(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、壁躯体の下部の床面付近に水平方向の構造スリットが形成されており、さらにこの壁躯体に扉が取り付けられる場合がある。
この構造スリットは、地震時に、構造スリットの上側の躯体(以下、上部躯体と呼ぶ)が構造スリットの下側の部分(以下、下部躯体と呼ぶ)に対して水平移動し、地震時の挙動に追従するものである。
【0003】
ところで、地震時には建物に層間変位が生じるが、上述の壁躯体の最大層間変位角は1/100程度に設定されることが多い。
これに対し、扉および扉枠の最大面内変形角は、JISA4702で変形角1/120のドアが規定されており、多くの建具メーカーは、この規定に従って、1/120を上弦として設計している。つまり、地震により上部躯体と下部躯体とが水平方向に相対変位し、この相対変位に伴って扉枠が変形しても、扉枠の変形角が1/120までであれば、扉が開放可能となっている。
また、耐震ストライクや耐震丁番といった、扉と扉枠との上下方向にプラスマイナス10mm程度のずれを許容する構造が提案されている。
【0004】
以上の扉および扉枠の構造では、以下のような問題がある。
例えば、
図15(a)に示すように、壁躯体101に水平方向の構造スリット102が形成されており、構造スリット102よりも下側の躯体を下部躯体103とし、構造スリット102よりも上側の躯体を上部躯体104とする。
この壁躯体101に扉枠110および扉111が取り付けられている。ここで、床面105から梁下106までの高さを4000mmとし、床面105から扉枠110の上端までの高さを2000mmとする。
【0005】
地震により、
図15(b)に示すように、上部躯体104が下部躯体103に対して水平方向右側に変位し、壁躯体101の変位角が1/240になった場合、扉の変形角は1/120であり、許容できる最大の変形角となっている。
その後、壁躯体101の変位角が最大層間変位角である1/100に達すると、扉枠110および扉111の変形角は1/50となり、許容値である1/120を大きく超えて破損し、扉111を開放できなくなるおそれがある。
【0006】
また、従来の耐震ストライクや耐震丁番は、扉と扉枠とが上下方向にプラスマイナス10mm程度ずれるのを許容する構造であるので、1/50の変形角には追従できない。
仮に、耐震ストライクや耐震丁番が扉と扉枠との10mm以上のずれに対応する場合であっても、扉と枠のクリアランスを非常に大きくする必要があり、気密性や水密性などの性能を確保することが困難となるので、使い勝手が悪いという問題がある。
【0007】
このような問題を解決するため、例えば、第1のドアの内側に第2のドアを設けた耐震ドアが提案されている(特許文献1参照)。
このような耐震ドアによれば、地震時の躯体の変形により、第1のドアが大きく歪んだり、枠が破壊されたりして開放不能になっても、第2のドアを開放して通行可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る扉構造1の正面図(屋外側から視た図)および縦断面図である。
【0022】
扉構造1は、屋内と屋外とを仕切る鉄筋コンクリート造の壁2の開口10に設けられ、屋内側床面3と、この屋内側床面3よりも低い屋外側床面4と、の間で往来可能とするものである。
屋内側床面3と屋外側床面4との境界部分は、切り欠かれて切欠き部11が形成されている。
開口10は矩形状であり、下辺縁となる切欠き部11、上辺縁12、側辺縁13A、13B、で構成される。
【0023】
扉構造1は、開口10に設けられる矩形状の扉枠20と、この扉枠に開閉可能に設けられた扉30(
図3参照)と、を備える。
扉枠20は、略水平に延びる沓摺り21および上枠22と、これら沓摺り21と上枠22とを連結して略鉛直方向に延びる一対の縦枠23A、23Bと、を備える。
上枠22は、一対のファスナ機構40を介して開口10の上辺縁12に固定され、沓摺り21は、開口10の切欠き部11に一対のダボピン機構50を介して固定されている。
【0024】
壁2の下端側には、床面3、4に沿って略水平に延びて開口10を通る構造スリットとしての横スリット5が設けられている。以下、壁2のうち横スリット5よりも下側の部分を、下部躯体2Aとし、横スリット5よりも上側の部分を、上部躯体2Bとする。すると、上部躯体2Bは、下部躯体2Aに対して水平方向に相対移動可能となっている。
この横スリット5は、壁2の下端側に設けられて略水平に延びる第1スリット5Aと、沓摺り21と切欠き部11との間を略水平に延びる第2スリット5Bと、で構成される。
【0025】
また、壁2の上部躯体2Bには、鉛直方向に延びて開口10の
図1中左側の端縁に至る構造スリットとしての縦スリット6が設けられており、これにより、上部躯体2Bのうち縦スリット6を挟んで
図1中左右の部分は、鉛直方向に相対移動可能となっている。
【0026】
壁2の開口10の上辺縁12の屋内側には、切欠き部17が形成されている。
一対のファスナ機構40は、この切欠き部17の両端側つまり上枠22の両端側に設けられている。
各ファスナ機構40は、上枠22に設けられて鉛直方向に延びるルーズ穴41が形成されたプレート42と、上部躯体2Bのうち上辺縁12の近傍に設けられてプレート42のルーズ穴41に挿通されるピン43と、を備える。
これら一対のファスナ機構40により、上枠22は、上部躯体2Bに対して回転可能に支持されていることになる。
【0027】
縦枠23A、23Bは、沓摺り21と上枠22とを連結しているが、上部躯体2Bには固定されていない状態である。
【0028】
図2は、
図1のA−A断面図である。
図3は、
図2のB−B断面図である。
一対のダボピン機構50は、開口10の切欠き部11の両端側つまり沓摺り21の両端側に設けられている(
図1参照)。
各ダボピン機構50は、切欠き部11に設けられて上方に突出するダボピン51と、沓摺り21に沓摺り21の長さ方向に設けられてダボピン51が挿通されるルーズ穴52と、を備える。
【0029】
具体的には、切欠き部11の底面には、略水平に延びて沓摺り21と同程度の長さの長尺状の受け部材53が固定されており、沓摺り21は、この受け部材53の上にスライド可能に支持されている。
この受け部材53は、平板状の支持部54と、この支持部54の一部の端縁に立設された壁部55と、を備える。
【0030】
支持部54の上面には、塩化ビニルシート56が敷設されて、この塩化ビニルシート56の上面は、円滑な平面となっている。なお、本実施形態では、塩化ビニルシート56を用いたが、これに限らず、沓摺り21と支持部54との摩擦抵抗を軽減する素材であれば、何でもよい。
また、この支持部54の下面には、所定間隔おきにリブ57が設けられており、このリブ57は溶接用アンカー14に溶接固定されている。
【0031】
この支持部54には、ボルト60が螺合しており、これにより、ボルト60の頭部61は、支持部54の下面に係止し、ボルト60の首部62は、支持部54の上面から上方に突出している。このボルト60の首部62には、塩化ビニルパイプ63が被せられている。なお、本実施形態では、塩化ビニルパイプ63を用いたが、これに限らず、ボルト60の首部62とルーズ穴52との摩擦抵抗を軽減する素材であれば、何でもよい。
【0032】
ボルト60の塩化ビニルパイプ63が被せられた首部62は、上述のダボピン51として機能する。
壁部55は、屋外側から視て、支持部54の両側の端縁および奥側の端縁に設けられている。沓摺り21と壁部55との間には、所定の隙間が設けられている。
【0033】
沓摺り21は、断面視で略矩形枠状であり、上述のルーズ穴52は、この沓摺り21の底板24に形成されている。なお、この沓摺り21は、断面視で略矩形枠状に限らず、その他の形状であってもよい。
この沓摺り21は、支持部54の塩化ビニルシート56の上に載置されるとともに、支持部54のダボピン51が沓摺り21のルーズ穴52に挿通される。
【0034】
沓摺り21は、受け部材53のダボピン51がルーズ穴52内を移動することにより、沓摺り21の長さ方向に沿って水平方向に移動可能である。また、沓摺り21は、受け部材53のダボピン51がルーズ穴52から挿抜されることにより、鉛直方向に移動可能である。
このように、沓摺り21は、開口10の切欠き部11に水平方向および鉛直方向に移動可能に支持されている。
【0035】
受け部材53と切欠き部11との間の隙間には、モルタルが詰められて、トロ詰め部15が形成されている。また、受け部材53と切欠き部11との隙間のうち、屋外側に面する部分には、二重シーリング16が打設されている。なお、受け部材53と切欠き部11との隙間の屋外側に面する部分には、二重シーリング16に限らず、一重のシーリングでもよい。
【0036】
また、沓摺り21が受け部材53の上に載置された状態で、沓摺り21と壁部55との間には、シーリング25が打設され、沓摺り21と支持部54との間には、モルタルの浸入を防ぐための捨てシーリング26が打設されている。
また、沓摺り21と受け部材53とは、仮止めビス58で仮固定可能となっている。
【0037】
以上の扉構造1の地震時の動作は、以下のようになる。
まず、初期状態では、
図4(a)に示すように、扉枠20の上枠22、縦枠23A、23B、および沓摺り21は、矩形枠状となっている。上枠22の両端側は、ファスナ機構40を介して開口10の上辺縁に固定され、沓摺り21の両端側は、開口10の下端に一対のダボピン機構50を介して固定されている。また、縦枠23A、23Bは、開口10に固定されていない。
【0038】
まず、フェーズ1では、
図4(b)に示すように、地震により上部躯体2Bが下部躯体2Aに対して面内で水平方向に変位すると、扉枠20の沓摺り21が受け部材53上を摺動して、ダボピン51がルーズ穴52内で水平方向にスライドする。このとき、沓摺り21の受け部材53に対する移動に伴って、シーリング25が変形する。
なお、この段階では、扉枠20は変形していない。
【0039】
例えば、床面から梁下までの高さを4000mmとし、床面から扉枠20の上端までの高さを2000mmとし、層間変位角1/100つまり変位40mmと想定する。すなわち、上部躯体2Bが下部躯体2Aに対して40mm水平方向に変位する場合を想定する。
この場合、ルーズ穴52におけるダボピン51の可動範囲を左右に10mmずつとすると、扉枠20は、
図4(b)中右方向に10mm水平方向に移動する。これにより、沓摺り21および上枠22の両方が、元の位置から10mmだけ水平方向に移動することになる。
【0040】
その後、フェーズ2では、
図4(c)に示すように、上部躯体2Bが下部躯体2Aに対して面内で水平方向にさらに変位すると、一対のファスナ機構40に上枠22が引っ張られるので、扉枠20が平行四辺形状に変形し、扉枠20は扉30に接触する。これにより、扉枠20はこれ以上変形しなくなる。
【0041】
例えば、扉枠20は、最大許容値である1/120まで平行四辺形状に変形する。つまり、扉枠20の上枠22がさらに
図4(c)中右方向に16mm水平方向に移動し、扉の変形角は1/120となる。
【0042】
その後、フェーズ3では、
図5に示すように、上部躯体2Bが下部躯体2Aに対して面内で水平方向にさらに変位すると、扉枠20は扉30とともに
図4中時計回りに回転(以降、ロッキングと呼ぶ)する。
【0043】
すなわち、
図5中右下のダボピン機構50のダボピン51を回転中心として、時計回りに回転する。
このとき、
図5中左下のダボピン機構50では、ダボピン51が沓摺り21のルーズ穴52から抜けている。また、
図5中左上のファスナ機構40では、ピン43は、プレート42のルーズ穴41内を下方に相対移動し、
図5中右上のファスナ機構40では、ピン43は、プレート42のルーズ穴41内を上方に相対移動する。
【0044】
例えば、ロッキングにより、扉枠20は、さらに
図5中右方向に14mm水平方向に移動し、これにより、元の位置から水平方向に合計40mm移動したことになる。
以上より、建物の層間変位が1/100となっても、扉枠20の変形角は1/120で済むことが判る。
【0045】
このように、本発明は、日常的に発生するような小地震では、壁2の変位が小さいため、扉枠20をロッキングではなくスライドさせることで、この変位を吸収する。なお、これに限らず、ロッキングのみで変位を吸収してもよい。
また、スライド量を大きくして、ロッキング量を小さくしたり、スライド量を小さくして、ロッキング量を大きくしたりできる。また、スライドのみまたはロッキングのみ、と必要に応じて別々に使用することもできる。なお、ロッキングのみの場合、ルーズ穴52を長孔にしなくてもよい。
【0046】
一方、地震により上部躯体2Bが下部躯体2Aに対して面外方向に変位すると、
図6に示すように、ダボピン機構50ではダボピン51を中心として回転するとともに、ファスナ機構40ではプレート42が湾曲する。
【0047】
上述の扉構造1の扉枠20を壁2の開口10に取り付ける手順は、以下のようになる。
まず、ドアセット製作工場にて、沓摺り21、上枠22、および縦枠23A、23Bを矩形枠状に一体に製作するとともに、プレート42を上枠22に溶接固定しておく。
また、仮止めビス58で沓摺り21を受け部材53に仮固定する。このとき、沓摺り21と受け部材53の壁部55との隙間には、モルタルの浸入を防ぐために養生用スポンジをはめ込んでおく。また、沓摺り21と支持部54との間に、捨てシーリング26を打設しておく。
この状態で施工現場に搬入する。
【0048】
一方、施工現場では、あと施工アンカーにより、壁2の開口10の切欠き部11に溶接用アンカー14を打ち込むとともに、壁2の上部躯体2Bにピン43を打ち込んでおく。
【0049】
次に、扉枠20を開口10に建て込む。具体的には、上枠22に固定したプレート42のルーズ穴41にピン43を挿通するとともに、断面三角形状の楔を数種類用いて、扉枠20の床面3、4からの高さや水平方向の位置を調整する。
【0050】
扉枠20の高さと水平方向の位置の調整が完了したら、受け部材53のリブ57を切欠き部11の溶接用アンカー14に溶接して固定する。
その後、受け部材53と切欠き部11との隙間にモルタルを詰めてトロ詰め部15を形成する。
【0051】
次に、養生用スポンジを撤去してシーリング25を打設し、仮止めビス58を取り外す。これにより、沓摺り21が受け部材53に対してスライド可能となる。
【0052】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
【0053】
(1)沓摺り21を、開口10の切欠き部11に水平方向および鉛直方向に移動可能に支持させた。よって、地震時に建物の層間変位により壁2が変位しても、扉枠20の下端の沓摺り21が扉30とともに水平方向にスライドするので、層間変位に追従できる。
また、従来のように小さな扉を設ける必要はないうえに、従来の耐震ストライクや耐震丁番に比べて気密性や水密性を確保できるので、使い勝手が低下することもない。
【0054】
(2)沓摺り21の下面に、受け部材53のダボピン51が挿通されてかつ沓摺り21の長さ方向に延びるルーズ穴52を形成した。よって、簡易な構造で、壁2の開口10の切欠き部11に対して、沓摺り21を容易に水平方向および鉛直方向に移動させることができる。
【0055】
(3)扉枠20の上枠22を、壁2に設けた開口10の上辺縁12に回転可能に支持させた。よって、地震時に建物の層間変位により壁2が変位しても、扉枠20が扉30とともに時計回りに回転するので、この層間変位に追従できる。
【0056】
(4)扉枠20の上枠22に、鉛直方向に延びるルーズ穴41が形成されたプレート42を取り付けるとともに、開口10の上辺縁12の近傍に、プレート42のルーズ穴41に挿通されるピン43を設けた。よって、簡易な構造で、壁2の開口10の上辺縁12に対して上枠22を容易に回転移動させることができる。
【0057】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態に係る扉構造1Aの沓摺り21の断面図である。
本実施形態では、扉構造1Aをバリアフリー対応の建物の外壁に設けた点が第1実施形態と異なる。
【0058】
すなわち、建物がバリアフリー対応であり、屋内側床面3と屋外側床面4との段差が小さくなっている。
受け部材53の壁部55は、支持部54の端縁の全周に亘って立設されている。したがって、シーリング25は、沓摺り21の周囲に全周に亘って打設されている。
本実施形態によれば、上述の(1)〜(4)と同様の効果がある。
【0059】
〔第3実施形態〕
図8は、本発明の第3実施形態に係る扉構造1Bの沓摺り21の断面図である。
本実施形態では、扉構造1Bを建物の屋内の壁に設けた点が第1実施形態と異なる。
【0060】
すなわち、屋内の壁2は、屋内側床面3同士を仕切っている。この場合、壁部55は、支持部54の端縁の全周に亘って立設されている。したがって、シーリング25は、沓摺り21の周囲に全周に亘って打設されている。
本実施形態によれば、上述の(1)〜(4)と同様の効果がある。
【0061】
〔第4実施形態〕
図9は、本発明の第4実施形態に係る扉構造1Cの沓摺り21の断面図である。
図10は、
図9のC−C断面図である。
本実施形態では、受け部材53の構成が第1実施形態と異なる。
【0062】
すなわち、受け部材53は、ダボピン51の近傍の2箇所に配置されている。また、受け部材53の壁部55は、屋外側から視て、支持部54の奥側の端縁にのみ設けられており、沓摺り21と壁部55との間には、ほとんど隙間が設けられていない。
沓摺り21の底板24には、ルーズ穴52ではなく円形の貫通孔59が設けられている。以上より、沓摺り21は、受け部材53に対して水平移動せず、ロッキングのみで層間変位に対応する。
本実施形態によれば、上述の(3)、(4)と同様の効果がある。
【0063】
〔第5実施形態〕
図11は、本発明の第5実施形態に係る扉構造1Dの沓摺り21の断面図である。
図12は、
図11のD−D断面図である。
本実施形態では、ダボピン機構50の代わりに、スライダ70が設けられる点が、第1実施形態と異なる。
【0064】
すなわち、スライダ70は、切欠き部11に設けられて、沓摺り21の長さ方向に沿って延びる長尺状である。受け部材53の屋外側の端部は、上方に突出しており、この突出した部分がスライダ70となっている。
【0065】
また、沓摺り21の底板24には、凹部71が形成されて、スライダ70は、この凹部71に嵌合している。また、スライダ70の長さ方向の端面と、凹部71の長さ方向の内壁面との間の隙間は、寸法tとなっている。
【0066】
沓摺り21は、受け部材53のスライダ70が凹部71内を移動することにより、沓摺り21の長さ方向に沿って水平方向に寸法tの範囲で移動可能である。また、沓摺り21は、受け部材53のスライダ70が凹部71から挿抜されることにより、鉛直方向に移動可能である。
このように、沓摺り21は、開口10の切欠き部11に水平方向および鉛直方向に移動可能に支持されている。
本実施形態によれば、上述の(1)、(3)、(4)と同様の効果がある。
【0067】
〔第6実施形態〕
図13は、本発明の第6実施形態に係る扉構造1Eの沓摺り21の断面図である。
図14は、
図13のE−E断面図である。
本実施形態では、スライダ70Eおよび凹部71Eの構造が、第5実施形態と異なる。
すなわち、本実施形態では、凹部71Eは、沓摺り21の屋外側の端部の裏面となっている。また、受け部材53は、屋外側に向かって延出しており、この延出した部分がスライダ70Eとなっている。
【0068】
また、第1実施形態と同様に、支持部54には、ボルト60が螺合しており、これにより、ボルト60の頭部61は、支持部54の下面に係止し、ボルト60の首部62は、支持部54の上面から上方に突出している。このボルト60の首部62には、塩化ビニルパイプ63が被せられている。
【0069】
この塩化ビニルパイプ63の側面には、沓摺り21の底板24が当接しており、これにより、ボルト60は、沓摺り21が面外方向に移動するのを防止するストッパとしての機能を果たしている。
【0070】
本実施形態によれば、上述の(1)、(3)、(4)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(5)沓摺り21の屋外側の端部の裏面を凹部71Eとしたので、沓摺り21に荷重がかかっても、この荷重をスライダ70Eで支持できる。
【0071】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の第1〜第4実施形態では、ダボピン機構50を開口10の切欠き部11の両端側に設けたが、これに限らず、ダボピン機構50を切欠き部11のどの位置に設けてもよい。
【0072】
また、上述の第1〜第4実施形態では、ダボピン機構50を一対設けたが、これに限らず、ダボピン機構50を3つ以上設けてもよい。つまり、沓摺り21にかかる荷重が小さい場合には、ダボピン機構50は一対でよいし、沓摺り21にかかる荷重が大きい場合には、ダボピン機構50を3つ以上とすればよい。
【0073】
また、上述の各実施形態では、ファスナ機構40を設けたが、これに限らない。すなわち、ロッキングではなくスライドのみで壁2の変位を吸収する場合には、ファスナ機構40の代わりに開口10の上辺縁12に溶接用アンカーを打ち込んで、上枠22をこの溶接用アンカーに溶接固定してもよい。
【0074】
また、上述の各実施形態では、壁2の開口10の上辺縁12の屋内側に切欠き部17を形成して、この切欠き部17に一対のファスナ機構40を設けたが、これに限らない。例えば、切欠き部17を形成することなく、開口10の上辺縁12の屋内側に、直接、一対のファスナ機構40を設けてもよい。