(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の光音響顕微鏡装置の構成と作用効果を説明する。なお、この実施形態によって本発明は限定されるものではない。すなわち、実施形態の説明に当たって、例示のために特定の詳細な内容が多く含まれるが、これらの詳細な内容に色々なバリエーションや変更を加えても、本発明の範囲を超えない。従って、以下で説明する本発明の例示的な実施形態は、権利請求された発明に対して、一般性を失わせることなく、また、何ら限定をすることもなく、述べられたものである。
【0014】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態の構成を説明する。
図1に示すように、本実施形態の光音響顕微鏡装置100は、
光音響波を発生させる励起光を発生するパルス光源101と、
励起光を標本S上で集光させる対物レンズ103と、
標本上での励起光の集光位置を移動させる走査部であるガルバノミラー102と、
発生した光音響波を検出するセンサ部201を有する光音響波検出部202と、
光音響検波出部202からのデータに基づいて画像を構成する画像構成部251と、を有し、
センサ部201は、センサ部201に入射する光音響波を受信できる範囲の角度が対物レンズ103の照明側の開口数に対応する角度よりも大きいことを特徴としている。
【0015】
なお、対物レンズ103は、対物レンズ103の先端と標本Sとの間が、液体、例えば水Wで充填されている液侵レンズである。
【0016】
この構成により、パルス光源であるパルスレーザ101からの光束は、ガルバノミラー102によって反射される。そして、励起光Lを標本S上で集光させるための対物レンズ103に、所定の角度で入射する。
【0017】
対物レンズ103に入射した光束は水Wを介して、標本Sにおいて集光する。標本S内部の集光した位置で、光音響波を発生する物体が存在すると、光音響波が標本S内部で発生する。
【0018】
次に、励起光Lにより、標本Sを走査する構成について説明する。
光音響波信号(音響信号)は、標本Sと、さらに、水Wとを伝播する。水W内を伝播した光音響波Lrは、光音響波検出部202が有するファイバーセンサ201に到達する。
【0019】
図2(a)、(b)は、ガルバノミラー102を振った場合の状態を、それぞれ示している。
図2(a)において、パルス光源101からの励起光Lは、ガルバノミラー102により光路が45度折り曲げられる。そして、平行な励起光Lは、ほぼ垂直に対物レンズ103に対して、入射する。対物レンズ103は、入射した励起光Lを焦点位置に集光する。
【0020】
標本S内の集光スポット位置P0で光音響波SNが発生する。光音響波SNは、標本Sと、さらに、水W内とを伝播して進行する。水Wにおいて伝播した光音響波SNのうちの一部である光音響波Lrは、ファイバーセンサ201の先端部に達する。
【0021】
図2(b)は、ガルバノミラー102を
図2(a)で示す状態に比較して紙面矢印方向に振動(チルト)させた状態を示している。ガルバノミラー102を振動させると、例えば、パルス光源101からの励起光Lは、ガルバノミラー102により平行光のまま光路を所定角度折り曲げられる。そして、平行な励起光Lは、対物レンズ103に対して、斜入射する。対物レンズ103は、斜入射した励起光Lを集光スポット位置P1に集光する。
【0022】
ここで、集光スポット位置P1(
図2(b))は、集光スポット位置P0(
図2(a))と異なる位置となる。このように、ガルバノミラー102により、標本S内を励起光Lの集光スポットにより第1の走査方向および第2の走査方向に沿って二次元走査できる。
【0023】
以下、励起光Lにより走査できる標本Sの領域をスキャン範囲の半径をXr(つまり、観察を行う最大領域の半径)、とする。
【0024】
さらに、対物レンズ103と標本Sとの相対的な距離を変化させることで、集光スポットの位置を、標本Sの深さ方向へ移動させることができる。また、上述したように、対物レンズ103は、焦点距離の異なるものを適宜選択して装着しても良い。
【0025】
標本S内の集光スポット位置P1で光音響波SNが発生した場合、光音響波SNは、標本Sと、さらに、水W内とを伝播して進行する。水Wを伝播した光音響波SNのうちの一部である光音響波Lrは、光音響波検出部202が有するファイバーセンサ201の先端部に達する。光音響波検出部202は、検出した光音響波Lrを算出する干渉計である。光音響波検出部202の詳細な構成は後述する。
【0026】
また、制御部250には、画像構成部251が接続される。制御部250は、制御部250によるガルバノミラー102の駆動に同期して、すなわち標本Sを平面内で二次元走査する際の励起光Lの照射タイミングに同期して、光音響検出部202から得られる出力信号に基づいて、励起光Lの照射位置と出力信号の対応関係をデータ化する。例えば、制御部250は、励起光Lの照射位置および取得した信号強度を対応付けすること、励起光Lの照射位置及び取得した出力波形を対応付けすることを行っても良い。
【0027】
また、標本Sの走査面のデータを画像化する場合には、画像構成部251にて画像化され、例えば記憶部252に記憶されて、不図示のモニタに表示される。なお、画像構成部251は、制御部250に内蔵されてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、以下の条件式を満足することが望ましい。
Zs×tan(θ+α)>Xr+d (1)
ここで、
図3に示すように、
NAは、対物レンズ103(高倍率用)の開口数、
φ(mm)は、実視野(Xrの2倍)、
Xr(mm)は、観察を行う最大領域の半径、
WD(mm)は、対物レンズ103の作動距離、
Zs(mm)は、ファイバーセンサ201の先端部と、対物レンズ103の集光位置との距離、
θ(度)は、ファイバーセンサ201の先端部に入射可能な光束の角度範囲、
d(mm)は、対物レンズ103の光軸AXobと、ファイバーセンサ201との光軸AXobに垂直な観察面内(xy面内)の距離、
α(度)は、ファイバーセンサ201の中心軸AXfbと、対物レンズ103の光軸AXobとのなす角度、
である。
【0029】
本実施形態は、条件式(1)を満足する構成とすることで、検出感度の高い領域を確保することができる。
【0030】
以下に本実施形態における条件式(1)の対応値を示す。
NA 0.75
φ(mm) 1
WD(mm) 11
Zs(mm) 10
θ(度) 45
d(mm) 15
α(度) 30
Xr(mm) 0.5
Zs×tan(θ+α) 37.32
Xr+d 15.5
【0031】
また、対物レンズ103の集光位置とファイバーセンサ201との対物レンズの光軸に沿った方向の距離Zsは、対物レンズ103の先端部から集光位置までの距離、即ち作動距離WDより短いことが望ましい。
【0032】
本実施形態では、上述したように、Zs=10、WD=11である。このように、十分な作動距離を確保できる。
【0033】
図4(a)は、音響検波出部202の構成を示している。レーザダイオード203は、波長λ=1000nmの光を射出する。レーザダイオード203からの光は、光サーキュレータ204のポートPAから入射し、直進、透過して、ポートPBから射出する。ポートPBから射出する光は、ファイバーセンサ201の一方の端子に入力する。
【0034】
図4(b)は、ファイバーセンサ201の端部の構成を示している。ファイバーセンサ201の端部には、薄膜201aが形成されている。薄膜201aは、参照用の光音響波のための参照面201bと、標本側の物体側面201cとを有する。
【0035】
図4(a)に戻って説明を続ける。
光サーキュレータ204のポートPBから射出した光束のうち、上述したように標本Sに照射され、再度戻ってきた光音響信号Lrを考える。光音響信号Lrは、光サーキュレータ204のポートPBに入射する。ポートPBへ入射した光音響信号Lrは、今度は、ポートPCから射出する。
【0036】
シリコン・フォトディテクタ217は、ポートPCからの光を受光する。シリコン・フォトディテクタ217では、2つの光束が干渉した強度信号が得られる。
【0037】
図4(b)を用いて説明したように、ファイバーセンサ201の標本S側の端部には、薄膜201aが形成されている。ファイバーセンサ201の先端は水Wに浸されている。薄膜201aの参照面201bにおいて反射した光束は、参照光として光サーキュレータ204側へ戻る。
【0038】
標本Sからの光音響信号Lrがファイバーセンサ201の先端に到達すると、薄膜201aの膜厚が変化する。薄膜201bで反射した光束と、薄膜201cで反射した光束と、同じ経路を戻り、光サーキュレータ204に到達する。
従って、干渉により光の強度が変化し、音響信号が光の強度信号として獲得される。
【0039】
光サーキュレータ204のポートPBから入射した音響強度信号(光束)は、その後、シリコン・フォトディテクタ217に入射する。画像構成部251は、干渉による光の強度情報に基づいて、画像を構成する。画像構成手順は、後述する。
【0040】
図4(c)は、ファイバーセンサ201に関する角度と感度との関係を示している。角度とは、ファイバーセンサ201の指向性の中心軸AXfb(例えば、
図2(a)、
図2(b)参照)軸上に沿って入射する光束を0度としている。また、感度は、最大感度を1として正規化して示している。
【0041】
例えば、中心軸AXfbに対して、45度方向から入射する光音響信号を検出する感度は、中心軸AXfbの軸上から入射する信号を検出する感度(信号強度=1)に対して、ほぼ1/2(信号強度=0.5)である。
【0042】
図5(a)は、光音響波検出部202によって得られた光音響波信号を示している。
図5(a)の横軸は時間T、縦軸は信号強度Iを示している。このように、光音響波信号は、時系列信号となる。
【0043】
信号の振幅の最大値Amaxを集光点からの光音響波信号の大きさとする。また、対物レンズ103の集光点の位置情報は、ガルバノミラー102の振れ角より得られる。
【0044】
このため、画像構成部251は、位置情報と音響信号の大きさより、
図5(b)に示すような2次元のマッピングを行うことができる。
図5(b)は、標本S内部の特定の強度情報を走査のxy位置に応じてマッピングを行い、画像化した結果を示している。
さらに、対物レンズ駆動部104(
図1)により、対物レンズ駆動部104(
図1)は、対物レンズ103を光軸AXobに沿ったz方向へ移動させる。この結果、
図5(c)に示すように、標本Sの深さz方向の情報を獲得できる。
【0045】
画像構成部251は、対物レンズ103を深さz方向の情報に基づいて、演算する。そして、標本Sの内部において、上述の光音響波検出を行う。
【0046】
図5(d)に示すような、対物レンズ103の位置を変化させて、再度画像を取得する。これにより、z方向の画像を複数得ることができる。これにより、標本Sの3次元の光音響波画像が構成される。
【0047】
なお、上述したように、ファイバーセンサ201が、光音響波信号を検出、取得できる指向性の範囲は、もっとも感度がよい状態(
図4(c)の角度0度)に対して、50%の感度の位置(
図4(c)の角度45度)までを検出可能な範囲とする。
【0048】
以上のように、本実施形態では、従来のプリズムや音響レンズが不要である。これにより、標本Sまでの距離(WD)を大きくとれるので、より明るく、また標本Sのより深部を観察できる。
【0049】
また、励起光L上に音響レンズが不要なので、対物レンズ103の光学性能(開口数)を満足する観察が可能である。さらに、指向性の広いファイバーセンサ201により、標本Sを観察可能な範囲を広げることができる。
【0050】
さらに、
図12の従来技術の構成では、標本Sからの光音響波Uが超音波トランスデューサ20に常に垂直に入射するように、振動ミラー13による走査に代えて、対物レンズ14を含む励起光Lの入射系及び音響レンズ19を含む光音響波Uの検出系と、標本Sを載置する標本ステージとを相対的に移動させることが想定される。しかし、この場合は、走査に時間がかかることになる。
【0051】
これに対して、本実施形態では、走査する際に、対物レンズや標本ステージの移動は不要である。このため、高速な走査が可能になるという効果を奏する。
【0052】
(第1実施形態の変形例)
図6は、第1実施形態の変形例に係る光音響顕微鏡装置の構成を示している。本変形例では、
図6に示すように、対物レンズ103の焦点(集光スポット)位置P0とは、異なる位置からの光音響波信号を検出する構成である。なお、制御部と記憶部との図示は省略する。
【0053】
本変形例では、このための、別途新たなファイバーセンサ201’と光音響検波出部202bを有している。
図7(a)は、ファイバーセンサ201により検出された光音響波信号を示している。
【0054】
例えば、ファイバーセンサ201のみで検出された標本Sからの光音響波信号は、ファイバーセンサ201先端の薄膜が、水Wの変位を観察するので、標本Sからの光音響波Lrだけでなく、空気の乱れや、標本Sの動きなどによる外部の振動も影響する。
【0055】
図7(b)は、ファイバーセンサ201’により検出された光音響波信号を示している。ファイバーセンサ201’は、標本S以外の領域からの信号である。
【0056】
このため、
図7(a)に示す光音響波信号の強度分布と、
図7(b)に示す光音響波信号の強度分布との差分をとる。この結果を、
図7(c)に示す。本変形例では、標本Sからの信号のみを検出することが可能となる。したがって、外的要因のノイズを除くこと、即ち外部環境の影響が低減された、精度の高い検出が可能となる。
【0057】
好ましくは、ファイバーセンサ201’は、標本S以外からの音響信号を獲得する必要がある。このため、指向性の最も高い方向が標本Sとは反対の方向を向くように配置されていることが望ましい。
【0058】
(第2実施形態)
次に、
図8(a)を用いて、第2実施形態の光音響顕微鏡装置200について説明する。
なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、制御部と記憶部との図示は省略する。
【0059】
光音響検波出部202のファイバーセンサ(センサ部)は、複数の、例えば3つのセンサ群301a、301b、301cを有し、
複数のセンサ群301a、301b、301cは、走査部であるガルバノミラー102により走査可能な標本Sの範囲からの光音響波Lrを、所望の範囲から全ての範囲までのうちの任意の範囲を入射できることが望ましい。
これにより、標本の範囲からの光音響波を、所望の範囲から全ての範囲までのうちの任意の範囲を広範囲に観察することが可能となる。
【0060】
さらに、画像構成部251は、複数のセンサ群301a、301b、301cからの情報(光音響波信号)に基づいて、標本Sにおける信号発生源の位置を検出できることが望ましい。
これにより、従来に比較して、複数の情報(光音響波信号)に基づいて、より精度良く信号発生源の位置を検出できる。
【0061】
また、本実施形態では、対物レンズ103の周辺部に、センサ部を構成するセンサ群301a、301b、301dを保持するための検出器保持部302をさらに有することが望ましい。
図8(b)は、検出器保持部302を対物レンズ103の光軸方向から見た構成を示している。
【0062】
これにより、簡易な構成で、センサ群を配置する自由度が向上する。この結果、作動距離を広げ、かつ、xy面内の観察領域も広げることができる。
【0063】
本実施形態では、光音響信号を検出するための3つのファイバーセンサ301a、301b、301cが、円筒形の検出器保持部302において120度ごとの位置に離散的に設けられている。
【0064】
これにより、1つのファイバーセンサでは、走査によって観察する範囲を十分に網羅できない場合であっても、複数のファイバーセンサからの情報を組み合わせて、光音響波信号の画像を生成できる。
【0065】
画像構成部251には、ガルバノミラー102による対物レンズ103の集光位置の情報と、対応するいずれかのファイバーセンサ301a、301b、301cから検出された情報を元に画像を構成する。
また、3つのファイバーセンサの中で、ファイバーセンサの検出範囲が、光音響波信号の範囲外となる場合には、そのファイバーセンサを上述の変形例で述べたようなノイズ除去を行うセンサとして用いることができる。
【0066】
以下に本実施形態における条件式(1)の対応値を示す。
NA 0.15
φ(mm) 5
WD(mm) 20
Zs(mm) 18
θ(度) 30
d(mm) 15
α(度) 0
Xr(mm) 2.5
Zs×tan(θ+α) 10.39
Xr+d 17.5
【0067】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る光音響顕微鏡装置300を説明する。
図9(a)は、本実施形態の構成を示している。なお、第1実施形態、第2実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、制御部と記憶部と図示は省略する。
【0068】
本実施形態は、第2実施例と比較して、複数のファイバーセンサ群401a、401b、401cのうちの、1つのファイバーセンサでも走査によって観察可能な領域からの信号を検出できるように構成されている。
【0069】
具体的には、例えば、3つのファイバーセンサ群401a、401b、401cを用いる。
図9(b)は、検出器保持部302を対物レンズ103の光軸方向から見た構成を示している。
ファイバーセンサ群401a、401b、401cからの複数の信号を基に、より精度を高く、対物レンズ103の集光スポットの位置情報、及び光音響波信号を検出できるように構成されている。
【0070】
さらに、本実施形態では、また、光音響検出部202は、
図10(a)、(b)に示すヘテロダイン干渉法により、ファイバーセンサ201の薄膜201aの変化量を観察する。
【0071】
図10(a)は、光音響検出部202の概略を示す。ヘテロダイン法では、レーザダイオード211からの光(例えば、λ=1000nm)を特定の周波数で変調する必要がある。
【0072】
ビームスプリッタ212は、レーザダイオード211からの光を、透過する物体光と、反射する参照光とに分割する。そして、参照用周波数シフタ215と観察用周波数シフタ216を用いる。
【0073】
また、ビームスプリッタ212を透過した光束は、観察用周波数シフタ213と、光サーキュレータ214を透過する。そして、ファイバーセンサ201に入射する。
【0074】
図10(b)に示すように、ファイバーセンサ201は、標本S側に、薄膜201aが形成されている。ここで、標本S側の面201cの反射率は、標本Sと反対側の面201bの反射率より大きい。
【0075】
この結果、標本S側からの光が反射し、ファイバーセンサ201を通過する。そして、光サーキュレータ214によって、標本Sからの光音響波信号は、シリコン・フォトディテクタ217に入射する。
【0076】
一方、参照用周波数シフタ215を通過した光束は、ファイバーの往復の光路長と略同じ長さの光路長の参照用光路を経て、シリコン・フォトディテクタ217に入射する。シリコン・フォトディテク217で検出される光量は、参照用と観察用との2つの光の周波数に対応した共鳴の信号となる。
【0077】
画像構成部251は、この共鳴信号を分析する。これにより、より高い精度でファイバーセンサ201の端部の膜厚の変化を検出できる。この結果、標本Sからの光音響波信号を高精度に検出できる。
【0078】
次に、本実施形態において、標本Sの深さz方向の集光位置を測定する原理を説明する。
図11(a)は、検出器保持部402を対物レンズ103の光軸方向から見た構成を示している。例えば、3つのファイバーセンサ群401a、401b、401cを用いる。
図11(a)のX印SPは、標本Sの表面からある程度の深さに位置する対物レンズ102の集光位置を示している。
【0079】
本実施形態では、3つのファイバーセンサ群401a、401b、401cの中心軸と、対物レンズ103の光軸AXobとは、所定の角度をなしている。ガルバノミラー102に振られる対物レンズ103の集光位置の座標(x、y、)と、光音響波信号が標本S内の観察対象物までに到達するまでの時間により、それぞれのファイバーセンサ位置に対する観察対象物までの深さz方向(音源位置)を演算できる。
【0080】
これにより、本実施形態では、3つのファイバーセンサ群401a、401b、401cから得られる音源の深さz位置に基づいて、高精度に観察対象物の深さzの位置をえることができる。
【0081】
図11(b)は、ファイバーセンサ401aが検出した光音響波信号を示している。
図11(c)は、ファイバーセンサ401bが検出した光音響波信号を示している。
図11(d)は、ファイバーセンサ401cが検出した光音響波信号を示している。
【0082】
以下に本実施形態における条件式(1)の対応値を示す。
NA 0.5
φ(mm) 2
WD(mm) 15
Zs(mm) 12
θ(度) 30
d(mm) 12
α(度) 25
Xr(mm) 1
Zs×tan(θ+α) 17.14
Xr+d 13
【0083】
なお、パルス光源101においては、例えば、標本Sが生体で、生体内の血管をイメージングする場合、ヘモグロビンの吸収波長の励起光Lを射出する。なお、観察対象は血管に限定するものではなく、メラニン等の内因性物質のイメージングに適用することが可能である。この際、励起光Lは対象となる物質の吸収波長域の光を用いればよい。
【0084】
また、蛍光体や金属ナノ粒子等の外因性物質のイメージングに適用することも可能である。この際、励起光Lは、蛍光体の場合には対象となる蛍光体の吸収波長域の光を、金属ナノ粒子の場合には対象となる金属ナノ粒子の共鳴波長域の光をそれぞれ用いればよい。
【0085】
また、標本S内に複数の吸収体が存在する場合には、観察対象物の特徴的な吸収スペクトルのピークの波長の光を用いるのが望ましい。パルス光源101は、制御部250によりパルス光の発光タイミングが制御される。
【0086】
ここで、対物レンズ103は、焦点距離の異なるものが適宜選択されて装着される。
【0087】
以上、説明したように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形例をとることができる。例えば、上述の各実施形態では、励起光を振るためにガルバノミラーを用いている。しかしながら、ビームを偏向できる構成であれば良く、これに限られるものではない。