(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記対象燃料は、上記燃料成分種としてイソオクタンとノルマルヘプタンとを含む混合燃料である請求項1又は2に記載のエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法。
上記燃焼シミュレーションに使用する化学反応式を設定する工程において、下記のR1乃至R38の化学反応式を設定する請求項3に記載のエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法。
C7H16+O2=C7H15+HO2 (R1)
C7H15+O2=C7H15O2 (R2)
C7H15O2=C7H14OOH (R3)
C7H14OOH+O2=O2C7H14OOH (R4)
O2C7H14OOH=>C7KET+OH (R5)
C7KET=>C5H11CO+CH2O+OH (R6)
C5H11CO+O2=>C3H6+C2H4+CO+HO2 (R7)
C7H16+OH=>C7H15+H2O (R8)
C7H15+O2=C7H14+HO2 (R9)
C7H14+O2=>C5H11+CH2O+HCO (R10)
C7H16+HO2=C7H15+H2O2 (R11)
C7H15=>C5H11+C2H4 (R12)
C5H11=C3H7+C2H4 (R13)
C8H18+O2=C8H17+HO2 (R14)
C8H17+O2=C8H17O2 (R15)
C8H17O2=C8H16OOH (R16)
C8H16OOH+O2=O2C8H16OOH (R17)
O2C8H16OOH=>C8KET+OH (R18)
C8KET=>C6H13CO+CH2O+OH (R19)
C6H13CO+O2=>C3H6+C3H6+CO+HO2 (R20)
C8H18+OH=>C8H17+H2O (R21)
C8H17+O2=C8H16+HO2 (R22)
C8H16+O2=>C6H13+CH2O+HCO (R23)
C8H18+HO2=C8H17+H2O2 (R24)
C8H17=>C6H13+C2H4 (R25)
C6H13=C3H7+C3H6 (R26)
C3H7+O2=C3H6+HO2 (R27)
C3H6+C3H6=>C2H4+C2H4+C2H4 (R28)
C2H4+OH=C2H3+H2O (R29)
C2H3+O2=CH2O+HCO (R30)
CH2O+OH=HCO+H2O (R31)
HCO+O2=CO+HO2 (R32)
CO+OH=CO2+H (R33)
H2O2+OH=HO2+H2O (R34)
H+O2+M=HO2+M (R35)
HO2+HO2=H2O2+O2 (R36)
H2O2+M=OH+OH+M (R37)
C2H4+O2=>CH2O+CH2O (R38)
請求項1乃至7の何れか1項に記載のエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法により決定した化学反応速度定数を使用して、上記対象燃料による燃焼シミュレーションを行うエンジンの燃焼シミュレーション方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、ガソリンエンジンの高効率化及び低公害化のために高圧縮比の予混合圧縮自己着火(HCCI)燃焼の実用化が期待されており、そのためにHCCI燃焼の着火性や火花点火(SI)燃焼におけるプリイグニッション、ノッキングといった自己着火に対して燃料に含まれる燃料成分種が及ぼす影響を正確に把握することが望まれている。しかしながら、これらの着火現象に対する燃料成分種の影響を燃焼シミュレーションによって精度よく再現するためには、多数の化学種及び化学反応式を使用した計算を行わなければならず、膨大な演算量が要求される。
また、SI燃焼の分析においては、プリイグニッションやノッキングの発生位置の把握などのために3次元流体計算との連成計算が望まれるが、上述のように多数の化学種及び化学反応式を使用した場合には計算負荷の増大が顕著である。従って、従来の燃焼シミュレーションでは、使用する化学種及び化学反応式の数を絞り込み、エンジンの燃焼における代表的な化学反応のみを再現することによって、シミュレーションの精度をある程度犠牲にしつつ、計算負荷の増大を抑制している。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、エンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で精度よく再現することができる、エンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法及びエンジンの燃焼シミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法は、燃焼シミュレーションを行う対象となる対象燃料に含まれる燃料成分種を設定する工程と、燃料成分種の着火現象を記述する化学反応式の内、燃焼シミュレーションに使用する化学反応式を設定する工程と、燃焼シミュレーションに使用する化学反応式の中から、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式を少なくとも1つ選択すると共に、熱着火時期の反応温度に対して相対的に感度の高い化学反応式を少なくとも1つ選択する工程と、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式の化学反応速度定数と、熱着火時期の反応温度に対して相対的に感度の高い化学反応式の化学反応速度定数とを、燃焼シミュレーションにより算出される低温酸化反応時期及び熱着火時期が所定の目標低温酸化反応時期及び目標熱着火時期にそれぞれ一致するように最適化する工程とを有することを特徴とする。
このように構成された本発明においては、燃焼シミュレーションに使用する化学反応式の中から、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式を少なくとも1つ選択すると共に、熱着火時期の反応温度に対して相対的に感度の高い化学反応式を少なくとも1つ選択し、それらの選択した化学反応式の化学反応速度定数を、燃焼シミュレーションにより算出される低温酸化反応時期及び熱着火時期が所定の目標低温酸化反応時期及び目標熱着火時期にそれぞれ一致するように最適化するので、高い精度で低温酸化反応時期及び熱着火時期を算出することが可能な簡略化化学反応スキームを作成することができ、これにより、エンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で精度よく再現することができる。
【0007】
また、本発明において、好ましくは、更に、対象燃料に添加される添加成分種を設定する工程と、燃料成分種と添加成分種との混合割合を設定する工程と、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式を選択する工程において選択した化学反応式の化学反応速度定数を、混合割合で対象燃料に添加された添加成分種を燃料成分種の1つに置換した場合に燃焼シミュレーションにより算出される低温酸化反応時期及び熱着火時期が添加成分種を混合割合で添加した対象燃料における目標低温酸化反応時期及び目標熱着火時期にそれぞれに一致するように再度最適化する工程とを有する。
このように構成された本発明においては、混合燃料についても高い精度で低温酸化反応時期及び熱着火時期を算出することが可能な簡略化化学反応スキームを作成することができ、これにより、様々な混合燃料についてエンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で精度よく再現することができる。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、対象燃料は、燃料成分種としてイソオクタンとノルマルヘプタンとを含む混合燃料である。
このように構成された本発明においては、イソオクタンとノルマルヘプタンとを含む混合燃料についてエンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で精度よく再現することができる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、燃焼シミュレーションに使用する化学反応式を設定する工程において、下記のR1乃至R38の化学反応式を設定する。
C
7H
16+O
2=C
7H
15+HO
2 (R1)
C
7H
15+O
2=C
7H
15O
2 (R2)
C
7H
15O
2=C
7H
14OOH (R3)
C
7H
14OOH+O
2=O
2C
7H
14OOH (R4)
O
2C
7H
14OOH=>C
7KET+OH (R5)
C
7KET=>C
5H
11CO+CH
2O+OH (R6)
C
5H
11CO+O
2=>C
3H
6+C
2H
4+CO+HO
2 (R7)
C
7H
16+OH=>C
7H
15+H
2O (R8)
C
7H
15+O
2=C
7H
14+HO
2 (R9)
C
7H
14+O
2=>C
5H
11+CH
2O+HCO (R10)
C
7H
16+HO
2=C
7H
15+H
2O
2 (R11)
C
7H
15=>C
5H
11+C
2H
4 (R12)
C
5H
11=C
3H
7+C
2H
4 (R13)
C
8H
18+O
2=C
8H
17+HO
2 (R14)
C
8H
17+O
2=C
8H
17O
2 (R15)
C
8H
17O
2=C
8H
16OOH (R16)
C
8H
16OOH+O
2=O
2C
8H
16OOH (R17)
O
2C
8H
16OOH=>C
8KET+OH (R18)
C
8KET=>C
6H
13CO+CH
2O+OH (R19)
C
6H
13CO+O
2=>C
3H
6+C
3H
6+CO+HO
2 (R20)
C
8H
18+OH=>C
8H
17+H
2O (R21)
C
8H
17+O
2=C
8H
16+HO
2 (R22)
C
8H
16+O
2=>C
6H
13+CH
2O+HCO (R23)
C
8H
18+HO
2=C
8H
17+H
2O
2 (R24)
C
8H
17=>C
6H
13+C
2H
4 (R25)
C
6H
13=C
3H
7+C
3H
6 (R26)
C
3H
7+O
2=C
3H
6+HO
2 (R27)
C
3H
6+C
3H
6=>C
2H
4+C
2H
4+C
2H
4 (R28)
C
2H
4+OH=C
2H
3+H
2O (R29)
C
2H
3+O
2=CH
2O+HCO (R30)
CH
2O+OH=HCO+H
2O (R31)
HCO+O
2=CO+HO
2 (R32)
CO+OH=CO
2+H (R33)
H
2O
2+OH=HO
2+H
2O (R34)
H+O
2+M=HO
2+M (R35)
HO
2+HO
2=H
2O
2+O
2 (R36)
H
2O
2+M=OH+OH+M (R37)
C
2H
4+O
2=>CH
2O+CH
2O (R38)
このように構成された本発明においては、イソオクタンとノルマルヘプタンとを含む混合燃料についてエンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で一層精度よく再現することができる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式は、C
7KET=>C
5H
11CO+CH
2O+OH (R6)及びC
8H
18+OH=>C
8H
17+H
2O (R21)であり、熱着火時期の反応温度に対して相対的に感度の高い化学反応式は、H
2O
2+M=OH+OH+M (R37)である。
このように構成された本発明においては、低温酸化反応時期及び熱着火時期を精度よく計算することが可能な簡略化化学反応スキームを作成できる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式の化学反応速度定数と、熱着火時期の反応温度に対して相対的に感度の高い化学反応式の化学反応速度定数とを最適化する工程において、燃焼シミュレーションにより算出される低温酸化反応時期をτ
1、燃焼シミュレーションにより算出される熱着火時期をτ
2、目標低温酸化反応時期をτ
1tgt、目標熱着火時期をτ
2tgt、燃焼の初期温度をTとした場合、以下の式により表される評価関数E
fの最小値を得るように、粒子群最適化法により最適化を行う。
【数1】
このように構成された本発明においては、高い精度で燃焼シミュレーションを実行することが可能な簡略化化学反応スキームを効率よく作成することができる。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式を選択する工程において選択した化学反応式の化学反応速度定数を再度最適化する工程において、添加成分種を燃料成分種の1つに置換した場合に燃焼シミュレーションにより算出される低温酸化反応時期及び熱着火時期をそれぞれτ
1mix及びτ
2mixとし、添加成分種を混合割合で添加した対象燃料における目標低温酸化反応時期及び目標熱着火時期をそれぞれτ
1mixtgt及びτ
2mixtgtとし、燃焼の初期温度をTとした場合、以下の式により表される評価関数E
fの最小値を得るように、粒子群最適化法により最適化を行う。
【数2】
このように構成された本発明においては、様々な混合燃料について高い精度で燃焼シミュレーションを実行することが可能な簡略化化学反応スキームを効率よく作成することができる。
【0013】
また、本発明のエンジンの燃焼シミュレーション方法によれば、上述のエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法により決定した化学反応速度定数を使用して、対象燃料による燃焼シミュレーションを行う。
このように構成された本発明においては、高い精度で低温酸化反応時期及び熱着火時期を算出することが可能な簡略化化学反応スキームを使用して、エンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で精度よく再現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法及びエンジンの燃焼シミュレーション方法によれば、エンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で精度よく再現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法及びエンジンの燃焼シミュレーション方法を説明する。
まず、
図1により、本発明の実施形態によるエンジンの燃焼シミュレーション方法を実行する燃焼シミュレーションシステムの全体構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるエンジンの燃焼シミュレーションシステムのブロック図である。
【0017】
図1において符号1は、本発明の実施形態によるエンジンの燃焼シミュレーションシステムを示す。この
図1に示すように、エンジンの燃焼シミュレーションシステム1は、燃焼シミュレーションにおける各種の設定データを入力する入力装置2、燃焼シミュレーションを実行する燃焼シミュレーション装置4、燃焼シミュレーションの結果を出力する出力装置6、及び、燃焼シミュレーションにおいて化学反応の演算に使用されるデータを格納した化学反応データベース8を有している。
【0018】
燃焼シミュレーション装置4は、燃焼シミュレーションの演算に使用されるエンジンの物理モデルを構築するプリプロセッサ10、エンジンの燃焼反応の解析を行う化学反応解析部12、エンジンの燃焼室における燃焼ガスの流れを解析する3次元流体解析部14、及び、化学反応解析部12及び3次元流体解析部14による解析結果を出力装置6により出力するためのポスト処理を行うポストプロセッサ16を備えている。
【0019】
化学反応データベース8は、エンジンの燃焼における代表的な化学反応式を抽出し、各化学反応式によって記述される素反応における化学反応速度定数及び平衡定数を対応付けた簡略化化学反応スキーム18と、簡略化化学反応スキーム18に含まれている特定の化学反応式について、燃料に添加された添加成分種の混合割合と化学反応速度との関係を示した化学反応速度定数マップ20とを格納している。
【0020】
次に、
図2乃至
図4により、本発明の実施形態における簡略化化学反応スキーム18の作成方法について説明する。
図2は本発明の実施形態によるエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法のフローチャートであり、
図3はPRF70について本発明の実施形態による燃焼シミュレーションにより算出した着火遅れ時間とMFCスキームを使用した燃焼シミュレーションにより算出した着火遅れ時間とを比較した線図であり、
図4はPRF70について本発明の実施形態による燃焼シミュレーションにより算出した着火遅れ時間とMFCスキームを使用した燃焼シミュレーションにより算出した着火遅れ時間とを比較した線図である。
【0021】
まず、
図2に示すフローは、エンジンの燃焼シミュレーションに先立って予め実行される。
図2に示すように、フローが開始されると、ステップS1において、エンジンの燃焼シミュレーションを行う対象となる対象燃料に含まれる燃料成分種を設定する。本実施形態では、対象燃料は、燃料成分種としてイソオクタンとノルマルヘプタンとをイソオクタン:ノルマルヘプタン=70:30(vol.%)の混合割合で含む混合燃料(PRF70)である。
【0022】
次に、ステップS2において、本発明の実施形態における簡略化化学反応スキーム18のベースとなる初期簡略化化学反応スキームを設定する。本実施形態では、対象燃料のPRFの着火現象に関連する多数の化学反応式の中から、その着火現象の再現に適した化学反応式として知られている下記のR1乃至R38の化学反応式を抽出し、各化学反応式によって記述される素反応における化学反応速度定数及び平衡定数を対応付けたものを初期簡略化化学反応スキームとして設定する。
C
7H
16+O
2=C
7H
15+HO
2 (R1)
C
7H
15+O
2=C
7H
15O
2 (R2)
C
7H
15O
2=C
7H
14OOH (R3)
C
7H
14OOH+O
2=O
2C
7H
14OOH (R4)
O
2C
7H
14OOH=>C
7KET+OH (R5)
C
7KET=>C
5H
11CO+CH
2O+OH (R6)
C
5H
11CO+O
2=>C
3H
6+C
2H
4+CO+HO
2 (R7)
C
7H
16+OH=>C
7H
15+H
2O (R8)
C
7H
15+O
2=C
7H
14+HO
2 (R9)
C
7H
14+O
2=>C
5H
11+CH
2O+HCO (R10)
C
7H
16+HO
2=C
7H
15+H
2O
2 (R11)
C
7H
15=>C
5H
11+C
2H
4 (R12)
C
5H
11=C
3H
7+C
2H
4 (R13)
C
8H
18+O
2=C
8H
17+HO
2 (R14)
C
8H
17+O
2=C
8H
17O
2 (R15)
C
8H
17O
2=C
8H
16OOH (R16)
C
8H
16OOH+O
2=O
2C
8H
16OOH (R17)
O
2C
8H
16OOH=>C
8KET+OH (R18)
C
8KET=>C
6H
13CO+CH
2O+OH (R19)
C
6H
13CO+O
2=>C
3H
6+C
3H
6+CO+HO
2 (R20)
C
8H
18+OH=>C
8H
17+H
2O (R21)
C
8H
17+O
2=C
8H
16+HO
2 (R22)
C
8H
16+O
2=>C
6H
13+CH
2O+HCO (R23)
C
8H
18+HO
2=C
8H
17+H
2O
2 (R24)
C
8H
17=>C
6H
13+C
2H
4 (R25)
C
6H
13=C
3H
7+C
3H
6 (R26)
C
3H
7+O
2=C
3H
6+HO
2 (R27)
C
3H
6+C
3H
6=>C
2H
4+C
2H
4+C
2H
4 (R28)
C
2H
4+OH=C
2H
3+H
2O (R29)
C
2H
3+O
2=CH
2O+HCO (R30)
CH
2O+OH=HCO+H
2O (R31)
HCO+O
2=CO+HO
2 (R32)
CO+OH=CO
2+H (R33)
H
2O
2+OH=HO
2+H
2O (R34)
H+O
2+M=HO
2+M (R35)
HO
2+HO
2=H
2O
2+O
2 (R36)
H
2O
2+M=OH+OH+M (R37)
C
2H
4+O
2=>CH
2O+CH
2O (R38)
【0023】
次に、ステップS3において、ステップS2で設定した初期簡略化化学反応スキームに含まれる化学反応式により記述された各素反応について、対象燃料の低温酸化反応終了時点でのHCHO及びH
2O
2の生成量に対する感度解析を行う。
本実施形態においては、PRFにおいて低温酸化反応が顕著にみられる反応温度700K及び800Kの条件下で感度解析を行う。この場合、上述の化学反応式R6(C
7KET=>C
5H
11CO+CH
2O+OH)及びR21(C
8H
18+OH=>C
8H
17+H
2O)が特に高い感度を持つ化学反応式として抽出される。
ここで、化学反応式R6はノルマルヘプタンの反応機構の中でHCHOを生成する反応であり、この反応を促進させるとHCHO、H
2O
2が共に増加する。一方、R21はイソオクタンからの水素引き抜き反応であり、この反応を促進させるとHCHO、H
2O
2が共に減少する。
【0024】
次に、ステップS4において、ステップS2で設定した初期簡略化化学反応スキームに含まれる化学反応式により記述された各素反応について、対象燃料の熱着火時期の反応温度に対する感度解析を行う。
本実施形態においては、PRF70の熱着火時期の反応温度に対する感度解析を行う。この場合、上述の化学反応式R37(H
2O
2+M=OH+OH+M)が特に高い感度を持つ化学反応式として抽出される。
【0025】
次に、ステップS5において、ステップS3及びステップS4の感度解析結果に基づき、初期簡略化化学反応スキームに含まれる化学反応式の中から、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式を少なくとも1つ選択すると共に、熱着火時期の反応温度に対して相対的に感度の高い化学反応式を少なくとも1つ選択する。
本実施形態においては、PRFの低温酸化反応終了時点でのHCHO及びH
2O
2の生成量に対して特に高い感度を持つ化学反応式R6及びR21と、PRF70の熱着火時期の反応温度に対して特に高い感度を持つ化学反応式R37を選択する。
【0026】
次に、ステップS6において、対象燃料の燃焼反応における正確な低温酸化反応時期を目標低温酸化反応時期τ
1tgtとして取得すると共に、対象燃料の燃焼反応における正確な熱着火時期を目標熱着火時期τ
2tgtとして取得する。ここで、低温酸化反応時期とは、燃焼反応の初期温度から50K上昇した時刻をいい、熱着火時期とは、燃焼反応の初期温度から500K上昇した時刻をいうものとする。
本実施形態においては、多様な成分種を含む燃料の着火現象を詳細に表現した化学反応スキームとして、Model Fuels Consortiumで開発されたMFC 2011 Gasoline MechanismとMFC 2008 ETBE Mechanismをマージした化学反応スキーム(以下、MFCスキームという)を使用して、PRF70について圧力6MPa、空気過剰率(λ)=1の条件で初期温度700Kから1400Kまで50K毎に化学反応計算を行うことにより、各温度における目標低温酸化反応時期τ
1tgt及び目標熱着火時期τ
2tgtを取得する。なお、MFCスキームに含まれる化学種数は11116、化学反応式数は2301である。
【0027】
次に、ステップS7において、ステップS5で選択した各化学反応式の化学反応速度定数を、簡略化化学反応スキーム18を使用した燃焼シミュレーションにより算出される低温酸化反応時期τ
1及び熱着火時期τ
2がステップS6で取得した目標低温酸化反応時期τ
1tgt及び目標熱着火時期τ
2tgtにそれぞれ一致するように最適化する。
本実施形態においては、化学反応式R6、R21及びR37の化学反応速度定数を、以下の式(1)により表される評価関数E
fの最小値を得るように、粒子群最適化法(PSO法)により最適化を行う。
【数3】
【0028】
PSO法では、最適化対象のパラメータについて探索粒子と呼ばれる複数の値の組み合わせを用意し、粒子群の情報を活用して評価関数の値が目標値に近づくよう反復計算によりパラメータを最適化する。それぞれの探索粒子は反復回ごとに値が決定されるが、その決定にはその反復回までに、(1)その粒子自身が最もよい評価関数値を得たときの値(パーソナルベスト)と、(2)全探索粒子の中で最もよい評価関数値を得たときの値(グループベスト)を用いる。これにより、反復回数が進むにしたがって目標に近い領域に探索粒子を集中的に配置することができるため、効率よく最適化できる。本実施形態では、探索粒子数10、反復回数100とする。各反復回においては、まず、圧力6MPa、空気過剰率(λ)1の条件で初期温度700Kから1400Kまで50K毎に化学反応計算を行い、各温度での低温酸化反応時期τ
1及び熱着火時期τ
2を求める。次に、MFCスキームに対する簡略化化学反応スキーム18の誤差率をτ
1とτ
2のそれぞれについて求め、最後に、各誤差率の絶対値を全温度で積算した値を評価関数として用いる。
ステップS7の後、エンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数を決定するフローを終了する。
【0029】
簡略化化学反応スキーム18に含まれる化学反応式R6、R21、及びR37の化学反応速度定数を
図2のステップS7において最適化した後の簡略化化学反応スキーム18を使用して燃焼シミュレーションを行うことにより、
図3に示すように、圧力6MPa、空気過剰率(λ)1の条件においては、初期温度700Kから1400Kまでの温度範囲において、初期簡略化化学反応スキームを使用した場合と比較してMFCスキームによるシミュレーション結果に良く一致することが分かる。
更に、この最適化した後の簡略化化学反応スキーム18を使用して、空気過剰率λ=2及びλ=3の条件で燃焼シミュレーションを行った場合においても、
図4に示すようにMFCスキームによるシミュレーション結果に良く一致することが分かる。λ=2あるいはλ=3というリーン条件においては、低温酸化反応が相対的に小さくなり、低温度領域での着火遅れ時間の延長が特徴的だが、この特性についてもよい一致を維持できている。
【0030】
次に、
図5乃至
図7により、対象燃料に添加成分種を添加した混合燃料の燃焼シミュレーションに使用可能な簡略化化学反応スキーム18の作成方法について説明する。
図5は混合燃料の燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法のフローチャートであり、
図6はPRF70にトルエンを添加した混合燃料について本発明の実施形態による燃焼シミュレーションにより算出した着火遅れ時間とMFCスキームを使用した燃焼シミュレーションにより算出した着火遅れ時間とを比較した線図であり、
図7はPRF70に対するトルエンの混合割合を変更した場合において本発明の実施形態によるエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法により決定した化学反応速度定数の変化率を示す線図である。
【0031】
まず、
図5に示すフローは、
図2のフローで簡略化化学反応スキーム18を作成した後、エンジンの燃焼シミュレーションに先立って予め実行される。
図5に示すように、フローが開始されると、ステップS11において、対象燃料に添加される添加成分種を設定する。
本実施形態においては、対象燃料のPRF70に対して、トルエンを添加成分種として設定する。
【0032】
次に、ステップS12において、対象燃料の燃料成分種とステップS11で設定した添加成分種との混合割合を設定する。
本実施形態においては、燃料成分種としてイソオクタンとノルマルヘプタンとをイソオクタン:ノルマルヘプタン=70:30(vol.%)の混合割合で含む対象燃料PRF70に対して、アロマ系成分の代表としてトルエンを50vol.%添加した混合燃料を想定する。この場合、混合割合は、イソオクタン:ノルマルヘプタン:トルエン=35:15:50(vol.%)である。
【0033】
次に、ステップS13において、ステップS12で設定した混合割合の添加成分種を、燃料成分種の1つに置換する。
本実施形態においては、トルエンをイソオクタンに置換することにより、イソオクタン:ノルマルヘプタン=85:15(vol.%)の混合割合の混合燃料を想定する。
【0034】
次に、ステップS14において、添加成分種をステップS12で設定した混合割合で添加した混合燃料の燃焼反応における正確な低温酸化反応時期を目標低温酸化反応時期τ
1mixtgtとして取得すると共に、その混合燃料の燃焼反応における正確な熱着火時期を目標熱着火時期τ
2mixtgtとして取得する。
本実施形態においては、MFCスキームを使用して、混合割合がイソオクタン:ノルマルヘプタン:トルエン=35:15:50(vol.%)の混合燃料について圧力6MPa、空気過剰率(λ)=1の条件で初期温度700Kから1400Kまで50K毎に化学反応計算を行うことにより、各温度における目標低温酸化反応時期τ
1mixtgt及び目標熱着火時期τ
2mixtgtを取得する。
【0035】
次に、ステップS15において、
図2のステップS5で選択した各化学反応式の内、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式の化学反応速度定数を、ステップS13において添加成分種を燃料成分種の1つに置換した混合燃料について
図2のフローにおいて最適化した簡略化化学反応スキーム18を使用した燃焼シミュレーションにより算出される低温酸化反応時期τ
1及び熱着火時期τ
2が、ステップS14で取得した目標低温酸化反応時期τ
1mixtgt及び目標熱着火時期τ
2mixtgtにそれぞれ一致するように再度最適化する。
本実施形態においては、
図2のステップS7において最適化した化学反応式R6及びR21の化学反応速度定数を、以下の式(2)により表される評価関数E
fの最小値を得るように、PSO法により再度最適化を行う。
【数4】
ステップS15の後、混合燃料の燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数を決定するフローを終了する。
【0036】
簡略化化学反応スキーム18に含まれる化学反応式R6及びR21の化学反応速度定数を
図5のステップS15において最適化した後の簡略化化学反応スキーム18を使用して燃焼シミュレーションを行うことにより、
図6に示すように、PRF70に対してトルエンを50vol.%添加した混合燃料についても、圧力6MPa、空気過剰率(λ)1、初期温度700Kから1400Kまでの温度範囲の条件において、MFCスキームによるシミュレーション結果に良く一致することが分かる。即ち、トルエン混合により低温酸化反応が抑制されるため、低温度領域のみで着火遅れ時間が延長するが、化学反応式R6及びR21の化学反応速度定数の最適化によってこの特性をよく再現可能である。
【0037】
図5に示したフローを、様々な添加成分種(例えばトルエンや1−ペンテン)毎に、対象燃料の燃料成分種と添加成分種との様々な混合割合について実行することにより、各混合割合に対応して最適化した化学反応速度定数マップ20を得ることができる。
例えば、PRF70に対するトルエンの混合割合を0vol.%から50vol.%まで10vol.%ずつ変化させ、それぞれの混合割合について化学反応式R6及びR21の化学反応速度定数を最適化した場合、化学反応速度定数の変化率R(Tol)を以下の式(3)により表すことができる。ここで、A
Tolは
図5のステップS15で最適化した化学反応速度定数であり、A
0は初期簡略化化学反応スキームにおける化学反応速度定数である。
A
Tol=R(Tol)×A
0・・・(3)
【0038】
図7に示すように、トルエンの混合割合が10vol.%でR6、R21ともに化学反応速度定数は一旦大きくなり、混合割合が増加するにつれて次第に小さくなる。ここではトルエンをイソオクタンで置換して計算しているため、R21の化学反応速度定数の変化率が1の場合には、トルエンとイソオクタンのHCHO、H
2O
2生成能が等しいということである。よって、10vol.%混合では、トルエン混合によりHCHO、H
2O
2の生成が促進されたことを表している。さらに、トルエン混合割合が増加するにつれて、HCHO、H
2O
2の生成が抑制されていくことがわかる。また、R6の化学反応速度定数の変化率が1の場合には、トルエンが混合されてもノルマルヘプタンのHCHO、H
2O
2生成能が変化しないことを表すが、このR6の化学反応速度定数も変化することから、トルエン混合がノルマルヘプタンのHCHO、H
2O
2生成にも影響することがわかる。
【0039】
次に、
図8及び
図9により、本発明の実施形態によるエンジンの燃焼シミュレーションについて説明する。
図8は本発明の実施形態によるエンジンの燃焼シミュレーション方法を示すフローチャートであり、
図9はPRF70にトルエン及び1−ペンテンを添加した混合燃料について本発明の実施形態による燃焼シミュレーションにより算出した着火遅れ時間とMFCスキームを使用した燃焼シミュレーションにより算出した着火遅れ時間とを比較した線図である。
【0040】
まず、
図8に示すフローは、
図5のフローで対象燃料に添加成分種を添加した混合燃料の燃焼シミュレーションに使用可能な簡略化化学反応スキーム18を作成した後に実行される。
図8に示すように、エンジンの燃焼シミュレーションが開始されると、ステップS21において、入力装置2により燃焼シミュレーションの設定データ(エンジンの寸法、形状、物性値、対象燃料の燃料成分種、添加成分種、混合割合、燃焼反応の初期温度、空気過剰率、圧力等)が入力される。
【0041】
次に、ステップS22において、プリプロセッサ10は、ステップS21で入力された設定データに基づき、燃焼シミュレーションに用いる物理モデルを構築する。
【0042】
次に、ステップS23において、化学反応解析部12は、化学反応データベース8から簡略化化学反応スキーム18を読み込む。次いで、ステップS24において、化学反応解析部12は、化学反応データベース8の化学反応速度定数マップ20を参照し、ステップS21で入力された対象燃料の燃料成分種、添加成分種、混合割合等に対応する化学反応速度定数を読み込む。
【0043】
次に、ステップS25において、化学反応解析部12は、対象燃料に複数の添加成分種が添加されている場合、その添加成分種の混合割合に応じた化学反応速度定数を算出する。
本実施形態においては、例えば、PRF70に対してトルエンを30vol.%、1−ペンテンを20vol.%混合した燃料(ノルマルヘプタン:イソオクタン:トルエン:1−ペンテン=15:35:30:20vol.%)を想定した場合、化学反応解析部12は、各添加成分種をイソオクタンで置換し、化学反応式R6及びR21の化学反応速度定数を、それぞれトルエンと1−ペンテンの混合割合に応じて以下の式(4)のように加重平均した値を算出する。ここで、R(Tol)、R(Pen)はそれぞれトルエン、1−ペンテンを単独で対象燃料に添加した場合の化学反応速度定数の変化率であり、Tol%、Pen%はそれぞれトルエン、1−ペンテンの混合割合である。
【数5】
【0044】
次に、ステップS26において、化学反応解析部12及び3次元流体解析部14は、ステップS22において構築した物理モデル、ステップS23で読み込んだ簡略化化学反応スキーム18、ステップS24で読み込んだ化学反応速度定数、及び、ステップS25で算出した化学反応速度定数を用いて、燃焼シミュレーションを実行する。
【0045】
次に、ステップS27において、ポストプロセッサ16は、ステップS26の燃焼シミュレーション結果を所定の出力形式に変換する処理を行い、出力装置6から出力させる。その後、エンジンの燃焼シミュレーションを終了する。
【0046】
ステップS25において、対象燃料に添加された複数の添加成分種の混合割合に応じた化学反応速度定数を算出し、その化学反応速度定数を使用して燃焼シミュレーションを実行することにより、複数の添加成分種を添加した混合燃料についても精度よく燃焼シミュレーションを行うことができる。
例えば、PRF70に対してトルエンを30vol.%、1−ペンテンを20vol.%混合した燃料(ノルマルヘプタン:イソオクタン:トルエン:1−ペンテン=15:35:30:20vol.%)について、各添加成分種の混合割合に応じて算出した化学反応速度定数を使用して着火遅れ時間を算出した場合、
図9に示すように、MFCスキームによるシミュレーション結果に良く一致することが分かる。
【0047】
次に、本発明の実施形態のさらなる変形例を説明する。
まず、上述した実施形態では、初期簡略化化学反応スキームとして、PRFの着火現象の再現に適した化学反応式R1乃至R38を使用する場合を説明したが、他の化学反応スキームを使用してもよい。
例えば、Amar Patelらによって提案されたHCCIエンジンシミュレーションのための化学反応スキーム「ERC Mechanism」を、初期簡略化化学反応スキームとして使用してもよい。このERC Mechanismは、以下のr1乃至r52の化学反応式を含む。
n−C
7H
16+H=C
7H
15−2+H
2 (r1)
n−C
7H
16+OH=C
7H
15−2+H
2O (r2)
n−C
7H
16+HO
2=C
7H
15−2+H
2O
2 (r3)
n−C
7H
16+O
2=C
7H
15−2+HO
2 (r4)
C
7H
15−2+O
2=C
7H
15O
2 (r5)
C
7H
15O
2+O
2=C
7KET
12+OH (r6)
C
7KET
12=C
5H
11CO+CH
2O+OH (r7)
C
5H
11CO=C
2H
4+C
3H
7+CO (r8)
C
7H
15−2=C
2H
5+C
2H
4+C
3H
6 (r9)
C
3H
7=C
2H
4+CH
3 (r10)
C
3H
7=C
3H
6+H (r11)
C
3H
6+CH
3=C
3H
5+CH
4 (r12)
C
3H
5+O
2=C
3H
4+HO
2 (r13)
C
3H
4+OH=C
2H
3+CH
2O (r14)
C
3H
4+OH=C
2H
4+HCO (r15)
CH
3+HO
2=CH
3O+OH (r16)
CH
3+OH=CH
2+H
2O (r17)
CH
2+OH=CH
2O+H (r18)
CH
2+O
2=HCO+OH (r19)
CH
2+O
2=CO
2+H
2 (r20)
CH
2+O
2=CO+H
2O (r21)
CH
2+O
2=CH
2O+O (r22)
CH
2+O
2=CO
2+H+H (r23)
CH
2+O
2=CO+OH+H (r24)
CH
3O+CO=CH
3+CO
2 (r25)
CO+OH=CO
2+H (r26)
O+OH=O
2+H (r27)
H+HO
2=OH+OH (r28)
OH+OH=O+H
2O (r29)
H+O
2+M=HO
2+M (r30)
H
2O
2+M=OH+OH+M (r31)
H
2+OH=H
2O+H (r32)
HO
2+HO
2=H
2O
2+O
2 (r33)
CH
2O+OH=HCO+H
2O (r34)
CH
2O+HO
2=HCO+H
2O
2 (r35)
HCO+O
2=HO
2+CO (r36)
HCO+M=H+CO+M (r37)
CH
3+CH
3O=CH
4+CH
2O (r38)
C
2H
4+OH=CH
2O+CH
3 (r39)
C
2H
4+OH=C
2H
3+H
2O (r40)
C
2H
3+O
2=CH
2O+HCO (r41)
C
2H
3+HCO=C
2H
4+CO (r42)
C
2H
5+O
2=C
2H
4+HO
2 (r43)
CH
4+O
2=CH
3+HO
2 (r44)
OH+HO
2=H
2O+O
2 (r45)
CH
3+O
2=CH
2O+OH (r46)
CH
4+H=CH
3+H
2 (r47)
CH
4+OH=CH
3+H
2O (r48)
CH
4+O=CH
3+OH (r49)
CH
4+HO
2=CH
3+H
2O
2 (r50)
CH
4+CH
2=CH
3+CH
3 (r51)
C
3H
6=C
2H
3+CH
3 (r52)
【0048】
また、上述した実施形態では、対象燃料の燃焼反応における目標低温酸化反応時期τ
1tgt及び目標熱着火時期τ
2tgtを取得するために、MFCスキームを使用する場合を説明したが、これとは異なる化学反応スキームを使用してもよく、あるいは、実験により目標低温酸化反応時期τ
1tgt及び目標熱着火時期τ
2tgtを取得してもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、化学反応速度定数の最適化を行う際に、PSO法を使用する場合を説明したが、これとは異なる最適化手法を使用してもよい。
【0050】
次に、上述した本発明の実施形態及び本発明の実施形態の変形例によるエンジンの燃焼シミュレーションに使用する化学反応速度定数の決定方法及びエンジンの燃焼シミュレーション方法の作用効果を説明する。
【0051】
まず、燃焼シミュレーションに使用する化学反応式の中から、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式を少なくとも1つ選択すると共に、熱着火時期の反応温度に対して相対的に感度の高い化学反応式を少なくとも1つ選択し、それらの選択した化学反応式の化学反応速度定数を、燃焼シミュレーションにより算出される低温酸化反応時期及び熱着火時期が所定の目標低温酸化反応時期及び目標熱着火時期にそれぞれ一致するように最適化するので、高い精度で低温酸化反応時期及び熱着火時期を算出することが可能な簡略化化学反応スキーム18を作成することができ、これにより、エンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で精度よく再現することができる。
【0052】
また、対象燃料に添加成分種を添加した混合燃料については、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式の化学反応速度定数を、対象燃料に添加された添加成分種を燃料成分種の1つに置換した場合に燃焼シミュレーションにより算出される低温酸化反応時期及び熱着火時期が混合燃料における目標低温酸化反応時期及び目標熱着火時期にそれぞれに一致するように再度最適化するので、混合燃料についても高い精度で低温酸化反応時期及び熱着火時期を算出することが可能な簡略化化学反応スキーム18を作成することができ、これにより、様々な混合燃料についてエンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で精度よく再現することができる。
【0053】
特に、対象燃料は、燃料成分種としてイソオクタンとノルマルヘプタンとを含む混合燃料PRFであるので、PRFについてエンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で精度よく再現することができる。
【0054】
また、燃焼シミュレーションに使用する化学反応式として、上述のR1乃至R38の化学反応式を設定するので、PRFについてエンジンの燃焼反応を少ない計算負荷で一層精度よく再現することができる。
【0055】
また、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式R6及びR21を選択すると共に、熱着火時期の反応温度に対して相対的に感度の高い化学反応式R37を選択して化学反応速度定数を最適化するので、低温酸化反応時期及び熱着火時期を精度よく計算することが可能な簡略化化学反応スキーム18を作成できる。
【0056】
特に、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式及び、熱着火時期の反応温度に対して相対的に感度の高い化学反応式のぞれぞれの化学反応速度定数を、PSO法により最適化するので、高い精度で燃焼シミュレーションを実行することが可能な簡略化化学反応スキーム18を効率よく作成することができる。
【0057】
また、対象燃料に添加成分種を添加した混合燃料については、低温酸化反応中のHCHO及びH
2O
2の生成量に対して相対的に感度の高い化学反応式の化学反応速度定数を、PSO法により再度最適化するので、様々な混合燃料について高い精度で燃焼シミュレーションを実行することが可能な簡略化化学反応スキーム18を効率よく作成することができる。