特許第6358704号(P6358704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358704
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】搭乗式転圧ローラ車両
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/26 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   E01C19/26
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-220483(P2014-220483)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-89332(P2016-89332A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】早坂 喜憲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−074574(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008359(WO,A1)
【文献】 特開2013−204247(JP,A)
【文献】 特開2014−201923(JP,A)
【文献】 米国特許第04266884(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/26
E02F 9/00
E02F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席を有した車体と、
上記車体の転圧輪の車幅方向両側からそれぞれビームブラケットを介して両端を支持されて、上記転圧輪の外周面の近接位置に架設された支持ビームと、
上記支持ビーム上に車幅方向に所定の間隔をおいて取り付けられた複数のスクレーパブラケットと、
上記運転席に対して上記支持ビームを挟んだ反対側に配設されて上記転圧輪の車幅方向の略全体に亘って延設され、上記複数のスクレーパブラケットにそれぞれ基端側を軸支されて、該軸支箇所を中心として先端側を上記転圧輪の外周面に対し接離させる方向に回動可能なスクレーパと、
上記スクレーパを付勢して該スクレーパの先端を上記転圧輪の外周面に押し当てた使用位置に保つ付勢手段と、
上記スクレーパの先端を上記転圧輪の外周面から離間させて上記運転席に着座したオペレータから見て上記スクレーパが上記支持ビームの寸法内に重なるように非使用位置に保つスクレーパ固定手段と
を具備したことを特徴とする搭乗式転圧ローラ車両。
【請求項2】
上記スクレーパは、上記複数のスクレーパブラケットにそれぞれ基端側を軸支された支持金具と、該支持金具に固定されて先端側を上記転圧輪の外周面に対し接離させるスクレーパ本体とから構成され、
上記スクレーパ固定手段は、上記スクレーパブラケット及び上記スクレーパの支持金具にそれぞれ貫設されて、該スクレーパが上記非使用位置にあるときに互いに一致する一対のピン孔と、互いに一致した上記ピン孔に挿通されて上記スクレーパを回動規制するロックピンとから構成された
ことを特徴とする請求項1に記載の搭乗式転圧ローラ車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行輪を兼ねた転圧輪により路面に敷きつめた舗装材を締め固める搭乗式転圧ローラ車両に係り、詳しくは、締め固め作業中に転圧輪の外周面に付着する舗装材や泥などの付着物をスクレーパにより掻き落とすスクレーパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搭乗式転圧ローラ車両、例えば特許文献1に記載されたマカダムローラでは、車体の前後に備えられた走行輪を兼ねた転圧輪により走行しながら、路床または路盤などに敷きつめられた砂利やアスファルトなどの舗装材を締め固めている。締め固め作業中には転圧輪の外周面に舗装材や泥などが付着する場合があるため、これらの付着物を掻き落とすためのスクレーパ装置が前後の転圧輪の近接位置に備えられている。スクレーパ装置は、転圧輪と略等しい左右幅を有するスクレーパを転圧輪の外周面に押し当てることにより、転圧輪の回転に伴って付着物を掻き落とすようになっている。
【0003】
締め固め作業の内容によっては、スクレーパを使用しない場合もある。例えば高速道路の路肩には、居眠りやわき見により走行車線から逸脱した運転者を注意喚起するために、所定間隔の溝を形成したいわゆる注意喚起舗装が施工される場合がある。このときの締め固め作業では、転圧輪の路肩側の端部に溝形状に対応するアタッチメントを取り付けることから、アタッチメントとの干渉を防止すべくスクレーパを転圧輪の外周面から離間させる必要がある。そこで、スクレーパ装置にはスクレーパの位置を切り換えるための切換機構が設けられている。
【0004】
例えば特許文献2に記載された技術は振動ローラに関するものであるが、そのスクレーパ装置の切換機構は、スクレーパを転圧輪の外周面に押し当てる作業位置、スクレーパを転圧輪の外周面から僅かに離間させる回送位置、及びスクレーパを転圧輪から大きく離間させる整備位置の3位置間で任意に切換可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−74574号公報
【特許文献2】国際公開第2012/008359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された振動ローラのスクレーパ装置を、特許文献1のマカダムローラに適用することも可能であるが、作業面において不具合が生じる。
即ち、締め固め作業中のオペレータは車両の前後の路面状態を頻繁に確認しながら作業を進めており、前後の転圧輪の外周面が露出しているマカダムローラではオペレータが転圧輪越しに路面を視認している。路面に対するオペレータの視界は締め固め作業のし易さに大きく影響するが、マカダムローラにおいて転圧輪の近接位置にスクレーパ装置が配設されると、回送位置や整備位置での締め固め作業中にスクレーパがオペレータの視界を大きく遮ってしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、マカダムローラなどの転圧輪の外周面が外部に露出している車両であっても、路面に対するオペレータの視界が非使用時のスクレーパにより遮られる事態を未然に防止でき、もって締め固め作業を効率的に実施することができる搭乗式転圧ローラ車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の搭乗式転圧ローラ車両は、運転席を有した車体と、車体の転圧輪の車幅方向両側からそれぞれビームブラケットを介して両端を支持されて、転圧輪の外周面の近接位置に架設された支持ビームと、支持ビーム上に車幅方向に所定の間隔をおいて取り付けられた複数のスクレーパブラケットと、運転席に対して支持ビームを挟んだ反対側に配設されて転圧輪の車幅方向の略全体に亘って延設され、複数のスクレーパブラケットにそれぞれ基端側を軸支されて、軸支箇所を中心として先端側を転圧輪の外周面に対し接離させる方向に回動可能なスクレーパと、スクレーパを付勢してスクレーパの先端を転圧輪の外周面に押し当てた使用位置に保つ付勢手段と、スクレーパの先端を転圧輪の外周面から離間させて運転席に着座したオペレータから見てスクレーパが支持ビームの寸法内に重なるように非使用位置に保つスクレーパ固定手段とを具備したことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このように構成した搭乗式転圧ローラ車両によれば、使用位置では付勢手段によりスクレーパの先端が転圧輪の外周面に押し当てられ、転圧輪の回転に伴って外周面の付着物がスクレーパにより掻き落とされる。そして、スクレーパ固定手段によりスクレーパが非使用位置に保持されているときには、運転席に着座したオペレータから見てスクレーパが支持ビームの寸法内に重なる。このためオペレータは、転圧輪の外周面と支持ビームの下端との間に形成された間隙、及び支持ビームの上側の空間を介して路面を視認可能となる。
【0010】
その他の態様として、スクレーパを、複数のスクレーパブラケットにそれぞれ基端側を軸支された支持金具と、支持金具に固定されて先端側を転圧輪の外周面に対し接離させるスクレーパ本体とから構成し、スクレーパ固定手段を、スクレーパブラケット及びスクレーパの支持金具にそれぞれ貫設されて、スクレーパが非使用位置にあるときに互いに一致する一対のピン孔と、互いに一致したピン孔に挿通されてスクレーパを回動規制するロックピンとから構成することが好ましい(請求項2)。
【0011】
このように構成した搭乗式転圧ローラ車両によれば、スクレーパを使用位置から非使用位置に切り換えるには、スクレーパを把持して非使用位置に回動させた上で、互いに一致したピン孔にロックピンを挿通するだけの簡単な操作で可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搭乗式転圧ローラ車両によれば、マカダムローラなどの転圧輪の外周面が外部に露出している車両であっても、路面に対するオペレータの視界が非使用時のスクレーパにより遮られる事態を未然に防止でき、もって締め固め作業を効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のマカダムローラを示す側面図である。
図2】マカダムローラを示す後面図である。
図3】後部スクレーパ装置を示す図2のA部拡大図である。
図4】後部スクレーパ装置を使用位置に切り換えたときの図1のB部拡大図である。
図5】後部スクレーパ装置を整備位置に切り換えたときの拡大図である。
図6】後部スクレーパ装置を非使用位置に切り換えたときの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をマカダムローラに具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のマカダムローラを示す側面図、図2は同じくマカダムローラを示す後面図である。以下の説明では、車両を基準として前後方向及び左右方向を表現する。
【0015】
マカダムローラ1(以下、車両と称することもある)の車体は、前部転圧輪2を備えた前部車体4と後部転圧輪3を備えた後部車体5とにより構成されている。これらの前部車体4と後部車体5とはアーティキュレート機構6を介して連結されており、前部車体4に設けられた図示しない操舵シリンダの駆動により、アーティキュレート機構6を中心として前部及び後部車体4,5が水平方向に屈曲することで車両1が旋回するようになっている。
【0016】
前部転圧輪2は一対の金属ドラムから構成され、前部車体4の左右に回転可能に支持されている。また、後部転圧輪3は単一の金属ドラムから構成され、後部車体5の左右に設けられた支持アーム5aにより回転可能に支持されている。前部転圧輪2は内蔵した走行用油圧モータ7により駆動され、後部転圧輪3は内蔵した走行用油圧モータ8により駆動され、これにより車両1が走行する。
【0017】
前部車体4上には左右一対のステアリング10を備えた操作台11が設置され、操作台11の後側にはステアリング10に対応して左右一対の運転席12が設置されている。運転席12に着座したオペレータは前部及び後部転圧輪2,3の外周面の上側を経て前後の路面を視認しながら(図1,2中に後方への視線Lを示す)、ステアリング10及び操作台11の前後進レバー13や足下のブレーキペダル14などを操作し、その操作に応じて車両1の走行や操舵などが行われる。
【0018】
後部車体5上には、水を貯留した貯水タンク15が設置されている。貯水タンク15には、前部及び後部転圧輪2,3の近接位置に配設された図示しない転圧輪散水ノズルが配管及び散水ポンプを介して接続されている。締め固め作業時には前部及び後部転圧輪2,3への舗装材の付着防止を目的として、貯水タンク15内の水が散水ポンプにより各散水ノズルに供給されて前部及び後部転圧輪2,3へと散水される。
【0019】
左右の前部転圧輪2の近接位置にはそれぞれ前部スクレーパ装置17が配設され、後部転圧輪3の近接位置には後部スクレーパ装置18が配設されている。以下、後部スクレーパ装置18を例に挙げてその詳細を説明する。
図3は後部スクレーパ装置18を示す図2のA部拡大図、図4は後部スクレーパ装置18を使用位置に切り換えたときの図1のB部拡大図、図5は後部スクレーパ装置18を整備位置に切り換えたときの拡大図、図6は後部スクレーパ装置18を非使用位置に切り換えたときの拡大図である。なお、図3では後部スクレーパ装置18の右側部分を示しているが、図示されていない後部スクレーパ装置18の左側部分も基本的に左右対称の同一構成である。
【0020】
図1〜3に示すように、後部車体5の左右の支持アーム5aの後端にはそれぞれビームブラケット19が立設され、これらのビームブラケット19は後部転圧輪3の左右両側から上方斜め後側に向けて延設されている。左右のビームブラケット19間にはパイプ状の支持ビーム20が配設され、支持ビーム20は左右方向に延設されて両端を左右のビームブラケット19に対し固定部材21を介して固定されている。これにより、左右のビームブラケット19間において支持ビーム20が後部転圧輪3の外周面の近接位置に架設されている。
【0021】
図2〜4に示すように、支持ビーム20上には左右方向に所定の間隔をおいて板状をなす一対のスクレーパブラケット22が固定され、これらのスクレーパブラケット22の車両後方側(即ち、運転席12に着座したオペレータに対して支持ビーム20を挟んだ反対側)にはスクレーパ23が配設されて両スクレーパブラケット22により支持されている。
【0022】
スクレーパ23は、支持金具24とスクレーパ本体25とから構成されている。支持金具24とスクレーパ本体25は後部転圧輪3の左右方向全体に亘って延設されており、スクレーパ本体25の基端側(車両前側)に支持金具24が所定間隔でボルト26により固定されている。支持金具24には左右のスクレーパブラケット22と対応するようにステー24aが溶接され、これらのステー24aの基端側はスクレーパブラケット22に重ねられて回動ピン27(軸支箇所)により軸支されている。
これによりスクレーパ23は、回動ピン27を中心としてスクレーパ本体25の先端側を後部転圧輪3の外周面に対し接離させる方向に回動し得るようになっている。支持金具24には一対の操作ハンドル28が溶接され、これらの操作ハンドル28を把持して回動ピン27を中心としてスクレーパ23を回動操作可能となっている。
【0023】
支持ビーム20上には左右のスクレーパブラケット22に近接してそれぞれ掛止板29が溶接され、これらの掛止板29にはそれぞれ引張りバネ30(付勢手段)の一端が掛止されている。各引張りバネ30の他端はそれぞれスクレーパ23の支持金具24に掛止され、図4に示すスクレーパ23の使用位置では引張りバネ30の付勢力が下方(図4において時計回り)に作用し、スクレーパ23の先端が後部転圧輪3の外周面に押し当てられている。従って、締め固め作業においてスクレーパ23を使用位置に切り換えると、後部転圧輪3の回転に伴って外周面に付着している付着物がスクレーパ23により効率よく掻き落とされる。
【0024】
図3,4に示すように、右側のスクレーパブラケット22のステー24aが重ねられた左側面には、ストッパピン32が立設されている。スクレーパ23の操作ハンドル28を把持し、回動ピン27を中心としてスクレーパ23の先端を後部転圧輪3の外周面から離間させるように上方(図4において反時計回り)に回動させると、引張りバネ30は最大伸張のデッドポイントを超えた後にスクレーパ23に対する付勢方向を逆転させる。
この付勢力によりスクレーパ23は上方に跳ね上げられて支持金具24の右側のステー24aがストッパピン32に当接して回動規制され、図5に示す整備位置に切り換えられる。この整備位置では、スクレーパ23の清掃などのメンテナンスを行うことができる。
【0025】
なお、整備位置から使用位置に戻す場合には、操作ハンドル28を把持して上方に跳ね上げられたスクレーパ23を下方に回動させる。引張りバネ30は再びデッドポイントを超えてスクレーパ23に対する付勢方向を逆転させ、これによりスクレーパ23は図4に示す使用位置に切り換えられる。
以上のように後部スクレーパ装置18は構成されており、詳細は説明しないが前部スクレーパ装置17についても同様の構成である。
【0026】
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、マカダムローラ1では、締め固め作業中において左右何れかの運転席12に着座したオペレータが転圧輪2,3越しに(即ち、転圧輪2,3の外周面の上側を経て)路面を視認することから、マカダムローラ1に特許文献2のスクレーパ装置を適用すると、回送位置や整備位置での締め固め作業中にスクレーパ23がオペレータの視界を大きく遮ってしまうという問題がある。
【0027】
ここで、後部スクレーパ装置18に着目すると、そのスクレーパ23を後部転圧輪3の近接位置に配設するには、左右のビームブラケット19間に架設した支持ビーム20からスクレーパ23を支持する必要があり、後方の路面を視認するオペレータの視界に支持ビーム20が入ることはやむを得ない。このためオペレータは、後部転圧輪3の外周面と支持ビーム20の下端との間に形成された間隙Z1、及び支持ビーム20の上端とその上側に配設されたガードセンサ33(図4に示す)との間に形成された間隙Z2を介して後方の路面を視認することになる。
なお、ガードセンサ33は後方障害物を検出してオペレータに報知する検出装置であり、ガードセンサ33を設けていない車両では、オペレータは支持ビーム20の上側の空間を介して後方の路面を視認することになる。
【0028】
図4に示す使用位置ではスクレーパ23が後部転圧輪3の陰に隠れるため、上記した間隙Z1,Z2が狭まることはないが、例えば注意喚起舗装を施工するためのアタッチメントを転圧輪に取り付けた締め固め作業では、アタッチメントとの干渉を防止すべくスクレーパ23を使用位置から上方に回動させた何れかの位置に保つことになり、必然的に上下の何れかの間隙Z1,Z2がスクレーパ23により遮られてしまう。例えば図5に示す整備位置では、上側の間隙Z2がスクレーパ23により大きく遮られる。
【0029】
以上の問題を鑑みて本発明者は、元々存在する支持ビーム20の陰にスクレーパ23を隠せば、上記した上下の間隙Z1,Z2を遮ることなくアタッチメントとの干渉も防止できる点に着目した。
この対策のために、図3,4に示すように、右側のスクレーパブラケット22とスクレーパ23のステー24aにはピン孔34(スクレーパ固定手段)がそれぞれ貫設されている。これらのピン孔34は、スクレーパ23が図6に示す非使用位置にあるときに互いに一致し、両ピン孔34内にロックピン35(スクレーパ固定手段)が挿通されることによりスクレーパ23は回動規制されて非使用位置に保持される。
なお、使用位置から非使用位置へのスクレーパ23の回動も操作ハンドル28を把持して行われ、図6に示すように、非使用位置は引張りバネ30が最大伸張されるデッドポイントの直前に相当し、この位置でロックピンによってスクレーパ23が強制的に固定されることになる。
【0030】
非使用位置では、運転席12に着座したオペレータから見てスクレーパ23全体が支持ビーム20の陰に隠される(支持ビームの寸法内に重なる)。詳しくは、オペレータからの視線L上の支持ビーム20の上端と下端との間の空間内(換言すると、間隙Z1,Z2間に形成される空間内)にスクレーパ23が位置することから、オペレータから見て支持ビーム20の陰にスクレーパ23(より詳しくはスクレーパ本体25)が完全に隠される。なお、この現象は、左右何れの運転席12にオペレータが着座した場合でも同様である。また、非使用位置のスクレーパ23は後部転圧輪3の外周面との間に間隙Z1を形成するため、アタッチメント(図6にアタッチメントの移動軌跡を示す)との干渉も防止される。
【0031】
換言すると、特許文献2のスクレーパ装置によれば、回送位置ではスクレーパがアタッチメントと干渉する故に整備位置に切り換える必要が生じ、結果として上側の間隙Z2がスクレーパにより大きく遮られた。本実施形態では、オペレータの視界確保とアタッチメントとの干渉防止とを両立可能な非使用位置を新たに設定することにより、アタッチメントの使用時に整備位置への切換を不要とした。結果としてアタッチメントの使用時であっても、支持ビーム20の上下の間隙Z1,Z2がスクレーパ23により遮られる事態を未然に防止でき、これらの間隙Z1,Z2を介してオペレータが後方の路面を視認して締め固め作業を効率的に実施することができる。
なお、アタッチメントを用いない締め固め作業でもスクレーパ23を使用しない場合があるが、勿論、このときでもスクレーパ23を非使用位置に切り換えることによりオペレータの視界を確保でき、上記した作用効果を得ることができる。
【0032】
加えて本実施形態の後部スクレーパ装置18は、非使用位置でのスクレーパ23の固定をピン孔34及びロックピン35だけの簡単な構成により実現している。このため非常に安価なコストで実施できると共に、既存のスクレーパ装置(例えば使用位置と整備位置との切換機能のみを備えた)にピン孔34及びロックピン35を追加する簡単な改造を施すだけで、本実施形態の後部スクレーパ装置18と同様の作用効果を得ることができる。
また、非使用位置への切換操作についても、スクレーパ23を非使用位置に回動させて互いに一致したピン孔34内にロックピン35を挿通するだけのため、非常に容易且つ迅速に切換操作でき、ひいては締め固め作業の効率化を達成することができる。
【0033】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、マカダムローラ1に具体化したが、転圧輪の外周面が外部に露出している搭乗式転圧ローラ車両であれば、これに限るものではなく別の車種に適用してもよい。
【0034】
また上記実施形態では、後部スクレーパ装置18のみに非使用位置を設定したが、これに代えて前部スクレーパ装置17に非使用位置を設定してもよいし、前部及び後部スクレーパ装置17,18の双方に非使用位置を設定してもよい。
また上記実施形態では、スクレーパ23を非使用位置に保つためのスクレーパ固定手段としてピン孔34及びロックピン35を採用したが、これに限るものではなく任意に変更可能であり、例えば特許文献1に記載されているように係合部材と溝との係合によりスクレーパ23を非使用位置に保持してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 マカダムローラ(搭乗式転圧ローラ車両)
2 後部転圧輪
4 前部車体
5 後部車体
12 運転席
19 ビームブラケット
20 支持ビーム
22 スクレーパブラケット
23 スクレーパ
24 支持金具
25 スクレーパ本体
30 引張りバネ
34 ピン孔(スクレーパ固定手段)
35 ロックピン(スクレーパ固定手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6