(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1サポート部は、前記ハブの前方の取付け部から径方向外側に延在し、前記ロータヘッドカバーの内部空間と前記機器収容空間との間の仕切り壁を形成するフランジ部を含み、
前記仕切り壁は、前記アプローチ通路空間と前記機器収容空間とを連通する第1開口を有することを特徴とする請求項2に記載の風力発電装置。
前記ハブには、前記アプローチ通路空間と前記ハブの内部空間とを連通する第3開口が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風力発電装置。
前記フェアリングカバーの内部空間に設けられ、前記アプローチ通路空間から侵入した作業員の昇降用構造体をさらに備えることを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の風力発電装置。
ナセルと、少なくとも2本のブレードと、前記少なくとも2本のブレードが取り付けられるハブと、前記ハブを貫通するように、前記ハブの回転中心軸に沿って延在する支持軸と、前記回転中心軸の軸方向に関して前記ハブ側を前方とし、前記ナセル側を後方としたとき、前記ハブより前方において前記支持軸によって支持される機器と、前記ハブ及び前記機器を覆うように設けられ、前記ハブとともに回転するように構成されたスピナーと、を備えた風力発電装置のメンテナンス方法であって、
前記スピナーは、前記少なくとも2本のブレードのうち隣り合うブレードの間に、前記回転中心軸を中心とした径方向外側に突出した突出部を有し、前記突出部の内周面と前記ハブとの間に前記回転中心軸に沿って前後に延在するアプローチ通路空間が形成されており、
前記アプローチ通路空間が前記ハブの上方に位置するような角度位置で前記ハブを停止するハブ停止ステップと、
前記ハブが前記角度位置に停止された状態で、前記ハブの上方の前記アプローチ通路空間を通って前記ハブ側から前記機器にアクセスするアクセスステップと、
前記機器をメンテナンスするメンテナンスステップと、を備えることを特徴とする風力発電装置のメンテナンス方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したようにハブの前方に機器を配置した場合、機器のメンテナンスが困難になるという問題があった。特に、大型の風力発電装置では、ハブが高所に位置するため風力発電装置の外部からハブ前方の機器にアクセスする場合、大型のクレーンやヘリコプター等から機器へ接近する必要があり、大掛かりな作業となってしまう。また、ナセル内空間から機器にアクセスする場合、風力発電装置の外側から機器へアプローチする必要があるため、作業員が通るための足場を組む必要があり、やはり作業の煩雑化は避けられない。
この点、特許文献1〜3には、ハブの前方に配置された機器の具体的なメンテナンス方法については記載されていない。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑み、ハブの前方に配置された機器へ容易にアクセス可能とし、メンテナンス性を向上し得る風力発電装置及びそのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置は、
ナセルと、
少なくとも2本のブレードと、
前記少なくとも2本のブレードが取り付けられるハブと、
前記ハブを貫通するように、前記ハブの回転中心軸に沿って延在する支持軸と、
前記回転中心軸の軸方向に関して前記ハブ側を前方とし、前記ナセル側を後方としたとき、前記ハブより前方において前記支持軸によって支持される機器と、
前記ハブ及び前記機器を覆うように設けられ、前記ハブとともに回転するように構成されたスピナーと、を備え、
前記スピナーは、前記少なくとも2本のブレードのうち隣り合うブレードの間に、前記回転中心軸を中心とした径方向外側に突出した突出部を有し、
前記少なくとも2本のブレードのうち隣り合うブレードの間には、前記ハブ側から前記機器側にアクセスするためのアプローチ通路空間が形成されており、
前記アプローチ通路空間は、前記突出部の内周面と前記ハブとの間に前記回転中心軸に沿って前後に延在していることを特徴とする。
なお、本明細書における“前方”又は“前後”とは、ハブの回転中心軸の方向に対してハブ側を前方とし、ナセル側を後方とした前後方向における前方又は前後のことである。ただし、この前後方向は必ずしも回転中心軸に平行な方向でなくともよい。
【0009】
上記風力発電装置は、ハブ及び機器を覆うように設けられたスピナーが径方向外側に突出した突出部を有しており、この突出部の内周面とハブとの間に、回転中心軸に沿って前後に延在するアプローチ通路空間が設けられている。そのため、このアプローチ通路空間を介してハブの前方に配置された機器へ容易にアクセス可能となり、よって風力発電装置のメンテナンス性を向上させることができる。さらに、アプローチ通路空間を形成するための突出部により、スピナーの構造強度及び剛性の向上も図れる。
また、スピナーに設けられた突出部にアプローチ通路空間が配置されているので、アプローチ通路空間を確保しながらもスピナーの大型化を抑制できる。すなわち、アプローチ通路空間を確保可能な程度にスピナーの径を全体的に大きくするとスピナーの大型化は避けられないが、上記実施形態ではスピナーに設けられた突出部にアプローチ通路空間を形成したので、スピナーの小型化が図れる。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記スピナーは、前記機器が収容される機器収容空間と、大気側の外部空間とを仕切るように構成されたフェアリングカバーと、前記フェアリングカバーの後方において前記ハブの外周側に設けられ、該ハブに取り付けられたロータヘッドカバーと、を含み、前記突出部は、少なくとも前記ロータヘッドカバーに設けられ、前記風力発電装置は、前記ハブの前方に取り付けられ、前記フェアリングカバーを前記ハブに支持するための第1サポート部をさらに備え、前記第1サポート部には、前記アプローチ通路空間から前記機器収容空間への通路が設けられている。
上記実施形態では、機器が収容される機器収容空間と、大気側の外部空間とを仕切るように構成されたフェアリングカバーを設けたので、機器を風雨から保護することができる。このフェアリングカバーは、ハブの前方に取り付けられた第1サポート部によって支持されるので、第1サポート部によってフェアリングカバーの構造強度及び剛性を向上できる。さらに、ハブの外周側に設けられたロータヘッドカバーによって、ハブ及びその周辺機器も風雨から保護することができる。さらに、第1サポート部には、アプローチ通路空間から前記機器収容空間へのアクセスを許容するように通路が設けられているので、ロータヘッドカバーに設けられたアプローチ通路空間からフェアリングカバー内側の機器収容空間へ容易にアクセスできる。
【0011】
一実施形態において、前記第1サポート部は、前記ハブの前方の取付け部から径方向外側に延在し、前記ロータヘッドカバーの内部空間と前記機器収容空間との間の仕切り壁を形成するフランジ部を含み、前記仕切り壁は、前記アプローチ通路空間と前記機器収容空間とを連通する第1開口を有する。
上記実施形態では、第1サポート部が、ハブ前方の取付け部から径方向外側に延在し、ロータヘッドカバーの内部空間と機器収容空間との間の仕切り壁を形成するように構成されている。そのため、この第1サポート部によって、機器収容空間内に発生した漏出オイルや固形ごみがハブ側の空間に侵入することを防止できる。
【0012】
一実施形態において、前記ロータヘッドカバーは、前方側が前記第1サポート部を介して前記ハブに支持されている。
第1サポート部は、フェアリングカバーをハブに支持するとともに、ロータヘッドカバーもハブへ支持するように構成されているので、フェアリングカバー及びロータヘッドカバーの支持構造を共通化することができる。その結果、フェアリングカバー及びロータヘッドカバーの支持構造の簡素化及び軽量化が図れるとともに、ロータヘッドカバーの構造強度の向上にも貢献できる。
【0013】
一実施形態に係る風力発電装置は、前記ハブの後方に取り付けられ、前記ロータヘッドカバーを前記ハブに支持するための第2サポート部をさらに備え、前記第2サポート部には、前記アプローチ通路空間から前記機器収容空間への通路が設けられている。
これにより、アプローチ通路空間を介した機器へのアクセスを妨げることなく、第1サポート部及び第2サポート部によってロータヘッドカバーを安定してハブへ固定することができる。
【0014】
一実施形態に係る風力発電装置は、前記ハブの後方に位置し、前記支持軸を支持するためのナセルをさらに備え、前記ナセルの前方側の壁面には第2開口が形成されており、前記第2開口は、前記アプローチ通路空間が前記ハブの上方に位置するような角度位置に前記ハブが停止されたとき、前記アプローチ通路空間と前記ナセルの内部空間とを連通するように設けられる。
このように、ナセルの前方側の壁面に形成された第2開口によって、ナセルの内部空間からアプローチ通路空間を介した機器へのアクセスが可能となる。なお、アプローチ通路空間はハブとともに回転するため、第2開口は、メンテナンス時にアプローチ通路空間とナセルの内部空間とを連通するように設けられている。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記ハブには、前記アプローチ通路空間と前記ハブの内部空間とを連通する第3開口が形成されている。
これにより、ハブの内部空間に配置された機器に対しても、第3開口によってアプローチ通路空間を介したアクセスが可能となる。
【0016】
幾つかの実施形態では、前記ハブの内部空間に設けられ、前記スピナーの内部空間を冷却するための冷却装置をさらに備え、
前記冷却装置は、前記アプローチ通路空間を介してアプローチ可能に構成される。
これにより、ハブの内部空間に配置された冷却装置に対しても、アプローチ通路空間を介したアクセスが可能となる。
【0017】
一実施形態に係る風力発電装置は、前記フェアリングカバーの内部空間に設けられ、前記アプローチ通路空間から侵入した作業員の昇降用構造体をさらに備える。
このように、フェアリングカバーの内部空間に昇降用構造体を設けることにより、作業員の鉛直方向の移動も容易となり、機器のメンテナンス性の更なる向上が可能となる。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記機器は、発電機、油圧ポンプ、増速機、又はスリップリングの少なくとも何れかを含む。
【0019】
一実施形態において、前記アプローチ通路空間は、前記ブレードと同数設けられている。
これにより、メンテナンスを行う際に、ハブを回転させてアプローチ通路空間を作業員が通過可能な位置(例えばハブ上方)に移動させるための位置合わせが容易となる。すなわち、ハブを大きく回転させることなく、アプローチ通路空間の位置合わせを行うことができる。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記フェアリングカバーは、前記機器から漏出したオイルを受けるためのオイル貯留空間を形成するように構成されており、前記フェアリングカバーに設けられ、前記オイル貯留空間内に貯留された前記オイルを排出するためのポンプをさらに備える。
このように、フェアリングカバーがオイル貯留空間を形成するように構成されているので、機器から漏出したオイルが外部へ排出されることを防止できる。また、フェアリングカバーにポンプを設けることによって、フェアリングカバー内に溜まったオイルを外部へ排出することができる。
【0021】
本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置のメンテナンス方法は、
ナセルと、少なくとも2本のブレードと、前記少なくとも2本のブレードが取り付けられるハブと、前記ハブを貫通するように、前記ハブの回転中心軸に沿って延在する支持軸と、前記回転中心軸の軸方向に関して前記ハブ側を前方とし、前記ナセル側を後方としたとき、前記ハブより前方において前記支持軸によって支持される機器と、前記ハブ及び前記機器を覆うように設けられ、前記ハブとともに回転するように構成されたスピナーと、を備えた風力発電装置のメンテナンス方法であって、
前記スピナーは、前記少なくとも2本のブレードのうち隣り合うブレードの間に、前記回転中心軸を中心とした径方向外側に突出した突出部を有し、前記突出部の内周面と前記ハブとの間に前記回転中心軸に沿って前後に延在するアプローチ通路空間が形成されており、
前記アプローチ通路空間が前記ハブの上方に位置するような角度位置で前記ハブを停止するハブ停止ステップと、
前記ハブが前記角度位置に停止された状態で、前記ハブの上方の前記アプローチ通路空間を通って前記ハブ側から前記機器にアクセスするアクセスステップと、
前記機器をメンテナンスするメンテナンスステップと、を備えることを特徴とする。
【0022】
上記風力発電装置のメンテナンス方法によれば、アプローチ通路空間を介してハブの前方に配置された機器へ容易にアクセス可能となり、よって風力発電装置のメンテナンス性を向上させることができる。
【0023】
一実施形態において、前記メンテナンスステップでは、前記フェアリングカバーの少なくとも一部を開放して前記機器収容空間と外部空間との間で前記機器を搬送する。
このように、フェアリングカバーの少なくとも一部を開放して、例えばクレーン等によって機器収容空間と外部空間との間で機器を搬送することによって、大型の機器でも容易にメンテナンスできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ハブ及び機器を覆うように設けられたスピナーが径方向外側に突出した突出部を有しており、この突出部の内周面とハブとの間に、回転中心軸に沿って前後に延在するアプローチ通路空間が設けられている。そのため、このアプローチ通路空間を介してハブの前方に配置された機器へ容易にアクセス可能となり、よって風力発電装置のメンテナンス性を向上させることができる。さらに、アプローチ通路空間を形成するための突出部により、スピナーの構造強度及び剛性の向上も図れる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0027】
図1は、一実施形態に係る風力発電装置1の全体構成の概略を示す図である。
同図に示すように、一実施形態に係る風力発電装置1は、主として、少なくとも2本のブレード2と、ハブ4と、支持軸6と、ハブ4より前方に配置される機器7と、ハブ4及び機器7を覆うように設けられたスピナー51とを備える。
【0028】
これに加えて、風力発電装置1は、支持軸6が取り付けられるナセル8と、ナセル8を支持するタワー9とをさらに備えていてもよい。タワー9は洋上又は陸上に立設される。ナセル8は、タワー9の上端部に取り付けられるナセル台板8aと、ナセル台板8aによって支持され、ナセル8の内部空間に配置される機器を覆うように構成されたナセルカバー8bとを含む。タワー9とナセル8との間にはヨー旋回座軸受10が設けられていてもよく、その場合、ナセル8はタワー9に対してヨー方向に旋回するようになっている。
なお、本明細書における“前方”とは、ハブ4の回転中心軸Oの方向に対してハブ4側を前方とし、ナセル8側を後方とした前後方向における前方のことである。ただし、この前後方向は必ずしも回転中心軸Oに平行な方向でなくともよい。また、上記した「前後方向」に関する定義は、アップウィンド型の風力発電装置1のみならずダウンウィンド型の風力発電装置にも適用されるものである。
【0029】
また、風力発電装置1は、ブレード2及びハブ4を含むロータの回転エネルギーを用いて発電を行うように構成された発電機12を備えている。発電機12は、ドライブトレイン11を介してロータの回転エネルギーが伝達されるように構成されていてもよい。この場合、ドライブトレイン11として、油圧トランスミッション20を用いた構成(
図2及び
図3参照)であってもよいし、ギヤ式の増速機を用いた構成であってもよい。また、ドライブトレイン11を設けずに、ハブ4と発電機12とを主軸で直結させた構成であってもよい。
【0030】
上記風力発電装置1における各部位の詳細な構成について説明する。なお、スピナー51の構成については後述する。
【0031】
少なくとも一本のブレード2はハブ4に取り付けられている。風力発電装置1が複数のブレード2(例えば3枚)を有する場合、複数のブレード2はハブ4に対して放射状に取り付けられる。ブレード2及びハブ4を含むロータは風力エネルギーによって回転するように構成されている。ハブ4は、鋳物で一体的に構成されていてもよく、ブレード2の取り付け部を有している。
【0032】
支持軸6は、ハブ4を貫通するように、ハブ4の回転中心軸Oに沿って延在している。具体的な構成例において、支持軸6は、ハブ4の回転中心軸Oに沿って延在した直線部6aと、該直線部6aから湾曲して鉛直方向に延びるエルボ状の湾曲部6bとを含んでいる。この湾曲部6bはナセル台板8aによって支持される。支持軸6は、ナセル台板8aと一体成形された鋳物で構成されていてもよい。
【0033】
機器7は、ハブ4より前方において支持軸6によって支持される。例えば機器としては、発電機12又はスリップリングであってもよいし、ドライブトレイン11が油圧トランスミッションである場合には油圧ポンプ21(
図2及び
図3参照)であってもよいし、ドライブトレイン11が増速機である場合には増速機自体であってもよい。また、機器はドライブトレイン11の構成部品に限定されるものではなく、他にも冷却装置や配電盤等の他の機器であってもよい。
このように、上記実施形態では、ハブ4より前方に機器7を配置したので、ナセル内部に当該機器7の設置スペースを設ける必要がなく、ナセル8を小型化してナセル重量を軽減できる。
【0034】
ここで、一実施形態として、
図2及び
図3に示すように油圧トランスミッション20を備えた風力発電装置1の構成例について説明する。この風力発電装置1は、ハブ4の前方に油圧ポンプ21(機器7の一例)が配置された構成となっている。なお、
図2は一実施形態に係る風力発電装置1の油圧ポンプ21とスピナー51の構成例を示す断面図である。
図3は
図2に示す風力発電装置1の油圧ポンプ21の軸方向に沿った油圧ポンプ21周辺の断面図である。
【0035】
図2及び
図3に示すように、一実施形態に係る風力発電装置1において、支持軸6は、回転中心軸Oに沿って延在する直線部6aと、一端が直線部6aの端部に接続され、他端がナセル台板8aに支持された湾曲部6bとを含んでいる。直線部6a及び湾曲部6bは共に円筒状に形成されている。ハブ4は、主軸受13,13を介して、支持軸6の直線部6aに回転自在に支持されている。主軸受13,13は、例えば、前方と後方に1つずつ設けられる。
【0036】
また、一実施形態に係る風力発電装置1は、油圧トランスミッション20をさらに備えている。
油圧トランスミッション20は、ハブ4の回転によって駆動される油圧ポンプ21と、油圧ポンプ21で生成される圧油によって駆動される油圧モータ22と、油圧ポンプ21と油圧モータ22との間に設けられる油配管(高圧油配管28及び低圧油配管29)とを含む。
【0037】
高圧油配管28及び低圧油配管29は、支持軸6の内部空間に延在している。具体的に、支持軸6の直線部6aの内部空間には、高圧油配管28及び低圧油配管29が収容されている。直線部6aに接続された湾曲部6bは一部が切り欠かれており、この切り欠かれた部位にて湾曲部6bの内部空間は外部空間に連通している。そして、高圧油配管28の一方の端部は油圧ポンプ21の高圧油流路40に接続され、他方の端部は、湾曲部6bの切り欠かれた部位から外部へ延出し、油圧モータ22に接続されている。同様に、低圧油配管29の一方の端部は油圧ポンプ21の低圧油流路37に接続され、他方の端部は、湾曲部6bの切り欠かれた部位から外部へ延出し、油圧モータ22に接続されている。
【0038】
油圧ポンプ21は、ハブ4に固定されるロータ部23と、支持軸6に固定されるステータ部24とを含む。
ロータ部23は、ハブ4の油圧ポンプ21側の端部に固定され、該端部を起点としてハブ4から離れる方向に支持軸6の軸方向に沿って延在するように構成されている。ステータ部24は、ロータ部23の内周側に配置され、支持軸6に支持されるように構成されている。ステータ部24とロータ部23により圧油生成機構が収容される油圧ポンプ21の内部空間が形成される。ステータ部24とロータ部23との間には、ポンプ軸受25,26が配置されており、これらのポンプ軸受25,26を介してステータ部24とロータ部23とが相対的に回転可能に構成されている。また、圧油生成機構から外部へ作動油が漏れ出ることを防止するために、ステータ部24とロータ部23との間には、一対のシール部42,42が配置されている。
【0039】
一実施形態において、圧油生成機構は、リングカム39、シリンダ30、ピストン32、低圧弁及び高圧弁(共に不図示)を含む。
リングカム39は周方向に並ぶ多数の凹凸(ローブ)を有し、ロータ部23の内周面上に設けられてロータ部23とともに回転するように構成されている。シリンダ30はステータ部24のシリンダブロック31に設けられ、リングカム39の内周側に放射状に配置されている。ピストン32はリングカム39の凹凸によって駆動されて各シリンダ30内を摺動するように構成されている。シリンダ30とピストン32により作動室34(油圧室)が画定されている。そして、この作動室34に対して作動油を供給および排出するための低圧弁及び高圧弁が作動室34に連通可能に設けられている。各作動室34は、シリンダブロック31の内部に設けられた高圧油流路40を介して高圧油配管28に接続されるとともに、シリンダブロック31の外周に設けられた低圧油流路37を介して低圧油配管29に接続されている。
【0040】
上記構成を有する風力発電装置1においては、風を受けてブレード2が回転すると、ブレード2が取り付けられたハブ4も回転する。ハブ4の回転により、ハブ4に取り付けられた油圧ポンプ21のロータ部23が回転する。ロータ部23の回転により、ロータ部23の内周面に取り付けられたリングカム39が回転する。
そして、リングカム39が回転することにより、リングカム39の多数の凹凸(ローブ)によってピストン32がシリンダ30の軸方向に往復運動を繰り返す。このピストン32の往復運動により作動室34の容積が周期的に変化する。作動室34の容積が減少するとき、作動室34の中の作動油が圧縮され、圧縮された作動油が高圧油になって、高圧油配管28に吐出される(圧縮工程)。作動室34の容積が増大するとき、作動室34の中に作動油が吸入される(吸入工程)。
【0041】
支持軸6の内部を貫通するように配設された高圧油配管28に高圧油が吐出されると、高圧油は高圧油配管28を介して、油圧モータ22に供給される。高圧油の油圧により油圧モータ22が駆動されて、油圧モータ22の出力軸は回転する。油圧モータ22の出力軸の回転が発電機12の回転シャフトに伝達され、発電機12の回転シャフトが回転する。発電機12は回転シャフトの運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、電力を生成する。
【0042】
高圧油は油圧モータ22に対して仕事をすると、油圧が低下し低圧油となる。低圧油は支持軸6の内部を貫通するように配設された低圧油配管29を介して、油圧モータ22から油圧ポンプ21に供給される。油圧ポンプ21に供給された低圧油は油圧ポンプ21により、再度油圧が高められ、高圧油となって、再び油圧モータ22に供給される。
【0043】
次いで、
図4を参照して、スピナー51の詳細な構成について説明する。なお、
図4は一実施形態に係る風力発電装置のスピナー51及びその周辺構造を示す斜視図である。
一実施形態において、スピナー51は、ハブ4及び機器7を覆うように設けられ、ハブ4とともに回転するように構成されている。このスピナー51は、少なくとも2本のブレード2のうち隣り合うブレード2の間に、回転中心軸Oを中心とした径方向外側に突出した突出部51aを有している。そして、少なくとも2本のブレード2のうち隣り合うブレード2の間には、ハブ4側から機器7側にアクセスするためのアプローチ通路空間100が形成されている。このアプローチ通路空間100は、突出部51aの内周面とハブ4との間に回転中心軸Oに沿って前後に延在している。アプローチ通路空間100は、例えばメンテナンス時に作業員120が通って機器7にアクセスしたり、機器7を搬送したりするために用いられる。
【0044】
このような構成により、アプローチ通路空間100を介してハブ4の前方に配置された機器7へ容易にアクセス可能となり、よって風力発電装置1のメンテナンス性を向上させることができる。さらに、アプローチ通路空間100を形成するための突出部51aにより、スピナー51の構造強度及び剛性の向上も図れる。また、スピナー51に設けられた突出部51aにアプローチ通路空間100が配置されているので、アプローチ通路空間100を確保しながらもスピナー51の大型化を抑制できる。
【0045】
ここで、
図5A及び
図5Bを参照して、スピナー51の具体的な構成例について説明する。なお、
図5Aは一構成例におけるスピナー51の構造を説明するための図である。
図5Bは他の構成例におけるスピナー51の構造を説明するための図である。
図5A及び
図5Bに示すスピナー51は、いずれも回転中心軸Oに直交する平面で切断した断面図を示すものである。
【0046】
図5A及び
図5Bに示すように、一実施形態において、スピナー51は、回転中心軸Oを中心軸とした円筒部51bと、隣り合うブレード2(
図4参照)の間に設けられ、径方向外側に突出した突出部51aとを有している。なお、円筒部51b及び突出部51aの前方側は湾曲した半球状に形成されている。
【0047】
図5Aに示す構成例では、スピナー51が突出部51aを有しており、回転中心軸Oの方向に前方からスピナー51を視たとき、スピナー51は花弁形状となっている。なお、この場合、第1サポート部53も花弁形状となる。
回転中心軸Oに直交する平面内において、回転中心軸Oから突出部51aの端部までの距離D
1は、回転中心軸Oから円筒部51bの外縁までの距離D
2よりも大きい。また、回転中心軸Oを中心とし、突出部51aの基部を通る円を仮想円Sとしたとき、回転中心軸Oから突出部51aの端部までの距離D
1は、仮想円Sの半径(すなわち回転中心軸Oから仮想円Sまでの距離)Dよりも大きく、且つ、回転中心軸Oから円筒部51bの外縁までの距離D
2は、仮想円Sの半径Dよりも小さい。なお、アプローチ通路空間100は、ハブ4とスピナー51との間に設けられるため、アプローチ通路空間100を形成可能な高さは、回転中心軸Oから突出部51aの端部までの距離D
1とハブ4の径dとの差になる。距離D
1とハブ4の径dとの差は、回転中心軸Oから円筒部51bの外縁までの距離D
2とハブ4の径dとの差よりも大きくなるため、アプローチ通路空間100を広く確保しながらも、スピナー51の大径化を防ぐことができ、よってスピナー51の軽量化が図れる。
【0048】
図5Bに示す構成例では、スピナー51が突出部51aを有しており、回転中心軸Oの方向に前方からスピナー51を視たとき、スピナー51は略三角形状となっている。なお、この場合、第1サポート部53も略三角形状となる。
回転中心軸Oに直交する平面内において、回転中心軸Oから突出部51aの端部までの距離D
1は、回転中心軸Oから円筒部51bの外縁までの距離D
2よりも大きい。また、回転中心軸Oを中心とし、突出部51aを通る円を仮想円Sとしたとき、回転中心軸Oから円筒部51bの外縁までの距離D
2は、仮想円Sの半径(すなわち回転中心軸Oから仮想円Sまでの距離)Dよりも小さい。そして、距離D
1とハブ4の径dとの差は、回転中心軸Oから円筒部51bの外縁までの距離D
2とハブ4の径dとの差よりも大きくなるため、本構成においても、アプローチ通路空間100を広く確保しながらも、スピナー51の大径化を防ぐことができ、よってスピナー51の軽量化が図れる。
【0049】
また、
図4に示すアプローチ通路空間100は、ブレード2と同数設けられていてもよい。これにより、メンテナンスを行う際に、ハブ4を回転させてアプローチ通路空間100を作業員120が通過可能な位置(例えばハブ4の上方)に移動させるための位置合わせが容易となる。すなわち、ハブ4を大きく回転させることなく、アプローチ通路空間100の位置合わせを行うことができる。
【0050】
更なる具体的な構成例として、スピナー51は、機器7を覆うように配置されたフェアリングカバー52と、フェアリングカバー52を支持するための第1サポート部53と、ハブ4の外周側に設けられたロータヘッドカバー54とを備える。フェアリングカバー52、第1サポート部53又はロータヘッドカバー54はFRP材料で形成されていてもよい。
【0051】
フェアリングカバー52は、機器7が収容される機器収容空間110と、大気側の外部空間112とを仕切るように構成される。
ロータヘッドカバー54は、フェアリングカバー52の後方においてハブ4の外周側に設けられ、該ハブ4に取り付けられている。そして、ロータヘッドカバー54には、回転中心軸Oを中心とした径方向外側に突出した突出部54aが設けられている。
第1サポート部53は、ハブ4の前方に取り付けられ、フェアリングカバー52をハブ4に支持するように構成されている。さらに第1サポート部53は、アプローチ通路空間100から機器収容空間110へのアクセスを許容するように構成されている。すなわち、第1サポート部53には、アプローチ通路空間100から機器収容空間110への通路が設けられている。
【0052】
上記実施形態では、機器7が収容される機器収容空間110と、大気側の外部空間112とを仕切るように構成されたフェアリングカバー52を設けたので、機器7を風雨から保護することができる。このフェアリングカバー52は、ハブ4の前方に取り付けられた第1サポート部53によって支持されるので、第1サポート部53によってフェアリングカバー52の構造強度を向上できる。さらに、ハブ4の外周側に設けられたロータヘッドカバー54によって、ハブ4及びその周辺機器も風雨から保護することができる。さらに、第1サポート部53は、アプローチ通路空間100から機器収容空間110へのアクセスを許容するように通路が設けられているので、ロータヘッドカバー54に設けられたアプローチ通路空間100からフェアリングカバー52内側の機器収容空間110へ容易にアクセスできる。
【0053】
また、第1サポート部53は、ハブ4の前方の取付け部4a(
図2参照)から径方向外側に延在し、ロータヘッドカバー54の内部空間と機器収容空間110との間の仕切り壁を形成するフランジ部を含んでいてもよい。このフランジ部は、例えば、支持軸6(
図2参照)の周囲に配置された円盤状の円盤部53aと、円盤部53aの外周縁に設けられた突出部53bとを含んでいる。突出部53bは、ロータヘッドカバー54の突出部54aに対応した形状となっている。このように、第1サポート部53が、ロータヘッドカバー54の内部空間と機器収容空間110との間の仕切り壁を形成するように構成されることにより、機器収容空間110内に発生した漏出オイルや固形ごみがハブ4側の空間に侵入することを防止できる。なお、ここでいう漏出オイルとはグリース等を含むものである。
【0054】
また、ロータヘッドカバー54は、前方側が第1サポート部53を介してハブ4に支持されていてもよい。第1サポート部53は、フェアリングカバー52をハブ4に支持するとともに、ロータヘッドカバー54もハブ4へ支持するように構成することで、フェアリングカバー52及びロータヘッドカバー54の支持構造を共通化することができる。その結果、フェアリングカバー52及びロータヘッドカバー52の支持構造の簡素化及び軽量化が図れるとともに、ロータヘッドカバー54の構造強度の向上にも貢献できる。
【0055】
また、第1サポート部53の突出部53bに対応して、フェアリングカバー52にも径方向外方に突出した突出部52dを設けてもよい。突出部53bは、所定間隔を有して複数設けられていてもよい。例えば、風力発電装置1が、放射状に設けられた3本のブレード2を有する場合、突出部53bは隣り合うブレード2の間にそれぞれ1つずつ設けられ、全体として3つの突出部53bが設けられる。各突出部53bは、隣り合うブレード2の略中間位置に設けられてもよい。
上記第1サポート部53には、通常、運転時や台風等の強風時にロータが受ける風荷重、ロータ回転中のハブ変位に起因した変形荷重、あるいは、漏出オイル又は固形ごみが溜まった状態におけるオイルパン50の重力荷重などの各種の荷重が加わる。そこで、第1サポート部53の外周縁に突出部53bを複数設けることによって、第1サポート部53の構造強度や剛性を向上でき、第1サポート部53を各種の荷重に耐え得る構成とすることができる。
【0056】
さらに、第1サポート部53の突出部53bには、フェアリングカバー52内の機器収容空間102と、ロータヘッドカバー52の内部空間108とを連通する第1開口53cが形成されていてもよい。これにより、メンテナンス時に機器収容空間102と内部空間108とを移動することが可能となる。
【0057】
また、第1サポート部53又はフェアリングカバー52は、アルミを含む材料によって一体成型されていてもよい。アルミを含む材料とは、アルミ合金を含む。これにより、第1サポート部53又はフェアリングカバー52を高強度で且つ軽量に形成できるとともに、成形性を向上でき、複雑な形状であっても容易に作製できる。
【0058】
また、ナセル8の前方側の壁面に第2開口81が形成されていてもよい。この第2開口81は、アプローチ通路空間100がハブ4の上方に位置するような角度位置にハブ4が停止されたとき、アプローチ通路空間100とナセルの内部空間116とを連通するように設けられる。このように、ナセル8の前方側の壁面に形成された第2開口81によって、ナセル8の内部空間116からアプローチ通路空間100を介した機器7へのアクセスが可能となる。なお、アプローチ通路空間100はハブ4とともに回転するため、第2開口81は、メンテナンス時にアプローチ通路空間100とナセル8の内部空間116とを連通するように設けられている。
【0059】
図6は一実施形態に係る風力発電装置のスピナー及びハブを後方側から視た斜視図である。
同図に示すように、一実施形態に係る風力発電装置1は、ハブ4の後方に取り付けられ、ロータヘッドカバー54をハブ4に支持するための第2サポート部80をさらに備えてもよい。その場合、この第2サポート部80は、アプローチ通路空間100から機器収容空間100へのアクセスを許容するように構成される。すなわち、第2サポート部80には、アプローチ通路空間100から機器収容空間100への通路が設けられている。例えば、第2サポート部80は、ハブ4とロータヘッドカバー54との間に介装された複数の棒状部材を含む。複数の棒状部材は、ハブ4からロータヘッドカバー54に向けて放射状に配置され、ロータヘッドカバー54をハブ4へ支持するようになっている。複数の棒状部材は互いに離間して配置され、隣り合う2つの棒状部材の間にアプローチ通路空間100が位置している。
これにより、アプローチ通路空間100を介した機器7へのアクセスを妨げることなく、第1サポート部53及び第2サポート部80によってロータヘッドカバー54を安定してハブ4へ固定することができる。
【0060】
また、ハブ4には、アプローチ通路空間100とハブ4の内部空間とを連通する第3開口82が形成されていてもよい。アプローチ通路空間100が複数設けられている場合、このアプローチ通路空間100に位置に対応して第3開口82も複数設けられる。これにより、ハブ4の内部空間118に配置された機器に対しても、第3開口82によってアプローチ通路空間100を介したアクセスが可能となる。
【0061】
より具体的には、ハブ4の内部空間118に、スピナー51の内部空間を冷却するための冷却装置(不図示)が設けられていてもよい。そして、冷却装置は、アプローチ通路空間100から第3開口82を介してアプローチ可能となっている。これにより、ハブ4の内部空間118に配置された冷却装置に対しても、アプローチ通路空間100を介したアクセスが可能となる。
【0062】
また、フェアリングカバー52の内部空間、すなわち機器収容空間100を含む空間には、作業員の昇降用構造体が設けられていてもよい。これにより、アプローチ通路空間100から機器収容空間100に侵入した作業員の鉛直方向の移動も容易となり、機器7のメンテナンス性の更なる向上が可能となる。
【0063】
一実施形態に係る風力発電装置1は、
図2に示すように、機器7からの漏出オイルを受けるためのオイル貯留空間111を形成するように構成されていてもよい。このように、フェアリングカバー52がオイル貯留空間111を形成するように構成することで、機器7から漏出したオイルが外部へ排出されることを防止できる。
【0064】
具体的構成例として、オイル貯留空間111の少なくとも一部は、オイルパン50によって形成されてもよい。オイルパン50は、機器7からの漏出オイルを受けるとともに、ハブ4に支持されて該ハブ4とともに回転するように構成される。オイルパン50はフェアリングカバー52によって構成されてもよいし、フェアリングカバー52とは別にオイルパンを設けてもよい。
例えば、オイルパン50は、機器7の外周を覆う円筒部50aと、円筒部50aの両端部から径方向内側に延出した一対の隔壁部50b,50cと含んでいる。円筒部50aは、円筒形状に形成されており、ハブ4の回転中心軸Oが円筒の中心軸と一致するように、機器7の外周側に配置されている。一対の隔壁部50b,50cは、円筒部50aの前方側端部から径方向内側に延出した隔壁部50bと、円筒部50aの後方側(ハブ4側)端部から径方向内側に延出した隔壁部50cとを含んでいる。なお、円筒部50a及び一対の隔壁部50b,50cのうち少なくともいずれか2つの部位は、例えば一体成形等によって同一部材で構成されてもよいし、異なる部材で構成されてもよい。そして、上記構成を有するオイルパン50によって、機器7からの漏出オイルを保持するためのオイル貯留空間111の少なくとも一部が形成される。このような構成によって、機器7から漏出オイルが排出した場合であっても、漏出オイルはオイルパン50で受け止められ、オイル貯留空間111内に保持されるため、風力発電装置1の外部へ飛散することを防止できる。すなわち、機器7の下方に、少なくとも凹形状のオイルパン50で囲まれたオイル貯留空間111が存在しているため、機器7からの漏出オイルはこのオイル貯留空間111内に留まり、外部へ漏れ出ることを阻止できる。このオイルパン50では、漏出オイルの他に、機器7から排出された固形ごみを受けてもよい。
【0065】
また、一対の隔壁部50b,50cのうち少なくとも一方の隔壁部とハブ4との間に設けられるシール部55が設けられてもよい。シール部55としては、例えば、パッキン、シリコンゴム、又は液状シール等のシール材が用いられる。
【0066】
一構成例として、オイルパン50は、油圧ポンプ21が収容される機器収容空間102とオイル貯留空間111とを含む内部空間104と、大気側の外部空間106とを仕切るように構成されたフェアリングカバー52で構成されてもよい。このフェアリングカバー52は、円筒部50aと、円筒部50aの両端から径方向内側に延出した一対の隔壁部50b,50dを有する。そして、オイル貯留空間111は、フェアリングカバー52と、回転部3としての第1サポート部53とによって形成されることになる。
他の構成例として、オイルパン50は、フェアリングカバー52及び第1サポート部53によって構成されてもよい。その場合、円筒部50a及び前方の隔壁部50bはフェアリングカバー52によって形成され、後方の隔壁部50cは第1サポート部53によって形成される。そして、オイル貯留空間111は、フェアリングカバー52と第1サポート部53とによって形成されることになる。
【0067】
更なる具体的構成例として、フェアリングカバー52は、油圧ポンプ21の外周側から前面までを覆うように設けられた半球状のカバー部52aと、カバー部52aの端部から径方向内側に延出した接続フランジ部52bとを備える。そして、カバー部52aによってオイルパン50の円筒部50a及び隔壁部50bが形成され、接続フランジ部52bによって隔壁部50dが形成される。接続フランジ部52bは、回転中心軸Oの直交平面に沿って形成されてもよい。このフェアリングカバー52によって、機器収容空間102及びオイル貯留空間111を含む内部空間104と、大気側の外部空間106とが仕切られるようになっている。このような構成とすることにより、フェアリングカバー52が、漏出オイルを保持するためのオイルパン50として機能するとともに、機器収容空間102及びオイル貯留空間111を含む内部空間104と大気側の外部空間106との仕切りとしても機能するように構成されていることから、フェアリングカバー52によって油圧ポンプ21を風雨等の周囲環境から保護することもできる。また、フェアリングカバー52の内側に、構造強度及び剛性の向上を目的とした強度フランジ部52cを設けてもよい。
【0068】
ロータヘッドカバー54は、ハブ4の外周側に位置し、第1サポート部53を介してハブ4に支持されている。このロータヘッドカバー54によって風雨等の周囲環境からハブ4を保護することができる。さらにロータヘッドカバー54の内部空間108とオイル貯留空間111とが第1サポート部53によって隔離されていてもよい。これにより、オイル貯留空間111内に溜まった漏出オイルがロータヘッドカバー54側の内部空間108に流入することを防止できる。なお、ロータヘッドカバー54の内部空間108とオイルパン50のオイル貯留空間111とが、ハブ4側の隔壁部50c(又は50d)によって仕切られていてもよい。
【0069】
第1サポート部53は、ロータヘッドカバー54の内部空間108とオイル貯留空間111との間の仕切り壁を形成するように、ハブ4の前方の取付け部4aから径方向外側に延在した構成となっている。これにより、第1サポート部53によってロータヘッドカバー54の内部空間108とオイル貯留空間111とを隔離できる。
また、フェアリングカバー52は、第1サポート部53を介してハブ4に支持される構成としてもよい。これにより、フェアリングカバー52で構成されるフェアリングカバー52を着脱自在な構成とすることもでき、例えばメンテナンス時にフェアリングカバー52の少なくとも一部を取り外して油圧ポンプ21に容易にアクセス可能となる。
【0070】
また、風力発電装置1は、フェアリングカバー52に設けられ、オイル貯留空間111内に貯留された漏出オイルを検出するためのオイル検出部と、この漏出オイルを排出するためのポンプ(不図示)と、を更に備えていてもよい。ポンプの起動に際しては、オイル貯留空間111の漏出オイルの貯留量をオイル検出部で検出し、その貯留量が予め設定されたしきい値を超えたときにポンプを起動してもよいし、オイル検出部で漏出オイルの存在が検出されたときにポンプを起動してもよい。また、フェアリングカバー52にポンプを設けることによって、フェアリングカバー52内に溜まったオイルを外部へ排出することができる。
【0071】
さらに、第1サポート部53は、円盤部53a及び突出部53b(
図4及び
図5参照)の端部から前方に屈曲した接続フランジ部53gを有していてもよい。接続フランジ部53gは、回転中心軸Oの直交平面に沿って形成される。この第1サポート部53の接続フランジ部53gと、フェアリングカバー52の接続フランジ部52bとが当接した状態で互いに締結されることによって、フェアリングカバー52が第1サポート部53に支持されてもよい。
【0072】
図7A又は
図7Bに示すように、一実施形態における第1サポート部53又はフェアリングカバー52が分割構造を有していてもよい。なお、
図6Aは複数のセクション53e,53fからなる第1サポート部53の構成例を示す図である。
図6Bは複数のセクション52f,52gからなるフェアリングカバー52の構成例を示す図である。
【0073】
図7Aに示すように、第1サポート部53は、回転中心軸Oを中心として放射状に延びる分割線53dによって、ハブ4(
図2参照)の周方向に配置される複数のセクション53e,53fに分割された構成となっている。このとき、第1サポート部53は、回転中心軸Oを含む平面に沿った複数の分割線53dにより複数のセクション53e,53fに分割された構成であってもよい。さらに第1サポート部53は、少なくとも2以上の同一形状のセクション53e,53fを含んでいてもよい。図示の例においては、突出部53bを含む3つのセクション53eと、突出部53bを含まない3つのセクション53fとから第1サポート部53が構成されている。これにより、成形用の型の種類を少なくすることができるため、製造コストの削減が可能となる。
図7Bに示すように、フェアリングカバー52は、回転中心軸Oを中心として放射状に延びる分割線52eによって、ハブ4(
図2参照)の周方向に配置される複数のセクション52f,52gに分割された構成となっている。さらにフェアリングカバー52は、少なくとも2以上の同一形状のセクション52f,52gを含んでいてもよい。図示の例においては、突出部52dを含む6つのセクション52fと、突出部52dを含まない3つのセクション52gとからフェアリングカバー52が構成されている。これにより、成形用の型の種類を少なくすることができるため、製造コストの削減が可能となる。
このような構成とすることにより、大型の風力発電装置1であっても、第1サポート部53の各セクション53e,53f又はフェアリングカバー52の各セクション52f,52gを小型化できるので、第1サポート部53又はフェアリングカバー52の製作性及び輸送性の向上が図れる。
【0074】
次いで、各部位の連結部について説明する。
図8Aはフェアリングカバー52のセクション52f,52g同士の連結部の一例を示す断面図である。
同図に示すように、フェアリングカバー52のセクション52fの端部には断面L字型のブラケット57が接続されている。具体的には、セクション52f及びブラケット57には、セクション52fの端部とブラケット57の一方の端部とを重ね合わせた状態で貫通するボルト孔61が設けられており、このボルト孔61に挿入されたボルト62によってセクション52fとブラケット57とが締結されるようになっている。そして、セクション52fとブラケット57とが重なって互いに締結されている領域を覆うように第1シール部60が設けられている。例えば、第1シール部60は、ボルト62の端部を覆うように設けられたシール部材63と、このシール部材63を表面を覆うように設けられたFRP層64とを含む。FRP層は、複数積層された強化繊維シートが樹脂により固化されたものである。この接続部はオーバーレイ工法によって施工されてもよい。同様に、隣接するセクション52g(
図6参照)の端部には断面L字型のブラケット58の一方の端部が接続されており、セクション52gとブラケット58との接続部も上記と同様の構成を有している。
また、これらのブラケット57,58の他方の端部には、互いに当接した状態で貫通するボルト孔66が設けられており、このボルト孔66に挿入されたボルト67によってセクション52fとブラケット57とが締結されるようになっている。そして、ブラケット57とブラケット58との間をシールするための第2シール部68が設けられている。第2シール部68としては、例えば、パッキン、シリコンゴム、又は液状シール等のシール材が用いられる。
【0075】
図8Aに示した構成は、第1サポート部53とフェアリングカバー52との間の接続部にも適用することができる。すなわち、一実施形態に係る風力発電装置1においては、第1サポート部53とフェアリングカバー52とを連結するための連結部を備える。そして、連結部は、第1サポート部53及びフェアリングカバー52のそれぞれの端部に接続された一対のブラケット(ブラケット57,58に相当)と、第1サポート部53及びオイルパンの各々と、一対のブラケットの各々との接続部を覆うように設けられた第1シール部(第1シール部60に相当)と、一対のブラケットの間をシールするための第2シール部(第2シール部68に相当)とを含む。
このように、第1サポート部53とフェアリングカバー52とを連結するための連結部がフェアリングカバー52のそれぞれの端部に接続された一対のブラケットを含むことにより、第1サポート部53とフェアリングカバー52との連結強度を向上できるとともに、第1サポート部53及びフェアリングカバー52それぞれの構造強度や剛性の向上にも寄与する。さらに、これら一対のブラケット部の接続部を覆うように設けられた第1シール部と、一対のブラケットの間をシールするための第2シール部とが設けられているため、これらによってシール性の向上が図れる。
【0076】
図8Bは第1サポート部53とフェアリングカバー52の連結部の一例を示す断面図である。
同図に示すように、フェアリングカバー52と第1サポート部53とは、断面L字型のブラケット59によって接続されている。具体的には、フェアリングカバー52の端部とブラケット59の一方の端部とを重ね合わせた状態で貫通するボルト孔71が設けられており、このボルト孔71に挿入されたボルト72によってフェアリングカバー52とブラケット59とが締結される。同様に、第1サポート部53の端部とブラケット59の他方の端部とを重ね合わせた状態で貫通するボルト孔76が設けられており、このボルト孔76に挿入されたボルト77によって第1サポート部53とブラケット59とが締結される。
そして、フェアリングカバー52とブラケット59とが重なって互いに締結されている領域を覆うように第3シール部70が設けられており、第1サポート部53とブラケット59とが重なって互いに締結されている領域を覆うように第4シール部75が設けられている。例えば、第3シール部70は、ボルト72の端部を覆うように設けられたシール部材73と、このシール部材73を表面を覆うように設けられたFRP層74とを含む。同様に、第4シール部75は、ボルト77の端部を覆うように設けられたシール部材78と、このシール部材78を表面を覆うように設けられたFRP層79とを含む。
なお、
図8A及び
図8Bに示したブラケット57,58,59としては、例えば、鋼製、アルミ合金製等が用いられる。
【0077】
また、
図8A及び
図8Bに示したブラケット57,58,59の少なくとも何れかが、導電性材料で形成された導電性ブラケットであってもよい。この導電性ブラケットは、雷電流を導くように構成されたアース用電流経路(不図示)に接続されている。アース用電流経路は、風力発電装置1の被雷によって生じた雷電流をアースするために設けられている。このように、ブラケット57,58,59の少なくとも何れかを導電性材料で形成することによって、この導電性ブラケットにレセプタの役割を担わせることができる。
【0078】
以下、本実施形態に係る風力発電装置1のメンテナンス方法について説明する。
図1及び
図4に示すように、風力発電装置1のメンテナンス時、まず、ハブ停止ステップにおいて、アプローチ通路空間100がハブ4の上方に位置するような角度位置でハブ4を停止する。
続いて、アクセスステップにおいて、ハブ4が前記角度位置に停止された状態で、ハブ4の上方のアプローチ通路空間100を通ってハブ4側から機器7にアクセスする。例えば、作業員120は、ナセル8の内部空間116から第2開口82を通ってアプローチ通路空間100に入る。そして、アプローチ通路空間100を通ってハブ4の前方側まで移動し、第1開口53cを通って機器収容空間110に侵入する。
次いで、メンテナンスステップにおいて、機器7をメンテナンスする。このメンテナンスステップでは、フェアリングカバー54の少なくとも一部を開放して、クレーン等の昇降機構を用いて、機器収容空間100と外部空間112との間で機器を搬送してもよい。
【0079】
上記風力発電装置のメンテナンス方法によれば、アプローチ通路空間100を介してハブ4の前方に配置された機器7へ容易にアクセス可能であり、よって風力発電装置1のメンテナンス性を向上させることができる。
また、フェアリングカバー52の少なくとも一部を開放して、例えばクレーン等によって機器収容空間110と外部空間112との間で機器7を搬送することによって、大型の機器7でも容易にメンテナンスできる。
【0080】
以上説明したように、上記風力発電装置1では、ハブ4及び機器7を覆うように設けられたスピナー51が径方向外側に突出した突出部51aを有しており、この突出部51aの内周面とハブ4との間に、回転中心軸Oに沿って前後に延在するアプローチ通路空間100が設けられている。そのため、このアプローチ通路空間100を介してハブ4の前方に配置された機器7へ容易にアクセス可能となり、よって風力発電装置1のメンテナンス性を向上させることができる。さらに、アプローチ通路空間100を形成するための突出部51aにより、スピナー51の構造強度の向上も図れる。
また、スピナー51に設けられた突出部51aにアプローチ通路空間100が配置されているので、アプローチ通路空間100を確保しながらもスピナー51の大型化を抑制できる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。上述した実施形態のうち複数を適宜組み合わせてもよい。
【0082】
例えば、風力発電装置1のスピナー51として、
図9A〜
図9Fに示す第1変形例〜第4変形例を採用してもよい。
図9Aに示す第1変形例においては、スピナー51Aは、機器7を覆うように設けられたフェアリングカバー52Aと、ハブ4を覆うように設けられたロータヘッドカバー54Aとを含む。ロータヘッドカバー54Aは、前方側に設けられた第3サポート部86と後方側の第2サポート部80とによってハブ4に支持される。ロータヘッドカバー54Aは、回転中心軸Oを中心とした径方向外側に突出した突出部を有しており、この突出部の内周面とハブ4との間に、回転中心軸Oに沿って前後に延在するアプローチ通路空間100が形成されている。
また、
図8Aに示すように、フェアリングカバー52Aの内周面に防火層90が設けられていてもよい。防火層90は、例えば、添加材を入れた樹脂を用いた不燃性の塗料を、フェアリングカバー52Aの内周面に施工することで形成される。これにより、ハブ4の前方の機器7が収容される機器収容空間110で発火が起こっても、その影響を最小限にとどめることが可能になる。
【0083】
図9Bに示す第2変形例においては、スピナー51Bは、機器7を覆うように設けられたフェアリングカバー52Bと、フェアリングカバー52Bをハブ4に支持するための第1サポート部53Bと、ハブ4を覆うように設けられたロータヘッドカバー54Bとを含む。ロータヘッドカバー54Bは、前方側に設けられた第3サポート部86と後方側の第2サポート部80とによってハブ4に支持される。すなわち、ロータヘッドカバー54Bの前方側は、第1サポート部53B及び第3サポート部86の2種類の支持機構を有する。ロータヘッドカバー54Bは、回転中心軸Oを中心とした径方向外側に突出した突出部を有しており、この突出部の内周面とハブ4との間に回転中心軸Oに沿って前後に延在するアプローチ通路空間100が形成されている。
【0084】
図9Cに示す第3変形例においては、スピナー51Cは、機器7及びハブ4を覆うように設けられたロータヘッドカバー55Cと、ロータヘッドカバー55C内に設けられ、機器7を覆うように配置された機器カバー56Cとを含む。ロータヘッドカバー55Cは、前方側の第3サポート部86と後方側の第2サポート部80とによってハブ4に支持される。ロータヘッドカバー55Cは、回転中心軸Oを中心とした径方向外側に突出した突出部を有しており、この突出部の内周面とハブ4との間に回転中心軸Oに沿って前後に延在するアプローチ通路空間100が形成されている。
【0085】
図9Dに示す第4変形例においては、スピナー51Dは、機器7及びハブ4を覆うように設けられたロータヘッドカバー55Dと、ロータヘッドカバー55D内に設けられ、機器7を覆うように配置された機器カバー56Dとを含む。ロータヘッドカバー55Dは、前方側の第3サポート部86と後方側の第2サポート部80とによってハブ4に支持される。ロータヘッドカバー55Dは、回転中心軸Oを中心とした径方向外側に突出した突出部を有しており、この突出部の内周面とハブ4との間に回転中心軸Oに沿って前後に延在するアプローチ通路空間100が形成されている。
【0086】
図9Eに示す第5変形例においては、スピナー51Eは、機器7を覆うように設けられたロータヘッドカバー55Eと、ロータヘッドカバー55E内の前端に接続され、機器7の前方に配置された機器カバー56Eとを含む。ロータヘッドカバー55Eは、前方側の第3サポート部86と後方側の第2サポート部80とによってハブ4に支持される。ロータヘッドカバー55Eは、回転中心軸Oを中心とした径方向外側に突出した突出部を有しており、この突出部の内周面とハブ4との間に回転中心軸Oに沿って前後に延在するアプローチ通路空間100が形成されている。
【0087】
図9Fに示す第6変形例においては、スピナー51Fは、機器7及びハブ4を覆うように設けられたロータヘッドカバー55Fと、ロータヘッドカバー55F内に設けられ、機器7の前方に配置された機器カバー57Fとを含む。ロータヘッドカバー55Fは、前方側の第3サポート部86と後方側の第2サポート部80とによってハブ4に支持される。ロータヘッドカバー55Fは、回転中心軸Oを中心とした径方向外側に突出した突出部を有しており、この突出部の内周面とハブ4との間に回転中心軸Oに沿って前後に延在するアプローチ通路空間100が形成されている。
【0088】
上記のいずれの変形例においても、アプローチ通路空間100を介してハブ4の前方に配置された機器7へ容易にアクセス可能となり、よって風力発電装置1のメンテナンス性を向上させることができる。さらに、アプローチ通路空間100を形成するための突出部により、スピナー51A〜51Fの構造強度の向上も図れる。