特許第6358752号(P6358752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358752
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20180709BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B13/18
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-255116(P2015-255116)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-116875(P2017-116875A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年2月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯座 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 健一
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−021151(JP,A)
【文献】 特開2013−092584(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111612(WO,A1)
【文献】 特開2009−265245(JP,A)
【文献】 特開2014−153574(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0124149(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に向かって順に、光軸近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカス形状の第1レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けた負の屈折力を有する第2レンズと、像側に凸面を向けた正の屈折力を有する両面が非球面の第3レンズと、光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する両面が非球面の第4レンズとから成り、以下の条件式(1)、(7)、(10)、(11a)、および(13)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(1)0.85<ih/f<1.0
(7)0.14<|r1/r2|<0.7
(10)−0.9<f4/f<−0.6
(11a)−1.5<r5/f<−0.6
(13)9.0<(T1/f)*100<16.0
ただし、fは撮像レンズ全系の焦点距離、ihは最大像高、r1は第1レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r2は第1レンズの像側の面の近軸曲率半径、f4は第4レンズの焦点距離、r5は第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径、T1は第1レンズの像側の面から第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離である。
【請求項2】
以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(2)Fno≦2.4
ただし、FnoはFナンバーである。
【請求項3】
以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
(3)0.1<|r3/r4|<0.6
ただし、r3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r4は第2レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【請求項4】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項3に記載の撮像レンズ。
(4)1.2<(r7+r8)/(r7−r8)<2.5
ただし、r7は第4レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r8は第4レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【請求項5】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項4に記載の撮像レンズ。
(5)0.15<|Sag4/D2|<0.4
ただし、Sag4は第2レンズの側の面の最大有効径におけるSag量、D2は第2レンズの光軸上の厚みである。
【請求項6】
以下の条件式(6)を満足することを特徴とする請求項4に記載の撮像レンズ。
(6)0.02<|Sag5/D3|<0.13
ただし、Sag5は第3レンズの物体側の面の最大有効径におけるSag量、D3は第3レンズの光軸上の厚みである。
【請求項7】
以下の条件式(8)を満足することを特徴とする請求項3に記載の撮像レンズ。
(8)−7.5<f2/f<−2.0
ただし、f2は第2レンズの焦点距離である。
【請求項8】
以下の条件式(9)を満足することを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
(9)0.3<f3/f<1.2
ただし、f3は第3レンズの焦点距離である。
【請求項9】
前記第1レンズ、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズのうち、前記第3レンズの屈折力が最も強いことを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
以下の条件式(12)を満足することを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
(12)0.035<T3/D3<0.2
ただし、T3は第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離、D3は第3レンズの光軸上の厚みである。
【請求項11】
以下の条件式(14)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(14)0.55<TTL/2ih<0.85
ただし、TTLは光学全長である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の撮像装置に使用されるCCDセンサやC-MOSセンサの固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズに関し、特に、小型化、薄型化が進む携帯電話機やスマートフォンなどの携帯端末、及びPDA(Personal Digital Assistant)、さらには、ゲーム機やPC等の情報端末に搭載される撮像装置に内蔵される撮像レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置を備えた携帯端末機器の市場は益々拡大する状況にある。いまやほとんどの携帯端末機器にカメラ機能が付加され、そのカメラ性能は高性能化が進んでいる。また、スマートフォンに代表されるように、製品のデザインは薄型化されたものが多く、当然内蔵する撮像装置も小型化、薄型化への要求が厳しい。また、イン・カメラや、サブ・カメラと呼ばれる自分撮り用のカメラに搭載される撮像レンズは、従来1メガピクセル程度の画素数に対応したものが一般的だったが、近年では5メガピクセルを超える撮像素子に対応することが主流になりつつある。撮像素子は、小型化を維持しながら高画素化へと開発が進んでいるため、画素ピッチは非常に微細化され、高密度化されている。このような撮像素子に対応する撮像レンズには、明るいレンズ系であり、高解像度であり、小型、薄型なものが求められる。また、自分撮り用のカメラには、自分を含む広範囲な被写体を撮影したいという一般ユーザーからの要求も強い。
【0003】
撮像レンズは、サイズ、性能、F値、画角等々、その使用目的や要求性能に応じて様々な態様が提案されてきた。なかでも4枚構成の撮像レンズは、比較的小型化が可能で、収差も比較的良好に補正が可能なため、多くの提案がなされてきた。しかし上述したような小型、高画素の撮像素子に対応した、低背で明るく広画角な光学系を得るには、特に周辺部の収差補正が困難であり、画面全体にわたって良好な画質を得ることには課題があった。
【0004】
例えば、特許文献1には、物体側から順に、開口絞りと、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有し像側に凹面を向けた第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有し像側に凹面を向けた第4レンズとの構成を採り、全系の焦点距離に対する第2レンズの像側の面の曲率半径の値を適切な範囲に設定することによって、高性能化を目指した撮像レンズが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、物体側から順に、開口絞りと、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力の第2レンズと、正の屈折力の第3レンズと、少なくとも1面が非球面形状を有し、負の屈折力を有する物体側に凹を向けた第4レンズとの構成を採り、第1レンズのパワー、及び第4レンズの物体側の面と像側の面との曲率半径の関係を適切な範囲に設定することで、高性能化を目指した撮像レンズが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、物体側から順に、開口絞りと、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力の第2レンズと、正の屈折力の第3レンズと、少なくとも1面が非球面であって負の屈折力を有する両凹形状の第4レンズとの構成を採り、全系の焦点距離と第1レンズ、及び第3レンズの焦点距離の比を適切な範囲に設定することで、高性能化を目指した撮像レンズが開示されている。
【0007】
また、特許文献4には、物体側より順に、絞りと、両凸形状で正のパワーを有する第1レンズと、物体側に凸面を向けた負のパワーを有するメニスカス形状の第2レンズと、像側に凸面を向けた正のパワーを有するメニスカス形状の第3レンズと、物体側に凸面を向けた負のパワーを有するメニスカス形状の第4レンズとを配置し、第1レンズの中心厚と第1レンズの焦点距離との関係、及び、第2レンズと第3レンズのアッベ数を適切な範囲にすることで、高性能化を目指した撮像レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−286153号公報
【特許文献2】特開2008−046526号公報
【特許文献3】特開2008−242180号公報
【特許文献4】特開2009−014899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載の撮像レンズは、光学全長と撮像素子の有効撮像面の対角線の長さとの比は1.0前後であり、比較的小型化が実現されている。しかし、半画角は30°〜31°であり、広画角化の要求には不十分である。また、F値は2.9〜3.3であり、高画素化が進む撮像素子に十分対応する明るさを確保しているとは言えない。また、特許文献4に記載の撮像レンズも比較的小型化を実現しているが、F値が3.2であり、十分な明るさを達成しているとは言えない。このように、これらの従来技術では小型化、広画角化、小さなF値の要求に対して同時に応えることは困難であった。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、小型、薄型で、F値が小さく、諸収差が良好に補正された広画角の撮影を可能とする撮像レンズの提供を目的とする。
【0011】
なお、ここでいう低背とは、光学全長が4mm以下で、かつ光学全長と撮像素子の有効撮像面の対角線の長さとの比(全長対角比)が1.0よりも十分小さいレベル(光学全長のほうが短い)を、低F値とはF2.4以下の明るさをそれぞれ指している。また、広角とは、全画角で80°を超えるレベルを指している。なお、上記撮像素子の有効撮像面の対角線の長さは、撮像レンズに最大画角から入射した光線が撮像面に結像する位置の光軸から垂直な高さ、すなわち最大像高の2倍の長さと同じパラメータとして扱う。
【0012】
また、本発明において使用する用語に関し、レンズの面の凸面、凹面とは光軸近傍における形状を指すものと定義し、極点とは接平面が光軸と垂直に交わる光軸上以外における非球面上の点として定義する。さらに、光学全長やバックフォーカスは、IRカットフィルタやカバーガラス等の光の収束・発散作用に寄与しない光学素子の厚みを空気換算したときの光軸上の値として定義する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正の屈折力を有する第1レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第2レンズと、正の屈折力を有する両面が非球面の第3レンズと、光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する両面が非球面の第4レンズとから構成されており、以下の条件式(1)、(7)、(10)、(11a)、および(13)を満足する。
(1)0.85<ih/f<1.0
(7)0.14<|r1/r2|<0.7
(10)−0.9<f4/f<−0.6
(11a)−1.5<r5/f<−0.6
(13)9.0<(T1/f)*100<16.0
ただし、fは撮像レンズ全系の焦点距離、ihは最大像高、r1は第1レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r2は第1レンズの像側の面の近軸曲率半径、f4は第4レンズの焦点距離、r5は第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径、T1は第1レンズの像側の面から第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離である。

【0014】
上記構成の撮像レンズは、正の屈折力を有する第1レンズ、及び第3レンズによって光学全長を短く抑える構成になっている。負の屈折力を有する第2レンズは第1レンズで発生した色収差を補正するとともに、物体側に凹面を形成することで広い画角への対応を可能にしている。第3レンズ、及び第4レンズは両面に適切な非球面を形成することで軸外の非点収差の補正、及び非点隔差の縮小と歪曲収差の補正、撮像素子への主光線入射角度の制御を容易にする。
【0015】
条件式(1)は広い撮影画角を可能にするための条件であり、条件式(1)の範囲を満たすことは、全画角で80°〜90°の撮影を可能にすることを意味する。条件式(1)の上限値を上回ると、周辺部における諸収差の補正に限界が生じるため好ましくない。一方、条件式(1)の下限値を下回ると、諸収差の補正には有利になるが、広画角化が望めない。
【0016】
また、上記構成の撮像レンズは、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2)Fno≦2.4
ただし、FnoはFナンバーである。
【0017】
条件式(2)は撮像レンズのFナンバーを規定するものである。条件式(2)を満たすことで、近年の小型で高密度化された撮像素子に適した明るいレンズ系が得られる。
【0018】
また、上記構成の撮像レンズは、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)0.1<|r3/r4|<0.6
ただし、r3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r4は第2レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【0019】
条件式(3)は、第2レンズの光軸近傍における形状を規定するものである。条件式(3)の上限値を上回ると、第2レンズの屈折力が弱まるため、球面収差、及び色収差の補正が不十分になる。一方、条件式(3)の下限値を下回ると、第2レンズの屈折力が強まるため、球面収差、及び色収差の補正が過剰になり、全体の収差バランスが崩れてしまう。
【0020】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第4レンズは光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状であることが望ましく、また、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)1.2<(r7+r8)/(r7−r8)<2.5
ただし、r7は第4レンズの物体側の面の近軸曲率半径、r8は第4レンズの像側の面の近軸曲率半径である。
【0021】
条件式(4)は第4レンズの光軸近傍における形状を適切な範囲に規定するものである。条件式(4)の範囲を満たすことで適切なバックフォーカスを確保しながら、低背化を可能にする。
【0022】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5) 0.15<|Sag4/D2|<0.4
ただし、Sag4は第2レンズの像側の面の最大有効径におけるSag量、D2は第2レンズの光軸上の厚みである。
【0023】
条件式(5)は第2レンズの光軸上の厚みに対する、第2レンズの像側の面の形状を適切なものに規定するものである。条件式(5)の範囲に規定することで、第2レンズの像側の面はSag量の変化が小さな非球面形状に形成される。従って、第3レンズとの空気間隔を光軸近傍から周辺部にわたって適切なものとし、低背化を容易にする。なお、第2レンズの像側の面の最大有効径とは、最大画角から入射する光線の上光線が第2レンズの像側の面を通過する位置の径として定義する。
【0024】
また、本発明の撮像レンズにおいて、第3レンズは、光軸近傍で凹面を向けたメニスカス形状であり、物体側の面の非球面形状に関して、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6) 0.02<|Sag5/D3|<0.13
ただし、Sag5は第3レンズの物体側の面の最大有効径におけるSag量、D3は第3レンズの光軸上の厚みである。
【0025】
条件式(6)は第3レンズの光軸上の厚みに対する、第3レンズの物体側の面の形状を適切なものに規定するものである。条件式(6)の範囲に規定することで、第3レンズの物体側の面はSag量の変化が小さな非球面形状に形成される。従って、第2レンズとの空気間隔を光軸近傍から周辺部にわたって適切なものとし、低背化を容易にする。なお、第3レンズの物体側の面の最大有効径とは、最大画角から入射する光線の上光線が第3レンズの物体側の面を通過する位置の径として定義する。
【0026】
なお、条件式(5)と条件式(6)を同時に満足することが望ましい。
【0028】
条件式(7)は第1レンズの光軸近傍の形状を適切な範囲に規定するものである。条件式(7)の範囲内に規定することで低背を維持し、第1レンズにおける球面収差の発生を抑制する。
【0029】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)−7.5<f2/f<−2.0
ただし、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0030】
条件式(8)は全系の焦点距離に対する第2レンズの焦点距離を適切な範囲に規定するものである。第2レンズは4枚で構成されるレンズのうち、最も屈折力の弱い負のレンズとして配置されているが、条件式(8)の範囲を満足することで、色収差、及び球面収差の過剰な補正や製造時の誤差に対する感度を抑え、かつ色収差補正が不十分になることを抑制する。
【0031】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)0.3<f3/f<1.2
ただし、f3は第3レンズの焦点距離である。
【0032】
条件式(9)は全系の焦点距離に対する第3レンズの焦点距離を適切な範囲に規定するものである。条件式(9)の範囲を満足することで、低背、広画角を維持しつつ、全体の収差バランスの制御が容易になる。
【0033】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)−0.9<f4/f<−0.
ただし、f4は第4レンズの焦点距離である。
【0034】
条件式(10)は全系の焦点距離に対する第4レンズの焦点距離を適切な範囲に規定するものである。条件式(10)の範囲を満足することで、低背化を維持しつつ、適切なバックフォーカスを確保することが可能になる。
【0035】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(11)を満足することが望ましい。
(11)−1.5<r5/f<−0.5
ただし、r5は第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径である。
【0036】
条件式(11)は第3レンズの物体側の面の近軸曲率半径を適切な範囲に規定するものである。条件式(11)の範囲を満足することで、低背化を維持しつつ、コマ収差、非点収差、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0037】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(12)を満足することが望ましい。
(12)0.035<T3/D3<0.2
ただし、T3は第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離、D3は第3レンズの光軸上の厚みである。
【0038】
条件式(12)は、第3レンズの光軸上の厚みと第3レンズ、及び第4レンズの光軸上の間隔を適切な範囲に規定するものである。条件式(12)の範囲を満足することで、低背化を維持しつつ、非点収差、非点隔差、及び歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0039】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
(13)9.0<(T1/f)*100<16.0
ただし、T1は第1レンズの像側の面から第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離である。
【0040】
条件式(13)は、第1レンズの像側の面から第2レンズの物体側の面までの光軸上の距離を適切な範囲に規定するものである。条件式(13)の範囲は諸収差を良好に補正しつつ、広い画角の撮影を可能にするための条件である。条件式(13)の上限値を上回ると、第1レンズと第2レンズが離れすぎて、収差補正には有利になるが、広画角化、及び低背化が困難になる。一方、条件式(13)の下限値を下回ると、広画角化、及び低背化には有利になるが、特に周辺部における収差補正が困難になる。
【0041】
また、本発明の撮像レンズは、以下の条件式(14)を満足することが望ましい。
(14)0.55<TTL/2ih<0.85
ただし、TTLは光学全長である。
【0042】
条件式(14)は、撮像レンズの低背化に対する条件である。条件式(14)の範囲は、撮像素子の有効撮像面の対角線の長さに対して、撮像レンズの光学全長が十分に短いものであることを示している。条件式(14)を満足することで、近年要求される十分に低背化された撮像レンズを得ることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明により、諸収差が良好に補正され、小型化、薄型化に対応した広画角で明るい撮像レンズを得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施例1の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図2】実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図3】実施例2の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図4】実施例2の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図5】実施例3の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図6】実施例3の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図7】実施例4の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図8】実施例4の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図9】第2レンズの像側の面の最大有効径におけるSag量、及び第3レンズの物体側の面の最大有効径におけるSag量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1図3図5、及び図7はそれぞれ、本実施形態の数値実施例1〜4に係る撮像レンズの概略構成図を示している。いずれも基本的なレンズ構成は同様のため、ここでは実施例1の概略構成図を参照しながら、本実施形態の撮像レンズ構成について説明する。
【0046】
図1に示すように、本実施形態の撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する両面が非球面の第1レンズL1と、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第2レンズL2と、正の屈折力を有する両面が非球面の第3レンズL3と、光軸Xの近傍で像側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第4レンズL4とから構成されている。第4レンズL4と像面IMGとの間には、IRカットフィルタ等のフィルタIRが配置されている。なお、フィルタIRは省略することが可能である。また、開口絞りSTは低背化に有利なように、最も物体側に配置されている。
【0047】
本実施形態の撮像レンズは、正の屈折力を有する第1レンズL1、及び第3レンズL3によって光学全長TTLを短く抑える構成になっている。負の屈折力を有する第2レンズL2は第1レンズL1で発生した色収差を補正するとともに、物体側に凹面を形成することで広い画角への対応を可能にしている。第3レンズL3、及び第4レンズL4は両面に適切な非球面を形成することで軸外の非点収差の補正、及び非点隔差の縮小と歪曲収差の補正、撮像素子への主光線入射角度を制御している。
【0048】
第1レンズL1は、光軸Xの近傍で物体側に凸面を向け、像側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズであり、物体側の面、及び像側の面の近軸曲率半径は、最適な関係になるように設定されている。また、第1レンズL1の屈折力は、第3レンズL3よりも弱い屈折力になっている。
【0049】
第2レンズL2は、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向け、像側に凸面を向けたメニスカス形状のレンズであり、物体側を凹面とすることで広い画角からの光線を取り込めるようになっている。また、第2レンズL2の像側の面は、光軸Xの近傍から最大有効径部にわたってSagの変化が小さな非球面に形成されているため、低背化に有利な形状になっている。なお、第2レンズL2は光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けた負の屈折力を有するレンズであればよく、図5に示す実施例3のように光軸Xの近傍で像側に凹面を向けた両凹レンズであってもよい。
【0050】
第3レンズL3は、光軸Xの近傍で像側に凸面を向け、物体側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズである。第3レンズL3は第1レンズL1よりも強い屈折力を有しており、低背化への寄与が大きなレンズである。第3レンズL3の両面に形成した非球面は、軸外の諸収差を良好に補正する。また、物体側の面は、光軸Xの近傍から最大有効径部にわたってSagの変化が小さな非球面に形成されているため、第2レンズL2との像側の面の形状と併せて低背化に有利な形状になっている。
【0051】
第4レンズL4は光軸Xの近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズである。両面に形成された非球面によって、非点隔差、歪曲収差を良好に補正する。また、第4レンズL4の物体側の面、及び像側の面には、光軸X上以外の位置に極点が形成された非球面形状になっており、像面IMGへ入射する主光線の角度の制御を容易にしている。
【0052】
本実施形態の撮像レンズは、以下の条件式(1)〜(14)を満足することで好ましい効果を奏するものである。
(1)0.85<ih/f<1.0
(2)Fno≦2.4
(3)0.1<|r3/r4|<0.6
(4)1.2<(r7+r8)/(r7−r8)<2.5
(5)0.15<|Sag4/D2|<0.4
(6)0.02<|Sag5/D3|<0.13
(7)0.14<|r1/r2|<0.7
(8)−7.5<f2/f<−2.0
(9)0.3<f3/f<1.2
(10)−0.9<f4/f<−0.
(11)−1.5<r5/f<−0.5
(12)0.035<T3/D3<0.2
(13)9.0<(T1/f)*100<16.0
(14)0.55<TTL/2ih<0.85
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
ih:最大像高
Fno:Fナンバー
r3:第2レンズL2の物体側の面の近軸曲率半径
r4:第2レンズL2の像側の面の近軸曲率半径
r7:第4レンズL4の物体側の面の近軸曲率半径
r8:第4レンズL4の像側の面の近軸曲率半径
Sag4:第2レンズL2の像側の面の最大有効径におけるSag量
D2:第2レンズL2の光軸X上の厚み
Sag5:第3レンズL3の物体側の面の最大有効径におけるSag量
D3:第3レンズL3の光軸X上の厚み
r1:第1レンズL1の物体側の面の近軸曲率半径
r2:第1レンズL1の像側の面の近軸曲率半径
f2:第2レンズL2の焦点距離
f3:第3レンズL3の焦点距離
f4:第4レンズL4の焦点距離
r5:第3レンズL3の物体側の面の近軸曲率半径
T1:第1レンズL1の像側の面から第2レンズL2の物体側の面までの光軸X上の距離
T3:第3レンズL3の像側の面から第4レンズL4の物体側の面までの光軸上の距離
TTL:光学全長
【0053】
また、本実施形態の撮像レンズは、以下の条件式(1a)〜(14a)を満足することで、より好ましい効果を奏するものである。
(1a) 0.85<ih/f<0.95
(2a) Fno≦2.2
(3a) 0.2<|r3/r4|<0.5
(4a) 1.2<(r7+r8)/(r7−r8)<2.0
(5a) 0.15<|Sag4/D2|<0.35
(6a) 0.03<|Sag5/D3|<0.10
(7a) 0.14<|r1/r2|<0.6
(8a) −7.5<f2/f<−3.0
(9a) 0.45<f3/f<1.0
(10a)−0.8<f4/f<−0.55
(11a)−1.5<r5/f<−0.6
(12a)0.04<T3/D3<0.15
(13a)9.0<(T1/f)*100<14.0
(14a)0.6<TTL/2ih<0.8
ただし、それぞれの符号は、前の段落の説明と同様である。
【0054】
また、本実施形態の撮像レンズは、以下の条件式(1b)〜(14b)を満足することで、特に好ましい効果を奏するものである。
(1b) 0.85<ih/f≦0.92
(2b) Fno≦2.1
(3b) 0.22≦|r3/r4|≦0.38
(4b) 1.6≦(r7+r8)/(r7−r8)≦2.0
(5b) 0.20≦|Sag4/D2|≦0.31
(6b) 0.05≦|Sag5/D3|≦0.08
(7b) 0.15<|r1/r2|≦0.37
(8b) −6.16≦f2/f≦−2.97
(9b) 0.56≦f3/f<1.0
(10b)−0.77≦f4/f<−0.6
(11b)−1.45≦r5/f≦−0.77
(12b)0.04<T3/D3<0.1
(13b)9.0<(T1/f)*100≦13.3
(14b)0.65<TTL/2ih<0.8
ただし、それぞれの符号は、前々段落の説明と同様である。
【0055】
本実施形態では、すべてのレンズ面を非球面で形成している。これらのレンズ面に採用する非球面形状は光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16としたとき数式1により表される。
【0056】
【数1】
【0057】
次に、本実施形態に係る撮像レンズの数値実施例を示す。各数値実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高を、それぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)に対する屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【0058】
数値実施例1
【0059】
【表1】
【0060】
実施例1の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)〜(14)の全てを満たしている。
【0061】
図2は数値実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示し、非点収差図、及び歪曲収差図は、d線における収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している。図2に示すように、各収差は良好に補正されている事が分かる。
【0062】
また、光学全長TTLは3.3mm未満、全長対角比は0.7であり、小型、低背でありながら、F2.1の明るさと全画角2ωで80°以上の撮影を実現する。
【0063】
数値実施例2
【0064】
【表2】
【0065】
実施例2の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)〜(14)の全てを満たしている。
【0066】
図4は数値実施例2の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示し、非点収差図、及び歪曲収差図は、d線における収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している。図4に示すように、各収差は良好に補正されている事が分かる。
【0067】
また、光学全長TTLは3.3mm未満、全長対角比は0.7であり、小型、低背でありながら、F2.1の明るさと全画角2ωで80°以上の撮影を実現する。
【0068】
数値実施例3
【0069】
【表3】
【0070】
実施例3の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)〜(14)の全てを満たしている。
【0071】
図6は数値実施例3の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示し、非点収差図、及び歪曲収差図は、d線における収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している。図6に示すように、各収差は良好に補正されている事が分かる。
【0072】
また、光学全長TTLは3.3mm未満、全長対角比は0.71であり、小型、低背でありながら、F2.1の明るさと全画角2ωで80°以上の撮影を実現する。
【0073】
数値実施例4
【0074】
【表4】
【0075】
実施例4の撮像レンズは、表5に示すように条件式(1)〜(14)の全てを満たしている。
【0076】
図8は数値実施例4の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示し、非点収差図、及び歪曲収差図は、d線における収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおける収差量をそれぞれ示している。図8に示すように、各収差は良好に補正されている事が分かる。
【0077】
また、光学全長TTLは3.3mm未満、全長対角比は0.71であり、小型、低背でありながら、F2.1の明るさと全画角2ωで80°以上の撮影を実現する。
【0078】
表5に数値実施例1〜4の各パラメータの値と条件式(1)〜(14)の値を示す。
【0079】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0080】
上述したように、各実施の形態に係る撮像レンズを携帯電話機やスマートフォンなどの携帯端末機器、及びPDA(Personal Digital Assistant)、さらには、ゲーム機等に搭載される撮像装置に適用した場合、装置の薄型化に寄与するとともに高性能なカメラを得ることができる。
【符号の説明】
【0081】
ST 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
IR フィルタ
IMG 像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9