(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁体が前記閉弁状態から前記開弁状態に移行するときに、前記弁体の前記外周部が前記排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、前記弁体の前記外周部が前記排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、
前記他方側に位置する前記弁体の前記外周部は、前記弁体の厚み方向における中心線よりも前記シート面と反対側がR形状に形成されている
請求項2から4の何れか一項に記載の排気流量制御弁。
前記弁体が前記閉弁状態から前記開弁状態に移行するときに、前記弁体の前記外周部が前記排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、前記弁体の前記外周部が前記排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、
前記弁体の回動中心が、前記弁体の高さ方向における中心線よりも前記一方側に位置するように構成される
請求項10に記載の排気流量制御弁。
前記弁体が前記閉弁状態から前記開弁状態に移行するときに、前記弁体の前記外周部が前記排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、前記弁体の前記外周部が前記排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、
前記弁棒の中心軸線に対して直交する方向の断面視において、前記弁体の回動中心は、前記一方側の弁体の厚み方向における中心線よりも前記排気流路の下流側に位置し、且つ、前記他方側の弁体の厚み方向における中心線よりも前記排気流路の上流側に位置するように構成される
請求項1から11の何れか一項に記載の排気流量制御弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、昨今におけるエンジンの高出力化の流れの中で、フラップ弁タイプの排気流量制御弁を開閉するためのアクチュエータに高出力が求められるようになっている。このため、フラップ弁タイプに比べて小出力で開閉可能なバタフライ弁タイプの採用が検討されている(特許文献2)。この特許文献2では、バタフライ弁タイプの排気流量制御弁が、高圧段過給機に供給される排気ガスの流量を制御する高圧段タービンバイパスバルブとして使用されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されているバタフライ弁タイプの排気流量制御弁は、全閉状態から開弁状態へとバルブ開度が僅かに変化すると、通過する排気ガスの流量が急激に増加するなど、バルブ開度に対する排気ガスの流量変化が大きいものであった。このような特許文献2の排気流量制御弁では、可変2段過給ステージにおいて、エンジンの目標出力に応じて高圧段過給機に供給する排気ガスの流量を微細に制御することは難しい。
【0009】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、上述したような従来技術の問題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、排気流量の微細な制御が可能な排気流量制御弁、およびこれを備える2段過給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも一実施形態は、
排気流路を流れる排気ガスの流量を制御するための排気流量制御弁であって、
弁棒と、
前記弁棒を軸として回動する平板状の弁体と、
前記排気流路の一部を内部に画定する筒状の弁ハウジングであって、
前記弁体の開度が0度である閉弁状態において、前記弁体の外周部が当接する、前記排気流路の軸方向と交差する方向に沿って延在する弁座シート面、及び
前記弁体の開度が0度より大きい開弁状態において、前記弁体の前記外周部との間に前記排気ガスが通過する通過領域を画定する、前記排気流路の前記軸方向に沿って延在する流路面、
が内周面に形成されている弁ハウジングと、を備え、
前記弁体が前記全閉状態にあるときの前記弁体に最も近接する前記流路面の所定位置から、前記流路面の端部までの水平距離をL、
前記弁体が前記全閉状態にあるときの、前記弁体と前記流路面との最短距離をH1、
前記弁体が、前記弁体と前記流路面の前記端部との離間距離が最短となる所定の開弁状態にあるときの、前記弁体と前記流路面の前記端部との最短距離をH2、
とした場合に、式(1)及び(2)を満たすように構成される。
H1≦H2 ・・・(1)
0<H2/L<0.40・・・(2)
【0011】
上記(1)に記載の実施形態によれば、排気流量制御弁が、弁棒と、弁棒を軸として回動する平板状の弁体と、閉弁状態において弁体の外周部が当接する、排気流路の軸方向と交差する方向に沿って延在する弁座シート面、及び開弁状態において弁体の外周部との間に排気ガスが通過する通過領域を画定する、排気流路の前記軸方向に沿って延在する流路面、が内周面に形成されている弁ハウジングとを備える、いわゆるバタフライ弁タイプの排気流量制御弁として構成される。したがって、従来のフラップ弁タイプの排気流量制御弁と比べて、弁体を小出力で開閉可能なため、アクチュエータを小型化することが出来る。
【0012】
また、上記式(1)及び(2)を満たすように構成されることにより、弁体が全閉状態から、弁体と流路面の端部との離間距離が最短となる所定の開弁状態になるまでの間、排気ガスが通過する通過領域が緩慢に増加するように構成される。よって、弁体の開度が、0度から、弁体と流路面の端部との離間距離が最短となる所定の開弁状態における弁体の開度であるα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0013】
幾つかの実施形態では、0<H2/L<0.30を満たすように構成される。このように構成することで、上記実施形態と比べて、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
幾つかの実施形態では、0<H2/L<0.25を満たすように構成される。このように構成することで、上記実施形態と比べて、排気ガスの流量をさらに微細に制御することが出来る。
幾つかの実施形態では、0<H2/L<0.20を満たすように構成される。このように構成することで、上記実施形態と比べて、排気ガスの流量をさらにより微細に制御することが出来る。
【0014】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の排気流量制御弁において、上記弁体の外周部には、弁体の厚み方向における中心線よりも弁座シート面と当接するシート面側に凹み部が形成されている。そして、上記最短距離H1は、弁体の外周部に凹部が形成されていないと仮想した場合に、弁体が回動すると弁体の外周部の隅部が流路面と接触するような距離である。
【0015】
ここで、「凹み部」とは、弁棒の中心軸線に対して直交する方向の断面視において、全閉状態において弁体のシート面を通過する仮想線Aと、全閉状態において流路面から最短距離H1だけ離間する弁体の先端を通過し、且つ、仮想線Iaに対して直交する方向に延伸する仮想線Ibとで画定される仮想形状に対して凹んだ位置にある部分を指す。
【0016】
上記(2)に記載の実施形態によれば、弁体の外周部に上述した凹み部が形成されることにより、弁体が回動しても弁体の外周部が流路面と接触しない。このため、上述した最短距離H1を設計限界近くまで小さくすることが出来る。これにより、弁体の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0017】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の排気流量制御弁において、上記弁体の外周部には、弁体の厚み方向における中心線よりも弁座シート面と当接するシート面側に凹み部が形成されている。そして、凹み部の深さをdとした場合に、H1≦dの関係が成立するように構成される。
【0018】
ここで、「凹み部の深さ」とは、上述した仮想線Aと仮想線Bとの交点から弁体の外周部までの最短距離を指す。
【0019】
上記(3)に記載の実施形態によれば、弁体の外周部に上述した凹み部が形成されることにより、弁体が回動しても弁体の外周部が流路面と接触しない。このため、上述した最短距離H1を設計限界近くまで小さくすることが出来る。これにより、弁体の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0020】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載の排気流量制御弁において、上記凹み部が、外周部に形成されたR形状からなる。
【0021】
上記(4)に記載の実施形態によれば、凹み部が外周部に形成されたR形状からなる。このため、開弁状態において通過領域を通過する排気ガスがR形状に沿って滑らかに流れるため、排気ガスの圧力損失を小さくすることが出来る。
【0022】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載の排気流量制御弁において、上記凹み部が、外周部に形成された平坦形状からなる。
【0023】
上記(5)に記載の実施形態によれば、凹み部が外周部に形成された平坦形状からなる。このような平坦形状は、例えば、弁板の外周部の隅部を切断加工するなどして簡単に形成することが出来るため、製造性に優れている。
【0024】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)から(5)に記載の排気流量制御弁において、上記弁体が閉弁状態から開弁状態に移行するときに、弁体の外周部が排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、弁体の外周部が排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、他方側に位置する弁体の外周部は、弁体の厚み方向における中心線よりもシート面と反対側がR形状に形成されている。
【0025】
他方側に位置する弁体では、外周部のシート面は下流側に配向され、外周部のシート面と反対側は上流側に配向される。よって、上記(6)に記載の実施形態によれば、外周部のシート面と反対側がR形状に形成されていることで、開弁状態において上流側から通過領域に向かって流れる排気ガスがR形状に沿って滑らかに流れるため、排気ガスの圧力損失を小さくすることが出来る。
【0026】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)に記載の排気流量制御弁において、上記流路面が、弁棒の中心軸線に対して直交する方向の断面視において、弁体が全閉状態にあるときに弁体との距離が最短距離H1となる所定位置から端部に至るまで、排気流路の軸方向に対して平行な平行面からなる。
【0027】
上記(7)に記載の実施形態によれば、流路面が、排気流路の軸方向に対して平行な平行面からなる。このため、流路面に対して特別な加工などを施す必要がないことから、弁ハウジングの製造性に優れている。
【0028】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)に記載の排気流量制御弁において、上記流路面が、弁棒の中心軸線に対して直交する方向の断面視において、弁体が全閉状態にあるときに弁体との距離が最短距離H1となる所定位置から端部に向かって外向きに直線状に延在する、排気流路の軸方向に対して傾斜する傾斜面からなる。
【0029】
上記(8)に記載の実施形態によれば、流路面が、流路面の端部に向かって外向きに直線状に延在する傾斜面からなる。このため、弁体が回動したときに、弁体の外周部と流路面とが接触するのを確実に防止することが出来る。したがって、弁体の外周部に上述した凹み部が形成されていなくても、上述した最短距離H1を設計限界近くまで小さくすることが出来、弁体の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0030】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)に記載の排気流量制御弁において、上記流路面が、弁棒の中心軸線に対して直交する方向の断面視において、弁体が全閉状態にあるときに弁体との距離が最短距離H1となる所定位置から前記端部に向かって内向きに曲線状に延在する曲面からなる。
【0031】
上記(9)に記載の実施形態によれば、流路面が、流路面の端部に向かって内向きに曲線状に延在する曲面からなる。このため、弁体が回転したときに、上記(7)及び(8)に記載した実施形態と比べて、弁体の外周部と流路面との最短距離を、弁体の開度が0度から上述したα度までの間に亘って小さくすることが出来る。これにより、弁体の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0032】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の排気流量制御弁において、上記流路面が、弁体が全閉状態から所定の開弁状態に至るまでの間、弁体と流路面との最短距離が一定距離に維持されるように構成される。
【0033】
上記(10)に記載の実施形態によれば、弁体が全閉状態から所定の開弁状態に至るまでの間、弁体と流路面との最短距離が一定距離に維持される。このように、弁体と流路面との最短距離が一定距離に維持されている場合でも、エンジン回転数の増加に伴って通過領域を通過する排気ガスの流量は増加する。したがって、このような実施形態によれば、弁体の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を極めて微細に制御することが出来る。
【0034】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)から(10)に記載の排気流量制御弁において、上記弁棒の中心軸線に対して直交する方向の断面視において、弁体の回動中心が、弁体の高さ方向における中心線に対して偏心するように構成される。
【0035】
上記(11)に記載の実施形態によれば、弁体の回動中心が、弁体の高さ方向における中心線に対して偏心している。このため、その偏心位置および偏心量を適切に設定することで、シール性の向上や、弁体を開弁するときのバルブ制御性の向上を実現することが出来る。
【0036】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)に記載の排気流量制御弁において、弁体が閉弁状態から開弁状態に移行するときに、弁体の外周部が排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、弁体の前記外周部が排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、弁体の回動中心が、弁体の高さ方向における中心線よりも一方側に位置するように構成される。
【0037】
上記(12)に記載の実施形態によれば、弁体の回動中心が、弁体の高さ方向における中心線よりも一方側に位置するため、弁体を弁座シート面に押し付ける方向の回転モーメントが弁体に作用する。よって、全閉状態における気密性が高まり、弁体のシール性を向上させることが出来る。また、このような実施形態であっても、従来のフラップ弁タイプの排気流量制御弁と比べて、弁体を開閉するアクチュエータの出力を小さくすることが出来る。
【0038】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)から(12)に記載の排気流量制御弁において、上記弁体が閉弁状態から開弁状態に移行するときに、弁体の外周部が排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、弁体の外周部が排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、上記弁棒の中心軸線に対して直交する方向の断面視において、弁体の回動中心は、一方側の弁体の厚み方向における中心線よりも排気流路の下流側に位置し、且つ、他方側の弁体の厚み方向における中心線よりも排気流路の上流側に位置するように構成される。
【0039】
上記(13)に記載の実施形態によれば、弁体の回動中心が弁体の厚み方向における中心線よりも下流側に偏心させることで、弁体の回動中心を下流側に偏心させない場合と比べて、製造公差等に影響されることなく、一方側の弁体を確実に弁座シート面に当接させることが出来る。また、弁体の回動中心が一方側の弁体の厚み方向における中心線よりも上流側に偏心させることで、弁体の回動中心を上流側に偏心させない場合と比べて、製造公差等に影響されることなく、他方側の弁体を確実に弁座シート面に当接させることが出来る。
【0040】
(14)本発明の少なくとも一実施形態は、
エンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスが導入される排気マニホールドと、
前記排気マニホールドから排出される前記排気ガスが流れる排気系統と、
前記排気マニホールドから排出される前記排気ガスにより駆動するように構成された高圧段タービンを有する高圧段過給機と、
前記高圧段過給機よりも前記排気系統の下流側に配置され、前記高圧段過給機から排出される前記排気ガスによって駆動するように構成された低圧段タービンを有する低圧段過給機と、
上記(1)から(13)に記載の排気流量制御弁と、を備える2段過給システムであって、
前記排気系統は、前記高圧段タービンを迂回して、前記排気マニホールドと前記高圧段タービンの下流側とを接続する高圧側バイパス流路を含み、
前記排気流量制御弁は、前記高圧側バイパス流路を流れる前記排気ガスの流量を制御するように構成される。
【0041】
上記(14)に記載の実施形態によれば、高圧段タービンに供給される排気ガスの流量を制御する高圧段タービンバイパスバルブ(排気フロー制御バルブ)を、上記(1)から(13)に記載の排気流量制御弁によって構成した2段過給システムを提供することが出来る。
【0042】
(15)本発明の少なくとも一実施形態は、
エンジンと、
前記エンジンから排出される排気ガスが導入される排気マニホールドと、
前記排気マニホールドから排出される前記排気ガスが流れる排気系統と、
前記排気マニホールドから排出される前記排気ガスにより駆動するように構成された高圧段タービンを有する高圧段過給機と、
前記高圧段過給機よりも前記排気系統の下流側に配置され、前記高圧段過給機から排出される前記排気ガスによって駆動するように構成された低圧段タービンを有する低圧段過給機と、
上記(1)から(13)に記載の排気流量制御弁と、を備える2段過給システムであって、
前記排気系統は、前記低圧段タービンを迂回して、前記高圧段タービンの下流側と前記低圧段タービンの下流側とを接続する低圧側バイパス流路を含み、
前記排気流量制御弁は、前記低圧側バイパス流路を流れる前記排気ガスの流量を制御するように構成される。
【0043】
上記(15)に記載の実施形態によれば、低圧段タービンに供給される排気ガスの流量を制御する低圧段タービンバイパスバルブ(ウェイストゲートバルブ)を、上記(1)から(13)に記載の排気流量制御弁によって構成した2段過給システムを提供することが出来る。
【発明の効果】
【0044】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、排気流量の微細な制御が可能な排気流量制御弁、およびこれを備える2段過給システムを提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
また、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態にかかる排気流量制御弁の斜視図である。
図2〜
図5は、本発明の一実施形態にかかる排気流量制御弁を軸直交方向(弁棒の中心軸線に対して直交する方向)から視認した断面図である。
本発明の一実施形態にかかる排気流量制御弁1は、排気流路を流れる排気ガスの流量を制御するための排気流量制御弁であって、
図1に示すように、弁棒2と、弁体3と、弁ハウジング4とを備えている。
【0048】
弁棒2は、アクチュエータ(不図示)の出力によって、その中心軸線CL1周りに回転するように構成されている。
弁体3は、平板状の部材であり、弁棒2に固定され、弁棒2を軸として回動するように構成されている。
弁ハウジング4は、排気流路の一部をその内部に画定する筒状の部材であって、その内周面には、弁座シート面41と流路面42とが形成されている。
【0049】
弁座シート面41は、
図2〜
図5に示すように、弁体3の開度が0度である閉弁状態(
図2〜
図5において符号Aで示した状態)において、弁体3の外周部31が当接する面であり、排気流路の軸方向(
図2〜
図5において矢印ADで示した方向)と交差する方向に沿って延在している。
流路面42は、
図2〜
図5に示すように、弁体3の開度が0度より大きい開弁状態(例えば、
図2〜
図5において符号Bで示した状態)において、弁体3の外周部31との間に排気ガスが通過する通過領域Rを画定する面であり、排気流路の軸方向ADに沿って延在している。
【0050】
図示した実施形態では、弁座シート面41は、排気流路の軸方向ADに対して直交する方向に延在しているが、弁座シート面41の延在方向はこれに限定されない。少なくとも、排気流路の軸方向ADと弁座シート面41の延在方向とのなす角度が、30度〜90度(直交)の範囲は、本発明の範囲に含まれる。
また、図示した実施形態では、流路面42は、排気流路の軸方向ADに対して平行な方向に延在しているが、流路面42の延在方向はこれに限定されない。少なくとも、排気流路の軸方向ADと流路面42の延在方向とのなす角度が、0度(平行)〜45度の範囲は、本発明の範囲に含まれる。
【0051】
そして、本発明の一実施形態にかかる排気流量制御弁1は、
図2〜
図5に示すように、弁体3が全閉状態にあるときの弁体3に最も近接する流路面42の所定位置42aから、流路面42の端部42bまでの水平距離をL、弁体3が全閉状態にあるときの、弁体3と流路面42との最短距離をH1、弁体3が、弁体3と流路面42の端部との離間距離が最短となる所定の開弁状態(
図2〜
図5において符号Bで示した状態)にあるときの、弁体3と流路面42の端部42bとの最短距離をH2とした場合に、下記式(1)及び(2)を満たすように構成される。
【0052】
H1≦H2 ・・・(1)
0<H2/L<0.40・・・(2)
【0053】
このような実施形態によれば、排気流量制御弁1が、弁棒2と、弁棒2を軸として回動する平板状の弁体3と、閉弁状態において弁体3の外周部31が当接する、排気流路の軸方向ADと交差する方向に沿って延在する弁座シート面41、及び開弁状態において弁体3の外周部31との間に排気ガスが通過する通過領域Rを画定する、排気流路の軸方向ADに沿って延在する流路面42、が内周面に形成されている弁ハウジング4とを備える、いわゆるバタフライ弁タイプの排気流量制御弁として構成される。したがって、従来のフラップ弁タイプの排気流量制御弁と比べて、弁体3を小出力で開閉可能なため、アクチュエータを小型化することが出来る。
【0054】
また、上記式(1)及び(2)を満たすように構成されることにより、弁体3が全閉状態から上述した所定の開弁状態になるまでの間、排気ガスが通過する通過領域Rが緩慢に増加するように構成される。よって、弁体3の開度が、0度から、上述した所定の開弁状態における弁体3の開度であるα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。この点について、
図6及び
図7を参照して詳細に説明する。
【0055】
図6は、比較形態にかかる排気流量制御弁を軸直交方向から視認した断面図である。
図6に示すように、比較形態の排気流量制御弁1´における弁体3´が全閉状態にあるときの、弁体3´と流路面42´との最短距離をH1´は、
図2〜
図5に示す排気流量制御弁1における最短距離H1と比べて、かなり大きくなっている。すなわち、本発明の一実施形態にかかる排気流量制御弁1では、弁体3の開度が0度からα度に至るまでの間は通過領域Rを通過する排気ガスの流量が急激に増加しないように、その最短距離H1が可能な限り小さく設定されている。これに対して、比較形態の排気流量制御弁1では、弁体3´が全閉状態から開弁状態に移行すると直ぐに多くの流量の排気ガスが通過領域R´を通過するように、その最短距離H1´が大きく設定されている。
【0056】
図7は、横軸に水平距離、縦軸に通過距離(弁体の外周部と流路面との最短距離)を示したグラフである。図中の実線のグラフgは、本発明の一実施形態における水平距離Lと通過距離Hとの関係を示している。図中の点線のグラフg´は、比較形態における水平距離L´と通過距離H´との関係を示している。
図7に示すように、本発明の一実施形態では、最短距離H1が小さく設定されているため、そのグラフgの傾きの平均値H2/Lも比較形態と比べて小さい。これに対して比較形態では、最短距離H1´が大きく設定されているため、そのグラフg´の傾きの平均値H2´/L´も本発明の一実施形態と比べて大きくなっている。
【0057】
本発明者らが検討したところでは、グラフgの傾きの平均値が0<H2/L<0.40を満たすことで、弁体3の開度が0度からα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0058】
また、本発明者らが検討したところでは、0<H2/L<0.30を満たすように構成することで、上記実施形態よりも、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
さらに、本発明者らが検討したところでは、0<H2/L<0.25を満たすように構成されることで、上記実施形態よりも、排気ガスの流量をより微細に制御することが出来る。
さらに、本発明者らが検討したところでは、0<H2/L<0.20を満たすように構成されることで、上記実施形態よりも、排気ガスの流量をさらにより微細に制御することが出来る。
【0059】
図示した実施形態では、上述した弁体3が閉弁状態から開弁状態に移行するときに、弁体3の外周部31が排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、弁体3の外周部31が排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、一方側の弁体3(3A)と流路面42との最短距離H1(Ha1)と、他方側の弁体3(3B)と流路面42との最短距離H1(Hb1)とが等距離となっている。ただし、本発明はこれに限定されず、一方側および他方側ともに、上記式(1)、(2)の関係を満たすように構成されていれば、一方側の最短距離Ha1と、他方側の最短距離Hb1とが異なっていてもよい。また、図示した実施形態では、一方側の流路面42における水平距離L(La)と、他方側の流路面42における水平距離L(Lb)とは等距離になっている。ただし、本発明はこれに限定されず、一方側および他方側ともに、上記式(2)の関係を満たすように構成されていれば、一方側の水平距離Laと、他方側の水平距離Lbとが異なっていてもよい。
【0060】
幾つかの実施形態では、
図1〜
図5に示す排気流量制御弁1において、弁体3の外周部31には、弁体3の厚み方向における中心線CL2よりも弁座シート面41と当接するシート面311側に凹み部312が形成されている。そして、最短距離H1は、弁体3の外周部31に凹み部312が形成されていないと仮想した場合に、弁体3が回動すると弁体3の外周部31の隅部が流路面42と接触するような距離である。
【0061】
図8は、実施形態および比較形態における弁体の外周部を拡大して示した図である。
図8の(a)は本発明に一実施形態の弁体の外周部、
図8の(b)は比較形態の弁体の外周部を示している。
ここで、「凹み部」とは、
図8に示すように、弁棒2の中心軸線CL1に対して直交する方向の断面視において、全閉状態において弁体3のシート面311を通過する仮想線
Ibと、全閉状態において流路面42から最短距離H1だけ離間する弁体3の先端31aを通過し、且つ、仮想線
Ibに対して直交する方向に延伸する仮想線
Iaとで画定される仮想形状に対して凹んだ位置にある部分を指す。
【0062】
このような実施形態によれば、弁体3の外周部31に上述した凹み部312が形成されることにより、弁体3が回動しても弁体3の外周部31が流路面42と接触しない。このため、上述した最短距離H1を設計限界近くまで小さくすることが出来る。例えば、最短距離H1を、弁体3の熱伸び量(高温の排気ガスにより弁体3が径方向に伸びる量)に、製造公差を加えた距離として設定することが出来る。これにより、弁体3の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0063】
幾つかの実施形態では、
図1〜
図5に示す排気流量制御弁1において、弁体3の外周部31には、弁体3の厚み方向における中心線CL2よりも弁座シート面41と当接するシート面311側に凹み部312が形成されている。そして、凹み部312の深さをdとした場合に、H1≦dの関係が成立するように構成される。
【0064】
ここで、「凹み部の深さ」とは、
図8に示すように、上述した仮想線Iaと仮想線Ibとの交点から弁体3の外周部31までの最短距離を指す。
【0065】
このような実施形態によれば、弁体3の外周部31に上述した凹み部312が形成されることにより、弁体3が回動しても弁体3の外周部31が流路面42と接触しない。このため、上述した最短距離H1を設計限界近くまで小さくすることが出来る。これにより、弁体3の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0066】
一方、
図8の(b)に示す比較形態のように、凹み部312´の深さd´がH1´>d´の関係が成立するように構成されていると、最短距離H1´が大き過ぎてしまい、排気ガスの流量を微細に制御することが出来ない。
【0067】
図9は、幾つかの実施形態における弁体の外周部を拡大して示した図である。
幾つかの実施形態では、
図2、
図3、
図5、及び
図9の(a)、(b)に示すように、上述した凹み部312が、外周部31に形成されたR形状からなる。
このような実施形態によれば、開弁状態において通過領域Rを通過する排気ガスがR形状に沿って滑らかに流れるため、排気ガスの圧力損失を小さくすることが出来る。
【0068】
幾つかの実施形態では、
図9の(b)に示すように、上述した凹み部312が、外周部31に形成された平坦形状からなる。
【0069】
このような実施形態によれば、凹み部312が外周部31に形成された平坦形状からなる。このような平坦形状は、例えば、弁体3の外周部31の隅部を切断加工するなどして簡単に形成することが出来るため、製造性に優れている。
【0070】
なお、
図9(a)、(c)に示した実施形態では、凹み部312は、弁体3の厚み方向における中心線CL2からシート面311にかけて形成されているが、本発明はこれに限定されない。
図9(b)に示すように、弁体3の回動中心Oを通過する回動中心線CL4からシート面311にかけて形成されていてもよく、特に限定されない。
【0071】
幾つかの実施形態では、
図5に示すように、上述した弁体3が閉弁状態から開弁状態に移行するときに、弁体3の外周部31が排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、弁体3の外周部31が排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、他方側に位置する弁体3(3B)の外周部31は、弁体3の厚み方向における中心線CL2よりもシート面311と反対側の側面313がR形状に形成されている。
【0072】
他方側に位置する弁体3(3B)では、外周部31のシート面311は下流側に配向され、外周部31のシート面311と反対側は上流側に配向される。よって、このような実施形態によれば、外周部31のシート面311と反対側の側面313がR形状に形成されていることで、開弁状態において上流側から通過領域Rに向かって流れる排気ガスがR形状に沿って滑らかに流れるため、排気ガスの圧力損失を小さくすることが出来る。
【0073】
幾つかの実施形態では、
図2、
図3に示すように、上述した流路面42が、弁棒2の中心軸線CL1に対して直交する方向の断面視において、弁体3が全閉状態にあるときに弁体3との距離が最短距離H1となる所定位置42aから端部42bに至るまで、排気流路の軸方向ADに対して平行な平行面からなる。
【0074】
このような実施形態によれば、流路面42が、排気流路の軸方向ADに対して平行な平行面からなる。このため、流路面42に対して特別な加工などを施す必要がないことから、弁ハウジング4の製造性に優れている。
【0075】
幾つかの実施形態では、
図4に示すように、上述した流路面42が、弁棒2の中心軸線CL1に対して直交する方向の断面視において、弁体3が全閉状態にあるときに弁体3との距離が最短距離H1となる所定位置42aから端部42bに向かって外向きに直線状に延在する、排気流路の軸方向ADに対して傾斜する傾斜面からなる。
【0076】
このような実施形態によれば、弁体3が回動したときに、弁体3の外周部31と流路面42とが接触するのを確実に防止することが出来る。したがって、
図4に示すように、弁体3の外周部31に上述した凹み部312が形成されていなくても、上述した最短距離H1を設計限界近くまで小さくすることが出来、弁体3の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0077】
幾つかの実施形態では、
図5に示すように、上述した流路面42が、弁棒2の中心軸線CL1に対して直交する方向の断面視において、弁体3が全閉状態にあるときに弁体3との距離が最短距離H1となる所定位置42aから端部42bに向かって内向きに曲線状に延在する曲面からなる。
【0078】
このような実施形態によれば、弁体3が回転したときに、
図2〜
図4に示した実施形態と比べて、弁体3の外周部31と流路面42との最短距離Hを、弁体3の開度が0度から上述したα度までの間に亘って小さくすることが出来る。これにより、弁体3の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を微細に制御することが出来る。
【0079】
幾つかの実施形態では、
図5に示すように、上述した流路面42が、弁体3が全閉状態から所定の開弁状態に至るまでの間、弁体3と流路面42との最短距離Hが一定距離に維持されるように構成される。
【0080】
このように、弁体3と流路面42との最短距離Hが一定距離に維持されている場合でも、エンジン回転数の増加に伴って通過領域Rを通過する排気ガスの流量は増加する。したがって、このような実施形態によれば、弁体3の開度が0度から上述したα度までの間において、排気ガスの流量を極めて微細に制御することが出来る。
【0081】
幾つかの実施形態では、
図2〜
図5に示すように、上述した弁棒2の中心軸線CL1に対して直交する方向の断面視において、弁体3の回動中心Oが、弁体3の高さ方向における中心線CL3に対して偏心するように構成される。
【0082】
このような実施形態によれば、弁体3の偏心位置および偏心量を適切に設定することで、シール性の向上や、弁体3を開弁するときのバルブ制御性の向上を実現することが出来る。
【0083】
幾つかの実施形態では、
図2〜
図5に示すように、弁体3が閉弁状態から開弁状態に移行するときに、弁体3の外周部31が排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、弁体の前記外周部が排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、弁体3の回動中心Oが、弁体3の高さ方向における中心線CL3よりも一方側に位置するように構成される。
図示した実施形態では、回動中心Oは、中心線CL3よりも距離dvだけ一方側に位置している。
【0084】
このような実施形態によれば、弁体3を弁座シート面41に押し付ける方向の回転モーメントが弁体3に作用する。よって、全閉状態における気密性が高まり、弁体3のシール性を向上させることが出来る。また、このような実施形態であっても、従来のフラップ弁タイプの排気流量制御弁と比べて、弁体3を開閉するアクチュエータの出力を小さくすることが出来る。
【0085】
幾つかの実施形態では、
図3に示すように、弁体3が閉弁状態から開弁状態に移行するときに、弁体3の外周部31が排気流路の下流側に向かって回動する側を一方側、弁体3の外周部31が排気流路の上流側に向かって回動する側を他方側、とした場合に、弁棒2の中心軸線CL1に対して直交する方向の断面視において、回動中心Oは、一方側の弁体3(3A)の厚み方向における中心線CL2aよりも排気流路の下流側に位置するように構成され、且つ、他方側の弁体3(3B)の厚み方向における中心線CL2bよりも排気流路の上流側に位置するように構成される。
図示した実施形態では、回動中心Oは、一方側の弁体3(3A)の厚み方向における中心線CL2aよりもdh1だけ下流側に位置し、且つ、他方側の弁体3(3B)の厚み方向における中心線CL2bよりもdh2だけ上流側に位置している。
【0086】
このような実施形態によれば、弁体3の回動中心Oを、一方側の弁体3(3A)の厚み方向における中心線CL2aよりも下流側に偏心させることで、弁体3の回動中心Oを下流側に偏心させない場合と比べて、製造公差等に影響されることなく、一方側の弁体3(3A)を確実に弁座シート面41に当接させることが出来る。また、弁体3の回動中心Oを、他方側の弁体3(3B)の厚み方向における中心線CL2bよりも上流側に偏心させることで、弁体3の回動中心Oを上流側に偏心させない場合と比べて、製造公差等に影響されることなく、他方側の弁体3(3B)を確実に弁座シート面41に当接させることが出来る。
【0087】
図10は、本発明の一実施形態にかかる2段過給システムを示すブロック構成図である。
本発明の一実施形態にかかる2段過給システム10は、
図10に示すように、エンジン11と、エンジン11から排出される排気ガスが導入される排気マニホールド12と、排気マニホールド12から排出される排気ガスが流れる排気系統13と、排気マニホールド12から排出される排気ガスにより駆動するように構成された高圧段タービン141を有する高圧段過給機14と、高圧段過給機14よりも排気系統13の下流側に配置され、高圧段過給機14から排出される排気ガスによって駆動するように構成された低圧段タービン151を有する低圧段過給機15と、上述した実施形態にかかる排気流量制御弁1とを備える。
そして、上述した排気系統13は、高圧段タービン141を迂回して、排気マニホールド12と高圧段タービン141の下流側とを接続する高圧側バイパス流路132を含む。そして、上述した排気流量制御弁1は、高圧側バイパス流路132を流れる排気ガスの流量を制御する高圧段タービンバイパスバルブ(排気フロー制御バルブ)17として構成される。
【0088】
このような実施形態によれば、高圧段タービン141に供給される排気ガスの流量を制御する高圧段タービンバイパスバルブ17を、上述した実施形態にかかる排気流量制御弁1によって構成した2段過給システム10を提供することが出来る。
【0089】
また、本発明の一実施形態にかかる2段過給システム10は、
図10に示すように、エンジン11と、エンジン11から排出される排気ガスが導入される排気マニホールド12と、排気マニホールド12から排出される排気ガスが流れる排気系統13と、排気マニホールド12から排出される排気ガスにより駆動するように構成された高圧段タービン141を有する高圧段過給機14と、高圧段過給機14よりも排気系統13の下流側に配置され、高圧段過給機14から排出される排気ガスによって駆動するように構成された低圧段タービン151を有する低圧段過給機15と、上述した実施形態にかかる排気流量制御弁1とを備える。
【0090】
そして、上述した排気系統13は、低圧段タービン151を迂回して、高圧段タービン141の下流側と低圧段タービン151の下流側とを接続する低圧側バイパス流路131を含む。そして、上述した排気流量制御弁1は、低圧側バイパス流路131を流れる排気ガスの流量を制御する低圧段タービンバイパスバルブ(ウェイストゲートバルブ)16として構成される。
【0091】
このような実施形態によれば、低圧段タービン151に供給される排気ガスの流量を制御する低圧段タービンバイパスバルブ16を、上述した実施形態にかかる排気流量制御弁1によって構成した2段過給システム10を提供することが出来る。
【0092】
図示した実施形態において、高圧段過給機14は、高圧段タービン141に同軸駆動される高圧段コンプレッサ142を備えている。低圧段過給機15は、低圧段タービン151に同軸駆動される低圧段コンプレッサ152を備えている。エンジン11から排出される排気ガスは、排気マニホールド12に集められ、排気流路133を介して高圧段タービン141に供給される。高圧段タービン141に供給された排気ガスは、高圧段タービン141の下流側に接続される排気流路134を介して、排気流路135に排出される。排気流路135に排出された排気ガスは、低圧段タービン151に供給される。低圧段タービン151に供給された排気ガスは、低圧段タービン151の下流側に接続される排気流路136に排出される。
【0093】
また、排気マニホールド12と、排気流路135とは、上述した高圧側バイパス流路132を介して接続されている。排気流路135と排気流路136とは、上述した低圧側バイパス流路131を介して接続されている。そして、低圧側バイパス流路131には、上述した低圧段タービンバイパスバルブ16が配置されている。また、高圧側バイパス流路132には、上述した高圧段タービンバイパスバルブ17が配置されている。
【0094】
低圧段タービンバイパスバルブ16が開弁状態にあると、排気流路134を流れる排気ガスの殆どは低圧段タービン151を迂回して低圧側バイパス流路131に流入する。低圧段タービンバイパスバルブ16が全閉状態にあると、排気流路134を流れる排気ガスは排気流路135を流れて低圧段タービン151へと供給される。低圧側バイパス流路131を流れる排気ガスの流量は、この低圧段タービンバイパスバルブ16の開度によって制御することができる。
【0095】
同様に、高圧段タービンバイパスバルブ17が開弁状態にあると、排気マニホールド12に集められた排気ガスの殆どは高圧段タービン141を迂回して高圧側バイパス流路132に流入する。高圧段タービンバイパスバルブ17が全閉状態にあると、排気マニホールド12に集められた排気ガスは排気流路133を流れて高圧段タービン141へと供給される。第2バイパス流路132を流れる排気ガスの流量は、この高圧段タービンバイパスバルブ17の開度によって制御することができる。
【0096】
なお、
図10において、符号18は吸気系統であり、吸気流路181〜185と、吸気マニホールド186からなる。低圧段コンプレッサ152は、エアクーラ187から供給される吸気を加圧し、吸気流路181、183を介して、高圧段コンプレッサ142へと供給する。また、高圧段コンプレッサ142をバイパスする吸気流路182には、吸気流路182を流れる吸気流量を制御するためのコンプレッサバイパス弁19が配置されている。高圧段コンプレッサ142により加圧された吸気、又は高圧段コンプレッサ142をバイパスして吸気流路182を流れた吸気は、吸気流路185を介して、吸気マニホールド186へと供給される。また、吸気流路185には、インタークーラ188は配置されている。
【0097】
図11は、本発明の一実施形態にかかる2段過給システムにおけるエンジン回転数とエンジントルクの関係を示した図である。
図11に示す(a)の領域では、高圧段過給機14および低圧段過給機15の両方を駆動させる2段過給(完全2段過給)を行うことで、エンジンの低速トルクの向上と過渡特性において有利となる。このため、高圧段タービンバイパスバルブ17および低圧段タービンバイパスバルブ16は、夫々全閉状態に制御される。
図11に示す(b)の領域では、低圧段過給機15を駆動させるとともに、高圧段過給機14に供給される排気ガスの流量を制御することで、高圧段過給機14の駆動を制御する可変2段過給が行われる。この可変2段過給では、低圧段タービンバイパスバルブ16は全閉状態とし、高圧段タービンバイパスバルブ17の開度を調整することで、高圧段過給機14に供給される排気ガスの流量をエンジン11の目標出力に応じて変化させる。
【0098】
また、
図11に示す(c)の領域ではエンジン回転数が高いため、排気ガスを高圧段過給機14からバイパスさせて低圧段過給機15による1段過給を行うことで、2段過給を行うよりもエンジンの背圧を低減させることができ、マッチングの自由度が高い安定運転が実現される。このため、高圧段タービンバイパスバルブ17は全開状態とし、低圧段タービンバイパスバルブ16は全閉状態とする。また、エンジン11の高速運転域において、エンジン11がオーバーブーストを起こす虞がある場合には(
図11に示す(d)の領域)、高圧段ターボバイパスバルブ17は全開状態とし、低圧段タービンバイパスバルブ16の開度を調整することで、低圧段過給機15に供給される排気ガスの流量を減少させるような制御が行われる。
【0099】
このように、本発明の一実施形態にかかる2段過給システム10によれば、高圧段タービンバイパスバルブ17および低圧段タービンバイパスバルブ16の少なくとも何れか一方を上述した実施形態にかかる排気流量制御弁1によって構成することで、
図11に示す(b)や(d)の領域において、排気ガスの流量を微細に制御することが可能となる。
【0100】
図12は、本発明の一実施形態にかかる2段過給システムを示した正面図である。
図13は、
図12におけるA方向矢視図である。
図14は、
図12のa−a位置における断面図である。
図15は、
図14のb−b位置における断面図である。
本発明の一実施形態にかかるタービン過給機は、
図12〜
図15に示すように、例えば、高圧段タービン141と、高圧段タービン141を収容する高圧段タービンハウジング141hと、高圧段タービン141に供給される排気ガスの流量を制御するための高圧段タービンバイパスバルブ17とを備える、2段過給システム10における高圧段過給機14である。
【0101】
図15に示すように、高圧段タービンハウジング141hの内部には、高圧段タービン141に排気ガスを導くためのスクロール流路22と、高圧段タービン141に供給された排気ガスを高圧段タービンハウジング141hの外部に排出するための出口流路26とが形成される。すなわち、スクロール流路22は、高圧段タービン141の上流側に位置し、出口流路26は、高圧段タービン141の下流側に位置している。そして更に、高圧段タービンハウジング141hの内部には、高圧段タービン141を迂回して、スクロール流路22と出口流路26とを接続する低圧側バイパス流路132が形成されている。
【0102】
図16は、タービンハウジングの内部に配置されたタービンバイパスバルブを拡大して示した断面図である。
図16に示すように、高圧段タービンバイパスバルブ17は、弁棒2と、弁棒2を軸として回動する平板状の弁体3と、高圧側バイパス流路132の一部を内部に画定する筒状の弁ハウジング4であって、弁体3の開度が0度である閉弁状態において、弁体3の外周部31が当接する、高圧側バイパス流路132の軸方向ADと交差する方向に沿って延在する弁座シート面41、及び弁体3の開度が0度より大きい開弁状態において、弁体3の外周部31との間に排気ガスが通過する通過領域Rを画定する、高圧側バイパス流路132の軸方向ADに沿って延在する流路面42が内周面に形成されている弁ハウジング4を含む。そして、本発明の一実施形態にかかる高圧段過給機14では、弁ハウジング4が、高圧段タービンハウジング141hの内部において、高圧側バイパス流路132の内周壁面141hsに固定される。
【0103】
図16に示した実施形態では、高圧段タービンバイパスバルブ17は、上述した
図3に示した実施形態にかかる排気流量制御弁1と同様の構成を有している。しかしながら、本発明の一実施形態にかかる高圧段タービンバイパスバルブ17はこれに限定されず、上述した
図2、
図4、及び
図5に示す実施形態と同様の構成を有していてもよい。
【0104】
このような実施形態によれば、高圧段タービンバイパスバルブ17が、いわゆるバタフライ弁タイプのタービンバイパスバルブとして構成される。したがって、従来のフラップ弁タイプの高圧段タービンバイパスバルブと比べて、弁体3を小出力で開閉可能なため、高圧段アクチュエータ17Aを小型化することが出来る。
【0105】
また、このような実施形態によれば、高圧段タービン141を迂回する高圧側バイパス流路132が高圧段タービンハウジング141hの内部に形成されるとともに、高圧段タービンバイパスバルブ17が、高圧段タービンハウジング141hの内部に配置される。このため、高圧側バイパス流路132を高圧段タービンハウジング141hの外部に形成し、高圧段タービンバイパスバルブ17を高圧段タービンハウジング141hの外部に配置する場合と比べて、高圧段過給機14をコンパクトに構成することが出来る。
【0106】
なお、
図12〜
図15において、符号141haは高圧段タービンハウジング141hの入口フランジ部を、符号141hbは高圧段タービンハウジング141hの出口フランジ部を示している。同様に、符号151haは低圧段タービンハウジング151hの入口フランジ部を、符号151hbは低圧段タービンハウジング151hの出口フランジ部を示している。符号142hは、高圧段コンプレッサ142を収容する高圧段コンプレッサハウジング、符号152hは、低圧段コンプレッサ152を収容する低圧段コンプレッサハウジングである。また、符号16Aは、低圧段タービンバイパスバルブ16を開閉するための低圧段アクチュエータである。
【0107】
また、
図14〜
図16においては、2段過給システム10における高圧段過給機14のタービンハウジング14hの内部に、高圧段タービンバイパスバルブ17(排気流量制御弁1)を配置した場合を示しているが、低圧段過給機15のタービンハウジング15hの内部に、低圧段タービンバイパスバルブ16(排気流量制御弁1)を配置した場合も、基本的には同様に説明されるものである。すなわち、本発明の一実施形態にかかるタービン過給機は、低圧段タービン151と、低圧段タービン151を収容する低圧段タービンハウジング151hと、低圧段タービン151に供給される排気ガスの流量を制御するための低圧段タービンバイパスバルブ16とを備える、2段過給システム10における低圧段過給機15であってもよい。また、本発明の一実施形態にかかるタービン過給機は、2段過給システム10に用いられるタービン過給機以外にも、一つのターボ過給機を備える単段過給システムに用いられるタービン過給機であってもよいものである。
【0108】
幾つかの実施形態では、上述した実施形態にかかる高圧段過給機14(タービン過給機)において、
図16に示すように、上述した弁ハウジング4は、弁座シート面41および流路面42が内周面に一体的に形成された筒状の着座部4Aを含む。そして、着座部4Aが、高圧段タービンハウジング141hの内部において、高圧側バイパス流路132の内周壁面141hsに固定される。着座部4Aを高圧側バイパス流路132の内周壁面141hsに固定する方法としては、例えば、圧入、焼嵌め、冷嵌めなどの各種方法が挙げられる。
【0109】
このような実施形態によれば、弁ハウジング4が、弁座シート面41および流路面42が内周面に一体的に形成された筒状の着座部4Aを含む。このため、弁ハウジング4と、弁座シート面41および流路面42とが、夫々別体に形成されている場合と比べて、組み立て性に優れている。
【0110】
幾つかの実施形態では、上述した実施形態にかかる高圧段過給機14(タービン過給機)において、
図16に示すように、高圧側バイパス流路132の内周壁面141hsには、平坦面141hs1と、平坦面141hs1の上流端から内側に向かって延在する段部141hs2とが形成される。そして、上述した着座部4Aが、高圧側バイパス流路132の内周壁面141hs1に固定された状態において、着座部4Aの一端面4Aaと段部141hs2とが当接するように構成される。
【0111】
このような実施形態によれば、高圧段タービンハウジング141hの出口フランジ部141hbの開口端141hoから高圧段タービンハウジング141hの内部に着座部4Aを挿入する際に、高圧側バイパス流路132の内周壁面141hs1に形成される段部141hs2に当接するまで着座部4Aを挿入すればよく、着座部4Aの位置決めが容易であり、着座部4Aの装着性に優れている。
【0112】
幾つかの実施形態では、上述した実施形態にかかる高圧段過給機14(タービン過給機)において、
図16に示すように、上述した高圧側バイパス流路132の内周壁面141hsには、段部141hs2よりも上流側の位置に、上流側から下流側に向かって内部断面を拡幅する拡幅部141hs3が形成される。そして、弁体3が閉弁状態から開弁状態に移行するときに、弁体3の外周部31が高圧側バイパス流路132の下流側に向かって回動する側を一方側(
図16において上側)、弁体3の外周部31がバイパス流路132の上流側に向かって回動する側(
図16において下側)を他方側、とした場合に、他方側に位置する弁体3の外周部31が、拡幅部141hs4を通過するように構成される。
【0113】
図示した実施形態では、高圧側バイパス流路132の内周壁面141hsには、段部141hs2よりも上流側の位置に、上流側から下流側に向かって外側に直線状に延在するテーパー面141hs4が形成されており、これにより内部断面を拡幅する拡幅部141hs3が形成されている。なお、テーパー面141hs4に代えて、円弧形状を有する円弧部などによって拡幅部141hs3が形成されていてもよい。
【0114】
このような実施形態によれば、高圧側バイパス流路132の内周壁面141hsにおける段部141hs2よりも上流側の位置に、上流側から下流側に向かって内部断面を拡幅する拡幅部141hs3が形成される。これにより、内部断面の大きさが異なる部分を排気ガスが流れる際の圧力損失を低減することが出来る。また、他方側(
図16において下側)に位置する弁体3の外周部31が、拡幅部141hs4を通過するように構成することで、高圧側バイパス流路132の形状を小さくすることが出来、高圧段タービンハウジング141h全体をコンパクトに構成することが出来る。
【0115】
また、本発明の少なくとも一実施形態にかかる2段過給システム10は、上述した
図10に示すように、エンジン11と、エンジン11から排出される排気ガスが導入される排気マニホールド12と、排気マニホールド12から排出される排気ガスが流れる排気系統13と、排気マニホールド13から排出される排気ガスにより駆動するように構成された高圧段タービン141を有する高圧段過給機14と、高圧段過給機14よりも排気系統13の下流側に配置され、高圧段過給機14から排出される排気ガス141によって駆動するように構成された低圧段タービン151を有する低圧段過給機15を備える2段過給システム10である。そして、高圧段過給機14が、上述した
図12〜
図16に示した実施形態にかかるタービン過給機からなる。
【0116】
このような実施形態によれば、上述した
図12〜
図16に示したように、高圧段タービン141を迂回する高圧側バイパス流路132が高圧段タービンハウジング141hの内部に形成されるとともに、高圧段タービンバイパスバルブ17が、高圧段タービンハウジング141hの内部に配置される。このため、高圧側バイパス流路132および高圧段タービンバイパスバルブ17を高圧段タービンハウジング141hの外部に配置する場合と比べて、2段過給システム10全体をコンパクトに構成することが出来る。
【0117】
また、このような実施形態によれば、高圧段タービンバイパスバルブ17が、高圧側バイパス流路132の内部に配置される。このため、高圧段タービンバイパスバルブ17が、排気マニホールド12と高圧段タービンハウジング141hとの間に配置される従来の場合と比べて、高圧段タービンバイパスバルブ17が下流側に配置されることから、高圧段タービンバイパスバルブ17を通過する排気ガスの温度が低くなる。よって、従来の場合と比べて、熱変形による影響を受け難く、高圧段タービンバイパスバルブ17の信頼性が向上する。また、従来の場合と比べて、高圧段タービンバイパスバルブ17を構成する材料を耐熱性の低い安価な材料とすることが出来る。
【0118】
幾つかの実施形態では、
図10に示す2段過給システム10において、低圧段過給機15が、上述した
図12〜
図16に示した実施形態にかかるタービン過給機と同様に構成される。
【0119】
すなわち、低圧段過給機15は、
図12〜
図13に示すように、低圧段タービン151と、低圧段タービン151を収容する低圧段タービンハウジング151hと、低圧段タービン151に供給される排気ガスの流量を制御するための低圧段タービンバイパスバルブ16とを備える。低圧段タービンハウジング151hの内部には、
図15に示した高圧段タービンハウジング141hと同様に、低圧段タービン151に排気ガスを導くためのスクロール流路22と、低圧段タービン151に供給された排気ガスを低圧段タービンハウジング151hの外部に排出するための出口流路26と、低圧段タービン151を迂回して、スクロール流路22と出口流路26とを接続する低圧側バイパス流路131とが形成される。
【0120】
また、低圧段タービンバイパスバルブ16は、
図16に示した高圧段タービンバイパスバルブ17と同様に、弁棒2と、弁棒2を軸として回動する平板状の弁体3と、低圧側バイパス流路131の一部を内部に画定する筒状の弁ハウジング4であって、弁体3の開度が0度である閉弁状態において、弁体3の外周部31が当接する、低圧側バイパス流路131の軸方向ADと交差する方向に沿って延在する弁座シート面41、及び弁体3の開度が0度より大きい開弁状態において、弁体3の外周部31との間に排気ガスが通過する通過領域Rを画定する、低圧側バイパス流路131の軸方向ADに沿って延在する流路面42が内周面に形成されている弁ハウジング4を含んでいる。そして、上述した弁ハウジング4が、低圧段タービンハウジング151hの内部において、低圧側バイパス流路131の内周壁面141hsに固定される。
【0121】
このような実施形態によれば、高圧段過給機14、および低圧段過給機15の両方が、上述したような、タービンハウジングの内部にタービンバイパスバルブが配置されたターボ過給機からなる。このため、高圧側バイパス流路132、低圧側バイパス流路131および高圧段タービンバイパスバルブ17、低圧段タービンバイパスバルブ16の夫々を高圧段タービンハウジング141hおよび低圧段タービンハウジング151hの外部に配置する場合と比べて、2段過給システム10全体をコンパクトに構成することが出来る。
【0122】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。