特許第6358761号(P6358761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358761
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】セラミック成型品の押出成型機
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/22 20060101AFI20180709BHJP
   B28B 3/20 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   B28B3/22
   B28B3/20 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-153432(P2016-153432)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-20490(P2018-20490A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2017年12月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161220
【氏名又は名称】宮崎鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 幸司
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 哲也
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−1324(JP,A)
【文献】 実開昭58−55909(JP,U)
【文献】 特開2011−131608(JP,A)
【文献】 実公昭49−27425(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持リング3でスクリュー軸2の先端部を支持し軸振れを抑制して、衝突による摩耗損傷からシリンダー内周面とスクリュー羽根2aの先端外周部を保護する支持装置を備えているセラミック成型品の押出成型機において、
上記支持リングの長さがスクリュー羽根の1ピッチよりも長く、
上記支持リング3が高硬度合成樹脂であってその外周に弾性支持層3aがあり、当該弾性支持層が半径方向に予圧縮された状態で上記支持リング3がシリンダー1の支持リング保持部11に装着されており、
スクリュー軸の先端部が支持リングの内周面に1点以上で衝突し、当該衝突による衝撃が上記弾性支持層の弾性によって緩和されるようになっていることを特徴とするセラミック成型品の押出成型機。
【請求項2】
上記支持リングの長さがスクリュー羽根の2ピッチより長く、スクリュー軸の先端部が支持リングに2点以上で衝突してその衝撃が2点以上に分散されるようになっていることを特徴とする請求項1のセラミック成型品の押出成型機。
【請求項3】
上記支持リング3の外周の上記弾性支持層が弾性樹脂スリーブによるものであり、当該弾性支持層が軸方向に圧縮されて半径方向に予圧縮されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のセラミック成型品の押出成型機。
【請求項4】
上記支持リング3の外周に多数の環状溝gを有し、当該環状溝にそれぞれ嵌合された多数のOリングで上記弾性支持層が形成されており、上記Oリングが上記支持リング保持部11の内周面で半径方向に潰されて予圧縮されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のセラミック成型品の押出成型機。
【請求項5】
支持リング3の外周に多数の弾性リングが密接して装着されて上記弾性支持層が形成されており、当該弾性支持層が軸方向に圧縮されて半径方向に予圧縮されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のセラミック成型品の押出成型機。
【請求項6】
支持リング3の上記高硬度合成樹脂がロックウエルM100以上の合成樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2のセラミック成型品の押出成型機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はセラミック成型品の押出成型機、殊にそのスクリュー軸の支持機構に関するものであり、具体的には一端支持されたスクリュー軸の先端部を合成樹脂製の支持リングで支持してその振れを防止する軸振れ防止装置に関するものである。
一端支持されたスクリュー軸の先端部を支持リングによって支持する支持機構について、スクリュー軸の先端部が上記支持リング内周面に衝突するときのその衝撃を緩和して支持リング内周面の摩耗損傷を低減し、これによって支持リングの耐久性を大幅に延長することができるものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック成型品の押出成型機におけるスクリュー軸の軸受け方法に関する技術として次の従来技術1があり、また、一端支持によるスクリュー軸の先端部の振れ止めに関する技術として従来技術2がある。そしてこの従来技術2は一端支持のスクリュー軸の先端部に支持リングを設けたものであってこの出願の発明の前提技術に当るものである。
(1)従来技術1
従来技術1のセラミック成型品の押出成型機(以下、これを単に「セラミック押出成型機」ともいう)には一端を軸受けした一端支持のものと、先端をも軸受けした両端支持のものがある。そして、一端支持によるスクリュー軸についてその支持を安定させるために先端をも軸受けにして両端支持にしたものである。
一端支持のスクリュー軸2は先端がフリーであるからその支持が不安定であるというデメリットがあるが、支持機構が簡単でスクリュー軸の組み付け取り外しが簡単容易であり、セラミック坏土が軸受けによる流動抵抗を受けることがない等のメリットがある(特開2011−131608号公報)。
【0003】
他方、一端支持のスクリュー軸の根元が軸継ぎ手jによって抜き差し自在に駆動軸に連結されているものがある(図1(b)参照)。そしてこのものではその軸継ぎ手jによる連結部にガタがあるので、このガタ分だけスクリュー軸2が自重で傾斜してその先端部が下方に偏心する。
【0004】
ところで、押出成形中はシリンダー1内が高圧であり、この高圧がスクリュー軸2に作用するが、定常運転時は内圧が安定して、これはスクリュー軸2の全周にほぼ均等にかかるので偏荷重としてスクリュー軸に作用することはなく、したがって、定常運転中にスクリュー軸が振れることはないといえる。
しかし、実際にはシリンダー内のセラミック坏土の密度や流れの小さなバラツキがあり、このためにスクリュー軸にかかるラジアル荷重が部分的に不均一であって変動する。このためにスクリュー軸にかかる圧力がその全長・全周において必ずしも均一ではなく、したがって、スクリュー軸2は不規則に振れる。そして、この不規則な振れは先端部において最も著しいが、しかし、このような振れのために定常運転において不都合を生じることはない。
【0005】
また、セラミック押出成型機については、そのスクリュー回転速度が比較的遅く(例えば60rpm以下)、押出成型の精度向上に伴って押出圧力が高圧になっており(200kg/cm)、また、押出圧力を高くするためにスクリュー軸2とシリンダー1の内面とのクリアランスs1(図1−1)が小さくなっている(例えば1mm以下)。
【0006】
そしてまた、シリンダー1の流入口へのセラミック坏土の送り込みを安定させるために送りローラ20があり(図1(b)参照)、当該送りローラ20によってセラミック坏土が安定的に送り込まれ、そして安定的にスクリューに取り込まれるようになっている。
ところで、電源スイッチONで混練装置、脱気装置、送りローラ20、押出スクリュー等が始動し原料が投入されると、セラミック坏土が空気とともにシリンダー1に送り込まれ、そして、空気を巻き込んだ状態でスクリュー軸2に取り込まれる。そしてスクリュー軸2に取り込まれたセラミック坏土は螺旋状の溝にそって旋回しながら前進するが、このセラミック坏土の流れは運転開始直後の段階では不連続で不安定であり、多量の空気を巻き込んでおりその密度、硬さ、流動性に大きなバラツキがある。
このため、運転開始から短時間の間、スクリュー軸の螺旋溝を前進するセラミック坏土の流れが部分的に不均一で、部分的な流動抵抗の不均一がある。そして、運転開始から一定時間後に短い時間だけスクリュー軸の先端が不規則に振れるという現象が見られる。
【0007】
そして、セラミック坏土が硬くて流動性が低いほど上記現象が生じる傾向が強く、そして、シリンダー1にセラミック坏土が満たされてその密度が均一になると、その流れが安定するので上記現象は解消される。
そして、上記軸振れが激しくなるとスクリュー羽根2aの先端部がシリンダー内周面に激しく衝突する。そしてこれが繰り返されるとシリンダー内周面がスクリュー羽根2aで囓られて摩耗損傷するとともにスクリュー羽根2aの外周も摩耗することになる。
【0008】
〔従来技術1とスクリュー軸の振れについて〕
従来技術1の一端支持構造のもの(図1(a)参照)についてそのスクリュー軸先端部の振れをマイクロゲージで測定した。この軸振れ試験の結果が図7に示されている。
この軸振れ試験の対象はシリンダー内径が51mm、スクリュー外径Dが50mmでスクリュー軸の長さLが950mm(D/Lは19.0)、スクリュー羽根の1ピッチが35mmのセラミック押出成型機)である。
使用した原料はコーディライト、その硬度は9.0(日本碍子株式会社製の粘度高度計による)である。
そして、スクリュー軸の回転速度は12rpm、である。スクリュー軸先端部の振れを縦横両方向についてダイヤルゲージで計測した。なお、測定開始時のダイヤルゲージの目盛り設定はゼロである。
【0009】
この図7のグラフにおける横軸は電源ONからの経過時間を表し、縦軸はスクリュー軸の先端の振れの大きさを表している。
そして点線グラフは横方向の振れを示し、実線グラフは縦方向の振れを示している。
運転開始から80秒後にスクリュー軸の先端の振れが激しくなり、160秒後に振れは落ち着いてきたことを示している。そして、この傾向は縦方向振れと横方向振れとで違いはないが、横方向振れよりも縦方向振れの方が激しいことを示している。
スクリュー軸2の先端部が激しく振れるのは運転開始から押し出しが始まるまでの間の短時間(約1分間)であり、通常の押出成形中は激しい振れはないことが示されている。
そしてまた、横方向振れは最大400μm、縦方向振れは最大800μmであって両方の振れの大きさは著しく相違するが、大きい振れの前後では縦方向と横方向とで格別違いはない。
【0010】
以上は、一端支持のスクリュー軸の運転開始直後の短時間に生じる軸振れに関することであるが、他方、両端支持の長尺スクリュー軸(L/Dが大きいスクリュー軸)の場合は軸が撓んで中央部が振れ、シリンダー内面と干渉するようになるので、中間部に軸受けを設けこれでスクリュー羽根の外周を支承させることによって軸振れを防止することが周知である(実公昭49−27425号公報)。
【0011】
(2)従来技術2
また、一端支持されたスクリュー軸についてその先端部に支持リング3を設けてスクリュー軸2のスクリュー羽根2aの外周を支持させて軸振れを制止するものがある(従来技術2、図1(b)参照)。このもののシリンダー、スクリュー軸、支持リングの関係、スクリュー軸2とシリンダー1とのクリアランスs、スクリュー軸2と支持リング3とのクリアランスs図1−1の如くである。
【0012】
そして、クリアランスsはクリアランスsより大きく、スクリュー軸2が軸継ぎ手jのガタ分だけ下がって先端部が偏心(偏心量e)したとき、クリアランスs,sは下方で小さく上方で大きい。
支持リング3の内径Dはシリンダー1の内径Dよりも小さいので、先端部が振れるとスクリュー軸2の先端部(スクリュー羽根2aの先端部)が上記支持リング3の内周面に衝突して支持され、このことによってスクリュー軸2のスクリュー羽根2aが振れてシリンダー1の内周面に衝突することが回避される。
【0013】
さらにいえば、支持リング3の内周面にスクリュー軸2の先端部(スクリュー羽根2aの先端部)が衝突することにより、シリンダー1の内周面とスクリュー軸2の先端部が衝突して摩耗損傷することを防止するのであるから、支持リング3は一種の摩耗材であるといえる。
【0014】
ところで、軸が振れてもスクリュー軸2の先端部が支持リング3に衝突して支持されればその中央部がシリンダー内周面(以下、「内面」ということもある)と干渉することはないので、スクリュー軸2の先端部に支持リング3が設けられている場合が多い。そしてこの場合は、支持リング3の内周面にスクリュー羽根2aの先部(軸方向端部)が衝突することのないように、支持リング3の先端をスクリュー羽根2aの先端からほぼ1ピッチ相当分だけ後退させている(図1(b)における後退量fを参照)。
【0015】
〔従来技術2とスクリュー軸の振れ止め〕
図8は、一端支持のスクリュー軸の先端部に支持リングを備えている従来技術2(図1(b))の軸振れについての試験(軸振れ試験)の結果である。
この試験2の対象は上記の従来技術1についての試験1の対象に支持リングを装着したのと同じである。
支持リングの内径は50.5mmであり、その内周面とスクリュー軸とのクリアランスは平均0.25mmである。そして、支持リングの長さは50mm(スクリュー羽根の1ピッチの約1.4倍)であり、その先端がスクリュー羽根2aの先端からfだけ後退している。なお、この後退量fは40mmでありスクリュー羽根の1ピッチ超である。
そして、この従来技術2についての試験2の方法は従来技術1についての試験1と同じである。
図8における点線グラフは横方向振れを示しており、実線グラフは縦方向の振れを示している。横方向振れは支持リングによって約300μm程度に抑えられており、縦方向振れが支持リングによって200μm以下に抑えられていることが両グラフから読み取れる。
【0016】
他方、スクリュー軸2が細長(いわゆるD/Lが大きいこと)くて剛性が乏しいときに支持リングを先端部に配置して当該先端部の軸振れを制止すると、その中央部が振れてシリンダー内面に衝突し、中央部が摩耗損傷することがある。
スクリュー軸2が細長くて上記のような現象が生じる場合は、これに備えてスクリュー軸の先端部と中央部との中間位置に支持リング3を配置してスクリュー軸の先端部の振れと中央部の振れを制止するようにしている。
なお、上記の「中間位置」は支持リング3の後退量f(図1(b)参照)がスクリュー軸の長さLの1/4〜1/3程度のところである。
【0017】
因みに、スクリュー軸の先端部と中央部との中間位置に支持リングを配置することの作用について釈明すれば、次のようである。
すなわち、仮に支持リング3による支持位置がスクリュー軸2の中央部であると、そのために先端部が支持リングよりも先に大きく張り出してその張出し長さが長くなり、その結果、先端部が振れてシリンダー内面に衝突するようになる場合がある。中央部ではなくて先端部と中央部との中間位置(後退量fがスクリュー軸全長の1/4〜1/3程度の位置)に支持リングを配置することの技術的意義は、支持リングから先への張出し長さが余り長くない程度に支持リングを後退させて上記のようになるのを未然に回避することである。
【0018】
〔支持リングの材質について〕
支持リング3は耐摩耗性が高い材料によるものでなければならず、また、その摩耗粉がセラミック成型品に混入してその品質を害するものであってはならず、さらにまた、上記支持リング3はこれに衝突してスクリュー羽根2aが摩耗損傷するものであってはならない。
以上のようなことから、素材として特殊で極めて高価な高硬度合成樹脂が用いられている。
【0019】
さらに、支持リング3が極めて高い耐摩耗性の剛性樹脂によるものであっても、金属製のスクリュー羽根2aが繰り返し衝突すれば、スクリュー羽根2aで囓られて摩耗損傷することが避けられず、その結果、その摩耗粉がセラミック坏土に混入することになる。
しかし、従来技術2における支持リング3は混入した摩耗粉がセラミック成型品の焼成工程で焼失されるので、これがセラミック製品に残留してその品質を害することはない。従来技術2における支持リング3が金属ではなくて合成樹脂であるのはこのためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
この発明は上記従来技術2を前提技術とするものである。
そして、この従来技術2は、スクリュー軸2の先端部に支持リング3があり、上記のとおり、スクリュー軸2が振れたときスクリュー羽根2aの先端部を支持して振れを制止し、スクリュー羽根2aがシリンダー内周面に衝突するのを防止してこれらが摩耗損傷するのを防止するものである。
【0021】
スクリュー羽根2aの外周は線状の螺旋状面である。そして、スクリュー軸2が大きく振れて支持リング3の内周面に衝突するときはスクリュー羽根2aの螺旋状面が回転しながら衝突することになる。そして、このような衝突が繰り返されると支持リング3の内周面が囓られて摩耗損傷する。そして、支持リング3の内周面の摩耗損傷が著しくなると、支持リングが所期の作用を奏し得なくなってスクリュー羽根2aとシリンダー内周面とが衝突することが回避されるので、その前に支持リングを新品に交換しなければならない。
【0022】
他方、支持リング3の取り替え時期が途過してしまうとスクリュー羽根2aがシリンダー内周面と干渉するようになり、そのためにこれらが摩耗損傷し、そしてその金属摩耗粉がセラミック坏土に混入してセラミック製品の品質を害することになる。このようなことから早めにメンテナンスする必要でありメンテナンスに多くのコストを要する。
【0023】
そこでこの発明の課題は、セラミック押出成型機のスクリュー羽根2aの先端部の支持リング3との衝突による衝撃を緩和してその摩耗損傷を抑制して支持リング3の耐久性を大幅に向上できるようにその支持構造を工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
セラミック成型品の押出成型機のスクリュー軸2の先端部を支持リング3で支持し軸振れを抑制してシリンダー内周面とスクリュー羽根2aの先端部外周面を保護する支持装置について、
(イ)上記支持リングの長さがスクリュー羽根の1ピッチよりも長く、
(ロ)上記支持リングが高硬度合成樹脂であってその外周に弾性支持層3aがあり、当該弾性支持層が半径方向に予圧縮された状態でシリンダー1に保持されており、
(ハ)スクリュー軸の先端部が支持リング内周面と1点以上で衝突し、当該衝突による衝撃が上記弾性支持層の弾性によって緩衝されるようになっていること。
【0025】
なお、スクリュー軸の先端部と中間部との間に支持リングが配置されているものもこの発明の対象であるから、上記の「先端部」は必ずしも文字通り先端部を意味するものではなく、これに相当する範囲では先端部と中央部の中間部もこれに相当する。
【0026】
〔作用〕
支持リング3の長さがスクリュー羽根2aの1ピッチより長いから、上記軸振れが360度全方向のいずれであってもスクリュー羽根2aは必ず1点以上で支持リング内周面に衝突するからシリンダー内周面に衝突することない。したがって、衝突時の衝撃は必ず支持リングで受け止められる。
そしてまた、支持リング3はその外周の弾性支持層3aが半径方向に予圧縮された状態でシリンダー1に装着されていて、所定の半径方向の弾発力でシリンダー1に保持されているので、スクリュー軸2の軸振れでスクリュー羽根2aの先端部が支持リング3の内周面に衝突するときその衝撃は弾力的に支持される。したがって、上記衝撃は上記弾性支持層3aの弾発力によって緩和され、支持リング内周面の摩耗損傷は抑えられる。
それゆえ、スクリュー軸の先端部の衝突の繰り返しによる支持リング内周面の摩耗損傷が低減され、また、スクリュー羽根の摩耗損傷が低減される。
【0027】
この発明の特徴の主要な技術的事項について説明する。
〔支持リングによる支持位置〕
スクリュー軸が細長くてラジアル荷重に対する剛性が乏しいとその中間部が撓んで振れる場合があるが、この場合は支持リング3をスクリュー軸2の先端部と中間部の間の適切な位置に配置することにより中間部の振れと先端部の振れの両方が抑制されるので、スクリュー軸の中間部が振れてシリンダー内周面と衝突することは防止され、また先端部が振れてシリンダー内周面に衝突することも防止される。
そして、この場合も支持リング3がスクリュー軸2の先端部にある場合と同様に上記作用効果を奏し、支持リング3の耐久性が向上する。
そして、上記の「スクリュー軸2の先端部と中間部の間の適切な位置」は、スクリュー軸の先端からその全長の1/4〜1/3の適切な位置である。
【0028】
〔支持リングの硬度〕
上記の高硬度合成樹脂は耐摩耗性が極めて高くなければならず、そのために硬度がロックウエルM100又はこれと同等以上(例えばロックウエル硬度M90以上)のものでなければならないが、スクリュー軸の振れが大きくなく摩耗損傷が格別顕著でないと予想される場合はそれよりも低廉の合成樹脂を使用することもできる。
【0029】
〔支持リングの長さの下限〕
支持リング3はシリンダー内周面とスクリュー軸の衝突を回避してこれらが摩耗損傷するのを防止するための摩耗材であるから、その長さについては、所期の作用を奏する限度で可及的に短くすること、そして、格別の理由があるときはそれに応じて長くするというのが基本である。
スクリュー軸が振れるときその先端部のスクリュー羽根外周を支持するというそもそもの目的からすれば、支持リング3の長さはスクリュー羽根の1ピッチ相当分である。
そしてこの発明においてはその課題をより高度に解決するために必要な支持リング3の長さはスクリュー羽根2aの1ピッチ分より大きいことである。
【0030】
すなわち、スクリュー軸2は回転しながら360度の全ての方向に振れるから、支持リングがスクリュー羽根2aの1ピッチよりも短ければスクリュー羽根の山の一つが支持リングの内周面に衝突する可能性が高いが、支持リングがスクリュー羽根の溝に落ち込む可能性もあり、1ピッチより少し長ければ必ずスクリュー羽根の1点で支持リングの内周面に衝突し、2点で衝突する可能性もある。そして、2ピッチに近いほど2点で衝突する可能性が高く、2点で衝突すれば衝撃が2点に分散されるので、2点で衝突する確率が高いほど支持リングの内周面の摩耗損傷は低減されることになる。
【0031】
そして、支持リング3の長さがスクリュー羽根の2ピッチ超であればスクリュー軸は必ず2点で支持リング内周面に衝突し、その衝撃は必ず2点に分散されることになる。このように衝撃が2点に分散されればその衝突による支持リング内周面のダメージは大きく減少されるが、必ず2点で衝突するので支持リングの内周面の単位面積当たりの衝突回数が2倍になるので、その分だけ支持リングの内周面のダメージが大きくなる。
【0032】
ところで、スクリュー羽根の衝突による支持リング内周面の摩耗損傷の程度はその衝撃の強さと衝突回数に左右されるが、衝撃の強さの方が衝撃回数よりも影響が大きく、衝撃が大きければ衝突面のダメージはより大きいが、衝撃が小さければ衝突面のダメージはより小さいといえる。
したがって、衝突による衝撃を確実に2点(少なくとも2点)に分散させて衝撃を低減することによって支持リング内周面の摩耗損傷は顕著に低減される。
【0033】
〔支持リングの長さの上限〕
支持リングの長さについては、摩耗材として必要な限度であることが基本であるのは上記のとおりであり、そしてまた、その長さの上限はどのようなものかは、この出願の発明に特有の問題ではなく、個々の具体的な設計における問題である。
【0034】
他方、支持リング3の長さをスクリュー羽根のピッチ超にすることには上記のとおりの格別の技術的意義はあるが、しかし、3ピッチ超にすることには格別顕著な意義はない。
以上のとおりであるが実際上の観点からすれば、その長さの上限は2ピッチ分よりも長く3ピッチ分よりも短いところがより適切であり、結局のところほぼ2.5ピッチ分程度が有効な上限であるといえる。
【0035】
〔弾性支持層の素材〕
支持リング3の長さがスクリュー羽根2aの1ピッチであればスクリュー軸2が振れて支持リング3の内周面に衝突するのはスクリュー羽根の1点であり、2ピッチであれば2点であるのは上記のとおりである。そして、支持リング3は高硬度合成樹脂であり、外側の弾性支持層の広い面で支持されるから、弾性支持層の比較的小さい弾発力で比較的大きい衝撃力が受け止められることになる。
したがって、弾性支持層はその弾発力pが予想される衝撃力とバランスする程度のものでなければならないが、衝撃を受けて反応する程度の弾性がある必要がある。
【0036】
〔実施の態様〕
(2)実施態様1
実施態様1は支持リング3の外周面に弾性合成樹脂スリーブ4を嵌めて弾性支持層3aが形成されていて、当該弾性支持層が半径方向に予圧縮された状態で支持リング3がシリンダー1に保持されているものである。
〔利点〕
高硬度合成樹脂の支持リング3の外周に弾性合成樹脂スリーブを嵌めることで弾性支持層3aを容易に形成することができ、また、ねじリング等で弾性支持層を軸方向に圧縮することによってこれを容易に半径方向に予圧縮することができる。
そして、弾性合成樹脂スリーブの材質、硬さ、厚さを加減し、また軸方向の締め代を加減することで必要な予圧縮力(弾発力)が容易に得られる。
【0037】
なお、上記合成樹脂スリーブは押出成形、型成形などで簡単に成形することができる。また、弾性合成樹脂スリーブは、耐衝撃性に優れた合成樹脂(例えば、ポリウレタン等)であればよく、特別の合成樹脂である必要はない。
【0038】
(1)実施態様2
実施態様2は支持リング3の外周の多数の環状溝にそれぞれOリングが装着されて弾性支持層3aが形成されていて、当該弾性支持層が半径方向に予圧縮された状態で支持リング3がシリンダー1に保持されているものである。
〔利点〕
高硬度合成樹脂製の支持リング3の外周に多数の環状溝を設け、これに多数のOリングをそれぞれ装着することで支持リング3の外周に多数のOリングによる弾性支持層3bを容易に形成することができ、また、シリンダー1に支持リング3を所定の締め代で押し込んでOリングを潰すことによって容易に半径方向に予圧縮することができ、簡単容易に支持リング3をシリンダー1に装着することができる。
そして、Oリングの数、太さ、支持リング外周面からの突出高さ(締め代)、Oリングの材質及びその硬さを加減することで、必要な予圧縮力(弾性支持力)を容易に得ることができる。
【0039】
なお、Oリングは耐衝撃性に優れた合成樹脂(例えば、ニトリルゴム等)であればよく、特別の合成樹脂である必要はない。
【0040】
〔実施態様3〕
実施態様3は支持リング3の円筒状外周に多数の弾性リング4を密接して装着することで弾性支持層3aが形成されており、当該弾性支持層3aを軸方向に圧縮して半径方向に予圧縮した状態で支持リングがシリンダー1に保持されているものである。
〔利点〕
上記弾性リング4の断面形状は四角形がよく、多数の弾性リングを密接して支持リング3に装着し、これを軸方向に圧縮することで予圧縮することができ、そのときの締め代を加減することで容易に必要な予圧縮力を得ることができる。
そして、密接した多数の弾性リングで弾性支持層が形成されているので、弾性支持層の取り付け取り外しが容易である。
【0041】
なお、この実施態様3は実施態様1と実施態様2を組合せたものであり、支持リング3の外周に多数の環状溝を設ける必要は無く、また、その断面形状が四角形でもよく紐状体でもよいので、これを製作が容易であるという利点がある。
【発明の効果】
【0042】
上記のとおり、スクリュー軸3が振れてスクリュー羽根の先端部が支持リング3の内周面に衝突するときはスクリュー羽根の外周面(螺旋状の線状面)が回転しながら衝突することになるので、その衝撃で支持リング内周面が繰り返し囓られ擦られて摩耗損傷することになる。
この発明では支持リングの全長がスクリュー羽根2aの1.0ピッチ超であるので、360度全方向の軸振れが必ず支持リング3の内周面で受け止められる。そしてまた、支持リング3の外周の弾性支持層が予圧縮された状態でシリンダー1に装着されているので、スクリュー軸2の360度全方向の振れによる衝撃が必ず弾性支持層の弾発力によって緩和される。
したがって、支持リングの内周面に対するスクリュー羽根2aの360度全方向の衝撃が緩和され、支持リング内周面の摩耗損傷が大きく低減され、そして、支持リング3の耐久性が大きく延長される。
【0043】
なお、この発明によれば、衝撃の分散と弾性支持層の弾性による衝撃の緩和とによって支持リング3の摩耗損傷を大きく低減することができるので、軸振れが小さくて衝撃が大きくない場合(セラミック坏土の硬度が低くて流動性が高い場合等)は、ロックウエルM100よりも若干硬度が低い高硬度合成樹脂の支持リング3を使用することもできようになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】(a)は従来技術1の説明用参考図、(b)は従来技術2の説明用参考図
図1-1】は従来技術2におけるスクリュー軸の下方への偏心状態を模式的に示す断面図
図2】は実施例1の要部断面図、
図2-1】(a)は実施例1の支持リングの正面図、(b)は同縦断面図
図3】(a)は実施例1の要部断面図、(b)は実施例1の弾性支持層の予圧縮状態を示す一部拡大図
図4】(a)は実施例2の要部断面図、(b)は実施例2の弾性支持層の予圧縮状態を示す一部拡大図
図5】(a)は実施例3の要部断面図、(b)は実施例3の円錐スリーブの断面図
図6】は支持リングの弾性特性と予圧縮領域、緩衝領域の関係を模式的に示す説明用参考図
図7】は一端支持の従来技術1のスクリュー軸の振れ試験の結果を示すグラフ
図8】は一端支持の従来技術2のスクリュー軸の振れ試験の結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0045】
この発明の具体的な実施形態は個々のセラミック押出成型機の用途や設計仕様によって様々であって各部の寸法の範囲は、例えばシリンダー内径Dも31〜314mmと広い。
そしてシリンダー内径Dが上記の範囲のときのその他の主要な寸法の範囲は例えば次のようである。
(1)スクリュー軸長Lは500〜2,200mm
(2)スクリュー軸2とシリンダー内周面間のクリアランス((D−D)/2)は0.5〜2mm
(3)支持リングの厚さ(d−D)は5〜27mm、
(4)支持リングの弾性支持層の厚さは2〜10mm
以上のように、セラミック押出成型機の大きさの現状、原料に寄り、用途により、能力により、極小から極大まで様々であるが、次いでスクリュー外径Dが148.6mm、シリンダー内径Dが150mm、スクリュー軸長Lが2,200mmの実施例(実施例1、実施例2、実施例3)について説明する。
【0046】
〔実施例1〕
実施例1を図2図2−1、図3を参照して説明する。
シリンダー1は取り込み側と押出側とに長手方向で4分割されていて、押出側を分離した状態でスクリュー軸2が取り込み側にある軸継ぎ手jに抜き差し自在に連結される。
この実施例1はスクリュー外径Dが148.6mm、シリンダー内径Dが150mmであるから、スクリュー羽根外周面とシリンダー内面との間のクリアランスsは0.7mmである。
なお、このスクリュー軸2のスクリュー羽根2aのピッチは90mmである。
【0047】
支持リング3は特別の高硬度合成樹脂製(例えば、グサークアンドジャパン社製、商品名:ルイテックス、硬度:ロックウエルM100)の円筒体であり、その長さLが160mm(スクリュー羽根2aの1ピッチの約1.8倍)、内径Dは149.0mm、厚さが10mm、外径dが169.0mmである。そして、支持リング3に外径dが172mmの合成樹脂スリーブ4が嵌められて弾性支持層3aが形成されている。
合成樹脂スリーブ4はポリウレタンによるものである。
【0048】
シリンダー1の支持リング保持部11の内径は合成樹脂スリーブ4の外径d(172mm)と等しく、支持リング3が合成樹脂スリーブ4とともに当該支持リング保持部11に挿入されている。
支持リング保持部11の外端部にうちネジ11aがあり(図3(a)参照)、当該うちネジ11aにねじリング13が螺合されている。ねじリング13が締め込まれると押さえリング14が押され、押さえリング14によって合成樹脂スリーブ4が軸方向に圧縮される。
合成樹脂スリーブ4は一定の空間内で軸方向に圧縮されるのでその圧縮力に比例した弾発力pを生じる。そしてこの弾発力pが支持リング3に対する弾性支持力となり、支持リング3は弾性支持層3aが予圧縮されていることでシリンダー1の支持リング保持部11にしっかりと保持される。
【0049】
なお、弾性支持層3aによる支持リング3に対する弾性支持力F1、弾性領域上限の弾性支持力F2は、合成樹脂スリーブ4の硬さ厚さ及びねじリング13の締め込み量等を加減することによって容易に調整される。そして、弾性支持層3aについては一定の予圧縮によって必要な弾発力F1(図5参照)が得られ、そして、これにより衝撃に対して適切に作用するように調整される。
【0050】
〔弾性支持層3aによる弾性支持力と緩衝作用について〕
次いで、弾性支持層3aによる弾支持リング3に対する弾性支持力について図6を参照しつつ簡単に説明する。
合成樹脂スリーブ4による弾性支持層3aが仮に自由状態で軸方向に圧縮される(歪みα)と一定の比で半径方向に伸長する(伸長量β=a×α)が、弾性支持層3aは自由状態ではないので、半径方向に一定量(上記β)だけ圧縮されたのと同じ弾発力p(図3(b)参照)が半径方向に生じる。尚、上記のaは合成樹脂スリーブ(弾性支持層3a)の物性による係数(ポアソン比)である。
【0051】
弾性支持層3aが軸方向に圧縮されたときのその半径方向の弾性支持力Fは予圧縮領域(図6における予圧縮領域)で圧縮量cに比例して増大し、所定の締め代c図5での圧縮量c1)のとき所定の弾性支持力F1になる。
スクリュー軸2の先端部の振れが支持リング3とスクリュー羽根2aとのクリアランスsよりも大きいとき、スクリュー軸2の先端部が支持リング3aの内周面に衝突する。そしてその衝撃が弾性支持層3aの弾性支持力F1より小さいときは弾性支持力F1によって単純に受け止められる。他方、衝撃が弾性支持力F1よりも大きいときは弾性支持層3aがその衝撃で一瞬圧縮されて弾性支持力Fが増大するので、その衝撃は緩和されて弾性支持力Fで受け止められる。
そしてまた、衝撃が強くてそれが緩衝領域上限の支持力F2を越えると、瞬間的に支持力が増大して増大した支持力で受け止められることになる。この場合もその強い衝撃が緩衝領域で緩和されるので、支持リング3の内周面にかかる衝撃は低減される。
したがって、支持リング3の内周面の囓りが抑制されそしてその摩耗損傷が低減される。
【0052】
〔緩衝作用の調整〕
この実施例1ではスクリュー軸2の外径Dが148.6mmであり、支持リング3の内径Dが149.0mmであるから、スクリュー軸の先端部の偏心はゼロであると仮定すれば、スクリュー羽根2aの先端部外周面と支持リング2の内周面との間のクリアランスsは上記のとおり0.2mmである。したがって、スクリュー軸2の先端部の軸振れが0.2mm以上のとき、当該先端部は支持リング3の内周面に衝突して支持されることになり、このときの衝撃はその大小に関わらず弾性支持層3aによって緩和されて低減される。
【0053】
また、スクリュー羽根2aの先端部と支持リング2の内周面の衝突が強いものについても、また格別強くはないものについても支持リング3の摩耗損傷を効果的に低減されなければならないから、衝突が強いものについては弾性支持層3aによる弾性支持力(弾発力)F1を大きくして強い衝突に対する緩衝効果が増すように調整する必要があり、他方、衝突が格別強くないものについては弾性支持層による弾性支持力(弾発力)F1を小さくして格別強くない衝撃に対する緩衝効果が増すようにする必要がある。
なお、弾性支持層3aによる緩衝領域下限の弾性支持力F1、上限の弾性支持力F2(図6参照)は、弾性支持層3aの物性(例えば弾性係数)、厚さ、予圧縮量等を加減することによって調整することができ、そして実施例1における調整は容易である。
【0054】
〔実施例2〕
次いで、実施例2を図4を参照して説明する。
実施例2の基本構造は実施例1のそれと違いはないが、高硬度合成樹脂の支持リング3の外周に多数の環状溝gがあり、この環状溝にいわゆるOリング5を嵌めて多数のOリングで弾性支持層3bを形成している点が相違する。
さらに言えば、実施例1は弾性支持層3aを軸方向に圧縮して所要の予圧縮力を付与しているのに対して、実施例2はその弾性支持層3bを半径方向に圧縮して所要の予圧縮力を付与している。そしてOリングを利用することにより、円筒状の支持リング3を支持リング保持部11に軸方向に押し込むことで弾性支持層3bに全周均等の予圧縮力が容易に付与されるようにしたものである。
【0055】
支持リング3の内径Dと長さLは実施例1と同じであるが、外径d図4(b)参照)は173mm(厚さが12mm)であり、シリンダー1の支持リング保持部11の内径d’は176mmである。
支持リング3の外周に深さ2mmの環状溝gが等間隔で多数設けられていてこれに太さ(断面の直径)が5mmのOリング5がそれぞれ嵌められている。
この環状溝g及びOリング5の個数は実施例2では5つであるが、3個も可である。Oリングの個数の多少はOリングによる弾性支持層3bの弾性特性を左右するので、その材質、太さ、潰し代(締め代)の設計と直接関わる事項である。
【0056】
Oリング5の外径がシリンダー1の支持リング保持部11の内径d’(図4(b)参照)よりも大きいので、支持リング3を支持リング保持部11に強く押し込むとOリング5が潰されて半径方向に圧縮される。なお、Oリング5の外径は179mmで、支持リング保持部11の内径d’は176mmであるから、このときのOリング5に対する締め代は1.5mmである。
Oリング5の個数、材質、外径、太さを加減することによって弾性支持層3dの弾性特性は容易に調整される。
【0057】
〔実施例3〕
次いで、実施例3を図5を参照して説明する。
上記実施例1、実施例2は支持リング3の外形が円筒形状であることが前提であるが、実施例3は支持リング23の外形が裁頭円錐形状である。
すなわち、このものでは、弾性スリーブ24、支持リング保持部11の内周面が支持リング23の外形と同じ裁頭円錐形状である点が実施例1と相違しており、さらにねじリング13で支持リング23を押し込むことで円錐面の楔作用を利用して弾性支持層3cを半径方に圧縮することができる。
弾性スリーブ24の外周面の傾斜角度θは支持リング23の外周面、支持リング保持部11の内周面の傾斜角度と等しく、具体的には6度〜10度が好ましい。
【0058】
なお、実施例3の弾性支持層3cについては1つの弾性スリーブによるものに限られるものではなく、多数のOリングや他の弾性リングによって形成することもでき、この場合、支持リング23の円錐面の傾斜角度(弾性スリーブ24の傾斜角度θと同じ)が小さいので同じ内径のOリングや弾性リングを使用することができる。
【0059】
〔弾性特性と緩衝効果について〕
予圧縮された弾性支持層3aの弾性支持力F(図6参照)が強いと強い衝撃に対する緩衝効果は大きいが、弱い衝撃に対する緩衝効果は小さい。他方、緩衝領域の弾性支持力が弱いと弱い衝撃に対する緩衝効果は大きいが強い衝撃に対する緩衝効果は小さい。
他方、運転開始の直後のスクリュー軸2の振れによる衝突の衝撃力は、セラミック押出成型機の設計仕様(シリンダーの内径、スクリュー軸の外径、スクリュー軸の長さ等)によって大きく異なり、また、セラミック坏土の流動性の大小によって異なるので、予想される軸振れの大きさ(又は衝撃の強さ)に緩衝特性が適合するものでなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2011−131608号公報
【特許文献2】実公昭49−27425号公報
【符号の説明】
【0061】
1:シリンダー
2:スクリュー軸
2a:スクリュー羽根
3:支持リング
3a,3b:弾性支持層
4:合成樹脂スリーブ
5:Oリング
11:支持リング保持部
11a:うちネジ
13:ねじリング
14:押さえリング
20:送りローラ
c:弾性支持層の圧縮量
:弾性支持層の予圧縮量
D:スクリュー外径
:シリンダー内径
:支持リング内径
d,d’:支持リング保持部の内径
,d:支持リングの外径
F:支持リング3に対する弾性支持層による弾性支持力
F1:緩衝領域の下限の弾性支持力
F2:緩衝領域の上限の弾性支持力
f:支持リングのスクリュー羽根先端からの後退量
g:環状溝
P:圧縮力
p:弾発力
,r:締め代
:シリンダー内周面とスクリュー羽根の外周面間のクリアランス
:支持リング内周面とスクリュー羽根の外周面間のクリアランス
t:弾性樹脂層3aの厚さ
図1
図1-1】
図2
図2-1】
図3
図4
図5
図6
図7
図8