(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6358883
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
H05B6/12 317
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-151925(P2014-151925)
(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2016-29625(P2016-29625A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2017年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】茂呂 政行
(72)【発明者】
【氏名】横井川 裕司
【審査官】
黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−026167(JP,A)
【文献】
特開2012−004057(JP,A)
【文献】
特開2005−265209(JP,A)
【文献】
特開2004−076954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱コイル、該加熱コイルを制御する制御基板、及び、冷却風を発生させる冷却装置が内部に設けられ、本体吸気口及び本体排気口が形成された本体と、
前記本体排気口の下方に設けられた水受け部と、
を備え、
前記本体排気口が、前記本体の上面部の後部に形成された加熱調理器であって、
前記水受け部は、
該水受け部の前面部の上部に形成され、前記冷却風を該水受け部に流入させる流入口と、
該水受け部の上面部の後部であって前記本体排気口と対向する位置に形成され、該水受け部に流入した前記冷却風を該水受け部から排出させる排気口と、
該水受け部の上面部から下方へ延設された仕切壁と、
を備え、
前記仕切壁の下端部と該水受け部の底面部との間に空間部が形成されており、
前記排気口の前後方向の幅が、前記仕切壁と前記水受け部の背面部との間の幅よりも大きくなっていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記仕切壁の下端部に、前記水受け部の背面部側へ突出する突部が設けられ、
前記排気口の前後方向の幅が、前記仕切壁と前記水受け部の背面部との間の幅よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記仕切壁の背面部は、前記水受け部の上面部から前記仕切壁の下端部へ向かって、前記水受け部の背面部側に傾斜しており、
前記排気口の前後方向の幅が、前記仕切壁と前記水受け部の背面部との間の幅よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
被加熱物を加熱する加熱コイル、該加熱コイルを制御する制御基板、及び、冷却風を発生させる冷却装置が内部に設けられ、本体吸気口及び本体排気口が形成された本体と、
前記本体排気口の下方に設けられた水受け部と、
を備え、
前記本体排気口が、前記本体の上面部の後部に形成された加熱調理器であって、
前記水受け部は、
該水受け部の前面部の上部に形成され、前記冷却風を該水受け部に流入させる流入口と、
該水受け部の上面部の後部であって前記本体排気口と対向する位置に形成され、該水受け部に流入した前記冷却風を該水受け部から排出させる排気口と、
該水受け部の上面部から下方へ延設された仕切壁と、
を備え、
前記仕切壁の下端部と該水受け部の底面部との間に空間部が形成されており、
前記流入口の断面積をD、前記水受け部の前面部と前記仕切壁との間の流路の断面積をE、前記仕切壁の下端部と前記水受け部の底面部との間の流路の断面積をF、前記仕切壁と前記水受け部の背面部との間の流路の断面積をC、前記排気口の断面積をBと定義した場合、
D≦E≦F≦C≦Bとなっていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
前記水受け部の底面部が平坦面になっていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
被加熱物を加熱する加熱コイル、該加熱コイルを制御する制御基板、及び、冷却風を発生させる冷却装置が内部に設けられ、本体吸気口及び本体排気口が形成された本体と、
前記本体排気口の下方に設けられた水受け部と、
を備え、
前記本体排気口が、前記本体の上面部の後部に形成された加熱調理器であって、
前記水受け部は、
該水受け部の前面部の上部に形成され、前記冷却風を該水受け部に流入させる流入口と、
該水受け部の上面部の後部であって前記本体排気口と対向する位置に形成され、該水受け部に流入した前記冷却風を該水受け部から排出させる排気口と、
該水受け部の上面部から下方へ延設された仕切壁と、
を備え、
前記仕切壁の下端部と該水受け部の底面部との間に空間部が形成されており、
前記水受け部の底面部が、前記水受け部の前面部側から背面部側へ向かって、下方に傾斜していることを特徴とする加熱調理器。
【請求項7】
前記本体吸気口は、前記本体の上面部以外の場所に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記本体排気口に、通風自在に該本体排気口を覆う排気口カバーが設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被加熱物を加熱する誘導加熱コイル等の加熱コイル、該加熱コイルを制御する制御基板、及び、加熱コイル及び制御基板等を冷却するための冷却風を発生させる冷却装置(冷却ファン)等を本体内部に収容した加熱調理器が知られている。また、このような加熱調理器においては、加熱コイル及び制御基板等を冷却した冷却風を本体外に排出するための本体排気口が、本体の上面部の後部に設けられるものも多い。このように本体の上面部の後部に本体排気口が設けられた加熱調理器においては、本体の上面部に水等の液体をこぼしてしまった場合、本体上面部に開口した本体排気口から本体内へ水等の液体が浸入してしまい、加熱調理器の故障の原因になってしまう場合もある。
【0003】
そこで、本体の上面部の後部に本体排気口が設けられた従来の加熱調理器には、本体排気口の下方に水受け部を設けるものが提案されており、例えば「本体2と、プレート部51の排気口8と、加熱コイル11と、制御回路150と、基板ケース14と、送風ファン12と、吸気口7と、を備え、基板ケース14に排気口8に対向する有底の第1水受け部14mを設け、前側に連通し第1水受け部14mより浅い有底の第2水受け部14cを設け、側面14dに本体2の底面2aへ導く排水路14eを設け、第2水受け部14cの後側に流通する仕切り壁52を設け、第1水受け部14mに挿入し前側53aと底面53bが水と空気を通す排気ポケットA53を着脱自在に設け、第2水受け部14cの前側14hとプレート部51に間隙54を設け、前記冷却風は第2水受け部14cと仕切り壁52と第1水受け部14mの排気ポケットA53とを経由して排気口8から排気する。」というものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−89432号公報(要約、
図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の加熱調理器は、水受け部として、本体排気口(排気口8)の下方に設けられた第1水受け部と、該第1水受け部の前方に設けられた、該第1水受け部よりも浅い第2水受け部とを備えている。また、第1水受け部と第2水受け部とを連通する流路は、スリットが形成された仕切り壁により閉塞されている。このため、特許文献1に記載の加熱調理器においては、本体排気口から水等の液体が流入した場合、当該液体は、第1水受け部にて一旦溜められ、仕切り壁のスリットを通って第2水受け部に浸入することとなる。このため、特許文献1に記載の加熱調理器は、第2水受け部に浸入した水等の液体を清掃しようしても、仕切り壁があるために第2水受け部を清掃できず、水受け部の清掃性が悪いという課題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の加熱調理器においては、本体排気口を介して冷却風を本体外に排出する場合、第2水受け部に流入した冷却風は、仕切り壁のスリットを通って第1水受け部に流入し、第1水受け部から本体排気口へ流れ出る構成となっている。このため、特許文献1に記載の加熱調理器は、仕切り壁での圧力損失が大きくなってしまい、加熱コイル及び制御基板等の冷却性能が悪くなってしまうという課題があった。なお、冷却性能の悪化を抑制するためには冷却装置(冷却ファン)の回転数を上昇させるという方法もあるが、冷却装置(冷却ファン)の回転数を上昇させると、騒音が大きくなってしまうという新たな課題が発生してしまう。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、本体の上面部の後部に本体排気口が設けられ、該本体排気口の下方に水受け部が設けられた加熱調理器において、従来よりも冷却性能の悪化を抑制でき、水受け部の清掃性を向上させることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る加熱調理器は、被加熱物を加熱する加熱コイル、該加熱コイルを制御する制御基板、及び、冷却風を発生させる冷却装置が内部に設けられ、本体吸気口及び本体排気口が形成された本体と、前記本体排気口の下方に設けられた水受け部と、を備え、前記本体排気口が、前記本体の上面部の後部に形成された加熱調理器であって、前記水受け部は、該水受け部の前面部の上部に形成され、前記冷却風を該水受け部に流入させる流入口と、該水受け部の上面部の後部であって前記本体排気口と対向する位置に形成され、該水受け部に流入した前記冷却風を該水受け部から排出させる排気口と、該水受け部の上面部から下方へ延設された仕切壁と、を備え、前記仕切壁の下端部と該水受け部の底面部との間に空間部が形成されて
おり、前記排気口の前後方向の幅が、前記仕切壁と前記水受け部の背面部との間の幅よりも大きくなっているものである。
また、本発明に係る加熱調理器は、被加熱物を加熱する加熱コイル、該加熱コイルを制御する制御基板、及び、冷却風を発生させる冷却装置が内部に設けられ、本体吸気口及び本体排気口が形成された本体と、前記本体排気口の下方に設けられた水受け部と、を備え、前記本体排気口が、前記本体の上面部の後部に形成された加熱調理器であって、前記水受け部は、該水受け部の前面部の上部に形成され、前記冷却風を該水受け部に流入させる流入口と、該水受け部の上面部の後部であって前記本体排気口と対向する位置に形成され、該水受け部に流入した前記冷却風を該水受け部から排出させる排気口と、該水受け部の上面部から下方へ延設された仕切壁と、を備え、前記仕切壁の下端部と該水受け部の底面部との間に空間部が形成されており、前記流入口の断面積をD、前記水受け部の前面部と前記仕切壁との間の流路の断面積をE、前記仕切壁の下端部と前記水受け部の底面部との間の流路の断面積をF、前記仕切壁と前記水受け部の背面部との間の流路の断面積をC、前記排気口の断面積をBと定義した場合、D≦E≦F≦C≦Bとなっているものである。
また、本発明に係る加熱調理器は、被加熱物を加熱する加熱コイル、該加熱コイルを制御する制御基板、及び、冷却風を発生させる冷却装置が内部に設けられ、本体吸気口及び本体排気口が形成された本体と、前記本体排気口の下方に設けられた水受け部と、を備え、前記本体排気口が、前記本体の上面部の後部に形成された加熱調理器であって、前記水受け部は、該水受け部の前面部の上部に形成され、前記冷却風を該水受け部に流入させる流入口と、該水受け部の上面部の後部であって前記本体排気口と対向する位置に形成され、該水受け部に流入した前記冷却風を該水受け部から排出させる排気口と、該水受け部の上面部から下方へ延設された仕切壁と、を備え、前記仕切壁の下端部と該水受け部の底面部との間に空間部が形成されており、前記水受け部の底面部が、前記水受け部の前面部側から背面部側へ向かって、下方に傾斜しているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、水受け部内の排気経路(本体内部の冷却風が本体排気口へ至るまでの経路)をラビリンス構造とし、本体排気口から流入した水等の液体が本体内へ浸入することを防止している。このため、本発明においては、水受け部内の排気経路において圧力損失が増加することを防止できるため、従来よりも加熱コイル及び制御基板の冷却性能の悪化を抑制できる。また、本発明においては、仕切壁の下方に空間部が形成されているため、水受け部の底面部(換言すると、水受け部に浸入した水等の液体)を容易に清掃でき、従来よりも水受け部の清掃性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る加熱調理器を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の冷却風の流れを説明するための断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の水受け部を示す要部拡大図(断面図)である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の水受け部を示す要部拡大図(断面図)である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る加熱調理器における水受け部の別の一例を示す要部拡大図(断面図)である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る加熱調理器における水受け部の別の一例を示す要部拡大図(断面図)である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の取付方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器を示す斜視図である。
図2は、
図1のZ−Z断面図である。まず、
図1及び
図2を用いて、本実施の形態に係る加熱調理器100の全体構成について説明する。
【0012】
加熱調理器100は、略直方体形状の本体1を備えている。この本体1は、本体1の底面部、前面部、側面部及び背面部を構成する筐体2と、本体1の上面部を構成するトッププレート3とを備えている。トッププレート3は、例えば耐熱ガラスのような非磁性材である。このトッププレート3の下面側、つまり本体1の内部には、被加熱物を加熱する加熱コイル20が例えば複数設けられている。加熱コイル20は、略密着して渦巻状に巻かれた抵抗コイルや、誘導加熱コイル等である。また、トッププレート3上面には、加熱部を表示する略円形のサークルライン8が加熱コイル20の位置に対応して印刷されており、鍋やフライパン等の調理器(換言すると、被加熱物)を正確に加熱コイル20の上方に載置できるようになっている。
【0013】
トッププレート3には、加熱コイル20の加熱量等を操作する複数の操作ボタンを備えた操作表示部9が設けられている。この操作表示部9は、加熱コイル20に対応して設けられている。また、操作表示部9の下方には操作基板が設けられており、操作表示部9の操作ボタンを介して操作基板に操作信号を入力する。筐体2は、仕切板2aによって内部を上下に仕切られており、筐体2の下部空間右側には、制御基板21が設けられている。制御基板21は、操作表示部9下方の操作基板に入力された操作信号にしたがって、加熱コイル20の加熱/停止等の出力制御を行う。この加熱出力の状況は、操作表示部9の間に設けられた表示部11によって表示される。また、筐体2の前方には、前面操作部12が設けられている。この前面操作部12は、操作表示部9及び操作基板と同様に、加熱コイル20の加熱量等を操作できるようになっている。
【0014】
また、筐体2の下部空間左側には、調理庫15が設けられている。この調理庫15には、前方側(使用者側)から出し入れ自在の引き出し16が設けられている。この引き出し16は、調理庫15の前面開口を閉塞自在に閉塞するドア、及び、被加熱物が載置される受け皿等から構成されている。
【0015】
制御基板21の後方には、制御基板21や加熱コイル20等を冷却するための冷却風を発生させる冷却装置22(冷却ファン)が設けられている。また、冷却装置22が吸気するための本体吸気口4が、トッププレート3(本体1の上面部)以外の場所に設けられている。本実施の形態では、本体吸気口4は筐体2の背面部に設けられている。また、冷却装置22によって筐体2内に供給された冷却風を排出する本体排気口6,7が、トッププレート3の後部両側に設けられている。これら本体排気口6,7には、本体排気口6,7から本体1内へ異物が落下して入り込むことを防止するため、これら本体排気口6,7を通風自在に覆う排気口カバー6a,7aが設けられている。なお、本実施の形態では、本体排気口7は、調理庫15内で発生した煙も排出する構成となっている。また、本実施の形態では、本体排気口6,7の少なくとも一方の下方に、水受け部30を設けている。なお、水受け部30の詳細な構成は、後述する。
【0016】
ここで、本体吸気口4の形成位置は、上記の位置に限定されるものではなく、トッププレート3に形成してもよい。しかしながら、本実施の形態では、下記理由により、本体吸気口4をトッププレート3(本体1の上面部)以外の場所に設けている。
すなわち、本体吸気口4がトッププレート3に開口している場合、トッププレート3上に吹きこぼれた煮汁等の液体、調理の際に生じる水蒸気及び油煙等が本体吸気口4から吸気される気流によって本体1内部に流入する可能性がある。そして、これにより、本体1内部の制御基板21等が損傷してしまうことが懸念される。このため、本実施の形態では、上記の液体、水蒸気及び油煙等が本体吸気口4から本体1内へ吸引されることを抑制するため、本体吸気口4をトッププレート3(本体1の上面部)以外の場所に設けている。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の冷却風の流れを説明するための断面図である。なお、この
図3は、
図2と同じ観察方向から加熱調理器100を示したものである。
図3に矢印で示すように、冷却装置22を駆動させることによって本体吸気口4から本体1内に吸引された空気は、冷却風として本体1の下部空間を通って制御基板21を冷却する。その後、冷却風は、本体1の上部空間を通って加熱コイル20を冷却した後、水受け部30を通って本体排気口6,7から排出される。
【0018】
このように、本体排気口6,7は、本体1の内部、つまり、加熱コイル20及び制御基板21等の設置空間と連通している。このため、トッププレート3(本体1の上面部)に水等の液体をこぼしてしまった場合、トッププレート3に開口した本体排気口6,7から本体1内へ水等の液体が浸入してしまい、加熱コイル20及び制御基板21等の故障の原因になってしまう場合もある。そこで、本実施の形態に係る加熱調理器100は、上述のように、本体排気口6,7の少なくとも一方の下方に、水受け部30を設けている。以下、水受け部30の詳細構成について説明する。
【0019】
図4及び
図5は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の水受け部を示す要部拡大図(断面図)である。なお、これら
図4及び
図5は、
図2と同じ観察方向から水受け部30を示したものである。また、これら
図4及び
図5は、水受け部30内の排気経路の寸法及び断面積を示す符号のみが異なるものである。
【0020】
本実施の形態に係る水受け部30は、例えば略直方体(断面四角形状)に形成されている。そして、水受け部30の前面部30bの上部には、水受け部30に冷却風を流入させるための流入口31が形成されている。また、水受け部30の上面部30aの後部であって本体排気口6,7と対向する位置には、水受け部30に流入した冷却風を該水受け部30から排出させるための排気口32が形成されている。また、水受け部30には、該水受け部30の上面部30aから下方へ、仕切壁33が延設されている。この仕切壁33は、水受け部30の上部空間を仕切るものであり、仕切壁33の下端部と水受け部30の底面部30dとの間には、空間部34(間隙)が形成されている。
【0021】
つまり、本実施の形態に係る水受け部30内に形成される排気経路は、冷却風の流れ方向に沿って観察すると、上方に形成された流入口31から水受け部30内に流入した冷却風が下方に形成された空間部34を通り、上方に形成された排気口32から排出される経路となる(
図3参照)。すなわち、本実施の形態に係る水受け部30は、排気経路をラビリンス構造とし、本体排気口6,7から水受け部30内に流入した水等の液体、及び本体排気口6,7から水受け部30内に落下した異物が本体1内へ入り込むことを防止している。
【0022】
このため、本実施の形態に係る水受け部30は、特許文献1(特開2013−89432号公報)に示されている排気経路を閉塞する仕切り壁のような、排気経路において圧力損失を増加させる構成を必要としない。したがって、本実施の形態に係る加熱調理器100は、加熱コイル20及び制御基板21等の冷却性能の悪化を抑制することができる。また、本実施の形態に係る水受け部30は、特許文献1(特開2013−89432号公報)に示されている仕切り壁のような排気経路を閉塞する部材を必要とせず、仕切壁33の下方に空間部34が形成されているため、水受け部30の底面部(換言すると、水受け部30に浸入した水等の液体や異物)を容易に清掃でき、水受け部30の清掃性を向上させることもできる。また、本実施の形態のように、排気経路をラビリンス構造とした水受け部30を構成することにより、本体排気口6,7から使用者等が指を入れた場合でも、本体1内部の充電部(加熱コイル20、制御基板等)に指が触れることを防止でき、加熱調理器100の安全性を向上できるという効果も得られる。
【0023】
さらに、本実施の形態に係る水受け部30においては、仕切壁33の下端部に、背面部30c側へ突出する突部33aが設けられている。このため、
図4に示すように、水受け部30は、排気口32の前後方向の幅L1が仕切壁33と水受け部30の背面部30cとの間の幅(最小幅)L2よりも大きくなっている。これにより、排気口32から水受け部30内に浸入した水等の液体や異物は、平面視において、排気口32と対向する範囲の内部に溜まることとなる。このため、仕切壁33の下端部に突部33aを設けることにより、水受け部30の清掃性をより向上させることができる。
【0024】
さらに、本実施の形態に係る水受け部30においては、排気経路の断面積を
図5のように構成している。詳しくは、流入口31の断面積をD、前面部30bと仕切壁33との間の流路の断面積をE、仕切壁33の下端部と底面部30dとの間の流路の断面積をF、仕切壁33と背面部30cとの間の流路の断面積をC、排気口32の断面積をBと定義した場合、D≦E≦F≦C≦Bとなっている。このため、冷却風は、流れが滞ることなく水受け部30の排気経路を通ることができる。したがって、このように水受け部30の排気経路を構成することにより、該排気経路での圧力損失をより低減でき、加熱コイル20及び制御基板21等の冷却性能の悪化をより抑制することができる。
【0025】
さらに、本実施の形態に係る水受け部30においては、水受け部30の底面部30dを平坦面としている。このため、特許文献1の水受け部のように底面部に段差がないため、水受け部30の清掃性をさらに向上させることができる。また、水受け部30の底面部30dを平坦面とすることにより、水受け部30の排気経路での圧力損失をさらに低減でき、加熱コイル20及び制御基板21等の冷却性能の悪化をさらに抑制することができる。
【0026】
なお、排気口32の前後方向の幅L1を仕切壁33と水受け部30の背面部30cとの間の幅(最小幅)L2よりも大きくするための構成は、仕切壁33の下端部に突部33aを設ける構成以外でも実現することができる。
図6は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器における水受け部の別の一例を示す要部拡大図(断面図)である。
図6に示す水受け部30においては、仕切壁33の背面部33bが、上面部30aから仕切壁33の下端部へ向かって、背面部30c側に傾斜している。このように構成しても、排気口32の前後方向の幅L1を、仕切壁33と水受け部30の背面部30cとの間の幅(最小幅)L2よりも大きくすることができる。つまり、排気口32から水受け部30内に浸入した水等の液体や異物を排気口32と対向する範囲の内部に溜めることができ、水受け部30の清掃性をより向上させることができる。
【0027】
また、本実施の形態では水受け部30の底面部30dを水平な面として構成していたが、
図7に示すように底面部30dを構成してもよい。つまり、前面部30b側から背面部30c側に向かって下方に傾斜するように底面部30dを構成してもよい。このように底面部30dを構成することにより、排気口32から水受け部30内に浸入した水等の液体や異物が背面部30c側に溜まりやすくなり、水受け部30の清掃性をより向上させることができる。また、このように底面部30dを構成することにより、排気口32から水受け部30内に浸入した水等の液体や異物は、本体1内へ浸入しようとしても、底面部30dの傾斜によって背面部30c側に戻される。このため、水等の液体や異物が本体1内に浸入することをより防止することができる。
【0028】
また、本実施の形態に係る加熱調理器100は、水受け部30を有することにより、上記以外にも次のような効果を得ることができる。
図8は、本発明の実施の形態に係る加熱調理器の取付方法を説明するための説明図である。
加熱調理器100をキッチン50の開口部51に取り付ける場合、加熱調理器100の前部を開口部51に挿入し、トッププレート3の前縁部を開口部51の周縁部に引っ掛ける。そして、加熱調理器100の後部を開口部51に挿入していき、キッチン50の開口部51に加熱調理器100を取り付けることとなる。このとき、特許文献1に記載の加熱調理器は水受け部内に指を引っ掛ける箇所がないため、該加熱調理器の後部を開口部51に挿入していく際、トッププレート3の後縁部に指を引っ掛けることとなる。このため、特許文献1に記載の加熱調理器は、加熱調理器100をキッチン50の開口部51に取り付ける際、トッププレート3とキッチン50との間に指を挟んでしまうことが懸念された。しかしながら、本実施の形態に係る加熱調理器100の場合、本体排気口6,7から手を入れて、水受け部30の仕切壁33に指を引っ掛けることができるので、加熱調理器100の後部を開口部51に挿入していく際、トッププレート3とキッチン50との間に指を挟んでしまうことを防止できるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0029】
1 本体、2 筐体、2a 仕切板、3 トッププレート、4 本体吸気口、6 本体排気口、6a 排気口カバー、7 本体排気口、7a 排気口カバー、8 サークルライン、9 操作表示部、11 表示部、12 前面操作部、15 調理庫、16 引き出し、20 加熱コイル、21 制御基板、22 冷却装置、30 水受け部、30a 上面部、30b 前面部、30c 背面部、30d 底面部、31 流入口、32 排気口、33 仕切壁、33a 突部、33b 背面部、34 空間部、50 キッチン、51 開口部、100 加熱調理器。