆うように、その側壁22aの外側に設けられ、第2アダプタ25は、出力軸孔22dを覆うようにその側壁22aの外側に設けられる。
【0028】
図3及び
図4に示すように、第1アダプタ24にはモータ14が取付けられ、その第1アダプタ24には入力軸孔22bを貫通する入力歯車軸11を支持するベアリング17aが嵌挿される装着穴24aが形成され、その装着穴24aと同軸に入力歯車軸11の端部が貫通する入力側貫通孔24bが形成される。この入力側貫通孔24bを通過した入力歯車軸11の端部にモータ14の回転軸14aが連結される。そして、入力側貫通孔24bには、その入力側貫通孔24bと入力歯車軸11の周囲との間を塞いで後述するオイル31が入力側貫通孔24bを介して流通することを防止する入力側オイルシール27が設けられる。即ち、入力歯車軸11を支持するベアリング17aとモータ14との間の歯車ケース21には、オイルシール27が設けられる。
【0029】
図2,
図4及び
図7に示すように、第2アダプタ25にはパーキングブレーキアッセンブリ28が取付けられる。この第2アダプタ25には出力歯車軸13の端部が貫通する出力側貫通孔25aが形成され、その出力側貫通孔25aを通過した出力歯車軸13にパーキングブレーキアッセンブリ28が連結される。ドライブシャフト16は、このパーキングブレーキアッセンブリ28を介して出力歯車軸13に接続され、パーキングブレーキアッセンブリ28はドライブシャフト16を回転を禁止して、停車した車両の走行を防止するものである。そして、出力側貫通孔25aには、その出力側貫通孔25aと出力歯車軸13の周囲との間を塞いで後述するオイルが出力側貫通孔25aを介して流通することを防止する出力側オイルシール29が設けられる。
【0030】
図4に示すように、ケース本体22の表面側を封止するカバー体23には、互いに平行に設けられた入力歯車軸11、中間歯車軸12及び出力歯車軸13のそれぞれの端部を支持するベアリング17b,18b,19bが嵌挿される有底の装着穴23a,23b,23cがそれぞれ形成される。そして、このカバー体23は、ケース本体22の表面側を封止し、裏面側が第1及び第2アダプタ24,25により封止されたケース本体22の内部を密閉するように構成される。
【0031】
このように、ギヤトレーンが収容されて密閉された歯車ケース21の内部には、
図1に示す様に、入力歯車軸11に設けられた入力歯車11aの下部及び出力歯車軸13に設けられた出力歯車13aの下部が浸漬可能にオイル31が貯留される。そして、この歯車ケース21には、回転する歯車11a,12a,13aが跳ね上げるオイル31を受けるオイル受け部32が形成され、オイル受け部32のオイル31を潤滑必要箇所に導く給油手段が設けられる。
【0032】
図1及び
図4に示す様に、本発明の特徴ある構成は、入力歯車軸11の軸線と中間歯車軸12の軸線と出力歯車軸13の軸線が水平方向に並んで設けられたところにある。このように、入力歯車軸11の軸線と中間歯車軸12の軸線と出力歯車軸13の軸線を水平方向に並んで設けることにより、それらに形成されてギヤトレーンを形成する各歯車11a,12a,13aを収容する歯車ケース21の鉛直方向における高さは、各歯車11a,12a,13aの外径よりも著しく高くすることはなくなり、中間歯車の下端を残余の歯車の下端よりも低位に配置する従来のものに比較して、歯車ケース21の鉛直方向における高さを抑制することができる。
【0033】
また、オイル受け部32は、中間歯車軸12と出力歯車軸13の間に形成されて回転する出力歯車13aが跳ね上げるオイル31を貯留可能に構成された第1受け部33と、入力歯車軸11の上方に形成されて回転する入力歯車11aが跳ね上げるオイル31を貯留可能に構成された第2受け部34を備える。そして、
図2及び
図3に示すように、この第1及び第2受け部33,34は、ケース本体22の側壁22aからカバー体23に向かって突出するように、その側壁22aと一体的に形成される。
【0034】
この実施の形態における入力歯車軸11の軸線と中間歯車軸12の軸線と出力歯車軸13の軸線は、車両の前後方向に延びて設けられるものであり、第1及び第2受け部33,34は、その突出端がカバー体23に接触するように構成される。これにより、この第1及び第2受け部33,34は、側壁22aからカバー体23の間の全てにオイル31を貯留可能に構成される。
【0035】
図1に戻って、ケース本体22には、出力歯車13aが掻き上げるオイル31を第1受け部33に導く湾曲部22eが内周に形成され、ケース本体22の側壁22aには、入力歯車11aが掻き上げるオイル31を第2受け部34に導く湾曲突出片22fがカバー体23に向かって突出して形成される。
【0036】
一方、給油手段は中間歯車軸12と出力歯車軸13の前後方向の両側を軸支するそれぞれのベアリング18a,18b,19a,19bと第1受け部33とを連通させる油道36,37,38を備える。出力歯車軸13の前後方向の両側を軸支するそれぞれのベアリング19a,19bと第1受け部33とを連通させる油道36,37から説明すると、
図1及び
図2に示すように、出力歯車軸13のドライブシャフト側を軸支するベアリング19aと第1受け部33とを連通させる油道36は、ケース本体22の側壁22aにベアリング19aと第1受け部33とを連通させるように形成された油孔36であって、この油孔36は、第1受け部33に貯留されたオイル31をそのベアリング19aに直接導いて潤滑するように構成される。
【0037】
一方、
図2に示すように、出力歯車軸13のカバー体側を軸支するベアリング19bと第1受け部33とを連通させる油道37は、カバー体23に形成された油孔37である。そして、第1受け部33の突出端はカバー体23に接触するので、この第1受け部33に貯留されたオイル31は、その油孔37を介してベアリング19bに導かれ、そのベアリング19bを潤滑するように構成される。
【0038】
次に、中間歯車軸12の前後方向の両側を軸支するそれぞれのベアリング18a,18bと第1受け部33とを連通させる油道38を説明する。
図4及び
図5に示すように、出力歯車軸13のドライブシャフト側を軸支するベアリング18aと第1受け部33とを連通させる油道38は、中間歯車軸12上方の第1受け部33にケース本体22の側壁22aを貫通するように形成された貫通孔38aと、その貫通孔38aを含み中間軸孔22cを包囲するように側壁22aに形成された凹部38bとを備える。この凹部38bは側壁22aと第1アダプタ24との間に隙間を形成し、第1受け部33に貯留されて貫通孔38aを通過したオイル31を、中間軸孔22cに装着されたベアリング18aに導いて潤滑するように構成される。
【0039】
一方、中間歯車軸12のカバー体側を軸支するベアリング18bと第1受け部33とを連通させる油道は、カバー体23に形成された油孔である。この中間歯車軸12の後側を軸支するベアリング18bと第1受け部33とを連通させる図示しない油孔は、出力歯車軸13のカバー体側を軸支するベアリング19bと第1受け部33とを連通させる
図2に示す油孔37と同一構造であるので、繰り返しての説明を省略する。そして、第1受け部33の突出端はカバー体23に接触するので、この第1受け部33に貯留されたオイル31は、その油孔を介してベアリング18bに導かれ、そのベアリング18bを潤滑するように構成される。
【0040】
ここで、この実施の形態におけるドライブシャフト16は、車両の前後方向に延びて設けられるものとしている。従って、このドライブシャフト16が連結されるギヤトレーンでは、それぞれの歯車軸11,12,13はドライブシャフト16と平行になり、車両の進行方向に延びて設けられることになる。すると、登坂途中の車両では、歯車軸11,12,13が傾くことになる。
【0041】
けれども、第1受け部33の突出端はカバー体23に接触し、側壁22aからカバー体23の間の全てにオイル31を貯留可能に構成されるので、その前後に設けられた油道36〜38は、例え登坂途中のように歯車軸12,13が傾いたとしても、第1受け部33にオイル31が貯留されている限り、その両端に設けられたベアリング18a,18b,19a,19bへ油道36〜38を介した給油が成されることになる。よって、本発明では、歯車軸12,13の傾斜にかかわらず、各歯車軸12,13の両端に設けられたベアリング18a,18b,19a,19bを均一に潤滑し得るものとなる。
【0042】
また、給油手段はオイル受け部32のオイル31を入力側オイルシール27にまで導くように構成される。具体的には、
図1及び
図3に示すように、入力歯車軸11のモータ側を軸支するベアリング17aと第2受け部34とを連通させる油道41は、ケース本体22の側壁22aに形成された流通孔41aと、第1アダプタ24に形成された流下孔41bとにより形成される。流下孔41bの下端は、入力側オイルシール27に連通するベアリング17aが装着される装着穴24aの穴壁に開口して形成され、その流下孔41bを介して供給されたオイル31は装着穴24aから入力側貫通孔24bに達し、そこに設けられた入力側オイルシール27にまで達するように構成される。
【0043】
一方、
図3に示すように、入力歯車軸11のカバー体側を軸支するベアリング17bと第2受け部34とを連通させる油道42は、カバー体23に形成された油孔42である。第2受け部34の突出端はカバー体23に接触するので、この第2受け部34に貯留されたオイル31は、その油孔42を介してベアリング17bに導かれ、そのベアリング17bを潤滑するように構成される。
【0044】
ここで、この実施の形態では、動力発生源がモータ14であって、入力歯車軸11を支持するベアリング17aとモータ14との間の歯車ケース21に入力側オイルシール27が設けられる場合を示す。このように電力で駆動するモータ14を走行用動力発生源とする、いわゆる電気自動車では、その動力発生源であるモータ14の回転速度が、内燃機関を動力発生源とする場合に比較して高い。
【0045】
しかし、給油手段が入力歯車軸11の前後方向の両側を軸支するそれぞれのベアリング17a,17bと第2受け部34とを連通させる油道41,42を備える。そして、モータ側の油道41は、その油道41を介して供給されるオイル31を入力側オイルシール27にまで導くように構成した。このため、入力側オイルシール27にまで導かれたオイルはそこから温度を吸引して更に流下することになるので、例え、動力発生源がモータ14であっても、そのモータ14の回転軸14aの高回転に基づく入力側オイルシール27の温度上昇を抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0046】
11 入力歯車軸
11a 入力歯車
12 中間歯車軸
13 出力歯車軸
13a 出力歯車
14 モータ(動力発生源)
17a,17b,18a,18b,19a,19b ベアリング
21 歯車ケース
29 オイルシール
31 オイル
32 オイル受け部
33 第1受け部
34 第2受け部
36〜38,41,42 油道