【文献】
山出 新一,「フリッカー法によるレーレー(Rayleigh)均等の検討 その1 正常者に対する予備実験」,日本眼科紀要,1982年 6月28日,第33巻、第6号,第1191〜1194頁
【文献】
山出 新一,「30. フリッカー法によるレーレー均等の検討 (2) 先天性第1、第2色覚異常者における等明度線について」,日本眼科学雑誌,1982年 8月10日,第86巻、第8号,第222〜226頁
【文献】
山出 新一,「フリッカー法によるレーレー均等の検討 (3) 背景色順応光を加える試みについて」,日本眼科紀要,1983年 7月28日,第34巻、第7号,第1636〜1640頁
【文献】
山出 新一,「157. フリッカー法によるレーレー均等の検討 (4) 色順応効果と保因者の成績について」,日本眼科学雑誌,1983年11月10日,第87巻、第11号,第204〜210頁
【文献】
安間 哲史,「アノマロスコープ検査の基礎」,視覚の科学,2017年 7月15日,第38巻、第2号,第16〜21頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の色覚検査装置では、検査中に被検者が円形観察視野を観察していく中で、円形観察視野の上半分に呈示された混色光を受光する網膜部分と下半分に呈示された参照光を受光する網膜部分との間で、色順応状態に違いが生じてくる。このように両網膜部分間で色順応状態が違う状況下で調整された混色比率は、両網膜部分間で色順応状態に違いの無い通常の状況下で調整された混色比率とは異なる結果となってしまうため、検査精度に誤差が生じる。このような検査精度の誤差を軽減するため、従来は、接眼部から円形観察視野を一定時間(3秒程度)観察したら、接眼部から眼を離して白色板(白色光)を一定時間(5秒程度)観察するという作業を繰り返しながら、混色ノブを回して混色比率の調整を行っている。しかしながら、被検者には、検査中に観察する場所を何度も切り替えるという煩雑な作業を強いることになる。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、検査中に被検者が観察する場所を切り替えるような煩雑な作業を行うことなく、検査精度の誤差を軽減できる色覚検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、混色光と参照光とを対比して色覚異常を判定する色覚検査装置において、前記混色光と前記参照光とを互いに異なる時期に同一の観察視野に呈示する
とともに、前記混色光及び前記参照光とは異なる色の第3色光を、前記混色光及び前記参照光とは異なる時期に、前記同一の観察視野に呈示することを特徴とするものである。
本発明において、被検者は、混色光と参照光とが互いに異なる時期に呈示される同一の観察視野を観察したまま検査を行うことができるので、検査中に観察する場所を切り替えるような煩雑な作業を行う必要がない。
しかも、同一の観察視野に呈示される混色光と参照光は、被検者の網膜上の同じ部分で受光されることになる。そのため、混色光を観察してから参照光を観察して対比する際、あるいは、参照光を観察してから混色光を観察して対比する際には、先の観察によって色順応した状態の網膜部分と同じ部分で、後の観察を行うことになる。したがって、相前後して呈示される混色光と参照光とを実質的に同じ色順応状態で観察して対比することができる。よって、従来のように混色光を受光する網膜部分と参照光を受光する網膜部分との間の色順応状態を合わせるための白色光の観察を検査中に適宜挟むようなことは行わなくても、混色光の観察時と参照光の観察時との間で色順応状態が違うことによる検査精度の誤差を実質的に無くすことができる。
また、本発明によれば、混色光及び参照光とは異なる色の第3色光を混色光及び参照光と同じ観察視野に呈示する時期を設けることにより、新たな機能を付加することができる。
例えば、混色光及び参照光での吸収が少ない錐体が吸収する波長(色)を含む第3色光を用いることで、当該錐体の機能を判定することが可能となり、判定できる色覚異常の種類を増やすことが可能となる。
また、例えば、混色光及び参照光での吸収が多い錐体が吸収する波長(色)を含む第3色光を用いることで、当該錐体の感度を色順応により低下させることができ、色覚異常の型の判別が容易になる。
また、例えば、第3色光を用いることで、錐体(S錐体、M錐体、L錐体)の順応状態をコントロールすることができ、検査の精度を上げることができる。
また、例えば、色順応状態を所定の基準状態に保つための第3色光を用い、混色光の呈示時期と参照光の呈示時期との切り替わりの際に第3色光の呈示時期を介在させることで、同じ基準状態での検査結果を得ることが可能となる。具体的には、第3色光として、切り替わり前に呈示された混色光又は参照光によって生じた網膜の錐体間(S錐体、M錐体、L錐体の3種類間)における色順応の差を小さくする白色を用いることで、この色順応の差が切り替わり後の観察に影響して検出誤差を引き起こすのを抑制できる。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の色
覚検査装置において、前記混色光の呈示時期と前記参照光の呈示時期とが部分的に重複する重複時期が存在するように、前記混色光と前記参照光とを呈示することを特徴とするものである。
同一の観察視野に呈示される混色光の呈示時期と参照光の呈示時期とを瞬時に切り替える場合(すなわち、混色光の呈示時期と参照光の呈示時期との間の始期と終期とが実質的に一致するように切り替える場合)、輝度変化などの過渡的変化が生じる。このような過渡的な変化が生じると、生体の過渡応答による影響で、検査精度に誤差が生じ得る。
本発明によれば、混色光の呈示時期と参照光の呈示時期との切り替わりの際、これらの呈示時期が重複する重複時期を設けることにより過渡的変化を軽減することが可能となる。また、このような重複時期の代わりに、同一の観察視野が消光する消光時期を設けたり、混色光及び参照光とは異なる第3色光を同一の観察視野に呈示する第3色光呈示時期を設けたりすることによっても、過渡的変化を軽減することができ、検査精度の誤差を抑制することができる。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の色覚検査装置において、前記重複時期では、前記混色光と前記参照光のうち呈示を終了する方の輝度を徐々に下げるとともに、呈示を開始する方の輝度を徐々に上げることを特徴とするものである。
本発明によれば、重複時期の間、同一の観察視野に呈示される光が、切り替わり前の混色光又は参照光から切り替わり後の参照光又は混色光へ徐々に変化するので、重複時期の間における輝度変化による影響を更に抑制できる。
【0010】
また、請求項
4の発明は、請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の色覚異常検査装置において、前記第3色光の色は、前記混色光及び前記参照光の呈示によって生じる網膜の錐状体間における色順応の差を小さくする色であることを特徴とするものである。
本発明によれば、このような第3色光の呈示時期を、混色光の呈示時期と参照光の呈示時期との切り替わりの際に介在させることにより、切り替わり前に呈示された混色光又は参照光によって生じた網膜の錐状体間(S錐状体、M錐状体、L錐状体の3種類間)における色順応の差を小さくして、この色順応の差が切り替わり後の観察に影響して検出誤差を引き起こすのを抑制できる。
【0011】
また、請求項
5の発明は、請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の色覚検査装置において、前記第3色光の色は、白色であることを特徴とするものである。
本発明によれば、第3色光を呈示することで、すべての錐体(S錐体、M錐体、L錐体)間における色順応状態を均一化して、錐体間における色順応の差に起因した検出誤差を抑制することが可能となる。
特に、第3色光が白色であることで、従来の色覚検査に近似した検査条件で色覚検査を行うことができる。すなわち、従来の色覚検査では、上半分に混色光が呈示され下半分に参照光が呈示された円形の観察視野を一定時間(3秒程度)観察したら、白色光を一定時間(5秒程度)観察するという作業を繰り返しながら検査を行うため、検査結果が出るときの全種類の錐体(S錐体、M錐体、L錐体)間における色順応状態は均一化された状況下のものと言える。一方、本発明においても、白色である第3色光を呈示することで、全種類の錐体間における色順応状態が従来同様に均一化されるので、全種類の錐体間における色順応状態が均一化された状況下での検査結果を得ることができる。その結果、例えば、本発明に係る色覚検査装置を用いた色覚検査の検査結果と、従来の色覚検査の検査結果との間で、適切な対比検討を行うことが可能となる。
【0012】
また、請求項
6の発明は、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の色覚検査装置において、前記混色光を構成する各単色光の輝度を調整する手段を有し、前記各単色光と所定輝度の前記参照光とを前記同一の観察視野に交互に呈示して、輝度変化が知覚されない又は最小になるように前記手段によって輝度が調整された前記各単色光を用いて、前記参照光と対比される前記混色光を前記同一の観察視野に呈示することを特徴とする。
本発明によれば、混色光を構成する各単色光(例えば、赤色光と緑色光)と参照光(例えば黄色単色光)とを同一の観察視野に交互に呈示して、輝度変化が知覚されない又は最小になるように当該各単色光の輝度を調整し(輝度マッチングさせ)、その後、輝度が調整された前記各単色光で生成した混色光と前記参照光とを交互に呈示して、混色光中の赤色光と緑色光の混合比率を調整するという色覚検査を実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検査中に被検者が観察する場所を切り替えるような煩雑な作業を行うことなく、検査精度の誤差を軽減できる色覚検査装置を提供することができるという優れた効果が奏される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る色覚検査装置の一実施形態(以下、本実施形態を「実施形態1」という。)について、図面に用いて説明する。
図1は、本実施形態1に係る色覚検査装置の概略構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態1に係る色覚検査装置の一構造例を概略的に示す説明図である。
【0016】
本実施形態1の色覚検査装置1は、主に、接眼部2、混色光発光部3、単色光発光部4、導光部5、混色比率調整部6、輝度調整部7、制御部8、音出力部11から構成されている。
【0017】
接眼部2は、検査対象者(被検者)の眼Eを当てて色覚検査装置1内の観察視野Sをのぞき込む部分である。接眼部2は、被検者が眼Eを接眼部2に当てたときに外光が色覚検査装置1内へ進入しないように、
図2に示すような遮光性の筒状部材である外光遮蔽筒21によって構成される。
【0018】
混色光発光部3は、赤色光Rと緑色光Gとを混合した混色光Y’を発光する。混色光発光部3は、
図2に示すように、赤色光Rを発光する赤色LED31と、緑色光Gを発光する緑色LED32と、赤色LED31を駆動する赤色LED駆動回路33と、緑色LED32を駆動する緑色LED駆動回路34とから構成される。
【0019】
赤色LED駆動回路33及び緑色LED駆動回路34は、それぞれ、入力される駆動信号に応じて、赤色LED31及び緑色LED32へ入力する駆動電流量を制御する。本実施形態1では、単位時間当たりの駆動電流量を、駆動電流の値を一定値に固定してパルス幅変調(PWM)により制御することで赤色LED31及び緑色LED32の発光量を制御するが、駆動電流の値そのものを変調するなどの他の制御方法によって赤色LED31及び緑色LED32の発光量を制御してもよい。ただし、LEDは、入力される駆動電流の値に応じて発光するピーク波長が変化するので、中心波長に高い精度が求められる色覚検査を行う本実施形態1では、駆動電流の値を固定してパルス幅変調(PWM)による発光量制御が好ましい。
【0020】
単色光発光部4は、参照光として用いられる黄色の単色光Yを発光する。単色光発光部4は、
図2に示すように、黄色単色光Yを発光する黄色LED41と、黄色LED41を駆動する黄色LED駆動回路42とから構成される。
【0021】
黄色LED駆動回路42は、入力される駆動信号に応じて、黄色LED41へ入力する駆動電流を制御する。黄色LED駆動回路42についても、単位時間当たりの駆動電流量をパルス幅変調(PWM)により制御することで黄色LED41の発光量を制御するが、駆動電流の値を変調するなどの他の制御方法によって黄色LED41の発光量を制御してもよい。なお、中心波長に高い精度が求められる色覚検査を行う本実施形態1では、上述したようにパルス幅変調(PWM)による制御が好ましい。
【0022】
本実施形態1では、混色光Y’や黄色単色光Yの光源としてLEDを用いているが、光源の種類には特に制限はない。ただし、色覚検査装置1の光源としては、半値幅の狭い発光特性(例えば、ピーク波長を中心±10[nm]程度)を有するものが好ましい。
【0023】
また、赤色LED31、緑色LED32及び黄色LED41は、必要な輝度との関係で、1又は2以上のLED素子から構成されていてもよい。
【0024】
導光部5は、混色光発光部3による赤色光Rと緑色光Gの混色光Y’を観察視野Sへ導くとともに、単色光発光部4による黄色単色光Yを同じ観察視野Sへ導く。本実施形態1の導光部5は、光学積分器51により構成されている。光学積分器51は、所定の反射曲面を有し、混色光発光部3の赤色LED31及び緑色LED32から発せられる赤色光Rと緑色光Gを反射曲面で拡散反射して、均一な強度分布の赤色光R及び緑色光Gを観察視野Sに取り出すことができる。これにより、観察視野Sに赤色光Rと緑色光Gとを混合した混色光Y’が導光される。また、同様に、光学積分器51は、単色光発光部4の黄色LED41から発せられる黄色単色光Yを反射曲面で拡散反射して、均一な強度分布の黄色単色光Yを観察視野Sに取り出すことができる。
【0025】
本実施形態1の光学積分器51としては、例えば、積分球を用いることができるが、これに限らず、任意形状の積分器を用いることができる。
【0026】
光学積分器51には、例えば直径10[mm]の円形窓52が形成され、その円形窓52が観察視野Sとなる。円形窓52には、長さが約60[mm]で直径10[mm]の円形断面をもつ筒状部材53が接続され、この筒状部材53に接眼部2の外光遮蔽筒21が接続されている。外光遮蔽筒21の長さが約22[cm]であるため、本実施形態1では、被検者に対し、視角にして約2度の円形状の観察視野Sが呈示される。
【0027】
混色比率調整部6は、混色光発光部3が発する混色光Y’の赤色光Rと緑色光Gとの混色比率を調整する。混色比率調整部6は、
図2に示すように、被検者が手で操作する混色ノブ61から構成される。被検者が手で混色ノブ61を操作する(回す)と、その混色ノブ61の操作に応じて、赤色LED31からの赤色光Rの発光量と緑色LED32からの緑色光Gの発光量とが変化し、混色光Y’の赤色光Rと緑色光Gとの混色比率を調整することができる。
【0028】
輝度調整部7は、単色光発光部4が発する黄色単色光Yの発光量(輝度)を調整する。輝度調整部7は、
図2に示すように、被検者が手で操作する単色ノブ71から構成される。被検者が手で単色ノブ71を操作する(回す)と、その単色ノブ71の操作に応じて、黄色LED41からの黄色単色光Yの発光量が変化し、黄色単色光Yの輝度を調整することができる。
【0029】
制御部8は、外部のパソコンなどからの制御指令に従って、混色光発光部3及び単色光発光部4の発光動作タイミング(出力タイミング等)を制御し、混色光Y’と黄色単色光Yとが互いに異なる時期(例えば1秒交代)に同一の観察視野Sに呈示されるように制御を行う。制御部8は、所定の制御プログラムを実行可能なCPU、RAM、ROMなどの演算処理部や各種データやプログラムを記憶する記憶部が備わっている。また、制御部8は、このような演算処理部や記憶部のほか、入力される制御指令に応じ、混色光用制御信号と単色光用制御信号を生成する制御回路81、制御回路81からの混色光用制御信号に応じて、赤色LED駆動回路33と緑色LED駆動回路34へそれぞれ出力する各駆動信号の出力タイミング等を制御する混色光用LED制御回路82、制御回路81からの単色光用制御信号に応じて、黄色LED駆動回路42へ出力する駆動信号の出力タイミング等を制御する単色光用LED制御回路83も備えている。
【0030】
また、混色光用LED制御回路82は、混色ノブ61の操作に応じて、赤色LED駆動回路33と緑色LED駆動回路34に対する各駆動信号のパルス幅変調を行い、各駆動信号を赤色LED駆動回路33と緑色LED駆動回路34へ出力する。また、単色光用LED制御回路83は、単色ノブ71の操作に応じて、黄色LED駆動回路42に対する駆動信号のパルス幅変調を行い、その駆動信号を黄色LED駆動回路42へ出力する。
【0031】
音出力部11は、被検者に対し、聴覚を通じて所定の情報を報知するための音を出力する。音出力部11は、
図2に示すように、ビープ音発生回路11Aと、スピーカ11Bとから構成される。本実施形態1における音出力部11は、例えば、観察視野Sに呈示されている光が黄色単色光Yなのか混色光Y’なのかを被検者へ認知させるためのビープ音を出力する。具体的には、例えば観察視野Sに混色光Y’が呈示されている呈示時期にはビープ音(報知音)を出力し、観察視野Sに黄色単色光Yが呈示されている呈示時期にはビープ音を出力しないようにする。このビープ音の出力タイミングの制御には、上述した混色光用制御信号を用いることができる。すなわち、制御回路81からの混色光用制御信号に応じて、ビープ音発生回路11Aがビープ音を発生させ、スピーカ11Bからビープ音を出力する。
【0032】
なお、音出力部11は、ビープ音のほかにも、音声やメロディなどの音を出力してもよい。
また、本実施形態1では、観察視野Sに呈示されている光が黄色単色光Yなのか混色光Y’なのかを被検者へ認知させるための報知方法として、ビープ音を出力する方法を採用しているが、他の音(音声やメロディ等)を出力する報知方法や、視覚や触覚などを通じて報知する報知方法などであってもよい。
【0033】
図3(a)〜(d)は、本実施形態1における混色光用制御信号及び単色光用制御信号と各色LED用の駆動信号の一例を示す説明図である。
制御部8の制御回路81は、
図3(a)に示すように、パルス幅変調用台形波の繰り返し信号である単色光用制御信号及び混色光用制御信号を生成し、それぞれを混色光用LED制御回路82及び単色光用LED制御回路83へ出力する。混色光用LED制御回路82及び単色光用LED制御回路83は、入力される単色光用制御信号及び混色光用制御信号の信号レベルに応じて、各LED31,32,41へ出力する駆動信号のパルス幅を変更する。したがって、各LED31,32,41へ出力される駆動信号は、
図3(b)〜(d)に示すように、それぞれに対応する制御信号の台形波形状に沿って、パルス幅が変化している。
【0034】
赤色LED31は、混色光用制御信号によって出力タイミング(例えば1秒間隔)及びパルス幅が制御された
図3(b)に示す駆動信号が入力されることで、周期的に赤色光Rが発光する。また、緑色LED32も、同じく、混色光用制御信号によって出力タイミング及びパルス幅が制御された
図3(c)に示す駆動信号が入力されることで、周期的に緑色光Gを発光する。赤色LED31と緑色LED32の発光タイミングは一致するので、赤色LED31から発せられる赤色光Rと緑色LED32から発せられる緑色光Gは、光学積分器51によって均一化されて同時に観察視野Sへ導かれ、観察視野Sに混色光Y’を呈示する。なお、赤色LED及び緑色LEDを駆動するパルス周波数が例えば500kHz以上の高周波の場合は必ずしも両パルスの同期を取る必要はない。
【0035】
このとき、赤色LED31に入力される
図3(b)の駆動信号、及び、緑色LED32に入力される
図3(c)の駆動信号は、混色ノブ61の操作量に応じて混色光用LED制御回路82によりパルス幅変調されている。したがって、赤色LED31から発せられる赤色光Rの光量(輝度)と緑色LED32から発せられる緑色光Gの光量(輝度)の光量比率は、混色ノブ61の操作量に応じて変化する。すなわち、混色ノブ61の操作量に応じて、観察視野Sに呈示される混色光Y’の赤色光Rと緑色光Gの混色比率が変化する。
【0036】
一方で、黄色LED41は、単色光用制御信号によって出力タイミング及びパルス幅が制御された
図3(d)に示す駆動信号が入力されることで、周期的に黄色単色光Yが発光する。このとき、単色のノブ71の操作量に応じて単色光用LED制御回路83によりパルス幅変調されて、黄色単色光の光量(輝度)が変化する。そして、黄色LED41から発せられる黄色単色光Yは、光学積分器51によって均一化されて観察視野Sへ導かれ、観察視野Sに黄色単色光Yを呈示する。
【0037】
また、黄色LED41の発光時期(黄色単色光Yの呈示時期、呈示時間は例えば1秒)と赤色LED31及び緑色LED32の発光時期(混色光Y’の呈示時期、呈示時間は例えば1秒)は互いに異なっており、観察視野Sには、黄色単色光Yと混色光Y’とが交互に呈示される。被検者は、このように黄色単色光Yと混色光Y’とが交互に呈示される観察視野Sを観察しながら、混色ノブ61を操作して混色光Y’の混色比率を変化させ、黄色単色光Yと混色光Y’とが同じ色相になるように調整する。また、単色ノブ71を操作して黄色単色光Yと混色光Y'との輝度が同じになるよう調整する。
【0038】
ここで、本実施形態1では、
図3(a)に示すように、混色光Y’の呈示時期を制御する混色光用制御信号の立ち上がり又は立ち下がりと、黄色単色光Yの呈示時期を制御する単色光用制御信号の立ち下がり又は立ち上がりとが、重複している。したがって、黄色単色光Yと混色光Y’との切り替わりの際に、混色光Y’の呈示時期と黄色単色光Yの呈示時期とが部分的に重複する重複時期が存在する。このような重複時期(例えば0.5秒間)が存在することで、切り替わり前の混色光Y’(又は黄色単色光Y)から切り替え後の黄色単色光Y(又は混色光Y’)へ切り替わるときの生体の過渡応答の影響が軽減された状況にすることができる。その結果、検査精度の誤差を抑制することができる。
【0039】
特に、本実施形態1においては、重複時期の間、観察視野Sに呈示される光が、切り替わり前の混色光Y’又は黄色単色光Yから、切り替わり後の黄色単色光Y又は混色光Y’へ、徐々に変化するようにしている。これによれば、過渡応答の影響を更に抑制することができ、より高い検査精度を実現できる。
【0040】
もちろん、黄色単色光Yと混色光Y’との切り替わりの際、矩形波の制御信号を用いるなどして、黄色単色光Yと混色光Y’とを瞬時に切り替える、すなわち、混色光Y’の呈示時期と黄色単色光Yの呈示時期の始期と終期とが実質的に一致するように切り替えるようにしてもよい。ただし、この場合には、生体の過渡応答の影響による検査精度の誤差が生じ得ることを考慮する必要がある。
【0041】
被検者は、上述したように混色ノブ61を操作して黄色単色光Yと混色光Y’とが同じ色相になるように混色光Y’の混色比率を調整したら、単色ノブ71を操作して黄色単色光Yと混色光Y’とが同じ輝度になるように黄色単色光Yの光量(輝度)を調整する。そして、混色ノブ61の操作量(混色光Y’の混色比率)と単色ノブ71の操作量(黄色単色光Yの輝度)とから、色覚異常か否か、更には、色覚異常の程度、色覚異常の種類(1型2色覚、2型2色覚等)を判定する。
【0042】
以上、本実施形態1においては、被検者は、接眼部2に眼Eを当てて、混色光Y’と参照光である黄色単色光Yとが互いに異なる時期に呈示される同一の観察視野Sを観察した状態のままで、色覚検査を行うことができる。よって、従来のアノマロスコープのように検査中に被検者が観察する場所を切り替えるような煩雑な作業を被検者に強いることが必要無い。
しかも、同一の観察視野Sに呈示される混色光Y’と参照光である黄色単色光Yは、いずれも、被検者の眼Eの網膜上の同じ部分で受光されることになる。そのため、混色光Y’を観察した後に黄色単色光Yを観察して対比する時、あるいは、黄色単色光Yを観察した後に混色光Y’を観察して対比する時、先の観察によって色順応した状態の網膜部分と同じ部分で、後の観察を行うことになる。したがって、相前後して行われる混色光Y’の観察と黄色単色光Yの観察とを実質的に同じ色順応状態で行うことができる。よって、従来のアノマロスコープのように混色光Y’を受光する網膜部分と黄色単色光Yを受光する網膜部分とが異なり、これらの網膜部分間における色順応状態を合わせるための白色光の観察を行わなくても、色順応状態の違いによる検査精度の誤差を実質的に無くすことができる。
したがって、本実施形態1によれば、検査中に被検者が観察する場所を切り替えるような煩雑な作業を行うことなく、従来のアノマロスコープで色順応状態を合わせるための白色光の観察を行った場合と同程度の検査精度を実現することができる。
【0043】
なお、本実施形態1では、赤色に対する色覚異常と緑色に対する色覚異常を検査する例で説明したが、観察視野Sに呈示する光の色として別の色を用い、赤色や緑色以外の色に対する色覚異常を検査する例であっても同様である。
【0044】
例えば、混色光として、青色光(470[nm])と黄色光(585[nm])の混色光を用い、参照光として、黄白色光を用いてもよい。この場合、当該色覚検査装置を用いて、3型2色覚等の色覚異常を判定可能なPickford-Lakowski均等検査を実施することができる。
また、例えば、混色光として、深青色光(436[nm])と青色光(490[nm])の混色光を用い、参照光として、青色光(480[nm])に黄色光(589[nm])を混ぜて彩度を下げた混色光を用いてもよい。この場合、当該色覚検査装置を用いて、3型色覚異常を判定可能なMoreland均等検査を実施することができる。
【0045】
また、本実施形態1では、参照光として黄色の単色光を用いる例で説明したが、黄色の混色光を参照光として用いてもよい。
【0046】
〔実施形態2〕
次に、本発明に係る色覚検査装置の他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態2」という。)について、図面に用いて説明する。
本実施形態2に係る色覚検査装置は、任意の色順応状態における色覚検査を可能にするために、新たに混色光Y’及び参照光である黄色単色光Yとは異なる色の第3色光を、混色光Y’及び黄色単色光Yとは異なる時期に、同一の観察視野Sに呈示するものである。なお、本実施形態2に係る色覚検査装置の基本的な構成や動作は、上述した実施形態1と同様であるため、以下の説明では上述した実施形態1とは異なる点を中心に説明する。
【0047】
図4は、本実施形態2に係る色覚検査装置の概略構成を示すブロック図である。
図5は、本実施形態2に係る色覚検査装置の一構造例を概略的に示す説明図である。
【0048】
本実施形態2の色覚検査装置は、
図4に示すように、上述した実施形態1の構成に加えて、任意の色光に順応したときの色覚検査が可能なように第3色光発光部9を備えている。本実施形態2は、第3色光として白色光を用いる例である。第3色光発光部9は、
図5に示すように、白色光Wを発光する白色LED91と、白色LED91を駆動する白色LED駆動回路92とから構成される。
【0049】
白色LED駆動回路92は、入力される駆動信号に応じて、白色LED91へ入力する駆動電流を制御する。白色LED駆動回路92についても、他のLED駆動回路33,34,42と同様、駆動電流をパルス幅変調(PWM)により制御することで白色LED91の発光量を制御するが、駆動電流の電流値を変更するなどの他の制御方法によって白色LED91の発光量を制御してもよい。なお、本実施形態2で用いる白色光は、後述するように被検者の眼Eの網膜における3種類の錐体(S錐体、M錐体、L錐体)間の色順応状態を任意の比率に設定する用途で使用される。発光量の制御方法としては、特に制限はないが、白色光の呈示時期と、混色光Y’の呈示時期や黄色単色光Yの呈示時期とが部分的に重複する重複時期を設ける場合には、パルス幅変調による発光量の制御が望ましい。
【0050】
また、本実施形態2の制御部8には、上述した実施形態1の構成に加えて、制御回路81からの白色光用制御信号に応じて、白色LED駆動回路92へ出力する駆動信号の出力タイミング等を制御する白色光用LED制御回路84が備わっている。
【0051】
図6(a)〜(e)は、本実施形態2における混色光用制御信号及び単色光用制御信号と各色LED用の駆動信号の一例を示す説明図である。
制御部8の制御回路81は、
図6(a)に示すように、単色光用制御信号及び混色光用制御信号に加えて、白色光用制御信号を生成し、それぞれを混色光用LED制御回路82、単色光用LED制御回路83及び白色光用LED制御回路84へ出力する。本実施形態2では、上述した実施形態1と同様、いずれの制御信号にも台形波の繰り返し信号を用いるが、他の波形をもつ制御信号を用いてもよい。
【0052】
白色光用LED制御回路84は、他のLED制御回路82,83と同様、入力される白色光用制御信号の信号レベルに応じて、白色LED91へ出力する駆動信号のパルス幅を変更する。したがって、白色LED91へ出力される駆動信号は、
図6(e)に示すように、白色光用制御信号の台形波形状に沿って、パルス幅が変化している。
【0053】
白色LED91は、白色光用制御信号によって出力タイミング及びパルス幅が制御された
図6(e)に示す駆動信号が入力されることで、周期的に白色光Wを発光する。そして、白色LED91から発せられる白色光Wは、光学積分器51によって均一化されて観察視野Sへ導かれ、観察視野Sに白色光Wを呈示する。
【0054】
また、白色LED91の発光時期(第3色光である白色光Wの呈示時期、呈示時間は例えば3秒)は、黄色LED41の発光時期(黄色単色光Yの呈示時期)とも、赤色LED31及び緑色LED32の発光時期(混色光Y’の呈示時期)とも異なるように制御される。例えば、予め決められた切り替わり回数に達したタイミング、予め決められた時間が経過したタイミングなどの所定のタイミングで、
図6(a)に示すように、交互に繰り返される単色光用制御信号と混色光用制御信号を一時停止し、その一時停止期間中に白色光用制御信号を挿入する。
【0055】
本実施形態2によれば、被検者は、観察視野Sを観察した状態のまま、所定のタイミングで呈示される白色光Wを観察することができる。これにより、検査中に、被検者の眼Eの網膜における3種類の錐体(S錐体、M錐体、L錐体)間の色順応状態が均一化される。これは、例えば次のような効果をもたらす。
【0056】
本実施形態2では、上述した実施形態1と同様、相前後して行われる混色光Y’の観察と参照光である黄色単色光Yの観察とを実質的に同じ色順応状態で行うことができる。ただし、上述した実施形態1では、調整を終了した段階での色順応状態(どの種類の錐体がどの程度色順応しているか)が被検者ごとに異なるものとなる。各被検者の検査結果を被検者間で比較して考察する場合、同じ被検者についての複数の検査結果と比較して考察する場合などにおいては、それぞれの検査結果間で色順応状態が異なっていると、適切な比較考察が困難となる。
【0057】
これに対し、本実施形態2によれば、検査中の所定のタイミングで観察視野Sに白色光Wが呈示され、検査中に、被検者の眼Eの網膜における3種類の錐体(S錐体、M錐体、L錐体)間の色順応状態が均一化(白色順応)される。これにより、錐体間の色順応状態が均一化された状況での検査結果が得られる。その結果、検査結果が得られた状況での被検者の色順応状態は、どの被検者でもほぼ同様のものとなり、そのまま検査結果を比較考察しても、適切な比較考察が可能である。
【0058】
なお、適切な比較考察を考慮して、各検査結果における被検者の色順応状態をほぼ一様なものにするだけであれば、3種類の錐体(S錐体、M錐体、L錐体)間の色順応状態を均一化しなくてもよいので、白色以外の色をもつ第3色光を用いてよい。ただし、従来のアノマロスコープを用いた色覚検査での検査結果は、白色光を観察した色順応状態での検査結果であるため、その検査結果との比較考察を考慮すれば、第3色光として白色光Wを用いるのが好ましい。
【0059】
また、本実施形態2においては、予め決められた所定のタイミングで自動的に白色光Wを観察視野Sに呈示する制御を行っているが、これに限られない。例えば、本色覚検査装置1に操作部としての順応スイッチを設け、その順応スイッチが操作されたタイミングで、白色光Wを観察視野Sに呈示するようにしてもよい。この場合、例えば、同一の観察視野Sに交互に呈示される黄色単色光Yと混色光Y’の色相及び輝度が同じになるように調整したら、被検者は、眼Eを接眼部2に当てたまま、順応スイッチを押す。これにより、被検者によって観察視野Sに呈示された白色光Wが観察され、被検者の眼Eの網膜における3種類の錐体(S錐体、M錐体、L錐体)間の色順応状態が均一化される。その後、白色光Wが呈示されて所定時間が経過したら、再び、同一の観察視野Sに対して交互に黄色単色光Yと混色光Y’を呈示するように制御し、これらの色相及び輝度が同じになるように再調整してもらう。これを繰り返して、白色光Wが呈示された後も、交互に呈示される黄色単色光Yと混色光Y’の色相及び輝度が同じになったら、検査を終了する。この場合には、より確実に、白色光の観察によって錐体間の色順応状態が均一化された状況での検査結果を得ることができる。また、従来のアノマロスコープでの色覚検査の検査結果により近い条件での検査結果を得ることができる。
【0060】
なお、本実施形態2では、白色LED91を用いて白色光を観察視野Sへ呈示する例について説明したが、混色光Y’や黄色単色光Yの発光に用いる赤色LED31、緑色LED32、黄色LED41の発光色と混色することで白色が得られる色の光(例えば青色光)を発する光源を設け、その混色した光によって白色光を得る構成であってもよい。
【0061】
また、本実施形態2では、第3色光を、各検査結果における被検者の色順応状態をほぼ一様なものにする目的、3種類の錐状体(S錐状体、M錐状体、L錐状体)間の色順応状態を均一化する目的など、色順応状態を制御する目的で利用される例であったが、そのほかの目的で第3色光を利用することも考えられる。例えば、第3色光として青色光を用い、この青色光を含む混色光を観察視野Sに呈示することで、上述した赤色光Rと緑色光Gの混色光Y’を用いるだけでは検査できない色覚異常の種類についても検査することができるようになる。
【0062】
〔変形例〕
次に、上述した実施形態1及び2の一変形例について説明する。
上述した実施形態1及び2では、被検者が混色ノブ61及び単色ノブ71を操作して、交互に呈示される黄色単色光Yと混色光Y’の色相及び輝度が同じになるように調整する。本変形例では、このような被検者による調整操作を不要とし、より被検者の作業負担が少なくするものである。
【0063】
図7は、本変形例における色覚検査装置1の概略構成を示すブロック図である。
本変形例における色覚検査装置1の基本構成は、上述した実施形態2と同様に、第3色光発光部9を備えたものであるが、混色ノブ61を含む混色比率調整部6及び単色ノブ71を含む輝度調整部7を備えておらず、その代わりに操作部10が設けられている。操作部10は、制御部8に対して被検者の操作を伝えるためのものである。操作部10は、例えば被検者が手で押す1つ又は2つ以上の操作スイッチから構成される。
【0064】
なお、各部の具体的構成などについては、上述した実施形態2と同様である。なお、ここでは、第3色光発光部9を備える実施形態2の変形例として説明するが、第3色光発光部9を備えていない実施形態1の変形例であっても同様である。
【0065】
図8は、本変形例における色覚検査装置1を用いた色覚検査の流れを示すフローチャートである。
図9は、混色光Y’の混色比率を決めるパラメータNと混色比率との関係を示すデータテーブルの例である。
【0066】
本変形例において、被検者は、まず、接眼部2に眼Eを当てて観察視野Sを観察できる状態になったら、操作部10の操作スイッチを押し、検査を開始する。この操作内容は、操作部10から制御部8へ送られる。制御部8の演算処理部は、所定の検査制御プログラムを実行して、まず、混色光Y’の混色比率を決めるパラメータNを1にセットする(S1)。
【0067】
そして、制御部8の演算処理部は、ROM等に記憶されている
図9に示すようなデータテーブルを参照して、パラメータN=1の赤色光Rと緑色光Gの混色比率を読み出し(N=1の場合、赤色光R=100%、緑色光G=0%)、その内容を含む混色光用制御信号を制御回路81から混色光用LED制御回路82へ出力する。すなわち、本変形例においては、混色光用LED制御回路82へ出力される混色光用制御信号には、赤色LED31及び緑色LED32の発光量をそれぞれ制御するための制御情報(パルス幅変調(PWM)の制御情報)が含まれている。
【0068】
なお、最初に設定されるパラメータNは必ずしも「1」すなわち赤色光R又は緑色光G=100%、緑色光G又は赤色光R=0%とする必要はなく、例えば、色覚異常でない被検者、軽度の色覚異常である被検者であることが予め判明している場合には、例えばN=10を最初に設定してもよい。
【0069】
また、制御部8の演算処理部は、黄色LED41の発光量を制御するための制御情報(パルス幅変調(PWM)の制御情報)を含む単色光用制御信号を、制御回路81から単色光用LED制御回路83へ出力する。最初に設定される黄色LED41の発光量(輝度)は、適宜設定される。
【0070】
このようにして、混色光用制御信号及び単色光用制御信号がそれぞれ混色光用LED制御回路82及び単色光用LED制御回路83へ出力されることで、観察視野Sには、パラメータNに対応する混色比率の混色光Y’と、所定輝度の黄色単色光Yとが、交互に呈示される(S2)。被検者は、このように黄色単色光Yと混色光Y’とが交互に呈示される観察視野Sを観察して黄色単色光Yと混色光Y’の色(色相及び輝度)が一致しているか否かを判断する(S3)。
【0071】
被検者は、黄色単色光Yと混色光Y’の色が一致していると判断したときには、操作部10の操作スイッチを押し、色が一致していないと判断したときには、操作部10の操作スイッチを押さない。制御部8は、このような操作スイッチに対する操作内容に応じて、被検者が黄色単色光Yと混色光Y’の色が一致していると判断したか否かを判定する。
【0072】
黄色単色光Yと混色光Y’の色が一致していないと判断された場合(S3のNo)、制御部8の演算処理部は、黄色LED41の発光量を制御するための制御情報(パルス幅変調(PWM)の制御情報)を変更しながら、単色光用制御信号を単色光用LED制御回路83へ出力する。これにより、観察視野Sに呈示される黄色単色光Yの発光量(輝度)は、その呈示時期が切り替わるたびに所定ステップで変化し(S4)、被検者は、一定の混色比率かつ一定の輝度で呈示される混色光Y’と、呈示の切り替わりのたびに輝度が変化する黄色単色光Yとを順次対比して観察する。
【0073】
このように黄色単色光Yの輝度が変化する中でも、被検者が黄色単色光Yと混色光Y’の色が一致しないと判断された場合(S5のNo)、制御部8の演算処理部は、パラメータNをN+1にセットする(S7)。また、このように黄色単色光Yの輝度が変化する中で、被検者が黄色単色光Yと混色光Y’の色が一致したと判断した場合でも(S5のYes)、一致したときの黄色単色光Yの輝度が規定範囲内ではない場合には(S6のNo)、制御部8の演算処理部は、パラメータNをN+1にセットする(S7)。
【0074】
これにより、制御部8の演算処理部は、
図9に示すようなデータテーブルを参照して、パラメータN=2の赤色光Rと緑色光Gの混色比率を読み出し(N=2の場合、赤色光R=0%、緑色光G=100%)、その内容を含む混色光用制御信号を混色光用LED制御回路82へ出力する。これにより、前回の混色比率とは異なる混色比率の混色光Y’と、所定輝度の黄色単色光Yとが、観察視野Sに呈示されることになる(S2)。そして、被検者は、再び、これらの黄色単色光Yと混色光Y’の色(色相及び輝度)が一致しているか否かを判断する(S3,S5)。
【0075】
以上の工程を繰り返し行い、操作スイッチに対する操作内容により、黄色単色光Yと混色光Y’の色が一致する混色比率及び単色光輝度が決定されると(S3のYes,S6のYes)、制御部8の演算処理部は、今回がはじめて色一致と判断されたものか否かを判断する(S8)。この判断では、色一致と判断されたのが1回目である場合は「はじめて」であると判断するが、色一致と判断されたのが2回目以降である場合でも、前回に色一致と判断されたときの混色比率及び単色光輝度から変更があった場合には、「はじめて」であると判断する。
【0076】
この処理ステップS8において「はじめて」であると判断されると、制御部8の演算処理部は、混色光用制御信号及び単色光用制御信号を一時停止する一方、白色LED91の発光量を制御するための制御情報(パルス幅変調(PWM)の制御情報)を含む白色光用制御信号を、制御回路81から白色光用LED制御回路84へ出力する。これにより、観察視野Sには、混色光Y’及び黄色単色光Yの交互呈示に代わって、白色光Wが呈示される(S9)。
【0077】
これにより、白色光Wを被検者が観察することで、3種類の錐体間の色順応状態が均一化される。その後、再び、色が一致すると判断した混色比率の混色光Y’と色が一致すると判断した輝度の黄色単色光Yが観察視野Sに交互呈示され、これを観察した被検者が同じ混色比率及び輝度のまま再び色が一致すると判断したら(S8のNo)、制御部8の演算処理部は、このときの赤色光Rの輝度(赤色LED31の発光量)、緑色光Gの輝度(緑色LED32の発光量)、黄色単色光Yの輝度(黄色LED41の発光量)を、検査結果として記憶部に記録する(S10)。
【0078】
この検査結果における赤色光Rの輝度と緑色光Gの輝度は、上述した実施形態2における混色ノブ61の操作量(混色光Y’の混色比率)に相当し、黄色単色光Yの輝度は、上述した実施形態2における単色ノブ71の操作量に相当する。よって、本変形例においても、上述した実施形態2と同様に、検査結果から、色覚異常か否か、更には、色覚異常の程度、色覚異常の種類を判定することができる。
【0079】
〔実施形態3〕
次に、本発明に係る色覚検査装置の更に他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態3」という。)について、図面に用いて説明する。
本実施形態3に係る色覚検査装置は、混色光Y'の混色比率の調整の前に、混色光Y'の混色比率を変えて赤色光Rのみ及び緑色光Gのみに設定し、各々の輝度を黄色単色光Yの輝度に一致させる調整を行い、被検者の作業を容易にするものである。なお、本実施形態3では、上述した実施形態2の構成及び動作をベースとし、上述した実施形態2と同様の点については説明を省略して、上述した実施形態2とは異なる点を中心に説明する。
【0080】
図10は、本実施形態3に係る色覚検査装置の概略構成を示すブロック図である。
図11は、本実施形態3に係る色覚検査装置の一構造例を概略的に示す説明図である。
【0081】
本実施形態3の色覚検査装置は、
図10に示すように、上述した実施形態2の構成に加えて、混色光Y’を構成する赤色光Rと緑色光Gのそれぞれの輝度を調整する輝度調整部12を備えている。輝度調整部12は、混色光発光部3が発する赤色光Rの発光量(輝度)と、緑色光Gの発光量(輝度)とを独立して調整する。輝度調整部12は、
図11に示すように、被検者が手で操作する赤色ノブ62及び緑色ノブ63から構成される。被検者が手で赤色ノブ62を操作する(回す)と、その赤色ノブ62の操作に応じて、赤色LED31からの赤色光Rの発光量が変化し、赤色光Rの輝度を調整することができる。また、被検者が手で緑色ノブ63を操作する(回す)と、その緑色ノブ63の操作に応じて、緑色LED32からの緑色光Gの発光量が変化し、緑色光Gの輝度を調整することができる。
【0082】
本実施形態3の検査方法は、まず、参照光である黄色単色光Yの輝度を予め決められた輝度(例えば10[cd/m
2])に調整する。そして、次に混合ノブ61を回し、混色光Y’中の混合比率を調整して、赤色光Rのみが発光されるようにする。その後、黄色単色光Yの呈示時期と混色光Y’の呈示時期とが例えば20[Hz]で交互に繰り返されるように制御する。これにより、観察視野Sには、予め決められた輝度に固定された黄色単色光Yと、赤色光Rとが交互に呈示される。被検者は、このように黄色単色光Yと赤色光Rとが交互に呈示される観察視野Sを観察しながら、赤色ノブ62を操作して、交互に提示される赤色光Rと黄色単色光Yとの輝度変化(ちらつき)が知覚されない又は最小になるように、調整する。
【0083】
次に、混合ノブ61を回して、混色光Y’中の混合比率を調整し、今度は、緑色光Gのみが発光されるようにする。その後、赤色光Rの場合と同様、黄色単色光Yの呈示時期と混色光Y’の呈示時期とが例えば20[Hz]で交互に繰り返されるように制御する。これにより、観察視野Sには、予め決められた輝度に固定された黄色単色光Yと、緑色光Gとが交互に呈示される。被検者は、このように黄色単色光Yと緑色光Gとが交互に呈示される観察視野Sを観察しながら、緑色ノブ63を操作して、交互に提示される緑色光Gと黄色単色光Yとの輝度変化(ちらつき)が知覚されない又は最小になるように、調整する。
【0084】
次に、このようにして調整した赤色光Rの輝度と緑色光Gの輝度とで混色された混色光Y’と、上述の予め決められた輝度に固定された黄色単色光Yとが、例えば0.5[Hz]で観察視野Sに交互に提示されるように制御する。被検者は、実施形態2の場合と同様に、このように黄色単色光Yと混色光Y’とが交互に呈示される観察視野Sを観察しながら、混色ノブ61を操作して混色光Y’の混色比率を変化させ、黄色単色光Yと混色光Y’とが同じ色相になるように調整する。
【0085】
本実施形態3においても、色覚異常か否か、更には、色覚異常の程度、色覚異常の種類(1型2色覚、2型2色覚等)を判定する。特に、1型2色覚や2型2色覚の被検者については、すべての混色比率でのマッチングが可能であり、1型3色覚の被検者については、赤色光Rの比率が高い範囲でマッチングが可能であり、2型3色覚の被検者については、緑色光Gの比率が高い範囲でマッチングが可能である。正常3色覚の被検者については、黄色単色光Yと同じか又は近い極狭い範囲でマッチングが可能である。
【解決手段】混色光Y’(R+G)と参照光Yとを対比して色覚異常を判定する色覚検査装置1において、前記混色光Y’と前記参照光Yとを互いに異なる時期に同一の観察視野Sに呈示する。これにより、被検者は、白色光の観察を挟まなくても、色順応状態の違いによる検査精度の誤差を実質的に無くすことができ、従来は検査中に白色光を観察するために観察場所を切り替えるようにした煩雑な作業が不要となる。