【実施例1】
【0051】
まず実施例1の気泡混入装置100を
図1〜
図9を参照して説明する。
本実施例1における気泡混入装置100は水道の蛇口102に取り付けた例であって、蛇口102から流出する液体としての水の中に空気の気泡を混入させることにより、単位時間当たりの水量を減少させつつ、水を吐出させ、所要の目的を達成できる蛇口102を構成している。すなわち、気泡混入装置100は、液(水)流中に気泡を混入させて気泡混入液(水)流を生成する機能を有し、少なくとも、液体(水)が流れると共に減圧部104を生成するためのオリフィス106が形成された通液管108と、減圧部104に相対する通液管108に形成され、通液管108の内側と外側とを連通する通気孔110と、通気孔110内又は外側に配置された通気液止体112を含み、通気液止体112は、多孔質体114に撥液膜116によって被膜されている。換言すれば、撥液膜116は、多孔質体114に付着されている。なお、液体としては水の他、温水、油等その他の液体が適用でき、混入する気体としては、一般的には空気であるが、必要に応じ他の気体を混入させることができる。さらに、一般的には(温)水に空気を混入させることに用いられるが、必要に応じた液体に所望の気体を混入させるためにも用いることができる。また、本実施例1は水道の例であるため、以下の説明においては「液体」を「水」として説明する。
【0052】
まず、蛇口102を説明する。
蛇口102は、圧力水供給源から圧力水の供給を受け、その出口開口120から気泡混入水を吐出する機能を有し、本実施例1においては、全体としてパイプ状であって、倒立J字型に形成され、蛇口本体122及び気泡混入装置100を含んでいる。しかし、蛇口102は倒立J字型に限定されず、他の形状を採用することができる。
【0053】
蛇口本体122を主に
図2を参照して説明する。
蛇口本体122は、気泡混入装置100が装着されると共に気泡混入水を出口開口120から吐出する機能を有し、本実施例1においては、所定の直径を有するパイプ状であって、全体として倒立J字型に形成され、その垂立する基部124に続いて右横向きに90度、任意の半径で転向する横向転向部126、当該横向転向部126に続いて水平に延在する水平部128、水平部128に続いて下向きに90度任意の半径で転向する下向転向部130、そして、最後に短い垂下部132が接続され、垂下部132の下端137が出口開口120である。
基部124には気泡混入装置100が挿入できるよう、所定直径を有する装着部134が形成されている。装着部134は、
図2において下端部の入口開口138を有し、最大直径の第1直径D1を有する第1孔140、第1孔140の下流(
図2においては上側)に2番目に大きな第2直径D2を有する第2孔142、第2孔142の下流に3番目に大きな第3直径D3を有する第3孔144、第3孔144の下流に4番目に大きな第4直径D4を有する第4孔146によって構成されている。これら第1孔140、第2孔142、第3孔144、及び、第4孔146は装着部134の第1軸線SL1と同軸に形成され、それらの長さ(第1軸線SL1に沿う方向の長さ)は、それらの機能に応じて適宜設定されている。蛇口本体122の第4孔146の下流に第5番目に大きな第5直径D5を有する第5孔148が形成され、第5孔148は軸線SL1に沿って直線的に形成された直状部150、横向転向部126に形成された横向弧状部152、水平部128に形成された横向部154、下向転向部130に形成された下向弧状部156、及び、垂下部132に形成された下向部158によって構成され、大凡倒立U字型を呈する。直状部150、横向弧状部152、及び、下向部158の直径は同一である。
第1孔140の内周面には、気泡混入装置100の雄ネジ部たる固定ねじ164と螺合する装着ねじ160が形成されている、また、基部124における装着部134の先端部に相対する壁には装着部134と外周面を連通する所定直径を有する外気導入孔166が形成されている。外気導入孔166は所定の流路断面積を有していれば良いので、小径孔を複数形成しても良いし、大径孔を1つ形成しても良い。しかし、外気導入孔166の直径が小さい場合、例えば直径を0.5ミリメートルにして4個形成した場合、当該外気導入孔166にゴミ等が詰まりや易いので好ましくない。逆に外気導入孔166の大きさが大きい場合、見栄えが悪くなるので好ましくない。したがって、外気導入孔166の直径は2ミリメートル程度にして1個設けることが好ましく、断面形状は円形に限定されず、かつ、配置も制限がないが、見栄えに影響が少ない位置に配置することが好ましい。
【0054】
次ぎに気泡混入装置100が主に
図3を参照しつつ説明される。
気泡混入装置100は、液流中に気泡を混入させる機能を有し、本実施例1においては、通液管108、通気液止体112、及び、ロックナット162を含んでいる。
通液管108は、蛇口本体122の下端部の入口開口138から装着部134内に第1軸線SL1に対し同軸状態に挿入され、後述の下端部の固定ねじ164が蛇口本体122の基端部内周面に形成された雌ねじとしての装着ねじ160にねじ込まれることにより、蛇口本体122に所定の位置関係状態に固定される。
【0055】
次ぎに通液管108を主に
図4を参照しつつ説明する。
通液管108は、公共水道等の供給源から供給される圧力水を受入れ、当該圧力水がオリフィスを通過することによって、当該オリフィスの下流側に生じる減圧域を利用して気体(空気)を吸入し、以って、オリフィスを通過した液流中に吸入した空気を(微小な)気泡状に混入させることによって気泡混入水を得る機能を有し、本実施例1においては、所定の第6直径D6によって形成された整流部170、整流部170の下流側に第6直径D6よりも小さい第7直径D7によって形成されたオリフィス106、及び、オリフィス106の直ぐ下流において第7直径D7よりも大径な第8直径D8によって形成された減圧部104を含んでいる。換言すれば、通液管108は、第2軸線SL2回りに形成され、液体(圧力水)が流れる所定長を有する円柱状の整流部170、及び、前記整流部170の下流側に前記軸線SL2と同軸であると共に、前記整流部170よりも小径の所定長を有するオリフィス106、及び、当該オリフィス106の下流側に連続して前記オリフィス106と同軸であって、当該オリフィス106よりも大径であって所定長を有する減圧部104が形成されている。さらに、本実施例1においては、整流部170の上流側である入口端部に流量調整装置218を装着するための挿入孔176が形成されている。これら整流部170、オリフィス106、減圧部104、及び、挿入孔176は、共通の第2軸線SL2に沿って同軸に形成されている。ここで、第2軸線SL2とは、第1軸線SL1と区別をするために便宜的に「第2」を付加したものであり、特許請求の範囲の記載においては、軸線SL2と記載する。なお、整流部170、オリフィス106、又は、減圧部104の断面形状は、楕円形、矩形、三角形等であってもよいが、製造や加工のし易さを考慮すると円形が好ましい。また、整流部170とオリフィス106との間は、それらの直径差による乱流の発生を可及的に抑制するため、テーパー孔186を設けることが好ましい。通液管108は、金属材料を機械加工又は精密鋳造し、樹脂にて一体成型し、若しくは、3Dプリンタによって成形することができる。
【0056】
次ぎにオリフィス106を説明する。
オリフィス106は、整流部170を流れた水を所定の速度以上に増速する機能を有し、前述のように、整流部170と同一の第2軸線SL2上に配置され、当該整流部170よりも小径であって、所定の第1長さL1を有している。
さらに、整流部170とオリフィス106との断面積比、換言すれば、直径比は、約3対1であることが好ましいが、これには限られない。第1長さL1は、オリフィス106の第7直径D7に対して7〜8倍であることが好ましい。この設定は、水流を整流するとともに流れ抵抗を可及的に減らし、効率的に減圧部104において適当な減圧を得るためである。オリフィス106の直径は、大凡2〜5ミリメートの範囲において設定され、後述する実施例2の手持ちする気泡混入シャワー装置等との汎用性を考慮すると、2.5〜3.5ミリメートルの範囲が好ましい。オリフィス106の長さL1は、オリフィス直径、すなわち、第7直径D7の7〜8倍であることが好ましいが、第7直径D7には限定されない。長さL1と第7直径D7の比率を7〜8倍にすることによって、オリフィス106を流れる水流が整流に近くなるので、減圧部104における減圧が安定して得られる利点がある。
【0057】
次ぎに減圧部104を説明する。
減圧部104は、オリフィス106のオリフィス出口178から流出した水流によって、減圧部104を生成する機能を有し、本実施例1においては、オリフィス出口178において直径が急激に増大するよう形成された拡径部180によって減圧部104が形成されている。具体的には、オリフィス出口178に続いて第2軸線SL2と同一の軸線を有する第7直径D7よりも大径の第8直径D8を有する減圧孔182が形成されている。減圧孔182はオリフィス106の第7直径D7の約3倍の直径に形成されている。直径比が小さい場合、十分な減圧を得ることができないことから混入空気量が少なくなり、柔らかな吐出水を得ることができず、直径比が大きい場合、単位面積当たりの減圧量が小さくなり、十分な空気流速を得ることができないことから、気泡の混入が少なくなり、同様に柔らかな吐出水を得ることができない。柔らかな吐出水とは、水流が気泡を含むことにより、単位時間あたりの水量が減少することにより、皮膚に対する押圧力が減少し、もって、柔らかい感触を得ることができることをいう。減圧孔182は、断面が円形でなくとも良いが、円形の場合、水流に対し均一な雰囲気を構成できることから、安定した気泡混入を得ることができるので、安定した気泡混入水が得られると共に、成形が容易にできる利点がある。
減圧孔182は、所定の第2長さL2を有するので、オリフィス出口178から所定距離離れた以降は水中に空気が混入した気泡混入水流が流れることになる。
通液管108には、減圧部104に連通する通気孔110が形成されている。
【0058】
次ぎに通液管108の外形状について主に
図4を参照して説明する。
通液管108の外形状は、蛇口本体122内に挿入して取り付けることが出来れば特に形状は問わないが、本実施例1においては通液管108の基部(下端部)外周に固定ねじ164が形成され、また、減圧部104の外周にはリング状であって、所定の深さDE及び所定の幅W1を有する環状溝184が形成されている。なお、本実施例1においては、通液管108の外側の所定位置において、オーリング186(第1オーリング186-1及び第2オーリング186-2)を配置することにより、蛇口本体122に対する位置決め及び気水漏れ等の用に供している。
また、オリフィス106に隣接するテーパー孔186の外周には段部190が形成され、通液管108の段部190よりも基部側が大径部192に、先端側が小径部194に形成されている。詳細には、小径部194はオリフィス106及び減圧孔182の外周に形成され、同一の直径に形成されている。減圧孔182周囲の先端部には雄ねじ部196が形成されている。通液管108の基部外周面には圧力水供給装置に接続するための取付ねじ168が形成されている。取付ねじ168は水道配管、又は、水道配管との間に介在された流量調整装置等に螺合されて一体化される。水道配管には当然のことながら水栓が配置され、当該水栓の開閉によって、蛇口102に圧力水が供給され、又は、供給が停止される。
【0059】
通液管108は、蛇口本体122の入口開口138から挿入され、基端部(下部)に形成された固定ねじ164を装着ねじ160にねじ込んで固定される。しかし、通液管108の蛇口本体122への固定は、ねじに限らす公知の固定手段を採用することができる。通液管108が蛇口本体122に固定された状態において、減圧部104は外気導入孔166に相対する位置に配置される。しかし、減圧部104の位置は、外気導入孔166と相対しなくともよい。換言すれば、減圧部104の位置は外気導入孔166に対しずれていても良い。
【0060】
次ぎに通気孔110を説明する。
通気孔110は、減圧部104を通液管108の外部と連通させる機能を有し、本実施例1においては、減圧部104に相対する位置、具体的には、環状溝184の底壁188に形成された小径の透孔によって構成されている。本実施例1において、通気孔110は、第2軸線SL2に対し直角に交差する第3軸線SL3に沿って形成されている。具体的には、第2軸線SL2と第3軸線SL3との交点CPに対し点対称に第1通気孔110Aと第2通気孔110Bとが形成されている。第1通気孔110Aと第2通気孔110Bとは丸孔に限定されないが、直径1ミリメートルの丸孔に形成することが、製造を容易化し、コスト低減のために好ましい。また通気孔110の数は、1個以上であれば何個でも良い。しかし、前述の柔らかい吐出水を得るため、混入される気泡の大きさ微細にするためには、直径1ミリメートルの孔を2個形成することが好ましい。また、第3軸線SL3は第2軸線SL2に対し傾斜させることができるが第2軸線SL2に第3軸線SL3が直交するように形成することが製造し易く、かつ、安価であることから好ましい。なお、本実施例1において、環状溝184は必須構成ではなく、通気孔110を小径部194の周面に直接開口させても良い。
【0061】
次ぎに通気液止体112を主に
図5を参照しつつ説明する。
通気液止体112はその外面198側から内面200(通気孔110)側への気体の通過は許すが逆方向である内面200(通気孔110)側から外面198側への水の通過は許さない機能、本実施例1においては空気の通過は許すが水の通過は許さない機能を有する。また、通気液止体112は、本実施例1においては撥液膜116で粉体202の表面を被覆した多孔質体114が用いられている。通気液止体112は、同様の機能を有す他の装置に置き換えることができる。通気液止体112は、通液管108の小径部194に対し大凡密接状態に外装され、段部190と通気液止体112の一端面との間にゴム製リング状の第1パッキン201Aが配置され、通気液止体112の他端面と第1ロックナット162Aとの間にゴム製リング状の第2パッキン201Bを介在させて、通気孔110を介する水の漏水を防止している。通気液止体112は小径部194に外装された状態において、その内周面は小径部194の外周面に大凡密に嵌合し、少なくともその一端部内周面は環状溝184の周面を覆う位置に配置されている。本実施例1において、通気液止体112は環状溝184の幅W1に比し5倍程度の長さを有するが、通気液止体112は通気孔110及び環状溝184の外側に配置され、又は、少なくとも環状溝184の幅W1に相対して配置されていれば良い、また、通気液止体112は通気孔110内、又は、環状溝184内に埋め込むことができる。
【0062】
次ぎに多孔質体114を説明する。
多孔質体114は、気体の通過は可能であるが液体、本実施例1では水の通過を許さない機能を発揮する撥液膜116を保持する機能を有し、本実施例1においては粉体202の集合体によって構成されている。粉体201の集合体によって構成することにより、所定大きさの微細な孔が連続する多孔質体114を安定的に製造することができるからである。本実施例1において、多孔質体114は平均粒径1ミクロン程度に形成されたスラリーを乾燥させた粉体202を結合させて多孔質体114を形成している。なお、
図7において、粉体202は便宜的に球状に表しているが、実際には
図6に示すように、複雑な形状をしている。
具体的には、セラミック204の一種であるアルミナセラミック206の粉末と水と粉砕用のセラミックスボールをミキサーに入れて攪拌することによって、アルミナセラミック206を粉砕混合し、粒径1ミクロン程度のスラリーを生成し、次いで、スプレードライヤーによって当該スラリーから水分を蒸発させ、セラミック204(アルミナセラミック206)の粉体202を得る。次いで、結合材を加えて所定の形状、本実施例1においては円筒状に成形した後、焼成し、所定の第9直径D9の内径と第10直径D10の外径、及び、所定の第3長さL3を有する円筒体172である多孔質体114を得る。第9直径D9は、小径部194に大きなガタが無い程度に密に外装可能であり、第10直径D10は、第2直径D2よりも小径であって、大径部192と同一直径に形成してある。したがって、気泡混入装置100が装着部134に装着された場合、通気液止体112の外周面と第2孔142の内周面との間には、隙間Gが形成される。換言すれば、通気液止体112の周囲には、隙間(厚み)Gの円筒状の分配室207が形成される。分配室207は外気導入孔166に連通している。
多孔質体114は円筒状に限らす、通液管108の外面形状に応じて形成することができる。例えば、通気孔110(110A、110B)内に挿入して設置する場合、円柱状に形成し、環状溝184に設置する場合、薄肉リング状に形成される。
セラミック204を用いることにより、粒径を揃えることが比較的容易であるので、所定の通気率の多孔質体114を得ることが比較的容易にできる利点がある。セラミックとしては、ジルコニア、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等現在公知の、又は、将来作り出されるセラミックを用いることができる。
また、アルミナセラミック206を用いることにより、比較的安価に多孔質体114を構成することができる利点がある。すなわち、
図7に概略を示すように、粉体202の間に多少の大小差はあるものの微細気孔208が形成されるので、それら微細気孔208が多孔質体114の少なくとも厚み方向又は長手方向に連通することによって、外面198と内面200との間は所定の通気率を有するように構成される。換言すれば、多孔質体114の外面198側から内面200側へ、又は、その逆方向へ気体(空気)が通過することができる。さらに換言すれば、減圧部104に生じた減(負)圧(大気圧よりも低い気圧)によって、外気導入孔166、分配室207、通気液止体112、環状溝184、及び、通気孔110を介して外気を吸入することができる。
【0063】
多孔質体114はセラミックの粉体202の集合体の他、微細な孔が形成された網状体を1〜複数回巻き回して筒状に形成しても良い。網状体としては防虫網としての帝人フロンティア(株)製のクロスキャビン(登録商標)を用いることができる。換言すれば、多孔質体114は、所定の大きさの微細気孔208が多数形成されてそれらが厚み方向に連通し、かつ、一方側から他方側へ、又は、他方側から一方側へ気体が通過可能であって、所定の通気率を有すれば良い。しかし、粉体202を結合して成形した場合、所定の通気率を有する多孔質体114の製造が容易である利点がある。本実施例1において、アルミナセラミック206を焼成して多孔質体114を得、気孔率40%、気孔208の大きさが50〜100ミクロン、かさ密度2.58gr/立方センチメートル、通気率100(×10-13平方メートル)の特性を有する通気液止体112を用いている。
【0064】
次ぎに撥液膜116を説明する。
撥液膜116は、膜状であって、水をはじく機能を有し、本実施例1においては、多孔質体114を構成する粉体202の表面を覆うように形成されている。
撥液膜116は膜状であればよく、一枚の連続した完全なシート状になっている必要はなく、多孔質体114における微細な連続する微細気孔208を、液体(水)が通過できない程度の大きさに液(水)滴化させる機能を有すれば、本発明でいうところの撥液膜116に該当するものである。さらに、微細気孔208の全てが水滴を通過させない機能を有する必要はなく、内面200から外面198への所定の厚み中における連続する微細気孔208内の1つの微細気孔208の機能によって上記機能を発揮するものであっても良い。撥液膜116は、対象が水である場合、フッ素系コーティング剤又はシリコン系コーティング剤等を用いることができる。本実施例1においては、対象が水であるので、フッ素系コーティング剤210によって撥液膜116が形成されている。このフッ素系コーティング剤210によって撥液膜116を粉体202の表面に形成する工程の一例を概説すれば、フッ素樹脂を不燃性のフッ素系溶剤又は石油系溶剤に溶解して溶液化したフッ素系コーティング剤210を、多孔質体114を構成する粉体202に付着させた後、乾燥させて形成される。付着は、刷毛によって多孔質体114の外表面(外面198及び内面200)に付着させても、多孔質体114をフッ素系コーティング剤210の溶液中に所定時間浸した後、室温において5秒から15分程度放置することによって、乾燥させて行う。これによって、
図7において鎖線で示すように、粉体202に接触したフッ素系コーティング剤210は、その粉体202の表面において大凡連続したフッ素コーティング膜212の状態で付着する。詳述すれば、微細気孔208を形成する粉体202の表面は多孔質体114の内部の表面までフッ素コーティング膜212、したがって、撥液膜116によって覆われている。換言すれば、微細気孔208は撥液膜116によって囲われている。本実施例1においては、フッ素コーティング剤として、(株)フロロテクノロジー製フロロサーフの溶液中に前述した多孔質体114を10分間浸した後、100度C程度にて1時間程度加熱乾燥させて撥液膜116を形成した通気液止体112を用いている。このフロロサーフによって形成された撥液膜116における撥水効果の劣化要因は、当該撥液膜116に対する物理的な外力の作用、又は、紫外線に対する暴露がある。しかし、本実施例1における撥液膜116は、円筒状の多孔質体114を構成する粉体202の表面に付着させられ、静的に固定されるため、物理的な外力は作用せず、また、他の物体と摩擦接触することがなく、さらに、通気液止体112は蛇口本体122内に組込まれるため紫外線に対し暴露されないことから、撥液膜116の劣化を想定する必要が無いほど長期にわたり撥液効果を発揮する。
【0065】
次ぎに撥液膜116、本実施例1においてはフッ素コーティング膜212の作用、効果について
図8をも参照して説明する。
フッ素コーティング膜212は低表面張力被膜であり、撥液機能を有する。すなわち、撥液膜116は低表面張力被膜であるため、その膜上に付着した水は、はじかれて水滴214状を呈する。換言すれば、
図8に示すように、平坦面状の撥液膜116(フッ素コーティング膜212)に水が接した場合、当該水が受けるはじき力によって撥液膜116と当該水滴214の接触角αが119度程度と極めて大きいため、水は撥液膜116と点接触的に接するようはじかれた水滴214を呈する。また、微細気孔208の全周は、撥液膜116によって被覆されているので、当該水滴214は大凡全周から弾かれることから、比較的大きな水滴214を形成する。この水滴214の大きさは、大凡の微細気孔208の大きさよりも大きい、換言すれば最小の微細気孔208の大きさよりも大きいので、多数の微細気孔208が連続する通気液止体112においては、結果的に、水が通過することはできない。一方、気体である空気は、撥液膜116からはじかれないため、多数の連続する微細気孔208を通って流れることができる。換言すれば、本実施例1においては、通気液止体112を通過した外気を環状溝184及び通気孔110を介して減圧部104(減圧孔182)に吸入することはできるが、通気孔110側から通気液止体112の外面198側への水の通過は阻止される。なお、フッ素コーティング膜212は水に対しての接触角αよりは減少するものの、油に対しても撥液性を有しているので、水以外の油等の液体にも適用することができる。
【0066】
次ぎにロックナット162を
図9を参照して説明する。
ロックナット162は、通気液止体112を通液管108に固定する機能を有し、本実施例1においては、第1ロックナット162Aと第2ロックナット162Bとによって構成されている。したがって、ロックナット162は通気液止体112を通液管108に固定する機能を有すれば、他の装置に変更することができる。例えば、本実施例1においては2つのロックナットを用いているが、一つのロックナットでもよい。第1ロックナット162Aは、雄ねじ部196にねじ込まれ、通気液止体112が自由に移動しないよう第2パッキン201Bを介してその端面を所定の力で押圧する位置までねじ込む。さらに、第2ロックナット162Bを雄ねじ部196にねじ込み、第1ロックナット162Aの端面に所定の力で押圧させることによって、第1ロックナット162Aの緩みを防止している。したがって、ロックナット162は通気液止体112の通液管108に対する位置を保持出来る機能を有する他の装置に変更すすることができる。第1ロックナット162Aの外周のリング状の溝はオーリング168-2を装着するための装着溝174である。
【0067】
したがって、気泡混入装置100は、通液管108に通気液止体112が嵌合され、第1ロックナット162A及び第2ロックナット162Bによって一体化された状態で、蛇口本体122の入口開口138から装着部134内に挿入され、下端部の固定ねじ164を装着ねじ160にねじ込んで一体化される。この状態において、外気導入孔166は通気液止体112の外面198に相対し、環状溝184も通気液止体112の内面200に相対する。通液管108の下端部の取付ねじ168が水栓付きの圧力水供給源に接続されるパイプ端部の雌ネジにねじ込まれている。このパイプとの接続部における水漏れは、第3オーリング186-3によって防止される。環状溝184、通気液止体112、及び、外気導入孔166は、横方向に並列することが好ましい。吸入する外気の流れ抵抗を可及的に減少するためである。しかし、環状溝184、通気液止体112、及び、外気導入孔166の位置関係はこれに限定されない。
【0068】
図1において、通液管108の基部の挿入孔176には、流量調整装置218が接続されている。流量調整装置218は、蛇口102に流れる水量を一定に調整する機能を有し、例えば、本出願人の出願に係る、特開2011-236921に開示された流量調整装置を採用することができるが、同様の機能を有する他の装置を用いることができる。最終的に出口開口120から流出する水量を制御して使用水量を低減する機能を有せ売れば良い。したがって、流量調整装置218は通液管108の基部以外の接続パイプに装着することができるが、通液管108の基部の挿入孔176に装着することにより、装置全体として纏まりよく構成できるので、組み付け性に優れると共にコスト低減できる利点がある。
【0069】
次ぎに実施例1の作用を
図10をも参照しつつ説明する。
図1に示すように、蛇口本体122に気泡混入装置100が装着され、通液管108に圧力水が供給された場合、当該圧力水は整流部170、及び、テーパー孔186に続いてオリフィス106を流れ、その端面のオリフィス出口178から大径の減圧孔182へ円柱状の水柱216を呈して噴出する。これによって、減圧孔182の直径はオリフィス106の直径よりも大きいので、水柱216周囲の空気が当該水柱216の移動に連動して移動することから、水柱216の周囲に矢印Aによって示す気流が生じ、減圧部104が生じる。したがって、この減圧部104を基点として、第1通気孔110A、及び、第2通気孔110B、環状溝184、通気液止体112の微細気孔208、分配室207、及び、外気導入孔166に連なる減圧部が生じることから、結果として、外気導入孔166から分配室207、通気液止体112、環状溝184、並びに、第1通気孔110A、及び、第2通気孔110Bを介して減圧部104に外気を吸入する。減圧部104に吸入された外気は、水柱216に衝突し、水柱216中に微細気泡になって混入される。したがって、減圧孔182の先端からは気泡混入水流が流出し、当該気泡混入水流は、直状部150、横向転向部126、横向部154、下向弧状部156及び下向部158によって順次案内された後、出口開口120から流出する。水栓が閉じられた場合、蛇口本体122内に残留する水のうち、少なくとも、直状部150及び横向転向部126内の水には重力が作用する。これによって、減圧孔182に連なる通気孔110、したがって、環状溝184へ水が逆流する。しかしながら、前述したように、通気液止体112は、多孔質体114の微細気孔208を構成する粉体202の表面が撥液膜116により覆われていることから、当該撥液膜116よる撥液作用により水滴214化され、当該水滴214は微細気孔208を通過できない。したがって、蛇口本体122内の残留水が外気導入孔166から流出することがない。また、出口開口120から吐出する水流には気泡が混入していることから、必然的に単位時間当たりの水流が減少し、節水できる利点がある。さらに、流量調整装置218と組み合わせることにより、流量調整装置218において設定した流量以上は流れないので、より一層、節水出来る利点がある。
【実施例2】
【0070】
次ぎに実施例2を説明する。
実施例2は、本発明に係る気泡混入装置100をシャワー本体220に組み込み、気泡混入シャワー装置222を構成したものである。実施例1と同一部分には同一符合を付して説明を省略し、異なる構成のみを説明する。したがって、実施例1と実施例2は気泡混入装置100が同一であることから、異なる構成であるシャワー本体220を主に
図13を参照しつつ説明する。
【0071】
シャワー本体220は、気泡混入装置100を内蔵すると共に、気泡混入水を気水吐出板224から吐出する機能を有し、本実施例2においては、シャワー本体220は、本体基部226と吐出部228を含んでいる。
【0072】
まず本体基部226を説明する。
本体基部226は、気泡混入装置100が内蔵されると共に、使用者が手に持つ握り手機能を有し、本実施例2においては、円筒状に形成されている。本体基部226の内部構造は実施例1における気泡混入装置100が装着される部分と同一構成である。すなわち、基部(下端部)側から順に、所定直径を有し、かつ、所定長を有する第1孔140、第2孔142、第3孔144、第4孔146、及び、第5孔148が形成されている。
【0073】
次ぎに吐出部228を説明する。
吐出部228は、気泡混入装置100の減圧孔182、換言すれば、第5孔148たる直状部150から流出した気泡混入水を大凡120度方向転換させた後、気水吐出板224から吐出させる機能を有し、本実施例2においては、
図12及び
図13から明らかなように、気水吐出板224から遠い直状部150の一側壁に続いて所定の長さで形成された弧状の気水案内部230、及び、気水案内部230に対面する方向に所定の長さで、かつ、直状部150の第5直径D5に対し大凡4.5倍である第11直径D11において延在する吐出水案内部232を含んでいる。換言すれば、気水案内部232の第4軸線SL4は軸線SL1に対し、60度の交差角βにて設定されている。さらに換言すれば、直状部150からから流出する気泡混入水は、120度方向転換されて気水吐出板224から吐出する。
【0074】
次ぎに気水吐出板224を説明する。
気水吐出板224は、気泡混入水を微細水流として吐出する機能を有し、本実施例2においては、規則的に、又は、不規則に配置された多数の小径の吐出孔234が形成された薄板状体であり、吐出水案内部232の先端部に配置されている。したがって、気水案内部230によって反射された気泡混入水は気水吐出板224に形成された吐出孔234を通って極細水柱状に吐出する。
【0075】
次ぎに実施例2の気泡混入シャワー装置222の作用を説明する。
実施例2の気泡混入シャワー装置222において、気泡混入装置100の構造は実施例1と同一であるので実施例1と異なる作用を説明する。
減圧孔182から噴出した気泡混入水は、直状部150に案内された後、気水案内部230に衝突して横方向に偏向され、さらに、吐出水案内部232によって案内された後、気水吐出板224の吐出孔234から極小径水流となって吐出する。この吐出水流は、気泡を含んでいることから、1つの吐出孔234から吐出する水流を微視的に見た場合、水滴と気泡とが交互に頭皮に衝突するため、頭皮は水流が連続する場合に比し、弱い水流として感じ、快適感が得られる。また、吐出孔234から吐出する水流には気泡が混入していることから、必然的に単位時間当たりの水量が減少し、節水できる利点がある。さらに、流量調整装置218と組み合わせることにより、より一層、節水出来る利点がある。