特許第6358775号(P6358775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358775
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】車両用ミラー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/06 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   B60R1/06 G
   B60R1/06 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-287961(P2012-287961)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129045(P2014-129045A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年5月27日
【審判番号】不服2017-612(P2017-612/J1)
【審判請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】市川 貴茂
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 尾崎 和寛
【審判官】 和田 雄二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−52862(JP,A)
【文献】 実開平5−82678(JP,U)
【文献】 米国特許第7073914(US,B2)
【文献】 特開2012−25233(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0243449(US,A1)
【文献】 実開昭64−33447(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部に設けられたミラーと、
前記ミラーに対し追加されて設けられた追加ミラーと、
前記追加ミラーを支持すると共に、前記追加ミラーの車体側において回動可能に支持され、回動されて前記追加ミラーが展開及び格納されると共に、車室から車両外部を視認不能にされる車体部分側である下側に回動されて前記追加ミラーが展開される支持体と、
を備えた車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記支持体に設けられた凹部に前記追加ミラーを配置した請求項1記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
車両の変速機がリバースレンジにされた際及び車両の障害物が検知された際の少なくとも一方の際に前記追加ミラーが展開される請求項1又は請求項2記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記支持体に対し前記追加ミラーを移動可能にした請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両用ミラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体が回動されて追加ミラーが展開及び格納される車両用ミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のミラーシステムでは、ミラーケーシングにキャリア部材が回動可能に設けられると共に、キャリア部材に反射体が支持されており、キャリア部材が回動されて、反射体が展開及び格納される。
【0003】
しかしながら、このミラーシステムでは、キャリア部材が反射体の車体とは反対側において回動可能に支持されているため、反射体が車体に接近されて配置されている。このため、反射体が展開されても、乗員による反射体の視認が車体によって制限され易いため、反射体によっては乗員の視認可能範囲を効果的には拡大できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7073914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、追加ミラーが展開された際に乗員による追加ミラーの視認が車体によって制限されることを抑制できる車両用ミラー装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用ミラー装置は、車両の外部に設けられたミラーと、前記ミラーに対し追加されて設けられた追加ミラーと、前記追加ミラーを支持すると共に、前記追加ミラーの車体側において回動可能に支持され、回動されて前記追加ミラーが展開及び格納されると共に、車室から車両外部を視認不能にされる車体部分側である下側に回動されて前記追加ミラーが展開される支持体と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の車両用ミラー装置は、請求項1に記載の車両用ミラー装置において、前記支持体に設けられた凹部に前記追加ミラーを配置している。
【0008】
請求項3に記載の車両用ミラー装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両用ミラー装置において、車両の変速機がリバースレンジにされた際及び車両の障害物が検知された際の少なくとも一方の際に前記追加ミラーが展開される。
【0009】
請求項4に記載の車両用ミラー装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用ミラー装置において、前記支持体に対し前記追加ミラーを移動可能にしている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の車両用ミラー装置では、車両の外部にミラーが設けられると共に、ミラーに対し追加ミラーが追加されて設けられている。さらに、支持体が追加ミラーを支持しており、支持体が回動されて、追加ミラーが展開及び格納される。
【0011】
ここで、支持体が追加ミラーの車体側において回動可能に支持されている。このため、追加ミラーを車体から離間させて配置でき、追加ミラーが展開された際に、乗員による追加ミラーの視認が車体によって制限されることを抑制できる。
【0012】
請求項2に記載の車両用ミラー装置では、支持体に凹部が設けられており、凹部に追加ミラーが配置されている。このため、凹部外の光が追加ミラーに入射することを抑制でき、追加ミラーの視認性能が低下することを抑制できる。
【0013】
請求項3に記載の車両用ミラー装置では、車両の変速機がリバースレンジにされた際及び車両の障害物が検知された際の少なくとも一方の際に、追加ミラーが展開される。このため、通常時は、追加ミラーを格納でき、追加ミラーによって見栄えが悪くなることを抑制できる。
【0014】
請求項4に記載の車両用ミラー装置では、支持体に対し追加ミラーが移動可能にされている。このため、乗員の追加ミラーによる視認可能範囲を容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置を示す車両後側かつ車幅方向内側から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動体及び移動機構を示す車両後側から見た正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動機構を示す車両後側から見た正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動体及び移動機構を示す上方から見た平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る車両用ドアミラー装置における移動体及び移動機構を示す車幅方向外方から見た断面図(図4の5−5線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本発明の車両用ミラー装置が適用された実施形態に係る車両用ドアミラー装置10が車両後側かつ車幅方向内側(車両右側)から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両左方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示す。
【0017】
本実施形態に係る車両用ドアミラー装置10は、車両の車体側のドア(フロントサイドドア、図示省略)の外部に設置されている。ドアの上側部分は、窓部にされて、車室から車両外部を視認可能にされると共に、ドアの下側部分は、ドアトリム等が設けられて、車室から車両外部を視認不能にされており、車両用ドアミラー装置10は、ドアの下側部分の車両前側かつ上側の端部に設置されている。車両は、右ハンドル車にされており、車室の車両前側かつ右側の部分に、運転席が配置されている。また、運転席に着座した運転手(乗員)の頭部(特に瞳位置)は、ドアの窓部の下端より上側に配置される。
【0018】
図1に示す如く、車両用ドアミラー装置10は、設置体としてのステー12を備えており、ステー12がドアに設置されることで、車両用ドアミラー装置10がドアに設置されている。
【0019】
ステー12には、被覆部材(格納部材)としての樹脂製で略直方体形容器状のバイザ14が支持されており、バイザ14は、ステー12の上側において、ステー12に対し車幅方向外側へ延出されている。バイザ14の車両後側面には、開口16が形成されており、開口16は、バイザ14内を車両後側に開口させている。
【0020】
ステー12には、補強部材(剛性部材)としての例えば金属製のリンフォース(図示省略)が支持されており、リンフォースは、ステー12の上側においてステー12に対し車幅方向外側へ延出されると共に、バイザ14内に収容されている。リンフォースは、バイザ14に比し剛性が高くされており、リンフォースは、バイザ14と一体にされて、バイザ14を補強している。
【0021】
バイザ14及びリンフォースの少なくとも一方には、略矩形板状のミラー18が支持されており、ミラー18は、バイザ14の開口16部分に配置(収容)されている。ミラー18の全周及び車両前側は、バイザ14によって被覆されており、ミラー18の表面(鏡面)は、開口16によって車両後側に露出されている。ミラー18は、ドアの窓部における車両前側かつ下側の端部の車幅方向外側に配置されており、運転手が、ドアの窓部を介してミラー18の表面を視認可能にされて、ミラー18によって車両の後側を視認可能にされている。
【0022】
バイザ14内の下側部分には、図2図5に示す略矩形筒状のブラケット20が固定されており、ブラケット20内は、バイザ14の下側に開放されている。
【0023】
ブラケット20内には、追加体(付加体)としての移動体22が配置されており、移動体22は、バイザ14内の下側部分に格納(収容)されている(図1の2点鎖線参照)。
【0024】
移動体22には、支持体としての略三角柱形箱状のハウジング24が設けられており、ハウジング24は、車幅方向内側端(ドア側端)において、支持軸26によってブラケット20に上下方向へ所定範囲で回動可能に支持されている。ハウジング24の下面は、バイザ14の下面から下側に露出されており、ハウジング24の下面は、バイザ14の下面と面一に配置されている。ハウジング24の車幅方向外側部分には、略矩形柱状の凹部28が形成されており、凹部28は、車両後側に開放されている。なお、ハウジング24は、下側へ回動される方向に付勢されている。
【0025】
ハウジング24の凹部28には、追加ミラーとしての略矩形板状の補助ミラー30が配置されており、補助ミラー30の表面(鏡面)は、車両後側に向けられている。補助ミラー30は、裏面中心位置(裏面重心位置)において、凹部28内に回動可能に支持されており、補助ミラー30は、手動により車幅方向及び上下方向へ傾動(移動)可能にされている。補助ミラー30は、凸面鏡にされており、補助ミラー30の表面(鏡面)は、車両後側に凸状に湾曲されている。
【0026】
ハウジング24の車両後側面には、車幅方向内側部分において、追加部(発光手段)としての正面視略矩形状のランプ32が固定されており、ランプ32は、点灯されることで、車両後側へ発光可能にされている。
【0027】
ブラケット20の車幅方向外側かつ車両前側の部分には、移動機構34が設けられている。
【0028】
移動機構34には、モータ36が設けられている。モータ36には、制御装置38(図3参照)が電気的に接続されており、制御装置38の制御により、移動機構34が作動されて、モータ36が回転駆動される。制御装置38には、ランプ32が電気的に接続されており、制御装置38の制御により、ランプ32が点灯される。
【0029】
モータ36の出力軸36Aには、ギア機構(減速機構)を構成するウォーム40が同軸上に固定されており、ウォーム40は、出力軸36Aと一体に回転可能にされている。ウォーム40には、ギア機構を構成するヘリカルギア42(ウォームホイール)が噛合(係合)されており、ヘリカルギア42は、回転軸44が同軸上に固定されて、回転軸44と一体に回転可能にされている。
【0030】
回転軸44には、ギア機構を構成するピニオン46が同軸上に固定されており、ピニオン46は、回転軸44と一体に回転可能にされている。ピニオン46には、ギア機構を構成するスパ48が噛合(係合)されており、スパ48は、ハウジング24に固定されると共に、支持軸26の周方向(ハウジング24の回動方向)に沿って延伸されている。
【0031】
このため、上述の如くモータ36が回転駆動された際には、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、ピニオン46及びスパ48が回転されて、移動体22が回動される。
【0032】
図3に示す如く、上記制御装置38は、車両の自動変速機50(変速機)及びセンサ52に電気的に接続されており、センサ52は、車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側(例えば車両の後輪近傍)における障害物(特に運転手がミラー18によっては視認できないものであって、例えばパイロン等のミラー18の下端より高さが低いもの)を検知可能にされている。
【0033】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0034】
以上の構成の車両用ドアミラー装置10では、バイザ14内に移動体22が格納されている。
【0035】
自動変速機50がリバースレンジ(後退レンジ)にされた際かつセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知した際(第1の機会)には、移動機構34において、制御装置38の制御によりモータ36が一方向に回転駆動されて、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、ピニオン46及びスパ48が一方向に回転されることで、移動体22(補助ミラー30及びランプ32を含む)が、下側に回動されて、バイザ14から下側(車両前斜め下方又は車両後斜め下方でもよい)に展開される(図1の実線参照)。
【0036】
このため、補助ミラー30がバイザ14の下側に露出されて、運転手がドアの窓部を介して補助ミラー30の表面を視認することで、運転手が補助ミラー30によって車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側(特に障害物及びその周囲)を視認できる。これにより、ミラー18による運転手の視認可能範囲が変化することを防止しつつ、補助ミラー30によって運転手の視認可能範囲を拡大できて、車両の後退の際に運転手が視線を変更しなくても補助ミラー30によって車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側を注意できる。
【0037】
さらに、ランプ32がバイザ14の下側に露出されると共に、制御装置38の制御により点灯されることで、ランプ32が、車両後側へ発光して、車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側(特に障害物及びその周囲)を照明する。これにより、車両の周囲が暗い際(例えば夜間)でも、運転手が補助ミラー30によって車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側を良好に視認できる。
【0038】
自動変速機50がリバースレンジ以外にされた際及びセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知しなくなった際(第2の機会)には、移動機構34において、制御装置38の制御によりモータ36が他方向に回転駆動されて、モータ36の出力軸36A、ウォーム40、ヘリカルギア42、ピニオン46及びスパ48が他方向に回転されることで、移動体22(補助ミラー30及びランプ32を含む)が、上側に回動されて、バイザ14内に格納される(図1の2点鎖線参照)。
【0039】
ここで、移動体22(ハウジング24)が、補助ミラー30より車幅方向内側における車幅方向内側端(ドア側端)の支持軸26において、回動可能に支持されている。このため、補助ミラー30をドアから車幅方向外側に離間させて配置でき、補助ミラー30が展開された際に、運転手による補助ミラー30の視認がドアの下側部分(ドアトリム等)によって制限されることを抑制できる。これにより、補助ミラー30によって運転手の視認可能範囲を効果的に拡大できて、運転手が補助ミラー30によって車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側を良好に視認できる。
【0040】
さらに、ハウジング24の凹部28に補助ミラー30が配置されている。このため、補助ミラー30が展開された際に、凹部28外におけるランプ32の光が補助ミラー30に入射することを抑制でき、補助ミラー30の視認性能が低下することを抑制できる。
【0041】
また、補助ミラー30が手動により車幅方向及び上下方向へ傾動可能にされている。このため、運転手の補助ミラー30による視認可能範囲を容易に調整できる。
【0042】
さらに、補助ミラー30が、凸面鏡にされて、表面(鏡面)が車両後側に凸状に湾曲されている。このため、運転手の補助ミラー30による視認可能範囲を広くすることができる。
【0043】
また、自動変速機50がリバースレンジにされた際かつセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知した際のみに、移動体22(補助ミラー30及びランプ32を含む)が展開される。このため、通常時には、移動体22をバイザ14内に格納でき、移動体22によって車両用ドアミラー装置10の見栄えが悪くなることを抑制できる。
【0044】
なお、本実施形態では、移動体22を補助ミラー30より車幅方向内側において回動可能に支持した。しかしながら、移動体22を補助ミラー30の鏡面中心(鏡面重心)より車幅方向内側において回動可能に支持すればよい。
【0045】
また、本実施形態では、自動変速機50がリバースレンジにされた際かつセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知した際のみに、移動体22を展開させた。しかしながら、自動変速機50がリバースレンジにされた際のみ又はセンサ52が車両用ドアミラー装置10の車両後側かつ下側における障害物を検知した際のみに、移動体22を展開させてもよい。
【0046】
さらに、本実施形態では、移動体22をバイザ14の下側に展開させる。しかしながら、移動体22をバイザ14の他の方向(例えば上側、車両前側、車両後側、車幅方向外側又は車幅方向内側)に展開させてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、本発明の車両用ミラー装置を車両用ドアミラー装置10に適用した。しかしながら、本発明の車両用ミラー装置を車両外部の他の車両用アウタミラー装置(例えば車両用フェンダミラー装置)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 車両用ドアミラー装置(車両用ミラー装置)
18 ミラー
24 ハウジング(支持体)
28 凹部
30 補助ミラー(追加ミラー)
50 自動変速機(変速機)
図1
図2
図3
図4
図5